JP3915540B2 - エアバッグ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両のステアリングホイールや助手席前方のインストルメントパネル等に搭載されるエアバッグ装置のエアバッグに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、エアバッグ装置のエアバッグにおいては、インフレーターから供給される膨張用ガスによって、所定形状に膨らんだ後、エアバッグの内圧が所定値以上に高くならないようにするために、膨張用ガスをエアバッグから排出するベントホールを、備えて構成されていた。
【0003】
そして、このベントホールが、エアバッグの膨張当初から開口していては、所定形状に膨らむ時間が遅れることから、エアバッグの内圧が一定値以上に達した時にベントホールが形成されるように、エアバッグの周壁には、断続的な線状に複数のスリットを配設して、スリット群を形成し、スリット間の破断予定部を破断させて、膨張用ガスを排気可能なベントホールを形成するものがあった(実開平9−134号公報等参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のエアバッグは、周壁自体が、ポリエステルやポリアミド等の合成樹脂製の経糸と緯糸とを織って形成した織布から構成されていた。また、エアバッグは、エアバッグ装置として車両に搭載する場合には、コンパクトに配設させるために、折り畳んで、エアバッグ装置内に収納されていた。
【0005】
そのため、エアバッグの周壁にスリットが形成されている状態で、エアバッグを折り畳むと、スリットの周囲の経糸や緯糸がほつれたりずれたりして、エアバッグ毎に、ベントホール形成時の開口面積やベントホールの開口時期に、バラツキが生ずる虞れがあった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、破断予定部を破断させて形成するベントホールの開口面積や開口時期を、エアバッグ毎に安定させることが可能なエアバッグを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るエアバッグは、可撓性を有した周壁における溶融させて固化可能な部位に、複数のスリットを断続的な線状に配設させて構成したスリット群が配設され、
膨張用ガスの流入時における内圧の上昇に伴って、前記周壁における前記スリット間の破断予定部を破断させて、前記スリット群の配設位置に、前記膨張用ガスを排気可能なベントホールが形成されるエアバッグであって、
前記スリット群が、複数のスリットを直線状に配設させた直列部を備え、
該直列部の両端に位置する二つのスリットが、T字状若しくは逆T字状に開口した三又 状スリットとして構成されて、
二つの前記三又状スリットが、T字若しくは逆T字の縦棒開口の先端を、相互に接近させるように、配設されて、
T字若しくは逆T字の横棒開口の先端相互を結ぶ直線をヒンジ部とし、かつ、T字若しくは逆T字の前記縦棒開口側に先端縁を配置させて構成される二枚の扉部が、それぞれ、前記先端縁を側縁より長くして形成されるとともに、前記エアバッグの内圧上昇時に、それぞれ、前記破断予定部を破断させて前記ヒンジ部を回転中心として開いて、長方形形状のベントホールを開口させるように、配設され、
さらに、前記直列部が、前記ベントホールの形成前における膨張用ガスの流入時に、前記周壁における前記ベントホールの形成部位に作用する引張力、の作用方向に、前記直列部の各スリットの配列方向を、沿わせるように、配設され、
さらに、前記周壁における前記各スリットの周縁に、溶融された後に固化した溶融固化部位が、形成されていることを特徴とする。
【0008】
そして、前記周壁は、本体布と、前記スリット群を配設させた当て布と、を備えて構成し、
前記ベントホールの形成部位における前記本体布の部位には、前記スリット群を露出可能として前記当て布の外形形状より小さい形状で開口する配設孔を、形成し、
前記スリット群を前記配設孔から露出させた状態で、前記当て布の周縁を前記配設孔の周縁に縫合させて、前記当て布を前記本体布と一体化させてもよい。
【0009】
あるいは、前記周壁は、本体布と、当て布と、を備えて構成し、
前記ベントホールの形成部位における前記本体布の部位に、周縁を縫合させて、前記当て布を、配設し、
前記当て布と前記本体布とに、前記当て布と前記本体布とを貫通すように前記各スリットを、形成し、
前記溶融固化部位を、前記当て布と前記本体布とを相互に溶融させて固化して、形成してもよい。
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
また、前記直列部は、二つの前記三又状スリットの間に、少なくとも一つの直線状のスリットを配設させて、構成してもよい。
【0015】
【0016】
さらに、前記スリット群を配設させた前記周壁の部位が、溶融させて固化可能な経糸と緯糸とを織って形成した織布から構成されて、前記スリット群が、複数のスリットを直線状に配設させた直列部を備える場合には、前記直列部における各スリットの配列方向を、前記経糸と前記緯糸との各糸方向と、ともに交差するバイアス方向に設定することが望ましい。
【0017】
このバイアス方向に関して、前記直列部の各スリットの配列方向と、前記経糸の糸方向若しくは前記緯糸の糸方向と、の交差角度を、10〜45°の範囲内として、前記直列部を配設することが望ましい。
【0018】
さらにまた、前記エアバッグの前記周壁が、
膨張用ガスを流入させるためのガス流入口を中心に配置させて前記ベントホールを形成する円板形状の開口側基布と、円板形状の乗員側基布と、の外周縁相互を縫合して、形成されるステアリングホイール用とする場合には、
前記直列部は、前記開口側基布における前記ガス流入口を通る前後方向の中心軸を中心とした、左右対称の二箇所に、前記ベントホールを形成するように配置されるとともに、それぞれ、前記直列部の各スリットの配列方向を前記開口側基布における前記ガス流入口を中心とした直径方向に沿わせ、かつ、前記ガス流入口の前方側における前記中心軸から45°までの範囲内の位置に、配置することが望ましい。
【0019】
【0020】
また、前記破断予定部側の各スリットの端部は、それぞれのスリットにおける前記端部から離れた一般部の幅寸法より、幅寸法を広くすることが望ましい。
【0021】
【発明の効果】
本発明に係るエアバッグの周壁における溶融させて固化可能な部位には、各スリット周縁に、溶融固化部位が形成されており、エアバッグを折り畳んでも、溶融固化部位が、織布の経糸・緯糸のほつれやずれを防止することができる。
【0022】
そのため、スリット間の破断予定部の長さや破断強度を、エアバッグ毎に、一定にすることができて、エアバッグ毎のベントホール形成時の開口時期を、安定させることができる。また、スリット群の端部の配置位置を、エアバッグ毎に明確に規定できるため、エアバッグ毎のベントホールの開口面積を安定させることもできる。
【0023】
したがって、本発明に係るエアバッグでは、破断予定部を破断させて形成するベントホールの開口面積や開口時期をエアバッグ毎に安定させることが、可能となる。
