JP3974967B2 - コイル装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コイルの巻線の固定構造に関し、詳しくは平角線を巻回した巻線を使用したコイル、いわゆる平角コイルを用いたノイズフィルタ、トランス及びラインフィルタ等のコイルを使用したコイル装置において、コイルの位置決めが容易なコイルの固定構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のノイズフィルタ、トランス及びラインフィルタ等のコイルを使用したコイル装置は、例えば図7に示すようなものが挙げられる。即ち、これは樹脂製ケースAとフェライト等のコアBに絶縁被覆された導体線を巻き回してなる巻線Cを設けたチョークコイルDとコンデンサEを有している。そして、樹脂製ケースA内にチョークコイルDを載置し、チョークコイルDの巻線Cの固定はその引出線等を樹脂製ケースAに固定されたU字型のジョイント端子F又は入力端子に設けた接続端子Gにより挟み込み仮固定をした後に半田付けすることにより行われ、更に、当該端子を介してハーネスH等と接続されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のようなコイルの巻線の固定構造はU字型のジョイント端子によるチョークコイルの巻線の引出線等を図8に示すように単に挟み込む構造のために、コイル特性の調整により巻線数を少なくすると、コアの軸寸法に対して巻線の軸寸法が小さくなるために、その軸方向への移動の自由度が増すために、U字型のジョイント端子の上部を折り曲げて仮固定してもなお巻線が動いて、場合によってはU字型のジョイント端子から巻線の引出線がはずれてしまい、半田付けする場合に相当の注意を払う必要があった。
【0004】
また、半田付けした後の巻線の固定強度は、その半田による固着のみの強度に依存するために、振動等によってはその部分に応力がかかり信頼性等の問題が生ずることとなる。このような場合には、巻線を固定するための注型等が必要となる。
【0005】
そこで、本発明はチョークコイルの載置後に巻線を仮固定する場合、巻線の引出線が動かず確実、容易に仮固定でき、半田付けの作業が容易で、半田付け後も信頼性の高いコイル装置を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような目的は下記(1)〜(7)の構成により達成できる。
【0007】
(1)ケース本体とケース蓋部とからなる樹脂製ケースと、コアに平角線をエッジワイズに巻回し引出線を設けた巻線を有するコイルとを有し前記ケース本体に前記コイルを載置したコイル装置において、前記巻線の引出線の少なくとも一方の端部が、前記ケース本体内部に設けられた溝部に挿入され、前記引出線に設けられた穴部にハーネスリード線を挿入し半田付けしたことを特徴とするコイル装置。
【0008】
(2)(1)に記載のコイル装置において、前記ケース蓋体内部上面であって前記ケース本体と勘合したときに前記溝部の直上部分となるところに巻線の引出線端部の抑え部を設けたことを特徴とするコイル装置。
【0009】
(3)ケース本体とケース蓋部とからなる樹脂製ケースと、コアに平角線をエッジワイズに巻回し引出線を設けた巻線を有するコイルとを有し前記ケース本体に前記コイルを載置したコイル装置において、前記巻線の引出線の何れか一方の端部が、前記ケース本体内部に設けられた溝部に挿入され、前記引出線に設けられた穴部にハーネスリード線が挿入され半田付けされ、接続端子が前記ケース本体に固定され、前記巻線の引出線のもう一方の端部に穴部が設けられ、該穴部に前記接続端子が挿入され半田付けされたことを特徴とするコイル装置。
【0010】
(4)(3)に記載のコイル装置において、前記接続端子の先端形状がフック形状であることを特徴とするコイル装置。
【0011】
(5)(3)又は(4)記載のコイル装置において、前記接続端子の先端の中心部にスリットを設けたことを特徴とするコイル装置。
【0012】
(6)(3)乃至(5)の何れか一に記載のコイル装置において、前記巻線の引出線の穴部に挿入後、先端を折り曲げたことを特徴とするコイル装置。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明に係るコイル装置について、図1〜6を参照しつつ説明する。
