JP3963036B2 - 電気回路基板の接続構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、2つの電気回路基板に形成された導体露出部を互いに密着接続する電気回路基板の接続構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
2枚のフレキシブルプリント基板(以下、FPCと呼ぶ)を電気的に接続する接続構造として、特開昭63−237045号公報に開示されたものが知られている。これは、所定の弾性部材を圧縮させ、その復元力によってFPCの導体パターン同士を対面密着させる、いわゆるゴム圧接方式を用いたものである。
図8は従来のゴム圧接方式の一例を示す断面図である。導体露出部1aを有する第1のFPC1と、導体露出部2aを有する第2のFPC2とを重ね合わせ、構造部材3に設けられた支柱3aおよびボス3cを両FPC1,2に貫通して位置決めし、その上に弾性部材40および押さえ部材5を重ねて支柱3aに嵌合し、ビス6で締め付ける。この締め付けにより弾性部材3が変形し、その復元力により導体露出部1aと2aとが密着接続される。ここで、支柱3aとこれに嵌合される弾性部材40の嵌合孔40aとの間にはガタが殆どない状態とされる。
【0003】
図9は上記導体露出部1a,2aに加わる圧接力の分布を示す。図において、縦軸は導体露出部に加わる圧接力を、横軸は支柱3aの中心を基準とした半径方向の距離をそれぞれ示している。図から分かるように、圧接力は弾性部材3の外側(r2〜r3)はほぼ均一であるが、内側(r1〜r3)では中心に近づくほど圧接力が高くなっている。これは、弾性部材40の嵌合孔40aと支柱3aとの間にガタが殆どないことが原因で起こる。すなわち、ビス6の締め付けによって弾性部材3が圧縮されて潰され、潰された部分は外側では外方に逃げることができるが、内側では第1のFPC1,支柱3aおよび押さえ部材5に囲まれて逃げ場がない。このため支柱3aの中心に近いほど圧接力が高くなるのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
以上から分かるように従来の接続方式では、支柱3aの中心側ほど圧接力が高くなるために、その反動で外側の圧接力レベルが低くなり、導通不良となり易い。この問題を解決するために、弾性部材40の嵌合孔40aの径を支柱3aの外径よりも十分大きくし、両者の間に隙間、つまり内側で潰された弾性部材40の逃げ場を設けることが考えられる。しかし、単に隙間を設けただけでは支柱3aと嵌合孔40aとが偏心した状態で締め付けられるおそれがあり、この場合には次のような問題が発生する。
(1)支柱3aに近い部分で高圧接力が発生する部位と、逆に圧接力が殆ど得られない部位とが生じ、導通不良の原因となる。
(2)第1,第2のFPC1,2の互いに対向する面には、導体露出部1a,2aを除く部分にカバーレイが被覆されているため、導体露出部1a,2aとその周辺部とに段差が生ずる(カバーレイ部分の方が高くなる)。一方、弾性部材40は導体露出部1a,2aのなるべく広い部分を覆う必要性からそれなりの外径寸法で形成されるが、支柱3aと弾性部材40の嵌合孔40aとが偏心すると弾性部材40がカバーレイ部分にかかってしまう。カバーレイ部分は導体露出部と比べて高さが高いから、ここに弾性部材3がかかると導体露出部の圧接力が不十分となり、やはり導通不良が発生するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、導体露出部に作用する圧接力を場所によらず均一にすることにより導通不良を確実に防止した電気回路基板の接続構造を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
一実施の形態を示す図1に対応づけて説明すると、本発明は、第1の導体露出部1aを有する第1の電気回路基板1と、第2の導体露出部2aを有し、第2の導体露出部2aが第1の導体露出部1aと対面接触するように第1の電気回路基板1に重ね合わされる第2の電気回路基板2と、第1および第2の電気回路基板1,2を貫通する支柱3aを有する接続補助部材3と、接続補助部材3との間に第1および第2の導体露出部1a,2aを挟み込むように支柱3aに嵌合される嵌合孔4aを有する弾性部材4と、弾性部材4を押圧変形せしめ、弾性部材4の復元力により両導体露出部1a,2aを密着接続せしめる押圧手段5,6とを備えた電気回路基板の接続構造に適用される。
