JP3943720B2 - 小麦または小麦粉の製麺適性の判定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は小麦または小麦粉の製麺適性の判定方法、前記の判定方法によって製麺適性に優れると判定された小麦を用いて製麺用の小麦粉を製造する方法、前記で製麺適性に優れると判定された麺類用小麦粉および該麺類用小麦粉を用いて得られる麺類、並びに前記の麺類用小麦粉を含有する穀粉組成物および該穀粉組成物を用いて得られる麺類に関する。
【0002】
【従来の技術】
小麦を栽培する際の気象条件、小麦の産地、品種、小麦粒のブレンド状態などによって、原料小麦(以下単に「小麦」という)が麺類の製造に適するものとなったり、または適さないものとなることは従来から広く知られている。
また、小麦を製粉して得られる小麦粉においても、小麦粉の製造に用いた小麦の品種(銘柄)、小麦粉の貯蔵期間や、貯蔵状態などに応じて、その製麺適性が種々変化することも良く知られている。
【0003】
小麦または小麦粉の製麺適性の判定法としては、従来、(1)小麦を製粉して得られる小麦粉または既に製粉されている小麦粉を用いて、麺類を実際に製造して製麺時の加工性の判定やそれにより得られる麺類の品質の官能試験などを行って小麦または小麦粉が麺類の製造に適しているか否かを判定する方法、(2)アミログラフ試験などで物性を試験して判定する方法などが知られている。
【0004】
しかしながら、上記(1)の従来法による場合は、麺類をいちいち製造して小麦や小麦粉の製麺適性を判定する必要があるために、経験を要し、労力と時間がかかるという欠点がある。また、上記(2)の従来法による場合は多量の試料を必要とし、しかも小麦または小麦粉の製麺適性を直接的に判定することができないという欠点がある。かかる点から、小麦または小麦粉の製麺適性を簡便・迅速に且つ正確に行うことのできる判定方法、および前記により判定された製麺適性に優れる麺類用小麦粉が求められてきた。
【0005】
また、麺類は生麺、半乾燥麺、乾麺、茹麺、蒸麺、冷凍麺、即席麺などの種々の形態で保存、流通、販売されている。前記した生麺のうちで、マイクロ波調理用生麺が消費者の簡便志向とも相俟って近年注目されるようになっている。すなわち、マイクロ波調理用生麺は、従来の生麺、半乾燥麺、乾麺などにおけるような多量の湯を沸かしそこに麺を入れて長時間茹であげるという手間がかからず、生の麺を容器に入れて少量の水や湯を注いで電子レンジなどのマイクロ波調理器で加熱調理するだけでそのまま簡単に喫食できるという長所があり、しかも従来の即席麺に比べて食感に優れていることから、その需要の伸びが期待されている。しかしながら、これまで開発された電子レンジ調理用生麺は、一般にその調理時間が3〜5分と長く、より短い調理時間を望む消費者の要望を十分に満たしておらず、そのため一層短い調理時間で、しかも食感および食味に優れる電子レンジ調理用生麺の開発が求められている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、製麺適性の判定のために麺類をわざわざ製造するという手間を要せずに、また小麦や小麦粉を化学解析する必要なしに、小麦または小麦粉の製麺適性を簡便・迅速に且つ正確に行うことのできる、小麦または小麦粉の製麺適性の判定方法を提供することである。
そして、本発明の目的は、上記した方法で小麦または小麦粉の製麺適性を判定し、その判定結果に基づいて、良好な作業性で製麺適性に優れる麺類用小麦粉を製造し得る方法を提供すること、製麺適性に優れる麺類用小麦粉を提供することおよび前記した麺類用小麦粉を用いて食感および食味に優れる麺類を提供することである。
さらに、本発明は、電子レンジなどのマイクロ波調理器によって従来よりも一層短い時間で簡単に調理でき、しかも食感および食味の点にも優れるマイクロ波調理用生麺、その製造法、それに適した小麦粉および穀粉組成物を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく本発明者らは色々検討を重ねてきた。その結果、小麦または小麦粉中に含まれる澱粉の示差走査熱量分析を行ってその熱的特性を解析したところ、該澱粉の示差走査熱量分析により得られる解析結果と、小麦または小麦粉の製麺適性との間に密接な相関関係があること、そのため小麦または小麦粉に含まれる澱粉の示差走査熱量分析を行うだけで、小麦または小麦粉の製麺適性を正確に判定できることを見出した。さらに、本発明者らは、小麦または小麦粉に含まれる澱粉の前記した示差走査熱量分析を澱粉に水を加えて行うと、その熱的特性を簡便に且つ正確に解析できることを見出した。
【0008】
また、本発明者らは、小麦または小麦粉に含まれる澱粉の示差走査熱量分析を行い、その解析結果が所定の条件を満たす澱粉を含む小麦を製粉してそれから得られる小麦粉を用いると、またはその解析結果が所定の条件を満たす澱粉を有する既に製粉されている小麦粉を用いると、食感および食味に優れる高品質の麺類を良好な作業性で円滑に製造できることを見出した。本発明者らが前記した判定方法により見出した製麺適性に優れる小麦粉は、生麺、半乾燥麺、乾麺、茹麺、蒸麺、冷凍麺、即席麺などの種々の形態の麺類に有効であり、しかもうどん、きしめん、そうめん、冷麦、中華麺類、パスタ類、日本そばなどの種々の麺類、およびワンタンの皮、ギョウザの皮などの麺皮類の製造において有効であることが判明した。
【0009】
さらに、本発明者らは、前記した判定法によって見い出した製麺適性に優れる小麦粉を用いて上記したマイクロ波調理用生麺を製造すると、これまで開発されたマイクロ波調理用生麺に比べて、より短いマイクロ波調理時間で食感および食味に優れるマイクロ波調理 用生麺が得られることを見出した。
さらに、本発明者らは、前記した判定法によって見い出した製麺適性に優れる小麦粉と共に澱粉を用いて麺類を製造すると、その加熱調理時間が一層短縮でき、しかも調理後の茹でのびが一層抑制されて食感および食味に一層優れる麺類が得られること、特に前記した小麦粉と澱粉の併用はマイクロ波調理用生麺を製造する際により顕著な効果を発揮することを見出し、それらの種々の知見に基づいて本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、小麦または小麦粉中に含まれる澱粉の示差走査熱量分析を行ってその熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)を測定し、その吸熱エネルギー(ΔH)が0.3J/乾物g以下である場合には小麦または小麦粉が製麺に適していると判定し、0.3J/乾物gを超える場合には製麺に適していないと判定することを特徴とする、小麦または小麦粉の製麺適性の判定方法である。そして、本発明では、上記した小麦または小麦粉の製麺適性の判定方法を、澱粉に水を加えて行うことをその好ましい態様として包含する。
【0011】
さらに、本発明は、小麦中に含まれる澱粉を加水下に示差走査熱量分析して、該澱粉の熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)が0.3J/乾物g以下である小麦を用いて製麺用の小麦粉を製造する方法、および該方法により得られた麺類用小麦粉である。
【0012】
また、本発明は、小麦粉中に含まれる澱粉を加水下に示差走査熱量分析して、該澱粉の熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)が0.3J/乾物g以下である麺類用小麦粉である。
上記した本発明の麺類用小麦粉では、前記吸熱エネルギー(ΔH)が、好ましくは澱粉の5重量倍以上の水を加えて示差走査熱量分析を行うことにより測定される。
【0013】
そして、本発明は、上記した製麺適性に優れる麺類用小麦粉および澱粉を含有することを特徴とする麺類用穀粉組成物である。
さらに、本発明は、上記した製麺適性に優れる小麦粉および澱粉を併用して麺類を製造する方法である。
