JP3984010B2 - エンジンのバランサー装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、エンジンのバランサー装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
特公平2−118227号には、バランスウエイトをバランサー軸の両端部側に設けたエンジンのバランサー装置が示されている。またバランサーギヤ側のバランスウエイトは、バランサーギヤと別体でその歯底径より外径を小さくして形成され、バランサーギヤの内側へ配置されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところでバランサーギヤにバランスウエイト形状を付加させることも考えられるが、このようにしたギヤは異形となるため、熱処理後の歪みによりギヤ精度が低下する傾向を持っている。そこでバランスウエイトをバランサーギヤと別体に構成させると上記問題を解消できるが、歯底径以下の小径バランスウエイトでは、十分なアンバランス量を確保するためにバランスウエイトの幅が増大し、エンジンの大型化や重量増を招き易くなる。そこで本願発明はアンバランス量を効率的に得ることができ、エンジンの小型・軽量化に貢献できるバランサー装置の提供を目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため請求項1の発明は、エンジンのクランク軸と平行なバランサー軸の両端部にバランスウエイトを分離して設け、これらのバランスウエイトを前記クランク軸と連動するバランサードリブンギヤにより回転させるように構成したエンジンのバランサー装置において、
前記バランサー軸の一端部に前記バランサードリブンギヤを設けるとともに、他端部に設けた前記バランスウエイトを一体に形成し、この他端部に一体形成されたバランスウエイトの内側側面を基準にしてバランスウイトよりも小径の補機駆動用ギヤを設け、
この補機駆動用ギヤには、前記バランサー軸に平行に配置されて前記補機を駆動する駆動軸に設けられたギヤが噛み合っており、
前記駆動軸は前記他端部に一体形成されたバランスウイトと前記バランサードリブンギヤとの間に配置されることを特徴とする。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1において、前記バランサーギヤを前記バランサー軸へスプライン嵌合するとともに、前記バランサー軸のバランサーギヤ側軸端に係止穴を設け、この係止穴へ補機駆動部材を連結したことを特徴とする。
【0006】
請求項3の発明は、エンジンのクランク軸と平行なバランサー軸の両端部にバランスウエイトを分離して設け、これらのバランスウエイトを前記クランク軸と連動するバランサーギヤにより回転させるように構成したエンジンのバランサー装置において、
前記バランサー軸の一端部に前記バランサードリブンギヤを設けるとともに、他端側にバランスウエイトを一体に形成し、このバランスウエイトの内側側面を基準にして補機駆動用ギヤを設けたことを特徴とする。
【0007】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、クランク軸に固定されるバランサードライブギヤから動力伝達を受け回転するバランサードリブンギヤの外側に別体のバランスウエイトを構成している構造において、バランスウエイトの外径をバランサードリブンギヤの歯底径より大きくしたので、十分なアンバランス量を効率的に確保でき、その結果、バランスウエイトの幅を最小限にし、エンジン幅の増大を抑えて軽量コンパクト化を図ることができる。
【0008】
また、バランスウエイトをバランサードリブンギヤと別体にしたので、バランサードリブンギヤの歯底径より大きくしたバランスウエイトをバランサードリブンギヤのすぐ脇にまで配置できる。仮にこのような大径のバランスウエイトをバランサードリブンギヤと一体成形すれば、バランサードリブンギヤの歯部に対する加工ができなくなるところ、このような製造上の問題は生じない。そこでバランスウエイトをバランサードリブンギヤの側面へ共締めすることによりバランサー軸へ容易に固定できるようになる。
【0009】
請求項2の発明によれば、バランサーギヤをバランサー軸へスプライン嵌合するとともに、バランサー軸のバランサーギヤ側軸端に係止穴を設け、この係止穴へ補機駆動部材を連結したので、バランサー軸によって補機を同軸で駆動できるとともに、軸端部にバランサーギヤとバランスウエイトを設けたにもかかわらず、補機駆動部材の連結に場所をとらないので、エンジンをコンパクトにできる。
