JP3941073B2 - 油脂組成物及びそれを含む食品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規な油脂組成物及びそれを含む食品に関し、さらに詳しくは、酸化安定性に優れる油脂組成物、特に酸化安定性に優れる高度不飽和脂肪酸含有粉末油脂組成物、及びこの油脂組成物を含有する食品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、油脂組成物は、食品素材として各種加工食品に配合使用したり、健康食品などとして広く用いられている。
この油脂組成物に用いられる油脂は不飽和脂肪酸を含むため、酸化されやすく、したがって、油脂の酸化を防止するために、これまで、トコフェロールを添加する方法が一般に用いられていた。しかしながら、この方法では、特に酸化されやすい高度不飽和脂肪酸含有油脂に対しては、酸化防止効果が不十分であり、そのためさらにカテキンなどが併用され、酸化防止効果を高める工夫がなされていたが、最近、高度不飽和脂肪酸含有油脂が食品素材として広く用いられるようになり、それに伴い、より優れた効果を有する酸化防止方法の開発が望まれていた。
ところで、近年、乳児に対するアラキドン酸やドコサヘキサエン酸などの高度不飽和脂肪酸摂取の重要性について研究が進み、乳児の正常な発育及び脳や網膜の発達にこれらの高度不飽和脂肪酸が不可欠であることが判明してきた。1993年にFAO/WHOから出されたレポート「ファット・アンド・オイルズ・イン・ヒューマン・ニュートリション(Fat and oils in humannutrition)」の中でも、アラキドン酸やドコサヘキサエン酸の推奨摂取量が記載されている。
しかしながら、このアラキドン酸やドコサヘキサエン酸などの高度不飽和脂肪酸は、酸化されやすく、かつ酸化された場合は不快臭が強くなるため、摂取しにくいという欠点があった。したがって、これらを含む油脂は、通常、例えばゼラチン軟カプセルでコーティング処理し、食品として市販されているが、このものは手軽にお湯に分散して使用するのが困難で摂取しにくいという欠点を有している。
また、粉末状にした場合、ゼラチンカプセルと比較して劣化しやすくなるという問題が生じる。この油脂の劣化を抑える手段として酸化防止剤の添加が考えられるが、前記したように、一般的に知られているトコフェロールの添加では十分ではないので、、さらに茶カテキンなどのシネギリストを併用し、酸化防止効果を高めることが試みられている(特開昭63−135484号公報)。さらに、アスコルビン酸を粉ミルクの原料溶液に添加する方法が提案されているが(特開平4−346749号公報)、この場合、油脂とアスコルビン酸が直接接しないため、酸化防止効果が十分ではないという問題がある。
したがって、乳児用調製粉乳に高度不飽和脂肪酸含有油脂を使用する場合、粉霧乾燥する際に窒素気流下で行ったり、充填する際に窒素置換を行うなど、高度の設備及び品質管理が必要であり、上記設備のない工場や品質管理が十分には行えない工場では、高度不飽和脂肪酸含有油脂の使用が制限されるのを免れないなどの問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとで、酸化安定性に優れた油脂組成物、特に従来酸化安定性に劣るため、食品に用いることが困難であった高度不飽和脂肪酸含有油脂を含む食品素材として好適な粉末状組成物、及びこの油脂組成物を含有する食品を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、アスコルビン酸類とクエン酸類やリンゴ酸類とを組み合わせ、特に油中水型(W/O型)に乳化した状態にて、それぞれ特定の割合で油脂に添加することにより、著しく酸化安定性に優れる油脂組成物が得られることを見い出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)トコフェロールを添加した油脂100重量部に対し、(A)アスコルビン酸及び/又はその塩0.0001〜1重量部と、(B)クエン酸、クエン酸塩、リンゴ酸及びリンゴ酸塩の中から選ばれた少なくとも1種0.0001〜1重量部の水溶液を、油中水型(W/O型)に乳化した状態で添加したことを特徴とする油脂組成物、
(2)油脂が高度不飽和脂肪酸含有油脂である第(1)項記載の油脂組成物、
(3)高度不飽和脂肪酸含有粉末油脂組成物である第(2)項記載の油脂組成物、及び
