JP3980828B2 - 圧粉磁心 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧粉磁心に関するものであり、特に、高透磁率で低鉄損の圧粉磁心に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
スイッチング電源用トランスコアや平滑チョークコア等の高周波まで一定の透磁率が必要とされる磁心部品に用いられる磁心は、フェライトの開磁路型あるいはギャップ付の磁心、またはアモルファス合金薄帯を巻回した磁心にギャップを形成した磁心が提案されている。また、カーボニル鉄、パーマロイ、センダスト等の粉末と絶縁材を混合して成形した圧粉磁心も提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、フェライトの焼結磁心は、コアロスが小さいものの飽和磁束密度が小さく、開磁路型やギャップ付の磁心ではギャップ部からの漏洩磁束が周囲の電気回路に悪影響を与えるという欠点があった。また、カーボニル鉄、パーマロイ、センダスト等の粉末を用いた圧粉磁心は、飽和磁束密度がフェライトより優れるものの鉄損が大きいという欠点があった。
上記の圧粉磁心の鉄損が大きくなる原因としては、磁性粉に用いる磁性材料の鉄損が大きいことと、圧粉磁心を成形する際にかかる応力を十分に緩和できないことが原因であった。
【0004】
そこで鉄損低下のために応力を緩和する手段として、センダスト(Fe-Si-B合金)の粉末にシリコーンレジンを添加して固化成形後、500℃以上の温度で熱処理してなる圧粉磁心が提案されている。
しかし、シリコーンレジンは一般に熱的安定性に劣るため、このシリコーンレジンを用いて固化成形するには500℃以下の高温で熱処理する印加する必要があり、必ずしもセンダストの応力を完全に緩和することは困難であった。しかも、得られた圧粉磁心の1MHzにおける透磁率は40〜50程度と低く、高周波帯域での適用が困難な状況であった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高透磁率であるとともに低鉄損の圧粉磁心を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
本発明の圧粉磁心は、ΔTx=Tx−Tg(ただしTxは結晶化開始温度、Tgはガラス遷移温度を示す。)の式で表される過冷却液体の温度間隔ΔTxが20K以上であって、Alである元素Xと、P、C、Si、Bのうちの1種以上の元素Qと、Feとを含む非晶質相を主相とする組織からなり、磁歪定数が1×10 −6 〜50×10 −6 の範囲である金属ガラス合金の粉末に、シリコーンエラストマーからなる結着剤とステアリン酸アルミニウムからなる潤滑剤とが添加され、固化成形されてなることを特徴とする。
また、前記固化成形後に(Tg−170)K〜(Tg)Kの温度範囲で熱処理されてなることが好ましい
【0007】
係る圧粉磁心によれば、シリコーンエラストマーからなる結着剤を備えており、このシリコーンエラストマーはシリコーンレジンよりも内部応力の低減を実現できる。
また、シリコーンエラストマーは圧粉磁心内部でも十分な弾性を示すので、1×10-6〜50×10-6の磁歪定数を示す金属ガラス合金を用いた場合でも、歪みを緩和させることができ、圧粉磁心内部の応力を緩和して高透磁率で低鉄損の圧粉磁心を構成することが可能になる。
更に、金属ガラス合金は(Tg−170)K以上(Tg)K以下の温度で熱処理されることにより、応力緩和されるとともに結晶質相を析出させることがなく、高透磁率で低鉄損の圧粉磁心を構成することが可能になる。
更に、ステアリン酸アルミニウムからなる潤滑剤が添加されているので、成形時に金属ガラス合金粉末同士が相互に滑りやすくなって圧粉磁心の相対密度が向上し、圧粉磁心の透磁率を高めて鉄損を低下させることが可能になる。
【0008】
更に本発明の圧粉磁心は、先に記載の圧粉磁心であって、前記金属ガラス合金が、下記の組成式で表されるものであることを特徴とする。
Fe100-x1-y1-z1-w1Alx1y1z1w1
ただし、組成比を示すx1、y1、z1、w1は、0原子%≦x1≦10原子%、2原子%≦y1≦15原子%、0原子%<z1≦11.5原子%、4原子%≦w1≦10原子%、70原子%≦(100−x1−y1−z1−w1)≦79原子%、11原子%≦(y1+z1+w1)≦30原子%である。
【0009】
また本発明の圧粉磁心は、先に記載の圧粉磁心であって、前記金属ガラス合金が、下記の組成式で表されるものであることを特徴とする。
(Fe1−a1a1100−x1−y1−z1−w1Alx1y1z1w1
ただしTはCo、Niのいずれか一方または両方であり、組成比を示すa1、x1、y1、z1、W1は、0.1≦a1≦0.15、0原子%≦x1≦10原子%、2原子%≦y1≦15原子%、0原子%<z1≦11.5原子%、4原子%≦w1≦10原子%、70原子%≦(100−x1−y1−z1−w1)≦79原子%、11原子%≦(y1+z1+W1)≦30原子%である。
【0010】
また本発明の圧粉磁心は、先に記載の圧粉磁心であって、前記金属ガラス合金が、下記の組成式で表されるものであることを特徴とする。
Fe100-x1-v1-z1-w1Alx1(P1-b1Sib1v1z1w1
ただし、組成比を示すb1、x1、v1、z1、w1は、0.1≦b1≦0.28、0原子%≦x1≦10原子%、2原子%≦v1≦15原子%、0原子%<z1≦11.5原子%、4原子%≦w1≦10原子%、70原子%≦(100−x1−y1−z1−w1)≦79原子%、11原子%≦(v1+z1+w1)≦30原子%である。
【0011】
また本発明の圧粉磁心は、先に記載の圧粉磁心であって、前記金属ガラス合金が、下記の組成式で表されるものであることを特徴とする。
(Fe1‐a1a1100 −x1−v1−z1−w1Alx1(P1−b1Sib1v1z1w1
ただしTはCo、Niのいずれか一方または両方であり、組成比を示すa1、b1、x1、v1、z1、w1は、0.1≦a1≦0.15、0.1≦b1≦0.28、0原子%≦x1≦10原子%、2原子%≦v1≦15原子%、0原子%<z1≦11.5原子%、4原子%≦w1≦10原子%、70原子%≦(100−x1−v1−z1−w1)≦79原子%、11原子%≦(v1+z1+w1)≦30原子%である。
【0012】
また、上記の金属ガラス合金は、合金の融点をTmとしたとき、Tg/Tm≧0.57を示し、更に飽和磁化σsが180×10-6Wb・m/kg以上、組成によっては200×10-6Wb・m/kg以上、最も好ましい組成では210×10-6Wb・m/kg以上を示す。
【0013】
係る圧粉磁心によれば、上記のFe-Al-P-C-B(Si)系の金属ガラス合金を備えており、この金属ガラス合金は、磁性を示すFe及び元素Tと非晶質形成能を有するAlと元素Qを具備しており、非晶質相を主相とするとともに優れた軟磁気特性を示すので、圧粉磁心の透磁率を高めて鉄損を低減させることが可能になる。
そして、Fe単独またはFeと元素Tの合計の組成比を70原子%以上79原子%以下とし、Alを0原子%以上10原子%以下とし、P、C、B、(Si)の合計を11原子%以上30原子%以下とすることにより、Tg/Tmを0.57以上にするとともに飽和磁化σsを180×10-6Wb・m/kg以上にすることができ、圧粉磁心の透磁率をより高めて鉄損をより低減させることが可能になる。
尚、Tg/Tmはいわゆる換算ガラス化温度と呼ばれるもので、金属ガラス合金の非晶質形成能の程度を示す指標であり、このTg/Tmが0.57以上と比較的高いので、ガスアトマイズ法等の手段により非晶質相を主相とする組織の合金を容易に得ることが可能になる。
【0014】
また上記のFe-Al-P-C-B(Si)系合金において、前記組成比のうちのx1、y1、z1、w1が、0原子%≦x1≦6原子%、2原子%≦y1≦15原子%、0原子%<z1≦11.5原子%、4原子%≦w1≦10原子%、76原子%≦(100−x1−y1−z1−w1)≦79原子%、18原子%≦(y1+z1+w1)≦24原子%の範囲であることが好ましい。
【0015】
また上記のFe-Al-P-C-B(Si)系合金において、前記組成比のうちのx1、v1、z1、w1が、0原子%≦x1≦6原子%、2原子%≦v1≦15原子%、0原子%<z1≦11.5原子%、4原子%≦w1≦10原子%、76原子%≦(100−x1−v1−z1−w1)≦79原子%、18原子%≦(v1+z1+w1)≦24原子%の範囲であることがより好ましい。
【0016】
係る圧粉磁心によれば、金属ガラス合金におけるFe単独またはFeと元素Tの合計の組成比を76原子%以上79原子%以下とし、Alを0原子%以上6原子%以下とし、P、C、B、(Si)の合計を18原子%以上24原子%以下とすることにより、Tg/Tmを0.57以上にするとともに、飽和磁化σsを200×10-6Wb・m/kg以上にすることができ、高透磁率で低鉄損、かつ高飽和磁化の圧粉磁心を構成することが可能になる。
【0017】
また上記のFe-Al-P-C-B(Si)系合金において、前記組成比のうちのx1、y1、z1、w1が、0原子%≦x1≦5原子%、2原子%≦y1≦15原子%、0原子%<z1≦11.5原子%、4原子%≦w1≦10原子%、77原子%≦(100−x1−y1−z1−w1)≦79原子%、18原子%≦(y1+z1+w1)≦22原子%の範囲であることが更に好ましい。
【0018】
また上記のFe-Al-P-C-B(Si)系合金において、前記組成比のうちのx1、v1、z1、w1が、0原子%≦x1≦5原子%、2原子%≦v1≦15原子%、0原子%<z1≦11.5原子%、4原子%≦w1≦10原子%、77原子%≦(100−x1−v1−z1−w1)≦79原子%、18原子%≦(v1+z1+w1)≦22原子%の範囲であることが最も好ましい。
【0019】
係る圧粉磁心によれば、金属ガラス合金におけるFe単独またはFeと元素Tの合計の組成比を77原子%以上79原子%以下とし、Alを0原子%以上5原子%以下とし、P、C、B、(Si)の合計を18原子%以上22原子%以下とすることにより、Tg/Tmを0.57以上にするとともに、飽和磁化σsを210×10-6Wb・m/kg以上にすることができ、高透磁率で低鉄損、かつ高飽和磁化の圧粉磁心を構成することが可能になる。
【0028】
また、前記金属ガラス合金の組成は、下記の組成で表されるものであってもよい。
(Fe1-a3-b3Coa3Nib3100-x3-y3x3y3
但し、MはZr、Nb、Ta、Hf、Mo、Ti、V、Cr、Wのうちの1種又は2種以上からなる元素であり、組成比を示すa3、b3、x3、y3は、0≦a3≦0.29、0≦b3≦0.43、5原子%≦x3≦20原子%、10原子%≦y3≦22原子%である。
【0030】
また本発明の圧粉磁心は、先に記載の圧粉磁心であって、前記金属ガラス合金の粉末に、前記シリコーンエラストマーと、前記ステアリン酸アルミニウムからなる潤滑剤と、シランカップリング剤とが添加され、固化成形されてなることを特徴とする
【0031】
係る圧粉磁心によれば、シランカップリング剤が添加されているので、金属ガラス合金粉末とシリコーンエラストマーとの密着性が向上することによりシリコーンエラストマーの添加量を低減させることができ、これにより金属ガラス合金粉末同士が接近して見かけ上の反磁界を低減でき、透磁率を高くすることが可能になる。
【0032】
また本発明の圧粉磁心は、先に記載の圧粉磁心であって、前記シランカップリング剤の金属と結合可能な官能基が、アミノ基、ビニル基、メチル基のうちのいずれか1種であることを特徴とする。
【0033】
係る圧粉磁心によれば、アミノ基、ビニル基、メチル基のうちのいずれか1種の官能基を有するシランカップリング剤を備えており、これらの官能基は金属ガラス合金の粉末表面との結合性に優れるため、シリコーンエラストマーの添加量を低減させて透磁率を高くすることが可能になる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の圧粉磁心の実施の形態を図面を参照して説明する。
本発明の実施形態の圧粉磁心は、ΔTx=Tx−Tg(ただしTxは結晶化開始温度、Tgはガラス遷移温度を示す。)の式で表される過冷却液体の温度間隔ΔTxが20K以上であるとともに、Al、Gaのいずれか一方または両方の元素Xと、P、C、Si、Bのうちの1種以上の元素Qと、Feとを含み、非晶質相を主相とする組織からなる金属ガラス合金の粉末に、シリコーンエラストマーからなる結着剤とステアリン酸アルミニウムからなる潤滑剤とが添加され、固化成形された後に熱処理されてなるものである。熱処理温度は(Tg−170)K以上(Tg)K以下の範囲が好ましい。また、上記金属ガラス合金としては、比抵抗が1.5μΩ・m以上のものが好ましい。更に上記の金属ガラス合金は、磁歪定数が1×10-6〜50×10-6の範囲のものが好ましい。
また、金属ガラス合金粉末とシリコーンエラストマーと充填剤とに加えて、シランカップリング剤を添加しても良い。
【0035】
この圧粉磁心の形状は、例えば図1に示すように、円環状の磁心1を例示できるが、形状はこれに限られず、長円環状や楕円環状であっても良い。また平面視略E字状、平面視略コ字状、平面視略I字状等であっても良い。
【0036】
