JP3966171B2 - 積層フィルム、および、積層フィルムの製造方法 - Google Patents

積層フィルム、および、積層フィルムの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層フィルムに関し、更に詳しくは、湿度変化によらず高いレベルの帯電防止性が発現し、かつ、透明性、耐水性、耐削れ性に優れた積層フィルムに関する。特に磁気記録材料用、電気絶縁材料用、絶縁テープ用、電気材料用、プロテクトフィルム用などの光学用、グラフィック用、カード用、転写箔用、リボン用、蒸着用、包装用、コンデンサー用、カバーテープ用などの各種テープ類など各種の用途に使用できる積層フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルムなどの熱可塑性樹脂フィルムは、軽くて、薄く、機械的性質がよいことなどから、工業材料用途、磁気材料用途、包装用途など各種用途の基材フィルムとして広く使用されている。また、今後のより軽く、より薄く、より小さくする動きの中で、更に各分野において、需要の伸びが期待されている。
【0003】
中でも、二軸配向したポリエステルフィルムは、寸法安定性、機械的性質、耐熱性、電気的性質などに優れた性質を有することから、VHSテープ、オーディオテープ、コンピューターデータのバックアップテープなどに代表される磁気テープ、プリペイドカード、ICカード、光記録カードなどのカード類などの磁気記録材料、包装材料、電気絶縁材料、各種写真材料、グラフィックアーツ材料、ラベル材料などの多くの用途の基材フィルムとして広く使用されている。
【0004】
ところが、ポリエステルは絶縁性樹脂であることから、一般に、二軸配向ポリエステルフィルムは、そのままでは帯電防止性が全くないといった欠点を有している。この結果、二軸配向ポリエステルフィルムは、そのままでは、ほこりが付着しやすく、帯電のため二軸配向ポリエステルフィルムからなる製品同士の密着によるハンドリング性が悪く、静電気放電による感電や爆発、あるいは、静電気放電による精密な電子回路材料素子などの破壊といった静電気障害が発生する。
【0005】
このため、従来から、ポリエステルフィルムに種々の方法で帯電防止性を与えるための検討がなされてきた。
【0006】
従来の帯電防止方法としては、ポリエステル樹脂に帯電防止剤を添加し塗布する方法(例えば特許文献1参照)、および、スチレンスルホン酸共重合体を塗布する方法(例えば特許文献2参照)は、イオン導電タイプの帯電防止剤を使った帯電防止方法である。これらの方法は、イオンによる空気中の水分の吸着に依存する導電メカニズムを利用しているので、湿度依存性がある。特に低分子量タイプの帯電防止剤を用いた場合は、湿度依存性が大きいので、冬場など湿度の低い環境下では全く帯電防止性が得られないなど、製品の品質上大きな問題となる。
【0007】
また、塗布などにより、ポリエステルフィルムの表面にポリアニリン系導電剤の層を設ける方法(例えば、特許文献3参照)は、電子伝導タイプの帯電防止剤であるポリアニリン系導電剤を使ったものであり、その導電メカニズムが共役電子によるため、湿度依存性はないが、ポリアニリン系帯電防止剤はドーピングされた状態が緑色であるので、製品外観上好ましくない、用途が限定されるなどの問題がある。
【0008】
また、塗布などにより、ポリエステルフィルムの表面にアンチモンドーピングした酸化スズ系導電剤の層を設ける方法(例えば、特許文献4参照)は、電子伝導タイプの帯電防止剤を使った帯電防止方法であり、その導電メカニズムが共役電子によるため、湿度依存性はないが、導電性を発現するためには、酸化スズ系帯電防止剤は、アンチモンなどの有害な重金属によるドーピング剤が必要である。更に、酸化スズ系帯電防止剤に代表される粒子系帯電防止剤は、フィルム製膜工程中で塗布、延伸、熱処理するインラインコート法に適用した場合、延伸追従性が無いため、延伸により塗膜に亀裂が生じ、塗膜が白化、あるいは、塗膜が脆くなり、耐削れ性が無いなどの問題がある。
【0009】
また、他の電子伝導タイプの化合物を用いた帯電防止方法として、ポリチオフェン系導電剤による帯電防止性付与が提案されている。例えば、ポリチオフェン系導電剤とラテックス重合体を含む塗液を塗布した帯電防止方法(例えば、特許文献5参照)は、帯電防止性が十分とはいえない。また、高いレベルの帯電防止性を発現するためには、ポリチオフェン系導電剤を多量に添加する必要があり、インラインコート法に適用した場合は、他の電子伝導タイプと同様、塗膜の透明性が著しく劣り、しかも、塗膜の白化などの問題があるので、全く実用に値しないものであった。
【0010】
次に、プロテクトフィルムについて説明する。
近年のディスプレイ革命と相まって、いわゆるブラウン管型テレビから液晶ディスプレイへの切替が盛んに行われている。特に、液晶ディスプレイは、主要構成部材である偏光板などの光学用シートの加工、実装する工程があり、表面を保護する目的で、プロテクトフィルムとして用いられる。プロテクトフィルムは、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム、あるいはポリエステルフィルムなどの透明な保護用のフィルムに、偏光板などの光学用シートと貼り付けるために粘着剤などを塗布し、あるいは、積層して用いられる。
【0011】
液晶ディスプレイなどの組み込みが完了した後に、プロテクトフィルムを剥離、除去する。プロテクトフィルムを剥離する時に、いわゆる剥離帯電現象が発生し、静電気によってゴミが付着する問題があった。静電気によってゴミが付着すると、例えば、製品を検査する時、液晶部材自体の欠点か、表面に付着したゴミによる欠点なのかの判別が難しく、また、検査がスムーズ行えないので、製造工程上の重大な問題であった。また、特に、近年の高精細ディスプレイなどでは、静電気によるゴミの付着による問題の他、剥離帯電によるディスプレイの電子素子の破壊という問題が発生している。
【0012】
一方、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムに帯電防止剤を練り込んだりしたプロテクトフィルムは、透明性が低い。液晶ディスプレイなどが組み込まれた後の製品の欠点検査の時、プロテクトフィルムの透明性が劣るため、検査精度が落ち、検査が遅くなるなどの問題があった。
【0013】
また、透明性に優れるポリエステルフィルムを用いたプロテクトフィルムでも、未処理のフィルムは、帯電防止性がないため、ゴミの付着などの帯電によるトラブルが多発する。これを解決するため、帯電防止剤を練り込んだポリエステルフィルムや、帯電防止剤を塗布したポリエステルフィルムが検討されているが、満足するものは得られていない。
【0014】
さらに、カバーテープおよびキャリア包装体について説明する。
近年、IC(集積回路)、トランジスター、ダイオード、コンデンサーなどの表面実装用チップ状電子部品は、その電子部品の形状に合わせて収納できるエンボス成型されたポケットなどを連続的に形成したキャリアテープと、該キャリアテープに熱シールあるいは粘着剤などでシールされるカバーテープとからなるキャリア包装体によってパッケージし、更にリール状に巻き取って供給される。
【0015】
表面実装用チップ状電子部品を実際に使用する場合、リールの状態で表面実装用チップ状該電子部品を用いる製造工程に運搬され、製造ラインで連続的に、キャリアテープにカバーテープでシールしたキャリア包装体から、カバーテープを剥離しながら電子部品を取り出して、製品を製造する。
【0016】
カバーテープを剥離する時に、カバーテープの剥離帯電により、電子部品が不用意に飛び出し、電子部品が散逸する、あるいは、帯電したテープと電子部品との間で放電が起こり、電子部品が電気的に破壊する問題が発生する。
【0017】
また、剥離帯電以外にも、電子部品をキャリアテープに収納し、シールする工程において、搬送ロールや熱シール用の加熱バーなどとの摩擦により摩擦帯電する現象が知られている。摩擦帯電現象が発生すると、表面実装用チップ状電子部品は小型の電子部品であるため、5mm程度の非常に幅の狭い、数千m程度のリール状に巻く場合などに、まよいが生じ、うまくリール状に巻けない、あるいは、前述の剥離帯電と同様に、収納された状態で電子部品が電気的に破壊されるなどの問題が生じる。
【0018】
一般的に、該キャリア包装体にパッケージされた際、カバーテープ側から電子部品の検査、例えば、異なる品種が混入していないか、ICチップのリード端子の曲がりや充填方向の間違いがないかなどの検査が行われる。これらの検査を容易に行うため、カバーテープの透明性に対する要求は強く、例えば、透明性の高い透明ポリエステルフィルムや透明ポリオレフィンフィルムなどが、直接使用されていた。
【0019】
このような状況において、帯電問題を解決するため、キャリアテープ側に帯電防止性を付与する検討がなされている。
【0020】
キャリアテープは、ポリスチレンなどの各種の樹脂が用いられることが多いが、キャリアテープ自身の帯電を抑制するため、帯電防止剤として、例えば、カーボンなどが練り込んで使用されたり、また、安価なタイプでは紙などが用いられているが、現在のところ、満足する性能を持つキャリアテープは得られていない。
【0021】
次に、転写箔について説明する。
家庭用電化製品、自動車用製品、住宅建材製品、グラフィック製品、セキュリティー製品、安全表示関係製品などに使用されるプラスチック製品や金属部品などは、その意匠性の多様化が進み、従来とは比べものにならないほど表面に精密な図柄が施されたものが用いられるようになってきている。これらのプラスチック製品や金属部品などに図柄印刷を施す方法としては、インモールド転写法、真空プレス転写法、ホットスタンピングホイル法などが用いられる。例えば、インモールド転写法は、転写箔を成形する金型に予め位置決めしておき、その後射出成形機により金型内に樹脂を圧入して、成形と同時に転写箔の図柄を絵付けする方法である。真空プレス転写法は、転写箔を成形品に対向させ、転写箔と成形品間の空気を減圧することにより転写箔を成形品表面に接触させ、加圧加熱することで転写箔の図柄を絵付けする方法である。
【0022】
従来、これらの転写箔に用いられる基材フィルムとしては、熱可塑性樹脂フィルムが好適に用いられるが、特に耐熱性や成形性の点でポリエステルフィルムが好適に用いられ、該転写箔の基本的な構成は、基材となるポリエステルフィルムの片面に離型層、図柄層、接着剤層がこの順に設けられたものである。なお、図柄層は全面に設けられることもあるが、多くは表面の一部に設けられる。例えば、ポリエステルフィルムの少なくとも片面にポリエステル系樹脂を塗布した転写箔用フィルムが開示されているが(例えば特許文献6など)、基材ポリエステルフィルムと離型層との接着性を改善する目的のものである。
【0023】
また、一方で、製造工程の高速化に伴い巻出し時の剥離帯電により放電現象や火花が発生したり、図柄の高精細化に伴いゴミの付着が極端に嫌われるようになってきているため、転写箔に帯電防止性が要求されているが、満足するものは得られていない。
【0024】
【特許文献1】
特開昭60−141525号公報
【0025】
【特許文献2】
特開昭61−204240号公報
【0026】
【特許文献3】
特開平7−101016号公報
【0027】
【特許文献4】
特開平11−278582号公報
【0028】
【特許文献5】
特開平6−295016号公報
【0029】
【特許文献6】
特開平7−156358号公報
【0030】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点に着目し、湿度変化によらず高いレベルの帯電防止性を発現し、かつ、透明性、耐水性、耐削れ性に優れる積層フィルム、プロテクトフィルム用積層フィルム、カバーテープ用積層フィルム、および転写箔用積層フィルム、およびそれを用いたプロテクトフィルム、カバーテープ、およびキャリア包装体を提供することにある。
【0031】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の積層フィルムは、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に、組成物(A)とエポキシ系架橋剤(B)(以下、単に架橋剤と言うこともある)を50重量%以上含有する積層膜が設けられ、組成物(A)が、ポリチオフェンとポリ陰イオンからなる組成物またはポリチオフェン誘導体とポリ陰イオンからなる組成物であり、かつ、該積層膜中にエポキシ系架橋剤(B)が25〜85重量%含まれ、かつ、該積層膜は組成物(A)中に架橋剤(B)が存在する海島構造を有する積層フィルムである。
【0032】
また、本発明は、プロテクトフィルム用積層フィルム、カバーテープ用積層フィルム、および転写箔用積層フィルム、ならびに上記積層フィルムを用いたプロテクトフィルム、カバーテープ、およびキャリア包装体である。
【0033】
また、本発明は、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に、組成物(A)および架橋剤(B)を含む塗液を塗布し、乾燥、延伸した後、熱処理する積層フィルムの製造方法であって、組成物(A)が、ポリチオフェンとポリ陰イオンからなる組成物、または、ポリチオフェン誘導体とポリ陰イオンからなる組成物であり、塗液中に架橋剤(B)を10〜85重量%含有する積層フィルムの製造方法である。
【0034】
また、本発明は、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に、組成物(A)および架橋剤(B)を含む塗液を塗布し、乾燥、延伸した後、熱処理する積層フィルムの製造方法であって、組成物(A)が、ポリチオフェンとポリ陰イオンからなる組成物、または、ポリチオフェン誘導体とポリ陰イオンからなる組成物であり、塗液中に架橋剤(B)を25〜85重量%含有するプロテクトフィルム用積層フィルムの製造方法である。
【0035】
さらに、本発明は、熱可塑性樹脂フィルムの一方の面に、組成物(A)および架橋剤(B)を含む塗液を塗布し、かつ、反対面にポリエステル樹脂からなる塗液を塗布した後に、乾燥、延伸、および熱処理する積層フィルムの製造方法であって、組成物(A)が、ポリチオフェンとポリ陰イオンからなる組成物、または、ポリチオフェン誘導体とポリ陰イオンからなる組成物であり、塗液中に架橋剤(B)を10〜85重量%含有する転写箔用積層フィルムの製造方法である。
【0036】
【発明の実施の形態】
本発明の積層フィルムは、組成物(A)と架橋剤(B)を50重量%以上含有する積層膜が設けられ、組成物(A)が、ポリチオフェンとポリ陰イオンからなる組成物、または、ポリチオフェン誘導体とポリ陰イオンからなる組成物であり、かつ、該積層膜は組成物(A)中に架橋剤(B)が存在する海島構造を有する。
【0037】
まず、本発明の積層フィルムの海島構造について説明する。
本発明においては、海島構造は、積層膜の断面の透過型電子顕微鏡(Transmission Electoron Microscope)(以後、「TEM」と略称する)観察像で特定する。海島構造とは、2つ以上の成分からなる混合相において、連続相を形成する成分からなる「海」部分と、該連続相中に島状に存在する他の成分からなる「島」部分からなるものである。図1に、本発明の積層フィルムの「海島構造」の代表的な模式図を示す。図中、黒い部分が「島」部分であり、それ以外の連続した白い部分が「海」部分に該当する。特に「島」部分は、図に示すように、色々な大きさの断面積を採りうる。また、「島」部分の形状は、円形、楕円状、異形状など色々な形状の断面形状が可能であり、特定されるものではない。2つ以上の島部分が繋がった形状のものも「島」部分である。
【0038】
本発明の積層フィルムの代表的な積層膜の断面のTEM観察像を図2に示すが、本発明の積層フィルムは、こらに限定されない。
【0039】
図2は、倍率が50万倍のTEM観察像である。なお、図中の右下の直線がスケールであり、図の右下に記載された長さ、例えば図2ならば直線の長さが20nmに相当する。
【0040】
本発明の積層フィルムの「島」部分の形態は、円形、ほぼ円形、楕円状、2つ以上の円形状の突起が繋がった形態のものなど、その形態は限定されない。
【0041】
本発明の積層フィルムの積層膜は、組成物(A)と架橋剤(B)を50重量%以上含有する積層膜であり、組成物(A)が、ポリチオフェンとポリ陰イオンからなる組成物、または、ポリチオフェン誘導体とポリ陰イオンからなる組成物である。すなわち、積層膜中の組成物(A)と架橋剤(B)を合計した含有量が、積層膜全体の50重量%以上であることが必要である。積層膜中の組成物(A)と架橋剤(B)を合計した含有量は、好ましくは、70重量%以上、より好ましくは、80重量%以上である。
【0042】
本発明の積層フィルムの積層膜の組成物(A)は、好ましくは、ポリチオフェン、および、ポリチオフェン誘導体を含んでなる。
【0043】
本発明の積層フィルムの積層膜に用いることのできる組成物(A)は、下記の化1
【0044】
【化1】
Figure 0003966171
