JP3975121B2 - 壁体への断熱材設置方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、建築物の壁体の内部空間に断熱材を正しく設置するための断熱材設置方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の木造住宅は、壁体の内部空間に断熱材を配備して家屋の気密性を高めることにより、室内が外気温に影響されることが少なくなるように造られている。前記断熱材は、その機能を十分に発揮させるためには、壁体を構成する外壁材と内壁材との間において、内壁材の内面に接するように設置する必要がある。
【0003】
一般に断熱材は、グラスウールなどを板状に成形したもので、図7に示すように、外周面をポリエチレンフィルムなどのカバー体2で覆っている。断熱材1の両側沿いには、断熱材1を柱に止め固定するための固定片3,3が全長にわたりカバー体2と一体に形成されている。
【0004】
図8は、壁体4の内部空間に断熱材1が設置された状態を示している。同図において、5は柱、6,7は壁体4を構成する外壁材と内壁材であり、整列する柱5の外面上に外壁材6が、内面上に内壁材7が、それぞれ取り付けられている。前記断熱材1は、内壁材7の内面に接するようにして設置すべきところ、断熱材1を宙に浮かせた状態で固定するのが作業上容易でないため、外壁材6の側に沈み込んだ状態で設置されているのが実情である。この場合、断熱材1の両側縁の固定片3,3は、柱5の内側面に釘などの止め金具8で固定されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した断熱材1の設置方法では、内壁材7の内面は室内の空気に接し、一方、内壁材7の外面は室外の空気に接するため、室内外の温度差によって内壁材7の外面が結露する。その結果、断熱材1の劣化を促し、また、柱5を腐食させたり、内壁材7や外壁材6の表面を変色させたり、かびや白蟻を発生させたりするなどの問題がある。
【0006】
この発明は、上記問題に着目してなされたもので、断熱材を宙に浮かせた状態ではなく、安定支持された状態で柱に固定することにより、断熱材を内壁材の内面に接した状態で設置できるようにした壁体への断熱材設置方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明は、壁体の内部空間に断熱材を設置する方法であって、整列する複数の柱の外面に外壁材を取り付け、外壁材の内面上に、表面の複数箇所を一方へ膨出させて複数行、複数列にわたって形成された複数個の中空突部を有しかつ柱の厚みと断熱材の厚みとの差に相当する厚みに設定されたスペーサーを設置し、このスペーサーの各中空突部を断熱材の表面に当接させてスペーサー上に断熱材を支持した状態で、断熱材の両側沿いに設けられた固定片をそれぞれ左右の柱の内面上に固定した後、断熱材上に内壁材を被せるようにして各柱の内面に取り付けることを特徴とする。
【0008】
この発明によると、断熱材を内壁材の内面に接した状態で壁体の内部空間に容易に設置できるので、壁体の内面が結露するのを防止できる。
【0009】
この発明の好ましい一実施態様では、断熱材が柱を挟んで両側に設置される場合に、前記断熱材の固定片は、隣の断熱材の固定片と上下に重ねた状態で止め具により柱の内面上に固定される。
この実施態様によると、1個の止め具を2個の断熱材の固定に兼用できて経済的であり、また、壁体の内部空間の気密性を高めることができる。
【0010】
この発明の好ましい実施態様においては、前記スペーサーは、合成樹脂材より成り、厚みの異なる複数種類の断熱材に対応し得るように、厚み方向への圧縮変形により厚みが変更可能となっている。
【0011】
一般に断熱材には、厚みの小さいもの(例えば、厚みが55mmのもの)と、厚みの大きいもの(例えば、厚みが75mmのもの)との2種類の製品があり、施主がそのいずれかを選択するようになっている。
例えば、一辺が120mmの寸法の左右の柱と内外の各壁材とで囲まれる内部空間に、厚みが55mmの断熱材を配備する場合、断熱材と外壁材との間に65mmの隙間が生じるので、スペーサーの厚みを65mmに設定する。
一方、厚みが75mmの断熱材を配備する場合、断熱材と外壁材との間に45mmの隙間が生じるので、スペーサーの厚みを45mmに設定する。
【0012】