上記した本発明の麺類用穀粉組成物および麺類の製造方法において、澱粉の好ましい配合量は、麺類の製造に用いる穀粉類の合計重量に基づいて3〜40重量%である。
また、上記した澱粉としては、澱粉が馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉およびトウモロコシ澱粉のうちの少なくとも1種が好ましく用いられる。
【0014】
上記した本発明の麺類用小麦粉、麺類用穀粉組成物および麺類の製造方法は、通常の生麺、マイクロ波調理用生麺、半乾燥麺、乾麺、茹麺、蒸麺、冷凍麺、即席麺などの製造に有効に用いられ、また麺類の種類では、うどん、きしめん、そうめん、冷麦、中華麺類、パスタ類、日本そばなどの製造に有効に用いられ、したがって本発明は、上記した本発明の麺類用小麦粉、麺類用穀粉組成物または麺類の製造方法を用いて得られる前記した麺類を本発明の範囲に包含する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明でいう「示差走査熱量分析」とは、入力補償タイプの示差走査熱量解析(DSC;Differential Scanning Calorimetry)および熱流束タイプの示差走査熱量解析(DTA;Differential Thermal Analysis )の両方を包含する示差走査熱量解析をいう。
本発明では、小麦または小麦粉中に含まれる澱粉(以下「小麦澱粉」という)の示差走査熱量分析を従来既知の示差走査熱量分析方法により行うことができ、例えば、「応用糖質科学」第41巻、第3号、第297〜303頁(1994)などに記載されている方法により行うことができる。
また、本発明では、示差走査熱量分析に用いる装置の種類などは特に制限されず、上記したDSCまたはDTAを行い得る装置であればいずれの装置を用いて行ってもよい。
【0016】
示差走査熱量分析では、通常、試料の熱変化開始温度(To)、熱変化ピーク温度(Tp)、熱変化終了温度(Tc)および吸熱エネルギー(ΔH)が測定できる。本発明では、小麦または小麦粉に含まれる小麦澱粉の前記した4つの物性の2つ以上を測定し、その測定結果と小麦または小麦粉の製麺適性との関係を調べて、製麺適性に優れる小麦または小麦粉を選び出すようにすればよい。
【0017】
特に、本発明では、後述するように、前記した4つの物性のうちで、小麦澱粉の熱変化開始温度(To)と吸熱エネルギー(ΔH)の2者を測定するだけで小麦または小麦粉の製麺適性を簡単に且つ迅速に判定することが可能であり、小麦または小麦粉中に含まれる小麦澱粉を加水下に示差走査熱量分析したときに、該小麦澱粉の熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)が0.3J/乾物g以下であるときには、そのような小麦澱粉を含む小麦または小麦粉は製麺適性に優れるものと判定される。
【0018】
本発明においては、小麦に含まれる小麦澱粉の示差走査熱量分析を行うに当たっては、小麦を粉砕して全粒粉を調製し、その全粒粉を小麦澱粉とその他の成分に分別して小麦澱粉を回収し、前記で回収した小麦澱粉を用いて示差走査熱量分析を行う方法が好ましく採用される。
また、本発明において、小麦粉に含まれる小麦澱粉の示差走査熱量分析に当たっては、小麦粉を小麦澱粉とその他の成分に分別し、それにより回収される小麦澱粉を用いて示差走査熱量分析を行う方法が好ましく採用される。
上記において、全粒粉または小麦粉から回収される、示差走査熱量分析用の小麦澱粉としては、粗蛋白含量が0.5重量%以下であり、且つ未脱脂のものが好ましく用いられる。脱脂した小麦澱粉の場合は80℃以上での吸熱ピークが現れなかったり、現れにくい場合が多い。
全粒粉または小麦粉から小麦澱粉を回収する方法は特に制限されず、粗蛋白含量が前記した0.5重量%以下である小麦澱粉が得られる回収方法であればいずれの方法を採用してもよく、例えば、ドウウオッシング法、プロテアーゼ消化法などを挙げることができる。また、得られた小麦澱粉を脱脂する必要はなく、未脱脂のままで示差走査熱量分析に用いる。
【0019】
ドウウオッシング法による場合は、例えば、次の小麦澱粉回収方法が好ましく採用される。すなわち、全粒粉または小麦粉に少量の水を加えて生地(ドウ)を調製し、この生地を水中に浸漬した後に水中で繰り返し揉んで生地中に含まれている小麦澱粉を澱粉乳として水中に洗い出し、その際に前記の洗い出し作業で分離してくる細胞膜、表皮などの繊維質成分、グルテンなどに残留している少量の小麦澱粉をも更に澱粉乳として再度洗い出し、それらの澱粉乳を一緒にして、それを遠心分離して小麦澱粉を沈殿させ、沈殿物の上層に灰褐色画分がある場合はそれを除き、白色画分からなる小麦澱粉を回収する方法などが好ましく採用される。前記で回収された小麦澱粉を、一般に、凍結乾燥、送風乾燥、減圧常温乾燥などの40℃以上の加熱を伴わない乾燥方法によって乾燥処理して、示差走査熱量分析用の試料として用いる。
【0020】
小麦または小麦粉から回収された小麦澱粉の示差走査熱量分析は、加水下に行うことが正確な示差走査熱量分析結果が得られる点から好ましい。より具体的には、乾燥した小麦澱粉100重量部に対して、水を500重量部以上加えて示差走査熱量分析を行うことが好ましく、700重量部以上加えて示差走査熱量分析を行うことがより好ましい。小麦澱粉100重量部に対する加水量が前記した500重量部よりも少ないと、熱変化ピークが鮮明に現れにくくなって、測定誤差が生じ易くなる場合がある。示差走査熱量分析の測定時に小麦澱粉に加えられる水としては、蒸留水または純水が正確な測定結果が得られる点から好ましく用いられる。
【0021】
本発明では、上記したように、小麦または小麦粉から分離された小麦澱粉の熱変化開始温度(To)および吸熱エネルギー(ΔH)を、示差走査熱量分析によって測定するだけで、小麦または小麦粉の製麺適性を正確に且つ迅速に判定することができる。前記した2つの測定値のうちで、吸熱エネルギー(ΔH)は、試料、測定機器、測定条件などによって、測定値にバラツキが生ずる場合があるので、同じ試料について、吸熱エネルギー(ΔH)の測定を好ましくは3回以上、より好ましくは5回以上行い、その平均値を採って小麦澱粉の吸熱エネルギー(ΔH)とし、その値に基づいて小麦または小麦粉の製麺適性を判定するのがよい。
【0022】
小麦または小麦粉から回収された小麦澱粉の示差走査熱量分析を加水下に行って、その熱変化開始温度(To)および吸熱エネルギー(ΔH)を測定したときに、該小麦澱粉の熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(△H)の測定値が0.3J/乾物g以下であるような小麦澱粉を含む小麦から得られる小麦粉、または既に製粉されている小麦粉を用いて麺類を製造すると、粘弾性および滑らかさに優れ、ソフトでモチモチまたはプリプリしていて、食感および食味に優れる麺類を得ることができる。
そして、製造する麺類がマイクロ波調理用生麺、特にマイクロ波調理用生中華麺類の場合には、従来のマイクロ波調理用生麺よりも短いマイクロ波調理時間で、前記した優れた食感および食味を有する調理麺を簡単に得ることができる。
【0023】
そのため、本発明による場合は、所定の小麦または小麦粉が製麺適性を有するものであ るか否かの判定を行うに当たっては、その小麦または小麦粉に含まれる小麦澱粉を加水下に示差走査熱量分析して、該小麦澱粉の熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)を測定し、その吸熱エネルギー(ΔH)の値が0.3J/乾物g以下である場合には、その小麦または小麦粉が製麺に適していると判定することができる。
一方、該小麦澱粉の熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)が0.3J/乾物gを超える場合には、その小麦または小麦粉は麺の製造に適していないものと判定することができる。