【0024】
さらに、周壁におけるスリット周縁の全周に溶融固化部位が形成されていれば、エアバッグの膨張途中で、スリットの狭い隙間から逃げる膨張用ガスを一定に制御できることから、エアバッグの膨張開始から膨張完了までの時間も、エアバッグ毎に、安定させることができる。
また、スリット間の破断予定部が破断すれば、直列部の両端の三又状スリットにおけるT字若しくは逆T字の横棒開口の先端相互を結ぶ直線を、それぞれ、ヒンジ部として、縦棒開口側を先端縁とする二枚の扉部を、開かせる態様となる。そのため、直列部に配置された破断予定部を破断させるだけで、広い開口面積でかつ長方形形状のベントホールを、容易に形成できる。
さらに、エアバッグの内圧上昇時に、二枚の扉部を開いて、長方形形状のベントホールを開口させるように、形成すれば、同じ開口形状を一枚の扉部で形成するような、スリット群の各スリットを、平面視の状態で、コ字形状に配設させる場合に比べて、つぎのような作用・効果を得ることができる。すなわち、扉部周縁におけるヒンジ部近傍の側縁の長さについて、一枚の扉部に比べ、二枚の扉部では、それぞれの側縁の長さを短くすることができる。そのため、破断時(扉部の開き時)における側縁に沿う引き裂き力の慣性力を小さくすることができて、ヒンジ部の両端付近で、破断を延長させるような引き裂きを防止することができ、開口面積の精度を向上させることができる。
勿論、スリット群の両端相互を結ぶ直線状の部位を、ヒンジ部とし、このヒンジ部とスリット群とに囲まれた部位を、扉部として、扉部が、ヒンジ部を回転中心として、開いて、ベントホールが形成されるように、スリット群を、屈曲させて、形成した場合には、扉部を開口させてベントホールを形成することから、単に、一文字状に複数のスリットを配設させたスリット群からなるベントホールに比べて、ベントホールの開口面積を、エアバッグ毎に、一層、安定させることができる。ちなみに、一文字状に複数のスリットを配設させたスリット群からなるベントホールでは、開口時、ベントホール周縁をベントホールの幅方向に広げて開口することから、開口幅が変動すれば、開口面積が容易に変化してしまう。
さらに、三又状スリットでは、縦棒開口と横棒開口との交差する屈曲点を中心として放射状にスリットを連続させており、ベントホールの形成時に、屈曲点を通過する引き裂き力が、屈曲点の周囲の周壁に伝播し難く、周壁が不必要に破断することを、防止できる。
さらに、直列部が、ベントホールの形成前における膨張用ガスの流入時に、周壁におけるベントホールの形成部位に作用する引張力、の作用方向に、直列部の各スリットの配列方向を、沿わせるように、配設されていれば、エアバッグの膨張途中に、破断予定部への引き裂き方向へ作用する引張力が、ベントホール形成部位に、極力、作用しない。その結果、直列部のスリット間における破断予定部は、エアバッグの内圧が所定値に達する前のエアバッグ膨張初期等に、不必要に破断することが防止される。
【0025】
そして、請求項2に記載のエアバッグでは、当て布が本体布における配設孔の周縁に縫合されて、周壁が形成されており、エアバッグの膨張時に、当て布周縁の周壁に、引張力が作用しても、当て布周縁の縫合部位が、その引張力に対抗することができて、エアバッグの内圧が所定値に達する前に、当て布に配設されたスリット間の破断予定部に不要な破断が生ずることを、防止することが可能となり、一層、エアバッグ毎に、ベントホール形成時の開口時期を、安定させることに寄与できる。
【0026】
また、請求項3に記載のエアバッグでは、ベントホール形成部位の周囲に、当て布周縁を本体布に縫合させた縫合部位が、形成されており、請求項2と略同様に、エアバッグの膨張時に、当て布周縁の周壁に、引張力が作用しても、当て布周縁の縫合部位が、その引張力に対抗することができて、エアバッグの内圧が所定値に達する前に、スリット間の破断予定部に不要な破断が生ずることを、防止することが可能となり、ベントホール形成時の開口時期を安定させることに寄与できる。
【0027】
さらにまた、スリット周囲の溶融固化部位が、重ねた当て布と本体布との相互を厚く溶融固化させて形成されており、極力、形状保持性を発揮するように形成されている。そのため、エアバッグの膨張途中に、当て布周縁の縫合部位の内部側まで、すなわち、ベントホール形成部位まで、強い引張力が作用しても、スリット間の破断予定部が容易に破断せず、エアバッグの内圧が所定値に達する前の破断予定部の不要な破断を、極力、防止することが可能となって、エアバッグ毎のベントホール形成時の開口時期を、一層、安定させることができる。
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
また、請求項4に記載したように、二つの三又状スリットの間に、少なくとも、一つの直線状スリットを配設させて、直列部を構成すれば、直線状スリットの数や長さを変更すれば、長方形形状のベントホールの開口面積を、容易に、調整することができる。
【0033】
【0034】
さらに、請求項5に記載するように構成する場合には、直列部のスリット間における破断予定部がエアバッグの膨張初期等に不必要に破断することを、防止することができる。すなわち、直列部のスリット間における破断予定部が破断する際、破断予定部に作用する引張力は、直列部の各スリットの配列方向と略直交する方向に作用する。しかし、その引張力の作用方向は、スリット群を設けた周壁の部位を構成する経糸と緯糸との各糸方向と、それぞれ、交差するバイアス方向であって、経糸と緯糸とからなる織布が伸び易い方向である。そのため、経糸と緯糸とからなる織布が伸びて、直列部に作用させる引張力を低減させることができ、その結果、直列部のスリット間における破断予定部は、エアバッグの内圧が所定値に達する前のエアバッグ膨張初期等に、不必要に破断することが防止される。
【0035】
このバイアス方向に関して、直列部の各スリットの配列方向と、経糸の糸方向若しくは緯糸の糸方向と、の交差角度を45°とする場合に、直列部の配列方向と、その配列方向に直交する方向(破断予定部を破断させる引張力の作用方向)と、が、共に、織布の最も伸び易い正バイアス方向(経糸と緯糸との糸方向から共に45°ずつ交差する方向)となる。そのため、交差角度を45°とする場合が、最も、破断予定部に作用する引張力を低減できて、エアバッグ膨張初期等に、破断予定部の不必要の破断を防止できる。但し、直列部の配列方向が、経糸若しくは緯糸との交差角度を10°以上としていれば、45°未満であっても、経糸と緯糸とからなる織布が伸びて、ある程度、直列部の配列方向と略直交方向として直列部に作用する引張力を低減できる。そのため、直列部の配列方向と経糸の糸方向若しくは緯糸の糸方向との交差角度は、10〜45°であればよい。
【0036】
さらに、請求項7に記載したように構成する場合には、ベントホールが、ステアリングホイールのリング部における運転者の把持する位置、すなわち、リング部の後部側、から離れた前方側となる。そのため、ベントホールから排気される膨張用ガスが、直接、運転者の手に触れることを防止することができる。勿論、ガス流入口を中心とした開口側基布の直径方向は、ステアリングホイール用のエアバッグの展開膨張時に、開口側基布に作用する引張力の作用方向に沿う方向となる。そのため、開口側基布の直径方向に沿って、直列部の各スリットの配列方向が配設されていれば、エアバッグの膨張途中に、破断予定部への引き裂き方向へ作用する引張力が、ベントホール形成部位に、極力、作用しない。
