JP2006237368A - 圧粉磁心およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 一般式:(Fe1−aMa)bSicBdXeM’f(原子%)(XはC、P、S、Ga、Ge、Snから選ばれる1種類以上の元素)により表される組成と不可避不純物からなるアモルファス薄帯に180℃以上かつ350℃以下の温度で脆化のための熱処理を施し、粉砕し、これにより得られた軟磁性粉末と結着剤を混合して圧粉体とすることを特徴とする圧粉磁心の製造方法を用いる。
【選択図】 図2
Description
また、熱処理中の結晶の育成を抑えるため、M’元素は1原子%以下、さらには0.5原子%以下とすることが好ましい。M’元素が多いと磁気特性の劣化も問題となるためである。
これにより得られる圧粉磁心は、周波数100kHzで100mTの磁束密度が得られるように磁界を印加したときの磁心損失が3000kW/m3以下であることを特徴とする。また、熱処理温度を低くすることで、磁心損失が2000kW/m3以下、さらには1800以下のものも得ることが可能である。また、上記圧粉磁心は、周波数100kHzで直流バイアス磁界10000A/mを印加した時の増分比透磁率が20以上であることを特徴とする。
また、増分比透磁率の測定には、上記の圧粉体に30ターンの巻線をし、アジレント社のLCRメータ(HP4284A)とHP42841Aバイアスカレントソース(HP42841A)にて、信号電圧レベル1.0 Vrms、周波数100kHz、直流バイアス磁界10000A/mにおける条件で測定した。
本発明の製造方法では、急冷単ロール法により得られたアモルファス薄帯に脆化熱処理を施し、この薄帯を粉砕する。アモルファス薄帯は一般式:(Fe1−aMa)bSicBdXeM’f(原子%)(ただし、上記式においてMはCo及び/又はNiであり、XはC、P、S、Ga、Ge、Snから選ばれる1種類以上の元素であり、M’はNb、W、Ta、Hf、Ti、V、Cr、Mn、Y、Pd、Ruから選ばれる1種類以上の元素であり、a、b、c、d、e、fはそれぞれ0≦a≦50、76≦b≦84、0≦c≦12、8≦d≦18、0.01≦e≦10、0≦f≦10を満たす)により表される組成を有する。M’の元素は1原子%を超えると飽和磁化が小さくなり、高特性の圧粉磁心が得られないため、好ましくは1原子%とする。この組成を有することにより、高い飽和磁束密度を有するアモルファス薄帯を効率よく得ることができる。また、C、P、S、Ga、Ge、Sn等の元素はアモルファス薄帯事態を脆化しやすくするものであり、圧粉磁心のための粉砕を行いやすくすることができる。0.01〜10原子%、さらには0.1〜8原子%添加することが好ましい。0.05原子%未満では脆化のための役割を十分に得られず、また10原子%を超えるとアモルファス薄帯の量産が困難になる。
前記アモルファス薄帯の脆化熱処理温度は180℃以上かつ350℃以下が好ましい。180℃以上の温度で脆化熱処理することにより、アモルファス薄帯を効率良く粉砕できる。350℃を超える脆化熱処理温度では、圧粉体の熱処理後に、成形歪が十分除去されず、高い直流重畳特性及び低損失が十分得られない。
急冷単ロール法により作製した、原子%でFe78.7Si9B12C0.3の合金組成を有するアモルファス薄帯を脆化するため、窒素雰囲気中320℃において2時間の熱処理を施した。この薄帯を振動ミルにより粉砕し、軟磁性合金粉末を得た。この軟磁性合金粉末を目開き90μmの篩下で分級した。平均粒径を測定したところ、77μmであった。
次にPVA粉末を水に溶かし、PVAの濃度が3%の溶液を用意した。前記アモルファス合金粉末と水ガラスの体積比が85:15になるように混合し、これらとPVA3%溶液15質量部を容器に入れ、これらを100℃に加熱しながら1時間攪拌し、完全に乾燥させた。
得られた混合粉末を目開き250μm篩にてふるい、団粒を除去した。その後、これらの複合粒子に潤滑剤であるステアリン酸亜鉛を混合した。これらの複合粒子を金型内に装入して、室温で圧力1.5GPaかけて、内径8mm、外径14mmのリング状の圧粉磁心を得た。得られたリング状の圧粉磁心に窒素雰囲気中380℃において2時間の熱処理を施した。この圧粉体の相対密度は、61.9%であった。ここで、「相対密度」とは、成形体を完全に緻密体と仮定したときの重量に対する実際の重量の比率として求めたものであり、完全緻密体の重量は、非晶質合金粒子と水ガラスの体積比に基づいて計算したものである。
次にリング状磁心の直流重畳特性を測定した。その結果を図1に示す。図1から明らかなように、増分比透磁率は、周波数100kHzで直流バイアス磁界が10000A/mのときに20以上であり、優れた直流重畳特性が実現されていることわかる。
次にリング状の圧粉磁心の磁心損失と脆化熱処理温度との依存性を調べた。その結果を図2に示す。圧粉磁心は380℃で熱処理し、歪除去を行っている。測定した脆化熱処理温度の範囲は260℃〜400℃とした。図2から明らかなように、周波数100kHz、振幅磁束密度0.1Tの条件で評価した磁心損失は、1100kW/m3であり、低損失が実現されていることわかる。