【0045】
および/または、下記の化2
【0046】
【化2】
Figure 0003966171
【0047】
で示した化合物を、ポリ陰イオンの存在下で重合することによって得ることができる。
【0048】
化1において、R1、R2は、それぞれ独立に、水素元素、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、もしくは芳香族炭化水素基を表し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、シクロへキシレン基、ベンゼン基などである。化2では、nは1〜4の整数である。
【0049】
本発明の積層フィルムでは、化2で表される構造式からなるポリチオフェン、および/または、ポリチオフェン誘導体を用いることが好ましく、例えば、化2で、n=1(メチレン基)、n=2(エチレン基)、n=3(プロピレン基)の化合物が好ましい。中でも特に好ましいのは、n=2のエチレン基の化合物、すなわち、ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェンである。
【0050】
本発明の積層フィルムでは、ポリチオフェンおよび/またはポリチオフェン誘導体として、例えば、チオフェン環の3位と4位の位置が置換された構造を有する化合物が例示され、かつ、上記したとおり該3位と4位の炭素原子に酸素原子が結合した化合物が例示される。該炭素原子に直接、水素原子あるいは炭素原子が結合したものは、塗液の水性化が容易でない場合がある。
【0051】
本発明の積層フィルムの積層膜に用いる組成物(A)のうち、ポリ陰イオンについて説明する。
【0052】
本発明の積層フィルムのポリ陰イオンは、遊離酸状態の酸性ポリマーであり、高分子カルボン酸、あるいは、高分子スルホン酸、ポリビニルスルホン酸などである。高分子カルボン酸としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸が例示され、高分子スルホン酸としては、例えば、ポリスチレンスルホン酸が例示され、特に、ポリスチレンスルホン酸が導電性の点で最も好ましい。なお、本発明において、遊離酸は、一部が中和された塩の形をとってもよい。
【0053】
これらポリ陰イオンを重合時に用いることにより、本来、水に不溶なポリチオフェン系化合物を水分散あるいは水性化しやすく、かつ、酸としての機能がポリチオフェン系化合物のドーピング剤としての機能も果たすものと考られる。
【0054】
なお、本発明においては、高分子カルボン酸や高分子スルホン酸は、共重合可能な他のモノマー、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレンなどと共重合した形で用いることもできる。
【0055】
ポリ陰イオンとして用いられる高分子カルボン酸や高分子スルホン酸の分子量は特に限定されないが、塗剤の安定性や導電性の点で、その重量平均分子量は1000〜1000000が好ましく、より好ましくは5000〜150000である。本発明の特性を阻害しない範囲で、一部、リチウム塩やナトリウム塩などのアルカリ塩やアンモニウム塩などを含んでもよい。中和された塩の場合も、非常に強い酸として機能するポリスチレンスルホン酸とアンモニウム塩は、中和後の平衡反応の進行により、酸性サイドに平衡がずれることが分かっており、これにより、ドーパントとして作用するものと考える。
【0056】
本発明においては、ポリチオフェン、または、ポリチオフェン誘導体に対して、ポリ陰イオンは、固形分重量比で過剰に存在させた方が導電性の点で好ましく、ポリチオフェンおよび/またはポリチオフェン誘導体が1重量部に対し、ポリ陰イオンは、1重量部より多く、5重量部以下が好ましく、より好ましくは1重量部より多く、3重量部以下である。
【0057】
また、上記した組成物(A)は、例えば、特開平6−295016号公報、特開平7−292081号公報、特開平1−313521号公報、特開2000−6324号公報、ヨーロッパ特許EP602713号、米国特許US5391472号などに記載の方法により製造することができるが、これら以外の方法であってもよい。
【0058】
組成物(A)は、例えば、3,4−ジヒドロキシチオフェン−2,5−ジカルボキシエステルのアルカリ金属塩を出発物質として、3,4−エチレンジオキシチオフェンを得たのち、ポリスチレンスルホン酸水溶液にペルオキソ二硫酸カリウムと硫酸鉄と、先に得た3,4−エチレンジオキシチオフェンを導入し、反応させ、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)などのポリチオフェンに、ポリスチレンスルホン酸などのポリ陰イオンが複合体化した組成物を得る。
【0059】
本発明の積層フィルムの積層膜に用い架橋剤(B)は、エポキシ系架橋を用い
【0060】
本発明において架橋剤(B)は、分子量が1000以下の架橋剤であることが好適である。特に、架橋剤(B)を水溶性で分子量を1000以下とすることで、延伸工程での柔軟性や流動性が発現し、積層膜を形成する混合体の乾燥後の延伸追従性を高め、塗膜の亀裂による白化現象を抑制し、透明性が付与される。一方、例えば、分子量が大きくなり過ぎると、塗布、乾燥後の延伸時に塗膜に亀裂が入るなどの現象が発生し、透明性が低下する傾向がある。また、分子量を800以下、より好ましくは、600以下とすることで、組成物(A)と架橋剤(B)が、より相溶しやすくなり、透明性が向上する。
【0061】
本発明において架橋剤(B)は、透明性、帯電防止性などが向上するので、水溶性の架橋剤であることが好ましい。
【0062】
なお、本発明において、水溶性の架橋剤とは、水溶率が80%以上の架橋剤をいい、「水溶率」とは、23℃で、架橋剤の固形分10部を90部の水に溶解した時、架橋剤が溶解している割合をいう。すなわち、水溶率が80%とは、23℃で、10部の架橋剤のうち80重量%が90部の水に溶解し、残りの20重量%の架橋剤が未溶解物として残っている状態を示す。また、水溶率100%とは用いた10部の架橋剤が90部の水に全て溶解している状態を表す。なお、本発明において、架橋剤(B)は、水溶率が90%以上のものが好ましく、より好ましくは水溶率が100%である。水溶率が高いと塗液自体を水性化できるだけでなく、透明性や帯電防止性の点でも優れたものとできる。
【0063】
本発明において、メラミン系架橋剤は、特に限定されないが、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、あるいはこれらの混合物などを用いることができる。また、メラミン系架橋剤としては単量体、2量体以上の多量体からなる縮合物、あるいはこれらの混合物などを用いることができる。エーテル化に使用する低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノールなどを用いることができる。官能基としては、イミノ基、メチロール基、あるいはメトキシメチル基やブトキシメチル基などのアルコキシメチル基を1分子中に有するもので、イミノ基型メチル化メラミン、メチロール基型メラミン、メチロール基型メチル化メラミン、完全アルキル型メチル化メラミンなどである。その中でも、イミノ基型メラミン、メチロール化メラミンが好ましく、より好ましくはメチロール基型メラミンである。最も好ましくは、水溶性を有するメラミン系架橋剤であり、例えば、メチロール基型メラミンが好適に用いることができる。更に、メラミン系架橋剤の熱硬化を促進するため、例えば、p−トルエンスルホン酸などの酸性触媒を用いてもよい。また、塗布する塗液自体が酸性を有するものであれば更に好ましい。本発明においては、架橋剤(B)は、ポリ陰イオン、好適にはポリスチレンスルホン酸が用いられるため、上記した架橋反応が促進される。
【0064】
本発明では、架橋剤(B)は、特にエポキシ系架橋剤である。エポキシ系架橋剤は、透明性、帯電防止性などの点で極めて優れ、塗膜の塗布外観にも優れたものとすることができる。エポキシ系架橋剤の中でも、水溶性エポキシ架橋剤が更に好適である。
【0065】
また、エポキシ系架橋剤は、例えば、グリセリンなどの高沸点溶媒などの添加に比べ、ブロッキングをおこさず、熱処理工程を行うテンター内部の汚染や、大気汚染がないので、好適である。
【0066】
本発明の積層フィルムにおいて、エポキシ系架橋剤の種類は特に限定されないが、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル系、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル系、ジグリセロールポリグリシジルエーテル系、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル系などを用いることができる。例えば、ナガセケムテック株式会社製エポキシ化合物“デナコール”(EX−611、EX−614、EX−614B、EX−512、EX−521、EX−421、EX−313、EX−810、EX−830、EX−850など)、坂本薬品工業株式会社製のジエポキシ・ポリエポキシ系化合物(SR−EG、SR−8EG、SR−GLGなど)、大日本インキ工業株式会社製エポキシ架橋剤“EPICLON”EM−85−75W、あるいはCR−5Lなどを好適に用いることができ、中でも、水溶性を有するものが好ましい。
【0067】
エポキシ系架橋剤は、エポキシ当量(weight per epoxy equivalent)が100〜300WPEであるものが反応性の点で好ましく、エポキシ当量は、より好ましくは110〜200WPEである。
【0068】
本発明の積層フィルムの製造に用いられる塗液は、好ましくは、実質的に水を主たる媒体とする水性の塗液である。本発明の積層フィルムの製造に用いられる塗液は、塗布性の向上する、透明性の向上などの目的で、本発明の効果を阻害しない程度に適量の有機溶媒を含有してもよく、例えば、イソプロピルアルコール、ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、N−メチル−2−ピロリドン、エタノール、メタノールなどを好適に用いることができる。中でも、イソプロピルアルコールを用いることが塗布性を向上させる点で特に好ましく、その含有量は、塗液中に20重量%以下が好ましく、より好ましくは10重量%以下である。なお、塗液中に多量の有機溶媒を含有させると、いわゆるインラインコーティング法に適用した場合、予熱、乾燥、延伸および熱処理工程などを行うテンターにおいて、爆発の危険があり好ましくない。
【0069】
本発明の積層フィルムの架橋剤(B)は、積層膜の状態においては、積層膜を構成する成分に含まれる官能基と結合した状態であってもよいし、未反応の状態であってもよいし、部分的に架橋構造を形成したものであってもよい。架橋剤(B)は、積層膜の状態では、塗膜の強度や耐ブロッキング性やべたつき感、更には耐水性などの点で、架橋している状態が好ましい。なお、架橋は、他の成分に含まれる官能基と結合した状態でもよく、架橋剤自体の自己架橋構造であってもよい。
【0070】
また、本発明においては、複数の架橋剤の併用が好ましく、例えば、エポキシ系架橋剤とメラミン系架橋剤、あるいは異なる種類のエポキシ系架橋剤の併用は、両者の特性が発現するので好ましい。
【0071】
本発明の積層フィルムの積層膜は、組成物(A)と架橋剤(B)を50重量%以上含有する積層膜であり、組成物(A)が、ポリチオフェンとポリ陰イオンからなる組成物、または、ポリチオフェン誘導体とポリ陰イオンからなる組成物であって、かつ、該積層膜は組成物(A)中に架橋剤(B)が存在する海島構造を有するものであれば、組成物(A)と架橋剤(B)の混合比などは特に限定されないが、本発明の効果を顕著に発現させるためには、積層膜中に、架橋剤(B)が10〜85重量%含有されることが好ましい。例えば、架橋剤(B)が10重量%未満では帯電防止性が発現しにくい場合がある。架橋剤(B)が極端に少ない場合、未処理のポリエステルフィルムなどと同様の絶縁体レベルであり、かつ、塗膜の白化が大きく、透明性も悪い。一方、架橋剤(B)が85重量%を越えると透明性は良化するものの、帯電防止性が発現しにくくなる。なお、本発明者らの検討によれば、架橋剤(B)が、25〜85重量%含有されてなることが透明性の点でより好ましく、さらにより好ましくは25〜75重量%であり、最も好ましくは50〜75重量%である。積層膜中の架橋剤(B)の含有量を、25〜75重量%とすることで、透明性と帯電防止性が極めて高いレベルで両立させることが可能となる。
【0072】
本発明の積層フィルムの積層膜は、組成物(A)、架橋剤(B)以外に、ポリエステル樹脂が含まれてなることが好ましい。熱可塑性樹脂フィルムとしてポリエステルフィルムを用いた場合などは、ポリエステル樹脂が含まれると、基材フィルムと積層膜の接着性が向上し、好適である。また、本発明においては、他の樹脂、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂なども用いることができる。
【0073】
本発明の積層フィルムにかかる積層膜の構成成分として好適に用いることができるポリエステル樹脂は、主鎖あるいは側鎖にエステル結合を有するもので、ジカルボン酸とジオールを重縮合して得られるものである。
【0074】
該ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分としては、芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸や3価以上の多価カルボン酸を使用することができる。
【0075】
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビスフェノキシエタン−p,p’−ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを用いることができる。積層膜の強度や耐熱性の点から、これらの芳香族ジカルボン酸が、好ましくは全ジカルボン酸成分の30モル%以上、より好ましくは35モル%以上、最も好ましくは40モル%以上を占めるポリエステルを用いることが好ましい。
【0076】
また、脂肪族および脂環族のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸など、およびそれらのエステル形成性誘導体を用いることができる。
【0077】
ポリエステル樹脂のグリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、4,4’−チオジフェノール、ビスフェノールA、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、o−,m−,およびp−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、4,4’−イソプロピリデンビンジオール、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオールなどを用いることができる。
【0078】
また、ポリエステル樹脂を水性塗液として用いる場合には、ポリエステル樹脂の水溶性化あるいは水分散化を容易にするため、スルホン酸塩基を含む化合物や、カルボン酸塩基を含む化合物を共重合することが好ましい。
【0079】
カルボン酸塩基を含む化合物としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、4−メチルシクロヘキセン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、エチレンテトラカルボン酸など、あるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0080】
スルホン酸塩基を含む化合物としては、例えば、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、スルホ−p−キシリレングリコール、2−スルホ−1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどあるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を用いることができるが、これに限定されない。
【0081】
また、本発明においては、ポリエステル樹脂として、変性ポリエステル共重合体、例えば、アクリル、ウレタン、エポキシなどで変性したブロック共重合体、グラフト共重合体なども使用可能である。
【0082】
好ましいポリエステル樹脂としては、酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、グリコール成分としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールから選ばれる共重合体などが挙げられる。耐水性が必要とされる場合は、5−ナトリウムスルホイソフタル酸の代わりに、トリメリット酸をその共重合成分とした共重合体なども好適に用いることができる。