そして、製麺適性に優れると判定された小麦から得られる小麦粉または既に製粉されている小麦粉を選んで麺類の製造に用いることによって、製麺適性を判定するための試作用麺類を予め製造することなく、また小麦や小麦粉を化学解析する必要なしに、目的とする食感および食味に優れる麺類を良好な製麺時の作業性で簡単に且つ迅速に製造することができる。
【0024】
ここで、本明細書でいう、「小麦澱粉の示差走査熱量分析による熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)」とは以下の吸熱エネルギー(ΔH)を言う 。
すなわち、小麦または小麦粉に含まれる小麦澱粉を加水下に示差走査熱量分析すると、その熱変化ピークが、図1に例示するように、一般に、その熱変化開始温度(To)が80℃よりも低い低温部分と80℃以上である高温部分の2カ所で測定される。そのような2つの熱変化ピークのうちで、熱変化開始温度(To)が80℃以上の部分に位置する熱変化ピークの吸熱エネルギー(ΔH)(熱変化ピーク面積により求められる吸熱エネルギー)を意味する。なお、その際に、熱変化開始温度(To)は、図2に示すように、吸熱ピークの開始と終了時のベースラインを結んだ線と、熱量の減少時に傾きが最大になる点の接線との交点を求め、その交点における温度として求められる。
【0025】
本発明の方法によってその製麺適性を判定し、麺類の製造に適すると判定された小麦は、既知の方法によって製粉されて製麺用の小麦粉として用いられる。前記製粉により得られる小麦粉または既に製粉されている小麦粉を用いて麺類を製造する際の製麺方法は何ら制限されず、麺類の種類などに応じて、従来と同様にして製造することができる。
より具体的には、麺類の種類や製麺方法などに応じて、他の穀粉類を用いずに、小麦中に含まれる澱粉の熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)が上記した0.3J/乾物g以下である小麦を製粉して得られる小麦粉(以下これを「小麦粉a1 」ということがある)、および/または既に製粉されている小麦粉であって該小麦粉中に含まれる澱粉の熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)が0.3J/乾物g以下である澱粉を有する小麦粉(以下これを「小麦粉a2 」ということがある)のみを穀粉類として用いて麺類を製造することができる。
さらに、本発明では、前記した小麦粉a1 および/または小麦粉a2 と共に他の穀粉類を併用して麺類を製造してもよい。
【0026】
他の穀粉類を併用する場合は、該他の穀粉類として、麺類の製造に従来から用いられている穀粉類を用いることができ、例えば、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、トウモロコシ澱粉、米澱粉、小麦澱粉、大麦澱粉、甘薯澱粉、キャッサバ澱粉などの澱粉類、前記した澱粉を加工してなる化工澱粉、小麦粉a1 および小麦粉a2 以外の小麦粉、デュラム小麦粉、そば粉、米粉、大麦粉、ライ麦粉、トウモロコシ粉、馬鈴薯粉、甘薯粉、里芋粉などを挙げることができ、これらの他の穀粉類の1種または2種以上を併用することができる。
そのうちでも、小麦粉a1 および/または小麦粉a2 と共に他の穀粉類を併用する場合は、澱粉類が好ましく用いられ、特に馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉およびトウモロコシ澱粉のうちの1種または2種以上がより好ましく用いられる。
他の穀粉類を併用する場合は、その使用量を、麺類の製造に用いる穀粉類の合計重量に基づいて、40重量%以下にすることが好ましく、25重量%以下にすることがより好ましい。
【0027】
特に、小麦粉a1 および/または小麦粉a2 と共に澱粉(とりわけ馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、トウモロコシ澱粉およびそれらの化工澱粉のうちの1種または2種以上)を併用してマイクロ波調理用生麺、特にマイクロ波調理用中華麺類を製造すると、マイクロ波調理時間が一層短縮でき、しかも調理後の麺は食感および食味が一層良好で、茹でのびが少なく高い品質を保つ。その場合の澱粉の使用量は、マイクロ波調理用生麺の製造に用いる穀 粉類の合計重量に基づいて3〜40重量%であることが好ましく、7〜25重量%であることがより好ましい。
【0028】
小麦粉a1 および/または小麦粉a2 と共に澱粉などのその他の穀粉類を併用して麺類を製造するに当たっては、小麦粉a1 および/または小麦粉a2 に他の穀粉類を製麺時に加えても、或いは小麦粉a1 および/または小麦粉a2 に他の穀粉類を予め配合して麺類用穀粉組成物を調製しておき、その麺類用穀粉組成物を用いて麺類を製造してもよい。前記麺類用穀粉組成物は長期保存が可能であり、麺類用穀粉組成物(麺類用ミックス粉)として、それ自体で流通、販売することができる。そして、この麺類用穀粉組成物を用いる場合は、製麺時に小麦粉a1 および/または小麦粉a2 に他の穀粉類を配合する手間を要することなく、目的とする高品質の麺類を簡単に且つ円滑に製造することができる。
【0029】
また、本発明では、麺類の種類などに応じて、必要に応じて、麺類の製造に従来から用いられている種々の添加剤、例えば、食塩、かん水、卵白(粉)、全卵(粉)、卵黄(粉)、小麦グルテン、小麦グリアジン、小麦グルテニン、乳清蛋白質などの蛋白質類、コンニャク粉、アルギン酸、グアーガム、カラギーナン、カードラン、サイリュームシードガムなどのガム類およびゲル化剤、卵殻粉、牡蛎殻粉などのカルシウム類、界面活性剤、山芋粉、海草粉末、アミノ酸、ビタミン類、ミネラル類の1種または2種以上を更に用いてもよい。
【0030】
【実施例】
以下に実施例などにより本発明について具体的に説明するが、本発明はそれにより何ら限定されない。以下の例において、特に断らない限りは、%は重量%を示す。
また、以下の例において、示差走査熱量分析の判定に用いた、凍結乾燥後の小麦澱粉(乾物)の水分含量は、次のようにして求めた。
【0031】
[小麦澱粉の水分含量(%)]
135℃で2時間乾燥処理した後の小麦澱粉の水分含量を0%として、以下の数式▲1▼にしたがって、小麦澱粉の水分含量(%)を求め、その水分含量を元に澱粉の乾物量を求めた
【0032】
【数1】
小麦澱粉の水分含量(%)={(W1−W2)/W1}×100 ▲1▼
式中、W1=135℃で2時間乾燥処理する前の小麦澱粉の重量(g)
W2=135℃で2時間乾燥処理した後の小麦澱粉の重量(g)
【0033】
また、以下の例において、示差走査熱量分析の判定に用いた小麦澱粉の粗蛋白含量は次のようにして求めた。
[小麦澱粉の粗蛋白含量]
小麦澱粉(乾物)1gを専用のガラス試験管に精秤し、濃硫酸15mlおよび触媒(日本ゼネラル株式会社製「KJELTAB KBC」)1錠(5g)を加え、予め420℃に加温しておいた分解処理装置(日本ゼネラル株式会社製「2020 Digestor」)に装着し、同温度で1時間加熱分解した。分解終了後、試験管を前記分解処理装置から取り外し、室温程度まで放冷後、蒸留水75mlを加えた。それにより得られた分解物 を自動解析装置(日本ゼネラル株式会社製「KJELTEC AUTO 1030 Analyer」)に装着し、水蒸気蒸留および滴定を自動的に行って、下記の数式▲2▼により、小麦澱粉中の粗蛋白含量を算出した。
【0034】
【数2】
小麦澱粉の粗蛋白含量(%)={0. 798×(T1−T2)×F/S} ▲2▼[式中、T1 =小麦澱粉の分解物の滴定値(ml) 、T2 =蒸留水の滴定値(ml)、F=滴定に用いた1/10N硫酸のファクター、S=小麦澱粉試料(乾物)の秤量(g)を示す。]
【0035】
《実施例1》[小麦の製麺適性の判定(うどんの製造)]