押圧手段5,6による押圧前には、支柱3aに嵌合する嵌合孔4aの壁面が支柱3aの周面と部分的に接触し、接触しない部分においては壁面と周面との間に隙間Sが形成され、押圧時には、隙間Sが押圧変形された弾性部材4の逃げ場となるよう構成し、これにより上記問題点を解決する。
請求項2の発明は、嵌合孔4aの壁面に凸部4b〜4dを周方向に複数個形成し、これらの凸部4b〜4dが支柱3aの周面と当接し、凸部非形成部分と支柱周面との間に隙間S(図2,図3)が形成されるよう構成したものである。
請求項3の発明は、支柱13a(図5)の周面に凸部13b〜13dを周方向に複数個形成し、これらの凸部13b〜13dが嵌合孔14aの壁面と当接し、凸部非形成部分と嵌合孔壁面との間に隙間Sが形成されるよう構成したものである。
請求項4の発明は、凸部を少なくとも3箇所に形成したものである。
請求項5の発明は、嵌合孔24a(図7)の軸方向の一部分を支柱3aの周面と当接させ、嵌合孔壁面の軸方向の他の部分と支柱周面との間に隙間Sが形成されるよう嵌合孔壁面を形成したものである。
【0007】
なお、本発明の構成を説明する上記課題を解決するための手段の項では、本発明を分かり易くするために実施の形態の図を用いたが、これにより本発明が実施の形態に限定されるものではない。
【0008】
【発明の実施の形態】
−第1実施形態−
図1〜図4により本発明の第1実施形態を説明する。
本実施形態は2枚のFPC(フレキシブルプリント基板)を電気的に接続する例を示し、図1はその接続構造を示す分解斜視図、図2はその縦断面図である。各図において図8と同様の構成要素には同一の符号を付す。
電気回路を有する第1のFPC1には、位置決め孔1dおよび補助位置決め孔1cが形成されるとともに、図示裏面側には導体露出部1aが設けられている。導体露出部1aは位置決め孔1dの回りに放射状に形成された16個の導電性パターンから成る。また第1のFPC1の裏面には、導体露出部1aを除く部分にカバーレイ1bが被覆されている。
【0009】
第1のFPC1と電気的に接続される第2のFPC2には、第1のFPC1と同様の導体露出部2a,位置決め孔2dおよび補助位置決め孔2cが設けられるとともに、導体露出部2aを除く部分にカバーレイ2bが被覆されている。導体露出部1aと2aは、各16個の放射状パターンが互いに重なり合うように密着され、電気的導通が図られる。
【0010】
第1および第2のFPC1,2は、構造部材3,弾性部材4,押さえ部材5およびビス6を介して接続される。構造部材3は、FPC1,2の孔1d,2dを貫通する位置決め用の支柱3aと、支柱3aの回りに設けられた座3bと、補助位置決め孔1cおよび2cに嵌合されるボス3cとを有し、支柱3aにはねじ孔3dが形成されている。FPC1,2は支柱3aおよびボス3cの2箇所で位置決めされるため、導体露出部1a,2aが回転方向に位置ずれを生ずることはない。
【0011】
弾性部材4には、構造部材3の支柱3aに嵌合される嵌合孔4aが設けられ、嵌合孔4aの壁面には3つの凸部4b,4c,4dが略等角度間隔で形成されている。これら3つの凸部4b〜4dを設けたことにより、嵌合孔4aの壁面は支柱3aの周面と部分的に接触することになる。すなわち、支柱3aが嵌合孔4aに嵌合すると、図3に示すように3つの凸部4b〜4dの先端が支柱3aの周面に密着し、凸部非形成部分では嵌合孔4aの壁面と支柱3aの周面との間に所定間隔の隙間Sができる。押さえ部材5は弾性部材4を圧縮させる役割を果たすもので、支柱3aが嵌合する位置決め孔5aと、ボス3cが嵌合する補助位置決め孔5bとを有する。
【0012】