【0037】
【0038】
また、請求項8に記載したように、破断予定部に隣接する各スリットの端部が、幅寸法を大きくしていれば、それらのスリットにおける一般部の幅寸法が小さくとも、破断予定部の目視が容易となる。そのため、製造時の破断予定部の長さ寸法の確認が、効率的に、行なえる。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、図1〜5に示す実施形態のエアバッグ10は、ステアリングホイールに搭載されるステアリングホイール用エアバッグ装置Mに使用されるものであり、図5に示すように、膨張完了時に、略球状に膨張するものである。
【0040】
このエアバッグ10は、図4・5に示すように、可撓性を有した周壁11と、ベントホール17を形成するスリット群18と、円形に開口したガス流入口15と、を備えて構成されている。
【0041】
周壁11は、本体布12と、ベントホール17の形成部位に配設される当て布29と、を備えて構成されている。本体布12は、展開させた際の形状を共に円形板状とする乗員側基布13と開口側基布14とを備えて構成され、基布13・14の外周縁相互を縫着して、本体布12が形成されている。開口側基布14は、ガス流入口15を中央に配設させ、ガス流入口15には、エアバッグ10内に膨張用ガスを供給するためのインフレーター3のガス吐出口3a側が挿入されることとなる。ガス流入口15の周囲には、エアバッグ10をバッグホルダ1に取り付けるための複数の取付孔16が、形成されている。
【0042】
当て布29は、ベントホール17の形成部位に配設され、スリット群18より大きな長方形板状として、縫合糸31を使用し、周縁を本体布12の開口側基布14に縫合させている。
【0043】
乗員側基布13・開口側基布14・当て布29は、ポリエステルやポリアミド等の溶融されて固化可能な合成樹脂からなるマルチフィラメント糸を平織り等で織成した可撓性を有する織布から、形成されている。縫合糸31は、ポリアミド等のマルチフィラメント糸としている。
【0044】
そして、スリット群18は、図1に示すように、複数のスリット19を線状に配設させて形成されている。実施形態の場合、各スリット19は、平面視の状態で横向きのH字形状に、屈曲されて配設されている。すなわち、スリット群18は、スリット群18の両端18a・18b相互を結ぶ二箇所の直線状の部位を、ヒンジ部26・26とし、ヒンジ部26・26とスリット群18とに囲まれた部位を、二枚の扉部27・27として、エアバッグ10の内圧上昇時、スリット19間の破断予定部25を破断させて、扉部27・27が、それぞれ、ヒンジ部26を回転中心として、観音扉のように開いて、長方形形状のベントホール17(図3参照)が開口されるように、構成されている。
【0045】
また、スリット19は、実施形態の場合、二つの直線状の直線状スリット20と、平面視の状態で、T字状若しくは逆T字状の合計二つの三又状スリット21と、から構成され、直線状スリット20・20が、開き時の扉部27・27における回転端側の先端縁27aに直列的に配設され、三又状スリット21が、先端縁27aからヒンジ部26までの各扉部27・27の側縁27b側に配設されている。そして、一方の三又状スリット21における直線状スリット20・20から離れた端部が、スリット群18の一方の端部18a・18aとなり、他方の三又状スリット21における直線状スリット20・20から離れた端部が、スリット群18の他方の端部18bとして、直線状スリット20の配列方向に沿った端部18a・18b間が、各扉部27・27のヒンジ部26としている。
【0046】
そして、実施形態の場合、破断予定部25は、扉部27の先端縁27a側のスリット19間に、三つ配設されている。
【0047】
端部18a・18bは、扉部27・27の開き時に、延長して破断されないように、スリット19(20・21)の幅寸法B0より、大きな内径寸法D0の略円形に開口されている。
【0048】
なお、スリット19の幅寸法B0は、0.5〜10mmの範囲が望ましい(実施形態の場合には、0.5mm)。0.5mm未満では、溶融固化部位24を設けたスリット19を形成し難く、10mmを超えては、ベントホール17の開口前に、スリット19から漏れる膨張用ガスの量が多くなるからである。また、端部18a・18bの内径寸法D0は、スリット幅寸法B0の1〜2倍程度が望ましい。1倍未満では、端部18a・18bの周縁の周壁11が破断する虞れが生じ、2倍を超えては、ベントホール17の開口前に端部18a・18bから漏れる膨張用ガスの量が多くなるからである。実施形態の場合、端部18a・18bの内径寸法D0は、2mmとしている。
【0049】
さらに、実施形態の場合には、扉部27・27の先端縁27aが、それぞれの扉部27の側縁27bより長さ寸法を長くして(二枚分の扉部27の側縁27bの合計寸法より長くして)、ガス流入口15を中心とした開口側基布14の直径方向に沿うように、スリット群18が配設されている(図4参照)。このガス流入口15を中心とした開口側基布14の直径方向は、エアバッグ10の展開膨張時に、開口側基布14に作用する引張力の作用方向に沿う方向となり、エアバッグ10の膨張途中に、破断予定部25への引き裂き方向へ作用する引張力が、ベントホール形成部位に、極力、作用しないように、構成されている。
【0050】
さらに、実施形態の場合、扉部27・27の先端縁27aや側縁27bとは、図1に示すように、基布14と当て布29との織布の経糸VSや緯糸HSと略平行若しくは略直交するように、設定されている。
【0051】
さらにまた、各スリット19(20・21)は、図1・2に示すように、本体布12と当て布29との二枚重ねとなった状態の周壁11の表裏を、貫通して、形成されている。そして、周壁11における各スリット19の周縁23には、当て布29と本体布12とを相互に溶融させて固化した溶融固化部位24が、形成されている。なお、実施形態の場合には、スリット19の周縁23における全周にわたって、溶融固化部位24が形成されている。
【0052】
そして、スリット19間の破断予定部25の長さ寸法Lやスリット周縁23に沿う溶融固化部位24の厚さ寸法Tは、エアバッグ10が所定内圧値に達した際に、確実に、破断予定部25が破断するように、トライアンドエラーによって、適宜、設定されている。ちなみに、実施形態の場合、破断予定部25の長さ寸法Lは、1.5mm、溶融固化部位24の厚さ寸法Tは、0.5mmとしている。
【0053】