【0014】
図1に本発明に係るコイル装置の一例の外観斜視図を示す。ここでは内部構造を明らかにするためにケース蓋体は分離している。同図のコイル装置はケース本体1とケース蓋体2と、該ケース下面側に装着される外部取付用ブラケット3(アース兼用)と、コア4に平角線をエッジワイズに巻回した巻線5を有するコイル6と、コンデンサ7と、入力端子8と、ハーネスリード線9(外部負荷)と、接続端子31(外部取付用ブラケット3と一体に形成したもの)、81(入力端子8と一体に形成したもの)を有している。
【0015】
前記ケース本体の内部側面には溝部11が設けられている。当該溝部には前記巻線5の引出線51の端部が挿入されることによりコイル巻線の軸方向及び回転方向への動きを抑えることができ、容易に巻線を固定することができる。
【0016】
更に、巻線の引出線端部を溝部で固定する場合は、当該巻線5とハーネスリード線9との接続は、巻線の引出線51に穴部511を設け、当該穴にハーネスリード線の引出線を挿入し半田付けして固定する。これにより、振動等が与えられてもコイル巻線部は固定されているため、そのハーネスリード線の接続部に応力はかかることが無く、高い信頼性のものが得られる。そして、当該ハーネスリード線はその二本をケース本体内でバンド91により結ぶことが好ましい。これは、ハーネスリード線を引っ張るような力が加わっても接続部には影響を及ぼさないからである。
【0017】
前記溝部11は巻線の端部を固定することができればその設置場所は特に限定はなく、巻線端部付近のケース本体1の側面に設ければよい。例えば図2に示すように、巻線5の中心軸に対して垂直となる側面1a(同図(a)参照)だけでなく、巻線の中心軸に対して平行となる側面1b(同図(b)参照)に設けてもよい。また、当該溝部による巻線の固定は片端部でもよいが、両端部ともハーネスリード線により外部と電気的接続をする場合は両端部とも溝部により固定することが好ましい。
【0018】
図3に巻線の引出線の固定状態の断面図を示すが、このようにケース蓋体2をケース本体1に勘合したときに、ケース蓋体2の内部上面2aにより、巻線の引出線51の側部51aが押されて固定されるように当該ケース蓋体2のクリアランス(溝部の上部から当該蓋体の内部上面までの距離)を調整することが好ましい。これは巻線だけでなくコイルもより強固な固定をすることができるからである。その調整は、前記クリアランスが少なくとも平角線の幅より小さければよいが、ケース本体とケース蓋体の勘合時の取り扱い(クリアランスが小さいと勘合できない場合があること)を考慮してある程度の余裕を持たせることが好ましい。また、その形態は同図(a)に示すように、ケース蓋体2の内部上面2aにより直接押さえてもよいし、同図(b)に示すように、ケース蓋体2の内部上面2aにケース本体1と勘合したときに溝部11の直上部分となるところに巻線の引出線端部の抑え部21を設けてもよい。
【0019】
溝部11の深さ寸法(ここで言う深さ寸法は図3(a)の11a)は、特に限定しないが、巻線をなす平角線の幅寸法より少なくとも浅いこと、即ち、巻線の引出線51の端部を溝部11に設置した場合に同図の断面方向から見たときに、引出線の一部がケース本体から出るような深さであることが好ましい。これは、前記ケース蓋体による押さえが容易となるからである。溝部の奥行き寸法(ここで言う奥行き寸法は図3(a)の11b)は、特に限定しないが大きい方が好ましい。巻線の長さ寸法や引出線の長さに左右されることなく固定が容易となるからである。溝部の幅は少なくとも巻線をなす平角線の厚みよりも広ければよいが、若干の余裕がある広さ、例えばその1.2〜2倍程度の広さを持つことが好ましい。これは、引出線挿入の作業性が向上するからである。
【0020】
一方で、巻線の引出線の固定は、前記のように溝部に挿入するだけでなく、図4に示すように巻線の引出線52に穴部521を設け、ケース本体1に固定され、かつ、ケース本体外部に電気的に接続される端子、即ち、入力端子8に設けられた接続端子81を当該穴部521に挿入して仮固定して半田付けして電気的に接続固定する。これもまた、巻線の軸方向及び回転方向への動きを抑えることができ、半田付け等の作業性の向上が図られ、半田付け後に半田部分に応力がかかることもなくその強度も高まる。前記接続端子は図1で示すような入力端子だけではなく外部取付用ブラケット3に設けてもよい(同図中の符号31)。