以上の構成において、FPC1および2を電気的に接続するには、まず構造部材3の支柱3aに孔2d,1d,4a,5aを嵌合させるとともに、ボス3cに孔2c,1c,5bを嵌合させることにより第1,第2のFPC1,2,弾性部材4および押さえ部材5を位置決めする。次いで孔2d,1d,4a,5aを介してビス6を支柱3aのねじ孔3dに螺合し締結する。この状態を示したのが図2である。ビス6の締め付けにより、押さえ部材5を介して弾性部材4が圧縮されて変形し、その復元力により第1,第2のFPC1,2の導体露出部1a,2aが密着接続される。上述したように、嵌合孔4aの凸部4b〜4d以外の箇所では支柱3aの周面と孔の壁面との間に隙間Sが設けられているので、圧接力によって潰された弾性部材4は、その内側部分が隙間Sに逃げ、外側部分は従来と同様に外方に逃げる。したがって、従来のように内側に過大な圧接力が作用することがなく、導体露出部1a,1bの各接続パターンに加わる圧接力は内側,外側を問わずほぼ均一となる。
【0013】
図4は導体露出部1a,2aに加わる圧接力の分布を示している。図において、縦軸は導体露出部1a,2aに加わる圧接力を、横軸は支柱3aの中心を基準とした半径方向の距離をそれぞれ示し、太実線は本実施の形態における分布を、二点鎖線は図9で説明した従来技術における分布をそれぞれ示している。ビス6の締め付け力は同等であるものとする。
【0014】
図4から分かるように、本実施の形態における圧接力は位置とは無関係にほぼ均一であり、しかも圧接力のレベルは従来技術における平均的なレベルより高くなっている。これは、従来技術では支柱3aの壁面近傍における過密的な弾性部材4の圧縮により、r1からr3の範囲で局所的に圧接力が高くなり、その反動でr3からr2の範囲で逆に圧接力が低くなるためである。
【0015】
ここで、導体露出部1a,2aの圧接にあたっては、その導体パターンの最も面積が広い部分に高い圧接力を発生させるのが効果的である。したがって、本実施の形態や従来例のように外側ほど面積が広くなる放射状パターンでは、外側に高い圧接力を発生させる必要があるが、従来例では逆に外側の圧接力が低くなってしまっている。本実施の形態の方式では、圧接力の分布を均一化することにより外側の圧接力を従来と比べて高くできるので、確実な電気的接続が図れる。
【0016】
以上の実施形態の構成において、第1および第2のFPC1,2が第1および第2のの電気回路基板を、構造部材3が接続補助部材を、押さえ部材5およびビス6が押圧手段をそれぞれ構成する。
【0017】
−第2実施形態−
図5および図6は本発明の第2実施形態を示し、図1,図2と同様の構成要素には同一の符号を付してある。第1実施形態では弾性部材4の孔の係合部に凸部を形成したが、本実施形態は構造部材13の支柱13aに凸部13d,13e,13f(13fは不図示)を設けたものである。これらの凸部13d〜13fは支柱13aの周面に等角度間隔で設けられ、支柱13aに弾性部材14が嵌合されたとき、凸部13d〜13fが弾性部材14の嵌合孔14aの壁面に当接し、凸部非形成部分では嵌合孔14aの壁面と支柱壁面との間に所定間隔の隙間Sが形成される。この構成においても、ビス6の締結によって潰された弾性部材14の内側部分が隙間Sに逃げるので、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0018】
以上の第1および第2実施形態では凸部を3箇所に設けたが、その数は限定されない。ただし、弾性部材の嵌合孔と支柱との位置決めを確実に行い、両者の偏心を防止するには、最低でも3箇所に凸部を設けることが望ましい。また、凸部を嵌合孔あるいは支柱の軸方向全長に渡って形成したが、軸方向の一部に形成してもよい。
【0019】
−第3実施形態−
図7は本発明の第3実施形態の構成を示し、図1,図2と同様の構成要素には同一の符号を付してある。本実施形態では弾性部材24の嵌合孔24aの壁面にテーパー面を設け、軸方向の一部(上部)では嵌合孔24aの壁面が全周に渡って構造部材3の支柱3aに当接するが、下部では全周に渡って支柱3aとの間に隙間Sが形成されるようにしている。隙間Sの間隔は下部に至るほど大きくなる。本実施の形態においても、ビス6の締結によって潰された弾性部材24の内側部分が隙間Sに逃げるので、上述と同様の作用効果が得られる。
【0020】