(4)第(1)〜(3)項記載の油脂組成物を含有することを特徴とする食品、
を提供するものである。
また、本発明の好ましい態様は、
(5)(A)成分及び(B)成分の添加量が、それぞれ0.0005〜0.1重量部である第(1)〜(3)項記載の油脂組成物、及び
(6)高度不飽和脂肪酸含有油脂を、固形分中5〜85重量%の割合で含有する第(3)項記載の油脂組成物、
である。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明において用いられる油脂としては、例えばナタネ油、大豆油、パーム油、オリーブ油、ヤシ油などの植物油、牛脂、ラード、魚油などの動物油及びこれらの天然から得られる硬化油、分別油、エステル交換油など、食用として使用しうる油脂の中から任意なものを挙げることができるが、これらの中で、炭素数18以上で、かつ不飽和結合を3個以上有する高度不飽和脂肪酸であって、乳児に必須な栄養素であるもの、例えばα−リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸などを含有する油脂を好ましく挙げることができる。本発明においては、特に酸化安定性が極めて悪く、臭いや味の劣化が著しいアラキドン酸やドコサヘキサエン酸などを含有する油脂が好適である。
上記アラキドン酸やドコサヘキサエン酸を含有する油脂としては、食用魚油、すなわちイワシ油、サバ油、ニシン油、マグロ油、カツオ油、タラ肝油などの魚油を精製したものや濃縮したものを用いることができるし、さらに、バクテリア、クロレラなどから抽出したものも用いることができる。また、α−リノレン酸を含有する油脂としては、例えばシソ科植物の実から得られる油脂であるシソ実油やエゴマ油などが用いられる。
本発明においては、これらの高度不飽和脂肪酸含有油脂は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、大豆油、なたね油、パーム油、オリーブ油、ヤシ油や、これらの油脂あるいは魚油などを水素添加し、安定化した比較的安定性の高い油脂と混合して用いてもよい。
本発明の油脂組成物において、(A)成分として用いられるアスコルビン酸やその塩としては、食品や医薬品用として一般に用いられているアスコルビン酸及びアスコルビン酸ナトリウムに代表されるアスコルビン酸塩を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
この(A)成分の添加量は、油脂100重量部に対し、0.0001〜1重量部の範囲で選ぶことが必要である。この添加量が0.0001重量部未満では酸化防止効果が十分に発揮されないし、1重量部を超えると油脂中にこの(A)成分を均質に分散させることが困難となる上、組成物に酸味が付与され、食品としての価値が低減する。酸化防止効果、分散性及び酸味の抑制などの面から、この(A)成分の好ましい添加量は、油脂100重量部に対し、0.0005〜0.1重量部の範囲であり、特に0.001〜0.1重量部の範囲が好適である。
一方、(B)成分として用いられるクエン酸やその塩、リンゴ酸やその塩としては、食品や医薬品用として一般に用いられているクエン酸、クエン酸ナトリウムに代表されるクエン酸塩、リンゴ酸及びリンゴ酸ナトリウムに代表されるリンゴ酸塩を挙げることができる。
本発明においては、上記(B)成分は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その添加量は、油脂100重量部に対して、0.0001〜1重量部の範囲で選ぶことが必要である。この添加量が0.0001重量部未満では酸化防止効果が十分に発揮されないし、1重量部を超えると油脂中にこの(B)成分を均質に分散させることが困難となる上、組成物に酸味が付与され、食品としての価値が低減する。酸化防止効果、分散性及び酸味の抑制などの面から、この(B)成分の好ましい添加量は、油脂100重量部に対し、0.0005〜0.1重量部の範囲であり、特に0.001〜0.1重量部の範囲が好適である。
本発明組成物においては、前記(A)成分及び(B)成分は油中水型(W/O型)の乳化状態にして、油脂に添加するのが好ましい。