実施形態のエアバッグ10の製造工程について述べれば、まず、ガス流入口15や取付孔16を設けた本体布12の開口側基布14の所定位置に、図6A・6Bに示すように、当て布29を配置させて、縫合糸31を使用して、当て布29周縁を開口側基布14に縫合する。ついで、図6Cに示すように、レーザカッタ33を使用して、当て板29と開口側基布14とを貫通するように、各スリット19(20・21)を形成する。その際、実施形態では、レーザカッタ33の熱によって、各スリット19の周縁23が溶融されつつ、各スリット19が形成される。その後、放置しておけば、溶融した周縁23が空冷されて固化され、各スリット19の周縁23に、全周にわたって、溶融固化部位24が形成されることとなる。
【0054】
その後、外表面側相互を接触させて、乗員側基布13と開口側基布14とを重ねて、外周縁相互を縫合し、ガス流入口15を利用して、反転させれば、エアバッグ10を製造することができる。
【0055】
さらに、エアバッグ装置Mの組立時には、まず、エアバッグ10の内周面側のガス流入口15の周縁に、円環状のリテーナ2(図5参照)を配置させるとともに、リテーナ2に固着された図示しない複数のボルトを、エアバッグ10の各取付孔16から突出させ、その状態で、エアバッグ10を折り畳む。この折り畳みは、例えば、乗員側基布13と開口側基布14とを平らに重ねて展開した状態で、左右方向の幅寸法が平らに展開したエアバッグ10の直径寸法の1/3〜1/4程度となるように、エアバッグ10の左右の縁を、ガス流入口15側に接近させるように、前後方向に沿った折目をつける縦折りを行ない、ついで、前後方向の幅寸法を、縦折り直後のエアバッグ10における前後方向の幅寸法の1/3〜1/4程度となるように、前後の縁を、ガス流入口15側に接近させるように、左右方向に沿った折目をつける横折りを行なって、折り畳むこととなる。
【0056】
このエアバッグ10の折り畳み時、周壁11における各スリット19の周縁23には、全周にわたって、溶融固化部位24が形成されており、周壁11に種々の方向の引張力や圧縮力が作用しても、溶融固化部位24が、開口側基布14や当て布29における経糸VS・緯糸HSのほつれやずれを、防止することとなる。
【0057】
エアバッグ10を折り畳んだ後には、リテーナ2に固着された図示しない複数のボルトを、インフレーター3のフランジ部3bやバッグホルダ1(図5参照)のそれぞれ図示しない取付孔に、貫通させて、ナット止めして、バッグホルダ1にエアバッグ10やインフレーター3を取り付ける。また、バッグホルダ1に、折り畳まれたエアバッグ10の周囲を覆う図示しない蓋材を取り付ければ、エアバッグ装置Mの組立を完了させることができる。
【0058】
そして、組み立てたエアバッグ装置Mは、バッグホルダ1を利用して、ステアリングホイールの所定部位に取り付ければ、エアバッグ装置Mをステアリングホイールに搭載させることができる。
【0059】
車両搭載後、インフレーター3のガス吐出口3aから膨張用ガスが吐出されれば、図示しない蓋材を破断させて、エアバッグ10は急激に膨らむこととなる。そして、エアバッグ10の内圧が所定値以上に上昇した際には、図1・3に示すように、スリット19間の破断予定部25が破断されて、扉部27・27がそれぞれヒンジ部26を回転中心として開いて、長方形形状のベントホール17が開口されて、ベントホール17から膨張用ガスが排気され、エアバッグ10の内圧の上昇が抑えられることとなる。
【0060】
その際、実施形態のエアバッグ10では、周壁11の各スリット19(20・21)の周縁23に、溶融固化部位24が形成されており、エアバッグ10を折り畳む際は勿論のこと、その後のエアバッグ装置Mの組立時やエアバッグ装置Mの車両搭載後であっても、溶融固化部位24が、織布の経糸VS・緯糸HSのほつれやずれを防止することができる。
【0061】
そのため、スリット19間の破断予定部25の長さや破断強度を、エアバッグ10毎に、一定にすることができて、エアバッグ10毎のベントホール17形成時の開口時期を、安定させることができる。また、スリット群18の端部18a・18bの配置位置を、エアバッグ10毎に明確に規定できるため、エアバッグ10毎のベントホール17の開口面積を安定させることもできる。
【0062】
したがって、実施形態のエアバッグ10では、ベントホール17形成時の開口面積や開口時期をエアバッグ10毎に安定させることが、可能となる。
【0063】
さらに、実施形態では、周壁11におけるスリット周縁23の全周に溶融固化部位24が形成されており、エアバッグ10の膨張途中で、スリット20の狭い隙間から逃げる膨張用ガスを一定に制御できることから、エアバッグ10の膨張開始から膨張完了までの時間も、エアバッグ10毎に、安定させることができる。
【0064】
なお、上記の点を考慮しなければ、溶融固化部位24は、スリット19間の破断側端部22やスリット群18の端部18a・18bの周縁だけに、配設させてもよい。この場合でも、実施形態のエアバッグ10では、ベントホール17形成時の開口面積や開口時期をエアバッグ10毎に安定させることが、可能となる。
【0065】
また、スリット群18の形状は、周壁11における少なくともスリット19間の破断側端部22やスリット群18の端部18a・18bの周縁だけに、あるいは、スリット19の周縁23の全周にわたって、溶融固化部位24が、設けられておれば、図7の周壁11Aのようなコ字形状のスリット群18、図8の周壁11BのようなV字形状やU字形状のスリット群18、図15の周壁11Eのような一文字状(I字形状)のスリット群18としても、上記作用・効果を得ることができる。
【0066】
ちなみに、図7・図8に示す周壁11A・11Bは、当て布29の周縁を本体布12に縫合させて形成されるとともに、二枚重ねの当て布29と本体布12とに、ともにスリット19を形成して、さらに、当て布29と本体布12との相互を溶融させて、溶融固化部位24を形成している。図15・16に示す周壁11Eは、開口側基布14だけで構成され、その基布14にスリット群18が形成されている。
【0067】
また、実施形態のエアバッグ10では、ベントホール17の形成部位の周囲に、当て布29周縁を本体布12に縫合させた縫合部位30が、形成されており、エアバッグ10の膨張時に、当て布29周縁の周壁11に、引張力が作用しても、当て布29周縁の縫合部位30が、その引張力に対抗することができて、エアバッグ10の内圧が所定値に達する前に、スリット19間の破断予定部25に不要な破断が生ずることを、防止することが可能となり、ベントホール17形成時の開口時期を安定させることに寄与できる。
【0068】
なお、当て布29を本体布12に縫合して周壁11を形成する場合、図9〜11に示す周壁11Cのように構成してもよい。この周壁11Cでは、スリット群18が当て布29だけに形成され、ベントホール17の形成部位における本体布12の部位には、スリット群18を露出可能として当て布29の外形形状より小さい形状で開口する配設孔12aが、形成されている。そして、スリット群18を配設孔12aから露出させた状態で、当て布29の周縁を配設孔12aの周縁に縫合させて、当て布29を本体布12と一体化させて、周壁11Cが形成されている。
【0069】