(1)小麦の準備および小麦澱粉の調製:
試験区1〜6として、軟質系国内産小麦4銘柄および軟質系外国産小麦2銘柄の合計6銘柄の小麦を準備した。各銘柄の小麦を用いて、示差走査熱量分析を行うための小麦澱粉を以下のようにして調製した。
【0036】
[小麦澱粉の調製]
(i) 小麦50gをコーヒーミルで十分に粉砕し、それにより得られる全粒粉30gに水21mlを加え、サジを用いて十分に混練して生地を調製した。その生地を水200ml中に30分間浸漬した後、水中で生地を繰り返して揉んで澱粉を洗い出した。
(ii) 上記(i)で得られた懸濁液を100メッシュの篩で濾別して、表皮およびグルテンを分離して、澱粉を澱粉乳として回収した。篩上の残渣とグルテンを合わせ、これに100mlの水を加えて前記と同様にして良く揉んで澱粉を澱粉乳として洗い出し、それを前記で回収した澱粉乳と合わせて、遠心分離(3000G、20分間)を行い、上澄液を除去して、沈殿を回収した。
(iii) 上記(ii)で得られた沈殿に水50mlを加えて再度懸濁させた後に、前記と同じ条件下に遠心分離し、上澄液を除去し、沈殿物から上層の灰褐色画分をサジで除き、下層の白色の小麦澱粉画分を回収した。これを凍結乾燥した後、乳鉢で粉砕して、100メッシュスルーの粒度にし、それにより得られた小麦澱粉を示差走査熱量分析用の試料とした。
【0037】
(2)小麦澱粉の示差走査熱量分析(DSC):
上記(1)で得られた小麦澱粉を用いて、以下の(A)〜(C)の工程に従って、示差走査熱量分析を行った。
(A)試料の調製:
(i)密閉型試料容器に小麦澱粉(乾物)5±0.2mgを精秤する。
(ii)脱気した蒸留水43±0.5mgを上記(i)で精秤した小麦澱粉に加え、緩くかき混ぜて小麦澱粉に水を浸透させる。
(iii)蓋を載せた密閉型試料容器をシーラーの試料台中央のダイス受けの上に置く。
(iv)圧力ハンドルを時計回りに回して、ダイス先端から圧力棒が出るようにする。
(v)サンプル・シーラーバーを反時計回りに回し、試料容器の蓋が容器の縁より0.3〜0.5mm程度内部に入るように圧入する。
(vi)レバーを時計方向に一回転程度戻し、圧力ハンドルを反時計回りに空回りするまで回し、圧力棒を上に上げる。
(vii)レバーを再び反時計方向に回し、試料容器を堅く締めた後、試料容器を取り出す。(このようにして調製した試料は、室温下で1時間放置後、示差走査熱量分析に供する。)
(viii)対照として、密閉型試料容器に等量の脱気した蒸留水のみを加え、上記の(iii)〜(vii)と同様にして密閉して蓋をする。
【0038】
(B)試料の設置:
(i)示差走査熱量分析装置(セイコー電子工業株式会社製「DSC120」)におけるファーナスカバー、SUS蓋、ヒートシンク外蓋、ヒートシンク蓋を順に取り出す。
(ii)手前のホルダーに上記(A)の(vii)で調製した試料を入れた容器を載せ、後方のホルダーに上記(A)の(viii)で準備した対照容器を載せる。
(iii)ヒートシンク蓋、ヒートシンク外蓋、SUS蓋およびファーナスカバーの順にかぶせる。
【0039】
(C)分析:
(i)TAステーションおよびDSCモジュール(セイコー電子工業株式会社製)の電源を入れ、以下に示す温度プログラム、サンプル情報、サンプリングタイム、エンドジョブを設定する。
(ii)温度プログラムを入力する(開始温度25℃、保持時間3分間、終了温度140℃、保持時間5分間、昇温速度4℃/分)。
(iii)サンプル情報は、試料名、試料重量(乾物重量)、対照名、対照物重量(mg)を入力する。
(iv)サンプリング時間は0.5秒に設定する。
(v)エンドジョブを入力する。
(vi)示差走査熱量分析装置のチャンネルのZEROキー、RUNキーを順に押し、測定を開始する。
(vii)熱変化開始温度(To)と吸熱エネルギー(ΔH)の分析を行う。
【0040】
その結果、各試験区(6銘柄)の小麦に含まれていた小麦澱粉の、示差走査熱量分析による熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)は、下記の表3に示すとおりであった。
【0041】
(3)各銘柄の小麦からの小麦粉の製造(製粉):
各銘柄の小麦を、ビューラーテストミルを用いて挽砕し、下記の製粉方法にしたがって、歩留り60%の6種類の小麦粉を得た。
【0042】
[小麦粉の製造方法(製粉)]
(i)小麦の調質:
原料小麦をビニール袋に秤り取り、水分含量が14.0%になるように加水し、水分が良く分散するように振り混ぜ、水分が飛ばないようにビニール袋の口を固く縛り、恒温槽(約30℃)中に23時間放置した。23時間後に、水分含量が14.5%になるように更に加水し、水分が良く分散するように振り混ぜ、ビニール袋の口を固く縛り、恒温槽(約30℃)中に30分間放置した。
【0043】
(ii)挽砕:
上記(i)で調質を終了した小麦を、25℃に温度調整した室内に置いた挽砕機(ビューラー社製「Buhler Laboratory Flour Mill 」)のホッパーに投入し、66.7g/分の供給量で挽砕した。挽砕機におけるロール間隙は、ブレーキロール左側0.1mm、ブレーキロール右側0.08mm、ミドリングロール左側0.06mm、ミドリングロール右側0.03mmに調整した。挽砕時のストック区分は、下記の表1に示す1B〜3Mの6種類のストック区分と、大表皮区分および小表皮区分とした。
【0044】
【表1】
【0045】
(iii)挽砕物の処理(歩留り60%小麦粉の調製):
上記(ii)で挽砕を終了後、各ストック区分1B、2B、3B、1M、2M、3Mと大表皮区分および小表皮区分に集まったストックをそれぞれ計量して、合計出量(合計重量)(Wt)(g)を求めた。次に、1B区分と1M区分と混合してAとし、2Bと2Mを混合してBとし、3Bと3Mを混合してCとした。
合計出量(Wt)の60%の値(0.6Wt)(g)を予め算出しておき、Aのみで前記の値0.6Wt(g)を満たす場合はAのみから歩留り60%の小麦粉を調製した。Aのみでは0.6Wt(g)に満たない場合は足りない分だけBで補って歩留り60%の小麦粉を調製した。また、AおよびBの合計では0.6Wt(g)に満たない場合は足りない分だけCで補って歩留り60%の小麦粉を調製した。
【0046】
(4)うどんの製造:
(i) 上記(3)の(iii)で得られた、歩留り60%小麦粉1000gに、食塩30gおよび水350g(食塩は水に予め溶解させておく)を加えて、12分間混合してそぼろ状の生地にした。
(ii) 上記(i)で得た生地を製麺ロールにてロール間隙3.6mmで麺帯にまとめ、室温下(約20℃)にビニール袋中で30分間熟成させた。熟成後、この麺帯をさらに製麺ロールにて圧延して約2.5mm厚の麺帯にした後、No.10の角切刃を用いて麺線に切り出して生うどんを製造した。
【0047】
(iii) 上記(ii)で得られた生うどん100gづつを、直ちに、充分量の沸騰水(pH5〜6に調整)中にて茹で歩留りが310±2%になるように茹で時間を調節しながら茹であげた後、直ちに冷水中で水洗し、ざるに上げて水を切った。
なお、麺の茹で歩留りは、下記の数式▲3▼により算出した。
【0048】
【数3】
茹で歩留り(%)=(A/B)×100 ▲3▼
式中、A=生麺100gを茹であげて水切りした後の茹で麺の重量(g)
B=茹であげ前の生麺100g中の穀粉類の重量(g)
(但し、生麺の製造に用いた穀粉中の水分含量が14%であるものとしてBの値を求めた。)
【0049】
(iv) 上記(iii)で得られた茹で麺の品質を下記の表2に示す評価基準にしたがって10名のパネラーにより点数評価してもらい、その平均値を算出したところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0050】
