JP4178004B2 - 磁気素子及びインダクタ及びトランス - Google Patents

磁気素子及びインダクタ及びトランス Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気素子及びトランス及びインダクタに関するものであり、特に、軟磁性合金からなる圧粉磁心にコイル部を埋め込むことにより占積率を向上させた磁気素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
スイッチング電源用トランスや平滑チョーク等の高周波まで一定の透磁率が必要とされる磁気素子用の磁心として、フェライト、パーマロイ合金、Fe−Al−Si合金等の粉末と絶縁材を混合して成形した圧粉磁心が提案されている。
図10に、従来の圧粉磁心の一例を示す。図10に示す圧粉磁心200は、いわゆるE型コアと呼ばれる2組の半コア201、202を接合してなるものであり、図示略の巻線が巻回される巻線部203と、巻線から生じた磁束が流れる磁路を構成する環状のヨーク部204とから構成されている。ヨーク部204と巻線部203の間に巻線穴205が形成され、この巻線穴205を通して巻線部203に巻線を装着できるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の圧粉磁心においては、巻線がヨーク部204近傍を除いて外部に露出しているため、巻線から生じた磁界が外部に漏洩するするといった問題があった。磁界の漏洩は、インダクタンスLや品質係数(Q値)の低下につながり、磁気素子の特性が低下する場合があった。
【0004】
そこでインダクタンスLや品質係数(Q値)の低下を防止すべく、Fe−Al−Si合金の粉末とシリコーンレジンとコイルとを一体成形し、コイル全体を圧粉磁心内に埋め込んだ磁気素子が提案されている。
しかし、シリコーンレジンは一般に熱的安定性に劣るため、500℃以下の温度で熱処理する必要があり、Fe−Al−Si合金の応力を完全に緩和することが困難であった。
即ち、Fe−Al−Si合金の応力緩和に必要な熱処理温度は800℃以上であるが、ここまで温度を上げて熱処理するとシリコーンレジンが熱分解して圧粉磁心を一定の形状に保持させておくことが困難となる。従って、やむを得ず500℃以下の温度で熱処理することになるが、この場合の圧粉磁心の1MHzにおける透磁率は40〜50程度と低く、このためインダクタンス及び品質係数(Q値)が低くなり、磁気素子の高性能化が依然として困難な状況であった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、インダクタンス及び品質係数(Q値)に優れた磁気素子を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した
【0008】
本発明の磁気素子は、ΔTx=Tx−Tg(ただしTxは結晶化開始温度を示し、Tgはガラス遷移温度を示す)の式で表される過冷却液体の温度間隔ΔTxが20K以上の非晶質相を主相とする組織からなり、水アトマイズ法で形成され下記の組成式で表される軟磁性合金粉末と、絶縁層により被覆されたコイル部を有する1または2以上の導体とが一体成形されることにより、前記軟磁性合金粉末からなる圧粉磁心に前記コイル部が埋め込まれ、かつ前記コイル部において相互に重ねられた前記導体が前記絶縁層を介して相互に接触していることを特徴とする。
Fe100−v−z−w−t(P1−bSi
ただし、XはCrであり、組成比を示すb、v、z、w、tは、0.1≦b≦0.28、2原子%≦v≦15原子%、0原子%<z≦11.5原子%、4原子%≦w≦原子%、原子%≦t≦原子%、70原子%≦(100−y−z−w−t)≦79原子%、11原子%≦(v+z+w)≦30原子%である。
【0009】
また、本発明の磁気素子は、ΔTx=Tx−Tg(ただしTxは結晶化開始温度を示し、Tgはガラス遷移温度を示す)の式で表される過冷却液体の温度間隔ΔTxが20K以上の非晶質相を主相とする組織からなり、水アトマイズ法で形成され下記の組成式で表される軟磁性合金粉末と、絶縁層により被覆されたコイル部を有する1または2以上の導体とが一体成形されることにより、前記軟磁性合金粉末からなる圧粉磁心に前記コイル部が埋め込まれ、かつ前記コイル部において相互に重ねられた前記導体が前記絶縁層を介して相互に接触していることを特徴とする。
(Fe1−a100−v−z−w−t(P1−bSi
ただし、XはCrであり、TはCo、Niより選ばれる1種または2種の元素であり、組成比を示すa、b、v、z、w、tは、0.1≦a≦0.15、0.1≦b≦0.28、2原子%≦v≦15原子%、0原子%<z≦11.5原子%、4原子%≦w≦原子%、原子%≦t≦原子%、70原子%≦(100−v−z−w−t)≦79原子%、11原子%≦(v+z+w)≦30原子%である。
【0010】
係る磁気素子によれば、軟磁気特性に優れた上記の軟磁性合金粉末からなる圧粉磁心を備え、しかもこの圧粉磁心にコイル部が埋め込まれており、コイル部全体を軟磁性合金が囲む状態になるので、圧粉磁心の磁路断面積を向上させることができ、これによりインダクタンス及び品質係数を向上させることが可能になる。
【0011】
尚、コイル部は、線状若しくはテープ状の導体を螺旋状に巻回することにより構成しても良いし、テープ状の導体を渦巻き状に巻回して構成しても良い。
【0012】
また、本発明の磁気素子は、先に記載の磁気素子であり、前記軟磁性合金粉末と前記導体とが一体成形された後にキュリー点以上の温度であってかつ結晶化温度以下の温度で熱処理されてなることを特徴とする。
【0013】
係る磁気素子によれば、軟磁性合金粉末と導体とが一体成形された後に熱処理されるので、成形時に軟磁性合金粉末に加えられた応力を緩和させることができ、これにより圧粉磁心の軟磁気特性を向上させてインダクタンス及び品質係数を高めることができる。
また、上記圧粉磁心を構成する軟磁性合金は、キュリー点以上の温度であってかつ結晶化温度以下の温度で十分に応力緩和できるので、従来のFe−Al−Si合金のように応力緩和が不十分になるおそれがなく、軟磁性合金の有する磁気特性を最大限に発揮させることができる。
【0014】
次に本発明のインダクタは、先のいずれかに記載の磁気素子を具備してなり、前記1の導体のコイル部が前記圧粉磁心に埋め込まれてなることを特徴とする。
また本発明のトランスは、先のいずれかに記載の磁気素子を具備してなり、前記2以上の導体のコイル部が前記圧粉磁心に埋め込まれてなることを特徴とする。
【0015】
係るインダクタ及びトランスによれば、上記の磁気素子を具備してなるので、インダクタンス及び品質係数に優れたインダクタンス及びトランスを構成できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態を図面を参照して説明する。
図1には本発明の第1の実施形態の磁気素子であるインダクタを示す。本実施形態のインダクタ(磁気素子)21は、ΔTx=Tx−Tg(ただしTxは結晶化開始温度を示し、Tgはガラス遷移温度を示す)の式で表される過冷却液体の温度間隔ΔTxが20K以上の非晶質相を主相とする組織からなる軟磁性合金粉末と、絶縁層により被覆されたコイル部23cを有する1の導体23とが一体成形されることにより、軟磁性合金粉末からなる圧粉磁心22にコイル部23cが埋め込まれ、かつコイル部23cにおいて相互に重ねられた導体23、23が絶縁層を介して相互に接触しているものである。
【0017】
圧粉磁心22は、上記の軟磁性合金粉末と、シリコーン樹脂等からなる結着剤とが混合されてなるものである。また圧粉磁心22には、ステアリン酸塩からなる潤滑剤が添加されていてもよく、更にシランカップリング剤が添加されていてもよい。
【0018】