この圧粉磁心は、金属ガラス合金の粉末がシリコーンエラストマーからなる結着剤によって結着されてなるもので、組織中に金属ガラス合金の粉末が存在した状態となっており、金属ガラス合金の粉末が溶解して均一な組織を構成しているものではない。また、金属ガラス合金の粉末は、粉末を構成する個々の粒子がシリコーンエラストマーによって絶縁されていることが好ましい。
このように、圧粉磁心には金属ガラス合金の粉末とシリコーンエラストマーからなる結着剤とが混合されて存在するので、シリコーンエラストマーによって圧粉磁心自体の比抵抗が大きくなり、高周波領域における透磁率を高くすることができる。
【0037】
またシリコーンエラストマーは、圧粉磁心の比抵抗を高めるとともに、金属ガラス合金の粉末を結着して圧粉磁心の形状を保持し、更に磁気特性に大きな損失を与えないものである。またシリコーンエラストマーは、従来から用いられているシリコーンレジンよりも圧縮成形性に優れるので、常温で固化成形することにより高い強度を有する圧粉磁心を構成することが可能になる。更にシリコーンエラストマーは圧粉磁心内部でも十分な弾性を示し、1×10-6〜50×10-6の磁歪定数を示す金属ガラス合金を用いた場合でも、歪みを緩和させることができ、圧粉磁心内部の応力を緩和して高透磁率で低鉄損の圧粉磁心を構成することが可能になる。
【0038】
更に、金属ガラス合金は(Tg−170)K以上(Tg)K以下の温度範囲で熱処理されることにより、応力緩和されるとともに結晶質相を析出させることがなく、高透磁率で低鉄損の圧粉磁心を構成することが可能になる。
またステアリン酸アルミニウムからなる潤滑剤は、金属ガラス合金粉末の潤滑性を高める機能があり、金属ガラス合金とシリコーンエラストマーを混合して成形する際に、金属ガラス合金の粉末同士が相互に滑りやすくなって粉末が密に充填されることにより、圧粉磁心の相対密度が向上する。これにより、圧粉磁心の透磁率が高くなるとともに鉄損が低下する。
【0039】
また、シランカップリング剤は一般に、珪素原子に直接に結合したメトキシ基あるいはエトキシ基等と、珪素原子にメチレン鎖を介して結合した官能基を具備してなり、この官能基が金属と結合し、先のメトキシ基あるいはエトキシ基等が有機物と結合することにより、金属と有機物とを強固に結合させるものである。
本発明の場合、シランカップリング剤によって金属ガラス合金とシリコーンエラストマーを結合する。従って、前述の官能基としては、金属ガラス合金との結合性が良好な官能基を選択することが好ましく、例えば、アミノ基、ビニル基、メチル基のうちのいずれか1種でることが好ましい。
シランカップリング剤により金属ガラス合金粉末とシリコーンエラストマーを強固に結合させるので、金属ガラス合金粉末の表面にシリコーンエラストマーがまんべんなく被覆されることになり、金属ガラス合金の粉末同士の絶縁性を高くすることができ、圧粉磁心の透磁率を高くすることができる。また、シリコーンエラストマーの添加量を可能な範囲で低減させることができ、これにより金属ガラス合金粉末同士が接近して見かけ上の反磁界を低減でき、圧粉磁心の透磁率を高くすることができる。
【0040】
金属ガラス合金は、過冷却液体の温度間隔ΔTxが20K以上であるとともに磁歪定数が1×10-6〜50×10-6の範囲であり、非晶質相を主相とする組織からなるものであって、高い透磁率と高い飽和磁化を示すとともに、低保磁力かつ低鉄損な合金である。またこの金属ガラス合金は非晶質相を主相とする合金であり、結晶化開始温度Txが600℃(873K)程度であるため、Tx以下の温度で加熱することにより、内部応力が緩和されて磁気特性が向上する。従って、約500℃以下の温度で熱処理が可能なシリコーンエラストマーを用いることにより、結晶質相を析出させることなく金属ガラス合金粉末の応力を緩和させることができ、高透磁率で低鉄損の本発明に係る圧粉磁心を構成できる。
【0041】
尚、金属ガラス合金の過冷却液体の温度間隔ΔTxが20K未満であると、非晶質形成能が低下して結晶質相が析出しやすくなり、金属ガラス合金の粉末とシリコーンエラストマーとを固化成形した後に行う熱処理時に、結晶化させずに十分に内部応力を緩和させることが困難になる。ΔTxが20K以上であると、熱処理温度が低くても十分に応力緩和を行うことができ、圧粉磁心の磁気特性を向上させることができる。
【0042】
また金属ガラス合金は組成により磁歪定数が変動するが、磁歪定数が1×10-6以上を示す組成の場合に比較的に高飽和磁化を示す傾向にある。
本発明に係る金属ガラス合金の場合、磁歪定数が高いほど高飽和磁束密度を示す。しかし、磁歪定数が50×10-6を越えると、シリコーンエラストマーによっても歪みの緩和が困難となり、圧粉磁心自体の歪みが大きくなって透磁率が低下し、鉄損が増大する。
【0043】
次に、シリコーンエラストマーの添加量は、圧粉磁心に対して0.05重量%以上5重量%以下の範囲が好ましく、0.1重量%以上3重量%以下の範囲がより好ましい。シリコーンエラストマーの添加量が0.05重量%未満では、金属ガラス合金の粉末を完全に絶縁することができなくなって渦電流損失が増大し、透磁率が低下するので好ましくない。また、シリコーンエラストマーの添加量が5重量%を越えると、金属ガラス合金の粉末表面に厚くシリコーンエラストマーが付着し、合金粉末同士の間隔が広がって反磁界の影響が強まり、透磁率が低下するので好ましくない。
【0044】
また、ステアリン酸アルミニウムの添加量は、圧粉磁心に対して0.1重量%以上5重量%以下の範囲が好ましく、0.1重量%以上3重量%以下の範囲がより好ましい。ステアリン酸アルミニウムの添加量が0.1重量%未満では、合金粉末の潤滑性を高くすることができず、これにより圧粉磁心の相対密度が低下して透磁率が低下するとともに鉄損が増大するので好ましくない。また、ステアリン酸アルミニウムの添加量が5重量%を越えると、加熱成型時にステアリン酸アルミニウムが分解してガス発生が起き、これにより圧粉磁心の相対密度が低下して透磁率が低下するとともに鉄損が増大するので好ましくない。
【0045】
更に、シランカップリング剤の添加量は、圧粉磁心に対して0.1重量%以上2重量%以下の範囲が好ましく、0.5重量%以上2重量%以下の範囲がより好ましい。シランカップリング剤の添加量が0.1重量%未満では、金属ガラス合金とシリコーンエラストマーの密着性が低下し、圧粉磁心の強度が低下するので好ましくない。また、シランカップリング剤を2重量%を越えて添加しても、添加に見合う効果が得られないので好ましくない。
【0046】
本発明の圧粉磁心を構成する金属ガラス合金の粉末は、ΔTx=Tx−Tg(ただしTxは結晶化開始温度、Tgはガラス遷移温度を示す。)の式で表される過冷却液体の温度間隔ΔTxが20K以上であって、Feと、Alと、P、C、Si、Bのうちの1種以上の元素Qとを含み、非晶質相を主相とする組織からなるもので、金属ガラス合金の薄帯が粉砕されて得られたもの、金属ガラス合金の溶湯を回転する冷却ロールに霧状に吹き付けて冷却して得られたもの、金属ガラス合金の溶湯を高圧ガスとともに霧状に吹き出して冷却して得られたもの、あるいは金属ガラス合金の溶湯を水中に霧状に吹き出して冷却して得られたものなどである。この金属ガラス合金の粉末は、上記の非晶質相を主相とする組織からなるので、保磁力が低くなって優れた軟磁気特性を示す。
特に、金属ガラス合金の溶湯を高圧ガスとともに霧状に吹き出して冷却する方法で得られた粉末は、他の方法で得られた粉末よりも形状が球状に近くなって成形性が向上するので、本発明の圧粉磁心の構成材料として好適に用いることができる。
【0047】
また、この金属ガラス合金は、組成によってはΔTxが40K以上、さらには50K以上という顕著な温度間隔を有し、また、比抵抗が1.5μΩ・m以上を有しており、これまでの知見から知られる他の合金からは全く予期されないものであり、室温で優れた軟磁気特性を有しており、これまでの知見に見られない全く新規なものである。
【0048】
また、本発明に係る金属ガラス合金において、過冷却液体の温度間隔ΔTxは溶湯が液体構造を維持したまま原子振動のみが生じている状態であり、この過冷却液体の温度間隔ΔTxの存在が、金属ガラス合金において原子の移動の起こり難い、即ち結晶化しにくい性質を表している。
過冷却液体の温度間隔ΔTxの大きな金属ガラス合金は溶湯を冷却する際に、原子の移動が起こり難いので、溶融状態の溶湯が固化される際に経る過冷却液体状態が非常に広くなる。本発明で用いられる金属ガラス合金は、過冷却液体の温度間隔ΔTxが大きいために、溶融状態から冷却するとき、結晶化開始温度Txの低温側に広い過冷却液体領域を有し、結晶化することなく温度の低下に伴ってこの過冷却液体領域の温度間隔ΔTxを経過したときに、ガラス遷移温度Tgに至って非晶質相を容易に形成する。
従って、冷却速度が比較的遅くても充分に非晶質相を形成することが可能であり、例えば、比較的冷却速度が高い単ロール法などの液体急冷法等により得られる金属ガラス合金の薄帯のほか、鋳造法等によって得られる金属ガラス合金のバルク体等を粉砕することによっても、非晶質相を主相とする金属ガラス合金の粉末が得られる。
【0049】
本発明に係る金属ガラス合金は、20K以上の過冷却液体の温度間隔ΔTxを示し、組成によってはΔTxが30K以上、さらには50K以上という顕著な温度間隔を有し、軟磁性についても室温で優れた特性を有している。
また、この金属ガラス合金は非晶質形成能が高いことから、組織全体を完全な非晶質相とすることができ、従って結晶磁気異方性を持たず、これにより低い保磁力と高い透磁率を示し、またFe、Ni、Co等の磁性元素を多く含むために高い飽和磁化を示す。従って本発明に係る金属ガラス合金からなる圧粉磁心は、透磁率及び飽和磁化が格段に向上し、極めて低い鉄損を示す。
また金属ガラス合金の非晶質形成能が高いことから、シリコーンエラストマーによる圧縮成形可能な温度範囲で熱処理した場合でも結晶質相を析出させることがなく、内部応力を緩和でき、軟磁気特性をより向上させることができる。
【0050】
本発明の圧粉磁心に好適に用いられる金属ガラス合金の一例として、磁性を示すFeと、Alと、非晶質形成能を有するP、C、Bを少なくとも具備してなるものを挙げることができる。また、Ni、Coのいずれか一方または両方をFe置換で添加しても良く、更にP、C、Bに加えてSiを添加したものでもよい。
【0051】
上記の金属ガラス合金の一例として、下記の組成式で表すものを挙げることができる。
Fe100-x1-y1-z1-w1Alx1y1z1w1
ただし、組成比を示すx1、y1、z1、w1は、0原子%≦x1≦10原子%、2原子%≦y1≦15原子%、0原子%<z1≦11.5原子%、4原子%≦w1≦10原子%、70原子%≦(100−x1−y1−z1−w1)≦79原子%、11原子%≦(y1+z1+w1)≦30原子%である。
【0052】
また、上記の金属ガラス合金の別の例として、下記の組成式で表すものを挙げることができる。
(Fe1-a1a1100-x1-y1-z1-w1Alx1y1z1w1
ただし、組成比を示すa1、x1、y1、z1、w1は、0.1≦a1≦0.15、0原子%≦x1≦10原子%、2原子%≦y1≦15原子%、0原子%<z1≦11.5原子%、4原子%≦w1≦10原子%、70原子%≦(100−x1−y1−z1−w1)≦79原子%、11原子%≦(y1+z1+w1)≦30原子%である。
【0053】
更に、上記の金属ガラス合金の他の例として、下記の組成式で表すものを挙げることができる。
Fe100-x1-v1-z1-w1Alx1(P1-b1Sib1v1z1w1
ただし、組成比を示すb1、x1、v1、z1、w1は、0.1≦b1≦0.28、0原子%≦x1≦10原子%、2原子%≦v1≦15原子%、0原子%<z1≦11.5原子%、4原子%≦w1≦10原子%、70原子%≦(100−x1−y1−z1−w1)≦79原子%、11原子%≦(v1+z1+w1)≦30原子%である。
【0054】
更にまた、上記の金属ガラス合金のその他の例として、下記の組成式で表すものを挙げることができる。
(Fe1-a1a1100-x1-v1-z1-w1Alx1(P1-b1Sib1v1z1w1
ただし、組成比を示すa1、b1、x1、v1、z1、w1は、0.1≦a1≦0.15、0.1≦b1≦0.28、0原子%≦x1≦10原子%、2原子%≦v1≦15原子%、0原子%<z1≦11.5原子%、4原子%≦w1≦10原子%、70原子%≦(100−x1−v1−z1−w1)≦79原子%、11原子%≦(v1+z1+w1)≦30原子%である。
【0055】
上記の組成の金属ガラス合金は、合金の融点をTmとしたとき、Tg/Tm≧0.57を示すとともに、飽和磁化σsが180×10-6Wb・m/kg以上を示す。
【0056】
また、FeとAlとP、C、Bとを少なくとも含む上記の金属ガラス合金の好ましい組成範囲は、前記の組成比のうちのx1、y1、z1、w1が、0原子%≦x1≦6原子%、2原子%≦y1≦15原子%、0原子%<z1≦11.5原子%、4原子%<w1≦10原子%、76原子%≦(100−x1−y1−z1−w1)≦79原子%、18原子%≦(y1+z1+w1)≦24原子%となる範囲である。
また、FeとAlとP、C、B、Siとを少なくとも含む上記の金属ガラス合金の好ましい範囲は、前記の組成比のうちのx1、v1、z1、w1が、0原子%≦x1≦6原子%、2原子%≦v1≦15原子%、0原子%<z1≦11.5原子%、4原子%≦w1≦10原子%、76原子%≦(100−x1−v1−z1−w1)≦79原子%、18原子%≦(v1+z1+w1)≦24原子%となる範囲である。