【0083】
本発明の積層フィルムにおいて、積層膜に用いられるポリエステル樹脂は、以下の製造法によって製造することができる。
【0084】
例えば、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、グリコール成分として、エチレングリコール、ネオペンチルグリコールからなるポリエステル樹脂について説明すると、テレフタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸とエチレングリコール、ネオペンチルグリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸及びエチレングリコール、ネオペンチルグリコールとをエステル交換反応させる第一段階と、この第一段階の反応生成物を重縮合反応させる第二段階とによって製造する方法などにより製造することができる。
【0085】
この際、反応触媒として、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガン、コバルト、亜鉛、アンチモン、ゲルマニウム、チタン化合物などを用いることができる。
【0086】
また、カルボン酸を末端および/または側鎖に多く有するポリエステル樹脂は、特開昭54−46294号公報、特開昭60−209073号公報、特開昭62−240318号公報、特開昭53−26828号公報、特開昭53−26829号公報、特開昭53−98336号公報、特開昭56−116718号公報、特開昭61−124684号公報、特開昭62−240318号公報などに記載の3価以上の多価カルボン酸を共重合した樹脂により製造することができるが、これら以外の方法であってもよい。
【0087】
また、本発明の積層フィルムの積層膜に用いられるポリエステル樹脂の固有粘度は、特に限定されないが、接着性の点で0.3dl/g以上であることが好ましく、より好ましくは0.35dl/g以上、最も好ましくは0.4dl/g以上であることである。
【0088】
ポリエステル樹脂のガラス転移点(以後、「Tg」と略称する)は、0〜130℃であることが好ましく、より好ましくは10〜85℃である。Tgが0℃未満では、例えば、積層膜同士が固着するブロッキング現象が発生する場合があり、130℃を超える場合は、樹脂の安定性や水分散性が劣る場合があるので好ましくない。
【0089】
また、上記したポリエステル樹脂や他の樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、また、異なる2種類の樹脂、例えば、ポリエステル樹脂とウレタン樹脂、ポリエステル樹脂とアクリル樹脂、あるいはウレタン樹脂とアクリル樹脂を組み合わせて用いてもよく、もちろん3種類以上を組み合わせて用いてもよい。樹脂を混合して用いる場合は、それぞれの樹脂の特性が発現することが多く好ましい。
【0090】
また、本発明の積層フィルムの積層膜は、例えば、本発明の積層フィルム上に印刷インキなどを設ける場合など、本発明の効果が損なわれない範囲内で、上記した樹脂以外の他の樹脂を添加することができる。
【0091】
また、本発明の効果が損なわれない範囲内で、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などを配合してもよい。
【0092】
熱可塑性樹脂フィルム上に積層膜を設ける方法は種々存在するが、本発明の積層フィルムを製造する場合、フィルム製膜工程中で塗液を塗布し、乾燥、延伸した後、熱処理する、いわゆるインラインコーティング法を好適に用いることができる。
【0093】
該インラインコーティング法を用いることで、オフライン加工に比べ、例えば、積層膜を薄くできる、基材フィルムとの接着性が向上するなどのメリットがある。特に、本発明においては、架橋剤(B)を必須成分として用いるため、架橋剤(B)が反応するための熱処理が必要であり、例えば、高温熱処理ができるインラインコーティング法は非常に有利である。すなわち、高温熱処理ができるインラインコーティング法では、熱処理時にクリップでフィルムの両端を把持しているため、積層フィルムにシワが入らず、平面性が保持できるメリットがある。一方、オフライン加工では、熱収縮によりフィルムにシワが入り、加工後のフィルムの平面性が極端に悪くなる場合がある。インラインコーティング法での熱処理は、200℃以上で行うことが好ましい。
【0094】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、熱によって溶融もしくは軟化するフィルムの総称であって、特に限定されるものではない。本発明の熱可塑性樹脂フィルムの代表的なものとして、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルムやポリエチレンフィルムなどのポリオレフィンフィルム、ポリ乳酸フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルムやポリスチレンフィルムなどのアクリル系フィルム、ナイロンなどのポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリウレタンフィルム、フッ素系フィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルムなどを用いることができる。
【0095】
熱可塑性樹脂フィルムは、ホモポリマーでも共重合ポリマーであってもよい。これらのうち、機械的特性、寸法安定性、透明性などの点で、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアミドフィルムなどが好ましく、更に、機械的強度、汎用性などの点で、ポリエステルフィルムが特に好ましい。
【0096】
以下、本発明の積層フィルムをポリエステルフィルムを代表例として説明するが、これに限定されない。
【0097】
本発明の積層フィルムのポリエステルフィルムにおいて、ポリエステルとは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称である。好ましいポリエステルとして、エチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート、ブチレンテレフタレート、プロピレン−2,6−ナフタレート、エチレン−α,β−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどから選ばれた少なくとも1種の構成成分を主要構成成分とするものを用いることができる。これら構成成分は、1種のみ用いても、2種以上併用してもよいが、中でも品質、経済性などを総合的に判断すると、エチレンテレフタレートを主要構成成分とするポリエステル、すなわち、ポリエチレンテレフタレートを用いることが特に好ましい。また、基材に熱や収縮応力などが作用する用途に用いられる場合においては、耐熱性や剛性に優れたポリエチレン−2,6−ナフタレートが更に好ましい。
【0098】
また、これらポリエステルには、更に他のジカルボン酸成分やジオール成分が一部、好ましくは20モル%以下共重合されていてもよい。
【0099】
更に、このポリエステル中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などが、その特性を悪化させない程度に添加されていてもよい。
【0100】
また、ポリエステルフィルム中に、無機の粒子、例えば、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ゼオライト、酸化チタン、金属微粉末などを添加した場合には、易滑性が向上するので好ましい。無機粒子の平均粒子径は、0.005〜3μmが好ましく、より好ましくは0.05〜1μmである。また、無機粒子の添加量は、0.001〜5重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜2重量%である。
【0101】
また、本発明の積層フィルムは、内層と表層の2層以上の複合体フィルムであってもよい。本発明の積層フィルムは、例えば、内層部に実質的に粒子を含有せず、表層部に粒子を含有させた層を設けた複合体フィルム、あるいは、内層部に粗大粒子を有し、表層部に微細粒子を含有させた複合体フィルムなどでもよい。また、上記した複合体フィルムは、内層部と表層部が異種のポリマーであっても同種のポリマーであってもよい。
【0102】
上述したポリエステルの極限粘度(25℃のo−クロロフェノール中で測定)は、0.4〜1.2dl/gが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8dl/gの範囲にあるものが本発明を実施する上で好適である。
【0103】
上記ポリエステルを使用したポリエステルフィルムは、積層膜が設けられた状態においては二軸配向されたものが好ましい。二軸配向ポリエステルフィルムとは、一般に、未延伸状態のポリエステルシートまたはフィルムを長手方向および幅方向に各々2.5〜5倍程度延伸され、その後、熱処理が施されて、結晶配向が完了されたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。
【0104】
積層膜の厚みは、通常は、0.005〜5μmが好ましく、より好ましくは0.01〜1μm、最も好ましくは0.03μm〜0.5μmである。積層膜の厚みが薄すぎると帯電防止性不良となる場合がある。
【0105】
ポリエステルフィルムの厚みは、特に限定されるものではなく、本発明の積層フィルムが使用される用途に応じて適宜選択されるが、機械的強度、ハンドリング性などの点から、通常は好ましくは1〜500μm、より好ましくは5〜300μm、最も好ましくは9〜210μmである。また、得られたフィルムを各種の方法で貼り合わせて用いることもできる。
【0106】
なお、本発明において、積層膜とは、基材となる熱可塑性樹脂フィルムの表面に積層構造的に形成されて存在する膜状の層をいう。該膜自体は、単一層であっても複数層からなるものであってもよい。
【0107】
さらに、本発明の積層フィルムの製造方法は、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に、組成物(A)および架橋剤(B)を含む塗液を塗布し、乾燥、延伸した後、熱処理する積層フィルムの製造方法であって、組成物(A)が、ポリチオフェンとポリ陰イオンからなる組成物、または、ポリチオフェン誘導体とポリ陰イオンからなる組成物であり、塗液中に架橋剤(B)を10〜85重量%含有する積層フィルムの製造方法である。
【0108】
本発明の積層フィルムの製造方法では、塗布方法として、インラインコーティング法が好ましい。
【0109】
インラインコーティング法は、例えば、溶融押し出しされた結晶配向前のポリエステルフィルムを長手方向に2.5〜5倍延伸し、一軸延伸されたフィルムに連続的に塗液を塗布する。塗布されたフィルムは段階的に加熱されたゾーンを通過しつつ乾燥され、幅方向に2.5〜5倍延伸される。更に、連続的に150〜250℃の加熱ゾーンに導かれ結晶配向を完了させる方法などである。なお、長手方向に延伸後、塗布して後、幅方向に延伸する方法が一般的であるが、幅方向に延伸後、塗布して後、長手方向に延伸する方法、塗布して後、長手方向と幅方向に同時に延伸する方法など各種の方法を用いることができる。
【0110】
また、本発明においては、塗液を塗布する前に、基材フィルムの表面(上記例の場合では、一軸延伸フィルム)にコロナ放電処理などを施し、該基材フィルム表面の濡れ張力を、好ましくは47mN/m以上、より好ましくは50mN/m以上とするのが、積層膜の基材フィルムとの接着性や塗布性を向上させることができるので好ましい。更に、イソプロピルアルコール、ブチルセロソルブ、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶媒を塗液中に若干量含有させて、濡れ性や基材フィルムとの接着性を向上させることも好適である。
【0111】
基材フィルム上への塗布の方法は各種の塗布方法、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、マイヤーバーコート法、ダイコート法、スプレーコート法などを用いることができる。
【0112】
また、本発明の積層フィルムの製造方法において、架橋剤(B)は、好ましくは、水溶性架橋剤である。
【0113】
次に、本発明の積層フィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略称する)を基材フィルムとした例について更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
【0114】
本発明の積層フィルムの製造方法をより具体的に例示して説明する。
【0115】
極限粘度0.5〜0.8dl/gのPETペレットを真空乾燥した後、押し出し機に供給し、260〜300℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度10〜60℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて、冷却固化させて未延伸PETフィルムを作成する。この未延伸フィルムを70〜120℃に加熱されたロール間で縦方向(フィルムの進行方向)に2.5〜5倍延伸する。このフィルムの少なくとも片面にコロナ放電処理を施し、該表面の濡れ張力を47mN/m以上とし、その処理面に本発明にかかる水性塗液を塗布する。この塗布されたフィルムをクリップで把持して70〜150℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥した後、幅方向に2.5〜5倍延伸し、引き続き160〜250℃の熱処理ゾーンに導き、1〜30秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させる。この熱処理工程中において、必要に応じて幅方向あるいは長手方向に1〜10%の弛緩処理を施してもよい。二軸延伸は、縦、横逐次延伸あるいは同時二軸延伸のいずれでもよく、また縦、横延伸後、縦、横いずれかの方向に再延伸してもよい。また、ポリエステルフィルムの厚みは特に限定されないが、1〜500μmが好ましい。
【0116】
なお、積層膜が設けられる基材フィルム中に、積層膜形成組成物、あるいは積層膜形成組成物の反応生成物から選ばれる少なくとも1種の物質を含有させることにより、積層膜と基材フィルムとの接着性を向上させ、積層ポリエステルフィルムの易滑性を向上させることができる。積層膜形成組成物、あるいはこれらの反応生成物の添加量は、その添加量の合計が5ppm以上20重量%未満であるのが、接着性、易滑性の点で好ましい。環境保護、生産性を考慮すると、該積層膜形成組成物を含む再生ペレットを用いる方法が好適である。
【0117】
本発明の積層フィルムは、プロテクトフィルム用積層フィルムとして、特に好適に用いることができる。また、本発明の積層フィルムの少なくとも一方の面に、粘着層を設けてプロテクトフィルムとすることができる。
【0118】
さらに、本発明の積層フィルムは、カバーテープ用積層フィルムとして、特に好適に用いることができる。また、本発明の積層フィルムの少なくとも一方の面に、厚みが0.5〜20μmのポリオレフィン系樹脂からなる層および/または粘着層を設けて優れた特性を有するカバーテープとすることができる。
【0119】
さらに、本発明の積層フィルムは、キャリア包装体用積層フィルムとして、特に好適に用いることができる。また、本発明の積層フィルムの少なくとも一方の面に、キャリアテープが積層してキャリア包装体とすることができる。
【0120】
また、本発明の積層フィルムは、転写箔用積層フィルムとして、特に好適に用いることができる。更に、該積層膜中に、ワックス系化合物、長鎖アルキルアクリレート、フッ素アクリレート、シリコーン化合物、ポリオレフィン系化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物が含まれることにより、優れた転写箔用積層フィルムとすることができる。
【0121】
本発明のプロテクトフィルム用積層フィルムは、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に、組成物(A)および架橋剤(B)を含む塗液を塗布し、乾燥、延伸した後、熱処理する積層フィルムの製造方法であって、組成物(A)が、ポリチオフェンとポリ陰イオンからなる組成物、または、ポリチオフェン誘導体とポリ陰イオンからなる組成物であり、塗液中に架橋剤(B)を25〜85重量%含有するるプロテクトフィルム用積層フィルムである。
【0122】
また、本発明のプロテクトフィルム用積層フィルムにおいて、架橋剤(B)は、好ましくは、水溶性架橋剤である。
【0123】