圧粉磁心22は、軟磁性合金粉末が結着剤によって結着されてなり、組織中に軟磁性合金粉末が残存した状態となっており、軟磁性合金粉末が溶解して均一な組織を構成しているものではない。また、軟磁性合金粉末は、粉末を構成する個々の粒子が結着剤によって絶縁されているため、圧粉磁心22自体の比抵抗が大きくなり、高周波領域における透磁率を高めることができる。
【0019】
軟磁性合金粉末は、過冷却液体の温度間隔ΔTxが20K以上の金属ガラス合金であり、非晶質相を主相とする組織からなるものであって、後に述べる組成式で表され、高い透磁率と高い飽和磁化を示すとともに、低保磁力かつ低鉄損な合金である。またこの金属ガラス合金は非晶質相を主相とする合金であり、結晶化開始温度Txが600℃(873K)程度であるため、Tx以下の温度で熱処理することにより、内部応力が緩和されて磁気特性が向上する。従って、約500℃以下の温度で熱処理が可能なシリコーン樹脂を用いることができ、更に結晶質相を析出させることなく金属ガラス合金粉末の応力を緩和させることができ、高いインダクタンスを有する磁気素子を構成できる。
【0020】
尚、軟磁性合金粉末の過冷却液体の温度間隔ΔTxが20K未満であると、非晶質形成能が低下して結晶質相が析出しやすくなり、軟磁性合金粉末とシリコーン樹脂とを固化成形した後に行う熱処理時に、結晶化させずに十分に内部応力を緩和させることが困難になる。ΔTxが20K以上であれば、熱処理温度が低くても十分に応力緩和を行うことができ、圧粉磁心22の磁気特性を向上させることができる。
【0021】
また図1に示すように、導体23は例えば銅線等の線材からなり、その一部が螺旋状に巻回されてコイル部23cとされ、更にコイル部23cから引出された導体によって端子部23a、23bが形成されている。コイル部23cは圧粉磁心22の内部に埋め込まれ、端子部23a、23bは圧粉磁心22の一面から突き出されている。
図1の圧粉磁心22の断面Aに示すように、コイル部23cにおいて螺旋状に重ねられた導体23、23の間には圧粉磁心22の構成材料である軟磁性合金が回り込んで導体23と密着しており、圧粉磁心22とコイル部23cの間に空隙が全く存在しない状態になっている。また図には現れていないが、コイル部23cにおいて重ねられた導体同士23の一部が絶縁層を介して接触している。更に導体23の表面には例えばポリイミド等の絶縁層が形成されていて、この絶縁層によって導体23と圧粉磁心22、及び導体同士23…が絶縁されている。
【0022】
このように、コイル部23cを構成する導体23の周囲を軟磁性合金が取り囲むため、コイル部23cに対する圧粉磁心22の磁路断面積が向上する。また圧粉磁心22と導体23の間にギャップ等が一切存在しないため、コイル部23cから発した磁界が空間に漏れることなく圧粉磁心22に印加される。このため本実施形態のインダクタ21は、優れたインダクタンス及び品質係数(Q値)を発現させることができる。
【0023】
また、コイル部23cにおいて、導体23、23が螺旋状に重なって絶縁層を介して一部接触しているので、コイル部23c全体の厚みを薄くすることができ、これによりインダクタ21を小型にすることができる。
【0024】
またステアリン酸塩からなる潤滑剤は、軟磁性合金粉末の潤滑性を高める機能があり、軟磁性合金粉末とシリコーン樹脂を混合して成形する際に、軟磁性合金粉末同士が相互に滑りやすくなって粉末が密に充填されて圧粉磁心22の相対密度が向上する。これにより、圧粉磁心22の透磁率が高くなるとともに鉄損が低下する。尚、ステアリン酸塩の具体例としては、ステアリン酸アルミニウム、亜鉛等を例示できる。
【0025】
また、シランカップリング剤は一般に、珪素原子に直接に結合したメトキシ基あるいはエトキシ基等と、珪素原子にメチレン鎖を介して結合した官能基を具備してなり、この官能基が金属と結合し、先のメトキシ基あるいはエトキシ基等が有機物と結合することにより、金属と有機物とを強固に結合させるものである。
本発明の場合、シランカップリング剤によって軟磁性合金粉末とシリコーン樹脂を結合する。従って、前述の官能基としては、軟磁性合金との結合性が良好な官能基を選択することが好ましく、例えば、アミノ基、ビニル基、メチル基のうちのいずれか1種であることが好ましい。
シランカップリング剤により軟磁性合金粉末とシリコーン樹脂を強固に結合させるので、軟磁性合金粉末の表面にシリコーン樹脂がまんべんなく被覆されることになり、軟磁性合金粉末同士の絶縁性を高くすることができ、圧粉磁心22の比抵抗を高めて渦電流発生を防止して透磁率を向上できる。また、シリコーン樹脂の添加量を可能な範囲で低減させることができ、これにより軟磁性合金粉末同士が接近して見かけ上の反磁界を低減でき、圧粉磁心22の透磁率を高くすることができる。
【0026】
シリコーン樹脂等の結着剤の添加量は、圧粉磁心に対して0.05質量%以上5質量%以下の範囲が好ましく、0.1質量%以上3質量%以下の範囲がより好ましい。添加量が0.05質量%未満では、軟磁性合金粉末を完全に絶縁することができなくなって渦電流損失が増大し、透磁率が低下するので好ましくない。また、添加量が5質量%を越えると、軟磁性合金粉末の表面に厚く結着剤が付着し、合金粉末同士の間隔が広がって反磁界の影響が強まり、透磁率が低下するので好ましくない。
【0027】
また、ステアリン酸塩の添加量は、圧粉磁心に対して0.1質量%以上5質量%以下の範囲が好ましく、0.1質量%以上3質量%以下の範囲がより好ましい。添加量が0.1質量%未満では、合金粉末の潤滑性を高くすることができず、これにより圧粉磁心の相対密度が低下して透磁率が低下するとともに鉄損が増大するので好ましくない。また、添加量が5質量%を越えると、加熱成型時にステアリン酸塩が分解してガス発生が起き、これにより圧粉磁心の相対密度が低下して透磁率が低下するとともに鉄損が増大するので好ましくない。
【0028】
更に、シランカップリング剤の添加量は、圧粉磁心に対して0.1質量%以上2質量%以下の範囲が好ましく、0.5質量%以上2質量%以下の範囲がより好ましい。添加量が0.1質量%未満では、軟磁性合金とシリコーン樹脂の密着性が低下し、圧粉磁心の強度が低下するので好ましくない。また、2質量%を越えて添加しても、添加に見合う効果が得られないので好ましくない。
【0029】
更に、本発明に係る圧粉磁心22は、導体23とともに固化成形した後、キュリー点以上の温度であってかつ結晶化温度以下、より具体的には200℃以上500℃以下の範囲で熱処理されることにより、応力緩和されるとともに結晶質相を析出させることがなく、高透磁率で低鉄損の圧粉磁心22を構成することが可能になる。
熱処理温度がキュリー温度未満だと、応力緩和が不十分になるので好ましくなく、また熱処理温度が結晶化温度を超えると、結着剤であるシリコーン樹脂が熱分解するおそれがあるので好ましくない。
【0030】
本実施形態のインダクタ21は、例えば、軟磁性合金粉末とシリコーン樹脂とステアリン酸アルミニウムとシランカップリング剤とを混合して金型に充填し、更に絶縁膜で覆われたコイル部23cを有する導体23を金型内に配置し、これらを(Tx)K以下で圧縮成形して磁心前駆体を形成し、更にこの磁心前駆体を、キュリー温度以上結晶化温度以下、即ち200℃以上500℃以下で熱処理することにより得られる。
【0031】
軟磁性合金粉末を導体23とともに圧縮成形するには、ホットプレス法や押し出し成形法や静水圧プレス法等の他に、放電プラズマ焼結法を用いることができる。図2に、放電プラズマ焼結法に用いる放電プラズマ焼結装置の一例の要部を示す。この例の放電プラズマ焼結装置は、混合物を充填した金型10と、金型10の下パンチ13を支え、後述するパルス電流を流す際の一方の電極ともなるパンチ電極14と、金型10の上パンチ12を下側に押圧し、パルス電流を流す他方の電極となるパンチ電極15と、金型10内の混合物の温度を測定する熱電対17を主体として構成されている。
放電プラズマ焼結装置はチャンバ18内に収納され、チャンバ18は図示略の真空排気装置および雰囲気ガスの供給装置に接続されていて、金型10に充填される混合物を不活性ガス雰囲気などの所望の雰囲気下に保持できるようになっている。