【0010】
請求項3の発明によれば、バランサー軸の両端部にバランスウエイトを分離して設け、かつ一端部側にバランサードリブンギヤを設けるとともに、他端側にバランスウエイトを一体に形成し、このバランスウエイトの内側側面を基準にして補機駆動用ギヤを設けたので、補機駆動用ギヤをバランスウエイトへ密接させて設けることができ、補機駆動用ギヤの取付に場所をとらなくなる。そのうえ、バランサー軸の一端側でバランサードリブンギヤを設けた側に一つの補機の駆動軸を同軸接続し、他端側の補機駆動用ギヤで他の補機の駆動軸をバランサー軸と平行に配置して折り返して前記他の補機を前記一つの補機へ近接配置することもできる。したがってエンジンのコンパクト化が可能になる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて一実施例を説明する。図1は本実施例の適用された水冷4サイクル式エンジンの左側面図、図2はそのクランク軸、メイン軸及びカウンタ軸を通る断面図、図3はバランサー機構部分の断面図である。
【0012】
図1において、このエンジンはクランクケース1の上部にシリンダブロック2を設け、その上にシリンダヘッド3及びシリンダヘッドカバー4を設けてある。シリンダブロック2内にはピストン5が摺動して往復自在であり、ピストン5はコンロッド6を介してクランク軸7(符号の指示先は中心を示す)を回転させる。クランク軸7はクランクケース1内のクランク室内へ収容され、クランク軸7の軸上に設けられたプライマリドライブギヤ9によりクラッチ10と一体のプライマリドリブンギヤ11と噛み合う。
【0013】
変速機構を構成するメイン軸12とカウンタ軸13(いずれも符号の指示先は中心を示す)はクランク軸7と平行に配置され、それぞれの軸上に設けられている複数の変速ギヤ14,15を常時噛み合わせてある。これらはクランクケース1内のミッション室内へ収容される。メイン軸12はクラッチ10と接続し、クラッチレバー17によりクラッチ10を断続操作する。また、公知のギヤセレクト機構により変速ギヤ14,15の組み合わせを選択し、カウンタ軸13の一端に設けられた出力スプロケット18へ変速出力するようになっている。
【0014】
図2に示すように、クランクケース1は左右分割されている、左側のLケース20と右側のRケース21で構成され、それぞれの外側にLケースカバー22、Rケースカバー23が取付けられる。
【0015】
Lケース20とRケース21の間にはクランク軸7、メイン軸12、カウンタ軸13がベアリングで支持され、クランク軸7はLケース20とRケース21の間に密閉して形成されたクランク室8内へ収容される。また、メイン軸12、カウンタ軸13、変速ギヤ14,15の変速機構は、クランク室8に続いてLケース20、Rケース21間に形成されたミッション室16内へ収容されている。クランク室8はミッション室16と隔壁で隔てられた密閉室になっている。また、Rケース21とRケースカバー23及びクラッチカバー24の間にクラッチ室25が形成され、ここに湿式クラッチ10が収容される。
【0016】
クラッチ10に接続するメイン軸12は中空軸であり、その内部にプッシュロッド26が貫通し、一端側をクラッチレバー17の一端に形構成したカム部27で押すことによりクラッチを断続操作する。符号28はクランク軸7の一端に設けられたACGである。
【0017】
図3に示すように、クランク軸7上のプライマリドライブギヤ9近傍にバランサードライブギヤ30が設けられ、ここに噛み合うバランサードリブンギヤ31がっCバランサー軸32の一端に設けられている。バランサー軸32はクランク軸7と平行に配置されてLケース20、Rケース21間に支持され、両端にバランスウエイト33,34が設けられている。一方のバランスウエイト33はバランサードリブンギヤ31と別体でかつ軸方向へ重なって設けられ、他方のバランスウエイト34はバランサー軸32の他端へ一体に設けられている。
【0018】
バランスウエイト33が設けられているバランサー軸32の軸端には軸方向の係合穴32aが設けられ、ここに水ポンプ35の駆動軸36に形成された異形端部36aが係合して同軸で一体回転可能に連結され、バランサー軸32と一体になって水ポンプ35を駆動する。
【0019】