この場合でも、当て布29が本体布12における配設孔12aの周縁に縫合されて、周壁11Cが形成されており、エアバッグ10の膨張時に、当て布29周縁の周壁11Cに、引張力が作用しても、当て布29周縁の縫合部位30が、その引張力に対抗することができて、エアバッグ10の内圧が所定値に達する前に、当て布29に配設されたスリット19間の破断予定部25に不要な破断が生ずることを、防止することが可能となり、エアバッグ10毎に、ベントホール17形成時の開口時期を、安定させることに寄与できる。
【0070】
もちろん、上記の作用・効果を考慮しなければ、図12〜14に示す周壁11Dや、図15・16に示す周壁11Eのように、当て布29を使用せずに、開口側基布14だけに、溶融固化部位24を配設させてスリット群18を形成してもよい。
【0071】
ただし、実施形態のエアバッグ10の周壁11のように、本体布12と当て布29とにスリット19が形成されて、スリット19周囲の溶融固化部位24が、二枚重ねの当て布29と本体布12との相互を厚く溶融固化させて形成されておれば、溶融固化部位24が、極力、形状保持性を発揮するように、形成されることとなる。そのため、エアバッグ10の膨張途中に、当て布29周縁の縫合部位30の内部側まで、すなわち、ベントホール17形成部位まで、強い引張力が作用しても、スリット19間の破断予定部25が容易に破断せず、エアバッグ10の内圧が所定値に達する前の破断予定部25の不要な破断を、極力、防止することが可能となって、エアバッグ10毎のベントホール17形成時の開口時期を、一層、安定させることができる。
【0072】
なお、当て布29と本体布12とに一体的に溶融固化部位24を形成する場合には、当て布29は、一枚でなくとも、二枚以上の複数枚を重ねて、使用してもよい。
【0073】
さらに、実施形態のエアバッグ10では、スリット群18を屈曲させて配設して、スリット群18の両端18a・18b相互を結ぶ直線状の部位を、ヒンジ部26とし、このヒンジ部26とスリット群18とに囲まれた部位を、扉部27・27として、扉部27・27が、それぞれ、ヒンジ部26を回転中心として、開いて、一つのベントホール17が形成されるように、構成されている。そのため、単に、図15・16に示すような、一文字状に複数の線状のスリット19(直線状スリット20)を直線状に配設させたスリット群18からなるベントホール17Eに比べて、ベントホール17の開口面積を、エアバッグ10毎に、安定させることができる。ちなみに、図15・16に示すような、一文字状に複数の線状のスリット20を直線状に配設させたスリット群18Eからなるベントホール17では、開口時、ベントホール17E周縁をベントホール17Eの幅方向に広げて開口することから、開口幅が変動すれば、開口面積が容易に変化してしまう。
【0074】
また、スリット群18を屈曲させて扉部27を配置させる場合には、円弧状に屈曲させても良く、さらに、その屈曲部位は、屈曲点18cを中心として、放射状に、スリット19を連続させて、形成することが好ましい(図1・7・8・9・12)。なぜなら、ベントホール17の形成時に、屈曲点18cを通過する引き裂き力が、屈曲点18cの周囲の周壁11(11A・11B・11C・11D)に伝播し難く、周壁11を破断させないようにするためである。
【0075】
また、スリット群18を屈曲させて扉部27を配設させる場合には、図12〜13に示す周壁11Dのように、当て布29を配設させなくとも、上記と同様な作用・効果を得ることができる。
【0076】
さらに、実施形態のエアバッグ10では、スリット群18の各スリット19を、平面視の状態でH字形状に配設させて、内圧上昇時に、二枚の扉部27・27を開いて、長方形形状の一つのベントホール17を開口させるように、形成している。そのため、図7に示す周壁11Aのように、同じ開口形状を一枚の扉部27Aで形成するような、スリット群18Aの各スリット19を、平面視の状態で、コ字形状に配設させる場合に比べて、つぎのような作用・効果を得ることができる。すなわち、扉部27・27A周縁におけるヒンジ部26近傍の側縁27bの長さについて、一枚の扉部27Aの周壁11Aに比べ、二枚の扉部27・27では、それぞれ、側縁27bの長さを短くすることができる。そのため、破断時(扉部27の開き時)における側縁27bに沿う引き裂き力の慣性力を小さくすることができて、ヒンジ部26の両端18a・18b付近で、破断を延長させるような引き裂きを防止することができ、開口面積の精度を向上させることができる。
【0077】
ちなみに、スリット群18の各スリット19を、平面視の状態でH字形状に配設させて、内圧上昇時に、二枚の扉部27・27を開いて、長方形形状の一つのベントホール17を開口させるように、形成する場合には、図12〜13に示す周壁11Dのように、当て布29を配設させなくとも、上記と同様な作用・効果を得ることができる。
【0078】
特に、実施形態のエアバッグ10では、複数のスリット20・21を直線状に配設させて、直列部18dを設けている。さらに、直列部18dの両端部には、T字状若しくは逆T字状の三又状スリット21を配設させている。二つの三又状のスリット21は、それぞれ、T字若しくは逆T字の縦棒開口21aと、T字若しくは逆T字の横棒開口21cと、を備えている(図1・2参照)。そして、二つの三又状スリット21は、縦棒開口21aの先端21bを、相互に接近させるように、配設されている。なお、実施形態の直列部18dは、二つの直線状スリット20・20と、二つの三又状スリット21・21の縦棒開口21a・21aと、から形成されている。そして、直列部18dに、三つの破断予定部25が配置されている。
【0079】
このような構成では、直列部18dの破断予定部25が破断すれば、直列部18dの両端に位置した三又状スリット21・21における横棒開口21cの先端21d(端部18a・18b)相互を結ぶ直線が、それぞれ、必然的に、ヒンジ部26・26となる。そして、縦棒開口21a側に先端縁27aを配置させた二枚の扉部27・27が、開く。そのため、直列部18dに配置された破断予定部25を破断させるだけで、広い開口面積となる長方形形状のベントホール17を、容易に、形成できる。
【0080】
さらに、実施形態の周壁10では、二つの三又状スリット21・21の間に、単なる直線状のスリット20を配設させている。そのため、直線状スリット20の数や長さを変更すれば、ベントホール17の長方形形状の開口面積を、容易に、調整することができる。
【0081】
なお、実施形態の周壁10では、直列部18dに二つの直線状スリット20を設けている。しかし、図21・22に示すエアバッグ10Aの周壁11Jのように、直列部18dに設ける直線状スリット20Aを、一つとしてもよい。この構成では、破断予定部25が、二つとなる。勿論、直列部18dには、直線状スリット20を設けなくともよい。この場合、破断予定部は、二つの三又状スリット21の縦棒開口21aの間に、一つ、配設されることとなる。
【0082】
さらにまた、実施形態のエアバッグ10の製造方法では、各スリット19の形成時に、レーザカッタ33を使用して、各スリット19の周縁を溶融させつつ、各スリット19(20・21)を形成し、スリット19形成後に、溶融した周縁23を固化させ、周壁11における各スリット19の周縁に溶融固化部位24を設けて、スリット群18を形成している。そのため、スリット19の形成とスリット周縁23の溶融とを、同時に行なって、その後は、空冷等させて固化させれば、スリット19の形成と溶融固化部位24の形成とを容易に行なうことができて、エアバッグ10の製造工数・コストの増大を抑えることができる。
