JP2004140006A - コモンモードチョークコイル及びラインフィルタ - Google Patents

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Abstract

【課題】高周波帯域でも使用可能なコモンモードチョークコイルを提供する。
【解決手段】コモンモードチョークコイル1は、ホルダー2とホルダーベース部10に載置されるコイル部13及びコア固定用バネ3で構成されている。前記コイル部13は、平角電線をエッジワイズに巻回したコイル6と略コ型のコア5と、該コア5が嵌入されたボビン9で構成されている。コイル部13はコア固定用バネ3で前記ホルダー2に固定される。前記コア5は、高周波帯域でも高透磁率を有する、Mn−Zn系のフェライトコアで、室温(25℃)における初透磁率が100kHzにおいて3,000以上、10MHzにおいて100以上である。浮遊容量の少ないエッジワイズに巻回したコイル6と高周波帯域でも高透磁率を有するMn−Zn系のフェライトコアとの相乗効果によって高周波帯域でも高いインピーダンスを確保できる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種電子回路に用いられるコモンモードチョークコイル及びラインフィルタに関し、特に平角電線をエッジワイズ巻きしたコモンモードチョークコイル及びラインフィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の小型化、高性能化に伴って、ラインフィルタに使用されるコモンモードチョークコイルは、小型化、高性能化が必要になっている。その特性は、例えば伝導ノイズについては、150kHz乃至30MHzまでの周波数帯域において規制されている。従来から前記コモンモードチョークコイルは、丸型電線が用いられている(例えば特許文献1参照。)。斯かるコモンモードチョークコイルは、図4に示すように第1の巻線411および第2の巻線412を巻回するとともに、巻軸方向に貫通孔を有したボビン413と、ボビン413の貫通孔に挿入した閉磁路磁芯414と、ボビン413および閉磁路磁芯414を装着する端子台415と、端子台415に植設するとともに、第1の巻線411および第2の巻線412と接続した端子ピン416とを備えている。
【0003】
また、ボビン413は、2つに分割されたものを、日の字型閉磁路磁芯414の中央磁芯に組み合わせて形成しており、第1、第2の巻線411、412は、ボビン413の中心に形成した分割鍔417を境にそれぞれ巻回されている。さらに、端子台415は、開口部を有した枠部418と端子ピン416を植設した端子板部419とを有するとともに、枠部418を端子板部419の端部に配置して、側面形状を略L字形状としている。また、閉磁路磁芯414を端子台415の枠部418の外周部に接触させるとともに、ボビン413の一部を枠部418の開口部内に挿入させて、閉磁路磁芯414およびボビン413を位置決めしている。そして、端子台415の枠部418に、ボビン413に巻回した第1の巻線411および第2の巻線412と、閉磁路磁芯414とを絶縁する絶縁手段を設け、この絶縁手段は、閉磁路磁芯414とボビン413との隙間部に、端子台415の枠部418より板状部420を突出させた手段としている。この板状部420は、枠部418の上辺と下辺とに、辺全体に渡って設けてある。
【0004】
一方、▲1▼従来の丸型電線に比べてコイルの導体占有率を大きく取れるため、高性能、高効率、小型低背化が可能である、▲2▼従来の丸型電線に比べて線間容量が小さく、コイルの周波数特性がよい、▲3▼ボビンへの巻線が不要で、巻線とコイルの組みたてが容易なために、コイル製造工程の自動化が容易である、などの理由により、エッジワイズコイルを用いたコモンモードチョークコイルも知られている。
【0005】
前記エッジワイズ巻きしたコイルを用いたコモンモードチョークコイルとして、図5に示すようなコモンモードチョークコイルがある(例えば特許文献2参照。)。該コモンモードチョークコイルは、絶縁被膜付き平角線をエッジワイズ巻きしてなる同一巻数のコイルを2個用意して同一巻回方向に積層した構成である。一方のコイル59の両端の絶縁被膜剥離部59a、59bをボビン57の一方の側からそのまま引き出してボビンのコイル巻き付け部57e、57fに巻き付けて端子とする。同様に、他方のコイル510の両端の絶縁被膜剥離部510a、510bをボビンの反対側から交差させて引き出してボビンのコイル巻き付け部57g、57hに巻き付けて端子とするコモンモードチョークコイルである。