なお、図2では通電装置が省略されているが、上下のパンチ12、13およびパンチ電極14、15には別途設けた通電装置が接続されていてこの通電装置からパルス電流をパンチ12、13およびパンチ電極14、15を介して通電できるように構成されている。
【0032】
そして、軟磁性合金粉末及び導体23が充填された金型10を放電プラズマ焼結装置に設置し、チャンバ18の内部を真空引きするとともに、パンチ12、13で上下から一軸圧力Pを混合物に印加すると同時に、パルス電流を印加して混合物を加熱しつつ圧縮成形する。
この放電プラズマ焼結処理においては、通電電流により混合物を所定の速度で素早く昇温することができ、圧縮成形の時間を短くすることができるので、軟磁性合金(金属ガラス合金)の非晶質相を維持したまま圧縮成形するのに適している。
【0033】
また、一軸圧力Pは、螺旋状に重ねた導体23(コイル部23c)の重なり方向と同じ方向から印加することが好ましい。これにより、螺旋状に重ねられて隣接する導体23,23同士が圧縮時の混合物内において相互に絶縁層を介して接触してコイル部23cの厚みが小さくなり、インダクタ21全体を薄型にできる。
【0034】
本発明において、上記の混合物を圧縮成形する際の温度は、軟磁性合金粉末の結晶化開始温度(Tx)以下にする必要がある。シリコーン樹脂の溶融による金型10からの漏出を防止するとともに軟磁性合金の結晶化を防止するには(Tx)K以下にすることが必要である。シリコーン樹脂がしみ出ると、圧粉磁心22中のシリコーン樹脂の含有量が低下して圧粉磁心22の比抵抗が低下し、高周波帯域における透磁率が低下してしまう。
(Tx)K以下の温度範囲で混合物を圧縮成形するとシリコーン樹脂が適度に軟化し、軟磁性合金粉末を結着させて所定の形状に成形することができる。
尚、(Tx)は軟磁性合金粉末の組成により異なるが、概ね773〜1000Kの範囲である。
【0035】
また圧縮成形の際に混合物に印加する一軸圧力Pについては、圧力が低すぎると圧粉磁心22の密度を高くすることができず、緻密な圧粉磁心22を形成できなくなる。また、圧力が高すぎるとシリコーン樹脂が漏出して圧粉磁心22の比抵抗が低下し、高周波帯域における透磁率が低下してしまう。また一軸圧力Pが高いと導体23が断線するおそれもある。従って一軸圧力Pは、シリコーン樹脂の種類と軟磁性合金の組成によって異なるが、400MPa以上2500MPa以下とするのが好ましく、500MPa以上2000MPa以下とするのがより好ましい。
【0036】
シリコーン樹脂は弾性を有するため、硬化応力が小さく、軟磁性合金粉末に残留する内部応力が小さくなる。このため、磁歪の影響が取り除かれて金属ガラス合金の軟磁気特性が向上する。これにより、圧粉磁心のコアロスを大幅に低減できる。
【0037】
次に上記の磁心22を熱処理して内部応力を除去する。磁心22を所定の温度範囲で熱処理すると、圧縮成形時に生じた軟磁性合金粉末の内部応力を除去することができ、軟磁気特性に優れた圧粉磁心22を製造できる。熱処理の温度は、先に述べた理由によりキュリー温度以上結晶化温度以下、具体的には200℃以上500℃以下の範囲が好ましい。また、熱処理時間は0〜120分程度がよい。
更に、圧縮成形及び熱処理の雰囲気は、真空雰囲気あるいは窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気とすることが好ましく、特に窒素ガス雰囲気とすることがより好ましい。
このように圧縮成形及び熱処理をすることにより、図1に示すインダクタが得られる。
【0038】
上記の製造方法によれば、圧縮成形時に軟磁性合金粉末やシリコーン樹脂等の結着剤がコイル部23cの隙間に回り込むので、コイル部23cと圧粉磁心22との空隙を完全に埋めることができ、圧粉磁心22の磁路断面積を向上できる。
また、熱処理がより好ましくは200℃以上500℃以下で行われるため、シリコーン樹脂等の結着剤を熱分解させることなく、またコイル部23cを被覆するポリイミド等の絶縁膜が損傷を受けることがなく、圧粉磁心22と導体23とが完全に密着した状態で高い絶縁性を保つことができる。更に、200℃以上500℃以下の熱処理で軟磁性合金粉末の応力緩和を充分に行うことができ、圧粉磁心の軟磁気特性を向上できる。
【0039】
(第2の実施形態)
図3及び図4に、本発明の第2の実施形態のインダクタ(磁気素子)を示す。尚、図3及び図4に示すインダクタの構成要素のうち、図1に示す第1の実施形態のインダクタ21の構成要素と同一のものには、同一の符号を付してその説明を省略若しくはその説明を簡単に行う。
【0040】
図3及び図4に示すインダクタ21は、軟磁性合金粉末と、絶縁層44により被覆されたコイル部43cを有する1のテープ状の導体43とが一体成形されることにより、軟磁性合金粉末からなる圧粉磁心22にコイル部43cが埋め込まれ、かつコイル部43cにおいて相互に重ねられた導体43、43が絶縁層44を介して相互に接触しているものである。
【0041】
圧粉磁心22は、第1の実施形態における圧粉磁心と同等のものであり、本発明に係る軟磁性合金粉末と、シリコーン樹脂等からなる結着剤とが混合されてなるものである。また圧粉磁心22には、ステアリン酸塩からなる潤滑剤が添加されていてもよく、更にシランカップリング剤が添加されていてもよい。
【0042】
また図3及び図4に示すように、テープ状の導体43は例えば銅などからなるもので、その一部が螺旋状に巻回されてコイル部43cとされ、更にコイル部43cから引出された導体によって端子部43a、43bが形成されている。コイル部43cは圧粉磁心22の内部に埋め込まれ、端子部43a、43bは圧粉磁心22の一面から突き出されている。
テープ状の導体43は、図4に示すように、幅広のテープ面43d、43dと側面43e、43eとを有し、テープ面43d、43d同士が相互に重ねるように螺旋状に重ねられてコイル部43cが形成されている。テープ面43d、43dの間には絶縁層44、44が配置される形となって、螺旋状に重ねられた導体43、43のテープ面43d、43dの間で電流が直接流れないようになっている。
【0043】
また、図3における圧粉磁心22の断面A並びに図4に示すように、コイル部43cに圧粉磁心22の構成材料である軟磁性合金が密着し、圧粉磁心22とコイル部43cの間に空隙が全く存在しない状態になっている。また導体43を被覆する絶縁層44によって、コイル部43cと圧粉磁心22が絶縁されている。
尚、図4においては螺旋状に重ねられた導体43、43の間には絶縁層44のみが配置されているが、本実施形態ではこれに限らず、導体43,43同士の間の一部に圧粉磁心22を構成する軟磁性合金が介在していても良い。
【0044】
このように、コイル部43cに軟磁性合金が密着しているため、コイル部43cに対する圧粉磁心22の磁路断面積が向上する。また圧粉磁心22と導体43の間にギャップ等が一切存在しないため、コイル部43cから発した磁界が空間に漏れることなく圧粉磁心22に印加される。このため本実施形態のインダクタ41は、優れたインダクタンス及び品質係数(Q値)を発現させることができる。
更に、コイル部43cにおける導体43、43同士がテープ面43dを介して相互に重ねられているので、コイル部43c全体の厚みを薄くすることができ、これによりインダクタ41を小型にすることができる。
【0045】
本実施形態のインダクタ41は、テープ状の導体43を用いる他は第1の実施形態のインダクタ21とほぼ同じ方法で製造される。
【0046】
(第3の実施形態)
図5及び図6に、本発明の第3の実施形態のインダクタ(磁気素子)を示す。尚、図5及び図6に示すインダクタの構成要素のうち、図1に示す第1の実施形態のインダクタ21の構成要素と同一のものには、同一の符号を付してその説明を省略若しくはその説明を簡単に行う。
【0047】
