JP3975427B2 - エアバッグ装置を備えた車両用シート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エアバッグがシートカバーの縫合部を容易かつ確実に開裂して側方より膨出されるエアバッグ装置を備えた車両用シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、シートバックに被覆されたシートカバーの一部をシートバックの側面に埋設したエアバッグ装置のエアバッグの展開圧力で破断したうえ側方に膨出するエアバッグにより乗員を側方で拘束するようにしたエアバッグ装置を備えた車両用シートは、例えば特開平6−64491号公報などにより公知である。ところが、この種のものはシート表面被覆部側の縫合部付近のシートカバー材そのものの破断で開裂されるようにしているため、シートカバー材を低強度の材質よりなるものとしており、このためシートカバーそのものの耐久性が保証できないうえに破断箇所が一定化されずエアバッグの展開軌跡も安定しないという問題点があった。また、縫製糸の強度がシートカバー材のミシン目間の強度より強くなければならないという制約があり、シートカバー材と縫製糸とに品質面や技術面で高度なバランスが要求され生産性に劣るという問題点や、シートカバー材自身が破断するものであるので応答性が劣るという問題点もあった。そこで、シートカバー自身の側部が横方向への延びることを規制する帯状の力布を利用してこの力布によりエアバッグの展開圧力を制御することにより上記の問題点の解決を図ったものも本出願人等により先に提案され、特願平9ー71212号公報などにより開示されている。
【0003】
しかしながら、従来のものはシートカバー材の縫合部が複雑に合わさっていて1本の連続した縫製糸ではなく複数本の縫製糸で縫製してある場合には、前記力布を複数本の縫製糸で同時に縫い付けることは困難であった。従って、このような場合には力布を用いないで縫製するか、力布を用いたとしてもいずれか一つの縫製糸とだけ縫い付けたものとならざるを得ず、この結果、エアバッグの展開時には、複数本の縫製糸が同時に破断させることができず、また、力布を用いても全ての縫製糸を同時に破断させることができないため、エアバッグの展開を迅速かつ一定方向に制御することが難しいという問題点があった。更に、縫合部を1本の連続した縫製糸で縫製するにはシートの形状も限定されるため、デザイン上の制約も大きくなるという問題点もあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記のような従来の問題点を解決して、シートカバー材の縫合部が複雑に合わさっており1本の連続した縫製糸ではなく、複数本の縫製糸で縫製してある場合であっても、エアバッグの展開に合わせて複数本の縫製糸をほぼ同時に破断させることができてエアバッグの展開を迅速・確実かつ一定方向に制御することができるとともに、横方向の縫合部に絞りを入れる等任意の形状とすることができシートデザインの幅を大きくすることができるエアバッグ装置を備えた車両用シートを提供することを目的として完成されたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するためになされた本発明のエアバッグ装置を備えた車両用シートは、シートバックの側部に配置したエアバッグ装置のエアバッグが緊急時にその展開圧力でシートバックに被覆された袋状のシートカバーの側部に形成される縫合部を破断膨出して側方からの衝突に対し乗員を保護するようにしたエアバッグ装置を備えた車両用シートにおいて、前記縫合部を、シートカバーの側部のシート表面被覆部とカマチ被覆部との間に形成される縦方向の縫合部と、この縦方向の縫合部に跨ってクロスする横方向の縫合部からなるとともに、縦方向の縫合部がシートカバーの上方部を形成する上側の縫合部と方部を形成する下側の縫合部からなるものとし、前記上側の縫合部、下側の縫合部および横方向の縫合部を3本の別々の縫製糸で縫製したうえ、この横方向の縫合部を挟んで前記した上側、下側の縫合部には、シートカバーの側部の横方向への延びを規制する一対の力布の一端を共縫いしてあり、エアバッグの初期の展開圧力を先ず力布に伝達することで、上側、下側の縫合部が力布との共縫い位置より破断されて、次いで、横方向の縫合部に伝達されることで縫合部が破断され、その破断口から座席側方の所定位置に向けエアバッグが膨出されるようにしたことを特徴とするものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