(v) また、上記(iii)とは別に、上記(ii)で得られた生うどん各200gずつを沸騰水(pH調整剤にてpH5〜6に調整)中に入れて、茹で歩留りが280±2%になるように茹で時間を調節しながら茹であげた後、水洗氷冷し、その約200gずつを専用のトレイに盛り付けて−30℃に急速冷凍した。それにより得られた冷凍麺を、乾燥を防ぐためにビニール袋に入れて密封した後、−20℃で1週間冷凍保存した。
(vi) 1週間冷凍保存後に冷凍麺を冷凍庫より取り出して、十分量の沸騰水中に入れて1分間煮沸解凍し、解凍後直ちに冷水中で水洗して水を切り、解凍した麺の品質を下記の表2に示す評価基準にしたがって10名のパネラーにより点数評価してもらい、その平均値を算出したところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
(5)小麦の製麺適性の判定:
上記の表3の結果から、小麦中に含まれる小麦澱粉の示差走査熱量分析による結果と製麺適性との間には強い相関関係があること、特に、小麦中に含まれる小麦澱粉を示差走査熱量分析したときに、その熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)が0.3J/乾物g以下である試験区4、5および6の小麦は良好な製麺適性を有しており、該試験区4、5および6の小麦を製粉して得られる小麦粉を用いてうどんを製造すると、生麺を茹であげて得られる茹でうどん、および茹であげた麺を冷凍してなる冷凍うどんのいずれの場合も、粘弾性が強く、ソフトでモチモチしており、滑らかで、食感に極めて優れたものとなることがわかる。
【0054】
《実施例2》[小麦の製麺適性の判定(ラーメンの製造)]
(1) 試験区7〜10として、硬質系外国産小麦4銘柄を準備し、各銘柄の小麦を用いて、実施例1の(1)と同様にして小麦澱粉を調製した。
(2) 上記(1)で得られた小麦澱粉を用いて、実施例1の(2)と同様にして示差走査熱量分析を行って、その熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)を求めたところ、下記の表6に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた小麦澱粉の粗蛋白含量を実施例1と同様にして測定したところ、下記の表6に示すとおりであった。
【0055】
(3) 上記(1)で準備した各銘柄の小麦を、ビューラーテストミルを用いて挽砕し、下記の製粉方法にしたがって、歩留り60%の4種類の小麦粉を得た。 [小麦粉の製造方法(製粉)]
(i)小麦の調質:
原料小麦をビニール袋に秤取り、水分含量が15.0%になるように加水し、水分が良く分散するように振り混ぜ、水分が飛ばないようにビニール袋の口を固く縛り、恒温槽(約30℃)中に23時間放置した。23時間後に、水分含量が15.5%になるように更に加水し、水分が良く分散するように振り混ぜ、ビニール袋の口を固く縛り、恒温槽(約30℃)中に30分間放置した。
(ii)挽砕:
上記(i)で調質を終了した小麦を、25℃に温度調整した室内に置いた挽砕機(ビューラー社製「Buhler Laboratory Flour Mill 」)のホッパーに投入し、66.7g/分の供給量で挽砕した。挽砕機におけるロール間隙は、ブレーキロール左側0.1mm、ブレーキロール右側0.08mm、ミドリングロール左側0.05mm、ミドリングロール右側0.02mmに調整した。
挽砕時のストック区分は、下記の表4に示す1B〜3Mの6種類のストック区分と、大表皮区分および小表皮区分とした。
【0056】
【表4】
【0057】
(iii)挽砕物の処理(歩留り60%小麦粉の調製):
上記(ii)で挽砕を終了後、各ストック区分1B、2B、3B、1M、2M、3Mと大表皮区分および小表皮区分に集まったストックをそれぞれ計量して、合計出量(合計重量)(Wt)(g)を求めた。次に、1B区分と1M区分と混合してAとし、2Bと2Mを混合してBとし、3Bと3Mを混合してCとした。合計出量(Wt)の60%の値(0.6Wt)(g)を予め算出しておき、Aのみで前記の値0.6Wt(g)を満たす場合はAのみから歩留り60%の小麦粉を調製した。Aのみでは0.6Wt(g)に満たない場合は足りない分だけBで補って歩留り60%の小麦粉を調製した。また、AおよびBの合計では0.6Wt(g)に満たない場合は足りない分だけCで補って歩留り60%の小麦粉を調製した。
【0058】
(4)ラーメンの製造:
(i) 上記(3)の(iii)で得られた、歩留り60%小麦粉1000gに、かん粉(オリエンタル酵母工業株式会社製)12gを溶解した水330gを加えて、12分間混合してそぼろ状の生地にした。
(ii) 上記(i)で得た生地を製麺ロールにてロール間隙3.0mmで麺帯にまとめ、室温下(約20℃)にビニール袋中で30分間熟成させた。熟成後、この麺帯をさらに製麺ロールにて圧延して約1.5mm厚の麺帯にした後、No.20の角切刃を用いて麺線に切り出し、それをビニール袋に入れて室温下(約20℃)に一晩放置して、生ラーメンを製造した。
【0059】
(iii) 上記(ii)で得られた生ラーメンを、直ちに、充分量の沸騰水中にて茹で歩留りが240±2%になるように茹で時間を調節しながら茹であげた後、熱いスープの入ったドンブリに入れて、その品質を下記の表5に示す評価基準にしたがって10名のパネラーにより点数評価してもらい、その平均値を算出したところ、下記の表6に示すとおりであった。なお、上記の茹で歩留りは、上記の数式▲3▼により算出した。
【0060】
(iv) また、上記(iii)とは別に、上記(ii)で得られた生中華麺各200gずつを沸騰水中に入れて、茹で歩留りが220±2%になるように茹で時間を調節しながら茹であげた後、水洗氷冷し、その約200gずつを専用のトレイに盛り付けて−30℃に急速冷凍した。それにより得られた冷凍麺を、乾燥を防ぐためにビニール袋に入れて密封した後、−20℃で1週間冷凍保存した。
(v) 1週間冷凍保存後に冷凍麺を冷凍庫より取り出して、十分量の沸騰水中に入れて1分間煮沸解凍し、解凍後直ちに熱いスープの入ったドンブリに入れて、その品質を下記の表5に示す評価基準にしたがって10名のパネラーにより点数評価してもらい、その平均値を算出したところ、下記の表6に示すとおりであった。なお、上記の茹で歩留りは、上記の数式▲3▼により算出した。
【0061】
【表5】
【0062】
【表6】
【0063】
(5)小麦の製麺適性の判定:
上記の表6の結果から、小麦に含まれる小麦澱粉の示差走査熱量分析による結果と製麺適性との間には強い相関関係があること、特に、小麦中に含まれる小麦澱粉を示差走査熱量分析したときに、熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)が0.3J/乾物g以下である試験区10の小麦は良好な製麺適性を有しており、試験区10の小麦を製粉して得られる小麦粉を用いてラーメンを製造すると、生麺を茹であげて得られる茹でラーメン、および茹であげたラーメンを冷凍してなる冷凍ラーメンのいずれもが、粘弾性が強く、プリプリしており、滑らかで、食感に極めて優れたものとなることがわかる。
【0064】
《実施例3》[小麦の製麺適性の判定(マイクロ波調理用生ラーメンの製造)] (1) 試験区11〜16として、軟質系国内産小麦4銘柄および軟質系外国産商業小麦2銘柄の合計6銘柄の小麦を準備し、各銘柄の小麦を用いて、実施例1の(1)と同様にして小麦澱粉を調製した。
(2) 上記(1)で得られた小麦澱粉を用いて、実施例1の(2)と同様にして示差走査熱量分析を行って、その熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)を求めたところ、下記の表8に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた小麦澱粉の粗蛋白含量を実施例1と同様にして測定したところ、下記の表8に示すとおりであった。