本発明のプロテクトフィルム用積層フィルムにおいては、ヘイズが2%以下であることが好ましい。特に、液晶ディスプレイ関係の部材に用いられる場合は、2%を越える場合、光線透過率が低下する、輝度が低下する、画像がぼやけるなどの問題も出てくる。ヘイズは、より好ましくは1.5%以下であり、最も好ましくは1%以下である。
【0124】
本発明のプロテクトフィルム用積層フィルムにおいては、熱収縮率が、−0.5%以上、1%以下であることが好ましい。特に、液晶ディスプレイ関係の部材に用いられる場合は、オートクレーブ処理など加熱処理によりディスプレイ画面に貼り付ける場合、あるいは、粘着層を設けるときに加熱処理が行われる場合があり、プロテクトフィルム自体にも熱収縮などができるだけ生じないことが重要である。また、プロテクトフィルムがそのまま貼付された状態で製品化されたり、使用される場合もあるが、このとき、ディスプレイ自体の発熱、使用される環境が過酷で車内で使用されるカーナビ用途での高温条件など、熱収縮率が重要な特性となる。熱収縮率が、−0.5%以上、1%以下であると、検査時のゆがみが生じず、画像にゆがみが生じない。熱収縮率は小さい方が好ましいが、0%〜0.5%であるものがより好ましい。なお、熱収縮率がマイナスとは、評価項目に記載の通り、フィルムが膨張することを表す。
【0125】
また、該プロテクトフィルム用積層フィルムの少なくとも一方の面に、粘着層を設けることで、優れた特性を有するプロテクトフィルムとなる。
【0126】
すなわち、本発明のプロテクトフィルムは、上記のプロテクトフィルム用積層フィルムに、粘着層を設けることによって製造できる。
【0127】
粘着層の種類は、粘着特性を有するものであれば特に限定されないが、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ビニル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、シリコーン系などを用いることができる。ゴム系粘着剤は、例えば、ゴムエラストマー、軟化剤、粘着付与剤を主成分とし、必要に応じて充填剤、老化防止剤を添加したものを用いることができる。アクリル系粘着剤は、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸エステルを主成分とし、凝集力を調整するため、酢酸ビニル、エチレン−アクリル酸などを共重合させて用いることができる。シリコーン粘着剤は、ゴム状シロキサンと樹脂状シロキサンの重合物を混合したものを主成分としたものを用いることができる。
【0128】
粘着層を設ける方法は特に限定されないが、コーティングによる方法が好適に用いられ、ダイコート法、ドクターブレード法、グラビアコート法などを用いることができる。また、粘着層の厚みは特に限定されないが、0.5〜20μmの範囲にあるものが好適に用いられる。
【0129】
また、該粘着層に帯電防止性が付与されていることは好ましく、カーボンブラック、酸化スズ、酸化スズアンチモンドープ、ポリチオフェン、ポリアニリンなどの帯電防止剤を用いることができる。透明性を考慮すると酸化スズ系の帯電防止剤が好適である。
【0130】
また、プロテクトフィルムを製造する場合は、プロテクトフィルムに粘着層が設けられる。この粘着層を構成する粘着剤が端部からはみ出して、プロテクトフィルム表面に付着することがある。さらに、工程中の潤滑オイルなども表面に付着する場合もある。液晶偏光板などにプロテクトフィルムを貼り合わせた状態で、粘着剤や潤滑オイルなどの付着物が液晶偏光板自体の欠点かどうかを見極める検査工程の作業性が落ちたり、欠点を見落とすことがある。これを防ぐため、通常、エタノールなどのアルコール類や、メチルエチルケトンやトルエンなどの汎用有機溶媒を少量用いて、液晶偏光板の表面側を軽く拭き取るなどして洗浄することがよく行われる。この際に、プロテクトフィルムに係る積層膜が耐溶剤性でないと、上記した有機溶媒で積層膜表面が侵され、積層膜が白化し、脱落して、液晶偏光板の検査できなくなるなどの問題が発生する。
【0131】
本発明においては、積層膜の必須成分として架橋剤、中でも、好ましくは、エポキシ系架橋剤を用いているため非常に架橋性が高く、かつポリチオフェンのドーパントであるポリ陰イオン、例えばポリスチレンスルホン酸の存在により、インラインコート後の熱処理温度で架橋反応が極めて速やかに進行するのでし、非常に高度な架橋構造が形成され、積層膜の耐溶剤性が発現する。
【0132】
本発明のカバーテープ用積層フィルムは、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に、組成物(A)および架橋剤(B)を含む塗液を塗布し、乾燥、延伸した後、熱処理する積層フィルムの製造方法であって、組成物(A)が、ポリチオフェンとポリ陰イオンからなる組成物、または、ポリチオフェン誘導体とポリ陰イオンからなる組成物であり、塗液中に架橋剤(B)を10〜85重量%含有するカバーテープ用積層フィルムである。さらに、本発明のカバーテープ用積層フィルムにおいて、架橋剤(B)は、好ましくは、水溶性架橋剤である。
【0133】
本発明のカバーテープ用積層フィルムの少なくとも一方の面に、ポリオレフィン樹脂からなる層および/または粘着層を設けることで、優れた特性を有するカバーテープとすることができる。
【0134】
本発明のカバーテープでは、ポリオレフィン系樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンコポリマー、ポリスチレン、シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエステルなどのヒートシール性を有する樹脂を好適に用いることができるが、中でも汎用性や成型性の点で、ポリエチレンが最も好ましい。
また、本発明のカバーテープに用いられる粘着層は、粘着特性を有するものであれば特に限定されないが、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ビニル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、シリコーン系などを用いることができる。ゴム系粘着剤は、例えば、ゴムエラストマー、軟化剤、粘着付与剤を主成分とし、必要に応じて充填剤、老化防止剤を添加したものを用いることができる。アクリル系粘着剤は、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸エステルを主成分とし、凝集力を調整するため、酢酸ビニル、エチレン−アクリル酸などを共重合させて用いることができる。シリコーン粘着剤は、ゴム状シロキサンと樹脂状シロキサンの重合物を混合したものを主成分としたものを用いることができる。
【0135】
本発明のカバーテープにおいて、ポリオレフィン系樹脂からなる層および/または粘着層を設ける方法は特に限定されないが、例えば、コーティングによる方法、ラミネート法、ヒートシール法、共押出法などを用いることができ、ポリエチレン樹脂からなるシートあるいはフィルムを熱などを用いてラミネート法で積層する方法が最も適している。ポリオレフィン系樹脂からなる層および/または粘着層の厚みは、通常0.5〜20μmであり、好ましくは2〜15μm、より好ましくは5〜12μmである。ポリオレフィン系樹脂からなる層および/または粘着層が薄すぎるとヒートシール効果が得られないだけでなく、積層時の取扱も困難となり、一方、厚すぎる場合は巻き取ったリール状のキャリア包装体が大きくなりすぎるだけでなく、ヒートシール時の熱伝達が不十分となり、ヒートシール力にバラツキが発生し、思わぬトラブルとなる場合がある。
【0136】
本発明のカバーテープにおいて、該ポリオレフィン系樹脂からなる層および/または粘着層表面の水との接触角が80〜110度であることが好ましく、さらに、85〜105度であることがより好ましい。ここで、水との接触角を測定すべき表面である、ポリオレフィン系樹脂からなる層および/または粘着層の表面は、キャリアテープと積層されていた側の表面を意味する。水との接触角は、キャリアテープと熱ラミなどで積層されキャリア包装体を形成していた状態から、カバーテープをキャリアテープから剥離した後において測定する。
【0137】
ポリオレフィン系樹脂からなる層および/または粘着層表面の水との接触角が80〜110度である場合、キャリアテープを構成する樹脂との親和性が十分であり、カバーテープとしてのヒートシール力が不足することはない。方、キャリアテープとのヒートシール性が高すぎて、剥離しづらい、あるいは剥離帯電しやすいなどの弊害が発生しない。
【0138】
該ポリオレフィン系樹脂からなる層および/または粘着層にも帯電防止性が付与されていることが好ましく、カーボンブラック、酸化スズ、酸化スズアンチモンドープ、ポリチオフェン、ポリアニリンなどの帯電防止剤を用いることができるが、透明性を考慮すると酸化スズ系の帯電防止剤が好適である。
【0139】
本発明のカバーテープ用積層フィルムの少なくとも一方の面に、厚みが0.5〜20μmのポリオレフィン系樹脂からなる層および/または粘着層が設けられ、かつ、該ポリオレフィン系樹脂からなる層および/または粘着層にキャリアテープが積層されることにより、キャリア包装体とすることができる。
【0140】
ポリオレフィン系樹脂からなる層および/または粘着層にキャリアテープを積層する方法は、特に限定されないが、例えば、ヒートシール法、ラミネート法など、前述のカバーテープ製造時に用いたものと同様のものを用いることができる。このとき、電子部品などを格納する窪みを該キャリアテープなどに事前に設けておくこともできる。
【0141】
上記した電子部品を格納する窪みは、挿入される電子部品、例えば、ICチップやコンデンサーなどの形状にあった窪みが、成型機などによる成型によって形成され、キャリアテープとすることができる。前述のカバーテープと電子部品が内包された状態のキャリアテープが、ヒートシールなどによって積層されてキャリア包装体とすることも可能である。
【0142】
電子部品などを格納する窪みをキャリアテープなどに事前に設けておくことにより、本発明のカバーテープ用積層フィルムは、カバーテープおよびキャリア包装体に用いた時、キャリアテープから剥離する際の剥離帯電が極めて高いレベルで抑制されるため、例えば、キャリアテープ中のIC回路などの電子部品の飛び出しや、帯電電荷の蓄電による放電が無いなどの優れた特性が発現させることができる。
【0143】
本発明の転写箔用積層フィルムは、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に、組成物(A)および架橋剤(B)を含む塗液を塗布し、乾燥、延伸した後、熱処理する積層フィルムの製造方法であって、組成物(A)が、ポリチオフェンとポリ陰イオンからなる組成物、または、ポリチオフェン誘導体とポリ陰イオンからなる組成物であり、塗液中に架橋剤(B)を10〜85重量%含有する転写箔用積層フィルムである。さらに、本発明の転写箔用積層フィルムにおいて、架橋剤(B)は、好ましくは、水溶性架橋剤である。
【0144】
本発明の転写箔用積層フィルムは、該積層膜中に、ワックス系化合物、長鎖アルキルアクリレート、フッ素アクリレート、シリコーン化合物、ポリオレフィン系化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物が含まれることにより、優れた特性を有する転写箔用積層フィルムとすることができる。
【0145】
本発明の積層フィルムの積層膜は、組成物(A)、架橋剤(B)以外に、離型機能を有する化合物、例えば、ワックス系化合物、長鎖アルキルアクリレート、フッ素アクリレート、シリコーン化合物、ポリオレフィン系化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物が含まれてなることが好ましい。この場合、積層フィルムの非接着性が向上するなど、好適である。
【0146】
ワックス系化合物としては、常温で固体または半固体の有機物からなる組成物であれば特に限定されないが、例えば、天然ワックス、合成ワックス、あるいは配合ワックスなどである。
【0147】
天然ワックスは、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、あるいは石油ワックスなどに分類され、合成ワックスは、ポリエチレンワックスなどの合成炭化水素、変性ワックス、水素化ワックス、脂肪酸、酸アミド、エステル、ケトンなどに分類される。また、配合ワックスは、上記ワックスに合成樹脂類を配合したものである。
【0148】
植物系ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、パームワックス、オウリキュリーワックス、サトウキビワックス、エスパルトワックス、バークワックスなどを用いることができる。動物系ワックスとしては、みつろう、ラノリン、鯨ロウ、イボタロウ、セラックワックス、コッカス・カクタィ・ワックス(coccus cacti wax)、水鳥ワックスなどを用いることができる。鉱物系ワックスとしては、モンタンワックス、オゾケライト、セレシンなどを用いることができる。石油ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタムなどを用いることができる。
【0149】
本発明においては、上記ワックス系化合物であれば特に限定されずに用いることができるが、耐熱性の点で、合成ワックス、鉱物系ワックス、石油系ワックスが好ましく、特に、ポリエチレンワックスなどの合成ワックスが最も好ましい。
【0150】
ワックス系化合物の融点は、90〜200℃が好ましく、より好ましくは100〜150℃である。特に、融点が低すぎる場合、耐ブロッキング性が劣る傾向がある。
【0151】
長鎖アルキルアクリレートとしては、炭素数12〜25個のアルキル基を側鎖に持つアクリル系モノマーと、このアクリル系モノマーと共重合可能なモノマーとの共重合アクリル樹脂であり、該共重合アクリル樹脂中の炭素数12〜25個のアルキル基を側鎖に持つアルキルアクリレートモノマーの共重合比率は、35重量%以上のものである。なお、該共重合量は、35〜85重量%、さらには60〜80重量%であることが耐ブロッキング性や共重合化などの点で好ましい。
【0152】
このようなアルキルアクリレートモノマーとしては、上記の要件を満たすものであれば特に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸テトラデシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ヘキサデシル、アクリル酸ヘプタデシル、アクリル酸オクタデシル、アクリル酸ノナデシル、アクリル酸エイコシル、アクリル酸ヘンエイコシル、アクリル酸ドコシル、アクリル酸トリコシル、アクリル酸テトラコシル、アクリル酸ペンタコシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸エイコシル、メタクリル酸ペンタコシルなどの長鎖アルキル基含有アクリル系モノマーが用いられる。
【0153】
本発明で用いる長鎖アルキルアクリレートは、環境面の配慮から、水系の塗剤を用いることが好ましく、例えば、エマルション化するために、他の共重合可能なモノマーとしては、下記のアクリル系モノマーを用いることができる。モノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−ブトキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリロニトニル、メタクリロニトニル、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、スチレン、イタコン酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、Nーメチロール(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルリン酸エステル、ビニルスルホン酸ソーダ、スチレンスルホン酸ソーダ、無水マレイン酸等を例示できる。
【0154】
このようにして得られた本発明の転写箔用積層フィルムは、極めて高いレベルの帯電防止性が湿度変化によらず発現し、かつ、非接着性、耐水性にも優れるため、ホットスタンピングホイル法や、インモールド転写法や、真空プレス転写法などに用いられる転写箔の基材フィルムとして好適に用いることができる。
【0155】
また、本発明においては、上記したポリチオフェン系の組成物からなる積層膜を熱可塑性樹脂フィルム、好ましくはポリエステルフィルムの一方の面に設け、かつ、反対面にポリエステル樹脂からなる積層膜を設けることが好ましい。この場合、該ポリエステル樹脂からなる積層膜側に、離型層、図柄層、接着剤層が設けられ転写箔として用いられる。本構成を採ることで、接着性の強い接着剤層との離型性を付与する離型層の基材フィルムとの接着性が向上し、例えば、転写時の熱や歪みなどで、基材フィルムと離型層との剥離が抑制され、図柄層や接着剤層の転写性が向上するため好ましい。
【0156】