油中水型に乳化する際の溶剤としては、水が一般的であるが、該(A)成分及び(B)成分を溶解し、かつ人体に対して無害であるものであればよく、特に制限されず、例えば糖アルコール、液糖、液状オリゴ糖、エチルアルコール、グリセリンなどを用いることができる。これらの溶剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、この乳化の際に用いられる乳化剤としては、食品として使用可能なものであればよく、特に制限はないが、調製粉乳用などに、該油脂組成物を用いる場合には、FAO/WHOで認められている乳化剤、例えばモノグリセリン脂肪酸エステル、レシチンなどを用いるのが望ましい。これらの乳化剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。この際、乳化しやすくするために、水相や油相あるいはその双方に乳化剤を添加してもよく、乳化機などを用いて乳化することも可能である。
本発明においては、前記(A)成分及び(B)成分を油脂中に添加する際、それぞれを油中水型として別々に添加してもよいし、両方を共に水相に溶解したのち、油中水型に乳化して添加してもよい。
さらに、該(A)成分及び(B)成分をそれぞれ別々に、又は混合して濃厚な油中水型乳化液としたのち、油脂に添加してもよいし、油脂に直接、油中水型として添加してもよい。
本発明においては、該(A)成分及び(B)成分は、それぞれ単独で、あるいは相乗的に油脂中に含まれるトコフェロールを速やかに再生することにより、間接的に酸化防止の機能を発揮する。このトコフェロールは油脂中に天然に含まれるものをそのまま利用することも可能であるし、精製された油脂に対し、抽出や濃縮、あるいは合成されたトコフェロールを加えることで、利用することも可能である。
このようにして得られた油脂組成物は、従来のいずれの酸化防止剤を用いて得られた油脂組成物と比較しても、高い安定性を有しており、長期間保管後も風味や品質の劣化がなく、良好な品質が長期間維持される。
本発明の油脂組成物は、粉末状に調製したものが好ましく、特に高度不飽和脂肪酸含有粉末油脂組成物が好適である。
この高度不飽和脂肪酸含有粉末油脂組成物においては、高度不飽和脂肪酸含有油脂は、固形分中に5〜85重量%の割合で含有するのが有利である。この量が5重量%未満では高度不飽和脂肪酸含有油脂に期待される生理機能が十分に発揮されないおそれがあるし、85重量%を超えると固形分より油脂がしみ出し、油脂の品質や風味の劣化を招く原因となる。所望の生理機能を発揮し、かつ油脂の品質や風味の劣化を抑制する点から、好ましい高度不飽和脂肪酸含有油脂の含有量は固形分中5〜80重量%の範囲である。
【0006】
該高度不飽和脂肪酸含有粉末油脂組成物においては、所望により、香料や、β−カロチン、ビタミンE、ビタミンDなどの油溶性ビタミン、油溶性色素、乳化剤、高度不飽和脂肪酸以外の脂肪酸を多く含む油脂などを適宜添加してもよいし、また、抗酸化効果を高める目的でトコフェロールなどの抗酸化剤を添加することもできる。
さらに、この高度不飽和脂肪酸含有粉末組成物には、所望により、水溶性成分、例えばカゼイン、カゼインナトリウム、乳清タンパク質、脱脂粉乳などの乳製品由来のタンパク質やゼラチンなどの動物性タンパク質、分離大豆タンパク質、コーン又は小麦より抽出したタンパク質などの植物性タンパク質、デキストリンやオリゴ糖などの多糖類、砂糖や乳糖などの二糖類、ブドウ糖や果糖などの単糖類あるいはこれらの混合物などから成る糖質などを適宜添加してもよい。
これらの所望により用いられる添加成分は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
次に、本発明の高度不飽和脂肪酸含有粉末組成物の製造方法について説明する。
まず、前記(A)成分及び(B)成分を、適当な溶剤中に溶解したのち、これを高度不飽和脂肪酸含有油脂に対し、該(A)成分及び(B)成分が所定の割合になるように、かつ油中水型乳化液となるように添加する。この際、適当な乳化剤及び必要に応じて用いられる各種添加成分が用いられる。次いで、この(A)成分及び(B)成分が添加された高度不飽和脂肪酸含有油脂を固形分中、好ましくは5〜85重量%になるように含有する水中油型乳化液を作成し、乾燥することにより、高度不飽和脂肪酸含有粉末油脂組成物を得る。