【0006】
又、図6に示すような平角線をエッジワイズに巻回したコモンモードチョークコイルがある(例えば特許文献3参照。)。斯かるコモンモードチョークコイルは、第1のコイル611、第2のコイル612、第3のコイル613および第4のコイル614と、ロの字型の閉磁路を形成する磁心617とから構成されている。上記磁心の一方の磁脚に上記第1と第2のコイルを、対向する他方の磁脚に第3と第4のコイルを配置してある。上記第1と第3のコイルおよび第2と第4のコイルが直列に接続され、ライン電流によって第1と第2のコイル、第2と第3のコイル、第3と第4のコイルおよび第4と第1のコイルに発生する磁束は相殺される。また、第1と第3のコイルおよび第2と第4のコイルに発生する磁束は互いに付勢され、さらに同一方向に流れる電流によって第1、第2、第3、第4のコイルに発生する磁束はそれぞれ付勢されるように各コイルの巻方向を変えて第1と第4のコイル、第2と第3のコイルが並設されるように配置されている。
【0007】
前記各種のコモンモードチョークコイルを用いたラインフィルタは、前記周波数帯域での伝導ノイズを除去するために、図7に示すように、コモンモードチョークコイル70と、バイパスコンデンサ71とで構成し、コモンモードチョークコイル70の一方の端を入力とし、他方の端に前記バイパスコンデンサ71を接続して出力端子とし、該出力端子の両端に負荷72を接続する。斯かるラインフィルタにおいては、低周波側をコモンモードチョークコイル70のインダクタ成分によるインピーダンスによってノイズ電流をカットし、高周波帯域におけるインダクタの性能の低下をバイパスコンデンサ71でカバーし、高周波ノイズ電流をアース側に流してノイズをカットしているのが大半である。
【0008】
又、フィルタの性能を向上するために、図8に示すように、コモンモードチョークコイル70、80を従続接続し、その接続点にバイパスコンデンサ71を接続し、コモンモードチョークコイル70の一方の端を入力とし、コモンモードチョークコイル80の他方の端を出力としたフィルタもある。いずれにしてもラインフィルタは、前記周波数帯域での伝導ノイズを除去するために、コモンモードチョークコイルと、バイパスコンデンサとで構成されている。
【0009】
前記各種のコモンモードチョークコイルにおいて図9に示す等価回路によりコモンモードチョークコイルの性能について説明する。図9における、符号Lはインダクタンス、符号CSは浮遊容量、符号Rは巻線抵抗である。該コイルの端子c、d間のインピーダンスをZ、周波数をfとすると、Zは式(1)で表せる。
Z=R+jωL/(1−ωLC)         (1)
但し、ω=2πfである。
この場合の共振周波数は式(2)で表せる。
ω=(LC)−1/2                 (2)
しかし、上記式は、Lが周波数に対して一定である場合に成立し、実際にはコアの透磁率μが周波数により図10のように変化し、高周波帯域において急激に低下する。
【0010】
図10において、符号ニは、従来のMn−Zn系のフェライトコア、符号ホは、後述する本発明で使用するMn−Zn系のフェライトコア(以下、新Mn−Zn系のフェライトコアと称し、例えば特許文献4及び特許文献5参照)の、それぞれの特性である。図10に示すように、従来のMn−Zn系のフェライトコアは、低周波での透磁率μが5,000と大きいが、例えば、1MHzでは、符号Aで示すように、約1/3に減少する。後述する本発明で使用する新Mn−Zn系のフェライトコアでは、低周波での透磁率μが4,000とやや少ないが、例えば、1MHzでは、符号Bで示すように、約1/2.5に減少する。しかし、その後の透磁率の低下は、従来のMn−Zn系のフェライトコアに比べて緩やかである。
【0011】
【特許文献1】
特開2000−150243号公報(第1図)
【特許文献2】
特開平09−134827号公報(第1図)
【特許文献3】
特開平11−273975号公報(第2図)
【特許文献4】
特開2001−220221号公報
【特許文献5】
特開2001−220222号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