【0057】
上記の好ましい組成範囲の金属ガラス合金においては、Tg/Tm≧0.57を示すとともに、飽和磁化σsが200×10-6Wb・m/kg以上を示す。
【0058】
更に、FeとAlとP、C、Bとを少なくとも含む上記の金属ガラス合金のより好ましい組成範囲は、前記の組成比のうちのx1、y1、z1、w1が、0原子%≦x1≦5原子%、2原子%≦y1≦15原子%、0原子%<z1≦11.5原子%、4原子%≦w1≦10原子%、77原子%≦(100−x1−y1−z1−w1)≦79原子%、18原子%≦(y1+z1+w1)≦22原子%となる範囲である。
更にまた、FeとAlとP、C、B、Siとを少なくとも含む上記の金属ガラス合金のより好ましい組成範囲は、前記の組成比のうちのx1、v1、z1、w1が、0原子%≦x1≦5原子%、2原子%≦v1≦15原子%、0原子%<z1≦11.5原子%、4原子%≦w1≦10原子%、77原子%≦(100−x1−v1−z1−w1)≦79原子%、18原子%≦(v1+z1+w1)≦22原子%となる範囲である。
【0059】
上記のより好ましい組成の金属ガラス合金においては、Tg/Tm≧0.57を示すとともに、飽和磁化σsが210×10-6Wb・m/kg以上を示す。
【0060】
以下に、上記の金属ガラス合金の組成限定理由について説明する。
Feは磁性を担う元素であって、上記の金属ガラス合金に必須の元素である。また、Feの一部をCo、Niのいずれか一方または両方の元素Tで置換しても良い。Fe単独、またはFeと元素Tとの合計の組成比を高くすると、金属ガラス合金の飽和磁化σsを向上できる。
【0061】
Fe単独、またはFeと元素Tとの合計の組成比は、70原子%以上79原子%以下であることが好ましく、76原子%以上79原子%以下であることがより好ましく、77原子%以上79原子%以下であることが更に好ましい。
Fe単独、またはFeと元素Tとの合計の組成比が70原子%未満では、飽和磁化σsが180×10-6Wb・m/kg未満に低下してしまうので好ましくない。また、組成比が79原子%を越えると、合金の非晶質形成能の程度を示すTg/Tmが0.57未満になり、非晶質形成能が低下するので好ましくない。
尚、組成比が76原子%以上であれば合金の飽和磁化σsを200×10-6Wb・m/kg以上にでき、組成比が77原子%以上であれば合金の飽和磁化σsを210×10-6Wb・m/kg以上にでき、圧粉磁心の飽和磁化を向上させることができる。
【0062】
また、Fe置換で元素Tを添加する場合には、上記組成式中の組成比aで示すように、Feの添加量の10〜15%を置換して元素Tを添加することが好ましい。元素Tを添加することにより、合金を構成する原子の充填密度が向上し、原子の再配列が抑制されることにより熱的安定性が向上する。特にCoを添加すると、熱安定性の向上及び融点の低下に伴って非晶質形成能が向上する。
元素Tの添加量がFe量の10%未満では元素Tの添加効果が見られず、添加量がFe量の15%を越えるとFe量が相対的に低下して飽和磁化が低下してしまうので好ましくない。
【0063】
Alは、Feと同様に上記の金属ガラス合金に必須の元素である。Alの組成比xを0原子%以上10原子%以下の範囲とすることにより、合金の非晶質形成能を向上させて組織全体を完全な非晶質相とすることができる。
具体的には、組成比x1が0原子%以上10原子%以下であるときに、合金の非晶質形成能の程度を示すTg/Tmが0.57以上となり、飽和磁化σsが180×10-6Wb・m/kg以上にできる。
またAlは、Feとの間での混合エンタルピーが負であり、Feよりも原子半径が大きく、更にFeよりも原子半径が小さいP、B、Siとともに用いることにより、結晶化し難く、非晶質構造が熱的に安定化した状態となる。
Alの組成比x1は、0原子%以上10原子%以下であることが好ましく、0原子%以上6原子%以下であることがより好ましく、0原子%以上5原子%以下であることが更に好ましい。組成比x1が10原子%を越えると、Fe量が相対的に低下して飽和磁化σsが低下し、またTg/Tmが0.57未満になって非晶質形成能が低下するので好ましくない。
【0064】
また、Fe単独、またはFeと元素Tの合計の組成比が76原子%以上であり、かつAlの組成比x1が0原子%以上6原子%以下の場合に、合金の飽和磁化σsを200×10-6Wb・m/kg以上にできる。
更に、Fe単独、またはFeと元素Tの合計の組成比が77原子%以上であり、かつAlの組成比x1が0原子%以上5原子%以下の場合に、合金の飽和磁化σsを210×10-6Wb・m/kg以上にできる。
【0065】
C、P、B及びSiは、非晶質形成能を高める元素であり、FeとAlにこれらの元素を添加して多元系とすることにより、FeとAlのみの2元系の場合よりも安定して非晶質相が形成される。
特にPはFeと低温(約1050℃)で共晶組成を持つため、組織の全体が非晶質相になるとともに過冷却液体の温度間隔ΔTxが発現しやすくなる。
またPとSiを同時に添加すると、過冷却液体の温度間隔ΔTxがより大きくなって非晶質形成能が向上し、非晶質単相の組織を得る際の製造条件を比較的簡易な方向に緩和できる。
【0066】
Siを無添加とした場合におけるPの組成比y1は、2原子%以上15原子%以下であることが好ましく、5原子%以上15原子%以下であることがより好ましく、7原子%以上13原子%以下であることが最も好ましい。
Pの組成比y1が上記の範囲であれば、過冷却液体の温度間隔ΔTxが発現して合金の非晶質形成能が向上する。
【0067】
PとSiを同時に添加する場合は、PとSiの合計量を示す組成比v1が2原子%以上15原子%以下であることが好ましく、8原子%以上15原子%以下であることがより好ましく、10原子%以上14原子%以下であることが最も好ましい。
PとSiの合計量を示す組成比v1が上記の範囲であれば、過冷却液体の温度間隔ΔTxが向上し、これにより合金の非晶質形成能が向上する。
【0068】
また、PとSiを同時に添加した場合のSiとPとの比を表す組成比b1は、0.1≦b1≦0.28であることが好ましい。組成比bが0.1未満ではSiの添加効果が見られないので好ましくなく、組成比b1が0.28を越えるとSiの量が過剰になって過冷却液体領域ΔTxが消滅するおそれがあるので好ましくない。
PとSiの組成比を示すb1、v1を上記の範囲とすれば、過冷却液体の温度間隔ΔTxを向上させ、非晶質単相となるバルクの大きさを増大させることができる。
【0069】
またBの組成比w1は、4原子%以上10原子%以下であることが好ましく、6原子%以上10原子%以下であることがより好ましく、6原子%以上9原子%以下であることが最も好ましい。
更にCの組成比z1は、0原子%を越えて11.5原子%以下であることが好ましく、2原子%以上8原子%以下であることがより好ましく、2原子%以上5原子%以下であることが最も好ましい。
【0070】
そして、これらの半金属元素C、P、B及びSiの合計の組成比(y1+z1+w1)または(v1+z1+w1)は、11原子%以上30原子%以下であることが好ましく、18原子%以上24原子%以下とすることがより好ましく、18原子%以上22原子%以下とすることが更に好ましい。
半金属元素の合計の組成比が11原子%未満であると、金属ガラス合金の非晶質形成能が低下して非晶質相単相組織を得ることができないので好ましくなく、半金属元素の合計の組成比が30原子%を越えると、特にFeの組成比が相対的に低下し、飽和磁化σsが低下するので好ましくない。
【0071】
また、Fe単独またはFeと元素Tの合計の組成比が76原子%以上のときに、半金属元素C、P、B及びSiの合計の組成比(y1+z1+w1)または(v1+z1+w1)を18原子%以上24原子%以下とすることにより、合金の飽和磁化σsを200×10-6Wb・m/kg以上にできる。
更に、Fe単独またはFeと元素Tの合計の組成比が77原子%以上のときに、半金属元素C、P、B及びSiの合計の組成比(y1+z1+w1)または(v1+z1+w1)を18原子%以上22原子%以下とすることにより、合金の飽和磁化σsを210×10-6Wb・m/kg以上にできる。
【0072】
また、上記の組成に、Geが4原子%以下含有されていてもよく、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Zr及びCrのうち少なくとも1種以上が0〜7原子%含有されていてもよい。
これらのいずれの場合の組成においても、本発明においては、過冷却液体の温度間隔ΔTxは20K以上、組成によっては35K以上が得られる。
また上記の組成で示される元素の他に不可避的不純物が含まれていても良い。
【0073】
次に、本発明の圧粉磁心に好適に用いられる金属ガラス合金の別の例として、磁性を示すFeと、Gaと、非晶質形成能を有するP、C、Bを少なくとも具備してなるものを挙げることができる。また、Ni、Coのいずれか一方または両方をFe置換で添加しても良く、更にP、C、Bに加えてSiを添加したものでもよい。
【0074】
上記の金属ガラス合金は、例えば次の組成式で表すことができる。
(Fe1-a2a2100-x2-v2-z2-w2Gax2(P1-b2Sib2v2z2w2
ただしTはCo、Niのいずれか一方または両方であり、組成比を示すa2、b2、x2、v2、z2、w2は、0≦a2≦0.15、0<b2≦0.8、x2≦20原子%、v2≦22原子%、0原子%≦z2≦10原子%、1原子%≦w2≦20原子%である。
【0075】
前記組成比を示すa2、b2、x2、v2、z2、w2は、0≦a2≦0.15、0.1≦b2≦0.35、0.5原子%≦x2≦15原子%、7原子%≦v2≦20原子%、0原子%≦z2≦9.5原子%、2原子%≦w2≦14原子%であることがより好ましく、0≦a2≦0.1、0.1≦b2≦0.28、0.5原子%≦x2≦15原子%、10原子%≦v2≦15.5原子%、0.5原子%≦z2≦6原子%、4原子%≦w2≦11原子%であることが更に好ましい。
【0076】
また、上記の金属ガラス合金は、以下の組成式で表すこともできる。
(Fe1-a2a2100-x2-v2-z2-w2Gax2v2z2w2
ただしTはCo、Niのいずれか一方または両方であり、組成比を示すa2、x2、v2、z2、w2は、0≦a2≦0.15、x2≦20原子%、v2≦22原子%、0原子%≦z2≦10原子%、1原子%≦w2≦20原子%である。
【0077】
前記組成比を示すa2、x2、v2、z2、w2は、0≦a2≦0.15、0.5原子%≦x2≦15原子%、7原子%≦v2≦20原子%、0原子%≦z2≦9.5原子%、2原子%≦w2≦14原子%であることがより好ましく、0≦a2≦0.1、0.5原子%≦x2≦15原子%、10原子%≦v2≦15.5原子%、0.5原子%≦z2≦6原子%、4原子%≦w2≦11原子%であることが更に好ましい。
【0078】
Gaは、上記の金属ガラス合金に必須の元素であり、特にGaの組成比x2を20原子%以下とすることにより、過冷却液体の温度間隔ΔTxを20K以上にできる。またGaは、Feとの間での混合エンタルピーが負であり、Feよりも原子半径が大きく、更にFeよりも原子半径が小さいP、B、Siとともに用いることにより、結晶化し難く、非晶質構造の熱的に安定化した状態となる。
更にGaは金属ガラス合金のキュリー温度を高め、各種磁気特性の熱安定性を向上させることができる。
Gaの組成比x2は、20原子%以下であることが好ましく、0.5原子%以上15原子%以下であることがより好ましい。組成比x2が20原子%を越えると、Fe量が相対的に低下して飽和磁化が低下し、また過冷却液体の温度間隔ΔTxが消失するので好ましくない。
【0079】
Feは磁性を担う元素であって、Gaと同様に本発明の金属ガラス合金に必須の元素である。また、Feの一部をCo、Niのいずれか一方または両方の元素Tで置換しても良い。
【0080】
元素Qは、非晶質形成能を有する元素であり、FeとGaに元素Qを添加して多元系とすることにより、FeとGaのみの2元系の場合と異なり安定して非晶質相が形成される。
元素QのなかでもPは特に非晶質形成能が高いので、このPを必ず含み、それ以外のB、C、Siのうちのいずれか1種以上を含むようにすると、組織の全体が非晶質相になるとともに過冷却液体の温度間隔ΔTxが発現しやすくなる。
またPとSiを同時に添加すると、過冷却液体の温度間隔ΔTxをより向上させて非晶質形成能を高くできる。
【0081】
PとSiを同時に添加する場合は、PとSiの合計量を示す組成比v2を20原子%以下とすることが好ましく、8原子%以上19原子%以下とすることがより好ましく、9.5原子%以上15.5原子%以下とすることが最も好ましい。
PとSiの合計量を示す組成比v2が上記の範囲であれば、過冷却液体の温度間隔ΔTxを向上させ、非晶質形成能を高くできる。
【0082】
PとSiを同時に添加した場合のSiとPとの比を表す組成比b2は、組成比v2が20原子%以下のときに0<b2≦0.8とすることが好ましく、組成比v2が8原子%以上19原子%以下のときに0.1≦b2≦0.35とすることが好ましく、組成比v2が9.5原子%以上15.5原子%以下のときに0.1≦b2≦0.28とすることが好ましい。
組成比b2が0.8を越えるとSiの量が過剰になり、過冷却液体領域ΔTxが消滅するおそれがあるので好ましくない。