【0083】
ちなみに、スリット19の形成時には、溶融しつつスリット19を形成できればよいことから、周壁11を溶融可能に加熱したトムソン刃等のカッタを使用して、スリット19を形成してもよい。
【0084】
また、図15・16に示すように、スリット群18(18E)を配設させた周壁11Eの部位が、溶融させて固化可能なポリエステルやポリアミド等の合成樹脂製の経糸VSと緯糸HSとを織って形成した織布から構成されて、スリット群18が、複数の直線状スリット20を直線状に配設させた直列部18dを備える場合には、直列部18dにおける各スリット20の配列方向IDを、経糸VSと緯糸HSとの各糸方向VD・HDと、ともに交差するバイアス方向に設定することが望ましい。図15・16に示す周壁11Eでは、各スリット20の配列方向IDが、交差角度θを略45°として、糸VS・HSの各糸方向VD・HDと交差している。なお、各スリット20の配列方向IDは、ガス流入口15(図示せず)を中心とした開口側基布14の直径方向に沿っている。
【0085】
このような構成では、直列部18dのスリット20・20間における破断予定部25がエアバッグ10の膨張初期等に不必要に破断することを、防止することができる。すなわち、直列部18dのスリット20・20間における破断予定部25が破断する際、破断予定部25に作用する引張力Fは、直列部18dの各スリット20の配列方向IDと略直交する方向に作用する。しかし、その引張力Fの作用方向は、スリット群18を設けた周壁11Eの部位を構成する経糸VSと緯糸HSとの各糸方向VD・HDと、それぞれ、交差するバイアス方向であって、経糸VSと緯糸HSとからなる織布が伸び易い方向である(糸の方向VD・HDと45°で交差する方向で引っ張る際の伸びは、糸の方向VD・HDに沿って引っ張る場合の伸びに比べて、2〜3倍程度大きい)。そのため、経糸VSと緯糸HSとからなる織布が伸びて、直列部18dに作用させる引張力Fを低減させることができ、その結果、直列部18dのスリット20・20間における破断予定部25は、エアバッグ10の内圧が所定値に達する前のエアバッグ10の膨張初期等に、不必要に破断することが防止される。
【0086】
このような直列部18dの各スリット20の配列方向IDを、経糸VSと緯糸HSとの各糸方向VD・HDと交差するバイアス方向に配設する構成は、直列部18dを備えておれば、一文字状のスリット群18に限らず、図17〜20に示すように、コ字形状、V字形状、U字形状等のスリット群18に適用してもよい。すなわち、直列部は、複数のスリットを直線状に配置させて、構成されていればよい。勿論、直列部は、周壁を構成する本体布12や当て布29に適用してもよい。
【0087】
そして、図17に示す周壁11Fは、実施形態の周壁11と同様であるが、直線状スリット20・20を直列に配置させた直列部18dの配列方向IDが、交差角度θを略45°として、本体布12と当て布29との各糸VS・HSの方向VD・HDと交差している。
【0088】
図18に示す周壁11Gは、図8に示す周壁11Bと同様であるが、端部18a・18bからそれぞれ屈曲点18cまでの二つの直列部18d・18dの各スリット19の配列方向IDが、交差角度θを略45°として、本体布12と当て布29との各糸VS・HSの方向VD・HDと交差している。
【0089】
図19に示す周壁11Hは、図9に示す周壁11Cと同様であるが、直線状スリット20・20を直列に配置させた直列部18dの配列方向IDが、交差角度θを略45°として、当て布29の各糸VS・HSの方向VD・HDと交差している。
【0090】
図20に示す周壁11Iは、図12に示す周壁11Dと同様であるが、直線状スリット20・20を直列に配置させた直列部18dの配列方向IDが、交差角度θを略45°として、開口側壁部14の各糸VS・HSの方向VD・HDと交差している。
【0091】
なお、図17・18に示す周壁11F・11Gに関し、直列部18dの各スリット20・19の配列方向IDを、本体布12若しくは当て布29の一方だけの糸VS・糸HSの各糸方向VD・HDと、バイアス方向に設定してもよい。
【0092】
このバイアス方向に関して、直列部18dの各スリット20・19の配列方向IDと、経糸VSの糸方向VD若しくは緯糸HSの糸方向HDと、の交差角度θを45°とする場合に、直列部18dの配列方向IDと、その配列方向IDに直交する方向(破断予定部25を破断させる引張力Fの作用方向)と、が、共に、織布の最も伸び易い正バイアス方向IB(経糸VSと緯糸HDとの糸方向からともに45°ずつ交差する方向)となる。そのため、交差角度θを45°とする場合が、最も、破断予定部25に作用する引張力Fを低減できて、エアバッグ10の膨張初期等に、破断予定部25の不必要な破断を防止できる。但し、直列部18dの配列方向IDが、経糸VS若しくは緯糸HSとの交差角度θを10°以上としていれば、45°未満であっても、経糸VSと緯糸HSとからなる織布が伸びて、ある程度、直列部18dの配列方向IDと略直交方向として直列部18dに作用する引張力Fを低減できる。そのため、直列部18dの配列方向IDと経糸VSの糸方向VD若しくは緯糸HSの糸方向HDとの交差角度θは、10〜45°であればよい。
【0093】
なお、10〜45°の交差角度θの範囲に関し、織布の正バイアス方向IBを基準とすれば、配列方向IDは、正バイアス方向IBから、−35°〜+35°の角度範囲となる。そして、交差角度θが10°未満の場合には、配列方向IDは、正バイアス方向IBから、−35°を超えた−35°〜−45°まで、あるいは、+35°を越えた+35°〜+45°までの範囲となる。このように、配列方向IDが、正バイアス方向IBから±45°に接近する場合には、配列方向IDが、経糸VS若しくは緯糸HSの糸方向VD・HDと沿う方向となる。そのため、織布が伸び難くなって、エアバッグ10の膨張初期等に、衝撃的に作用する引張力を低減し難くなってしまう。
【0094】
ちなみに、図21・22に示すエアバッグ10Aは、エアバッグ10と同様に、ステアリングホイールWに使用されるものである。エアバッグ10Aの周壁11Jは、周壁11と同様に、展開させた際の形状を共に円形板状とする乗員側基布13と開口側基布14とを備えて構成され、基布13・14の外周縁相互を縫着して、形成されている。開口側基布14は、ガス流入口15を中央に配設させ、ガス流入口15には、エアバッグ10内に膨張用ガスを供給するためのインフレーター3のガス吐出口3a側が挿入されることとなる。ガス流入口15の周囲には、エアバッグ10をバッグホルダ1に取り付けるための複数の取付孔16が、形成されている。
【0095】