本発明における特性の測定方法および効果の評価方法は次のとおりである。
(1)積層膜の厚み
(株)日立製作所製の透過型電子顕微鏡HU−12型を用い、積層膜を設けた積層ポリエステルフィルムの断面を観察した写真から求めた。厚みは測定視野内の30個の平均値とした。
【0157】
(2)透明性
透明性は、ヘイズにより測定した。ヘイズの測定は、常態(23℃、相対湿度65%)において、積層フィルムを2時間放置した後、スガ試験機(株)製全自動直読ヘイズコンピューター「HGM−2DP」を用いて行った。3回測定した平均値を該サンプルのヘイズ値とした。
【0158】
(3)帯電防止性
帯電防止性は、表面比抵抗により測定した。表面比抵抗の測定は、常態(23℃、相対湿度65%)において24時間放置後、その雰囲気下でデジタル超高抵抗/微小電流計R8340A(アドバンテスト(株)製)を用い、印加電圧100V、10秒間印加後、測定を行った。単位は、Ω/□である。なお、該表面比抵抗が1×10 12 Ω/□以下のものであれば実用上問題のないレベルであり、1×10 10 Ω/□以下、更には1×10 Ω/□以下のものは優れた帯電防止性を示す
更に、相対湿度25%で、上記と同様の評価も行い、湿度依存性の有無についての確認評価も行った。
【0159】
(4)耐水性
積層フィルムを水道水を用い、流水下で1分間さらした後、40℃で10分間風乾後、(3)項に記載の帯電防止性の評価を行った。耐水性評価をする前の帯電防止性と比較して、該耐水性評価を行った後の帯電防止性の変化が小さいものが優れた耐水性を有するものである。
【0160】
(5)耐削れ性
熱可塑性樹脂フィルム上に設けた積層膜をツメで引っ掻き、キズの程度により目視で以下の通り判定した。なお、(◎)、(○)を耐削れ性良好とした。
(◎): 全く削れない
(○): 積層膜上に引っ掻いた跡がつく程度
(△): 積層膜がツメで引っ掻いた跡に沿ってえぐれている
(×): 粉状に削れる。
【0161】
(6)積層膜の断面観察
積層フィルムのフィルム表面に対し垂直に超薄膜切片を切り出し、オスミック酸(OsO4)で積層フィルムを染色した。このオスミック酸染色した超薄膜切片の積層膜部分を透過型電子顕微鏡((株)日立製作所、H−7100FA型)を用い、加速電圧100kVで観察した。
【0162】
積層膜に用いた各成分が、オスミック酸に可染性を有するものか、オスミック酸に染色されないかを、下記の方法で確認した。
【0163】
・比較サンプル(1):
ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸からなる複合体をPETフィルム上に塗布、乾燥したもの
・比較サンプル(2):
エポキシ架橋剤をPETフィルム上に塗布、乾燥したもの
ここで、比較サンプル(1)について、更に2つのサンプルを準備した
・比較サンプル(1)−1:
オスミック酸で染色せずにTEM断面観察したもの
・比較サンプル(1)−2:
オスミック酸で染色したものをTEM断面観察したもの。
【0164】
比較サンプル(1)−1と(1)−2のTEM断面観察像は、両者の比較において、濃淡の差は認められなかった。すわなち、比較用サンプル(1)で用いた化合物であるポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸からなる複合体は、オスミック酸に染色されないことが確認された。
【0165】
次に、比較サンプル(2)のTEM断面観察像は、比較サンプル(1)との比較において、明らかに濃く染色されていた。すなわち、比較用サンプル(2)で用いた化合物であるエポキシ架橋剤は、オスミック酸に染色されることが確認された。
【0166】
(7)耐溶剤性
積層フィルムの積層膜、あるいはプロテクトフィルムの積層膜について、エタノール(表中で溶剤「1」と表示)、メチルエチルケトン(表中で溶剤「2」と表示)、およびトルエン(表中で溶剤「3」と表示)の3種類の汎用有機溶媒を用いて、耐溶剤性を下記の基準で評価した。
【0167】
上記した有機溶媒をそれぞれ綿棒の先にしみ込ませ、綿棒の角度を45度に保持し、積層膜上を1Nの荷重で、長さ3cmを6cm/秒の速度で10往復させた後の積層膜の状態を目視観察した。評価4および評価5が、耐溶剤性良好である
評価5:全く変化が認められない
評価4:若干の擦りキズが認められるが、積層膜は残存している
評価3:部分的に積層膜が取れている
評価2:細く線状に積層膜が取れている
評価1:擦ったところの積層膜が全て取れている
(8)熱収縮率
JIS C 2318に従い、下記のとおり測定を行った。
【0168】
積層フィルム、特に、プロテクトフィルム用積層フィルムに関して、該積層フィルムを、約200mm×約10mmの大きさに断裁し、23℃、相対湿度65%の雰囲気下で8時間放置した後、サンプルの長手方向に約150mmの間隔で2つの印を付けた。これをリニヤスケール測長機を用いて、その印の間隔を測定し、その値をA0とした。同様にして、サンプルの長手方向は直交する方向に約70mmの間隔で2つの印を付け、その値をB0とした。該サンプルを、150℃の雰囲気下に30分間放置後、再び、23℃、相対湿度65%で8時間放置し、その雰囲気下で、先の2つの印の間隔を測定し、長手方向およびその直交方向それぞれの値を、A、Bとした。このとき、次式により、その平均値として熱収縮率を求めた
熱収縮率(%)=100×((A0−A)/A0+(B0−B)/B0)。
【0169】
(9)耐削れ性−2
本発明の積層フィルム、特に、カバーテープ用積層フィルムは、電子部品を内包する用途に用いられるため、積層膜の削れ粉やカスなどは極めて重大なトラブルの原因となる。そのため、積層膜の耐削れ性が重要な特性となる。
【0170】
加工工程での削れをモデル化し、25mm幅、長さ50cmのサンプルを作製し、積層フィルムの積層膜面を直径6mmの円柱状ステンレスバーに5Nの荷重を加え、20回往復させた後、バーに付着した積層膜の粉などの状態、および塗膜の状態を観察し、耐削れ性評価とした。なお、評価基準は下記の通りであり、評価4以上を良好とした
評価5:バーに粉の付着がなく、積層膜にキズもない
評価4:バーに粉の付着はないが、積層膜にわずかなキズが見られる
評価3:バーに粉の付着があり、積層膜にもキズが入っている
評価2:バーに粉の付着が多量にあり、積層膜もキズが入っている
評価1:バーに粉の付着が多量にあり、積層膜が殆ど脱落している。
【0171】
(10)接触角測定
常態(23℃、相対湿度65%)において、24時間放置後、その雰囲気下で接触角計CA−D型(協和界面科学(株)製)を用い、同様の条件に保管しておいた蒸留水を用いて接触角を測定した。測定は、10個の平均値を用いた。
【0172】
(11)帯電圧
常態(23℃、相対湿度65%)において、24時間放置後、その雰囲気下で、オネストメーター((株)宍戸商会製の「STATIC HONESTMETER」TYPE S−5109)を用い、印加電圧10kV、12秒間、照射高さ2cmで電圧を印加した後、検出高さ2cmでサンプルの電荷減衰挙動を、記録計を用いて、印加後の経時時間(秒)とサンプルの帯電圧(V)をプロットした。なお、ターンテーブルの回転数は1550rpmである。
(12)非接着性
本発明においては、転写箔の接着剤層との「非接着性」をモデル的に評価するため、2種類の印刷インキとの接着性から下記の基準で評価した。なお、本評価においては、用いた印刷インキとの接着不良であるものが「非接着性」に優れ、用いた印刷インキと接着良好であるものが「非接着性」が不良であると判断した。
【0173】
印刷インキ1として、紫外線硬化型インキ(“ベストキュアー”161墨、(株)ティーアンドケイ東華製)を用い、ロールコート法で積層膜上に約1.5μm厚みに塗布した。その後、照射強度80W/cmの紫外線ランプを用い、照射距離(ランプとインキ面の距離)9cmで5秒間照射し、硬化膜を得た。接着のための評価は以下の方法で行った。
【0174】
積層膜に1mm2 のクロスカットを100個入れ、ニチバン(株)製セロハンテープをその上に貼り付け、ゴムローラーを用いて、荷重19.6Nで3往復させ、押し付けた後、90度方向に剥離し、インキ硬化膜の残存した個数により5段階評価した。評価5および評価4が「非接着性」に優れるとした
評価5:0/100
評価4:1〜20/100
評価3:21〜50/100
評価2:51〜99/100
評価1:100/100
印刷インキ2として、酸化重合型インキ(HS−OS墨、久保井インキ(株)製)を用い、ロールコート法で積層膜上に約1.5μm厚みに塗布した。その後、23℃、相対湿度65%にて硬化させた。「非接着性」評価は上記と同様の方法で行った。
(13)耐温水性
本発明の積層フィルムを60℃に加熱した水道水中に10分間浸漬した後、ガーゼで水滴を拭き取り、60℃のオーブン中で5分間熱風乾燥後、(3)項に記載の帯電防止性の評価を行った。耐温水性評価をする前の帯電防止性と比較して、該耐温水性評価を行った後の帯電防止性の変化が小さいものが優れた耐温水性を有するものである。
(14)離型層接着性
転写箔の離型層のモデル層として、水溶性ポリエステル樹脂(ガラス転移温度:81℃)とポリエチレン系ワックス水分散体(融点:95℃)を固形分重量比で95/5で混合したものを用いた。積層フィルムの離型層を設ける面に、上記した離型層形成塗剤を塗布、乾燥し、約1μmの離型層を設けた。
【0175】
接着性評価は以下の方法で行った。離型層に1mm2のクロスカットを100個入れ、ニチバン(株)製セロハンテープをその上に貼り付け、ゴムローラーを用いて、荷重19.6Nで3往復させ、押し付けた後、90度方向に剥離し、離型層の残存した個数により4段階評価した
評価5:100/100
評価4:80〜99/100
評価3:50〜79/100
評価2:1〜49/100
評価1:0/100。
【0176】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されない。実施例1
平均粒径0.4μmのコロイダルシリカを0.015重量%、平均粒径1.5μmのコロイダルシリカを0.005重量%を含有するPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を充分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し285℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化させた。この未延伸フィルムを92℃に加熱して長手方向に3.3倍延伸し、一軸延伸フィルムとした。このフィルムに空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルムの濡れ張力を55mN/mとし、その処理面に下記の積層膜形成塗液を塗布した。塗布された一軸延伸フィルムをクリップで把持しながら予熱ゾーンに導き、90℃で乾燥後、引き続き連続的に90℃の加熱ゾーンで幅方向に3.8倍延伸し、更に、225℃の加熱ゾーンで熱処理を施し、結晶配向の完了した積層PETフィルムを得た。このとき、基材PETフィルム厚みが38μm、積層膜の厚みが0.02μmであった。結果を表1に示した。透明性、帯電防止性、耐水性に優れるものであった。本実施例の積層膜のTEM断面観察像を図2に示す。ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸からなる複合体からなる「海」部分と、エポキシ架橋剤からなる「島」部分が認められ、該積層膜は海島構造を形成していた。
【0177】
「積層膜形成塗液」
・塗液A1:
ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸からなる複合体にフッ素系界面活性剤が添加された水性塗液(ナガセケムテックス(株)製“デナトロン”#5002SZ)
・塗液B1:
エポキシ架橋剤として、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル系エポキシ架橋剤(ナガセケムテック(株)製“デナコール”EX−512(分子量約630、エポキシ当量168、水溶率100%))を水に溶解させた水性塗液
上記した塗液A1と塗液B1を固形分重量比で、塗液A1/塗液B1=10/90で混合したものを積層膜形成塗液とした。
【0178】
【表1】
Figure 0003966171
【0179】
実施例2
平均粒径0.4μmのコロイダルシリカを0.015重量%、平均粒径1.5μmのコロイダルシリカを0.005重量%を含有するPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を充分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し285℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。この未延伸フィルムを92℃に加熱して長手方向に3.3倍延伸し、一軸延伸フィルムとした。このフィルムに空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルムの濡れ張力を55mN/mとし、その処理面に下記の積層膜形成塗液を塗布した。塗布された一軸延伸フィルムをクリップで把持しながら予熱ゾーンに導き、90℃で乾燥後、引き続き連続的に90℃の加熱ゾーンで幅方向に3.8倍延伸し、更に、225℃の加熱ゾーンで熱処理を施し、結晶配向の完了した積層PETフィルムを得た。このとき、基材PETフィルム厚みが38μm、積層膜の厚みが0.05μmであった。結果を表1に示した。透明性、帯電防止性、耐水性に優れるものであった。
「積層膜形成塗液」
・塗液A2:
ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸からなる複合体と、ポリエステル樹脂を水に分散させた水性塗液(ナガセケムテックス(株)製“デナトロン”#5002RZ)
・塗液B2:
エポキシ架橋剤として、ソルビトールポリグリシジルエーテル系エポキシ架橋剤(ナガセケムテックス(株)製“デナコール”EX−614B(分子量約550、エポキシ当量173、水溶率94%))を水に溶解させた水性塗液。
上記した塗液A2と塗液B2を固形分重量比で、塗液A2/塗液B2=20/80で混合したものを積層膜形成塗液とした。
【0180】
実施例3
実施例2の積層膜形成塗液で、塗液A2と塗液B3を用いた以外は、実施例2と同様にして積層フィルムを得た。結果を表1に示した。透明性、帯電防止性、耐水性に優れるものであった。
「積層膜形成塗液」
・塗液A2:
ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸からなる複合体と、ポリエステル樹脂を水に分散させた水性塗液(ナガセケムテック(株)製“デナトロン”#5002RZ)
・塗液B3:
エポキシ架橋剤として、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル系エポキシ架橋剤(ナガセケムテック(株)製“デナコール”EX−521(分子量約1000、エポキシ当量183、水溶率100%))を水に溶解させた水性塗液。
【0181】
上記した塗液A2と塗液B3を固形分重量比で、塗液A2/塗液B3=20/80で混合したものを積層膜形成塗液とした。
【0182】
実施例4
実施例2の積層膜形成塗液で、塗液A2と塗液B1を用いた以外は、実施例2と同様にして積層フィルムを得た。結果を表1に示した。透明性、帯電防止性、耐水性に優れ、更に耐削れ性にも極めて優れるものであった。
「積層膜形成塗液」
・塗液A2:
ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸からなる複合体と、ポリエステル樹脂を水に分散させた水性塗液(ナガセケムテック(株)製“デナトロン”#5002RZ)
・塗液B1:
エポキシ架橋剤として、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル系エポキシ架橋剤(ナガセケムテック(株)製“デナコール”EX−512(分子量約630、エポキシ当量168、水溶率100%))を水に溶解させた水性塗液
上記した塗液A2と塗液B1を固形分重量比で、塗液A2/塗液B1=15/85で混合したものを積層膜形成塗液とした。
【0183】
実施例5
実施例2の積層膜形成塗液で、塗液A2と塗液B1を用い、かつ、その塗液A2と塗液B1を20/80(固形分重量比)で混合して用いた以外は、実施例2と同様にして積層フィルムを得た。結果を表1に示した。透明性、帯電防止性、耐水性に優れるものであった。
【0184】
実施例6
実施例2の積層膜形成塗液で、塗液A2と塗液B1を用い、かつ、その塗液A2と塗液B1を30/70(固形分重量比)で混合して用いた以外は、実施例2と同様にして積層フィルムを得た。結果を表1に示した。透明性、帯電防止性、耐水性に優れるものであった。
【0185】
実施例7