【0021】
前記接続端子の挿入部の形状は確実に固定できれば特に限定はないが、例えば、図5に示すような形状のものが好ましく使用することができる。即ち、板状のもの(同図(a))、側面に爪部を有するフック形状のもの(同図(b))、先端にスリットが入っているもの(同図(c)、(d))である。更に、これら接続端子は、巻線の引出線の穴に挿入後にその先端を折り曲げることにより巻線の固定をより強固なものとすることができ好ましい。特に先端にスリットが入っているものは同図(e)、(f)に示すように、スリットを押し広げるように折り曲げる、接続端子側面から見て略直角に折り曲げる(図中では互い違いに折り曲げているが、同方向に折り曲げても良い)ことで更に強固な固定となる。
【0022】
前記接続端子による巻線の固定は片端部でもよいが、両端部とも穴を設け前記接続端子により固定してもよい。
【0023】
次に、本発明に係るコイルの固定構造を有するコイル装置及びその製造方法について図6に示す分解斜視図を参照しながら更に詳しく説明する。
【0024】
まず、平角線をエッジワイズに巻回し巻線5を得る。巻線5は引出線51及び52が設けられ、両端部付近にはハーネスリード線と接続するための穴部511及び接続端子31、81と接続、固定するための穴部521を設ける。ここで、平角線は一般的な導体材料であれば何れも使用することができるが、加工性や電気的な特性を考慮すると銅材が好ましい。また、巻線の表面は絶縁性を確保する必要があるためにポリエステル、ポリウレタン等の樹脂いわゆる絶縁膜がコーティングされ、前記穴部511、521付近の導通が必要な部分は絶縁膜は剥がされる。
【0025】
続いて、前記巻線5にフェライト等のU型コア部材4a、4bを相互に突き合わせるように巻線中心に挿入し、巻線が2系統設けられるようなコモンモードチョークコイル6を作成する。ここで、絶縁をより完全なものとするために、コアの脚部41に絶縁樹脂等の絶縁筒(図示せず)を被せて巻線に巻装している。コア4は前記のように、いわゆるUU形状の他、U型コア部材とI型コア部材を突き合わせたいわゆるUI形状としても良い。そして、ハーネスリード線(図示せず)を巻線に設けられた一方の穴部511に半田付けする。
【0026】
一方、前記コモンモードチョークコイル6を覆う絶縁樹脂ケースは、ケース本体1と、該ケース本体に勘合するケース蓋体2とからなっている。ケース本体1は、四側面をなす側面部と底面部とを有する上部が開口した方形箱状であって、内部一側面に巻線端部を固定する溝部11が一体に形成されている。また、該溝部が設けられる内部側面に対向する内部側面付近に接続端子81を有する入力端子8が入力端子保持部14により固定され、外部取付用ブラケット3と電気的に接続された接続端子31をケース本体1に固定される。
【0027】
その他、ケース本体1にはコモンモードチョークコイル6を載置するときにそのコアを係止するための係止爪12及び内側保持部13が一体に形成される。この係止爪12及び内側保持部13により、コアのがたつきを抑え、巻線のこすれによる巻線のショートを防ぐことができる、また、従来必要であった接着剤等を使用することなく確実に固定することができる。
【0028】
そして、前記コモンモードチョークコイルをそのコアが前記係止爪12及び内側保持部13に固定し、巻線の引出線511の端部を前記溝部11に固定し、更に、もう一方の引出線52の端部付近の穴部521を接続端子81及び31に固定し、前記ケース本体1に載置しする。これにより、コアが固定されると同時に、巻線も軸方向及び回転方向に動くことなく固定される。巻線が固定されるときの引出線の取り回しは、コアの上部を避けるようにすることが好ましい。即ち、図1を参照すると、ケース本体の巻線軸に平行な側面付近で取り回し、かつ、接続端子もまた、ケース本体の巻線軸に平行な側面付近に設置することが好ましい。これは、コアと接触しにくくなり、また従来では必要であった、絶縁シート(コアの側部42の上面部に覆う絶縁シート)が不要となるからである。
【0029】
次にコンデンサ7及び接続端子部分を半田付けして、ケース蓋体をケース本体に勘合することにより図1に示すコイル装置を作成することができる。
【0030】
