JP3352578B2 - 安定な油脂、その製造法及びそれを配合した飲食品 - Google Patents

安定な油脂、その製造法及びそれを配合した飲食品

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、バターの水性画分
と乳化剤とを配合した安定な油脂に関する。本発明はま
た、油脂に、バターの水性画分と乳化剤とを配合した
後、分散化処理することからなる安定な油脂の製造法に
関する。さらに、本発明は、安定な油脂を配合した飲食
品に関する。
【0002】
【従来の技術】油脂の構成成分である脂肪酸の中で、リ
ノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタ
エン酸、ドコサヘキサエン酸等の二重結合を有する不飽
和脂肪酸は、生体内で種々の代謝を受けて、プロスタグ
ランジン等の化合物に変換され、生体の恒常性や機能性
の維持に重要な役割を果たすことが知られている。ま
た、二重結合を2個以上有する多価不飽和脂肪酸の研究
も進み、n−6系、n−3系の脂肪酸であるリノール
酸、アラキドン酸、ジホモγ−リノレン酸、α−リノレ
ン酸の生理効果が明らかとなり、最近では、エイコサペ
ンタエン酸やドコサヘキサエン酸の生理効果も明らかと
なってきた。これらの脂肪酸は、通常、油脂や油脂含有
食品から摂取されているが、特に、これらの脂肪酸を大
量に含有する大豆油やべに花油、魚油等の摂取が推奨さ
れるようになってきている。
【0003】ところで、油脂や油脂含有食品において
は、製造の過程や製造後消費されるまでの間に、しばし
ば、これらの脂肪酸が酸化することによる劣化の問題が
発生する。不飽和脂肪酸は空気中の酸素と反応して過酸
化物を生成し、この過酸化物はさらに分解して多種の化
合物を生成する。その結果、不飽和脂肪酸を含有する油
脂は、変色したり、戻り臭と呼ばれる独特の酸化臭を発
生する。特に、多価不飽和脂肪酸は酸化され易く、一度
酸化が始まると、酸化は連鎖的に進むことになる。ま
た、このようにして生成した過酸化物は、官能的に悪影
響を及ぼすのみならず、摂取により人体に害を及ぼすこ
とが知られている。そのため、多価不飽脂肪酸を含有す
る油脂や油脂含有食品では、酸化による商品価値の低下
が常に問題となっている。この不飽和脂肪酸、特に多価
不飽和脂肪酸は、微量の重金属を触媒として、空気中の
酸素や溶液中に存在している酸素によって容易に酸化さ
れたり、光化学反応により酸化され、種々の過酸化物を
生成する。特に、食品中には、しばしば、鉄、銅等の金
属元素やアスコルビン酸等の酸化促進作用を有する物質
が存在するために、多価不飽和脂肪酸は酸化されやすい
環境にある。尚、植物油や動物油に多く含まれるオレイ
ン酸等のように二重結合を1個のみ有する脂肪酸も、こ
のような過酸化物を生成する原因となる。
【0004】このような油脂や油脂含有食品の酸化によ
る劣化を防止するために、様々な工夫がなされている。
例えば、油脂や油脂含有食品を遮光性密閉容器中に充填
し、かつ窒素ガス等の不活性なガスと空気とを置換し
て、光や空気から油脂や油脂含有食品を遮断する方法が
しばしば採用されている。また、脱酸素剤を併用するこ
とで油脂や油脂含有食品を長期間保存する方法も提案さ
れている(特開昭58-183466号公報)。また、油脂や油
脂含有食品に酸化防止剤を添加することも行われてお
り、食品添加物のトコフェロールやアスコルビン酸、β
−カロチン、ビタミンB6等のビタミン類が、油脂や油
脂含有食品の酸化を防止する効果を有する酸化防止剤と
して添加されている(特開昭47-2240号公報、特開昭61-
212243号公報、特開平2-166194号公報)。これらのビタ
ミン類のうち、親油性のトコフェロールやカロチノイド
はそのまま油脂に添加されるが、親水性のビタミンC
は、ビタミンCパルミテートやビタミンCステアレート
等の脂肪酸エステルとして親油性を高めた上で、油脂に
添加する方法も提案されている(特開平5-140584号)。
また、油溶性のビタミン類を添加して油脂の酸化を防止
する方法も知られているが、現在のところ、ビタミンE
については過剰摂取による人体への悪影響はないと判断
されているが、ビタミンAやビタミンD等の油溶性ビタ
ミンに関しては、その過剰摂取による安全性が問題とな
っており、その添加量は、当然制限されるべきものであ
る。そのため、油溶性ビタミンのみで多価不飽和脂肪酸
の酸化を完全に抑制することには限界がある。
【0005】また、最近では、乳酸菌や酵母由来のたん
ぱく質、あるいは、菌体そのものを利用して油脂や油脂
含有食品の酸化を防止する方法(特開平1-157367号公
報、特開平5-9126号公報)、ゼラチンやカラギーナンを
用いて油脂をカプセル化し、空気との接触を遮断して油
脂や油脂含有食品の酸化を防止する方法(特開昭61-126
016号公報)等が提案されている。これらは、天然由来
の物質であることから、多価不飽和脂肪酸の酸化防止剤