実施例2の積層膜形成塗液で、塗液A2と塗液B1を用い、かつ、その塗液A2と塗液B1を50/50(固形分重量比)で混合して用いた以外は、実施例2と同様にして積層フィルムを得た。結果を表1に示した。透明性、帯電防止性、耐水性に優れるものであった。
【0186】
実施例8
実施例2の積層膜形成塗液で、塗液A2と塗液B1を用い、かつ、その塗液A2と塗液B1を75/25(固形分重量比)で混合して用いた以外は、実施例2と同様にして積層フィルムを得た。結果を表1に示した。透明性、帯電防止性、耐水性に優れるものであった。
【0187】
参考例
実施例2の積層膜形成塗液で、塗液A2と塗液B1を用い、かつ、その塗液A2と塗液B1を90/10(固形分重量比)で混合して用いた以外は、実施例2と同様にして積層フィルムを得た。結果を表1に示した。透明性、帯電防止性、耐水性に優れるものであった。
【0188】
実施例10
実施例2の積層膜形成塗液で、塗液A2と塗液B1を用い、かつ、その塗液A2と塗液B1を25/75(固形分重量比)で混合して用い、かつ、積層膜の厚みを0.025μmとした以外は、実施例2と同様にして積層フィルムを得た。結果を表1に示した。透明性、帯電防止性、耐水性に優れるものであった。
【0189】
実施例11
実施例2の積層膜形成塗液で、塗液A2と塗液B4を用い、かつ、積層膜の厚みを0.07μmとした以外は、実施例2と同様にして積層フィルムを得た。結果を表1に示した。透明性、帯電防止性、耐水性に優れ、更に耐削れ性にも優れるものであった。
「積層膜形成塗液」
・塗液A2:
ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸からなる複合体と、ポリエステル樹脂を水に分散させた水性塗液(ナガセケムテック(株)製“デナトロン”#5002RZ)
・塗液B4:
エポキシ架橋剤として、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル系エポキシ架橋剤(ナガセケムテック(株)製“デナコール”EX−810(分子量約180、エポキシ当量113、水溶率100%))を水に溶解させた水性塗液
上記した塗液A2と塗液B4を固形分重量比で、塗液A2/塗液B4=50/50で混合したものを積層膜形成塗液とした。
【0190】
参考例2
実施例2の積層膜形成塗液で、塗液A2と塗液B5を用いた以外は、実施例2と同様にして積層フィルムを得た。結果を表1に示した。透明性、帯電防止性、耐水性に優れ、更に耐削れ性にも優れるものであった。
「積層膜形成塗液」
・塗液A2:
ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸からなる複合体と、ポリエステル樹脂を水に分散させた水性塗液(ナガセケムテック(株)製“デナトロン”#5002RZ)
・塗液B5:
メラミン系架橋剤として、メチロール基型メラミン架橋剤(三和ケミカル(株)製“ニカラック”MW12LF(分子量約340))を水に溶解させた水性塗液
上記した塗液A2と塗液B5を固形分重量比で、塗液A2/塗液B5=50/50で混合したものを積層膜形成塗液とした。
【0191】
比較例1
実施例2の積層膜形成塗液で、下記の積層膜形成塗液とし、かつ、積層膜の厚みを0.07μmとした以外は、実施例2と同様にして積層PETフィルムを得た。結果を表1に示した。塗膜が白化したり、削れやすく、また、帯電防止性に極めて劣るものであった。
「積層膜形成塗液」
・塗液A2:
ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸からなる複合体と、ポリエステル樹脂を水に分散させた水性塗液(ナガセケムテック(株)製“デナトロン”#5002RZ)
上記した塗液A2のみを積層膜形成塗液として用いた。
【0192】
比較例2
比較例1で、積層膜の厚みを0.025μmとした以外は比較例1と同様にして積層PETフィルムを得た。結果を表1に示した。塗膜が白化し、削れやすく、また、帯電防止性に極めて劣るものであった。
【0193】
比較例3
実施例2の積層膜形成塗液で、下記の積層膜形成塗液とした以外は、実施例2と同様にして積層PETフィルムを得た。結果を表1に示した。なお、本比較例では、架橋剤(B)を用いていないため、帯電防止性に極めて劣るものであった。
「積層膜形成塗液」
・塗液A2:
ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸からなる複合体と、ポリエステル樹脂を水に分散させた水性塗液(ナガセケムテック(株)製“デナトロン”#5002RZ)
・塗液C1:
下記の共重合組成からなるポリエステル樹脂(ガラス転移温度:21℃)を粒子状に水に分散させた水性分散液(いわゆる、「ラテックス」状塗液、水溶率:1%以下)
・酸成分
テレフタル酸 10モル%
イソフタル酸 78モル%
5−ナトリウムスルホイソフタル酸 12モル%
・ジオール成分
エチレングリコール 5モル%
ジエチレングリコール 75モル%
ネオペンチルグリコール 20モル%
上記した塗液A2と塗液C1を固形分重量比で、塗液A2/塗液C1=20/80で混合したものを積層膜形成塗液とした。
【0194】
比較例4
実施例2の積層膜形成塗液で、下記の積層膜形成塗液とした以外は、実施例2と同様にして積層PETフィルムを得た。結果を表1に示した。なお、本比較例では、架橋剤(B)を用いていないため、透明性が悪く、かつ、帯電防止性も不十分であった。
「積層膜形成塗液」
・塗液A2:
ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸からなる複合体と、ポリエステル樹脂を水に分散させた水性塗液(ナガセケムテック(株)製“デナトロン”#5002RZ)
・塗液C2:
下記の共重合組成からなるアクリル樹脂(ガラス転移温度:42℃)を粒子状に水に分散させた水性分散液(いわゆる、「ラテックス」状塗液、水溶率:1%以下)
・共重合成分
メチルメタクリレート 62モル%
エチルアクリレート 35モル%
アクリル酸 1モル%
N−メチロールアクリルアミド 2モル%
上記した塗液A2と塗液C2を固形分重量比で、塗液A2/塗液C2=80/20で混合したものを積層膜形成塗液とした。
【0195】
比較例5
実施例2の積層膜形成塗液で、下記の積層膜形成塗液とした以外は、実施例2と同様にして積層PETフィルムを得た。結果を表1に示した。なお、本比較例では、本発明にかかる組成物(A)、および、架橋剤(B)を用いていないため、湿度依存性が大きく、特に低湿度下での帯電防止性が悪く、かつ、耐水性が全くないものであった。
「積層膜形成塗液」
・塗液D1:
ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩(重量平均分子量:65000)を水に溶解した水性塗液
・塗液C2:
下記の共重合組成からなるアクリル樹脂(ガラス転移温度:42℃)を粒子状に水に分散させた水性分散液(いわゆる、「ラテックス」状塗液、水溶率:1%以下)
・共重合成分
メチルメタクリレート 62モル%
エチルアクリレート 35モル%
アクリル酸 1モル%
N−メチロールアクリルアミド 2モル%
上記した塗液D1と塗液C2を固形分重量比で、塗液D1/塗液C2=25/75で混合したものを積層膜形成塗液とした。
【0196】
実施例13
平均粒径0.7μmの凝集シリカを0.008重量%、平均粒径1.4μmの凝集シリカを0.008重量%を含有するPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を充分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し285℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度20℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。この未延伸フィルムを88℃に加熱して長手方向に3.3倍延伸し、一軸延伸フィルムとした。このフィルムに空気中でコロナ放電処理を施し、その処理面に次の組成の積層膜形成塗液を塗布した。
「積層膜形成塗液」
次の塗液A2と塗液B6を固形分重量比で、塗液A2/塗液B6=75/25で混合したものを積層膜形成塗液とした
・塗液A2:
ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸からなる複合体と、ポリエステル樹脂を水に分散させた水性塗液(ナガセケムテックス(株)製“デナトロン”#5002RZ)
・塗液B6:
エポキシ系架橋剤として、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル系エポキシ架橋剤(ナガセケムテックス(株)製“デナコール”EX−830(分子量約530、エポキシ当量268、水溶率100%))を水に溶解させた水性塗液。
【0197】
塗布された一軸延伸フィルムをクリップで把持しながら予熱ゾーンに導き、90℃で乾燥後、引き続き連続的に105℃の加熱ゾーンで幅方向に4倍延伸し、更に、225℃の加熱ゾーンで熱処理を施し、結晶配向の完了したプロテクトフィルム用積層フィルムを得た。このとき、基材PETフィルム厚みが50μm、積層膜の厚みが0.06μmであった。この積層膜中の水溶性架橋剤(B)含有量は25重量%であった。結果を表2に示した。帯電防止性、耐溶剤性、熱収縮率に極めて優れ、かつ、透明性にも優れるものであった。
【0198】
【表2】
Figure 0003966171
【0199】
実施例14
実施例13の積層膜形成塗液に代えて、塗液A2と塗液B6を用い、かつ、塗液A2と塗液B6の混合比を60/40(固形分重量比)とした以外は、実施例13と同様にしてプロテクトフィルム用積層フィルムを得た。この積層膜中の水溶性架橋剤(B)含有量は40重量%であった。結果を表2に併せて示した。透明性、帯電防止性、耐溶剤性、熱収縮率に極めて優れるものであった。
【0200】
実施例15
実施例13の積層膜形成塗液に代えて、塗液A2と塗液B6を用い、かつ、塗液A2と塗液B6を30/70(固形分重量比)で混合して用いた以外は、実施例13と同様にしてプロテクトフィルム用積層フィルムを得た。この積層膜中の水溶性架橋剤(B)含有量は70重量%であった。結果を表2に併せて示した。透明性、帯電防止性、耐溶剤性、熱収縮率に極めて優れるものであった。
【0201】
実施例16
実施例13の積層膜形成塗液で、塗液A2と塗液B6を用い、かつ、その塗液A2と塗液B6の混合比を15/85(固形分重量比)とした以外は、実施例13と同様にしてプロテクトフィルム用積層フィルムを得た。この積層膜中の水溶性架橋剤(B)含有量は85重量%であった。結果を表2に併せて示した。透明性、帯電防止性、耐溶剤性、熱収縮率に極めて優れるものであった。
【0202】
実施例17
実質的に粒子を含有しないPETペレット(極限粘度0.65dl/g)を充分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し280℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度20℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。この未延伸フィルムを88℃に加熱して長手方向に3.3倍延伸し、一軸延伸フィルムとした。このフィルムに空気中でコロナ放電処理を施し、その処理面に次の組成の積層膜形成塗液を塗布した。
「積層膜形成塗液」
次の塗液A2と塗液B4を固形分重量比で、塗液A2/塗液B4=25/75で混合したものを積層膜形成塗液とした
・塗液A2:
ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸からなる複合体と、ポリエステル樹脂を水に分散させた水性塗液(ナガセケムテックス(株)製“デナトロン”#5002RZ)。
【0203】
・塗液B4:
エポキシ系架橋剤として、エチレン・ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル系エポキシ架橋剤(ナガセケムテックス(株)製“デナコール”EX−810(分子量約230、エポキシ当量113、水溶率100%))を水に溶解させた水性塗液。
【0204】
塗布された一軸延伸フィルムをクリップで把持しながら予熱ゾーンに導き、90℃で乾燥後、引き続き連続的に105℃の加熱ゾーンで幅方向に4倍延伸し、更に、225℃の加熱ゾーンで熱処理を施し、結晶配向の完了したプロテクトフィルム用積層フィルムを得た。このとき、基材PETフィルム厚みが50μm、積層膜の厚みが0.06μmであった。この積層膜中の水溶性架橋剤(B)含有量は75重量%であった。結果を表2に併せて示した。透明性、帯電防止性、耐溶剤性、熱収縮率に極めて優れるものであった。
【0205】
参考例3
実施例13の積層膜形成塗液に代えて、次のとおり、塗液A2と塗液B5を用い、かつ、その塗液A2と塗液B5を40/60(固形分重量比)で混合して用い、積層膜の厚みを0.03μmとした以外は、実施例13と同様にしてプロテクトフィルム用積層フィルムを得た。この積層膜中の水溶性架橋剤(B)含有量は60重量%であった。結果を表2に併せて示した。耐溶剤性、熱収縮率に極めて優れ、かつ、透明性、帯電防止性にも優れるものであった。
「積層膜形成塗液」
・塗液A2:
ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸からなる複合体と、ポリエステル樹脂を水に分散させた水性塗液(ナガセケムテック(株)製“デナトロン”#5002RZ)
・塗液B5:
メラミン系架橋剤として、メチロール基型メラミン架橋剤(三和ケミカル(株)製“ニカラック”MW12LF(分子量約340))を水に溶解させた水性塗液。
【0206】
比較例6
実施例13の積層膜形成塗液に代えて、次の積層膜形成塗液とした以外は、実施例13と同様にしてプロテクトフィルム用積層フィルムを得た。この積層膜中の水溶性架橋剤(B)含有量は0重量%であった。結果を表2に併せて示した。塗膜の白化が発生し透明性が著しく劣り、耐溶剤性が無く、また、帯電防止性に極めて劣るものであった。
「積層膜形成塗液」
次の塗液A2のみを積層膜形成塗液として用いた
・塗液A2:
ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸からなる複合体と、ポリエステル樹脂を水に分散させた水性塗液(ナガセケムテック(株)製“デナトロン”#5002RZ)。
【0207】
比較例7
実施例13の積層膜形成塗液に代えて、次の組成の積層膜形成塗液とした以外は、実施例13と同様にしてプロテクトフィルム用積層フィルムを得た。この積層膜中の水溶性架橋剤の水溶率は64%であり、本発明における水溶性架橋剤(B)に該当しない。結果を表2に併せて示した。塗膜の白化が発生し透明性が劣り、耐溶剤性が無く、また、帯電防止性に極めて劣るものであった。
「積層膜形成塗液」
次の塗液A2と塗液B7を固形分重量比で、塗液A2/塗液B7=90/10で混合したものを積層膜形成塗液とした
・塗液A2:
ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸からなる複合体と、ポリエステル樹脂を水に分散させた水性塗液(ナガセケムテックス(株)製“デナトロン”#5002RZ)
・塗液B7:
エポキシ系架橋剤として、グリセロールポリグリシジルエーテル系エポキシ架橋剤(ナガセケムテックス(株)製“デナコール”EX−314(分子量約320、エポキシ当量144、水溶率64%))からなる水性塗液。
【0208】
比較例8
実施例13の積層膜形成塗液に代えて、塗液A2と塗液B6を用い、かつ、その塗液A2と塗液B6を95/5(固形分重量比)で混合して用いた以外は、実施例13と同様にしてプロテクトフィルム用積層フィルムを得た。この積層膜中の水溶性架橋剤(B)含有量は5重量%であった。結果を表2に併せて示した。塗膜の白化が発生し透明性が劣り、耐溶剤性が無く、また、帯電防止性も不十分であった。
【0209】
比較例9
実施例13の積層膜形成塗液で、塗液A2と塗液B6を用い、かつ、その塗液A2と塗液B6を8/92(固形分重量比)で混合して用いた以外は、実施例13と同様にしてプロテクトフィルム用積層フィルムを得た。この積層膜中の水溶性架橋剤(B)含有量は92重量%であった。結果を表2に併せて示した。塗膜の透明性や耐溶剤性は良好であるが、帯電防止性に極めて劣るものであった。
【0210】
比較例10
実施例13の積層膜形成塗液で、次の組成の積層膜形成塗液とした以外は、実施例13と同様にしてプロテクトフィルム用積層フィルムを得た。この積層膜中の水溶性架橋剤の水溶率は48%であり、本発明における水溶性架橋剤(B)に該当しない。結果を表2に併せて示した。塗膜の白化が発生し透明性が劣り、耐溶剤性が無く、また、帯電防止性に極めて劣るものであった。
「積層膜形成塗液」
次の塗液A2と塗液B8を固形分重量比で、塗液A2/塗液B8=25/75で混合したものを積層膜形成塗液とした。ただし、塗液に凝集物や不溶物が多数発生していたので、フィルムへの塗布にはフィルター濾過したものを用いた