図5及び図6に示すインダクタ51は、軟磁性合金粉末と、絶縁層54により被覆されたコイル部53cを有する1のテープ状の導体53とが一体成形されることにより、軟磁性合金粉末からなる圧粉磁心22にコイル部53cが埋め込まれ、かつコイル部53cにおいて相互に重ねられた導体53、53が絶縁層54を介して相互に接触しているものである。
【0048】
圧粉磁心22は、第1の実施形態における圧粉磁心と同等のものであり、本発明に係る軟磁性合金粉末と、シリコーン樹脂等からなる結着剤とが混合されてなるものである。また圧粉磁心22には、ステアリン酸塩からなる潤滑剤が添加されていてもよく、更にシランカップリング剤が添加されていてもよい。
【0049】
また図5及び図6に示すように、テープ状の導体53は例えば銅などからなるもので、その一部が渦巻き状に巻回されてコイル部53cとされ、更にコイル部53cの両端から端子部53a、53bが引き出されている。コイル部53cは圧粉磁心52の内部に埋め込まれ、端子部53a、53bは圧粉磁心22の一面から突き出されている。
テープ状の導体53は、図6に示すように、幅広のテープ面53d、53dと側面53e、53eとを有し、テープ面53d、53d同士が相互に重ねるように渦巻き状に巻回されてコイル部53cが形成されている。テープ面53d、53dの間には絶縁層54が配置される形となって、渦巻き状に重ねられた導体53、53のテープ面53d、53dの間で電流が直接流れないようになっている。
【0050】
また、図5における圧粉磁心22の断面A並びに図6に示すように、コイル部53cの周囲に圧粉磁心22の構成材料である軟磁性合金が回り込んで密着し、圧粉磁心22とコイル部53cの間に空隙が全く存在しない状態になっている。また導体53を被覆する絶縁層54によって、導体53と圧粉磁心22が絶縁されている。
尚、図6においては渦巻き状に重ねられた導体53、53の間には絶縁層54のみが配置されているが、本実施形態ではこれに限らず、渦巻き状に重ねられた導体53,53同士の間の一部に圧粉磁心22を構成する軟磁性合金が介在していても良い。
【0051】
このように、コイル部53cに軟磁性合金が密着しているため、コイル部53cに対する圧粉磁心22の磁路断面積が向上する。また圧粉磁心22と導体53の間にギャップ等が一切存在しないため、コイル部53cから発した磁界が空間に漏れることなく圧粉磁心22に印加される。このため本実施形態のインダクタ51は、優れたインダクタンス及び品質係数(Q値)を発現させることができる。
更に、導体53が渦巻き状に巻かれてコイル部53cが形成されるため、導体53の幅がコイル部53c全体の厚みとなる。従って導体幅を調整することでコイル部53cを薄くすることが可能となり、インダクタ51を小型にすることができる。
【0052】
本実施形態のインダクタ51は、テープ状の導体53を用いる他は第1の実施形態のインダクタ21とほぼ同じ方法で製造される。
【0053】
(第4の実施形態)
図7に、本発明の第4の実施形態のトランス(磁気素子)を示す。尚、図7に示すトランスの構成要素のうち、図1に示す第1の実施形のインダクタ21の構成要素と同一のものには、同一の符号を付してその説明を省略若しくはその説明を簡単に行う。
【0054】
図7に示すトランス61は、軟磁性合金粉末と、絶縁層により被覆された一次コイル部63c及び2次コイル部64cを有する2のテープ状の一次導体63及び二次導体64とが一体成形されることにより、軟磁性合金粉末からなる圧粉磁心22に各コイル部63c、64cが埋め込まれ、かつ各コイル部63c、64cにおいて相互に重ねられた各導体63、64がそれぞれ絶縁層を介して相互に接触しているものである。
【0055】
圧粉磁心22は、第1の実施形態における圧粉磁心と同等のものであり、本発明に係る軟磁性合金粉末と、シリコーン樹脂等からなる結着剤とが混合されてなるものである。また圧粉磁心22には、ステアリン酸アルミニウムからなる潤滑剤が添加されていてもよく、更にシランカップリング剤が添加されていてもよい。
【0056】
また図7に示すように、線状の一次導体63は例えば銅などからなるもので、その一部が螺旋状に重ねられて一次コイル部63cとされ、更に一次コイル部63cから引出された導体によって端子部63a、63bが形成されている。一次コイル部63cは圧粉磁心22の内部に埋め込まれ、端子部63a、63bは圧粉磁心22の一面から突き出されている。
同様に、線状の二次導体64は銅などからなるもので、その一部が螺旋状に重ねられて二次コイル部64cとされ、更に二次コイル部64cから引出された導体によって端子部64a、64bが形成されている。二次コイル部64cは圧粉磁心22の内部に埋め込まれ、端子部64a、64bは圧粉磁心22の他面から突き出されている。
【0057】
図7の圧粉磁心22の断面Aに示すように、一次、二次コイル部63c、64cにおいて螺旋状に重ねられた各導体63、64の間には圧粉磁心22の構成材料である軟磁性合金が回り込んで密着しており、圧粉磁心22と各コイル部63c、64cの間に空隙が全く存在しない状態になっている。また図には現れていないが、各コイル部63c、64cにおいて螺旋状に重なる導体同士63、64がそれぞれ一部接触している。更に各導体63、64の表面には例えばポリイミド等の絶縁層が形成されていて、この絶縁層によって各導体63、64と圧粉磁心22、及び各導体同士63…、64…が絶縁されている。
【0058】
このように、各コイル部63c、64cの周囲を軟磁性合金が取り囲むため、各コイル部63c、64cに対する圧粉磁心22の磁路断面積が向上する。また圧粉磁心22と各導体63、64の間にギャップ等が一切存在しないため、一次コイル部63cから発した磁界が空間に漏れることなく圧粉磁心22に印加され、この磁界が空間に漏れることなく二次コイル部64cに印加される。このため本実施形態のトランス61は、優れた変換効率及びインダクタンス並びに品質係数(Q値)を発現させることができる。
【0059】
また、各コイル部63c、64cにおいて、各導体63、64が螺旋状に重なって一部接触しているので、各コイル部63c、64c全体の厚みを薄くすることができ、これによりトランス61を小型にすることができる。
【0060】
本実施形態のトランス61は、一次導体63及び二次導体64を用いる他は第1の実施形態のインダクタ21とほぼ同じ方法で製造される。
【0061】
(軟磁性合金の組成)
本発明の磁気素子の圧粉磁心を構成する軟磁性合金粉末は、磁性を示すFeと、非晶質形成能を有するP、C、Bを少なくとも具備してなり、非晶質相を主相とする組織から構成され、優れた軟磁気特性を示す。
また、Alを添加しても良く、Ni、Coのいずれか一方または両方をFe置換で添加しても良く、更にP、C、Bに加えてSiを添加しても良い。またX(Cr、V、Moより選ばれる1種または2種以上の元素)を添加しても良い。
【0062】
また本発明に係る軟磁性合金粉末は、過冷却液体の温度間隔ΔTxが20K以上を示すものであり、組成によってはΔTxが30K以上、さらには50K以上という顕著な温度間隔を有し、これまでの知見から知られる他の合金からは全く予期されないものであり、軟磁性についても室温で優れた特性を有しており、これまでの知見に見られない全く新規なものである。
【0063】
従来から軟磁性合金の1種として、Fe-Al-Ga-C-P-Si-B系の金属ガラス合金が知られている。この従来の軟磁性合金に対して本発明に係る軟磁性合金は、Gaを除去してこのGa置換でAl若しくはFeを増量させたものであり、従来から必須元素と考えられてきたGaを除去しても非晶質相を形成することが確認され、更には過冷却液体の温度間隔ΔTxをも発現することが見出されたものである。
【0064】
また本発明に係る軟磁性合金粉末は、従来のFe-Al-Ga-C-P-Si-B系合金よりもFe、Ni、Co等の磁性元素を多く含むために高い飽和磁化を示す。
また組織全体が完全な非晶質相であることから、適度な条件で熱処理した場合に結晶質相が析出させることなく内部応力を緩和でき、このため圧粉磁心を成形した後に熱処理することで軟磁気特性をより向上させることができる。