本発明において、(A)成分及び(B)成分を油中水型乳化液として調製する方法としては、まず(A)成分及び(B)成分を適当な溶剤、例えば水、液状オリゴ糖、エチルアルコール、糖アルコール、液糖、グリセリンなどに完全に溶解したのち、(1)この溶液を、モノグリセリン脂肪酸エステルやレシチンなどの適当な乳化剤溶液中に添加し、油中水型乳化液とする方法、(2)上記(A)成分及び(B)成分を含む溶液中に直接乳化剤を添加し、転相させて油中水型乳化液を得る方法、(3)乳化剤などにより、上記(A)成分及び(B)成分を含む溶液の界面活性を低下させ、油脂に溶解可能な可溶化液とする方法、(4)予め乳化剤を溶解した油脂に、上記(A)成分及び(B)成分を含む溶液を添加し、油中水型乳化液を得る方法など、いずれも用いることができる。
上記の方法によって得られた(A)成分及び(B)成分を含む油中水型乳化液は、高度不飽和脂肪酸含有油脂中に任意な濃度で添加、混合できるので、油脂中に通常の方法ではほとんど溶解又は分散することのできない該(A)成分及び(B)成分を多量に容易に分散させることが可能である。
本発明においては、このようにして得られた(A)成分及び(B)成分を含む高度不飽和脂肪酸含有油脂を、所望により用いられる水溶性成分を含有する水溶液中に乳化させて均質な水中油型乳化液を調製するが、この乳化方法としては特に制限はなく、通常食品分野で慣用されている均質乳化方法を用いることができる。例えばホモジナイザーを用いる方法、コロイドミルを用いる方法、ホモミキサーを用いる方法など、いずれも採用することができる。
このようにして得られた水中油型乳化液の乾燥方法としては特に制限はなく、例えば噴霧乾燥法をはじめ、ドラム乾燥法、真空凍結乾燥法、真空乾燥法(ドラム式、連続ベルト式など)などを用いることができる。また、得られた乾燥物は、必要に応じ、粉砕や造粒、他の成分との混合などを行うことも可能である。
このようにして得られた高度不飽和脂肪酸含有粉末油脂組成物は、長期間保存しても風味の劣化が極めて少なく、長期間安心して使用することができる。
本発明の油脂組成物は、例えば水やお湯に溶解させ、飲料として飲んでもよいし、粉末のまま、あるいはブロック状のまま、直接食べてもよく、また食品素材として加工食品に利用することもできる。
本発明はまた、前記油脂組成物を含有する食品をも提供するものである。特に前記高度不飽和脂肪酸含有粉末油脂組成物は、乳児用調製粉乳に利用する場合、粉体混合することにより、容易に粉ミルクに高度不飽和脂肪酸を含有させることができ、風味や品質が損なわれることがない。
【0007】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1
L−アスコルビン酸1.5g、クエン酸1.5gを蒸留水7gに溶解し、15重量%アスコルビン酸・クエン酸水溶液10gを得た。この水溶液0.1gを、予めδ−トコフェロール0.3重量%及びカテキン10重量%含有油溶化製剤[サンフード油性E、三共(株)製]0.02重量%を添加したマグロ油[日本油脂(株)製、ドコサヘキサエン酸(DHA)24.7重量%、エイコサペンタエン酸(EPA)7.1重量%、POV(過酸化物価)0]100gに対して添加し、かき混ぜてアスコルビン酸・クエン酸が油中水型に乳化された油脂組成物100gを得た。
この油脂組成物5gを25ml容サンプルビンに採取し、蓋をして25℃の恒温槽にて一定期間放置後のPOVを基準油脂分析試験法に従い測定した。結果を図1に示す。
比較例1
実施例1において、マグロ油にアスコルビン酸・クエン酸水溶液を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして実施した。結果を図1に示す。
比較例2
実施例1において、マグロ油100gに15重量%クエン酸水溶液のみを0.1g添加した以外は、実施例1と同様にして実施した。結果を図1に示す。
図1から分かるように、本発明の油脂組成物は酸化安定性に優れている。
実施例2〜9
第1表に示す配合組成でアスコルビン酸・クエン酸水溶液油中水型乳化液又はアスコルビン酸・リンゴ酸水溶液油中水型乳化液を調製したのち、予めδ−トコフェロール0.3重量%を添加したマグロ油[日本油脂(株)製、DHA24.7重量%、EPA7.1重量%、POV 0]中に、第1表に示す量で添加し、次いでこれらの油脂組成物5gを25ml容サンプルビンに採取し、蓋をして25℃の恒温槽にて一定期間放置後のPOVを基準油脂分析試験法に従い測定した。結果を第1表に示す。
比較例3〜6
第1表に示す配合組成で油中水型乳化液を調製したのち、予めδ−トコフェロール0.3重量%を添加したマグロ油[日本油脂(株)製、DHA24.7重量%、EPA7.1重量%、POV 0]中に、第1表に示す量で添加し、次いでこれらの油脂組成物5gを25ml容サンプルビンに採取し、蓋をして25℃の恒温槽にて一定期間放置後のPOVを基準油脂分析試験法に従い測定した。結果を第1表に示す。