他方のバランスウエイト34のボス部には別体のギヤ37が一体回転可能に設けられている。このギヤ37はオイルポンプギヤ38と噛み合い、オイルポンプギヤ38は一体の駆動軸39を回転させてオイルポンプ40を駆動する。駆動軸39はバランサー軸32と平行にLケース20へ支持されている。オイルポンプ40はLケース20側でかつRケース21との合わせ部に形成されている。
【0020】
オイルポンプ40に対するオイルの供給は、クランク室8のRケース21N底部に形成されたオイル溜まり41から図示しないリードバルブを介してクランクウエブ42の回転によりオイルパンへ送り込まれる。オイルポンプ40から圧送されたオイルは吐出路43からLケースカバー22の内側に設けられたオイルフィルタ44を介してLケースカバー22に形成されたオイル通路45からクランク軸7の軸心部に設けたオイル通路46等必要箇所へ給油する。
【0021】
図4は図3におけるバランサー軸回りを拡大した図であり、この図によりバランサー機構をさらに詳細に説明する。バランサー軸32の一端はRケースに設けられたボールベアリング50から図の右方へ突出し、この突出端にバランサードリブンギヤ31のボス部51が嵌合されてスプライン結合している。バランサードリブンギヤ31の外側にはバランスウエイト33が重ねられてバランサー軸32の軸端へスプライン結合され、これらバランサードリブンギヤ31及びバランスウエイト33はワッシャ52を介してナット53でバランサー軸32の軸端へ固定される。
【0022】
バランスウエイト33は略半円形等の非円形形状をなし、最大外径部の外径R2はバランサードリブンギヤ31の歯底径R1よりも大径であり、バランサードリブンギヤ31の外周とほぼ同程度になっている。また、左側のバランスウエイト34と比べて若干最大径が大きく、かつ肉厚はその略半分程度と薄肉であり、バランサードリブンギヤ31の歯部における肉厚と略同程度になっている。なお、バランスウエイト34の最大径はバランサードリブンギヤ31の歯底径と略同程度であり、Lケースから外方へ突出している。
【0023】
ナット53から突出するバランサー軸32の軸端に形成された係合穴32aは角形等の異形穴であり、これに補機の一つである水ポンプの駆動軸36の一端である異形端部36aが嵌合して回り止めされ、一体回転可能に係合している。
【0024】
バランサー軸32の左側端部はLケースに設けられたニードルベアリング54により支持され、このニードルベアリング54から突出した部分は若干大径になってバランスウエイト34のボス部55をなす。このボス部55の外周には補機の一つであるオイルポンプ駆動用のギヤ37が圧入して一体化され、その一側面はバランスウエイト34の内側側面56に密接し、この面を基準にして固定されている。ギヤ37の幅はオイルポンプギヤ38の幅よりも広くなっている。オイルポンプギヤ38は駆動軸39に対してピン57で回り止めされ、サークリップ58で抜け止めされている。
【0025】
次に本実施例の作用を説明する。クランク軸1が回転すると、バランサードライブギヤ30及びバランサードリブンギヤ31を介してバランサー軸32をクランク軸1と連動して逆回転させて、バランスウエイト33及び34を一体に回転させ、クランク軸1の振動を低減させる。
【0026】
同時にバランサー軸32の回転により、駆動軸36を介して水ポンプ35の駆動部を一体回転させて冷却水を装備させる。同時にバランスウエイト34と一体のギヤ37によりオイルポンプギヤ38を回転させてオイルポンプ40を駆動し、オイルをクランク軸1等の必要ケ所へ供給する。
【0027】
また、クランク軸1に固定されるバランサードライブギヤ30から動力伝達を受け回転するバランサードリブンギヤ31の外側に別体のバランスウエイト33を配置するとともに、バランスウエイト33の外径R2をバランサードリブンギヤ31の歯底径R1より大きくしたので、十分なアンバランス量を効率的に確保でき、その結果、バランスウエイト33の幅を最小限にし、エンジン幅の増大を抑えて軽量コンパクト化を図ることができる。しかも、バランスウエイト33をバランサードリブンギヤ31と別体にしたので、バランサードリブンギヤ31の歯底径R1より大きくしたバランスウエイト33をバランサードリブンギヤ31のすぐ脇にまで配置できる。
【0028】
仮にこのような大径のバランスウエイト33をバランサードリブンギヤ31と一体成形すれば、バランサードリブンギヤ31が異形となるため熱処理後の歪みによりギヤ精度が低下する傾向を生じ、かつアンバランス形状歯部に対する加工ができなくなるところ、このような製造上の問題は生じない。そこでバランスウエイト33をバランサードリブンギヤ31の側面へ共締めすることによりバランサー軸32へ容易に固定でき、かつコンパクトに固定できるようになる。