なお、このときの金属ガラス合金におけるSiの濃度を示すと、好ましい場合に16原子%以下、より好ましい場合に0.8原子%以上6.65原子%以下、最も好ましい場合に0.95原子%以上4.34原子%以下となる。
PとSiの組成比を示すb2、v2を上記の範囲とすれば、過冷却液体の温度間隔ΔTxを向上させ、非晶質形成能を高めることができる。
【0083】
なおSiの組成比b2を0としてもよい。即ち、元素Qを、P、B、Cのうちのいずれか1種以上の元素としてもよい。
この場合のPの組成比v2は、20原子%以下とすることが好ましく、8原子%以上19原子%以下とすることがより好ましく、9.5原子%以上15.5原子%以下とすることが最も好ましい。
Pの組成比v2が上記の範囲であれば、過冷却液体の温度間隔ΔTxを向上させ、非晶質形成能を高くできる。
【0084】
またCの組成比z2は、0原子%以上10原子%以下であることが好ましく、0原子%以上9原子%以下であることがより好ましく、1原子%以上7原子%以下であることが最も好ましい。
更にBの組成比w2は、2原子%以上20原子%以下であることが好ましく、2原子%以上10原子%以下であることがより好ましく、4原子%以上10原子%以下であることが最も好ましい。
【0085】
また、上記の組成に、Geが4原子%以下含有されていてもよく、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Zr及びCrのうち少なくとも1種以上が0〜7原子%含有されていてもよい。
これらのいずれの場合の組成においても、本発明においては、過冷却液体の温度間隔ΔTxは、35K以上、組成によっては50K以上が得られる。
また上記の組成で示される元素の他に不可避的不純物が含まれていても良い。
【0086】
次に、本発明の圧粉磁心に好適に用いられる金属ガラス合金の他の例として、Fe、Co、Niのうちの1種又は2種以上の元素を主成分とし、Zr、Nb、Ta、Hf、Mo、Ti、V、Cr、Wのうちの1種又は2種以上の元素MとBを含んでなるものを例示できる。
【0087】
この金属ガラス合金の組成式は次の通りである。
(Fe1-a3-b3Coa3Nib3100-x3-y3x3y3
なお、組成比を示すa3、b3、x3、y3は、0≦a3≦0.29、0≦b3≦0.43、5原子%≦x3≦20原子%、10原子%≦y3≦22原子%である。
また、前記の組成式において、Zrを必ず含み、ΔTxが25K以上であることが好ましい。
また、この金属ガラス合金のΔTxが60K以上であることがより好ましい。
更に、組成比を示すa3、b3が、0.042≦a3≦0.29、0.042≦b3≦0.43の関係にされてなることがより好ましい。
【0088】
また、この金属ガラス合金は、下記の組成式で表されるものであっても良い。(Fe1-a3-b3Coa3Nib3100-x3-y3-z3x3y3z3
なお、組成比を示すa3、b3、x3、y3、z3は、0≦a3≦0.29、0≦b3≦0.43、5原子%≦x3≦20原子%、10原子%≦y3≦22原子%、0原子%≦z3≦5原子%であり、RはRu、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Al、Si、Ge、C、Pのうちの1種又は2種以上の元素である。
また、この金属ガラス合金のΔTxが60K以上であることがより好ましい。
更に、組成比を示すa3、b3が、0.042≦a3≦0.29、0.042≦b3≦0.43の関係にされてなることがより好ましい。
【0089】
また、上記の各組成式における元素Mが(M'1-cM''c)で表され、M'がZrまたはHfのうちの1種または2種、M''がNb、Ta、Mo、Ti、V、Cr、Wのうちの1種または2種以上からなる元素であり、組成比cが0≦c≦0.6であってもよい。
更に、前記組成において組成比cが0.2≦c≦0.4の範囲であってもよく、0≦c≦0.2の範囲であってもよい。
更に前記の各組成式において、組成比a3、b3が、0.042≦a3≦0.25、0.042≦b3≦0.1であってもよい。
【0090】
この金属ガラス合金の主成分であるFeとCoとNiは磁性を担う元素であり、高い飽和磁束密度と優れた軟磁気特性を得るために重要である。また、Feを多く含む成分系においてΔTxが大きくなり易く、Feを多く含む成分系においてCoの組成比とNiの組成比を適正な値とすることで、ΔTxの値を60K以上にすることができる。具体的には、50K〜60KのΔTxを確実に得るためには、Coの組成比a3を0≦a3≦0.29とし、Niの組成比b3を0≦b3≦0.43の範囲とすることが好ましく、また60K以上のΔTxを確実に得るためには、Coの組成比a3を0.042≦a3≦0.29とし、Niの組成比b3を0.042≦b3≦0.43の範囲とすることが好ましい。
また、前記の範囲内において、良好な軟磁気特性を得るためには、Coの組成比a3を0.042≦a3≦0.25の範囲とすることが好ましく、高い飽和磁束密度を得るためには、Niの組成比b3を0.042≦b3≦0.1の範囲とすることがより好ましい。
【0091】
元素Mは、非晶質相を生成させるために有効な元素であり、元素Mの組成比x3は5原子%以上20原子%以下の範囲が好ましい。更に、高い磁気特性を得るために組成比x3を5原子%以上15原子%以下としても良い。これら元素Mのうち、特にZrまたはHfが有効である。
ZrまたはHfは、その一部をNb等の元素に置換できるが、置換する場合の組成比cを、0≦c≦0.6の範囲とすると高いΔTxを得ることができ、特に0.2≦c≦0.4の範囲とするとΔTxを80以上とすることができる。
【0092】
Bは、高い非晶質形成能があり、本発明ではBの組成比y3を10原子%以上22原子%以下の範囲としている。組成比y3が10原子%未満であると、ΔTxが消滅するために好ましくなく、22原子%を越えると非晶質相が形成できなくなるために好ましくない。より高い非晶質形成能と良好な磁気特性を得るためには、組成比y3を16原子%以上20原子%以下とすることがより好ましい。
【0093】
この金属ガラス合金に更に、元素Rで示されるRu、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Al、Si、Ge、C、Pのうちの1種又は2種以上の元素を添加することもできる。
本発明ではこれらの元素Rの組成比z3を0原子%以上5原子%以下の範囲とすることができる。これらの元素Rは主に耐食性を向上させる目的で添加するもので、この範囲を外れると軟磁気特性が低下する。また、この範囲を外れると非晶質形成能が劣化するために好ましくない。
【0094】
また、上記の組成において原子Bの50%以下をCで置換しても良い。
上記のいずれの場合の組成においても本発明に係る金属ガラス合金では、20K以上、組成によっては60K以上の過冷却液体の温度間隔ΔTxが得られる。
【0095】
次に、本発明の圧粉磁心に好適に用いられる金属ガラス合金の他の例として、Feを主成分とし、他の金属と半金属とを含有したものを挙げることができる。このうち半金属元素としては、PとSiが必ず用いられ、しかもC、B、Geのうちの少なくとも1種以上の元素が用いられる。このとき原子%におけるSiとPの比率は、0<Si/(Si+P)≦0.4を満たしており、好ましくは0.1<Si/(Si+P)≦0.35であり、より好ましくは0.11<Si/(Si+P)≦0.28である。
他の金属とは、IIIB族及びIVB族の金属元素のうちの少なくとも1種のものが好適に用いられる。例えば、Al、Ga、In及びSnのうちの少なくとも1種以上の元素が用いられる。
【0096】
より具体的に例示すると、Al:1〜10原子%、Ga:0.5〜4原子%、P:15原子%以下、C:7原子%以下、B:2〜10原子%、Si:15原子%以下、Fe:残部であって、不可避不純物が含有されていても良い金属ガラス合金が挙げられる。
また、別の具体例として、Al:1〜10原子%、Ga:0.5〜4原子%、P:15原子%以下、C:7原子%以下、B:2〜10原子%、Fe:残部であって、不可避不純物が含有されていても良い金属ガラス合金を挙げることができる。
【0097】
Fe-Al-Ga-P-C-B系の金属ガラスにSiを15原子%以下添加することにより、過冷却液体の温度間隔ΔTxを向上させ、非晶質相を主相とする金属ガラス合金が得られる。
さらに、SiのPに対する添加比率が0<Si/(Si+P)≦0.4を満たすようにすることにより、過冷却液体の温度間隔ΔTxを向上させ、非晶質相を容易に形成させることができるその結果、室温で優れた軟磁気特性を有する金属ガラス合金を得ることができる。
【0098】
Siの含有量が多すぎると過冷却液体領域ΔTxが消滅するので、15原子%以下が好ましい。また、より大きな過冷却液体の温度間隔ΔTxを得るには、Siの 添加量が原子%で0.5%〜15%の範囲であることが好ましく、0.5〜4%の範囲であることがより好ましい。なおSiの添加量を0原子%としてもよい。
上記Pの添加量は、15原子%以下であることが好ましいが、5〜12原子%の範囲であることがより好ましく、7〜12原子%%の範囲であることが最も好ましい。
特にSiのPに対する添加比率が0<Si/(Si+P)≦0.4を満たす場合は、Siの添加量が原子%で1.5〜3.5%の範囲、Pの添加量が原子%で7〜9%の範囲であることが好ましい。
【0099】
また上記Cの添加量は7原子%以下であることが好ましく、2〜7原子%の範囲であることがより好ましく、5〜7原子%の範囲であることが最も好ましい。また上記の組成に、Geが4原子%以下含有されていてもよく、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Zr及びCrのうち少なくとも1種以上が0〜7原子%含有されていてもよく、0〜10原子%のNiと0〜30原子%のCoのうち少なくとも一方が含有されていてもよい。
これらのいずれの場合の組成においても、本発明においては、過冷却液体の温度間隔ΔTxは、20K以上、組成によっては50K以上が得られる。
【0100】
次に、本発明の圧粉磁心の製造方法を図面を参照して説明する。
本発明の圧粉磁心の製造方法は、過冷却液体の温度間隔ΔTxが20K以上であって、Al、Gaのいずれか一方または両方の元素Xと、P、C、Si、Bのうちの1種以上の元素Qと、Feとを含み、非晶質相を主相とする組織からなる金属ガラス合金の粉末を製造する粉末製造工程と、上記の金属ガラス合金の粉末にシリコーンエラストマー、ステアリン酸アルミニウム及びシランカップリング剤を加えて混合し、この混合物を(Tx)K以下で圧縮成形して磁心前駆体を形成する成形工程と、上記磁心前駆体を、(Tg−170)K以上(Tg)K以下で熱処理して金属ガラス合金粉末のの内部応力を緩和する熱処理工程とからなる。
【0101】
粉体製造工程では、例えば、金属ガラス合金の薄帯(金属ガラス合金薄帯)を粉砕、分級することにより金属ガラス合金の粉末を製造する。
金属ガラス合金薄帯は、上述の組成の金属ガラス合金の溶湯を、回転する冷却ロールの冷却面に噴出させて急冷するいわゆるロール急冷法により製造される。次に、得られた金属ガラス合金薄帯を粉砕して粉末とする。粉砕には、ロータミル、ボールミル、ジェットミル、アトマイザー、摩砕機等を用いることができる。
【0102】
次に、得られた粉砕体を分級して、所定の平均粒径を有する粉末とする。粉末の平均粒径は、30μm以上、より好ましくは45μm以上300μm以下の範囲がよい。平均粒径が30μm未満であると、粉砕の際にロータミル等からのコンタミネーションが起こる可能性があるので好ましくない。
また、平均粒径が300μmを越えると、粉末を構成する粒子が粗くなり、シリコーンエラストマーを混合して圧縮成形した際に金属ガラス合金粉末同士が直接に接触し、渦電流損失が大きくなって鉄損が増大するおそれがあるので好ましくない。尚、分級には、ふるい、振動ふるい、音波ふるい、気流式分級機等を用いることができる。
【0103】
また、粉体製造工程の他の例としては、上記組成の金属ガラス合金の溶湯を、回転する冷却ロールに霧状に吹き付けることによっても、金属ガラス合金の粉末を得ることができる。この場合は、溶湯を冷却ロールに霧状に吹き付けるだけで、粉末を容易に得ることができる。このときの粉末の平均粒径の制御は、冷却ロールの回転速度、溶湯の温度、噴霧条件等を適宜調整することにより制御できる。
また、上記組成の金属ガラス合金の溶湯を高圧ガスとともに霧状に吹き出して冷却するガスアトマイズ法や、上記組成の金属ガラス合金の溶湯を水中に霧状に吹き出して冷却する水アトマイズ法によっても得ることができる。
【0104】
上記のガスアトマイズ法は、例えば、金属ガラス合金の溶湯を噴霧ノズル付きのるつぼに充填し、溶湯の温度を金属ガラス合金の融点より140℃以上高い温度に維持した状態で、溶湯を5.9MPa以上の圧力の窒素、アルゴン等の不活性ガスと共に噴霧ノズルから霧状に噴霧する。噴霧は、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中に噴霧することが合金の酸化を防止できる点で好ましい。
噴霧された霧状の溶湯は直ちに冷却され、ほぼ球状の粒子からなる粉末が得られる。得られた粉末は、噴霧により瞬時に冷却されたものであるため、その組織の大部分が非晶質相を主相とした組織となる。