そして、開口側基布14自体に、二つのベントホール17を形成するために、二つのスリット群18が形成されている。各スリット群18は、それぞれ、直列部18dを備えて構成されている。各直列部18dは、T字形状若しくは逆T字形状の二つの三又状スリット21Aと、一つの直線状のスリット20Aと、から構成されている。各直列部18dは、スリット20A・21Aの配列方向IDの両端に、縦棒開口21aの先端21bを相互に接近させるようにして、三又状スリット21A・21Aを配設させるとともに、三又状スリット21A・21A間に一つの直線状スリット20Aを、配設させて構成されている。なお、この直線状スリット20Aは、周壁11の直線状スリット20より、長くしている。
【0096】
そして、二つの直列部18dは、開口側基布14におけるガス流入口15を通る前後方向の中心軸C0を中心とした、左右対称の二箇所に、ベントホール17を形成するように配置されている。さらに、各直列部18dは、それぞれ、各スリット20A・21Aの配列方向IDを、開口側基布14におけるガス流入口15を中心とした直径方向に沿わせ、かつ、ガス流入口15の前方側(直進操舵時の車両に搭載されて、車両前方側)における中心軸C0から45°までの範囲内の位置に、配置されている。
【0097】
この実施形態の場合、各直列部18d・18dは、ガス流入口15から車両の前方側の基布の外周縁までの中間位置より前方側で、かつ、中心軸C0からの各配設方向IDの角度αを、約21°としている。なお、周壁11Jの開口側基布14を形成する織布の経糸VSと緯糸HSとの糸方向VD・HDは、それぞれ、車両搭載状態で前後方向若しくは左右方向に沿って配設されている。そのため、配列方向IDと経糸VSの糸方向VDとの交差角度θも、約21°としている。換言すれば、配列方向IDは、この織布の正バイアス方向IBからの角度βを、24°としている。
【0098】
また、各直列部18dは、破断予定部25に隣接する各スリット20A・21Aの端部20a・21bが、幅寸法B2を4mmとし、端部20a・21bから離れた一般部20b・22eが、幅寸法B1を0.5mmとして、端部20a・21bの幅寸法B2が、一般部20b・22eの幅寸法B1より、大きくしている。なお、各破断予定部25の長さ寸法Lは、2mmとしている。
【0099】
さらに、実施形態の場合、各端部20a・21bは、破断予定部25側に先細り状とした略三角状の開口としている。
【0100】
各スリット20A・21Aは、基布14にレーザカッタ33を当てて、各スリット20A・21Aの周縁を溶融させつつ、各スリット20A・21Aを形成し、スリット20A・21A形成後に、溶融した周縁23を固化させ、基布14における各スリット20A・21Aの周縁に溶融固化部位24を設けて、スリット群18を形成している。
【0101】
このエアバッグ10Aは、エアバッグ10と同様に、縫製して製造し、かつ、エアバッグ装置Mに組み付けて、車両に搭載する。
【0102】
そして、エアバッグ10Aに膨張用ガスが流入すれば、エアバッグ10Aが、膨張するとともに、各直列部18dの二つの破断予定部25が破断して、長方形形状に開口する二つのベントホール17が形成され、二つのベントホール17から膨張用ガスが排気され、不要な内圧の上昇が抑えられる。
【0103】
ベントホール17の形成時、直列部18dの両端の三又状スリット21A・21AにおけるT字若しくは逆T字の横棒開口21cの先端21d(端部18a・18b)相互を結ぶ直線を、それぞれ、ヒンジ部26・26として、縦棒開口21a側と直線状スリット20Aとを先端縁27aとする二枚の扉部27・27を、開かせる態様となる。
【0104】
そして、このエアバッグ10Aでは、エアバッグ10と同様な作用・効果を得られる他、つぎの作用・効果を得ることができる。すなわち、各ベントホール17が、ステアリングホイールWのリング部Rにおける運転者の把持する位置、すなわち、リング部Rの後部側、から離れた前方側となる。そのため、ベントホール17から排気される膨張用ガスが、直接、運転者の手に触れることを防止することができる。勿論、ガス流入口15を中心とした開口側基布14の直径方向は、ステアリングホイール用のエアバッグ10Aの展開膨張時に、開口側基布14に作用する引張力の作用方向に沿う方向となる。そのため、開口側基布14の直径方向に沿って、直列部18dの配列方向IDが配設されていれば、エアバッグ10Aの膨張途中に、破断予定部25への引き裂き方向へ作用する引張力が、ベントホール形成部位に、極力、作用しない。
【0105】
また、エアバッグ10Aでは、破断予定部25に隣接する各スリット20A・21Aの端部20a・21bが、一般部20b・20eより、幅寸法B2(2mm)を大きくしているため、それらのスリット20A・21Aにおける一般部20b・21eの幅寸法B1(0.5mm)が小さくとも、破断予定部25の目視が容易となる。そのため、スリット形成後の破断予定部25の長さ寸法Lの確認が、効率的に、行なえる。
【0106】
また、隣接するスリット20A・21Aの端部20a・21bが、破断予定部25側に先細り状とした略三角状の開口としており、一般部20b・21eとともに、矢印のように、破断予定部25を指す形状となる。そのため、破断予定部25の位置が、視覚的に、よく把握できて、破断予定部25の長さ寸法Lの確認が、一層、効率的となる。また、端部20a・21bが幅広であっても、破断予定部25の側に、応力集中が生じやすく、破断予定部25を的確に破断させることができる。
【0107】
なお、エアバッグ10Aの周壁11Jでは、開口側基布14に、直接、二つのスリット群18を配設させたが、勿論、当て布29を利用する周壁に、二つの三又状スリット21aと一つの直線状スリット20Aとを設けた直列部18dからなるスリット群18を、配設させてもよい。
【0108】
さらに、実施形態では、ステアリングホイール用エアバッグ装置Mに使用されるエアバッグ10・10Aを例示したが、図23に示すような助手席用エアバッグ装置等に使用されるエアバッグ10Bのベントホール17に、本発明を応用してもよい。
【0109】
なお、このエアバッグ10Bでも、二枚分の扉部27の側壁27bの合計寸法より長くした直線状の扉部27・27の先端縁27aを、エアバッグ10Bの膨張時に周壁11Kに作用する引張力の作用方向に沿って、配設させている。ちなみに、図15に示す一文字状(I字形状)のスリット群18Eを、エアバッグ10B等に配設する場合でも、周壁11Kに作用する引張力の作用方向に沿って、スリット群18Eの直列部18dを構成する複数のスリット19(20)の配設方向IDを、設定し、エアバッグ10Bの膨張途中に、破断予定部25への引き裂き方向へ作用する引張力が、ベントホール形成部位に、極力、作用しないように、構成することが望ましい。勿論、スリット群18Eにおける複数のスリット19(20)の配列方向IDを、経糸・緯糸に対して、バイアス方向に設定してもよい。
【0110】
さらにまた、実施形態では、溶融固化可能な経糸VSと緯糸HSとを織って形成した織布からなる周壁11・11Jを備えたエアバッグ10・10Aについて説明したが、周壁11・11Jにおけるスリット19の周囲に、溶融固化部位24を形成可能であれば、織布から形成されていなくともよく、例えば、合成樹脂シート等から形成されるエアバッグであっても、本発明を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態のエアバッグにおけるベントホール形成部位を、エアバッグを平らに展開させた状態で、エアバッグの底面側から見た図である。