【0065】
更に本発明に係る軟磁性合金粉末は、非晶質の粉末を作る上で必要な非晶質形成能を十分に維持しつつ、従来のFe-Al-Ga-C-P-Si-B系合金よりも磁気特性を向上させることができ、なおかつ、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法など、様々な粉末形成方法に耐え得る耐食性を得ることができるものである。
【0066】
また本発明の非晶質軟磁性合金は、過冷却液体の温度間隔ΔTxが大きいために、溶融状態から冷却するとき、広い過冷却液体領域を有し、結晶化することなく温度の低下に伴って、ガラス遷移温度Tgに至って非晶質相を容易に形成する。
従って、冷却速度が比較的遅くても充分に非晶質相を形成することが可能であり、例えばガスアトマイズ法のように、合金溶湯を不活性ガスにより噴霧して急冷する方法によって、非晶質相組織を主体とする粉末状の合金を得ることができ、実用性に優れたものとなる。
【0067】
上記の非晶質軟磁性合金の一例として、下記の組成式で表すものを挙げることができる。
Fe100-x-y-z-w-tAlxyzwt
ただし、XはCr、Mo、Vより選ばれる1種または2種以上の元素であり、組成比を示すx、y、z、w、tは、0原子%≦x≦10原子%、2原子%≦y≦15原子%、0原子%<z≦11.5原子%、4原子%≦w≦10原子%、0原子%≦t≦8原子%、70原子%≦(100−x−y−z−w−t)≦79原子%、11原子%≦(y+z+w)≦30原子%である。
【0068】
また、上記の非晶質軟磁性合金の別の例として、下記の組成式で表すものを挙げることができる。
(Fe1-a a)100-x-y-z-w-tAlxyzwt
ただし、XはCr、Mo、Vより選ばれる1種または2種の元素であり、TはCo、Niより選ばれる1種または2種の元素であり、組成比を示すa、x、y、z、w、tは、0.1≦a≦0.15、0原子%≦x≦10原子%、2原子%≦y≦15原子%、0原子%<z≦11.5原子%、4原子%≦w≦10原子%、0原子%≦t≦8原子%、70原子%≦(100−x−y−z−w−t)≦79原子%、11原子%≦(y+z+w)≦30原子%である。
【0069】
更に、上記の非晶質軟磁性合金の他の例として、下記の組成式で表すものを挙げることができる。
Fe100-x-v-z-w-tAlx(P1-bSib)vzwt
ただし、XはCr、Mo、Vより選ばれる1種または2種の元素であり、組成比を示すb、x、v、z、w、tは、0.1≦b≦0.28、0原子%≦x≦10原子%、2原子%≦v≦15原子%、0原子%<z≦11.5原子%、4原子%≦w≦10原子%、0原子%≦t≦8原子%、70原子%≦(100−x−y−z−w−t)≦79原子%、11原子%≦(v+z+w)≦30原子%である。
【0070】
更にまた、上記の非晶質軟磁性合金のその他の例として、下記の組成式で表すものを挙げることができる。
(Fe1-aa)100-x-v-z-w-tAlx(P1-bSib)vzwt
ただし、XはCr、Mo、Vより選ばれる1種または2種の元素であり、TはCo、Niより選ばれる1種または2種の元素であり、組成比を示すa、b、x、v、z、w、tは、0.1≦a≦0.15、0.1≦b≦0.28、0原子%≦x≦10原子%、2原子%≦v≦15原子%、0原子%<z≦11.5原子%、4原子%≦w≦10原子%、0原子%≦t≦8原子%、70原子%≦(100−x−v−z−w−t)≦79原子%、11原子%≦(v+z+w)≦30原子%である。
【0071】
上記の組成の軟磁性合金粉末は、合金の融点をTmとしたとき、Tg/Tm≧0.57を示すとともに、飽和磁化σsが180×10-6Wb・m/kg以上を示す。
【0072】
また、FeとP、C、Bとを少なくとも含む上記の軟磁性合金粉末の好ましい組成範囲は、前記の組成比のうちのx、y、z、w、tが、0原子%≦x≦6原子%、2原子%≦y≦15原子%、0原子%<z≦11.5原子%、4原子%≦w≦10原子%、0原子%≦t≦4原子%、76原子%≦(100−x−y−z−w−t)≦79原子%、18原子%≦(y+z+w)≦24原子%となる範囲である。
また、FeとP、C、B、Siとを少なくとも含む上記の非晶質軟磁性合金の好ましい範囲は、前記の組成比のうちのx、v、z、w、tが、0原子%≦x≦6原子%、2原子%≦v≦15原子%、0原子%<z≦11.5原子%、4原子%≦w≦10原子%、0原子%≦t≦4原子%、76原子%≦(100−x−v−z−w−t)≦79原子%、18原子%≦(v+z+w)≦24原子%となる範囲である。
【0073】
上記の好ましい組成範囲の非晶質軟磁性合金においては、Tg/Tm≧0.57を示すとともに、飽和磁化σsが200×10-6Wb・m/kg以上を示す。
【0074】
更に、FeとP、C、Bとを少なくとも含む上記の非晶質軟磁性合金のより好ましい組成範囲は、前記の組成比のうちのx、y、z、w、tが、0原子%≦x≦5原子%、2原子%≦y≦15原子%、0原子%<z≦11.5原子%、4原子%≦w≦10原子%、0原子%≦t≦3原子%、77原子%≦(100−x−y−z−w−t)≦79原子%、18原子%≦(y+z+w)≦23原子%となる範囲である。
更にまた、FeとP、C、B、Siとを少なくとも含む上記の非晶質軟磁性合金のより好ましい組成範囲は、前記の組成比のうちのx、v、z、w、tが、0原子%≦x≦5原子%、2原子%≦v≦15原子%、0原子%<z≦11.5原子%、4原子%≦w≦10原子%、0原子%≦t≦3原子%、77原子%≦(100−x−v−z−w−t)≦79原子%、18原子%≦(v+z+w)≦23原子%となる範囲である。
【0075】
上記のより好ましい組成の非晶質軟磁性合金においては、Tg/Tm≧0.57を示すとともに、飽和磁化σsが210×10-6Wb・m/kg以上を示す。
【0076】
また、上記の非晶質軟磁性合金を示す組成比tは、2原子%≦t≦8原子%の範囲であっても良く、2原子%≦t≦4原子%の範囲であっても良く、2原子%≦t≦3原子%の範囲であっても良い。
【0077】
以下に、本発明の非晶質軟磁性合金の組成限定理由について説明する。
Feは磁性を担う元素であって、本発明に係る軟磁性合金粉末に必須の元素である。また、Feの一部をCo、Niのいずれか一方または両方の元素Tで置換しても良い。
Fe単独、またはFeと元素Tとの合計の組成比を高くすると、軟磁性合金粉末の飽和磁化σsを向上できる。
【0078】
Fe単独、またはFeと元素Tとの合計の組成比は、70原子%以上79原子%以下であることが好ましく、76原子%以上79原子%以下であることがより好ましく、77原子%以上79原子%以下であることが更に好ましい。
Fe単独、またはFeと元素Tとの合計の組成比が70原子%未満では、飽和磁化σsが180×10-6Wb・m/kg未満に低下してしまうので好ましくない。また、組成比が79原子%を越えると、合金の非晶質形成能の程度を示すTg/Tmが0.57未満になり、非晶質形成能が低下するので好ましくない。
尚、組成比が76原子%以上であれば合金の飽和磁化σsを200×10-6Wb・m/kg以上にでき、組成比が77原子%以上であれば合金の飽和磁化σsを210×10-6Wb・m/kg以上にできる。
【0079】
また、Fe置換で元素Tを添加する場合には、上記組成式中の組成比aで示すように、Feの添加量の10〜15%を置換して元素Tを添加することが好ましい。元素Tを添加することにより、合金を構成する原子の充填密度が向上し、原子の再配列が抑制されることにより熱的安定性が向上する。特にCoを添加すると、キュリー温度が向上し、また融点が低下することにより非晶質形成能も向上する。
元素Tの添加量がFe量の10%未満では元素Tの添加効果が見られず、添加量がFe量の15%を越えるとFe量が相対的に低下して飽和磁化が低下してしまうので好ましくない。
【0080】