としての利用が有望視されている。さらに、メイラード
反応により生成する物質にも抗酸化能が存在することが
知られている。しかし、これらの物質の多くは親水性で
あり、これらの物質に存在する抗酸化能は有効でありな
がら、油中に分散させることが困難であるために、多価
不飽和脂肪酸の酸化防止には利用し難いというのが現状
である。なお、無水油脂中に一定量以上の親水性抗酸化
剤を添加しても、通常、直ぐ分離し、抗酸化能は得難
い。尚、本発明者らは、先にバターの水性画分を油脂の
酸化防止剤として使用することを提案した(特願平7-90
228号)。このバターの水性画分とは、例えば、バター
を加熱融解して得られるバターカード又はバターセーラ
ムを含むバターの水性画分である。
【0006】一方、乳化剤を、油脂や油脂含有食品の酸
化防止に応用することも検討されている。例えば、レシ
チンが抗酸化作用を有することは広く知られており、そ
れをトコフェロールと併用することにより相乗的に抗酸
化作用が高まることも知られている(青山,油化学,vol.
19,p.1007,1970)。また、レシチンとクエン酸モノグリ
セリドのようなクエン酸誘導体との相乗的な抗酸化作用
についても検討されているが、有効な結果は得られてい
ない(青山,油化学,vol.34,p.48,1985)。 他の乳化剤
に関しては、モノグリセリドを添加してトコフェロール
の酸化防止能を向上させる方法(特公昭62-31902号公
報)、アミノ酸と乳化剤とを用いてW/Oエマルジョン
の安定性を向上させる方法(特開平3-276511号公報)、
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルと酵素分解
レシチンとを用いて水溶性抗酸化物質を油中にて機能さ
せる方法(特開平6-254378号公報)等が開示されてい
る。しかし、いずれの方法においても、単独では充分な
効果が得られず、これらの方法をいくつか併用して、油
脂や油脂含有食品の安定性を向上させる試みがなされて
いる。そして、より優れた油脂や油脂含有食品の酸化防
止方法の開発が今なお求められている現状にある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記したよ
うな従来技術の課題を解決し、油脂や油脂含有食品に含
まれる不飽和脂肪酸、特に多価不飽和脂肪酸の酸化を防
止して、劣化のない安定な油脂や油脂含有食品を提供す
ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、バターの
水性画分を使用し、油脂中で抗酸化能を発揮させるべく
条件を検討したところ、バターの水性画分を乳化剤とと
もに油脂に配合して分散化させることにより、バターの
水性画分が無水油中に安定に存在し、抗酸化能を発揮し
続けることを見出し、本発明を完成するに至った。従っ
て、本発明は、バターの水性画分と乳化剤とを配合した
ことを特徴とする安定な油脂からなる。本発明はまた、
油脂に、バターの水性画分と乳化剤とを配合した後、分
散化処理することを特徴とする安定な油脂の製造法から
なる。本発明はまた、前記安定な油脂を配合した飲食品
からなる。
【0009】本発明で原料として使用することができる
油脂は、不飽和脂肪酸、特に多価不飽和脂肪酸を含む油
脂であることが、酸化が防止され劣化のない油脂を提供
するという本発明の目的からみて望ましい。このような
油脂としては、特に制限はなく、シソ油、大豆油、菜種
油、綿実油、ゴマ油、サフラワー油、オリーブ油及びト
ウモロコシ油等の植物油や、魚油、乳脂及びラード等の
動物脂を例示することができる。
【0010】本発明において使用することができるバタ
ーの水性画分は、前記した特願平1−90228号公報
に記載されているような方法で得ることができ、例え
ば、バターを加熱溶融して得られるバターカードまたは
バターセーラムを含むバターの水性画分である。バター
の水性画分の油脂への配合量は、油脂に対して、0.1
重量%以上であることが望ましく、特に、0.5重量%
以上であることが好ましい。バターの水性画分の配合量
が0.1重量%以下となると、油脂へ有効な酸化防止能
を付与することができないので好ましくない。また、バ
ターの水性画分の油脂への配合量は多ければ多いほど、
油脂の酸化防止能が高くなるが、多量添加によるコスト
アップの問題や食品の物性に及ぼす影響等を考慮する
と、上限は30重量%程度とすることが好ましい。
【0011】また、本発明において使用することができ
る乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン
脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレ
ングリコール脂肪酸エステル、レシチン、酢酸モノグリ
セリド、乳酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド
等を例示することができるが、特にショ糖脂肪酸エステ
ルは好ましい。また、乳化剤は、HLB値の低い親油性
のものであることが望ましく、特に、HLB値が2〜1
0の範囲のものが好ましい。乳化剤の配合量は、バター
の水性画分の配合量に対し、1/2等量以上1等量以下
であることが望ましい。乳化剤の配合量が、バターの水
性画分の配合量の1/2等量未満では、抗酸化作用を発
揮することが難しく、また、1等量より多くても、それ
以上の効果は期待できない。
【0012】本発明の安定な油脂は、原料の油脂に、バ
ターの水性画分と乳化剤とを配合し、分散させることに
より得ることができるが、分散化は、ホモミキサー、ホ
モジナイザー、コロイドミル等の乳化機を使用すること
により行なうことができる。このようにして得られる本
発明の安定な油脂中では、乳化剤の親水性部は、バター
の水性画分のまわりに吸着し、その外側に疎水性部が油
中に配向し、微粒子となって分散した状態になってい
る。尚、本発明の安定な油脂中には、水やアルコール等
が存在しておらず、解乳化等の心配がない。また、本発
明の安定な油脂は、過酸化物価(POV)の上昇が防止
されており、油脂が劣化する際に発生する特有の異臭の
生成も抑制される。本発明の安定な油脂の抗酸化能は、
バターの水性画分と乳化剤の両者を併用することにより
相乗的に付与されるものであって、いずれか一方を用い
た場合に比べて著しく優れた抗酸化能が得られる。
【0013】尚、本発明の安定な油脂には、その他の添
加物、例えば公知の抗酸化剤を配合することもできる。
また、本発明の安定な油脂の製造のためのその他の条件
等については、公知のいずれの条件等をも使用すること
ができる。
【0014】本発明の安定な油脂は、そのまま食用油脂
として使用することもできるが、原材料として飲食品に
配合することもできる。飲食品の例は特に制限されない
が、例えば、マーガリン、スプレッド、サラダドレッシ
ング、クッキー、バターケーキ、育児用粉乳、コーヒー
クリーム、ホイップクリームを挙げることができる。本
発明の安定な油脂の飲食品への配合量は、特に制限され
ず、その飲食品における油脂の通常の配合量と同量とす
ることができるが、それより多くても少なくてもよい。
飲食品に本発明の安定な油脂を配合することによって、
その飲食品には抗酸化能が付与され、しかも、その抗酸
化能は長期間維持され、保存に伴うPOVの上昇や酸化
臭の発生等がない。また、本発明の安定な油脂をてんぷ
ら、ポテトチップス、ドーナッツ、かき揚げ、フライ等
の揚げ物の油に使用することもでき、そうすることによ
り、揚げ物食品にも抗酸化能を付与することができる。
【0015】
【実施例】以下、本発明の実施例、参考例及び試験例を
示し、本発明をさらに詳細に説明する。 参考例1 バター5kgを50℃で2時間保持した後、上層のバター
オイル部をデカンテーションにより除去した。得られた
沈澱物を水に懸濁溶解した後、凍結乾燥して、バターの
水性画分の粉末80gを得た。
【0016】試験例1 参考例1により得られたバターの水性画分粉末を、精製
カツオ油に、10mg/gの濃度となるように室温で配合
すると共に、乳化剤として、ショ糖脂肪酸エステル(DK
エステル:F-10(HLB1)、F-20(HLB2)、F-50
(HLB6)、F-90(HLB9.5)、F-160(HLB1
5):第一工業製薬(株)製)を、前記精製カツオ油に、
5mg/gの濃度となるように配合した。次に、乳化機を
使用して、精製カツオ油に配合したバターの水性画分と
乳化剤とを強制分散させた後、この精製カツオ油を、内
径55mmのペトリ皿に入れ、30℃で暗所に保存した。
そして、保存中、定期的に試料を採取し、POVを測定
した。尚、POVの測定は、チオシアン酸法 [R.A.Chap
man et al.,J.American Oil Chemist's Society, vol.2
6, pp.360-363,1949]により行った。また、精製カツオ
油に何も配合していないものと、バターの水性画分のみ
を配合し乳化剤を配合していないものを対照とした。結
果を図1に示す。図1に示される結果から、精製カツオ
油の過酸化物価(POV)は経時的に上昇するが、配合
した乳化剤のHLB値により、精製カツオ油の安定性は
大きく異なることが判った。特に、ショ糖脂肪酸エステ
ルのF-20(HLB2)、F-50(HLB6)及びF-90(H
LB9.5)を配合することにより、精製カツオ油の安
定性は顕著に向上したことから見て、乳化剤のHLB値
は2〜10程度のものが特に好ましいことが判明した。
また、精製カツオ油にバターの水性画分のみを配合した
ものは、乳化剤とともに配合したものに比べ、POVの
上昇が非常に早かった。
【0017】試験例2 参考例1により得られたバターの水性画分粉末を室温で
精製カツオ油に1.00%配合すると共に、乳化剤とし
てショ糖脂肪酸エステル(DKエステルF-20(HLB
2)、第一工業製薬(株)製) を、0%、0.25%、0.