【図2】 図1のII−II部位を示す断面図である。
【図3】 同実施形態のベントホールが開口した状態を示すエアバッグの内部側から見た図である。
【図4】 同実施形態のエアバッグの底面図である。
【図5】 同実施形態のエアバッグが、使用状態で膨張を完了させた状態を示す概略断面図である。
【図6】 同実施形態のベントホールの製造工程を示す図である。
【図7】 他の実施形態のベントホール形成部位を示す図である。
【図8】 さらに他の実施形態のベントホール形成部位を示す図である。
【図9】 さらに他の実施形態のベントホール形成部位を示す図である。
【図10】 図9のX−X部位の断面図である。
【図11】 図9に示す周壁のベントホール開口時を示す図である。
【図12】 さらに他の実施形態のベントホール形成部位を示す図である。
【図13】 図12のXIII−XIII部位の断面図である。
【図14】 図12に示す周壁のベントホール開口時を示す図である。
【図15】 さらに他の実施形態のベントホール形成部位を示す図である。
【図16】 図15に示す周壁のベントホール開口時を示す図である。
【図17】 さらに他の周壁を示す図である。
【図18】 さらに他の周壁を示す図である。
【図19】 さらに他の周壁を示す図である。
【図20】 さらに他の周壁を示す図である。
【図21】 さらに他の実施形態のエアバッグの底面図である。
【図22】 図21に示すエアバッグのベントホール形成部位を示す図である。
【図23】 さらに他の実施形態のエアバッグを示す斜視図である。
【符号の説明】
10・10A・10B…エアバッグ、
11・11A・11B・11C・11D・11E・11F・11G・11H・11I・11J・11K…周壁、
12…本体布、
12a…配設孔、
17…ベントホール、
18…スリット群、
18a・18b…(スリット群の)端部、
18d…直列部、
19(20・21)…スリット、
20・20A…直線状スリット、
21・21A…三又状スリット、
20a・21b…端部、
20b・21e…一般部、
23…スリット周縁、
24…溶融固化部位、
25…破断予定部、
26…ヒンジ部、
27…扉部、
29…当て布、
VS…経糸、
HS…緯糸。

Claims (8)

  1. 可撓性を有した周壁における溶融させて固化可能な部位に、複数のスリットを断続的な線状に配設させて構成したスリット群が配設され、
    膨張用ガスの流入時における内圧の上昇に伴って、前記周壁における前記スリット間の破断予定部を破断させて、前記スリット群の配設位置に、前記膨張用ガスを排気可能なベントホールが形成されるエアバッグであって、
    前記スリット群が、複数のスリットを直線状に配設させた直列部を備え、
    該直列部の両端に位置する二つのスリットが、T字状若しくは逆T字状に開口した三又状スリットとして構成されて、
    二つの前記三又状スリットが、T字若しくは逆T字の縦棒開口の先端を、相互に接近させるように、配設されて、
    T字若しくは逆T字の横棒開口の先端相互を結ぶ直線をヒンジ部とし、かつ、T字若しくは逆T字の前記縦棒開口側に先端縁を配置させて構成される二枚の扉部が、それぞれ、前記先端縁を側縁より長くして形成されるとともに、前記エアバッグの内圧上昇時に、それぞれ、前記破断予定部を破断させて前記ヒンジ部を回転中心として開いて、長方形形状のベントホールを開口させるように、配設され、
    さらに、前記直列部が、前記ベントホールの形成前における膨張用ガスの流入時に、前記周壁における前記ベントホールの形成部位に作用する引張力、の作用方向に、前記直列部の各スリットの配列方向を、沿わせるように、配設され、
    さらに、前記周壁における前記各スリットの周縁に、溶融された後に固化した溶融固化部位が、形成されていることを特徴とするエアバッグ。
  2. 前記周壁が、本体布と、前記スリット群を配設させた当て布と、を備えて構成され、
    前記ベントホールの形成部位における前記本体布の部位に、前記スリット群を露出可能として前記当て布の外形形状より小さい形状で開口する配設孔が、形成され、
    前記当て布が、前記スリット群を前記配設孔から露出させた状態で、周縁を前記配設孔の周縁に縫合させて、前記本体布と一体化されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ。
  3. 前記周壁が、本体布と、当て布と、を備えて構成され、
    前記ベントホールの形成部位における前記本体布の部位に、前記当て布が、周縁を縫合させて配設され、
    前記当て布と前記本体布とに、前記当て布と前記本体布とを貫通すように前記各スリットが、形成され、
    前記溶融固化部位が、前記当て布と前記本体布とを相互に溶融させて固化して、形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ。
  4. 前記直列部が、二つの前記三又状スリットの間に、少なくとも一つの直線状のスリットを配設させて、構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のエアバッグ。
  5. 前記スリット群を配設させた前記周壁の部位が、溶融させて固化可能な経糸と緯糸とを織って形成した織布から構成され、
    前記直列部における各スリットの配列方向が、前記経糸と前記緯糸との各糸方向と、ともに交差するバイアス方向としていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ。
  6. 前記直列部の各スリットの配列方向と、前記経糸の糸方向若しくは前記緯糸の糸方向と、の交差角度を、10〜45°の範囲内として、前記直列部が配設されていることを特徴とする請求項5に記載のエアバッグ。
  7. 前記エアバッグの前記周壁が、
    膨張用ガスを流入させるためのガス流入口を中心に配置させて前記ベントホールを形成する円板形状の開口側基布と、円板形状の乗員側基布と、の外周縁相互を縫合して、形成されるステアリングホイール用として、
    前記直列部が、前記開口側基布における前記ガス流入口を通る前後方向の中心軸を中心とした、左右対称の二箇所に、前記ベントホールを形成するように配置されるとともに、それぞれ、前記直列部の各スリットの配列方向を前記開口側基布における前記ガス流入口を中心とした直径方向に沿わせ、かつ、前記ガス流入口の前方側における前記中心軸から45°までの範囲内の位置に、配置されていることを特徴とする請求項5若しくは請求項6に記載のエアバッグ。
  8. 前記破断予定部側の各スリットの端部が、それぞれのスリットにおける前記端部から離れた一般部の幅寸法より、幅寸法を広くしていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ。
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