Alは、本発明に係る軟磁性合金粉末の非晶質形成能を向上させるために必要に応じて添加する元素である。Alの組成比xを0原子%以上10原子%以下の範囲とすることにより、合金の非晶質形成能を更に向上させることができる。
具体的には、組成比xが0原子%以上10原子%以下であるときに、合金の非晶質形成能の程度を示すTg/Tmが0.57以上となり、飽和磁化σsが180×10-6Wb・m/kg以上にできる。しかし、AlをFe置換で添加する場合、飽和磁化σsが低下し、コストも増大するため、Alは必要に応じて添加するのがよい。
またAlは、Feとの間での混合エンタルピーが負であり、Feよりも原子半径が大きく、更にFeよりも原子半径が小さいP、B、Siとともに用いることにより、結晶化し難く、非晶質構造が熱的に安定化した状態となる。
Alの組成比xは、0原子%以上10原子%以下であることが好ましく、0原子%以上6原子%以下であることがより好ましく、0原子%以上5原子%以下であることが更に好ましい。組成比xが10原子%を越えると、Fe量が相対的に低下して飽和磁化σsが低下し、またTg/Tmが0.57未満になって非晶質形成能が低下するので好ましくない。
また、Alを添加する場合、Alの添加効果、即ち、非晶質形成能と熱的安定性の向上を得るためには、少なくとも1原子%以上添加することが好ましい。
【0081】
また、Fe単独、またはFeと元素Tの合計の組成比が76原子%以上であり、かつAlの組成比xが0原子%以上6原子%以下の場合に、合金の飽和磁化σsを200×10-6Wb・m/kg以上にできる。
更に、Fe単独、またはFeと元素Tの合計の組成比が77原子%以上であり、かつAlの組成比xが0原子%以上5原子%以下の場合に、合金の飽和磁化σsを210×10-6Wb・m/kg以上にできる。
【0082】
C、P、B及びSiは、非晶質形成能を高める元素であり、FeとAlにこれらの元素を添加して多元系とすることにより、FeとAlのみの2元系の場合よりも安定して非晶質相が形成される。
特にPはFeと低温(約1050℃)で共晶組成を持つため、組織の全体が非晶質相になるとともに過冷却液体の温度間隔ΔTxが発現しやすくなる。
またPとSiを同時に添加すると、過冷却液体の温度間隔ΔTxがより大きくなって非晶質形成能が向上し、非晶質単相の組織を得る際の製造条件を比較的簡易な方向に緩和できる。
【0083】
Siを無添加とした場合におけるPの組成比yは、2原子%以上15原子%以下であることが好ましく、5原子%以上15原子%以下であることがより好ましく、7原子%以上13原子%以下であることが最も好ましい。
Pの組成比yが上記の範囲であれば、過冷却液体の温度間隔ΔTxが発現して合金の非晶質形成能が向上する。
【0084】
PとSiを同時に添加する場合は、PとSiの合計量を示す組成比vが2原子%以上15原子%以下であることが好ましく、8原子%以上15原子%以下であることがより好ましく、10原子%以上14原子%以下であることが最も好ましい。
PとSiの合計量を示す組成比vが上記の範囲であれば、過冷却液体の温度間隔ΔTxが向上し、これにより合金の非晶質形成能が向上する。
【0085】
また、PとSiを同時に添加した場合のSiとPとの比を表す組成比bは、0.1≦b≦0.28であることが好ましい。組成比bが0.1未満ではSiの添加効果が見られないので好ましくなく、組成比bが0.28を越えるとSiの量が過剰になって過冷却液体領域ΔTxが消滅するおそれがあるので好ましくない。
PとSiの組成比を示すb、vを上記の範囲とすれば、過冷却液体の温度間隔ΔTxを向上させ、非晶質単相となるバルクの大きさを増大させることができる。
【0086】
またBの組成比wは、4原子%以上10原子%以下であることが好ましく、6原子%以上10原子%以下であることがより好ましく、6原子%以上9原子%以下であることが最も好ましい。
更にCの組成比zは、0原子%を越えて11.5原子%以下であることが好ましく、2原子%以上8原子%以下であることがより好ましく、2原子%以上5原子%以下であることが最も好ましい。
【0087】
そして、これらの半金属元素C、P、B及びSiの合計の組成比(y+z+w)または(v+z+w)は、11原子%以上30原子%以下であることが好ましく、18原子%以上24原子%以下とすることがより好ましく、18原子%以上23原子%以下とすることが更に好ましい。
半金属元素の合計の組成比が11原子%未満であると、軟磁性合金粉末の非晶質形成能が低下して非晶質相単相組織を得ることができないので好ましくなく、半金属元素の合計の組成比が30原子%を越えると、特にFeの組成比が相対的に低下し、飽和磁化σsが低下するので好ましくない。
【0088】
また、Fe単独またはFeと元素Tの合計の組成比が76原子%以上のときに、半金属元素C、P、B及びSiの合計の組成比(y+z+w)または(v+z+w)を18原子%以上24原子%以下とすることにより、合金の飽和磁化σsを200×10-6Wb・m/kg以上にできる。
更に、Fe単独またはFeと元素Tの合計の組成比が77原子%以上のときに、半金属元素C、P、B及びSiの合計の組成比(y+z+w)または(v+z+w)を18原子%以上23原子%以下とすることにより、合金の飽和磁化σsを210×10-6Wb・m/kg以上にできる。
【0089】
また、Crを添加することによって合金の耐食性が向上する。例えば、水アトマイズ法において、溶湯が直接水に触れたとき、更には粉末の乾燥工程において生じる錆の発生を防ぐことができる(目視レベル)。Crの組成比tは、0原子%以上8原子%以下であることが好ましい。Crを添加すると合金の耐食性を高めることができるが、Crの組成比tが8原子%を越えるとFe濃度が相対的に低下し、磁気特性が低下するので好ましくない。
また組成比tは、0原子%以上4原子%以下であることがより好ましく、0原子%以上3原子%以下であることが更に好ましい。
更に組成比tは、1原子%以上8原子%以下でもよく、1原子%以上4原子%以下でもよく、1原子%以上3原子%以下でもよい。
組成比tが2原子%以上であれば合金の耐食性をより向上させることができる。また、組成比tが4原子%以下であれば飽和磁化σsを向上させることができ、組成比tが3原子%以下であれば飽和磁化σsをより向上させることができる。
また、同様な効果はCrの他にMo、Vにもあり、これらの元素を単独で添加するか、Mo、VとMo、CrとV、Cr及びCr、Mo、V等の組合せで複合添加しても良い。これらの元素のうち、Crは耐食性に最も良く効き、Mo,Vは耐食性がCrより若干劣るものの非晶質形成能が向上するため、必要に応じてこれらの元素を選択する。
また、上記の組成に、Geが4原子%以下含有されていてもよく、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Zrのうち少なくとも1種以上が0〜7原子%含有されていてもよい。
上記のいずれの場合の組成においても、本発明においては、過冷却液体の温度間隔ΔTxは20K以上、組成によっては35K以上が得られる。
また、上記組成でなくとも、ΔTxが20K以上で200〜500℃の熱処理温度で歪み取りができるものであれば、本発明に適用できる。
また上記の組成で示される元素の他に不可避的不純物が含まれていても良い。
【0090】
本発明に係る軟磁性合金粉末は、溶製してから単ロールもしくは双ロールによる急冷法によって、さらには液中紡糸法や溶液抽出法によって、あるいはガスアトマイズ法または水アトマイズ法によって、もしくは射出成形法によって、バルク状、リボン状、線状体、粉末等の種々の形状として製造される。
特に、従来公知の非晶質軟磁性合金薄帯を粉砕して得られた薄片状の粒子からなる粉末に対し、本発明では上記のガスアトマイズ法または水アトマイズ法によって、形状が略球状の粒子からなる合金粉末を得ることができる。
尚、球状の軟磁性合金粉末を用いることで、本発明に係る圧粉磁心の密度を向上することができ、圧粉磁心の軟磁気特性を高めることができる。
【0091】