図中、1はエアバッグ装置であって、このエアバッグ装置1はエアバッグ2とインフレータ3とをエアバッグケースに収納したもので、シートバック4の側部に埋設されて常時はシートバック4に被装されたシートカバー5により隠蔽されているが、緊急時にはインフレータ3の作動で乗員と車室壁との間にエアバッグ2がエアバッグケースの開口部より膨出し、シートカバー5を破断してエアバッグ2を座席側方の所定位置に向け膨出させて側方からの衝突に対して乗員を保護するようになっている。なお、4aはシートバックボードである。
【0007】
本発明において用いられるシートカバー5は、側面のシート表面被覆部5aとカマチ被覆部5bとを縦方向の縫合部6において縫合した袋状の縫製カバーであり、エアバッグ2の展開圧力によるシートカバー5の破断がシートカバー材自身の一部の破断によるのではなく、エアバッグ2の展開部位に位置するシート表面被覆部5aとカマチ被覆部5bの縫合部6の縫製糸がエアバッグ2の所定の展開圧力で破断されてこの縫合部6を開裂させ、この跡口からエアバッグ2が膨張展開するものとしてある。
【0008】
しかも、前記シートカバー5は、縦方向の縫合部6とこれとクロスする横方向の縫合部7を有しているとともに、この横方向の縫合部7を挟む上下位置のシート表面被覆部5aとカマチ被覆部5bの縫合部6には、シートカバー5自身の側部が横方向へ延びることを規制する上下一対の帯状の力布8、9の一端を共縫いしてあり、エアバッグ2の初期の展開圧力で先ず力布8、9と共縫いしたシート表面被覆部5aとカマチ被覆部5bの縦方向の縫合部6が破断され、その後エアバッグ2の展開圧力で横方向の縫合部7が破断されて、これら縫合部6、7の跡口から座席側方の所定位置に向けエアバッグ2が膨出されるよう構成されている。なお、前記縦方向の縫合部6およびこれとクロスする横方向の縫合部7の縫製糸は、1本の連続した縫製糸ではなく3本の別々の縫製糸であるため、シートカバー5の縫製作業は容易なものとなっている。
【0009】
前記力布8は、一端が横方向の縫合部7の上部側に位置するシート表面被覆部5aとカマチ被覆部5bの縫合部6に共縫いされ、カマチ被覆部5bの裏面に添わせつつ他端が固定フック10に連結されている。一方、力布9は、一端が横方向の縫合部7の下部側に位置するシート表面被覆部5aとカマチ被覆部5bの縫合部6に共縫いされ、カマチ被覆部5bの裏面に添わせつつ他端が前記力布8と同様に固定フック10に連結されている。そして力布8、9はシートカバー5よりも伸びが小さい布で形成されており、エアバッグ2の展開圧力がかかった場合にカマチ被覆部5bの伸びを抑制した状態として、縦方向の縫合部6を迅速かつ確実に破断するよう構成されている。
【0010】
即ち、エアバッグ2が膨張展開した場合に、エアバッグ2の展開部位に位置するシート表面被覆部5aとカマチ被覆部5bの縫合部6がエアバッグ2の所定の展開圧力で破断されるのであるが、この時、カマチ被覆部5bの裏面側には力布8、9が添装されており、しかも、縫合部6はカマチ被覆部5bと力布9とを縫着した縫製糸よりも細くて弱い糸(例えば、20番の細糸)で縫製されているので、エアバッグ2が膨張した場合、カマチ被覆部5bは力布9に牽引されてエアバッグ2の展開に追従して外側へ開くことが防止されるとともに、所定量外側へ膨らむと必ず縦方向の縫合部6が破断されることとなる。
次いで、横方向の縫合部7だけが残った状態となるが、この部分の縫製糸も前記と同様に細くて弱い糸(例えば、20番の細糸)で縫製されており、しかも既に縦方向の縫合部6は破断されてしまっているため、エアバッグ2の展開圧力は横方向の縫合部7に均等に作用することとなる。この結果、縫合部6に続いて縫合部7が容易に破断されることとなり、開裂状態が常に一定条件となってエアバッグ2が安定して膨張展開することとなるのである。
【0011】