(3) 上記(1)で準備した6銘柄の小麦を用いて、実施例1の(3)と同様にして製粉を行って、歩留り60%の小麦粉を調製した。
【0065】
(4)ラーメンの製造:
(i) 上記(3)で得られた、歩留り60%小麦粉1000gに、かん粉(オリエンタル酵母工業株式会社製)10gを溶解した水350gを加えて、横型減圧下ミキサーを用いて、減圧下(−600mmHg)にて10分間混合してそぼろ状の生地にした。
(ii) 上記(i)で得た生地を製麺ロールにてロール間隙3.2mmで麺帯にまとめ、2つに折り畳んで、さらに同じロール間隙で2回合わせを行った後、室温下(約20℃)にビニール袋中で30分間熟成させた。熟成後、この麺帯をさらに製麺ロールにて圧延して約1.4mm厚の麺帯にした後、No.20の角切刃を用いて麺線に切り出してマイクロ波調理用生ラーメンを製造した。この生ラーメンを100gづつビニール袋に入れて、口をシールして室温下(約20℃)に一晩放置した。
【0066】
(iii) 翌日、上記(ii)で得られた生ラーメンを、耐熱容器に移し、熱湯(95℃前後)を300g注ぎ、容器の口を開放してマイクロ波調理器具[(株)東芝製「ER−CS型電子レンジ」:650W]にて1〜2分調理した。調理後、直ちに濃縮スープを加えて、麺の品質を下記の表7に示す評価基準にしたがって10名のパネラーにより点数評価してもらい、その平均値を算出したところ、下記の表8に示すとおりであった。
【0067】
【表7】
【0068】
【表8】
【0069】
(5)小麦の製麺適性の判定:
上記の表8の結果から、小麦に含まれる小麦澱粉の示差走査熱量分析による結果と製麺適性との間には強い相関関係があること、特に、小麦中に含まれる小麦澱粉を示差走査熱量分析したときに、熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)が0.3J/乾物g以下である試験区14〜16の小麦は良好な製麺適性を有しており、試験区14〜16の小麦を製粉して得られる小麦粉を用いてマイクロ波調理用生ラーメンを製造すると、60〜120秒(1〜2分)の短時間の調理(電子レンジ加熱)により可食状態になり、特に90〜120秒(1.5〜2分)の短い調理時間で滑らかさおよび粘弾性に優れる調理ラーメンとなることがわかる。
それに対して、小麦中に含まれる小麦澱粉を示差走査熱量分析したときに、熱変化開始温度(To)80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)が0.3J/乾物gよりも大きい試験区11〜13の小麦から得られる小麦粉を用いて製造したマイクロ波調理用生ラーメンは、90秒の調理時間(電子レンジ加熱時間)では可食状態にならず、100秒以上の調理時間でようやく可食状態になり、しか120秒の加熱後もその食感は普通であることがわかる。
【0070】
《実施例4》[小麦の製麺適性の判定(マイクロ波調理用生ラーメンの製造)] (1) 試験区17〜20として、硬質系外国産小麦4銘柄を準備し、各銘柄の小麦を用いて、実施例1の(1)と同様にして小麦澱粉を調製した。
(2) 上記(1)で得られた小麦澱粉を用いて、実施例1の(2)と同様にして示差走査熱量分析を行って、その熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)を求めたところ、下記の表10に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた小麦澱粉の粗蛋白含量を実施例1と同様にして測定したところ、下記の表10に示すとおりであった。
(3) 上記(1)で準備した4銘柄の小麦を用いて、実施例2の(3)の(i)と同様にして調質した後、25℃に温度調整した室内に置いた挽砕機(ビューラー社製「Buhler Laboratory Flour Mill 」)のホッパーに投入し、66.7g/分の供給量で挽砕した。挽砕機におけるロール間隙は、ブレーキロール左側0.1mm、ブレーキロール右側0.08mm、ミドリングロール左側0.06mm、ミドリングロール右側0.03mmに調整した。
挽砕時のストック区分は、下記の表9に示す1B〜3Mの6種類のストック区分と、大表皮区分および小表皮区分とした。
【0071】
【表9】
【0072】
(4) 上記(3)で得られた挽砕物を実施例1におけるのと同様に処理して歩留り60%の小麦粉を調製した。
(5)(i) 上記(4) で得られた歩留り60%小麦粉を用いて実施例3の( 4) と同様にしてマイクロ波調理用用生ラーメンを製造した。この生ラーメンを100gづつビニール袋に入れて、口をシールして室温下(約20℃)に一晩放置した。
(ii) 翌日、上記(i)で得られた生ラーメンを、耐熱容器に移し、熱湯(95℃前後)を300g注ぎ、容器の口を開放してマイクロ波調理器具[(株)東芝製「ER−CS型電子レンジ」:650W]にて1〜2分調理した。調理後、直ちに濃縮スープを加えて、麺の品質を上記の表7に示す評価基準にしたがって10名のパネラーにより点数評価してもらい、その平均値を算出したところ、下記の表10に示すとおりであった。
【0073】
【表10】
【0074】
(6)小麦の製麺適性の判定:
上記の表10の結果から、小麦に含まれる小麦澱粉の示差走査熱量分析による結果と製麺適性との間には強い相関関係があること、特に、小麦中に含まれる小麦澱粉を示差走査熱量分析したときに、熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)が0.3J/乾物g以下である試験区20の小麦は良好な製麺適性を有しており、試験区20の小麦を製粉して得られる小麦粉を用いてマイクロ波調理用生ラーメンを製造すると、60〜120秒(1〜2分)の短時間の調理(電子レンジ加熱)により可食状態になり、特に90〜120秒(1.5〜2分)の短い調理時間で滑らかさおよび粘弾性に優れるラーメンに調理できることがわかる。
それに対して、小麦中に含まれる小麦澱粉を示差走査熱量分析したときに、熱変化開始温度(To)80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)が0.3J/乾物gよりも大きい試験区17〜19の小麦から得られる小麦粉を用いて製造したマイクロ波調理用生ラーメンは、90秒の調理時間(電子レンジ加熱時間)では可食状態にならず、100秒以上の調理時間でようやく可食状態になり、しかも120秒の加熱後もその食感は普通であることがわかる。
【0075】
《実施例5》[小麦粉の製麺適性の判定(うどんの製造)]
(1) 試験区21〜24として小麦粉4種類を準備した。これらの小麦粉の粗蛋白含量(乾物換算)を上記した方法で測定したところ、いずれも9.8〜9.9%の範囲であった。また、小麦を粉砕した全粒粉の代わりにこの試験区21〜24の小麦粉を用いた以外は実施例1の(1)と同様にして小麦澱粉を調製した。
(2) 上記(1)で得られた小麦澱粉を用いて、実施例1の(2)と同様にして示差走査熱量分析を行って、その熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)を求めたところ、下記の表11に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた小麦澱粉の粗蛋白含量を実施例1と同様にして測定したところ、下記の表11に示すとおりであった。
【0076】
(3) この試験区21〜24の小麦粉の各々を用いて、実施例1の(4)と同様にして、生うどんを製造した後に茹であげて、その品質を上記の表2に示す評価基準にしたがって10名のパネラーにより点数評価してもらい、その平均値を算出したところ、下記の表11に示すとおりであった。