課題の理解を容易にするために、Mn−Zn系フェライトコアの透磁率の違いによる特性の変化について図10、図11を用いて説明する。図11は、外径25mm、内径15mm、厚さ13mmのトロイダルコアに丸型電線を約20回程度卷回したコアでの特性である。巻線の浮遊容量CSが影響せず、コアの特性が表れやすいように巻数を少なくしてある。従来のMn−Zn系フェライトコア(図10において符号ニで示すコア)と、新Mn−Zn系フェライトコア(図10において符号ホで示すコア)を、それぞれ用いた時のコイルのインピーダンスの周波数特性を図11の符号ト及び符合ヘで示す。即ち、符号トで示す特性のコイルは、1MHz以上で急激に透磁率μが低下するコアを使用し、符号ヘで示す特性のコイルは、10MHzでも透磁率μが100以上のコアを使用している。
【0013】
図11から明らかなように、1MHz以上で急激に透磁率μが低下する従来のMn−Zn系フェライトコアを使用したコイル(符号トで示す特性)は、1MHzでインピーダンスの低下が始まり、35MHzでは1kΩになる。一方、10MHzでも透磁率μが100以上ある新Mn−Zn系フェライトコアを使用したコイル(符号ヘで示す特性)は、5MHz以上でインピーダンスの低下が始まり、35MHzでも3kΩである。このように、コアの透磁率が高周波帯域においても高いコアは、当然高周波帯域でも高いインピーダンスを有する。しかし、巻線の巻数が増加するにつれて巻線の浮遊容量CSは増加し、透磁率μの変化が現れる前に式(2)で示される周波数で共振し、その後は巻線の浮遊容量CSとインダクタンスLの相互作用で表される特性でインピーダンスZが低下する。その結果、高周波帯域での透磁率μが大きくても、浮遊容量CSが大きい従来の丸型電線では浮遊容量CSの影響によってインピーダンスの減少が、より低周波帯域から現われ、全体のインピーダンスは図11符合チで示す方向、即ち低周波帯域に移動する傾向になる。
【0014】
一方、従来のコモンモードチョークコイルは、通常Mn−Znのフェライトコアが使用されている。該Mn−Zn系のフェライトコアは、図10符号ニに示したように透磁率が周波数によって変化し、低周波では透磁率が高いが、高周波帯域では透磁率が急激に低下する。又、Ni−Zn系のフェライトコアも用いられる場合があるが、斯かるNi−Zn系のフェライトコアは、高周波帯域での透磁率の急激な低下はないが、低周波での透磁率が低い。
【0015】
前記コモンモードチョークコイルのノイズ成分を効率的に除去するにはコイルのインピーダンスZをできる限り大きくすることが必要である。インピーダンスZを大きくする方法として、コイルの温度上昇に基づく電流容量の点から使用可能な巻線の線径を一定とした時には、以下の3つの方法がある。
▲1▼コアの透磁率μをできる限り大きくする。
▲2▼コイルの巻き数を多くする。
▲3▼コア定数(コア定数=実効磁路長/実効断面積)を小さくする。
前記インピーダンスZを大きくする3つの方法は、また以下のような問題点がある。
【0016】
▲1▼コアの透磁率μをできる限り大きくすることによって結果的にインピーダンスZの増加が図れる。しかし、前記のように透磁率μは周波数特性を有している。一般的には、前記Mn−Zn系のフェライトコアにおいては、図10の符号ニで示す特性のように低周波での透磁率は5,000乃至7,000であるが、1MHzでは、符号Aで示すように、約1/3に減少し、透磁率の限界が300乃至500kHzである。また、透磁率が10,000以上のフェライトコアもあるが、高周波帯域での透磁率は更に低下し、100kHz程度である。一方、Ni−Zn系のフェライトは、10乃至30MHzで高インピーダンスが得られるが、逆に低い周波数での透磁率が低く、インピーダンスを増加するためにはコイルの巻数を増加しなくてはならず、特殊用途に使用される。何れの場合にも前記規制されている伝導ノイズの周波数範囲である150kHz乃至30MHzまでの周波数帯域をカバーできない。
【0017】
▲2▼インダクタンスは、コイルの巻き数の二乗に比例するが、巻数を多くするとそれに伴なって浮遊容量が増加する。その結果、共振周波数は低下すると共に高周波帯域でのインピーダンスも低下する。その結果、浮遊容量CSの影響によってインピーダンスの減少がより低周波帯域から現れコアの材料が良くてもその特徴を生かせない。また、コイルの巻数を増加することは放熱効果が低下し、温度上昇の原因ともなり、結果的に更に電線の径を太くすることになる。
【0018】
▲3▼コア定数を小さくすることによってインダクタンス(インピーダンス)を大きくできる。しかしながらコアの形状は基板のスペースファクタで定まり、自由に決めることができない。
【0019】