特に、本発明に係る金属ガラス合金は、過冷却液体の温度間隔ΔTxが20K以上であり、非晶質相の形成能に優れているので、従来のFeSiB系合金では不可能であったガスアトマイズ法による非晶質合金の製造が可能になった。
【0105】
ガスアトマイズ法により得た金属ガラス合金粉末を構成する粒子は、ほぼ球体に近い形状であり、合金粉末の充填密度が向上して圧粉磁心の相対密度を高くすることができる。この粉末の平均粒径は、10μm以上150μm以下の範囲が好ましく、15μm以上150μm以下の範囲がより好ましい。
平均粒径が2μm未満では、圧粉磁心の相対密度が小さくなって透磁率が低くなるので好ましくない。また、平均粒径が100μmを越えると、粉末を構成する粒子が粗くなり、シリコーンエラストマーを混合して圧縮成形した際に金属ガラス合金粉末同士が直接に接触し、渦電流損失が大きくなって鉄損が増大するおそれがあるので好ましくない。
尚、噴霧時の溶湯温度、ガス圧力等を制御することによって粉末の平均粒径をある程度調整できるが、より精密に平均粒径を調整するには、ふるい、振動ふるい、音波ふるい、気流式分級機等の分級手段を用いることが好ましい。
【0106】
次に上記の金属ガラス合金の粉末にシリコーンエラストマー、ステアリン酸アルミニウム及びシランカップリング剤を加えて混合し、この混合物を(Tx)K以下で圧縮成形して磁心前駆体を形成する成形工程を行う。混合物中の絶縁材のシリコーンエラストマー、ステアリン酸アルミニウム及びシランカップリング剤の混合率は、上述した範囲とすることが好ましい。
また、圧縮成形する前に混合物に含まれる溶剤、水分等を蒸発させて、金属ガラス合金粉末の表面にシリコーンエラストマーからなる層を形成させることが望ましい。
【0107】
次にこの混合物を圧縮成形して磁心前駆体を製造する。磁心前駆体の製造には、図2に示すような金型10を用いる。この金型10は、中空円筒型のダイ11と、このダイ11の中空部11aに挿入される上パンチ12および下パンチ13からなる。
上パンチ12の下面には円柱状の突起12aが設けられており、これら上パンチ12、下パンチ13及びダイ11が一体化して、金型10の内部に円環状の型が形成される。そしてこの金型10に上述の混合物を充填する。
【0108】
次に、金型10に充填された混合物を、一軸圧力を印加しつつ所定の温度まで加熱して圧縮成形する。
図3には、圧縮成形する際に用いて好適な放電プラマ焼結装置の一例の要部を示す。この例の放電プラズマ焼結装置は、混合物を充填した金型10と、金型10の下パンチ13を支え、後述するパルス電流を流す際の一方の電極ともなるパンチ電極14と、金型10の上パンチ12を下側に押圧し、パルス電流を流す他方の電極となるパンチ電極15と、金型10内の混合物の温度を測定する熱電対17を主体として構成されている。
そして、この放電プラズマ焼結装置は、チャンバ18内に収納されており、このチャンバ18は図示略の真空排気装置および雰囲気ガスの供給装置に接続されていて、金型10に充填される混合物を不活性ガス雰囲気などの所望の雰囲気下に保持できるように構成されている。
なお、図3では通電装置が省略されているが、上下のパンチ12、13およびパンチ電極14、15には別途設けた通電装置が接続されていてこの通電装置からパルス電流をパンチ12、13およびパンチ電極14、15を介して通電できるように構成されている。
【0109】
そして、混合物が充填された金型10を放電プラズマ焼結装置に設置し、チャンバ18の内部を真空引きするとともに、パンチ12、13で上下から一軸圧力Pを混合物に印加すると同時に、パルス電流を印加して混合物を加熱しつつ圧縮成形する。
この放電プラズマ焼結処理においては、通電電流により混合物を所定の速度で素早く昇温することができ、圧縮成形の時間を短くすることができるので、金属ガラス合金の非晶質相を維持したまま圧縮成形するのに適している。
【0110】
本発明において、上記の混合物を圧縮成形する際の温度は、(Tx)K以下とすることができる。シリコーンエラストマーの溶融による金型10からの漏出を防止するとともに金属ガラス合金の結晶化を防止するには(Tx)K以下とすることが必要である。シリコーンエラストマーがしみ出ると、圧粉磁心中のシリコーンエラストマーの含有量が低下して圧粉磁心の比抵抗が低下し、高周波帯域における透磁率が低下してしまう。
(Tx)K以下の温度範囲で混合物を圧縮成形すれば、絶縁材が適度に軟化するので、金属ガラス合金の粉末を結着させて混合物を所定の形状に成形することができる。
【0111】
また圧縮成形の際に混合物に印加する一軸圧力Pについては、圧力が低すぎると圧粉磁心の密度を高くすることができず、緻密な圧粉磁心を形成できなくなる。また、圧力が高すぎるとシリコーンエラストマーが漏出して圧粉磁心の比抵抗が低下し、高周波帯域における透磁率が低下してしまう。従って一軸圧力Pは、シリコーンエラストマーの種類と金属ガラス合金の組成によって異なるが、400MPa以上2500MPa以下とするのが好ましく、500MPa以上2000MPa以下とするのがより好ましい。
このようにして円環状の磁心前駆体が得られる。
【0112】
シリコーンエラストマーは弾性を有するため、硬化応力が小さく、金属ガラス合金粉末に残留する内部応力が小さくなる。このため、磁歪の影響が取り除かれて金属ガラス合金の軟磁気特性が向上する。これにより、圧粉磁心のコアロスを大幅に低減させることができる。
【0113】
次に上記の磁心前駆体を熱処理して磁心前駆体の内部応力を除去する熱処理工程を行う。磁心前駆体を所定の温度範囲で熱処理すると、磁心前駆体に含まれる金属ガラス合金粉末の内部応力を除去することができ、軟磁気特性に優れた圧粉磁心を製造することができる。
熱処理の温度は、(Tg−170)K以上(Tg)K以下の範囲が好ましく、(Tg−150)K以上(Tg)K以下の範囲がより好ましく、(Tg−100)K以上(Tg)K以下の範囲が最も好ましい。
熱処理温度が(Tg−170)K未満では、金属ガラス合金の内部応力を十分に除去することができないので好ましくなく、熱処理温度が(Tg)Kを越えると、熱処理時間が長くなって金属ガラス合金が結晶化してしまうので好ましくない。
また、シリコーンエラストマーを用いた場合における圧縮成形及び熱処理の雰囲気は、真空雰囲気あるいは窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気とすることが好ましく、特に窒素ガス雰囲気とすることがより好ましい。
このように圧縮成形及び熱処理をすることにより、本発明の円環状の圧粉磁心が得られる。
【0114】
上記の製造方法により得られた圧粉磁心は、金属ガラス合金の粉末を含むものであるから、室温で優れた軟磁性特性を有し、また熱処理によってより良好な軟磁気特性を示す。
このため、優れたSoft magnetic特性(軟磁気特性)を有する材料として、この圧粉磁心を種々の磁気素子の磁心として適用することができ、従来材に比べて優れた軟磁気特性を有する磁心を得ることができる。
【0115】
尚、上記説明では、金属ガラス合金の粉末とシリコーンエラストマーを含む混合物を放電プラズマ焼結装置により圧縮成形する方法を用いたが、これに限らず、通常の粉末成形法、ホットプレス法、押し出し法などの方法により圧縮成形することによっても本発明の圧粉磁心を得ることができる。
【0116】
また、上記説明では、金型を用いて円環状の圧粉磁心を製造する方法を説明したが、これに限られず、バルク状の成形体を製造し、これを切削加工して、円環状、棒状、平面視略E字状、平面視略コ字状等の形状に切り出すことにより種々の形状の圧粉磁心を製造しても良い。
【0117】
実施形態の圧粉磁心によれば、シリコーンエラストマーからなる結着剤を備えており、このシリコーンエラストマーはシリコーンレジンよりも圧縮成形性に優れ、その成形温度もシリコーンレジンの場合よりも低いので、比較的低温で固化成形することにより高い強度を有する圧粉磁心を構成できる。
また、シリコーンエラストマーは圧粉磁心内部でも十分な弾性を示すので、1×10-6〜50×10-6の磁歪定数を示す金属ガラス合金を用いた場合でも、歪みを緩和させることができ、圧粉磁心内部の応力を緩和して高透磁率で低鉄損の圧粉磁心を構成することができる。
更に、金属ガラス合金は(Tg−170)K以上(Tg)K以下の温度で熱処理されることにより、結晶質相を析出させることがなく応力緩和をすることができ、高透磁率で低鉄損の圧粉磁心を構成できる。
更に、ステアリン酸アルミニウムからなる潤滑剤が添加されているので、成形時に金属ガラス合金粉末同士が相互に滑りやすくなって圧粉磁心の相対密度が向上し、透磁率を高めて鉄損を低下させることができる。
更に、シランカップリング剤が添加されているので、金属ガラス合金粉末とシリコーンエラストマーとの密着性が向上することによりシリコーンエラストマーの添加量を低減させることができ、これにより金属ガラス合金粉末同士が接近して見かけ上の反磁界を低減でき、透磁率を高くできる。
また、実施形態の圧粉磁心において、比抵抗が1.5μΩ・m以上の金属ガラス合金を用いたものにあっては、高周波における金属ガラス合金粒子内の渦電流損失が低減され、より鉄損が低い圧粉磁心を構成することが可能になる。
【0118】
また、実施形態の圧粉磁心の製造方法によれば、混合物を(Tx)K以下の範囲で圧縮成形するので、金属ガラス合金の結晶化を防ぐとともに金属ガラス合金粉末をシリコーンエラストマーで結着させて固化することができ、高透磁率で低鉄損な圧粉磁心を製造することができる。
【0119】
また、ガスアトマイズ法により得られた金属ガラス合金粉末は球状の粒子からなるので、この金属ガラス合金粉末を圧粉磁心に用いると、合金粉末の充填密度が向上して圧粉磁心の相対密度が高くなり、高透磁率で低鉄損の圧粉磁心を得ることができる。
【0120】
次に、本発明の実施形態の別の例として、金属ガラス合金とからなるコアに、導体を埋め込んで構成したインダクタについて説明する。
【0121】
図4に、このインダクタの一例を示す。図4に示すインダクタ21は、金属ガラス合金とシリコーンエラストマーとステアリン酸アルミニウムとシランカップリング剤が混合されて固化成形されてなるコア22に、導体23が埋め込まれて構成されている。
導体23は例えば銅線等からなり、端子部23a、23bとコイル部23cとから構成されている。コイル部23cはコア22の内部に埋め込まれるとともに端子部23a、23bはコア22の一面から突き出されている。
コア22は断面Aから明らかなように、コイル部23cを構成する導体の間にまでコア22の構成材料が回り込んでいて、コア22とコイル部23cの間に空隙が全く存在しない状態になっている。
導体23の表面には例えばポリイミド等の絶縁膜が形成されていて、この絶縁膜によって導体23とコア22が絶縁されている。
【0122】
コア22は、前述の圧粉磁心と同様に、ΔTx=Tx−Tg(ただしTxは結晶化開始温度、Tgはガラス遷移温度を示す。)の式で表される過冷却液体の温度間隔ΔTxが20K以上であって、Al、Gaのいずれか一方または両方の元素Xと、P、C、Si、Bのうちの1種以上の元素Qと、Feとを含む非晶質相を主相とする組織からなる金属ガラス合金の粉末に、シリコーンエラストマーからなる結着剤とステアリン酸アルミニウムからなる潤滑剤とが添加され、圧縮成形されて固化成形された後、熱処理されてなるものである。熱処理温度は390℃〜470℃以下の範囲が好ましい。また金属ガラス合金の磁歪定数が1×10-6〜50×10-6の範囲であることが好ましい。更にシランカップリング剤が添加されていても良い。
【0123】
従ってこのインダクタ21は、高透磁率で低鉄損な圧粉磁心と同じ構成のコア22に導体23が埋め込まれて構成されており、導体23のコイル部23cとコア22との間には空隙が一切ないため、実質的に占積率が向上し、またギャップがないため、コイル部23cに通電して発生した磁界が空間に漏れることなくコア22に印加させることが可能であり、優れたインダクタンス及びQ値を発現させることができる。
【0124】
このインダクタ21は、例えば、金属ガラス合金粉末とシリコーンエラストマーとステアリン酸アルミニウムとシランカップリング剤とを混合して金型に充填し、更に絶縁膜で覆われたコイル部を有する導体を金型内に配置し、前述の圧粉磁心の製造方法と同様に圧縮成形することにより製造できる。
【0125】
圧縮成形時に金属ガラス合金粉末やシリコーンエラストマー等がコイル部の隙間に回り込み、その状態で金属ガラス合金等が圧縮成形されるので、コイル部とコアとの空隙が完全に埋めることができる。
また、熱処理が390℃以上470℃以下で行われるため、コイル部に形成されたポリイミド等からなる絶縁膜が損傷を受けることがなく、コアと導体とが完全に密着した状態でコアと導体との絶縁性を確保することができる。
【0126】
また図5には、トランスの一例を示す。図5に示すトランス31は、金属ガラス合金とシリコーンエラストマーとステアリン酸アルミニウムとシランカップリング剤が混合されて固化成形されてなるコア32に、1次導体23と2次導体24とが埋め込まれて構成されている。
1次導体33は例えば銅線等からなり、入力端子部33a、33bと1次コイル部33cとから構成されている。1次コイル部33cはコア32の内部に埋め込まれるとともに入力端子部33a、33bはコア32の一面から突き出されている。
また2次導体34も1次導体33と同様に例えば銅線等からなり、出力端子部34a、34bと2次コイル部34cとから構成されている。2次コイル部34cは1次コイル部33cから離間された状態でコア32の内部に埋め込まれるとともに出力端子部34a、34bはコア32の他面から突き出されている。