50%、0.75%及び1.00%配合した。次に、乳化
機を使用して、精製カツオ油に配合したバターの水性画
分と乳化剤とを強制分散させた後、この精製カツオ油を
内径55mmのペトリ皿に入れ、30℃で暗所に保存し
た。そして、保存中、定期的に試料を採取し、過酸化物
価(POV)を測定した。表1に、各乳化剤濃度におい
て、POVが50meq/kgに達するまでに要した日数を
示す。
【0018】
【表1】
【0019】表1に示される結果より、乳化剤をバター
の水性画分の配合量の1/2等量以上配合することによ
り、油脂の抗酸化作用が飛躍的に向上するが、1等量以
上としても抗酸化作用は殆ど変わらないことが明らかと
なった。また、乳化剤を配合せずバターの水性画分のみ
を配合したものは、乳化剤とともに配合したものに比べ
て、抗酸化作用が著しく低いことが明らかとなった。
【0020】試験例3 参考例1により得られたバターの水性画分粉末を、精製
カツオ油に、室温で、0%、0.05%、0.10%、0.50%、
1.00%及び1.50%配合するとともに、乳化剤として、シ
ョ糖脂肪酸エステル (DKエステルF-20(HLB2)、第
一工業製薬(株)製)を、バターの水性画分の配合量に対
して1/2等量配合した。次に、乳化機を使用して、精
製カツオ油に配合したバターの水性画分と乳化剤とを強
制分散させた後、この精製カツオ油を内径55mmのペト
リ皿に入れ、30℃で暗所に保存した。保存中、定期的
に試料を採取し、過酸化物価(POV)を測定した。表
2に、バターの水性画分の各配合量において、POVが
50meq/kgに達するまでに要した日数を示す。
【0021】
【表2】
【0022】表2に示される結果より、バターの水性画
分の配合量が多い程、油脂の抗酸化作用が向上すること
が明らかとなった。
【0023】実施例1 (大豆油の調製)参考例1により得られたバターの水性
画分粉末30gを、室温で精製大豆油3リットルに配合
すると共に、乳化剤としてショ糖脂肪酸エステル (DKエ
ステルF-20(HLB2)、第一工業製薬(株)製)21g
を配合した後、ホモジナイザーで分散化処理し、本発明
の安定な大豆油約3リットルを得た。この安定な大豆油
を、内径55mmのペトリ皿に入れ、50℃で暗所に保存
した。保存中、定期的に試料を採取し、過酸化物価(P
OV)を測定した。本実施例において得られた大豆油
と、バターの水性画分及び乳化剤を配合していない精製
大豆油のPOVが、50meq/kgに達するまでに要した日
数を表3に示す。
【0024】
【表3】
【0025】表3に示される結果から、本発明の大豆油
は、精製大豆油に比べて極めて安定であることが明らか
となった。
【0026】実施例2 (低脂肪スプレッドの調製)実施例1により得られた安
定な大豆油24.5%、大豆硬化油(融点34℃)15
%及びモノグリセリド0.5%からなる油相600gを
乳化タンクで50℃に加温し、攪拌混合した。この油相
に、予め水58.3%、ローカストビーンガム 0.2%
及び食塩1.5%からなる水相を加え、以下常法に従
い、乳化、急冷、固化、練圧して、低脂肪スプレッドを
製造した。得られた低脂肪スプレッドは、風味の点で何
ら問題はなく、冷蔵庫において3ヶ月保存してもPOV
は変化しなかった。また、冷蔵庫において6ヶ月保存し
ても、劣化臭は生成しなかった。
【0027】実施例3 (育児用粉乳の調製) (粉乳A)脱脂乳239kgにホエー粉52.7kg、ビタ
ミン及びミネラル成分1kgを混合して溶解し、これに参
考例1により得られたバターの水性画分1kg、ショ糖脂
肪酸エステル(DKF−20)1kg、植物油23.43k
g及びカツオ油0.4kgを加えて混合し、均質化し、次い
で殺菌処理した後、濃縮、乾燥して、粉乳100kgを得
た。 (粉乳B:対照))脱脂乳239kgにホエー粉52.7k
g、ビタミン及びミネラル成分1kgを混合して溶解し、
これに植物油23.43kg及びカツオ油0.4kgを加えて
混合し、均質化し、次いで殺菌処理した後、濃縮、乾燥
して粉乳100kgを得た。