このように、周波数帯域の広い(10kHz乃至30MHz)コモンモードチョークコイルを得るためには以下のように二律背反する問題点がある。即ち、従来のMn−Zn系のフェライトコアは高透磁率なので巻数を増加せずにインピーダンスを増加でき、浮遊容量の増加を防ぐことができる。しかし、高周波帯域での透磁率の急激な低下によりインピーダンスが低下する。一方、高周波帯域で透磁率の高いコアは、低周波での透磁率が低く、その結果、巻数を増加して低周波のインピーダンスを確保する必要がある。しかし、巻数を増加することにより浮遊容量が増加し、逆に高周波帯域でのインピーダンスが低下する問題がある。
【0020】
又、コモンモードチョークコイルを用いたラインフィルタでも同様に、従来のMn−Zn系のフェライトコアは高透磁率なので巻数を増加せずにインピーダンスを増加でき、浮遊容量の増加を防ぐことができる。しかし、高周波帯域での透磁率の急激な低下によりインピーダンスが低下する。一方、高周波帯域で透磁率の高いコアは、低周波での透磁率が低く、その結果、巻数を増加して低周波のインピーダンスを確保する必要がある。しかし、巻数を増加することにより浮遊容量が増加し、逆に高周波帯域でのインピーダンスが低下する問題がある。その結果、ラインフィルタとして高周波ノイズをカットするためには、前述したような高周波帯域のノイズをカットするバイパスコンデンサが必要となる。斯かるバイパスコンデンサを付加することで高周波ノイズをカットできるが、実装面積に制限のある場合には、バイパスコンデンサが邪魔になると共にコストが増加するという弊害もでてくる。
【0021】
本発明は、かかる問題を解決してコモンモードチョークコイルの高周波帯域での性能を向上し、あわせて低価格なラインフィルタを提供することを目的としてなされたものである。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために請求項1に記載のコモンモードチョークコイルは、室温における初透磁率が100kHzにおいて3,000以上、10MHzにおいて100以上であるロの字型の閉磁路を形成するMn−Znフェライトコアと、第1の平角電線と第2の平角電線をそれぞれエッジワイズに巻回した第1のコイルと第2のコイルとから構成され、上記ロの字型の閉磁路を形成するMn−Znフェライトコアの一方の磁脚に上記第1のコイルを、対向する他方の磁脚に第2のコイルを配置したことを特徴とする。
【0023】
請求項2に記載のコモンモードチョークコイルは、請求項1に記載のコモンモードチョークコイルにおいて、前記Mn−Znフェライトコアは、主成分が、Fe 44.0〜49.8 mol%、 ZnO 15.0〜26.5 mol%、CoO 0.1〜3.0 mol%、Mn 0.02〜1.00 mol%、残部 MnOからなり、副成分は、V 0.010〜0.200 mass%、 Bi 0.005〜0.100 mass%、In 0.005〜0.100 mass%、PbO  0.005 〜0.100mass%、MoO3 0.001〜0.100 mass%およびWO 0.001〜0.100 mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする。
【0024】
請求項3に記載のコモンモードチョークコイルは、請求項1に記載のコモンモードチョークコイルにおいて、前記Mn−Znフェライトコアは、主成分が、Fe 44.0〜49.8 mol%、 ZnO 15.0 〜26.5 mol%、Mn 0.02〜1.00 mol%、残部 MnOからなり、副成分は、V  0.010〜0.200 mass%、Bi  0.005〜0.100mass%、In  0.005〜0.100 mass%、PbO  0.005 〜0.100 mass%、MoO3 0.001〜0.100 mass%および WO 0.001〜0.100 mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする。
【0025】