このように構成されたものにおいては、エアバッグ2の膨張時にその展開圧力によってカマチ被覆部5bが外側へ押圧されるが、この場合、カマチ被覆部5bの裏面側には力布8、9が添装されていてカマチ被覆部5bがエアバッグ2の展開に追従して外側へ伸びることが防止されているので、シート表面被覆部5aとカマチ被覆部5bとの縦方向の縫合部6が最初に破断されることとなり、次いで横方向の縫合部7が確実に破断されることとなる。この結果、縫合部6、7の開裂状態が常に一定位置・一定方向に制御されることとなって、エアバッグ2が迅速に安定かつ確実に膨張展開し、縫合部6、7の跡口から座席側方の所定位置に向けエアバッグ2が膨出されることとなる。
また、従来のようにシート表面被覆部5aとカマチ被覆部5bを1本の連続した糸で縫製する必要もないため、複雑なシート形状であっても複数本の縫製糸で縫合可能となりシートデザインの幅を大きく広げることが可能となる。さらに、横方向の縫合部を絞ったシート形状とした場合には、エアバッグ2の展開圧力が縫合部7に大きくかかるため、より迅速な破断が可能となる利点もある。
【0012】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明はシートカバー材の縫合部が複雑に合わさっており1本の連続した縫製糸ではなく複数本の縫製糸で縫製してある場合であっても、エアバッグの展開に合わせて複数本の縫製糸をほぼ同時に破断させることができてエアバッグの展開を迅速・確実かつ一定方向に制御することができるとともに、横方向の縫合部に絞りを入れる等任意の形状とすることができシートデザインの幅を大きくすることができるものである。
よって本発明は従来の問題点を一掃したエアバッグ装置を備えた車両用シートとして、産業の発展に寄与するところは極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す要部の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態を示す側面図である。
【図3】シートの展開状態をを示す側面図である。
【図4】シートの全体を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 エアバッグ装置
2 エアバッグ
4 シートバック
5 シートカバー
5a シート表面被覆部
5b カマチ被覆部
6 縦方向の縫合部
7 横方向の縫合部
8 力布
9 力布

Claims (3)

  1. シートバック(4) の側部に配置したエアバッグ装置(1) のエアバッグ(2) が緊急時にその展開圧力でシートバック(4) に被覆された袋状のシートカバー(5) の側部に形成される縫合部を破断膨出して側方からの衝突に対し乗員を保護するようにしたエアバッグ装置を備えた車両用シートにおいて、前記縫合部を、シートカバー(5) の側部のシート表面被覆部(5a)とカマチ被覆部(5b)との間に形成される縦方向の縫合部(6) と、この縦方向の縫合部 (6) に跨ってクロスする横方向の縫合部 (7) からなるとともに、縦方向の縫合部 (6) がシートカバー (5) の上方部を形成する上側の縫合部と、下方部を形成する下側の縫合部からなるものとし、前記上側の縫合部、下側の縫合部および横方向の縫合部 (7) を3本の別々の縫製糸で縫製したうえ、この横方向の縫合部(7)を挟んで前記した上側、下側の縫合部には、シートカバー(5) の側部の横方向への延びを規制する一対の力布(8) 、(9) の一端を共縫いしてあり、エアバッグ(2) の初期の展開圧力を先ず力布 (8) (9) に伝達することで、上側、下側の縫合部が力布 (8) (9) との共縫い位置より破断されて、次いで、横方向の縫合部 (7) に伝達されることで縫合部が破断され、その破断口から座席側方の所定位置に向けエアバッグ(2) が膨出されるようにしたことを特徴とするエアバッグ装置を備えた車両用シート。
  2. 縫合部(6) と縫合部(7) とが別の縫製糸により縫製されている請求項1に記載のエアバッグ装置を備えた車両用シート。
  3. 横方向の縫合部(7) を挟んで縦方向の縫合部(6) の上下位置に一端が共縫いされている上下一対の力布(8) 、(9) はその他端が同位置に固定されてこの固定点より二股に分岐されたものである請求項1または2に記載のエアバッグ装置を備えた車両用シート。
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