(4) また、上記(3) とは別に、この試験区21〜24の小麦粉の各々を用いて実施例1の(4) と同様にして生うどんを製造した後、生うどん各200gずつを沸騰水(pH調整剤にてpH5〜6に調整)中に入れて、茹で歩留りが280±2%になるように茹で時間を調節しながら茹であげた後、水洗氷冷し、その約200gずつを専用のトレイに盛り付けて−30℃に急速冷凍した。それにより得られた冷凍麺を、乾燥を防ぐためにビニール袋に入れて密封した後、−20℃で1週間冷凍保存した。1週間冷凍保存後に冷凍麺を冷凍庫より取り出して、十分量の沸騰水中に入れて1分間煮沸解凍し、解凍後直ちに冷水中で水洗して水を切り、解凍した麺の品質を上記の表2に示す評価基準にしたがって10名のパネラーにより点数評価してもらい、その平均値を算出したところ、下記の表11に示すとおりであった。なお、上記の茹で歩留りは、上記の数式▲3▼により算出した。
【0077】
【表11】
【0078】
(5)小麦粉の製麺適性の判定:
上記の表11の結果から、小麦粉中に含まれる小麦澱粉の示差走査熱量分析による結果と製麺適性との間には強い相関関係があること、特に、小麦粉中に含まれる小麦澱粉を示差走査熱量分析したときに、熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)が0.3J/乾物g以下である試験区23および24の小麦粉は良好な製麺適性を有しており、試験区23および24の小麦粉を用いてうどんを製造すると、生麺を茹であげて得られる茹でうどん、および茹であげたうどんを冷凍してなる冷凍うどんのいずれもが、粘弾性が強く、ソフトでモチモチしており、滑らかで、食感に極めて優れるものとなることがわかる。
【0079】
《実施例6》[小麦粉の製麺適性の判定(ラーメンの製造)]
(1) 試験区25〜27として小麦粉3種類を準備した。これらの小麦粉の粗蛋白含量(乾物換算)を上記した方法で測定したところ、いずれも12.7〜13.0%の範囲であった。小麦を粉砕した全粒粉の代わりにこの試験区25〜27の小麦粉を用いた以外は、実施例1の(1)と同様にして小麦澱粉を調製した。
(2) 上記(1)で得られた小麦澱粉を用いて、実施例1の(2)と同様にして示差走査熱量分析を行って、その熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)を求めたところ、下記の表12に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた小麦澱粉の粗蛋白含量を実施例1と同様にして測定したところ、下記の表12に示すとおりであった。
【0080】
(3) また、この試験区25〜27の小麦粉の各々を用いて、実施例2の(4)と同様にして、生ラーメンを製造した後に茹あげて、その品質を上記の表5に示す評価基準にしたがって10名のパネラーにより点数評価してもらい、その平均値を算出したところ、下記の表12に示すとおりであった。
(4) また、上記( 3) とは別に、この試験区25〜27の小麦粉の各々を用いて実施例2の(4) と同様にして生ラーメンを製造した後、生ラーメン各200gずつを沸騰水中に入れて、茹で歩留りが220±2%になるように茹で時間を調節しながら茹であげた後、水洗氷冷し、その約200gずつを専用のトレイに盛り付けて−30℃に急速冷凍した。それにより得られた冷凍ラーメンを、乾燥を防ぐためにビニール袋に入れて密封した後、−20℃で1週間冷凍保存した。1週間冷凍保存後に冷凍ラーメンを冷凍庫より取り出して、十分量の沸騰水中に入れて1分間煮沸解凍し、解凍後直ちに熱いスープの入ったドンブリに入れて、その品質を上記の表5に示す評価基準にしたがって10名のパネラーにより点数評価してもらい、その平均値を算出したところ、下記の表12に示すとおりであった。
【0081】
【表12】
【0082】
(5)小麦粉の製麺適性の判定:
上記の表12の結果から、小麦粉中に含まれる小麦澱粉の示差走査熱量分析による結果と製麺適性との間には強い相関関係があること、特に、小麦粉中に含まれる小麦澱粉を示差走査熱量分析したときに、熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)が0.3J/乾物g以下である試験区27の小麦粉は良好な製麺適性を有しており、試験区27の小麦粉を用いてラーメンを製造すると、生麺を茹であげて得られる茹でラーメン、および茹であげた麺を冷凍してなる冷凍ラーメンのいずれもが、粘弾性が強く、プリプリしており、滑らかで、食感に極めて優れるものとなることがわかる。
【0083】
《実施例7》[小麦粉の製麺適性の判定(マイクロ波調理用生ラーメンの製造)](1) 試験区28〜34として小麦粉7種類を準備した。これらの小麦粉の粗蛋白含量(乾物換算)を上記した方法で測定したところ下記の表13に示すとおりであった。小麦を粉砕した全粒粉の代わりにこの試験区28〜34の小麦粉を用いた以外は実施例1の(1)と同様にして小麦澱粉を調製した。
(2) 上記(1)で得られた小麦澱粉を用いて、実施例1の(2)と同様にして示差走査熱量分析を行って、その熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)を求めたところ、下記の表13に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた小麦澱粉の粗蛋白含量を実施例1と同様にして測定したところ、下記の表13に示すとおりであった。
【0084】
(3)(i) この試験区28〜34の小麦粉の各々を用いて実施例3と同様にしてマイクロ波調理用生ラーメンを製造した。この生ラーメンを100gづつビニール袋に入れて、口をシールして室温下(約20℃)に一晩放置した。
(ii) 翌日、上記(i)で得られた生ラーメンを、耐熱容器に移し、熱湯(95℃前後)を300g注ぎ、開放型マイクロ波調理器具[(株)東芝製「ER−CS型電子レンジ」:650W]にて1〜2分調理した。調理後、直ちに濃縮スープを加えて、麺の品質を上記の表7に示す評価基準にしたがって10名のパネラーにより点数評価してもらい、その平均値を算出したところ、下記の表13に示すとおりであった。
【0085】
【表13】
【0086】
(4)小麦の製麺適性の判定:
上記の表13の結果から、小麦粉に含まれる小麦澱粉の示差走査熱量分析による結果と製麺適性との間には強い相関関係があること、特に、小麦粉中に含まれる小麦澱粉を示差走査熱量分析したときに、熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)が0.3J/乾物g以下である試験区32〜34の小麦粉は良好な製麺適性を有しており、試験区32〜34の小麦粉を用いてマイクロ波調理用生ラーメンを製造すると、60〜120秒(1〜2分)の短時間の調理(電子レンジ加熱)により可食状態になり、特に90〜120秒(1.5〜2分)の短い調理時間で滑らかさおよび粘弾性に優れる調理ラーメンとなることがわかる。
それに対して、小麦粉中に含まれる小麦澱粉を示差走査熱量分析したときに、熱変化開始温度(To)80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)が0.3J/乾物gよりも大きい試験区28〜31の小麦粉を用いて製造したマイクロ波調理用生ラーメンは、90秒の調理時間(電子レンジ加熱時間)では可食状態にならず、100秒以上の調理時間でようやく可食状態になり、しか120秒の加熱後もその食感は普通であることがわかる。
【0087】
《実施例8》[小麦粉の製麺適性の判定(ギョウザの皮の製造)]
(1) 試験区35〜37として小麦粉3種類を準備した。これらの小麦粉の粗蛋白含量(乾物換算)を上記した方法で測定したところ下記の表15に示すとおりであった。小麦を粉砕した全粒粉の代わりにこの試験区35〜37の小麦粉を用いた以外は実施例1の(1)と同様にして小麦澱粉を調製した。