【00029】
また、バランサーギヤ31をバランサー軸32へスプライン嵌合するとともに、バランサー軸32のバランサーギヤ側軸端に係止穴32aを設け、この係止穴32aへ水ポンプの駆動軸36の係合端部36aを嵌合して係合することにより連結したので、バランサー軸32によって補機である水ポンプ35を同軸で駆動できるとともに、軸端部にバランサーギヤ31とバランスウエイト33を設けたにもかかわらず、駆動軸36の連結に場所をとらないので、エンジンをコンパクトにできる。
【0030】
さらに、バランサー軸32の両端部にバランスウエイト33、34を分離して設け、かつ一端部側(R側)にバランサーギヤ31を設けるとともに、他端側にバランスウエイト34を一体に形成し、このバランスウエイト34の内側側面56を基準にしてオイルポンプギヤ38を駆動する補機駆動用のギヤ37をバランスウエイト34へ密接させて設けることができ、ギヤ37の取付に場所をとらないので、エンジンをコンパクトにできる。
【0031】
そのうえ、バランサー軸32の一端側でバランサードリブンギヤ31を設けた側に同軸で水ポンプ35の駆動軸36を連結し、他端側に設けた補機駆動用のギヤ37と噛み合うオイルポンプギヤ38が設けられた駆動軸39をバランサー軸32と平行に配置しすることにより、オイルポンプ40に対する駆動力伝達経路を折り返してオイルポンプ40を水ポンプ35へ近接配置することができる。したがってエンジンのさらなるコンパクト化が可能になる。
【0032】
なお、本願発明は上記の各実施例に限定されるものではなく、発明の原理内において種々に変形や応用が可能である。例えばバランサードリブンギヤ31とバランスウエイト33の間に、比重の高い材質の部品を組み込み構成させることにより、必要アンバランス量を確保して、エンジンの小型・軽量化を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例の適用された水冷4サイクル式エンジンの左側面図
【図2】上記エンジンの要部断面図
【図3】バランサー機構部分の断面図
【図4】図3のバランサー軸回りを拡大した図
【符号の説明】
1:クランクケース、5:ピストン、7:クランク軸、9:プライマリドライブギヤ、10:クラッチ、12:メイン軸、13:カウンタ軸、20:Lケース、21:Rケース、22:Lケースカバー、23:Rケースカバー、30:バランサードライブギヤ、31:バランサードリブンギヤ、32:バランサー軸、33:バランスウエイト、34:バランスウエイト、35:水ポンプ(補機)、36:駆動軸、37:補機駆動用のギヤ、38:オイルポンプギヤ、40:オイルポンプ(補機)

Claims (3)

  1. エンジンのクランク軸と平行なバランサー軸の両端部にバランスウエイトを分離して設け、これらのバランスウエイトを前記クランク軸と連動するバランサードリブンギヤにより回転させるように構成したエンジンのバランサー装置において、
    前記バランサー軸の一端部に前記バランサードリブンギヤを設けるとともに、他端部に設けた前記バランスウエイトを一体に形成し、この他端部に一体形成されたバランスウエイトの内側側面を基準にしてバランスウイトよりも小径の補機駆動用ギヤを設け、
    この補機駆動用ギヤには、前記バランサー軸に平行に配置されて前記補機を駆動する駆動軸に設けられたギヤが噛み合っており、
    前記駆動軸は前記他端部に一体形成されたバランスウイトと前記バランサードリブンギヤとの間に配置されることを特徴とするエンジンのバランサー装置。
  2. 前記バランサードリブンギヤを前記バランサー軸ヘスプライン嵌合するとともに、前記バランサー軸のバランサードリブンギヤ側軸端に係止穴を設け、この係止穴へ補機駆動部材を連結したことを特徴とする請求項1に記載したエンジンのバランサー装置。
  3. 前記バランサー軸の一端部で前記バランサードリブンギヤが設けられる側に設けられるバランウエイトは、前記バランサードリブンギヤの歯底径より大径であり、前記バランサー軸とは別部材として形成するとともに、前記バランサードリブンギヤの側面に共締めされたことを特徴とする請求項1または2に記載のエンジンのバランサー装置。
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