ガスアトマイズ法により得られた前記組成の軟磁性合金粉末は、室温において磁性を有し、また熱処理によってより良好な磁性を示す。このため優れた軟磁気特性を有する材料として、本発明の磁気素子の圧粉磁心として好適に用いることができる。
なお、製造方法について付言すると、合金の組成、そして製造のための手段と製品の大きさ、形状等によって、好適な冷却速度が決まるが、通常は1〜104K/s程度の範囲を目安とすることができる。そして実際には、ガラス相(glassy phase)に結晶相としてのFe3B、Fe2B、Fe3P等の相が析出するかどうかを確認することで決めることができる。
【0092】
上記の軟磁性合金粉末は、例えばガスアトマイズ法により製造できる。ガスアトマイズ法は、上述の組成からなる軟磁性合金の溶湯を、高圧の不活性ガスとともに不活性ガスで満たされたチャンバ内部に霧状に噴霧し、該不活性ガス雰囲気中で急冷して合金粉末を製造するというものである。
【0093】
軟磁性合金の溶湯は、例えば、加熱装置付きの溶湯るつぼに軟磁性合金の合金溶湯を充填し、この合金溶湯を溶湯るつぼの底部に設けられた溶湯ノズルから不活性ガスが充填されたチャンバ内部に向けて滴下させるか、若しくは溶湯るつぼ内に不活性ガスを加圧状態で導入して合金溶湯を溶湯ノズルから霧状に噴出させる。
溶湯を滴下させる場合は、別のノズルから不活性ガスを溶湯流に向けて噴出させることで、溶湯流を霧化させる。
【0094】
霧状にされた合金溶湯はチャンバ内で急冷凝固し、非晶質相を主相とする略球状の粒子となってチャンバの底部に堆積する。このようにして軟磁性合金粉末が得られる。
【0095】
軟磁性合金粉末の粒径は、噴出する不活性ガスの圧力、溶湯の滴下速度、溶湯ノズルの内径等により調整することができ、数μm〜百数十μmの粒径のものを得ることができる。
【0096】
また、導体との一体成形後に行う熱処理とは別に、得られた合金粉末に対して熱処理しても良い。熱処理をすることで合金の内部応力が緩和され、軟磁性合金粉末の軟磁気特性をより向上できる。熱処理温度は、合金のキュリー温度以上ガラス遷移温度Tg以下の範囲が好ましい。また熱処理時間は、合金の内部応力を充分に緩和させるとともに結晶質相の析出のおそれのない範囲が好ましく、例えば30〜300分の範囲が好ましい。
【0097】
【実施例】
[実験例1:FePC(B・Cr(V、Mo))系合金の物性]
Feと、Fe-C合金、Fe-P合金、B、Si及びCr(V、Mo)を原料としてそれぞれ所定量秤量し、減圧Ar雰囲気下においてこれらの原料を高周波誘導加熱装置で溶解し、種々の組成のインゴットを作製した。このインゴットを溶湯るつぼ内に入れて溶解し、溶湯るつぼの溶湯ノズルから合金溶湯を滴下するとともに水流を噴射して滴下中の合金溶湯を霧状にし、この霧状の合金溶湯を急冷させるいわゆる水アトマイズ法により、粒径が1〜150μmの範囲の試料1〜11の軟磁性合金粉末を得た。得られた粉末について、真空中、120℃で120分間加熱することにより乾燥を行った。
【0098】
各軟磁性合金粉末の組成は、表1に示す通りであった。各合金粉末についてDSC測定を行い、ガラス遷移温度Tg、結晶化開始温度Tx、キュリー温度Tc及び融点Tmを測定するとともに、過冷却液体の温度間隔ΔTx及びTg/Tmを求めた。
表1に、各合金粉末のキュリー温度Tc、ガラス遷移温度Tg、結晶化開始温度Tx、ΔTx及び換算ガラス化温度Tg/Tmを示す。
【0099】
更に、得られた非晶質軟磁性合金の粉末について、VSMにより飽和磁化σsを測定し、インピーダンスアナライザーによって1kHzにおける実効透磁率μeを測定し、BHループトレーサにより保磁力Hcを測定し、更に磁歪λsを測定した。尚、保磁力Hc、透磁率μe及び磁歪λsは、同じ組成の合金溶湯を単ロール法により急冷して製造した合金薄帯を用いて測定し、また飽和磁化σsは、熱処理前の合金粉末を用いて測定した。表1に各合金粉末の飽和磁化σs、保磁力Hc、実効透磁率μe及び磁歪λsを示す。
【0100】
【表1】
Figure 0004178004
【0101】
表1に示す試料2〜6の合金粉末は、Alを0とした本発明に係るFePCB系またはFePCSi系合金である。また試料7〜20の合金粉末は、Crを添加すると共にAlを0とした本発明に係るFePCCr(B)系合金である。試料1は、比較例の合金(FePC系合金)である。
表1に示すように、試料2〜20の本発明に係る軟磁性合金粉末は、Alが添加されていないにもかかわらず、ΔTxが20以上を示しており、金属ガラス合金であることが分かる。
次に試料2〜6を見ると、飽和磁化σsが180×10-6Wb・m/kgを越えるとともに、実効透磁率μeが10000を越えており、試料1(比較例)より優れた磁気特性を示すことが分かる。
【0102】
次にCrを添加した試料7〜20では、飽和磁化σsが試料2〜6よりもやや低くなるものの、実効透磁率μeはいずれも10000を越えており、特に試料11のμeは26900と高い値を示している。従ってCrの組成比が2〜3原子%の範囲では磁気特性が劣化することなく、Cr無添加のものと比較して遜色のない程度の磁気特性を示している。
更に試料7〜20は、急冷直後に外観を観察したところ、製造時に水に触れたにもかかわらず、Feの腐食による酸化鉄の発生が認められなかった。このことはCr添加による耐食性向上の効果が明確に現れていることを示している。一方、試料2〜6では、急冷直後の外観観察の結果、製造時に水に触れたことによると思われる腐食が発生し、赤茶色の酸化鉄が一部生じていることが確認された。ただし試料2〜6については、酸化鉄の発生がそれほど大量ではなかったため、磁気特性への悪影響が見られなかったものと思われる。また、Crに代えてMo、Vを添加した試料21,22も各磁気特性は良好な値を示しており、耐食性も良好であった。
【0103】
次に、JIS C5028に基づき、塩化ナトリウムの1級相当品の塩水を各試料に96時間噴霧し、その外観を観察した結果、Cr若しくはMo、Vを添加しない試料1〜6に関しては、その外観は著しく変色し発錆していたのに対し、試料7〜12,14,16,17,19〜22はほぼ変色はなく発錆もしていなかった。またCrを2原子%未満添加した試料13,15,18に関しては若干の変色が見られ、これらの試料は水アトマイズの工程における耐食性は優れているものの、長時間の耐環境性はCr若しくはMo、Vを2原子%以上添加したものより劣っていることが分かった。これにより、Cr、Mo、Vより選ばれる1種または2種以上の元素からなるXは、優れた耐食性を得るために2原子%以上添加するのが好ましいことが分かる。
【0104】
このように、本発明に係る軟磁性合金粉末は、高い飽和磁化と透磁率を有しており、本発明の磁気素子の圧粉磁心を構成する材料として好適に用いることができる。
【0105】
[実験例2:インダクタの特性]
実験例1と同様の水アトマイズ法により、Fe74.43Cr1.969.042.167.54Si4.87なる組成の軟磁性合金粉末を得た。
この軟磁性合金粉末にシリコーン樹脂を添加し、更に潤滑剤を添加して10分間混合した後、この混合物を、螺旋状に巻回したテープ状の導体とともに金型に充填し、図2に示す放電プラズマ焼結装置により150℃で5.9MPaの圧力を5分間印加して圧縮成形を行うことにより、図3及び図4に示すような実施例1のインダクタを得た。この実施例のインダクタの圧粉磁心は厚さ2mm、各辺が12mmの直方体であり、平角の導体は外径10mm、内径5.5mm、導体厚0.3mmの銅製のもので、巻回数は5回であり、表面にはポリイミドの絶縁層を成膜したものを用いた。
【0106】
なお、潤滑剤にはステアリン酸亜鉛を用いた。また上記の混合物におけるシリコーン樹脂の添加量は1.6質量%であり、潤滑剤の添加量は0.3質量%であり、残部が軟磁性合金粉末であった。
【0107】
得られたインダクタについて、周波数10〜10000kHzにおけるインダクタンスL及び品質係数(Q値)を測定した。結果を図8及び図9に示す。