(2) 上記(1)で得られた小麦澱粉を用いて、実施例1の(2)と同様にして示差走査熱量分析を行って、その熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)を求めたところ、下記の表15に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた小麦澱粉の粗蛋白含量を実施例1と同様にして測定したところ、下記の表15に示すとおりであった。
(3) この試験区35〜37の小麦粉用いて、下記の方法によりギョウザの皮を製造し、その皮を用いてギョウザを製造した。
[ギョウザの皮およびギョウザの製造]
(i) 小麦粉200gに水72gを加え、12分間混合してそぼろ状の生地を得た。この生地を製麺ロールにてロール間隙3.0mmで麺帯にまとめ、ビニール袋に入れて室温下に30分間熟成した。熟成後、麺帯をさらに製麺ロールにて圧延し、約0.8mm厚の麺帯にした後、直径8.7mmの円形の金型で麺帯をくり抜いて、ギョウザの皮を製造した。
(ii) 上記(i)で得られたギョウザの皮に、ひき肉とみじん切りにした野菜および調味料よりなる具を12g/1枚の割合で入れて包み成形して生ギョウザを製造した。
【0088】
(iii) 上記(ii)で得られた生ギョウザを、サラダ油を敷き、熱したフライパンに並べ、加熱して焼き色が付いたところで少量の水を加え蓋をしてさらに加熱した。フライパンの水がなくなり具の内部まで十分に火が通ったところで調理をやめ、皿に直ちに移して、その皮の部分の品質を下記の表14に示す評価基準にしたがって10名のパネラーにより点数評価してもらい、その平均値を算出したところ、下記の表15に示すとおりであった。
(iv) また、上記(iii)とは別に、上記(i)および(ii)と同様にして得られた生ギョウザを蒸籠に入れ、霧吹きにて水を噴霧した後、約8分間蒸煮した。蒸煮後、ギョウザを−30℃に急速冷凍して冷凍ギョウザをつくり、それをビニール袋に入れて、−20℃の冷凍庫で1週間保存した。
1週間後に冷凍ギョウザを取り出して、上記(iii)と同様にして加熱調理し、その皮の部分の品質を下記の表14に示す評価基準にしたがって10名のパネラーにより点数評価してもらい、その平均値を算出したところ、下記の表15に示すとおりであった。
【0089】
【表14】
【0090】
【表15】
【0091】
(2)小麦粉の製麺適性の判定:
上記の表15の結果から、小麦粉中に含まれる小麦澱粉の示差走査熱量分析による結果と製麺適性との間には強い相関関係があること、特に小麦粉中に含まれる小麦澱粉を示差走査熱量分析したときに、熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)が0.3J/乾物g以下である試験区37の小麦粉は良好な製麺適性を有しており、試験区37の小麦粉を用いてギョウザの皮を製造すると、生ギョウザ、および蒸したギョウザを冷凍してなる冷凍ギョウザのいずれの場合も、その皮がしなやかでありながらしっかりしており、口溶けが良いものとなることがわかる。
【0092】
《実施例9》[マイクロ波調理用生ラーメンの製造]
(1) 実施例7の試験区29、30、33および34で使用したのと同じ市販の小麦粉のいずれかに対して、下記の表17に示す澱粉を表17に示す割合で添加した麺類用穀粉組成物を用いて、実施例3と同様にしてマイクロ波調理用生ラーメンを製造した。この生ラーメンを100gづつビニール袋に入れて、口をシールして室温下(約20℃)に一晩放置した。
(ii) 翌日、上記(i)で得られた生ラーメンを、耐熱容器に移し、熱湯(95℃前後)を300g注ぎ、容器の口を開放してマイクロ波調理器具[(株)東芝製「ER−CS型電子レンジ」:650W]にて1〜2分調理した。調理後、直ちに濃縮スープを加えて、調理直後の麺の品質を上記の表7に示す評価基準にしたがって10名のパネラーにより点数評価してもらい、その平均値を算出したところ、下記の表17に示すとおりであった。
(iii) また、上記(ii)における調理後に5分経過した時点での麺の品質を下記の表16に示す評価基準にしたがって10名のパネラーにより点数評価してもらい、その平均値を算出したところ、下記の表17に示すとおりであった。
【0093】
【表16】
【0094】
【表17】
【0095】
(2) 上記の表17の結果から、小麦粉中に含まれる小麦澱粉を示差走査熱量分析したときに、熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)が0.3J/乾物g以下である小麦粉に対して澱粉を配合した試験区38〜53のマイクロ波調理用生ラーメンの場合は、90秒以下の極めて短い調理時間で滑らかさおよび粘弾性に優れる食感の良好な調理ラーメンが得られること、しかもそれらのラーメンは調理後に時間が経っての茹でのびが少なく、良好な食感を保ち得ることがわかる。
それに対して、小麦粉中に含まれる小麦澱粉を示差走査熱量分析したときに、熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)が0.3J/乾物gよりも大きい小麦粉を用いている試験区55および56の場合は、澱粉を併用していても可食状態になるまで比較的長い調理時間を要することがわかる。
【0096】
【発明の効果】
本発明による場合は、小麦または小麦粉から、それらに含まれる澱粉を回収して、その示差走査熱量分析を行うだけで、該小麦または小麦粉が製麺適性を有しているか否かを簡便・迅速に且つ正確に行うことができる。
特に、本発明では、示差走査熱量分析によって、小麦または小麦粉中に含まれる小麦澱粉の熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)が0.3J/乾物g以下であるか否かを調べるだけで、その小麦または小麦粉が製麺適性を有するか否かを簡単に判定できる。
そして、示差走査熱量分析を行ったときに、そこに含まれる小麦澱粉の熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)が0.3J/乾物g以下ある小麦を原料小麦として用いて得られる小麦粉、または既に製粉されている小麦粉を用いて麺類を製造することによって、粘弾性、ソフト感、モチモチ感、プリプリ感、滑らかさになどの特性に優れる、良好な食感を有する高品質の各種の麺類を得ることができる。
特に、示差走査熱量分析を行ったときに、そこに含まれる小麦澱粉の熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)が0.3J/乾物g以下ある小麦を原料小麦として用いて得られる小麦粉、または既に製粉されている小麦粉を用いてなる本発明のマイクロ波調理用生麺は、該生麺を容器に入れて水や湯を注いで電子レンジなどのマイクロ波調理器で従来よりも短い時間加熱調理するだけで、で喫食可能で且つ食感および食味に優れる麺にすることができる。 そして、前記した小麦粉と共に澱粉を併用してなる本発明のマイクロ波調理用生麺は、マイクロ波調理器による加熱時間が一層短縮され、しかも茹でのびが生じにくく、良好な品質を長時間保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】小麦または小麦粉に含まれる小麦澱粉を加水下に示差走査熱量分析して得られる解析パターンの代表的な例を示す図である。
【図2】図1に示すような解析パターンにおいて、その解析熱変化開始温度(To)の求め方を示す図である。
Claims (2)
- 小麦または小麦粉中に含まれる澱粉の示差走査熱量分析を行ってその熱変化開始温度(To)が80℃以上での吸熱エネルギー(ΔH)を測定し、その吸熱エネルギー(ΔH)が0.3J/乾物g以下である場合には小麦または小麦粉が製麺に適していると判定し、0.3J/乾物gを超える場合には製麺に適していないと判定することを特徴とする、小麦または小麦粉の製麺適性の判定方法。
- 加水下に小麦澱粉の示差走査熱量分析を行う請求項1記載の判定方法。
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