請求項4に記載のラインフィルタは、室温における初透磁率が100kHzにおいて3,000以上、10MHzにおいて100以上であるロの字型の閉磁路を形成するMn−Znフェライトコアと、第1の平角電線と第2の平角電線をそれぞれエッジワイズに巻回した第1のコイルと第2のコイルとから構成され、上記ロの字型の閉磁路を形成するMn−Znフェライトコアの一方の磁脚に上記第1のコイルを、対向する他方の磁脚に第2のコイルを配置し、前記第1のコイルの一方の端子と第2のコイルの一方の端子とを入力端子とし、前記第1のコイルの他方の端子と第2のコイルの他方の端子とを出力端子とし、前記入力端子に印加されたノーマルモード電流に対し磁束が互いに打ち消しあうように前記第1のコイルと第2のコイルが接続された入力端子と出力端子とを備えたことを特徴とする。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態のコモンモードチョークコイル及びラインフィルタは、前述したように、浮遊容量の少ないエッジワイズコイルと、高周波帯域において透磁率の高いMn−Zn系のフェライトコアとを組み合わせることにより、両者の相乗効果により、従来にない、高周波帯域での特性も優れたコモンモードチョークコイル及びラインフィルタを実現したものである。
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図1を用いて説明する。コモンモードチョークコイル1は、プラスチック製のホルダー2と、該ホルダー2のホルダーベース部10に立設して載置されるコイル部13及びコア固定用バネ3で構成されている。前記コイル部13は、平角電線をエッジワイズに巻回したコイル6と略コ型のコア5と、該コア5が嵌入されたボビン9で構成されている。コイル部13はコア固定用バネ3で前記ホルダー2に固定される。なお、図1に示したコモンモードチョークコイル1は、ボビン9の軸が図示していない取りつけ基板に対して垂直である。エッジワイズコイル6の先端(端子)12は、それぞれ絶縁皮膜を剥離し、はんだ処理が施されている。エッジワイズコイル6の先端12は、コイル部13がホルダー2に固定されてから図示していない基板に装着される。
【0028】
前記コア5としては、前述したように、高周波帯域でも高透磁率を有する、以下のような新Mn−Zn系のフェライトコアを用いる。即ち、室温における初透磁率が100kHzにおいて3,000以上、10MHzにおいて100以上である。斯かる新Mn−Zn系のフェライトコアは、主成分が、Fe3  44.0〜49.8 mol%、 ZnO 15.0〜26.5 mol%、CoO 0.1〜3.0 mol%、Mn 0.02〜1.00 mol%、残部はMnOからなり、副成分は、V 0.010〜0.200 mass%、 Bi  0.005〜0.100 mass%、In 0.005〜0.100 mass%、PbO 0.005 〜0.100 mass%、MoO 0.001〜0.100 mass%およびWO 0.001〜0.100 mass%のうちの1種または2種以上を含有することで実現できる(例えば特許文献4参照。)。
【0029】
また、前記新Mn−Zn系のフェライトコアは、主成分が、Fe 44.0〜49.8mol%、 ZnO 15.0 〜26.5 mol%、Mn 0.02〜1.00 mol%、残部MnOからなり、副成分は、V 0.010〜0.200 mass%、 Bi3  0.005〜0.100 mass%、In0.005〜0.100 mass%、PbO 0.005 〜0.100 mass%、MoO3  0.001〜0.100 mass%および WO 0.001〜0.100 mass%のうちの1種または2種以上を含有することによっても実現できる(例えば特許文献5参照。)。
【0030】
図2は、前記新Mn−Zn系のフェライトコアを用いて一方のコイルのインダクタンスが8mHのコモンモードチョークコイルの周波数特性を示したものである。図2において、符号ハで示すコア5は、高さ18mm、幅25mm、厚さ8mmの、図10符合ホで示した特性を有する前記新Mn−Zn系のフェライトコアである。又、本実施形態と比較のために、図10符合ニで示した特性の従来のMn−Znフェライトコアに丸型電線を卷回した、図4で示したコモンモードチョークコイルの特性(符号イ)と、図4で示したコモンモードチョークコイルのコアに前記新Mn−Zn系のフェライトコアを用いたコモンモードチョークコイルの特性(符号ロ)を示した。
【0031】