本発明のコイル装置は、平角線を用いるコイル装置であれば、前記のコイル装置(ノイズフィルタ)に限らず、例えば、トランス、ラインフィルタ等のようなものにも用いることができる。また、巻線がコアの自身が一本であるようなノーマルモードチョークコイルの用いたコイル装置でもよい。
【0031】
【発明の効果】
本発明に係るコイルの固定構造により以下のような効果が得られる。
【0032】
本発明はチョークコイルの載置後に巻線を仮固定する場合、単に前記溝部に巻線の引出線端部を又は前記接続端子を引出線穴部に挿入するだけで、巻線が動くことなく確実、容易に仮固定でき、半田付けの作業等が容易となる。また、巻線数、即ち、巻線の長さに左右されることなく確実に固定できる。
【0033】
また、巻線の固定は従来のように半田のみの固定に依存することなく強固に固定できるために半田による固定後も振動等によりその部分がはずれて短絡することはなく高い信頼性のものが得られる。
【0034】
更には、本発明に係るコイル装置の溝部側は巻線の引出線が端子を兼ねているために、従来は必要であった単一部品としてのジョイント端子が不要となり、コストの低減が図られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るコイル装置の一例を示す外観斜視図である。
【図2】(a)、(b)は本発明に係るコイル装置の一例であって、溝部による固定の要部斜視図である。
【図3】(a)、(b)は本発明に係るコイル装置の一例であって、溝部による固定の要部断面図である。
【図4】本発明に係るコイル装置の一例であって、接続端子による固定の要部斜視図である。
【図5】(a)、(b)、(c)、(d)は接続端子の先端形状の一例を示す図であり、(e)、(f)は仮固定の状態の一例を示す図である。
【図6】本発明に係るコイル装置の一例を示す分解斜視図である。
【図7】従来のコイル装置のケース蓋体を外した状態の平面図である。
【図8】従来のコイル装置であって、ジョイント端子による固定の要部斜視図である。
【符号の説明】
1;ケース本体
11;溝部
11a;溝部の深さ寸法
11b;溝部の奥行き寸法
12;係止爪
13;内側保持部
14;入力端子保持部
2;ケース蓋体
2a;ケース蓋体内部上面
21;巻線の引出線の抑え部
3;外部取付用ブラケット
31、81、G;接続端子
4、B;コア
4a,4b;U型コア部材
41;コア脚部
42;コア側部
5、C;巻線
51、52;引出線
511、521;引出線穴部
6、D;コイル(コモンモードチョークコイル)
7、E;コンデンサ
8;入力端子
9、H;ハーネスリード線
91;バンド
A;樹脂製ケース
F;ジョイント端子
Claims (6)
- ケース本体とケース蓋部とからなる樹脂製ケースと、コアに平角線をエッジワイズに巻回し引出線を設けた巻線を有するコイルとを有し前記ケース本体に前記コイルを載置したコイル装置において、前記巻線の引出線の少なくとも一方の端部が、前記ケース本体内部に設けられた溝部に挿入され、前記引出線に設けられた穴部にハーネスリード線を挿入し半田付けしたことを特徴とするコイル装置。
- 請求項1に記載のコイル装置において、前記ケース蓋体内部上面であって前記ケース本体と勘合したときに前記溝部の直上部分となるところに巻線の引出線端部の抑え部を設けたことを特徴とするコイル装置。
- ケース本体とケース蓋部とからなる樹脂製ケースと、コアに平角線をエッジワイズに巻回し引出線を設けた巻線を有するコイルとを有し前記ケース本体に前記コイルを載置したコイル装置において、前記巻線の引出線の何れか一方の端部が、前記ケース本体内部に設けられた溝部に挿入され、前記引出線に設けられた穴部にハーネスリード線が挿入され半田付けされ、接続端子が前記ケース本体に固定され、前記巻線の引出線のもう一方の端部に穴部が設けられ、該穴部に前記接続端子が挿入され半田付けされたことを特徴とするコイル装置。
- 請求項3に記載のコイル装置において、前記接続端子の先端形状がフック形状であることを特徴とするコイル装置。
- 請求項3又は請求項4記載のコイル装置において、前記接続端子の先端の中心部にスリットを設けたことを特徴とするコイル装置。
- 請求項3乃至請求項5の何れか一に記載のコイル装置において、前記巻線の引出線の穴部に挿入後、先端を折り曲げたことを特徴とするコイル装置。
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