【0108】
また比較例として、パーマロイ合金粉末とシリコーンレジンとを混合して圧縮成形することにより、図10に示すようなE型コアを2つ形成し、各E型コアを接合するとともに巻線(巻数5回)することにより、図10に示すような従来の形状の圧粉磁心を有する比較例1のインダクタを製造した。
また、パーマロイ合金粉末に代えてフェライト粉末を用いたこと以外は比較例1と同様にして比較例2のインダクタを製造した。
また、Fe−Al−Si合金粉末を用いて一方のE型コアを製造し、フェライト粉末を用いてもう一方のE型コアを製造し、これた2つのコアを接合して圧粉磁心としたこと以外は比較例1と同様にして比較例3のインダクタを製造した。
また、パーマロイ合金粉末に代えてFe−Al−Si合金粉末を用いたこと以外は比較例1と同様にして比較例4のインダクタを製造した。
また、パーマロイ合金粉末に代えてFe74.43Cr1.969.042.167.54Si4.87なる組成の軟磁性合金粉末を用いたこと以外は比較例1と同様にして比較例5のインダクタを製造した。
【0109】
得られた比較例1〜5のインダクタについて、周波数10〜10000kHzにおけるインダクタンスL及び品質係数(Q値)を測定した。結果を図8及び図9に併せて示す。
【0110】
図8及び図9に示すように、実施例1のインダクタは、比較例4(Fe−Al−Si合金)よりもインダクタンスLが劣るものの、比較例5(Fe74.43Cr1.969.042.167.54Si4.87)よりも品質係数QおよびインダクタンスLが高くなっている。実施例1が比較例5に対してQおよびLが高くなるのは、従来の形状の圧粉磁心を備えた比較例5では巻線の一部が圧粉磁心のヨークに接することなく露出しているのに対し、実施例1のインダクタではコイル部が圧粉磁心に埋め込まれて密着していることで磁路断面積が向上しているため、L及びQが高くなったものと考えられる。これにより、実施例1のインダクタの小型化が可能になる。
【0111】
尚、実施例1のインダクタンスLは比較例4より劣るものの、品質係数Qでは比較例4よりも優れており、また他の比較例1〜3よりも200kHz以上で良好なQ値を示していることがわかる。
【0112】
[実験例3:熱処理効果の確認]
実験例1と同様の水アトマイズ法により、Fe74.43Cr1.969.042.167.54Si4.87なる組成の軟磁性合金粉末を得た。
この軟磁性合金粉末にシリコーン樹脂を添加し、更に潤滑剤を添加して10分間混合した後、混合物を金型に充填し、図2に示す放電プラズマ焼結装置により150℃で5.9MPaの圧力を5分間印加して圧縮成形を行うことにより、外径12mm、内径6mm、厚さ2mmのリング状の圧粉磁心を得た。さらにこの圧粉磁心に対して490℃で60分間加熱する条件で熱処理を行った。
【0113】
得られた圧粉磁心について、インピーダンスアナライザーによって100kHzにおける実効透磁率μeを測定した。また、圧粉磁心に巻線して、品質係数Qならびにコアロスを測定した。コアロスは、励磁磁界強度0.1T、周波数100kHzの条件で測定した。結果を表2に示す。
【0114】
【表2】
Figure 0004178004
【0115】
表2に示すように、熱処理を行うことによって透磁率が1.5倍程度に向上し、品質係数は6倍以上に向上し、コアロスは10分の1以下に減少していることが分かる。このように、熱処理を行うことで、磁気特性が大幅に向上することが分かる。
従って、本実験例で使用した軟磁性合金粉末と同一組成の合金を有する実施例1のインダクタに対して熱処理を行うことにより、更なるインダクタンスL及び品質係数Qの向上が期待できる。
【0116】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明の磁気素子によれば、軟磁気特性に優れた軟磁性合金粉末からなる圧粉磁心を備え、しかもこの圧粉磁心にコイル部が埋め込まれており、コイル部全体を軟磁性合金が囲む状態になるので、圧粉磁心の磁路断面積を向上させることができ、インダクタンス及び品質係数を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施形態であるインダクタを示す斜視図。
【図2】 本発明の磁気素子の製造に使用する放電プラズマ焼結装置を示す模式図。
【図3】 本発明の第2の実施形態であるインダクタを示す斜視図。
【図4】 図3のBB線に対応する断面図。
【図5】 本発明の第3の実施形態であるインダクタを示す斜視図。
【図6】 図5のCC線に対応する断面図。
【図7】 本発明の第4の実施形態であるトランスを示す斜視図。
【図8】 実施例1及び比較例1〜5のインダクタンス(L)と周波数との関係を示すグラフ。
【図9】 実施例1及び比較例1〜5の品質係数(Q)と周波数との関係を示すグラフ。
【図10】 従来の磁気素子に用いられる圧粉磁心を示す斜視図。
【符号の説明】
41 インダクタ(磁気素子)
22 圧粉磁心
43 導体
43c コイル部
44 絶縁層

Claims (5)

  1. ΔTx=Tx−Tg(ただしTxは結晶化開始温度を示し、Tgはガラス遷移温度を示す)の式で表される過冷却液体の温度間隔ΔTxが20K以上の非晶質相を主相とする組織からなり、水アトマイズ法で形成され下記の組成式で表される軟磁性合金粉末と、絶縁層により被覆されたコイル部を有する1または2以上の導体とが一体成形されることにより、前記軟磁性合金粉末からなる圧粉磁心に前記コイル部が埋め込まれ、かつ前記コイル部において相互に重ねられた前記導体が前記絶縁層を介して相互に接触していることを特徴とする磁気素子。
    Fe100−v−z−w−t(P1−bSi
    ただし、XはCrであり、組成比を示すb、v、z、w、tは、0.1≦b≦0.28、2原子%≦v≦15原子%、0原子%<z≦11.5原子%、4原子%≦w≦原子%、原子%≦t≦原子%、70原子%≦(100−y−z−w−t)≦79原子%、11原子%≦(v+z+w)≦30原子%である。
  2. ΔTx=Tx−Tg(ただしTxは結晶化開始温度を示し、Tgはガラス遷移温度を示す)の式で表される過冷却液体の温度間隔ΔTxが20K以上の非晶質相を主相とする組織からなり、水アトマイズ法で形成され下記の組成式で表される軟磁性合金粉末と、絶縁層により被覆されたコイル部を有する1または2以上の導体とが一体成形されることにより、前記軟磁性合金粉末からなる圧粉磁心に前記コイル部が埋め込まれ、かつ前記コイル部において相互に重ねられた前記導体が前記絶縁層を介して相互に接触していることを特徴とする磁気素子。
    (Fe1−a100−v−z−w−t(P1−bSi
    ただし、XはCrであり、TはCo、Niより選ばれる1種または2種の元素であり、組成比を示すa、b、v、z、w、tは、0.1≦a≦0.15、0.1≦b≦0.28、2原子%≦v≦15原子%、0原子%<z≦11.5原子%、4原子%≦w≦原子%、原子%≦t≦原子%、70原子%≦(100−v−z−w−t)≦79原子%、11原子%≦(v+z+w)≦30原子%である。
  3. 前記軟磁性合金粉末と前記導体とが一体成形された後に、キュリー点以上の温度であってかつ結晶化温度以下の温度で熱処理されてなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気素子。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の磁気素子を具備してなり、前記1の導体のコイル部が前記圧粉磁心に埋め込まれてなることを特徴とするインダクタ。
  5. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の磁気素子を具備してなり、前記2以上の導体のコイル部が前記圧粉磁心に埋め込まれてなることを特徴とするトランス。
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