符号イで示した従来のMn−Znフェライトコアに丸型電線を卷回したコモンモードチョークコイルは、図11で説明したように、コアの透磁率の低下と巻線の浮遊容量との影響によって、周波数が500kHzの時インピーダンスは45kΩであるが、10MHzではインピーダンスは2.2kΩに減少する。又、符号ロで示した新Mn−Zn系のフェライトコアに従来の丸型電線を卷回したコモンモードチョークコイルは、図11で説明したように、コアの透磁率は高周波帯域でも良好であるが巻線の浮遊容量の影響によって、周波数が500kHzの時インピーダンスは45kΩであるが、10MHzではインピーダンスは2.8kΩに減少する。一方、符号ハで示した新Mn−Zn系のフェライトコアと平角電線をエッジワイズに卷回したコモンモードチョークコイルは、図11で説明したように、コアの透磁率は高周波帯域でも良好であるが巻線の浮遊容量も少なく、浮遊容量の影響を受けずにコアの特性が活かせる。その結果、インピーダンスの最大値も増加し、周波数が700kHzの時インピーダンスは48kΩとなる。更に、10MHzでもインピーダンスは7.3kΩである。
【0032】
即ち、インピーダンスの最大値と10MHzでのインピーダンスとの比は、符号イで示した従来のMn−Znフェライトコアに丸型電線を卷回したコモンモードチョークコイルでは1/20に減少するのに比べて、本発明の実施形態では1/6.5である。即ち、従来例に比べてインピーダンス比の差は3倍あり、本発明の実施形態の新Mn−Zn系のフェライトコアと平角電線をエッジワイズに卷回したコモンモードチョークコイルの性能が優れている。言いかえれば、同一インピーダンスに低下する周波数まで使用する場合、従来のコモンモードチョークコイルが10MHzであれば、本発明の実施形態のコモンモードチョークコイルでは30MHzまで使用可能である。
【0033】
図3により本発明のコモンモードチョークコイルを使用したラインフィルタの実施形態について説明する。図7、図8に示したように従来のコモンモードチョークコイルは、コモンモードチョークコイル70と、バイパスコンデンサ71とで構成し、コモンモードチョークコイル70の一方の端を入力とし、他方の端に前記バイパスコンデンサ71を接続して出力端子とし、該出力端子の両端に負荷72を接続する。即ち、高周波帯域におけるインダクタの性能の低下をバイパスコンデンサ71でカバーし、高周波ノイズ電流をアース側に流してノイズをカットしている。
【0034】
一方、本発明によるラインフィルタは、図1に示したように第1の平角電線と第2の平角電線をそれぞれエッジワイズに巻回した第1のコイル60と第2のコイル61とから構成され、ロの字型の閉磁路を形成する前記新Mn−Zn系フェライトコア5の一方の磁脚に上記第1のコイル60を、対向する他方の磁脚に第2のコイル61を配置するコモンモードチョークコイルを用いている。前記第1のコイル60の一方の端子121と第2のコイル61の一方の端子122を入力端子とし、前記第1のコイル60の他方の端子120と第2のコイル61の他方の端子123を出力端子とする。前記コイル60及び61の巻方向は、前記入力端子に印加されたノーマルモード電流に対し磁束が互いに打ち消しあうように卷回されている。即ち、前記第1のコイル60と第2のコイル61の出力端子にはバイパスコンデンサは接続されていない。即ち、新Mn−Zn系フェライトコア5は、従来のコモンモードチョークコイルのように高周波帯域におけるインダクタの性能の低下が少ないと共に、平角電線をそれぞれエッジワイズに巻回した第1のコイル60と第2のコイル61は浮遊容量が少なく、バイパスコンデンサ71を付加して高周波ノイズ電流をアース側に流してノイズをカットする必要がない。
又、巻線効率の良い平角電線を使用し、且つ、ロの字型磁心の両磁脚にコイルを形成することによって巻線効率が更に改善されるため、図4に示す従来のコイルに比べ高周波帯域でのインダクタンスを損ねることなく、低周波でのインダクタンスが大きく取れ、図8に示すようにフィルタ特性を向上させるため必要な複数個のコモンモードチョークコイル70、80は図3のように1個のコモンコイルで賄うことができる。
【0035】
【発明の効果】
本発明のコモンモードチョークコイルによれば、初透磁率が100kHzにおいて3,000以上、10MHzにおいて100以上であるロの字型の閉磁路を形成するMn−Znフェライトコアと、第1の平角電線と第2の平角電線をそれぞれエッジワイズに巻回した第1のコイルと第2のコイルを使用することにより、巻線の浮遊容量の影響を受けずに、コアの特性を充分に生かすことができ、高周波特性の良好なコモンモードチョークコイルを得ることができる。その結果、ノイズ規制値に対す余裕度が増し、製品の歩留まりを向上できる。
【0036】
又、本発明のラインフィルタによれば、バイパスコンデンサを設けなくとも高周波ノイズはコモンモードチョークコイルでカットされ、高周波帯域での使用が可能となり、ラインフィルタの小型化と低価格化が実現できる。或は、更に高性能化のため、バイパスコンデンサを設けても、その容量を小さくでき、ラインフィルタを小型化できる。