この実施態様によると、厚みが65mmのスペーサーと厚みが45mmのスペーサーの2種類のスペーサーを用意する必要がなく、従って、スペーサーの製作のために2つの金型を必要とせず、製造コストの低減を実現できるうえに、在庫管理も1種類で済む。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明を実施して形成された壁体10の内部構造を示す。
図示例の壁体10は、所定の間隔で一列に整列配備される複数本の柱5と、各柱5を挟むように柱5の外面および内面に互いに対向して取り付けられる外壁材6および内壁材7とで構成される。壁体10の内部の左右の柱5,5で挟まれる各空間には、それぞれ断熱材1とスペーサー11とが配備されている。
【0014】
柱5は例えば120mm角の木材から成る。外壁材6は木質の合板パネルなどから成り、外面にサイディングなどの外装材が設けられている。内壁材7は、例えば石膏ボードや木質の合板パネルより成り、内面に壁紙などの内装材が貼設されている。断熱材1は、グラスウールやロックウールなどを圧縮して矩形板状に成型したもので、その外周面をポリエチレンフィルムなどのカバー体2で覆っている。断熱材1の両側沿いには、断熱材1を柱5に止め固定するのに用いられる帯状の固定片3,3が全長にわたりカバー体2と一体に形成されている。
各柱5を挟むようにして外壁材6と内壁材7とを取り付けると、隣り合う柱5,5間には、柱5の厚み(120mm)に相当する奥行きの内部空間が形成され、この内部空間に断熱材1とスペーサー11とが配備される。
【0015】
スペーサー11は、図2および図3に示すように、ポリプロピレンなどの可撓性を有する合成樹脂シート材をもって形成されており、表面の複数箇所を一方へ膨出させて形成された複数個の中空突部12を有している。また、スペーサー11の外周縁には、中空突部12の突出方向と反対側へ延びる圧縮変形が可能な脚部13が一体形成されている。
【0016】
各中空突部12は、先端に向けて細いテーパ状の胴部16と、胴部16の先端部に形成された平坦な突当て面15とから成る。各中空突部12の突当て面15を断熱材1の表面に当接させ、断熱材1を内壁材7の内面へ押し付けた状態で支持したとき、隣り合う中空突部12,12間に通気路20が形成される。
なお、胴部16はテーパ状に限らず、円柱状や半球状などの形状であってもよい。また、図示例では、中空突部12の配列を列と行とを揃えた整列状態に設定成しているが、千鳥配列などであってもよい。
【0017】
前記脚部13は、外壁材6の内面上に支持される支持部18と、スペーサー11の厚みを調整するための立上り部17とから成る。支持部18には、所定の間隔毎に止め孔14が開設されており、各止め孔14にねじ9を挿入して外壁材6にねじ込むことにより、スペーサー11が外壁材6の内面に固定される。なお、スペーサー11の固定手段はねじ9に限らず、ステイプルなどを用いることもできる。
【0018】
前記断熱材1として、図4に示すような55mmの厚みの断熱材1Aと、図5に示すような75mmの厚みの断熱材1Bとが用いられる。厚みの小さい方の断熱材1Aを用いるときは、断熱材1Aと外壁材6との間には65mmの隙間が生じる。また、厚みの大きい方の断熱材1Bを用いるときは、断熱材1Bと外壁材6との間に45mmの隙間が生じる。スペーサー11は、厚みの小さな断熱材1Aが用いられるときに生じる隙間に合わせて全体の厚みが65mmに設定されるとともに、厚みの大きな断熱材1Bが用いられるときに生じる隙間に合わせて中空突部12の高さが45mmに設定されている。従って、脚部13の立上り部17の高さは20mmである。
【0019】
壁体10に厚みの小さい方の断熱材1Aを用いるとき、図4に示すように、柱5に取り付けられた外壁材6の内面にスペーサー11をねじ9でねじ止めする。このスペーサー11を圧縮変形させずに、その上に断熱材1Aを支持することにより、断熱材1Aは外壁材6の側へ沈み込むのを防止できる。この状態で断熱材1Aの両側縁の固定片3を釘やねじなどの止め具8によりそれぞれ左右の柱5,5の内面上に固定する。この場合、断熱材1Aの固定片3は、隣の断熱材1Aの固定片3と上下に重ねた状態で止め具8により柱5の内面上に一体固定される。
【0020】
最後に断熱材1A上に内壁材7を被せるようにして各柱5の内面に取り付けると、スペーサー11の中空突部12の突当て面15が断熱材1Aを内壁材7の内面へ押し付けた状態で支持し、断熱材1Aとスペーサー11との間にスペーサー11の厚み(65mm)に応じた通気路20が形成される。