脆化熱処理の温度によって、アモルファス薄帯の粉砕性がどのように変化するかを明らかにするため、実施例1の組成を有する脆化熱処理後のアモルファス薄帯100gを、目開き90μm篩にて篩い可能なサイズまで粉砕するのにかかる時間と薄帯の脆化熱処理温度の関係を調べた。その結果を図3に示す。図3から明らかなように、この合金組成では250℃以下になると粉砕にかかる時間が急激に増大することがわかる。
次にリング状圧粉磁心の磁心損失の熱処理温度依存性を測定した。その結果を図4に示す。測定した圧粉体の熱処理温度は360℃〜420℃とした。図4から明らかなように、周波数100kHz、振幅磁束密度0.1Tの条件で評価した磁心損失は、圧粉体の熱処理温度380℃のときに1100kW/m3であり、低損失が実現されていることわかる。
炭素量と脆化熱処理の温度によって、アモルファス薄帯の粉砕性がどのように変化するかを明らかにするため、原子%でFe77Si9B12C2の合金組成を有する脆化熱処理後のアモルファス薄帯100gを、目開き90μm篩にてふるい可能なサイズまで粉砕するのにかかる時間と薄帯の脆化熱処理温度の関係を調べた。その結果を図3に併記する。実施例1の炭素量が0.3原子%の時よりも脆化しており、粉砕が容易になっていることがわかる。炭素は薄帯の表面に析出しやすく、これが脆化を行いやすくすることが推察される。
比較例として、急冷単ロール法により作製した、原子%でFe78.7Si9B12C0.3の合金組成を有するアモルファス薄帯を、窒素雰囲気中400℃において2時間の脆化熱処理を施した。脆化熱処理温度が異なる以外は上記実施例と同様の条件でリング状圧粉磁心を得た。この圧粉体の相対密度は61.4%であった。リング状磁心の直流重畳特性を測定した結果を図1に示すが、増分比透磁率は、周波数100kHzで直流バイアス磁界が10000A/mのときに17である。また、リング状磁心の磁心損失を測定した結果を図2に示すが、周波数100kHz、振幅磁束密度0.1Tの条件で評価した磁心損失は7500kW/m3である。
Claims (7)
- 一般式:(Fe1−aMa)bSicBdXeM’f(原子%)(ただし、上記式においてMはCo及び/又はNiであり、XはC、P、S、Ga、Ge、Snから選ばれる1種類以上の元素であり、M’はNb、W、Ta、Hf、Ti、V、Cr、Mn、Y、Pd、Ruから選ばれる1種類以上の元素であり、a、b、c、d、e、fはそれぞれ0≦a≦50、76≦b≦84、0≦c≦12、8≦d≦18、0.01≦e≦10、0≦f≦10を満たす)により表される組成と不可避不純物からなるアモルファス薄帯に180℃以上かつ350℃以下の温度で脆化のための熱処理を施し、粉砕し、これにより得られた軟磁性粉末と結着剤を混合して圧粉体とすることを特徴とする圧粉磁心の製造方法。
- 前記M’の添加量が0≦f≦1であることを特徴とする請求項1に記載の圧粉磁心の製造方法。
- 前記軟磁性粉末に結着性樹脂と絶縁性無機材料を混合して混合粉末とし、該混合粉末を圧縮成形して圧粉体とし、該圧粉体を250℃以上かつ500℃以下で熱処理することを特徴とする請求項1又は2に記載の圧粉磁心の製造方法。
- 前記軟磁性粉末の平均粒径d50は1〜150μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧粉磁心の製造方法。
- 圧粉体とする際の成形圧力が0.5GPa以上かつ3・0GPa以下であることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の圧粉磁心の製造方法。
- 一般式:(Fe1−aMa)bSicBdXeM’f(原子%)(ただし、上記式においてMはCo及び/又はNiであり、XはC、P、S、Ga、Ge、Snから選ばれる1種類以上の元素であり、M’はNb、W、Ta、Hf、Ti、V、Cr、Mn、Y、Pd、Ruから選ばれる1種類以上の元素であり、a、b、c、d、e、fはそれぞれ0≦a≦50、76≦b≦84、0≦c≦12、8≦d≦18、0.01≦e≦10、0≦f≦10を満たす)により表される組成と不可避不純物からなる軟磁性粉末と結着剤からなる圧粉磁心であり、周波数100kHzで100mTの磁束密度が得られるように磁界を印加したときの磁心損失が3000kW/m3以下であることを特徴とする圧粉磁心。
- 一般式:(Fe1−aMa)bSicBdXeM’f(原子%)(ただし、上記式においてMはCo及び/又はNiであり、XはC、P、S、Ga、Ge、Snから選ばれる1種類以上の元素であり、M’はNb、W、Ta、Hf、Ti、V、Cr、Mn、Y、Pd、Ruから選ばれる1種類以上の元素であり、a、b、c、d、e、fはそれぞれ0≦a≦50、76≦b≦84、0≦c≦12、8≦d≦18、0.01≦e≦10、0≦f≦10を満たす)により表される組成と不可避不純物からなる軟磁性粉末と結着剤からなる圧粉磁心であり、周波数100kHzで直流バイアス磁界10000A/mを印加した時の増分比透磁率が20以上であることを特徴とする圧粉磁心。
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JP2016027656A (ja) * | 2015-09-03 | 2016-02-18 | 日立金属株式会社 | 圧粉磁心の製造方法 |
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