なお、例えば第1実施形態と第3実施形態とを組み合わせた構成でもよい。すなわち、弾性部材の嵌合孔の上部に複数の凸部を設け、下部にテーパー面を形成することによって下部に至るほど隙間の間隔が大きくなるようにしてもよい。また、電気接続を行う2枚の基板をいずれもFPCとしたが、弾性部材による圧接力が互いに対面する2つの導体露出部に加わる構成であれば、一方がFPCで他方がリジット基板等の電気回路基板であってもよい。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、接続補助部材の支柱に嵌合された弾性部材の変形によって発生する圧接力(弾性部材の復元力)によって2つの電気回路基板の導体露出部を密着接続するものにおいて、弾性部材の嵌合孔の壁面が支柱周面と部分的に接触するようにしたので、非接触部分に変形した弾性部材の逃げ道を形成することができ、圧接力の局部集中が防止されて全体に渡って高い圧接力を確保できる。したがって、導体露出部同士の確実な接続が図れ、導通不良もなく信頼性の高い電気回路基板の接続構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電気回路基板の接続構造を示す分解斜視図。
【図2】図1の接続構造の断面図。
【図3】支柱3aと嵌合孔4aとの嵌合状態を示す平面図。
【図4】支柱の中心からの距離に対する圧接力の分布を示す図。
【図5】本発明の第2実施形態に係る電気回路基板の接続構造を示す分解斜視図。
【図6】図5の接続構造の断面図。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る電気回路基板の接続構造を示す断面図。
【図8】従来の接続構造を示す断面図。
【図9】図8の従来構造における支柱の中心からの距離に対する圧接力の分布を示す図。
【符号の説明】
1 第1のフレキシブルプリント基板(FPC)
1a,2a 導体露出部
2 第2のフレキシブルプリント基板(FPC)
3,13 構造部材
3a,13a 支柱
4,14,24 弾性部材
4a,14a,24a 嵌合孔
4b,4c,4d,13d,13e,13f 凸部
5 押さえ部材
6 ビス

Claims (5)

  1. 第1の導体露出部を有する第1の電気回路基板と、
    第2の導体露出部を有し、該第2の導体露出部が前記第1の導体露出部と対面接触するように前記第1の電気回路基板に重ね合わされる第2の電気回路基板と、
    前記第1および第2の電気回路基板を貫通する支柱を有する接続補助部材と、
    前記接続補助部材との間に前記第1および第2の導体露出部を挟み込むように前記支柱に嵌合される嵌合孔を有する弾性部材と、
    前記弾性部材を押圧変形せしめ、該弾性部材の復元力により前記両導体露出部を密着接続せしめる押圧手段とを備えた電気回路基板の接続構造において、
    前記押圧手段による押圧前には、前記支柱に嵌合する前記嵌合孔の壁面が前記支柱の周面と部分的に接触し、接触しない部分においては前記壁面と前記周面との間に隙間が形成され、押圧時には、前記隙間が前記押圧変形された弾性部材の逃げ場となるよう構成したことを特徴とする電気回路基板の接続構造。
  2. 前記嵌合孔の壁面に凸部を周方向に複数個形成し、これらの凸部が前記支柱の周面と当接し、凸部非形成部分と支柱周面との間に前記隙間が形成されるよう構成したことを特徴とする請求項1に記載の電気回路基板の接続構造。
  3. 前記支柱の周面に凸部を周方向に複数個形成し、これらの凸部が前記嵌合孔の壁面と当接し、凸部非形成部分と嵌合孔壁面との間に前記隙間が形成されるよう構成したことを特徴とする請求項1に記載の電気回路基板の接続構造。
  4. 前記凸部は少なくとも3箇所に形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の電気回路基板の接続構造。
  5. 前記嵌合孔壁面の軸方向の一部分が前記支柱の周面と当接し、嵌合孔壁面の軸方向の他の部分と前記支柱周面との間に前記隙間が形成されるよう前記嵌合孔壁面を形成したことを特徴とする請求項1に記載の電気回路基板の接続構造。
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