【0021】
一方、壁体10に厚みの大きい方の断熱材1Bを用いるときは、図5に示すように、柱5に取り付けられた外壁材6の内面にスペーサー11をねじ9でねじ止めした後、スペーサー11の厚みを断熱材1Bの厚みに対応させるためにスペーサー11の脚部13を圧縮変形させる。この状態で、スペーサー11上に断熱材1Bを支持し、断熱材1Bの両側縁の固定片3を止め具8によりそれぞれ左右の柱5,5の内面上に隣の断熱材1Bの固定片3と共に固定する。
【0022】
最後に断熱材1B上に内壁材7を被せるようにして柱5の内面に取り付けると、スペーサー11の中空突部12の突当て面15が断熱材1Bを内壁材7の内面へ押し付けた状態で支持し、断熱材1Bとスペーサー11との間にスペーサー11の厚み(45mm)に応じた通気路20が形成される。
【0023】
なお、断熱材の厚みが、前記した55mmから75mmまでの間であれば、スペーサー11の脚部13の圧縮変形の程度を調整することにより対応することができる。
【0024】
上記した構成のスペーサー11を用いることにより、壁体10の内部空間において、断熱材1と外壁材6との間に通気路20が形成されるので、壁体10の内部空間の通気性が高まり、建物の床下から小屋裏まで湿気がこもることがない。さらに、内壁材7の内面に接する状態で断熱材1がスペーサー11によって支持されているから、室内への外気温の遮断効果が妨げられることがなく、また、内壁材7の内面に結露するのを防止できる。
【0025】
なお、スペーサー11は、上記した実施例のような凹凸形状のものに限らず、例えば、図6に示すように、波板形状のものであってもよい。図示例のスペーサー11の両側縁には、外壁材6の内面上に支持される支持部18と、スペーサー11の厚みを調整するための立上り部17とから成る脚部13が形成されている。このスペーサー11は、厚みの小さな断熱材1Aが用いられるときに生じる隙間に合わせて全体の厚みが65mmに設定されるとともに、厚みの大きな断熱材1Bが用いられるときに生じる隙間に応じて高さ(45mm)まで圧縮変形できるようになっている。
【0026】
【発明の効果】
この発明によれば、断熱材を宙に浮かせた状態ではなく、スペーサーに安定支持された状態で固定するので、断熱材を内壁材の内面に接した状態で容易に設置することができ、壁体の内面への結露を防止できる。その結果、断熱材の劣化を抑えることができ、また、柱を腐食させたり、内壁材や外壁材の表面を変色させたり、かびや白蟻を発生させたりするのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明を実施して形成された壁体の内部構造を示す一部を破断した斜視図である。
【図2】スペーサーの外観を示す斜視図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】壁体の内部構造を示す断面図である。
【図5】壁体の内部構造を示す断面図である。
【図6】スペーサーの他の実施例を示す断面図である。
【図7】断熱材の外観を示す斜視図である。
【図8】従来の壁体の内部構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1,1A,1B 断熱材
3 固定片
5 柱
6 外壁材
7 内壁材
10 壁体
11 スペーサー
Claims (3)
- 壁体の内部空間に断熱材を設置する方法であって、整列する複数の柱の外面に外壁材を取り付け、外壁材の内面上に、表面の複数箇所を一方へ膨出させて複数行、複数列にわたって形成された複数個の中空突部を有しかつ柱の厚みと断熱材の厚みとの差に相当する厚みに設定されたスペーサーを設置し、このスペーサーの各中空突部を断熱材の表面に当接させてスペーサー上に断熱材を支持した状態で、断熱材の両側沿いに設けられた固定片をそれぞれ左右の柱の内面上に固定した後、断熱材上に内壁材を被せるようにして各柱の内面に取り付けることを特徴とする壁体への断熱材設置方法。
- 前記断熱材の固定片は、隣の断熱材の固定片と上下に重ねた状態で止め具により柱の内面上に固定される請求項1に記載された壁体への断熱材設置方法。
- 前記スペーサーは、合成樹脂材より成り、厚みの異なる複数種類の断熱材に対応し得るように、厚み方向への圧縮変形により厚みが変更可能となっている請求項1に記載された壁体への断熱材設置方法。
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