【0008】
【表1】
【0009】
【表2】
【0010】
[注]
1)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、坂本薬品工業(株)製
2)油脂100重量部に対する値である。
3)風味;次の基準で評価した。
◎:極めて良好である
○:ほとんど魚油臭を感じない
△:酸由来の酸味を感じる
×:魚油臭を感じる
4)安定性;次の基準で評価した。
◎:極めて良好である
○:良好である
△:若干劣る
×:悪い
5)総合判定;次の基準で評価した。
◎:極めて良好である
○:良好である
△:若干劣る
×:問題がある
実施例10
実施例1で得られたアスコルビン酸・クエン酸水溶液を油中水型に含む油脂組成物20gを脱脂乳500g中に添加し、かき混ぜ、さらにTKホモゲナイザー(特殊機化製)にて8000rpmで5分間乳化処理したのち、70℃で5分間殺菌処理を施し、次いで冷却して牛乳様の油脂組成物乳化液を得た。
この乳化液を5℃の冷蔵庫にて保管し、7日目の風味を確認した結果、良好なままで保たれていた。
比較例7
比較例1で得られた油脂組成物20gを、実施例9と同様にして脱脂乳500g中に添加し、かき混ぜ、さらにTKホモゲナイザー(特殊機化製)にて8000rpmで5分間乳化処理したのち、70℃で5分間殺菌処理を施し、次いで冷却して牛乳様の油脂組成物乳化液を得た。
この乳化液を5℃の冷蔵庫に保管し、7日目の風味を確認した結果、魚油臭が発生しており、飲用に適さなかった。
比較例8
比較例2によって得られた油脂組成物20gを、実施例9と同様にして脱脂乳500g中に添加し、かき混ぜ、さらにTKホモゲナイザー(特殊機化製)にて8000rpmで5分間乳化処理したのち、70℃で5分間殺菌処理を施し、次いで冷却して牛乳様の油脂組成物乳化液を得た。
この乳化液を5℃の冷蔵庫にて保管し、7日目の風味を確認した結果、魚油臭が発生しており、飲用に適さなかった。
実施例11
L−アスコルビン酸1.5g、クエン酸1.5gを蒸留水7gに溶解して15重量%アスコルビン酸・クエン酸水溶液10gを得た。
この水溶液0.1gを、予めレシチン5g及びステアリン酸モノグリセリド5gを添加したマグロ油[日本油脂(株)製 DHA24.7重量% EPA7.1重量% δ−トコフェロール0.3重量%含有 POV 0]999.9gに対して添加し、かき混ぜてアスコルビン酸・クエン酸が油中水型に乳化された油脂組成物1000gを得た。
次いで、この油脂組成物400g、ガゼインナトリウム25g、デキストリン72.5g及び蒸留水1000gを用いて水中油型乳化液とし、この水中油型乳化液を60℃で30分間予備乳化したのち、高圧ホモジナイザーにて、1段目200kg/cm2、2段目50kg/cm2で均質乳化液を調製し、スプレードライヤー[大川原化工機(株)製、L−8型]で熱風温度180℃、アトマイザー回転数15000rpmの条件にて乾燥し、粉末化した。
得られた粉末を、アルミニウムパウチに50gずつ入れ、含気包装し、37℃で1カ月間保存して安定性の評価を行った。結果を第2表に示す。
【0011】
実施例12
実施例11において、クエン酸の代わりにDL−リンゴ酸を用いた以外は、実施例11と同様にして実施した。結果を第2表に示す。
比較例9
蒸留水0.1gを、予めレシチン5gおよびステアリン酸モノグリセリド5gを添加したマグロ油[日本油脂(株)製、DHA24.7重量%、EPA7.1重量%、δ−トコフェロール0.3重量%含有、POV 0]999.9gに添加し、油脂組成物1000gを得た。
次いで、この油脂組成物400gを用い、実施例11と同様にして均質乳化液を調製し、粉末化した。結果を第2表に示す。
比較例10
カテキンの油溶性製剤[サンフード油性E、三共(株)製]0.1gを、予めレシチン5g及びステアリン酸モノグリセリド5gを添加したマグロ油[日本油脂(株)製、DHA24.7重量%、EPA7.1重量%、δ−トコフェロール0.3重量%含有、POV 0]999.9gに添加し、油脂組成物1000gを得た。
次いで、この油脂組成物400gを用い、実施例11と同様にして均質乳化液を調製し、粉末化した。結果を第2表に示す。
実施例13