【0127】
このトランス31のコア32は、図4のインダクタ21と同様に、1次、2次コイル部33c、34cをそれぞれ構成する導体の間にまでコア32の構成材料が回り込んでいて、コア32と1次、2次コイル部33c、34cの間に空隙が全く存在しない状態になっている。
1次、2次導体33、34の表面には例えばポリイミド等の絶縁膜が形成されていて、この絶縁膜によって1次、2次導体33、34とコア32が絶縁されている。
【0128】
コア32は、前述の圧粉磁心と同様に、ΔTx=Tx−Tg(ただしTxは結晶化開始温度、Tgはガラス遷移温度を示す。)の式で表される過冷却液体の温度間隔ΔTxが20K以上であって、Al、Gaのいずれか一方または両方の元素Xと、P、C、Si、Bのうちの1種以上の元素Qと、Feとを含む非晶質相を主相とする組織からなる金属ガラス合金の粉末に、シリコーンエラストマーからなる結着剤とステアリン酸アルミニウムからなる潤滑剤とが添加され、圧縮成形されて固化成形された後、熱処理されてなるものである。熱処理温度は390℃〜470℃以下の範囲が好ましい。また金属ガラス合金の磁歪定数が1×10-6〜50×10-6の範囲であることが好ましい。更にシランカップリング剤が添加されていても良い。
【0129】
従ってこのトランス31は、高透磁率で低鉄損な圧粉磁心と同じ構成のコア32に1次、2次導体33、34が埋め込まれて構成されており、1次、2次コイル部33c、34cとコア32との間には空隙が一切ないため、1次コイル部33cに通電して発生した磁界が空間に漏れることなくコア32を介して2次コイル部34cに印加させることが可能であり、優れた変換効率及びQ値を発現させることができる。
【0130】
このトランス31の製造方法は、1次導体及び2次導体を、金属ガラス合金等が充填された金型内に配置すること以外は、前述のインダクタ21と同様にして製造することができる。
【0131】
【実施例】
「実験例1:金属ガラス合金の特性」
Fe及びAlと、Fe-C合金、Fe-P合金、B及びSiを原料としてそれぞれ所定量秤量し、減圧Ar雰囲気下においてこれらの原料を高周波誘導加熱装置で溶解し、種々の組成のインゴットを作製した。このインゴットを溶湯るつぼ内に入れて溶解し、溶湯るつぼの溶湯ノズルから合金溶湯を滴下するとともに、別に設けたガス噴霧器からアルゴンガス流を噴射して合金溶湯を霧状にし、この霧状の合金溶湯を急冷させることにより、粒径が1〜150μmの範囲の金属ガラス合金の粉末を得た。
【0132】
得られた金属ガラス合金の粉末の組成は、Fe100-x-rAlx(P0.620.10.35Si0.13)rなる組成(但し、xは0〜8原子%、rは18〜28原子%)であった。なお、前記組成式中のrは、P、C、B、Siの合計の組成比を示すものであり、上述した組成比(v1+z1+w1)に相当する。
上記の各合金のうち、Fe77Al19.232.27.7Si2.87なる組成の金属ガラス合金について、X線回折法により結晶構造の解析を行った。結果を図6に示す。また、Fe77Al19.232.27.7Si2.87なる組成の合金粉末を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。図7にSEM写真を示す。
更に、Fe77Al19.232.27.7Si2.87なる組成の合金粉末をふるい分けし、DSC測定(Differential scanning caloriemetry:示差走査熱量測定)を行い、ガラス遷移温度Tg及び結晶化開始温度Txを測定した。尚、ふるい分けの範囲は、62〜105μm、25〜62μm、25μm以下の3通りの範囲に分けた。また同時に、単ロール法で製造した同じ組成の合金薄帯についてもDSC測定を行った。これらの結果を図8に示す。尚、DSC測定の際の昇温速度は0.67K/秒であった。
【0133】
また、得られた金属ガラス合金の粉末について、磁歪定数(λs)を測定した。磁歪定数(λs)の組成依存性を図9に示す。
なお、図9の三角組成図中のプロットの添え数字は、磁歪定数(λs)の値を示すものであり、更に図9には等値線を記入しており、これらの線の近傍に付した数字はこの等値線の値を示すものである。
【0134】
図6から明らかなように、Fe77Al19.232.27.7Si2.87なる組成の金属ガラス合金の粉末のX線回折パターンはブロードなパターンを示しており、非晶質相を主体とする組織を有していることがわかる。
また、図7に示すように、得られた粉末はほぼ球状の粒子から構成されていることがわかる。図7で見る限り、粒子の粒径は10μm以下から100μm程度の範囲であることがわかる。
【0135】
また、図8に示すように、ふるい分けにより分別された合金のDSC曲線は、どの粒径範囲のものでも大きな差はなく、また、単ロール法により得られた合金薄帯と合金粉末との間にも差は見られない。従って、粒径の違いや製造方法の違いによっては、熱特性の変化が見られないことがわかる。尚、いずれの試料でも、ガラス遷移温度Tgは774K(501℃)であり、結晶化開始温度Txは811K(538℃)であり、ΔTxは37Kであった。
更に図9に示すように、Feの組成比が増加し、かつAlの組成比が低下するにつれて磁歪定数(λs)が高くなっている。特に、Feが75原子%、Alが6原子%以下の範囲で磁歪定数(λs)が20×10-6以上を示していることがわかる。
【0136】
一般に、磁性元素であるFeの組成比が向上すると飽和磁化が増大することから、圧粉磁心にはFe濃度ができる限り高い金属ガラス合金を用いることが好ましい。しかし、Feの組成比の増大により磁歪定数(λs)も高くなるため、従来の圧粉磁心ではFeの組成比が高い金属ガラス合金の適用が困難であった。本発明の圧粉磁心では、圧粉磁心内部に生じる歪みを、弾性に富むシリコーンエラストマーにより緩和できるため、飽和磁化の高い金属ガラス合金を使用することが可能になった。
【0137】
「実験例2:熱処理による金属ガラス合金の応力緩和及び圧粉磁心の結着剤の選定」
Fe、Al、Fe-C合金、Fe-P合金、B、Siを原料としてそれぞれ所定量秤量し、減圧Ar雰囲気下においてこれらの原料を高周波誘導加熱装置で溶解して合金インゴットを作製した。この合金インゴットをるつぼ内に入れて溶解し、減圧Ar雰囲気下でるつぼのノズルから回転しているロールに溶湯を吹き出して急冷する単ロール法により、幅15mm、厚さ20μmの非晶質相組織の金属ガラス合金の薄帯を得た。
得られた金属ガラス合金はFe77Al19.232.27.7Si2.87なる組成の合金であった。
【0138】
金属ガラス合金の薄帯をリング状に打ち抜いてリング試料とし、このリング試料に対して一軸プレス装置により2000MPaの応力を印加した。その後、310〜450℃の条件で熱処理を行い、熱処理後のリング試料の磁気特性を測定した。結果を図10〜13に示す。
図10に印加磁界800A/mにおける磁束密度B800と熱処理温度Taとの関係を示し、図11に保磁力Hcと熱処理温度Taとの関係を示し、図12に1kHzにおける実効透磁率μ’と熱処理温度Taとの関係を示し、図13には鉄損W1/100kと熱処理温度Taとの関係を示す。尚、鉄損W1/100kは、周波数100kHz、励磁磁界0.1Tの条件で測定した。また図10〜13には、応力を印加しない状態で熱処理を行ったリング試料の磁気特性を同時に示す。
【0139】
磁束密度B800については、図10に示すように、応力を印加しないリング試料(図中黒丸のプロット)では、熱処理温度Taの上昇とともに磁束密度B800が向上し、熱処理温度Taが350℃のときに1.35Tを示し、その後はほぼ一定になっている。
一方、応力を印加したリング試料(図中黒四角のプロット)では、応力印加後に磁束密度B800が0.55Tまで低下するが、その後熱処理温度Taの上昇により急速に向上し、熱処理温度Taが350℃に達した時点で応力を印加しないリング試料(図中黒丸プロット)とほぼ同等の1.35Tの磁束密度B800を示すことがわかる。
【0140】
また、保磁力Hcについては、図11に示すように、応力を印加しないリング試料(図中黒丸のプロット)では、熱処理温度Taの上昇とともに保磁力Hcが緩やかに低下した後、熱処理温度Taが370℃で3A/mの極小値を示し、380℃以上では緩やかに上昇している。
一方、応力を印加したリング試料(図中黒四角のプロット)では、応力印加後に保磁力Hcが80A/mまで上昇するが、その後熱処理温度Taの上昇により急速に低下し、熱処理温度Taが350℃に達した時点で保磁力Hcが10A/m以下となり、更に410℃に達した時点で応力を印加しないリング試料(図中黒丸プロット)とほぼ同等の保磁力Hcを示すことがわかる。
【0141】
次に実効透磁率μ’については、図12に示すように、応力を印加しないリング試料(図中黒丸のプロット)では、磁束密度B800の場合と同様に熱処理温度Taの上昇とともに実効透磁率μ’が向上し、熱処理温度Taが350℃のときに5000程度を示し、その後はほぼ一定になっている。
一方、応力を印加したリング試料(図中黒四角のプロット)では、応力印加後に実効透磁率μ’が250程度に低下するが、その後熱処理温度Taの上昇により急速に向上し、熱処理温度Taが350℃に達した時点で応力を印加しないリング試料(図中黒丸プロット)とほぼ同等の5000程度の実効透磁率μ’を示すことがわかる。
【0142】
更に鉄損W1/100kは、図13に示すように、応力を印加しないリング試料(図中黒丸のプロット)では、熱処理温度Taの上昇とともに保磁力Hcが緩やかに低下し、熱処理温度Taが350℃で250kW/m3の鉄損W1/100kを示している。
一方、応力を印加したリング試料(図中黒四角のプロット)では、応力印加後に鉄損W1/100kが1050kW/m3まで上昇するが、その後熱処理温度Taの上昇により急速に低下し、熱処理温度Taが350℃に達した時点で鉄損W1/100kが200kW/m3以下となり、応力を印加しないリング試料(図中黒丸プロット)より低い鉄損W1/100kを示すことがわかる。
【0143】
図10〜図13の結果から、応力を印加しないリング試料では、熱処理によって液体急冷時の残留応力が緩和されて各種の磁気特性が改善したものと考えられる。一方、応力を印加したリング試料では、応力印加後の時点で各種の磁気特性が大幅に劣化するが、熱処理を行うことにより印加した応力が緩和されて磁気特性が急速に回復し、同時に急冷時の残留応力も緩和される。結果的に応力を印加したリング試料は、熱処理温度350〜450℃の範囲で応力を印加しないリング試料と比較して同等以上の磁気特性を示すことがわかる。
【0144】
金属ガラス合金の応力緩和に有効な熱処理温度範囲(350〜450℃)は、センダストや純鉄の場合(約700℃)と比較してかなりの低温であり、また前述の図8における結晶化開始温度Tx(538℃)よりはるかに低い温度である。従って本発明に係る金属ガラス合金は、センダストや純鉄の場合よりもかなり低い温度範囲で、結晶質相をさせることなく熱処理して応力緩和を行うことができ、磁気特性を向上させることができる。
よって、本発明の圧粉磁心では、従来の圧粉磁心では適用できないようなシリコーンエラストマー等の高分子エラストマーが使用可能である。
【0145】
次に、急冷後のリング試料について、410℃で熱処理した後、各種の絶縁材料でモールドした後、磁気特性を測定した。絶縁材料にはエポキシ樹脂、シリコーンエラストマー、水ガラス、ポリイミドを用いた。結果を図14〜16に示す。 図14に各モールド試料のB-H曲線を示し、図15に実効透磁率μ’の周波数依存性を示し、図16には鉄損Wの周波数依存性を示す。尚、鉄損Wは励磁磁界0.1Tの条件で測定した。
【0146】
図14に示すように、モールド試料のB-H曲線は、モールド前の試料の曲線よりも磁束密度Bが低下し、特にポリイミド及びエポキシ樹脂でモールドしたものは曲線の傾きが小さくなっていることがわかる。
曲線の傾きが低下したのは、実験で使用した組成の金属ガラス合金が、図9から明らかなように正磁歪を示すため、モールド時の圧縮成形による応力が印加されたために実効透磁率μ’が低下し、傾きが低下したものと考えられる。
また、ポリイミド及びエポキシ樹脂の場合に大幅に曲線の傾きが低下したのは、これらの樹脂の硬化収縮がシリコーンエラストマーの硬化収縮に比較して大きく、この硬化収縮による応力とモールド時の応力との合成応力が金属ガラス合金に印加されたためと考えられる。
従って、硬化収縮による応力の大きさは図14より、エポキシ樹脂>ポリイミド>水ガラス>シリコーンエラストマー、の順であることがわかる。
【0147】
次に図15に示すように、モールド試料の実効透磁率μ’を絶縁材料間で比較すると、100〜1000kHzにおいては、エポキシ樹脂、ポリイミド、水ガラス、シリコーンエラストマー、モールドなしの順に高くなっている。
また、図16に示すように、鉄損Wを絶縁材料間で比較すると、100kHz以上においては、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコーンエラストマー、水ガラス、モールドなしの順に低くなっている。
従って、シリコーンエラストマーは、エポキシ樹脂やポリイミドよりも実効透磁率μ’及び鉄損Wが改善されることがわかる。従って、金属ガラス合金の結着剤としては、シリコーンエラストマーが好ましいことがわかる。