・塗液A2:
ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸からなる複合体と、ポリエステル樹脂を水に分散させた水性塗液(ナガセケムテックス(株)製“デナトロン”#5002RZ)
・塗液B8:
エポキシ系架橋剤として、ソルビトールポリグリシジルエーテル系エポキシ架橋剤(ナガセケムテックス(株)製“デナコール”EX−611(分子量約630、エポキシ当量167、水溶率48%))からなる水性塗液。
【0211】
比較例11
実施例13の積層膜形成塗液に代えて、次の組成の積層膜形成塗液とした以外は、実施例13と同様にしてプロテクトフィルム用積層フィルムを得た。結果を表2に併せて示した。なお、本比較例では、本発明にかかるポリチオフェンおよび/またはその誘導体とポリ陰イオンからなる組成物(A)を用いていないため、湿度依存性が大きく、特に低湿度下での帯電防止性が極めて悪く、かつ、塗膜の白化が発生し透明性が劣り、耐溶剤性が無いものであった。
「積層膜形成塗液」
次の塗液D2と塗液B6を固形分重量比で、塗液D2/塗液B6=50/50で混合したものを積層膜形成塗液とした
・塗液D2:
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩(重量平均分子量:500000)を水に溶解した水性塗液
・塗液B6:
エポキシ系架橋剤として、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル系エポキシ架橋剤(ナガセケムテックス(株)製“デナコール”EX−830(分子量約530、エポキシ当量268、水溶率100%))を水に溶解させた水性塗液。
【0212】
比較例12
実施例13の積層膜形成塗液に代えて、次の組成の積層膜形成塗液とした以外は、実施例13と同様にしてプロテクトフィルム用積層フィルムを得た。この積層膜中の水溶性架橋剤(B)の含有量は0重量%であった。結果を表2に併せて示した。塗膜の白化が発生し透明性が劣り、耐溶剤性が無く、また、帯電防止性も不十分であった。
「積層膜形成塗液」
次の塗液A2と塗液C2を固形分重量比で、塗液A2/塗液C2=80/20で混合したものを積層膜形成塗液とした
・塗液A2:
ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸からなる複合体と、ポリエステル樹脂を水に分散させた水性塗液(ナガセケムテックス(株)製“デナトロン”#5002RZ)
・塗液C2:
下記の共重合組成からなるアクリル樹脂(ガラス転移温度:42℃)を粒子状に水に分散させた水性分散液(いわゆる、「ラテックス」状塗液、水溶率:1%以下)。
【0213】
・共重合成分
メチルメタクリレート 62モル%
エチルアクリレート 35モル%
アクリル酸 1モル%
N−メチロールアクリルアミド 2モル%
実施例19
実施例15で得たプロテクトフィルム用積層フィルムの積層膜が設けられたのとは反対面に、アクリル酸ブチルとアクリル酸2−エチルヘキシルとエチレン−アクリル酸を含むアクリル系粘着剤をグラビアコーティング法で設け、乾燥固化後の厚みが10μmの粘着層を形成し、プロテクトフィルムを作製した。
【0214】
プロテクトフィルムをディスプレイ部材である偏光板に貼り付けたところ、非常に透明性に優れ、表面側の帯電防止性が優れているためゴミの付着なども無いものであった。また、粘着層加工工程で付着した粘着剤のはみ出しにより端部などに部分的についた粘着剤もエタノールをしみ込ませたガーゼで容易に拭き取ることができ、外観変化も無いものであった。
【0215】
実施例20
平均粒径0.7μmの凝集シリカを0.01重量%、平均粒径1.4μmの凝集シリカを0.006重量%を含有するPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を充分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し285℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。この未延伸フィルムを89℃に加熱して長手方向に3.3倍延伸し、一軸延伸フィルムとした。このフィルムに空気中でコロナ放電処理を施し、その処理面に次の積層膜形成塗液を塗布した。
「積層膜形成塗液」
次の塗液A2と塗液B6を固形分重量比で、塗液A2/塗液B6=25/75で混合したものを積層膜形成塗液とした
・塗液A2:
ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸からなる複合体と、ポリエステル樹脂を水に分散させた水性塗液(ナガセケムテックス(株)製“デナトロン”#5002RZ)
・塗液B6:
エポキシ系架橋剤として、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル系エポキシ架橋剤(ナガセケムテックス(株)製“デナコール”EX−830(分子量約530、エポキシ当量268、水溶率100%))を水に溶解させた水性塗液。
【0216】
塗布された一軸延伸フィルムをクリップで把持しながら予熱ゾーンに導き、90℃で乾燥後、引き続き連続的に105℃の加熱ゾーンで幅方向に4.1倍延伸し、更に、225℃の加熱ゾーンで熱処理を施し、結晶配向の完了したカバーテープ用積層フィルムを得た。このとき、基材PETフィルム厚みが35μm、積層膜の厚みが0.05μmであった。この積層膜中の水溶性架橋剤(B)含有量は75重量%であった。結果を表3に示した。透明性、帯電防止性、耐削れ性に極めて優れるものであった。
【0217】
【表3】
Figure 0003966171
【0218】
実施例21
実施例20の積層膜形成塗液で、塗液A2と塗液B6を用い、かつ、その塗液A2と塗液B6を75/25(固形分重量比)で混合して用い、かつ、積層膜厚みを0.03μmとした以外は、実施例20と同様にしてカバーテープ用積層フィルムを得た。この積層膜中の水溶性架橋剤(B)含有量は25重量%であった。結果を表3に併せて示した。透明性、帯電防止性、耐削れ性に極めて優れるものであった。
【0219】
実施例22
実施例20の積層膜形成塗液で、塗液A2と塗液B6を用い、かつ、その塗液A2と塗液B6を50/50(固形分重量比)で混合して用いた以外は、実施例20と同様にしてカバーテープ用積層フィルムを得た。この積層膜中の水溶性架橋剤(B)含有量は50重量%であった。結果を表3に併せて示した。透明性、帯電防止性、耐削れ性に極めて優れるものであった。
【0220】
実施例23
実施例20の積層膜形成塗液に代えてで、次の塗液A2と塗液B1を用い、かつ、その塗液A2と塗液B1を25/75(固形分重量比)で混合して用いた以外は、実施例20と同様にしてカバーテープ用積層フィルムを得た。この積層膜中の水溶性架橋剤(B)含有量は75重量%であった。結果を表3に併せて示した。透明性、帯電防止性、耐削れ性に極めて優れるものであった。
「積層膜形成塗液」
・塗液A2:
ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸からなる複合体と、ポリエステル樹脂を水に分散させた水性塗液(ナガセケムテック(株)製“デナトロン”#5002RZ)
・塗液B1:
エポキシ系架橋剤として、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル系エポキシ架橋剤(ナガセケムテック(株)製“デナコール”EX−512(分子量約630、エポキシ当量168、水溶率100%))を水に溶解させた水性塗液。
【0221】
実施例24
実施例20の積層膜形成塗液に代えて、次の塗液A2と塗液B4を用い、かつ、その塗液A2と塗液B4を30/70(固形分重量比)で混合して用いた以外は、実施例20と同様にしてカバーテープ用積層フィルムを得た。この積層膜中の水溶性架橋剤(B)含有量は70重量%であった。結果を表3に併せて示した。透明性、帯電防止性、耐削れ性に極めて優れるものであった。
「積層膜形成塗液」
・塗液A2:
ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸からなる複合体と、ポリエステル樹脂を水に分散させた水性塗液(ナガセケムテック(株)製“デナトロン”#5002RZ)
・塗液B4:
エポキシ系架橋剤として、エチレン・ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル系エポキシ架橋剤(ナガセケムテック(株)製“デナコール”EX−810(分子量約230、エポキシ当量113、水溶率100%))を水に溶解させた水性塗液。
【0222】
比較例13
実施例20において、積層膜形成塗液を塗布せず、積層膜を設けていないカバーテープ用PETフィルムを得た。結果を表3に併せて示すが、帯電防止性に極めて劣るものであった。
【0223】
比較例14
実施例20の積層膜形成塗液に代えて、次の積層膜形成塗液とした以外は、実施例20と同様にしてカバーテープ用積層フィルムを得た。この積層膜中の水溶性架橋剤(B)含有量は0重量%であった。結果を表3に併せて示した。塗膜が白化したり、削れやすく、また、帯電防止性に極めて劣るものであった。
「積層膜形成塗液」
次の塗液A2のみを積層膜形成塗液として用いた
・塗液A2:
ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸からなる複合体と、ポリエステル樹脂を水に分散させた水性塗液(ナガセケムテック(株)製“デナトロン”#5002RZ)。
【0224】
比較例15
実施例20の積層膜形成塗液に代えて、次の積層膜形成塗液とした以外は、実施例20と同様にしてカバーテープ用積層フィルムを得た。この積層膜中の架橋剤の水溶率は78%であり、本発明における水溶性架橋剤(B)に該当しない。結果を表3に併せて示した。塗膜が白化したり、削れやすく、また、帯電防止性に極めて劣るものであった。
「積層膜形成塗液」
次の塗液A2と塗液B9を固形分重量比で、塗液A2/塗液B9=30/70で混合したものを積層膜形成塗液とした
・塗液A2:
ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸からなる複合体と、ポリエステル樹脂を水に分散させた水性塗液(ナガセケムテックス(株)製“デナトロン”#5002RZ)
・塗液B9:
エポキシ系架橋剤として、ソルビトールポリグリシジルエーテル系エポキシ架橋剤(ナガセケムテックス(株)製“デナコール”EX−614(分子量約550、エポキシ当量167、水溶率78%))を水に溶解させた水性塗液。
【0225】
比較例16
実施例20の積層膜形成塗液に代えて、次の積層膜形成塗液とした以外は、実施例20と同様にしてカバーテープ用積層フィルムを得た。この積層膜中の水溶性架橋剤(B)含有量は92重量%であった。結果を表3に併せて示した。帯電防止性に極めて劣るものであった。
「積層膜形成塗液」
次の塗液A2と塗液B4を固形分重量比で、塗液A2/塗液B4=8/92で混合したものを積層膜形成塗液とした
・塗液A2:
ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸からなる複合体と、ポリエステル樹脂を水に分散させた水性塗液(ナガセケムテック(株)製“デナトロン”#5002RZ)
・塗液B4:
エポキシ系架橋剤として、エチレン・ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル系エポキシ架橋剤(ナガセケムテック(株)製“デナコール”EX−810(分子量約230、エポキシ当量113、水溶率100%))を水に溶解させた水性塗液。
【0226】
比較例17
実施例20の積層膜形成塗液に代えて、次の積層膜形成塗液とした以外は、実施例20と同様にしてカバーテープ用積層フィルムを得た。この積層膜中の水溶性架橋剤(B)含有量は0重量%であった。結果を表3に併せて示した。なお、本比較例では、本発明にかかるポリチオフェンおよび/またはその誘導体とポリ陰イオンからなる組成物(A)、および、水溶性架橋剤(B)を用いていないため、湿度依存性が大きく、特に低湿度下での帯電防止性が悪く、かつ、耐水性が全くないものであった。
「積層膜形成塗液」
次の塗液D3と塗液C2を固形分重量比で、塗液D3/塗液C2=20/80で混合したものを積層膜形成塗液とした
・塗液D3:
ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩(重量平均分子量:10000)を水に溶解した水性塗液。
【0227】
・塗液C2:
下記の共重合組成からなるアクリル樹脂(ガラス転移温度:42℃)を粒子状に水に分散させた水性分散液(いわゆる、「ラテックス」状塗液、水溶率:1%以下)
・共重合成分
メチルメタクリレート 62モル%
エチルアクリレート 35モル%
アクリル酸 1モル%
N−メチロールアクリルアミド 2モル%
実施例25
実施例24で得たカバーテープ用積層フィルムの積層膜が設けられたのとは反対面に、アクリル酸ブチルとアクリル酸2−エチルヘキシルとエチレン−アクリル酸を含むアクリル系粘着剤をグラビアコーティング法で設け、乾燥固化後の厚みが5μmの粘着層を形成し、カバーテープを作製した。
【0228】
オネストメーターで帯電圧を測定したが、印加時の帯電圧は20V程度であり、印加を停止後1秒で帯電圧0Vに減衰した。極めて帯電防止性に優れたカバーテープを得ることができた。
【0229】
実施例26
実施例24で得たカバーテープ用積層フィルムの積層膜が設けられたのとは反対面に、処理強度30W・分/m2で、空気中でコロナ放電処理し、該処理面上に厚み16μmのポリエチレンフィルムを熱ラミネートし、カバーテープを作製した。
【0230】
オネストメーターで帯電圧を測定したが、印加時の帯電圧は20V程度であり、印加を停止後1秒で帯電圧0Vに減衰した。極めて帯電防止性に優れたカバーテープを得ることができた。
【0231】
比較例18
実施例24で得たカバーテープ用積層フィルムの積層膜が設けられたのとは反対面に、次の組成物からなる粘着層形成塗液をグラビアコーティング法で塗布することにより粘着層を設け、乾燥固化後の厚みが5μmの粘着層を形成し、カバーテープを作製した。キャリアテープとの熱ラミネート後、自然に剥がれが生じたりするなど剥離が安定しないものであった。また、剥離後粘着層の水との接触角を測定すると、62度であった。
「粘着層形成塗液」
次の塗液E1と塗液F1を固形分重量比で、塗液E1/塗液F1=90/10で混合したものを粘着層形成塗液とした
・塗液E1:
エマルション粒子径が約0.5μmのポリエチレン樹脂エマルションを水に分散させた水性塗液
・塗液F1:
ノニオン性帯電防止剤として、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミンを水に分散させた水性塗液。
【0232】
実施例27
ポリスチレン樹脂フィルムにカーボンブラックを15重量%練り込んだ厚み3mm、幅25mmのプラスチック製シートに、2cm間隔で、16mm×16mmの正方形の形状をした深さ1.5mmの窪みを成型機で形成し、キャリアテープを得た。該キャリアテープにICチップを封入し、実施例25で得たカバーテープのポリエチレン樹脂フィルムを積層した面を該キャリアテープと熱ラミネートし、キャリア包装体を得た。
【0233】
得られたキャリア包装体は、カバーテープ側からの電子部品封入部の視認性に優れ、かつ、カバーテープ剥離後の帯電圧は、オネストメーター測定で0Vであった。また、カバーテープ剥離後の粘着層の水との接触角は100度であり、剥離安定性も良好であった。
【0234】
実施例28
平均粒径0.7μmの凝集シリカを0.01重量%、平均粒径1.4μmの凝集シリカを0.006重量%を含有するPETペレット(極限粘度0.61dl/g)を充分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し280℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度20℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。この未延伸フィルムを87℃に加熱して長手方向に3.5倍延伸し、一軸延伸フィルムとした。このフィルムの片面に空気中でコロナ放電処理を施し表面張力を50mN/m以上とし、その処理面に次の積層膜形成塗液1を塗布した。
【0235】
「積層膜形成塗液1」
次の塗液A2と塗液B1を固形分重量比で、塗液A2/塗液B1=15/85で混合したものを積層膜形成塗液1とした
・塗液A2:
ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸からなる複合体と、ポリエステル樹脂を水に分散させた水性塗液(ナガセケムテックス(株)製“デナトロン”#5002RZ)
・塗液B1:
エポキシ系架橋剤として、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル系エポキシ架橋剤(ナガセケムテック(株)製“デナコール”EX−512(分子量約630、エポキシ当量168、水溶率100%))を水に溶解させた水性塗液。
【0236】
塗布された一軸延伸フィルムをクリップで把持しながら予熱ゾーンに導き、92℃で乾燥後、引き続き連続的に110℃の加熱ゾーンで幅方向に3.6倍延伸し、更に、225℃の加熱ゾーンで熱処理を施し、結晶配向の完了した転写箔用積層フィルムを得た。このとき、基材PETフィルム厚みが50μm、積層膜の厚みが0.08μmであった。結果を表4に示した。帯電防止性、耐温水性、非接着性に優れるものであった。
【0237】
【表4】
Figure 0003966171
【0238】
実施例29
実施例28と同様にして、一軸延伸フィルムを得た。このフィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し表面張力を50mN/m以上とし、一方の面に次に示す積層膜形成塗液2を、反対面に積層膜形成塗液(反対面用)を塗布した。
【0239】
「積層膜形成塗液2」
実施例28で用いた塗液A2と塗液B1を固形分重量比で、塗液A2/塗液B1=30/70で混合したものを積層膜形成塗液2とした
「積層膜形成塗液(反対面用)」
次の塗液Z1と塗液Y1を固形分重量比で、塗液Z1/塗液Y1=95/5で混合したものを積層膜形成塗液3とした
・塗液Z1:
下記の共重合組成からなるポリエステル樹脂(ガラス転移温度:55℃)を粒子状に水に分散させた水性分散液
・酸成分
テレフタル酸 70モル%
イソフタル酸 23モル%
5−ナトリウムスルホイソフタル酸 7モル%
・ジオール成分
エチレングリコール 70モル%
ジエチレングリコール 30モル%
・塗液Y1:
メラミン系架橋剤として、大日本インキ化学工業(株)製“ベッカミン”APMを水に溶解させた水性塗液。
【0240】
両面に塗布された一軸延伸フィルムをクリップで把持しながら予熱ゾーンに導き、92℃で乾燥後、引き続き連続的に110℃の加熱ゾーンで幅方向に3.6倍延伸し、更に、225℃の加熱ゾーンで熱処理を施し、結晶配向の完了した転写箔用積層フィルムを得た。このとき、基材PETフィルム厚みが50μm、積層膜の厚みは両面とも0.08μmであった。結果を表4に示した。帯電防止剤を塗布した側は、帯電防止性、耐温水性、非接着性に優れ、また、反対面の易接着層を設けた側は、転写箔の離型層との接着性も極めて良好であった。
【0241】
参考例
実施例28と同様にして、一軸延伸フィルムを得た。このフィルムの片面に空気中でコロナ放電処理を施し表面張力を50mN/m以上とし、次に示す積層膜形成塗液3を塗布した。
【0242】
「積層膜形成塗液3」
塗液A2、塗液B1、および塗液E1を固形分重量比で、塗液A2/塗液B1/塗液E1=90/10/2で混合したものを積層膜形成塗液3とした
・塗液E1:
ノニオン性のポリエチレン系ワックス水分散体(ワックスの軟化点:140℃、平均粒子径:約87nm)からなる水性塗液。
【0243】
塗布された一軸延伸フィルムをクリップで把持しながら予熱ゾーンに導き、92℃で乾燥後、引き続き連続的に110℃の加熱ゾーンで幅方向に3.6倍延伸し、更に、225℃の加熱ゾーンで熱処理を施した後、積層膜を設けていない方の面に、巻き取り前にコロナ放電処理を行い、結晶配向の完了した転写箔用積層フィルムを得た。このとき、基材PETフィルム厚みが50μm、積層膜の厚みは0.08μm、コロナ放電処理面の表面張力は55mN/mであった。結果を表4に示した。帯電防止剤を塗布した側は、帯電防止性、耐温水性、非接着性に極めて優れ、また、反対面は、転写箔の離型層との接着性も良好であった。
【0244】
実施例31
実施例29において、積層膜形成塗液を次に示す積層膜形成塗液4とした以外は、実施例29と同様にして転写箔用積層フィルムを得た。結果を表4に示した。帯電防止剤を塗布した側は、帯電防止性、耐温水性、非接着性に極めて優れ、また、反対面の易接着層を設けた側は、転写箔の離型層との接着性も極めて良好であった。
【0245】
「積層膜形成塗液4」
塗液A2、塗液B1、および塗液E1を固形分重量比で、塗液A2/塗液B1/塗液E1=25/75/2で混合したものを積層膜形成塗液4とした。
【0246】
実施例32
実施例29において、積層膜形成塗液を次に示す積層膜形成塗液5とした以外は、実施例29と同様にして転写箔用積層フィルムを得た。結果を表4に示した。帯電防止剤を塗布した側は、帯電防止性、耐温水性、非接着性に極めて優れ、また、反対面の易接着層を設けた側は、転写箔の離型層との接着性も極めて良好であった
「積層膜形成塗液5」
塗液A2、塗液B1、および塗液E2を固形分重量比で、塗液A2/塗液B1/塗液E2=25/75/10で混合したものを積層膜形成塗液5とした
・塗液E2:
下記の共重合組成からなる長鎖アルキルアクリレートを、イソプロピルアルコール10重量%とブチルセロソルブ5重量%を含む水に溶解させた水性塗液。
【0247】
・共重合成分
メタクリル酸メチル 40重量%
メタクリル酸ドデシル 60重量%
アクリル酸 1重量%
アニオン性反応性乳化剤 2重量%
なお、アニオン性反応性乳化剤は、“エレミノール”JS−2(三洋化成工業(株)製)を用いた。
【0248】
実施例33
実施例29において、積層膜形成塗液を次に示す積層膜形成塗液6とした以外は、実施例29と同様にして転写箔用積層フィルムを得た。結果を表4に示した。帯電防止剤を塗布した側は、帯電防止性、耐温水性、非接着性に極めて優れ、また、反対面の易接着層を設けた側は、転写箔の離型層との接着性も極めて良好であった
「積層膜形成塗液6」
塗液A2、塗液B1、および塗液E3を固形分重量比で、塗液A2/塗液B1/塗液E3=50/50/5で混合したものを積層膜形成塗液6とした
・塗液E3:
アニオン性のフッ素アクリル系共重合体エマルション“ビニブラン”FJ−371(日信化学工業(株)製)。
【0249】
実施例34
実施例29において、積層膜形成塗液を次に示す積層膜形成塗液7とした以外は、実施例29と同様にして転写箔用積層フィルムを得た。結果を表4に示した。帯電防止剤を塗布した側は、帯電防止性、耐温水性、非接着性に極めて優れ、また、反対面の易接着層を設けた側は、転写箔の離型層との接着性も極めて良好であった
「積層膜形成塗液7」
塗液A2、塗液B4、および塗液E2を固形分重量比で、塗液A2/塗液B4/塗液E2=30/70/5で混合したものを積層膜形成塗液8とした
・塗液B4:
エポキシ系架橋剤として、エチレン・ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル系エポキシ架橋剤(ナガセケムテック(株)製“デナコール”EX−810(分子量約230、エポキシ当量113、水溶率100%))を水に溶解させた水性塗液。
【0250】
実施例35
実施例29において、積層膜形成塗液を次に示す積層膜形成塗液8とし、かつ、該積層膜の厚みを0.04μmとした以外は、実施例29と同様にして転写箔用積層フィルムを得た。結果を表4に示した。帯電防止剤を塗布した側は、帯電防止性、耐温水性、非接着性に優れ、また、反対面の易接着層を設けた側は、転写箔の離型層との接着性も極めて良好であった。
【0251】
「積層膜形成塗液8」
塗液A2、塗液B5、および塗液E2を固形分重量比で、塗液A2/塗液B5/塗液E2=50/50/5で混合したものを積層膜形成塗液9とした
・塗液B5:
メラミン系架橋剤として、メチロール基型メラミン架橋剤“ニカラック”MW12LF(分子量約340)(三和ケミカル(株)製)を水に溶解させた水性塗液。
【0252】
比較例19
実施例28において、積層膜形成塗液を塗布せず、積層膜を設けていないPETフィルムを得た。結果を表4に併せて示すが、帯電防止性、非接着性に極めて劣るものであった。
【0253】
比較例20
実施例29において、積層膜形成塗液を次に示す積層膜形成塗液9とした以外は、実施例29と同様にして転写箔用積層フィルムを得た。結果を表4に示した。帯電防止剤を塗布した側は、帯電防止性、非接着性に劣るものであった。また、塗膜白化による積層フィルムのヘイズが大きいものであった。
【0254】
「積層膜形成塗液9」
塗液F1と塗液B1を固形分重量比で、塗液F1/塗液B1=60/40で混合したものを積層膜形成塗液9とした
・塗液F1:
酸化スズ(平均粒径:2nm)帯電防止剤として、“セラメース”S−8(多木化学(株)製)を水に溶解した水性塗液。
【0255】
比較例21
実施例29において、積層膜形成塗液を次に示す積層膜形成塗液10とした以外は、実施例29と同様にして転写箔用積層フィルムを得た。結果を表4に示した。帯電防止剤を塗布した側は、帯電防止性に劣るものであった。また、塗膜白化による積層フィルムのヘイズが大きいものであった
「積層膜形成塗液10」
塗液F1、塗液B1、および塗液E1を固形分重量比で、塗液F1/塗液B1/E1=60/40/3で混合したものを積層膜形成塗液10とした。
【0256】
比較例22
実施例29において、積層膜形成塗液を次に示す積層膜形成塗液11とした以外は、実施例29と同様にして転写箔用積層フィルムを得た。結果を表4に示した。帯電防止剤を塗布した側は、帯電防止性に劣るものであった
「積層膜形成塗液11」
塗液A2、塗液B1、および塗液E1を固形分重量比で、塗液A2/塗液B1/E1=8/92/3で混合したものを積層膜形成塗液11とした。
【0257】
比較例23
実施例29において、積層膜形成塗液を次に示す積層膜形成塗液12とした以外は、実施例29と同様にして転写箔用積層フィルムを得た。結果を表4に示した。帯電防止剤を塗布した側は、帯電防止性に劣るものであった。また、塗膜白化による積層フィルムのヘイズも大きいものであった
「積層膜形成塗液12」
塗液A2、塗液B1、および塗液E1を固形分重量比で、塗液A2/塗液B1/E1=95/5/3で混合したものを積層膜形成塗液12とした。
【0258】
比較例24
実施例29において、積層膜形成塗液を次に示す積層膜形成塗液13とした以外は、実施例29と同様にして転写箔用積層フィルムを得た。結果を表4に示した。帯電防止剤を塗布した側は、帯電防止性、非接着性に極めて劣るものであった。また、塗膜白化による積層フィルムのヘイズも大きいものであった
「積層膜形成塗液13」
塗液A2と塗液C2を固形分重量比で、塗液A2/塗液C2=60/40で混合したものを積層膜形成塗液13とした
・塗液C2:
下記の共重合組成からなるアクリル樹脂(ガラス転移温度:42℃)を粒子状に水に分散させた水性分散液(いわゆる、「ラテックス」状塗液、水溶率:1%以下)
・共重合成分
メチルメタクリレート 62モル%
エチルアクリレート 35モル%
アクリル酸 1モル%
N−メチロールアクリルアミド 2モル%
【0259】
【発明の効果】
本発明の積層フィルムは、湿度依存性によらず高いレベルの帯電防止性が発現し、透明性、耐水性、耐削れ性にも優れるため、各種用途の基材フィルムとして非常に有益なものである。例えば、磁気記録材料用、電気絶縁材料用、絶縁テープ用、電気材料用、光学用、グラフィック用、カード用、転写箔用、リボン用、蒸着用、包装用、コンデンサー用、各種テープ類など各種の基材フィルムとして広く利用できる。
【0260】
さらに、本発明のプロテクトフィルム用積層フィルムおよびプロテクトフィルムは、液晶テレビ、カーナビゲーション用ディスプレイ、携帯電話の液晶ディスプレイ、コンピューターディスプレイなどに用いられる偏光板などの加工、実装時における表面保護用に主に使用することができる。
【0261】
また、本発明のカバーテープ用積層フィルムは、カバーテープおよびキャリア包装体に用いることができる。
【0262】
さらに、本発明の転写箔用積層フィルムは、転写箔に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層フィルムの「海島構造」の代表的な模式図である。
【図2】本発明の積層フィルムの代表的な積層膜の断面の透過型電子顕微鏡観察写真(倍率:50万倍)である。
【符号の説明】
1 「島」部分
2 「海」部分
3 包埋樹脂層
4 積層膜
5 PETフィルム

Claims (23)

  1. 熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に、組成物(A)とエポキシ系架橋剤(B)を50重量%以上含有する積層膜が設けられ、組成物(A)が、ポリチオフェンとポリ陰イオンからなる組成物またはポリチオフェン誘導体とポリ陰イオンからなる組成物であり、かつ、該積層膜中にエポキシ系架橋剤(B)が25〜85重量%含まれ、かつ、該積層膜は組成物(A)中に架橋剤(B)が存在する海島構造を有する積層フィルム。
  2. 組成物(A)が、ポリチオフェンとポリ陰イオンからなる組成物、および、ポリチオフェン誘導体とポリ陰イオンからなる組成物からなる請求項1に記載の積層フィルム。
  3. エポキシ系架橋剤(B)が水溶性架橋剤である請求項1に記載の積層フィルム。
  4. 架橋剤(B)が、エポキシ系架橋剤である請求項1に記載の積層フィルム。
  5. 架橋剤(B)の分子量が1000以下である請求項1に記載の積層フィルム。
  6. 熱可塑性樹脂フィルムが、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムである請求項1に記載の積層フィルム。
  7. プロテクトフィルム用積層フィルムである請求項1に記載の積層フィルム。
  8. ヘイズが2%以下である請求項1に記載の積層フィルム。
  9. 150℃、30分後の熱収縮率が、−0.5%以上、1%以下である請求項1に記載の積層フィルム。
  10. 請求項1に記載の積層フィルムの少なくとも一方の面に、粘着層を設けたプロテクトフィルム。
  11. カバーテープ用である請求項1記載の積層フィルム。
  12. 請求項1に記載の積層フィルムの少なくとも一方の面に、厚みが0.5〜20μmのポリオレフィン系樹脂からなる層および/または粘着層を設けたカバーテープ。
  13. ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン樹脂であり、かつ、該ポリオレフィン系樹脂からなる層および/または粘着層表面の水との接触角が80〜110度である請求項12に記載のカバーテープ。
  14. 請求項1に記載の積層フィルムの少なくとも一方の面に、キャリアテープが積層されてなるキャリア包装体。
  15. 請求項1に記載の積層フィルムの少なくとも一方の面に、厚みが0.5〜20μmのポリオレフィン系樹脂からなる層および/または粘着層が設けられ、かつ、該ポリオレフィン系樹脂からなる層および/または粘着層にキャリアテープが積層されてなるキャリア包装体。
  16. 転写箔用積層フィルムである請求項1記載の積層フィルム。
  17. 積層膜中に、ワックス系化合物、長鎖アルキルアクリレート、フッ素アクリレート、シリコーン化合物、ポリオレフィン系化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物が含まれる請求項1に記載の積層フィルム。
  18. 熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に、組成物(A)およびエポキシ系架橋剤(B)を含む塗液を塗布し、乾燥、延伸した後、熱処理する積層フィルムの製造方法であって、組成物(A)が、ポリチオフェンとポリ陰イオンからなる組成物、または、ポリチオフェン誘導体とポリ陰イオンからなる組成物であり、塗液中にエポキシ系架橋剤(B)を25〜85重量%含有する積層フィルムの製造方法。
  19. エポキシ系架橋剤(B)が水溶性架橋剤である請求項18に記載の積層フィルムの製造方法。
  20. 熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に、組成物(A)およびエポキシ系架橋剤(B)を含む塗液を塗布し、乾燥、延伸した後、熱処理する積層フィルムの製造方法であって、組成物(A)が、ポリチオフェンとポリ陰イオンからなる組成物、または、ポリチオフェン誘導体とポリ陰イオンからなる組成物であり、塗液中にエポキシ系架橋剤(B)を25〜85重量%含有すプロテクトフィルム用積層フィルムの製造方法。
  21. 積層フィルムがカバーテープ用積層フイルムである請求項18記載の積層フィルムの製造方法。
  22. 積層フィルムが転写箔用積層フイルムである請求項18記載の積層フィルムの製造方法。
  23. 熱可塑性樹脂フィルムの一方の面に、組成物(A)およびエポキシ系架橋剤(B)を含む塗液を塗布し、かつ、反対面にポリエステル樹脂からなる塗液を塗布した後に、乾燥、延伸、および熱処理する積層フィルムの製造方法であって、組成物(A)が、ポリチオフェンとポリ陰イオンからなる組成物、または、ポリチオフェン誘導体とポリ陰イオンからなる組成物であり、塗液中にエポキシ系架橋剤(B)を25〜85重量%含有する転写箔用積層フィルムの製造方法。
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