【0028】試験例4 実施例3において得られた粉乳A及び粉乳B(対照)の
安定性を試験するために、60℃におけるオーブン保存
試験を行った。経時的に粉乳A及びBのサンプルから脂
質成分を抽出し、鉄−チオシアネート法による過酸化物
価の測定を行った。結果を図2に示す。図2より明らか
なように、バターの水性画分と乳化剤を添加した粉乳A
のほうが、粉乳Bに比べて脂質の酸化が著しく抑制され
た。
【0029】試験例5 実施例3において得られた粉乳A及び粉乳B(対照)の
安定性を試験するために、60℃におけるオーブン保存
試験を行い、経時的に粉乳A及びBのサンプルを得て、
それを熱水(40℃)に溶解したものについて、10名
のパネラーによる風味の官能評価を行った。評価は5段
階の点数(5点が最高点)により行った。各粉乳につい
て、10名の平均点を下記表4に示す。
【0030】
【表4】
【0031】表4より明らかなように、バターの水性画
分と乳化剤を添加した粉乳Aは、未添加の粉乳Bに比べ
て、保存日数による風味の低下が少なかった。
【0032】
【発明の効果】以上説明したように、本発明において、
油脂にバターの水性画分と乳化剤とを配合することによ
り、過酸化物価(POV)の上昇を防止することがで
き、油脂が劣化する際に発生する特有の異臭の生成も抑
制することができる。本発明の安定な油脂は、そのま
ま、通常の食用油脂として使用することができるが、飲
食品、例えば、マーガリン、スプレッド、サラダドレッ
シング、クッキー、バターケーキ、育児用粉乳、コーヒ
ークリーム、ホイップクリームの原材料として配合する
こともできる。本発明の安定な油脂を飲食品の原材料と
して配合すると、その飲食品には抗酸化能が付与され、
しかもその抗酸化能は長期間維持されて、保存に伴うP
OVの上昇や酸化臭の発生等がない。また、本発明の安
定な油脂をてんぷら、ポテトチップス、ドーナッツ、か
き揚げ、フライ等の揚げ物の油に使用することにより、
それらの食品にも抗酸化能を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 バターの水性画分と乳化剤の添加による魚油
の安定化効果を示すグラフである。
【図2】 バターの水性画分と乳化剤の添加による育児
用粉乳の安定化効果を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) 4B001 4B026 4H059

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 バターの水性画分と乳化剤とを配合した
    ことを特徴とする安定な油脂。
  2. 【請求項2】 バターの水性画分の配合量が0.1重量
    %以上であり、乳化剤の配合量が前記バターの水性画分
    の配合量の1/2等量〜1等量である請求項1記載の安
    定な油脂。
  3. 【請求項3】 乳化剤が、ショ糖脂肪酸エステルである
    請求項1又は2記載の安定な油脂。
  4. 【請求項4】 乳化剤のHLB値が、2〜10である請
    求項1乃至3のいずれかに記載の安定な油脂。
  5. 【請求項5】 油脂に、バターの水性画分と乳化剤とを
    配合した後、分散化処理することを特徴とする安定な油
    脂の製造法。
  6. 【請求項6】 バターの水性画分の配合量が0.1重量
    %以上であり、乳化剤の配合量が前記バターの水性画分
    の配合量の1/2等量〜1等量である請求項5記載の安
    定な油脂の製造法。
  7. 【請求項7】 乳化剤が、ショ糖脂肪酸エステルである
    請求項5又は6記載の安定な油脂の製造法。
  8. 【請求項8】 乳化剤のHLB値が、2〜10である請
    求項5乃至7のいずれかに記載の安定な油脂の製造法。
  9. 【請求項9】 請求項1乃至4のいずれかに記載の安定
    な油脂を配合した飲食品。
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