【0148】
更に、急冷後の薄帯を外径rsの石英管に巻き付けた状態で、310〜450℃で熱処理を行い、熱処理後の薄帯の曲率半径raを測定することにより、薄帯の応力緩和量を調査した。図17にrs/raの熱処理温度Ta依存性を示す。
【0149】
図17に示すように、熱処理温度Taが高くなるにつれて石英管の外径と薄帯の曲率半径が接近し、即ちrs/raが1に接近し、390〜410℃にrs/ra=1になり、応力が緩和されていることがわかる。また図17の上方にはX線回折による結晶構造の分析結果を併せて示しているが、熱処理温度Taが430℃以下の範囲で非晶質相(Amo。)単相組織を維持していることがわかる。従って、rs/ra=1になる温度(390℃)から非晶質単相が得られる温度(430℃)までの範囲は、前述の図13に示した鉄損が低下する温度範囲と重複することから、金属ガラス合金の鉄損の低下は、非晶質単相を維持したままの状態で合金の内部応力が緩和されることにより得られるものと考えられる。
【0150】
「実験例3:シリコーンエラストマーを結着剤に用いた圧粉磁心の特性」
実験例1と同様のガスアトマイズ法により、Fe77Al19.232.27.7Si2.87なる組成であって、粒径62μm以下の粉末からなる金属ガラス合金粉末を得た。
【0151】
次に、この金属ガラス合金粉末に、結着剤としてシリコーンゴム(シリコーンエラストマー)を0.67〜4重量%添加して混合物とした。この混合物を6.6×10-3Paの減圧雰囲気中、室温(298K(25℃))で成形圧力PS1500MPaまで加圧した。そして、混合物に上記の成形圧力Psを印加したままで683K(410℃)の熱処理温度を約60分間保持することにより窒素雰囲気下で熱処理した。
このようにして、実施例1〜5の圧粉磁心を製造した。この圧粉磁心の形状は、外径12mm、内径6mm、厚さ2mmの円環状であった。
【0152】
また、比較例として、絶縁材にシリコーン樹脂(シリコーンレジン)、エポキシ樹脂、ポリイミドを用いたこと以外は上記と同様にして比較例1〜3の圧粉磁心を製造した。
【0153】
実施例1〜5及び比較例1〜3の圧粉磁心について、周波数100kHz、飽和磁束密度0.1Tの条件で鉄損W1/100kを測定した。結果を表1に示す。
【0154】
【表1】
Figure 0003980828
【0155】
表1から明らかなように、絶縁材としてシリコーンゴム(シリコーンエラストマー)を用いた実施例1〜5の圧粉磁心は、いずれも310kW/m3以下の鉄損W1/100kを示しており、コアロスが極めて小さいことがわかる。特にその中でもシリコーンゴムの添加量が3重量%の圧粉磁心については、鉄損W1/100kが200kW/m3以下となっており、従来の圧粉磁心にはない極めて小さなコアロスを示している。
実施例1〜5の金属ガラス合金の磁歪定数を測定すると、いずれも2〜3×10-5程度を示しており、圧粉磁心の内部応力が極めて小さい状態であることがわかる。
一方、比較例1〜3の圧粉磁心については、鉄損W1/100kが実施例よりも高めであり、特にポリイミドを絶縁材として用いた比較例2の圧粉磁心は、2000kW/m3以上の鉄損W1/100kを示していることがわかる。
また、シリコーン樹脂(シリコーンレジン)を用いた比較例1は、380kW/m3の鉄損W1/100kを示しており、エポキシ樹脂やポリイミドの場合より鉄損W1/100kが低いものの、シリコーンゴム(シリコーンエラストマー)の場合より鉄損W1/100kが高くなっている。
【0156】
実施例1〜5の圧粉磁心が小さい鉄損W1/100kを示したのは、結着剤であるシリコーンゴム(シリコーンエラストマー)の硬化応力が小さく、金属ガラス合金粉末に残留する応力が小さいためと考えられる。
一方、比較例1〜3の圧粉磁心については、結着剤に用いた樹脂の弾性が小さいために硬化応力が大きく、圧粉磁心の内部応力が大きくなり、鉄損W1/100kが増大したものと考えられる。特に、比較例2においては、ポリイミドの硬化応力が大きいため、内部応力が蓄積され、鉄損が上昇したものと考えられる。
また、比較例1においては、シリコーン樹脂(シリコーンレジン)の弾性がシリコーンゴム(シリコーンエラストマー)より低いため、固化成形時に印加される応力の緩和が進まず、応力が残留して軟磁気特性が低下したためと考えられる。
【0157】
以上のことから、金属ガラス合金粉末と、シリコーンエラストマーとを室温で圧縮成形し、更に熱処理することにより、従来の圧粉磁心にはない極めて小さな鉄損を示す圧粉磁心が得られることが明らかになった。
【0158】
「実験例4:圧粉磁心のシランカップリング剤の添加量と磁気特性の関係」
実験例1と同様のガスアトマイズ法により、Fe77Al19.232.27.7Si2.87なる組成の金属ガラス合金粉末を得た。
この金属ガラス合金粉末にシリコーンエラストマーを添加し、更にシランカップリング剤を添加して10分間混合した後、一軸プレス装置により室温で2000MPaの圧力を印加して圧縮成形を行った。圧縮成形後、窒素雰囲気中で昇温速度40K/分、熱処理温度410℃、保持時間60分の条件で熱処理を行うことにより、図1に示すような円環状の圧粉磁心を得た。圧粉磁心は外径12mm、内径6mm、厚さ2.2mmであった。
【0159】
なお、シランカップリング剤は、官能基がアミノ基のものを用いた。アミノ基のものは、NH2CH2CH2NHCH2CH2CH2Si(OCH33なる組成式で表されるものであった。
またシランカップリング剤の添加量は0〜2原子%、シリコーンエラストマーの添加量は0.25原子%であり、金属ガラス合金粉末が残部であった。
【0160】
得られた圧粉磁心について、実効透磁率μ’及び鉄損W1/100kを測定した。結果を図18及び図19に示す。図18に実効透磁率μ’とシランカップリング剤の添加量との関係を示し、図19に鉄損W1/100kとシランカップリング剤の添加量との関係を示す。尚、鉄損W1/100kは周波数100kHz、励磁磁界0.1Tの条件で測定した。
【0161】
図18に示すように、カップリング剤の添加により、実効透磁率μ’が緩やかに向上することがわかる。特にシランカップリング剤を1.5重量%添加したときに、最も高い実効透磁率μ’を示すことがわかる。
また図19から、シランカップリング剤を1.5重量%添加したときの鉄損W1/100kは196kW/m3と比較的低い鉄損W1/100kを示している。ことがわかる。
【0162】
「実験例5:圧粉磁心の潤滑剤の選定及び磁気特性」
実験例1と同様のガスアトマイズ法により、Fe77Al19.232.27.7Si2.87なる組成の金属ガラス合金粉末を得た。
この金属ガラス合金粉末にシリコーンエラストマーを添加し、更に潤滑剤を添加して10分間混合した後、一軸プレス装置により室温で2000MPaの圧力を印加して圧縮成形を行った。圧縮成形後、窒素雰囲気中で昇温速度40K/分、熱処理温度410℃、保持時間60分の条件で熱処理を行うことにより、図1に示すような円環状の圧粉磁心を得た。圧粉磁心は外径12mm、内径6mm、厚さ2.2mmであった。
【0163】
尚、潤滑剤には、ステアリン酸アルミニウム二量体(St.Al-Di)、ステアリン酸アルミニウム単量体(St.Al-Mono)、ステアリン酸カルシウム(St.Ca)、ステアリン酸マグネシウム(St.Mg)、ステアリン酸ナトリウム(St.Na)及びステアリン酸亜鉛(St.Zn)を用いた。
【0164】
得られた圧粉磁心について、実効透磁率μ’及び鉄損W及び磁心の密度を測定した。結果を図20〜図24に示す。尚、鉄損Wは周波数100kHz、励磁磁界0.1Tの条件で測定した。
図20に実効透磁率μ’と潤滑剤の添加量との関係を示し、図21に鉄損Wと潤滑剤の添加量との関係を示す。
また図22には、実効透磁率μ’と磁心の密度との関係を示し、図23には鉄損Wと磁心の密度との関係を示す。更に図24には密度と潤滑剤の添加量との関係を示す。
【0165】
図20から明らかなように、潤滑剤の添加によって実効透磁率μ’が向上している。特にステアリン酸アルミニウム二量体(St.Al-Di)を1.5重量%添加したときに実効透磁率μ’が90程度と最も高い実効透磁率μ’を示している。
また、ステアリン酸ナトリウム(St.Na)を添加したものは、添加量が増加するにつれて実効透磁率μ’が低下している。
また鉄損Wについては、図21から明らかなように、ステアリン酸ナトリウム(St.Na)以外のものについては潤滑剤の添加量に関わらずほぼ一定の鉄損Wを示している。
潤滑剤の添加により実効透磁率μ’が向上したのは、圧縮成形の際に金属ガラス合金の粉末同士の潤滑性が向上して合金粉末の充填密度が向上し、合金粉末同士が接近したためと考えられる。
また、ステアリン酸ナトリウム(St.Na)を添加により実効透磁率μ’及び鉄損Wが劣化した原因は、ステアリン酸ナトリウム(St.Na)が絶縁破壊を起こして圧粉磁心の比抵抗が低下し、渦電流損失が発生したためと考えられる。
【0166】
また、図22及び図24に示すように、ステアリン酸アルミニウム二量体(St.Al-Di)を添加した圧粉磁心では、磁心自体の密度が向上して実効透磁率μ’が高くなっている。これは、ステアリン酸アルミニウム二量体(St.Al-Di)の潤滑性が他のステアリン酸塩よりも優れるために金属ガラス合金の合金粉末同士の潤滑性が向上し、圧粉磁心の密度が高くなって実効透磁率μ’が向上したためと考えられる。
鉄損Wについては図23に示すように、磁心の密度に寄らずほぼ一定の値を示しており、鉄損Wは、実験の範囲のおいては潤滑剤の種類及び添加量に左右されないことがわかる。
従って、図20及び図24から明らかなように、潤滑剤の添加量が1〜1.5重量%の範囲で磁心の密度及び実効透磁率μ’が向上し、軟磁気特性に優れた圧粉磁心が得られることがわかる。
【0167】
また図25には渦電流損失Weと潤滑剤の添加量の関係を示し、図26にヒステリシス損失Whと潤滑剤の添加量の関係を示す。なお、過電流損失Weとヒステリシス損失Whはともに鉄損Wの成分であって、W≒We+Whの関係にある。
図25に示すように、ステアリン酸ナトリウム(St.Na)の添加量が増加するにつれて渦電流損失Weが増大している。ステアリン酸ナトリウム(St.Na)以外の潤滑剤については添加量によらずほぼ一定である。
一方、ヒステリシス損失Whについては図26に示すように、ステアリン酸ナトリウム(St.Na)を含む全ての潤滑剤について添加量によらずほぼ一定である。
従って図25の結果から、ステアリン酸ナトリウム(St.Na)を添加した場合に渦電流損失Weが増大し、絶縁破壊が発生していることが示唆される。
【0168】
以上のことから、圧粉磁心に用いる潤滑剤としては、ステアリン酸アルミニウムが好ましく、特にステアリン酸アルミニウム二量体がより好ましいことがわかる。
【0169】
「実験例6:熱処理時の雰囲気と磁気特性」
実験例1と同様のガスアトマイズ法により、Fe77Al19.232.27.7Si2.87なる組成の金属ガラス合金粉末を得た。
この金属ガラス合金粉末にシリコーンエラストマーを添加し、更に潤滑剤を添加して10分間混合した後、一軸プレス装置により室温で2000MPaの圧力を印加して圧縮成形を行った。圧縮成形後、昇温速度40K/分、熱処理温度410℃、保持時間60分の条件で熱処理を行うことにより、図1に示すような円環状の圧粉磁心を得た。圧粉磁心は外径12mm、内径6mm、厚さ2.2mmであった。
【0170】
熱処理時の雰囲気は、0.002〜1.2Paの背圧Pbで窒素ガスを流量1.4L/分でフロー、もしくは上記背圧Pb下でアルゴンガスを流量1L/分でフロー、あるいは0.5Paの真空雰囲気、更には大気中、の4種類の条件とした。また潤滑剤にはステアリン酸アルミニウム二量体を用いた。
またシリコーンエラストマーの添加量は0.25重量%とし、潤滑剤の添加量は1.25重量%とし、金属ガラス合金粉末を残部とした。
【0171】
得られた圧粉磁心について、1MHzにおける実効透磁率μ’及び鉄損W及び磁心の密度を測定した。結果を図27及び図28に示す。尚、鉄損Wは周波数100kHz、励磁磁界0.1Tの条件で測定した。
【0172】
図27には1MHzにおける実効透磁率μ’と背圧Pbとの関係を示す。
図27から明らかなように、大気雰囲気中で熱処理した圧粉磁心は、実効透磁率μ’が50以下になっている。これ以外の圧粉磁心は、背圧Pbによらずほぼ一定の値を示している。
【0173】
また図28には鉄損Wと背圧Pbとの関係を示す。ここで、破線及び三角印のプロットは真空雰囲気中で熱処理した圧粉磁心であり、一点鎖線及び丸印のプロットはアルゴンフロー中で熱処理した圧粉磁心であり、実線及び四角印のプロットは窒素フロー中で熱処理した圧粉磁心であり、ひし形のプロットは大気雰囲気中で熱処理した圧粉磁心である。更に白丸、白三角、白四角及び白ひし形のプロットは、渦電流損失We及びヒステリシス損失Whを示し、黒丸、黒三角、黒四角および黒ひし形のプロットは鉄損Wを示す。尚、W≒We+Whの関係である。
図28から明らかなように、大気雰囲気中で熱処理した圧粉磁心は、W、We、Whがそれぞれ3200〜3900kW/m3を示している。これ以外の圧粉磁心では、Wが250〜270kW/m3程度であり、Weが200〜270kW/m3程度であり、Whが40〜90kW/m3程度になっている。