蒸留水0.1gを、予めレシチン5g及びステアリン酸モノグリセリド5gを添加したマグロ油[日本油脂(株)製、DHA24.7重量%、EPA7.1重量%、δ−トコフェロール0.3重量%含有、POV 0]999.9gに添加し、油脂組成物1000gを得た。
次いで、この油脂組成物400g、ガゼインナトリウム25g、デキストリン72.5g、アスコルビン酸0.075g、クエン酸0.075g及び蒸留水1000gを用いて水中油型乳化液とし、この水中油型乳化液を60℃で30分間予備乳化したのち、高圧ホモジナイザーにて1段目200kg/cm2、2段目50kg/cm2で均質乳化液を調製し、スプレードライヤー[大川原化工機(株)製、L−8型]で熱風温度180℃、アトマイザー回転数15000rpmの条件にて乾燥し、粉末化した。この粉末について、実施例11と同様にして安定性の評価を行った。結果を第2表に示す。
【0012】
【表3】
【0013】
第2表から分かるように、実施例13はアスコルビン酸及びクエン酸を油中水型の乳化状態で油脂に添加していないため、実施例11及び12に比べて酸化安定性に劣る。
また、実施例11及び12の粉末油脂組成物は、乳児用調製粉乳に添加可能な原料のみを用いながら、従来のカテキンなどを使用した粉末油脂組成物と同等以上の安定性を有している。
実施例14
市販の脱脂粉乳[四つ葉乳業(株)製]2.97kgに対し、実施例11で得られたDHA含有粉末油脂30gを添加することにより、DHA添加粉乳3kgを得た。このDHA添加粉乳から抽出したDHA含量を第3表に示す。
比較例11、12
実施例14と同様に、脱脂粉乳2.97kgに比較例9及び比較例10で得られたDHA含有粉末油脂30gを添加することにより、DHA添加粉乳をそれぞれ3kg得た。このDHA添加粉乳から抽出したDHA含量を第3表に示す。
実施例14及び比較例11、12で得られたDHA添加粉乳を、アルミパウチに50gずつ入れ、含気包装し、37℃で1カ月間保存し、安定性の評価を行った。結果を第3表に示す。
【0014】
【表4】
【0015】
第3表に明らかなように、本発明の粉末油脂組成物は脱脂粉乳など粉末製品に添加した場合、DHAを必要量簡単に添加できるうえ、粉末の保存安定性を損なうことがない。
以上の結果より、本発明の高度不飽和脂肪酸含有粉末油脂組成物は、粉乳など粉末製品に高度不飽和脂肪酸を添加するための素材として優れていることが明らかである。
【0016】
【発明の効果】
本発明の油脂組成物は優れた酸化安定性を有し、食品素材や健康食品などとして有用である。特に高度不飽和脂肪酸含有粉末油脂組成物は、長期間保存しても風味の劣化が少なく、したがって、長期間安心して使用することができる。本発明の高度不飽和脂肪酸含有粉末油脂組成物を乳児用調製粉乳に適用する場合、粉体混合することにより、風味や品質を損なうことなく、粉体ミルクに容易に高度不飽和脂肪酸を添加することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1、比較例1及び比較例2で得られた油脂組成物における保存日数とPOVとの関係を示すグラフである。
Claims (4)
- トコフェロールを添加した油脂100重量部に対し、(A)アスコルビン酸及び/又はその塩0.0001〜1重量部と、(B)クエン酸、クエン酸塩、リンゴ酸及びリンゴ酸塩の中から選ばれた少なくとも1種0.0001〜1重量部の水溶液を、油中水型(W/O型)に乳化した状態で添加したことを特徴とする油脂組成物。
- 油脂が高度不飽和脂肪酸含有油脂である請求項1記載の油脂組成物。
- 高度不飽和脂肪酸含有粉末油脂組成物である請求項2記載の油脂組成物。
- 請求項1ないし3のいずれかに記載の油脂組成物を含有することを特徴とする食品。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP07139996A JP3941073B2 (ja) | 1996-03-01 | 1996-03-01 | 油脂組成物及びそれを含む食品 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP07139996A JP3941073B2 (ja) | 1996-03-01 | 1996-03-01 | 油脂組成物及びそれを含む食品 |
Publications (2)
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