【0037】
更に、従来はフィルタ特性を向上させる為にはコモンコイルを複数個使用していたが、本発明によれば高周波特性を損ねることなく1個のコモンコイルで賄うことができるため、従来に比べ部品点数の少ないラインフィルタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるコモンモードチョークコイルの実施形態の外観斜視図である。
【図2】本発明におけるコモンモードチョークコイルのインピーダンスの周波数特性図である。
【図3】本発明におけるコモンモードチョークコイルを用いたラインフィルタの実施形態のである。
【図4】従来の丸型電線を用いたコモンモードチョークコイルの実施形態の外観斜視図である。
【図5】従来のエッジワイズコイルを用いたコモンモードチョークコイルの実施形態の外観斜視図である。
【図6】従来のエッジワイズコイルを用いたコモンモードチョークコイルの他の実施形態の外観斜視図である。
【図7】従来のコモンモードチョークコイルを用いたラインフィルタの実施形態の図である。
【図8】従来のコモンモードチョークコイルを用いたラインフィルタにおける他の実施形態の図である。
【図9】コモンモードチョークコイルにおける一方のコイルの等価回路である。
【図10】フェライトコアの透磁率の周波数特性を示す図である。
【図11】フェライトコアの違いによるインピーダンスの周波数特性を示す図である。
【符号の説明】
1 コモンモードチョークコイル
2 ホルダー
3 コア固定用バネ
5 コア
6 コイル
9 ボビン
10 ベース部
12 端子

Claims (4)

  1. 室温における初透磁率が100kHzにおいて3,000以上、10MHzにおいて100以上であるロの字型の閉磁路を形成するMn−Znフェライトコアと、第1の平角電線と第2の平角電線をそれぞれエッジワイズに巻回した第1のコイルと第2のコイルとから構成され、上記ロの字型の閉磁路を形成するMn−Znフェライトコアの一方の磁脚に上記第1のコイルを、対向する他方の磁脚に第2のコイルを配置したことを特徴とするコモンモードチョークコイル。
  2. 前記Mn−Znフェライトコアは、主成分が、Fe 44.0〜49.8 mol%、 ZnO 15.0〜26.5 mol%、CoO 0.1〜3.0 mol%、Mn 0.02〜1.00 mol%、残部MnOからなり、副成分は、V 0.010〜0.200 mass%、 Bi 0.005〜0.100 mass%、In 0.005〜0.100 mass%、PbO  0.005 〜0.100 mass%、MoO0.001〜0.100 mass%およびWO 0.001〜0.100 mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のコモンモードチョークコイル。
  3. 前記Mn−Znフェライトコアは、主成分が、Fe 44.0〜49.8 mol%、 ZnO 15.0 〜26.5 mol%、Mn 0.02〜1.00 mol%、残部MnOからなり、副成分は、V  0.010〜0.200 mass%、Bi  0.005〜0.100 mass%、In  0.005〜0.100 mass%、PbO  0.005 〜0.100 mass%、MoO3 0.001〜0.100 mass%および WO 0.001〜0.100 mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のコモンモードチョークコイル。
  4. 室温における初透磁率が100kHzにおいて3、000以上、10MHzにおいて100以上であるロの字型の閉磁路を形成するMn−Znフェライトコアと、第1の平角電線と第2の平角電線をそれぞれエッジワイズに巻回した第1のコイルと第2のコイルとから構成され、上記ロの字型の閉磁路を形成するMn−Znフェライトコアの一方の磁脚に上記第1のコイルを、対向する他方の磁脚に第2のコイルを配置し、前記第1のコイルの一方の端子と第2のコイルの一方の端子とを入力端子とし、前記第1のコイルの他方の端子と第2のコイルの他方の端子とを出力端子とし、前記入力端子に印加されたノーマルモード電流に対し磁束が互いに打ち消しあうように前記第1のコイルと第2のコイルが接続された入力端子と出力端子とを備えたことを特徴とするラインフィルタ。
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