また、W、We、Whは背圧Pbによらずほぼ一定の値を示しており、背圧Pbが1Pa程度でもW、We、Whの増大が見られないことがわかる。
【0174】
大気雰囲気中で熱処理した圧粉磁心の実効透磁率μ’、鉄損W、過電流損失We及びヒステリシス損失Whが劣化したのは、大気中で410℃まで加熱したことによって金属ガラス合金粉末が酸化して軟磁気特性が劣化したことに加えて、シリコーンエラストマーに大気中の酸素が更に結合し、応力が増大したために、実効透磁率μ’と鉄損Wとが劣化したものと考えられる。
また、背圧Pbを1Pa程度にすれば、実効透磁率μ’及び鉄損Wを劣化させることがないので、熱処理時に大がかりな真空ポンプ等を設置する必要がなく、圧粉磁心の製造コストを低減できる。
【0175】
次に、背圧Pbを2.6×10-3Paに固定し、アルゴンガスまたは窒素ガスの流量を0.15〜50L/分の範囲で変化させて熱処理を行った。このときの実効透磁率μ’及び鉄損Wを測定した。結果を図29及び図30に示す。
【0176】
図29には、1MHzにおける実効透磁率μ’とガス流量との関係を示す。
図29から明らかなように、窒素ガス雰囲気の場合、流量を50から10L/分に低下させると僅かに実効透磁率μ’が低下するが、その後は約90程度と一定になり、流量を0.5L/分まで低下させても90程度を保っている。
一方、アルゴンガスの場合は、1L/分では実効透磁率μ’が82程度とやや低めであるが、8L/分程度にすることで窒素雰囲気の場合とほぼ同等の実効透磁率μ’を示すようになる。
【0177】
また図30には鉄損Wとガス流量との関係を示す。ここで、丸印のプロットはアルゴンフロー中で熱処理した圧粉磁心であり、四角印のプロットは窒素フロー中で熱処理した圧粉磁心である。更に白丸及び白四角のプロットは、渦電流損失We及びヒステリシス損失Whを示し、黒丸及び黒四角のプロットは鉄損Wを示す。尚、W≒We+Whの関係である。
図30から明らかなように、窒素雰囲気中で熱処理した圧粉磁心は、ガス流量が増加するにつれてW、We及びWhが僅かに増大する傾向にある。また、アルゴンガス雰囲気中で熱処理した場合は、ガス流量によらずほぼ一定値を示している。
【0178】
以上のことから、熱処理時の雰囲気については、不活性ガス雰囲気または真空雰囲気とすれば、磁気特性に大きな劣化を及ぼすようなことはない。
【0179】
「実験例7:インダクタの特性」
実験例1と同様のガスアトマイズ法により、Fe77Al19.232.27.7Si2.87なる組成の金属ガラス合金粉末を得た。
この金属ガラス合金粉末にシリコーンエラストマーを添加し、更に潤滑剤を添加して10分間混合した後、混合物をコイル状に巻回した銅線とともに金型に充填し、図3に示す放電プラズマ焼結装置により室温で5.9MPaの圧力を印加して圧縮成形を行った。圧縮成形後、昇温速度40K/分、熱処理温度410℃、保持時間60分の条件で熱処理を行うことにより、図4に示すような実施例のインダクタを得た。この実施例のインダクタのコアは厚さ2mm、各辺が12mmの直方体であった。また銅線は直径0.6mmであり、巻回数は5回であり、表面にはポリイミドの絶縁膜を成膜したものを用いた。
【0180】
なお、潤滑剤にはステアリン酸アルミニウム二量体を用いた。またシリコーンエラストマーの添加量は4重量%とした。
【0181】
また比較例として、センダスト合金とシリコーンレジンで上部コア及び下部コアを形成し、これら上部、下部コアの間にコイルを有する銅線を配置することにより、いわゆるポット型の比較例のインダクタを製造した。
得られたインダクタについて、周波数2.5〜10000kHzにおけるインダクタンスL及びQ値を測定した。結果を図31に示す。
【0182】
図31から明らかなように、実施例のインダクタは、比較例よりも高いインダクタンスL及びQ値を示しており、優れた特性を示すことがわかる。
これは、実施例のインダクタは、コアと銅線とが密着しているので、漏れ磁界がなく、インダクタンスL及びQ値が低下しなかったと考えられる。一方、比較例のインダクタは、コアと導電との間に空隙があるため、この空隙の存在により実質的に占積率が低下し、インダクタンスL及びQ値が低下したものと考えられる。
【0183】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明の圧粉磁心は、シリコーンエラストマーからなる結着剤を備えており、このシリコーンエラストマーはシリコーンレジンよりも圧縮成形性に優れ、その成形温度もシリコーンレジンの場合よりも低いので、室温で固化成形することにより高い強度を有する圧粉磁心を構成することができる。
また、シリコーンエラストマーは圧粉磁心内部でも十分な弾性を示すので、1×10-6〜50×10-6の磁歪定数を示す金属ガラス合金を用いた場合でも、歪みを緩和させることができ、圧粉磁心内部の応力を緩和して高透磁率で低鉄損の圧粉磁心を構成することができる。
更に、金属ガラス合金は(Tg−170)K以上(Tg)K以下の範囲で熱処理されることにより、結晶質相を析出させることがなく応力緩和をすることができ、高透磁率で低鉄損の圧粉磁心を構成することができる。
更に、ステアリン酸アルミニウムからなる潤滑剤が添加されているので、成形時に金属ガラス合金粉末同士が相互に滑りやすくなって圧粉磁心の相対密度が向上し、圧粉磁心の透磁率を高めて鉄損を低下させることができる。
更に、シランカップリング剤が添加されているので、金属ガラス合金粉末とシリコーンエラストマーとの密着性が向上することによりシリコーンエラストマーの添加量を低減させることができ、これにより金属ガラス合金粉末同士が接近して見かけ上の反磁界を低減でき、透磁率を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の圧粉磁心の実施形態例を示す斜視図である。
【図2】 本発明の圧粉磁心の製造方法を実施する際に用いる金型の一例を示す分解斜視図である。
【図3】 本発明の圧粉磁心を製造する際に用いる放電プラズマ焼結装置の要部の模式図である。
【図4】 本発明の実施形態であるインダクタを示す斜視図である。
【図5】 本発明の実施形態であるトランスを示す斜視図である。
【図6】 Fe77Al19.232.27.7Si2.87なる組成の金属ガラス合金粉末のX線回折パターンを示す図である。
【図7】 Fe77Al19.232.27.7Si2.87なる組成の金属ガラス合金粉末のSEM写真である。
【図8】 Fe77Al19.232.27.7Si2.87なる組成の金属ガラス合金粉末のDSC曲線を示す図である。
【図9】 Fe100-x-rAlx(P0.420.10.35Si0.13)rなる組成の金属ガラス合金粉末の磁歪定数λsのFe、Al及び(PCBSi)組成の依存性を示す三角組成図である。
【図10】 磁束密度B800と熱処理温度Taとの関係を示すグラフである。
【図11】 保磁力Hcと熱処理温度Taとの関係を示すグラフである。
【図12】 1kHzにおける実効透磁率μ’と熱処理温度Taとの関係を示すグラフである。
【図13】 鉄損W1/100kと熱処理温度Taとの関係を示すグラフである。
【図14】 各種の絶縁材料でモールドしたモールド試料のB-H曲線を示すグラフである。
【図15】 各種の絶縁材料でモールドしたモールド試料の実効透磁率μ’と周波数との関係を示すグラフである。
【図16】 各種の絶縁材料でモールドしたモールド試料の鉄損Wと周波数との関係を示すグラフである。
【図17】 金属ガラス合金薄帯の応力緩和率と熱処理温度Taとの関係を示すグラフである。
【図18】 実効透磁率μ’とシランカップリング剤の添加量との関係を示すグラフである。
【図19】 鉄損W1/100kとシランカップリング剤の添加量との関係を示すグラフである。
【図20】 実効透磁率μ’と潤滑剤の添加量との関係を示すグラフである。
【図21】 鉄損Wと潤滑剤との関係を示すグラフである。
【図22】 圧粉磁心の実効透磁率μ’と密度との関係を示すグラフである。
【図23】 圧粉磁心の鉄損Wと密度との関係を示すグラフである。
【図24】 圧粉磁心の密度と潤滑剤の添加量との関係を示すグラフである。
【図25】 圧粉磁心の渦電流損失Weと潤滑剤の添加量との関係を示すグラフである。
【図26】 圧粉磁心のヒステリシス損失Whと潤滑剤の添加量との関係を示すグラフである。
【図27】 圧粉磁心の実効透磁率μ’と背圧Pbとの関係を示すグラフである。
【図28】 圧粉磁心の鉄損、Wh及びWeと背圧Pbとの関係を示すグラフである。
【図29】 圧粉磁心の実効透磁率μ’とガス流量との関係を示すグラフである。
【図30】 圧粉磁心の鉄損、Wh及びWeとガス流量との関係を示すグラフである。
【図31】 実施例及び比較例のインダクタのインダクタンスL及びQ値の周波数依存性を示すグラフである。
【符号の説明】
1 圧粉磁心
21 インダクタ
31 トランス

Claims (9)

  1. ΔTx=Tx−Tg(ただしTxは結晶化開始温度、Tgはガラス遷移温度を示す。)の式で表される過冷却液体の温度間隔ΔTxが20K以上であって、Alである元素Xと、P、C、Si、Bのうちの1種以上の元素Qと、Feとを含む非晶質相を主相とする組織からなり、磁歪定数が1×10 −6 〜50×10 −6 の範囲である金属ガラス合金の粉末に、シリコーンエラストマーからなる結着剤とステアリン酸アルミニウムからなる潤滑剤とが添加され、固化成形されてなることを特徴とする圧粉磁心。
  2. 前記固化成形後に(Tg−170)K〜(Tg)Kの温度範囲で熱処理されてなることを特徴とする請求項1に記載の圧粉磁心。
  3. 前記金属ガラス合金が、下記の組成式で表されるものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧粉磁心。
    Fe100-x1-y1-z1-w1Alx1y1z1w1
    ただし、組成比を示すx1、y1、z1、w1は、0原子%≦x1≦10原子%、2原子%≦y1≦15原子%、0原子%<z1≦11.5原子%、4原子%≦w1≦10原子%、70原子%≦(100−x1−y1−z1−w1)≦79原子%、11原子%≦(y1+z1+w1)≦30原子%である。
  4. 前記金属ガラス合金が、下記の組成式で表されるものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧粉磁心。
    (Fe1−a1a1100−x1−y1−z1−w1Alx1y1z1w1
    ただしTはCo、Niのいずれか一方または両方であり、組成比を示すa1、x1、y1、z1、W1は、0.1≦a1≦0.15、0原子%≦x1≦10原子%、2原子%≦y1≦15原子%、0原子%<z1≦11.5原子%、4原子%≦w1≦10原子%、70原子%≦(100−x1−y1−z1−w1)≦79原子%、11原子%≦(y1+z1+w1)≦30原子%である。
  5. 前記金属ガラス合金が、下記の組成式で表されるものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧粉磁心。
    Fe100-x1-v1-z1-w1Alx1(P1-b1Sib1v1z1w1
    ただし、組成比を示すb1、x1、v1、z1、w1は、0.1≦b1≦0.28、0原子%≦x1≦10原子%、2原子%≦v1≦15原子%、0原子%<z1≦11.5原子%、4原子%≦w1≦10原子%、70原子%≦(100−x1−y1−z1−w1)≦79原子%、11原子%≦(v1+z1+w1)≦30原子%である。
  6. 前記金属ガラス合金が、下記の組成式で表されるものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧粉磁心。
    (Fe1−a1a1100−x1−v1−z1−w1Alx1(P1−b1Sib1v1z1w1
    ただしTはCo、Niのいずれか一方または両方であり、組成比を示すa1、b1、x1、v1、z1、w1は、0.1≦a1≦0.15、0.1≦b1≦0.28、0原子%≦x1≦10原子%、2原子%≦v1≦15原子%、0原子%<z1≦11.5原子%、4原子%≦w1≦10原子%、70原子%≦(100−x1−v1−z1−w1)≦79原子%、11原子%≦(v1+z1+w1)≦30原子%である。
  7. 前記金属ガラス合金が、下記の組成式で表されるものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧粉磁心。
    (Fe1-a3-b3Coa3Nib3100-x3-y3x3y3
    但し、MはZr、Nb、Ta、Hf、Mo、Ti、V、Cr、Wのうちの1種又は2種以上からなる元素であり、組成比を示すa3、b3、x3、y3は、0≦a3≦0.29、0≦b3≦0.43、5原子%≦x3≦20原子%、10原子%≦y3≦22原子%である。
  8. 前記金属ガラス合金の粉末に、前記シリコーンエラストマーと、前記ステアリン酸アルミニウムからなる潤滑剤と、シランカップリング剤とが添加され、固化成形されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の圧粉磁心。
  9. 前記シランカップリング剤の金属と結合可能な官能基が、アミノ基、ビニル基、メチル基のうちのいずれか1種であることを特徴とする請求項8に記載の圧粉磁心。
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