JP3813197B2 - 酸化防止剤及びこれを用いた油脂の酸化防止方法 - Google Patents

酸化防止剤及びこれを用いた油脂の酸化防止方法 Download PDF

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【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、油脂の酸化防止剤及びこれを用いた油脂の酸化防止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
油脂の構成成分である脂肪酸の中で、必須脂肪酸であるリノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等の二重結合を持つ脂肪酸は、生体内で種々の代謝を受け、プロスタグランジン等の化合物に変換されて、生体の恒常性や、機能維持に重要な役割を果たしている。これらの脂肪酸は通常、油脂としてまたは油脂含有食品として摂取されるが、このような油脂や油脂含有食品は、製造後、消費されるまでの間に、しばしば、これらの不飽和脂肪酸の酸化という問題が発生する。即ち、これらの脂肪酸を含む油脂は、空気中の酸素と反応して、変色したり、酸化臭が発生したり、パーオキサイド等の人体に有害な化合物を生成する。この酸化反応は、油脂や油脂含有食品中に含まれる微量の金属や、光等によって進行する。
【0003】
このため、油脂または油脂含有食品は、酸化を防止するために、酸化防止剤を添加したり、空気や光から遮断するために、遮光性密閉容器中に充填し、窒素ガス等の不活性ガスと空気を置換する方法が採用されている。また、特開昭58−183466号公報には、密閉容器と脱酸素剤を併用することで、油脂または油脂含有食品を長期保存する方法が開示されている。
また、食品添加物として、ソルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等の合成抗酸化剤を添加することが一般に行われている。
また、トコフェロールやアスコルビン酸、β−カロチン、ビタミンB6等のビタミン類が酸化防止効果を有することが知られており、これらを、抗酸化剤として油脂や油脂含有食品に配合することもしばしば行われている。例えば、特開昭47−2240号公報には、トコフェロールを使用した例が、特開昭61−212243号公報には、β−カロチンを使用した例が、特開平2−166194号公報にはビタミンB6を使用した例が開示されている。
【0004】
また、近年、乳酸菌や酵母由来の蛋白質や菌体を利用した酸化防止方法が開発されている。例えば、特開平1−157367号公報には、酢酸菌を用いた酸化防止方法が、特開平5−9126号公報には、乳酸菌を用いた方法、特開昭61−126016号公報には、油脂をゼラチンやカラギーナンを用いてマイクロカプセル化して、空気との接触を遮断し、酸化防止を行う方法が開示されている。さらに、大豆リン脂質にも抗酸化作用が見出されており、特開昭53−73026号公報には、大豆リン脂質を含有する酸化防止用組成物が開示されている。
【0005】
これらの方法により、多価不飽和脂肪酸の酸化を防止をすることは可能であるが、必ずしも満足できるものではなかった。特に、前記トコフェロールを始めとする添加物の中には、大量摂取することが必ずしも好ましいものでないものが多い。
【0006】
一方、最近では、多価不飽和脂肪酸の研究が進み、n−3系、n−6系の必須脂肪酸であるリノール酸、α−リノレン酸の有効性が明らかになってきており、これに伴って、これらの脂肪酸を大量に含む大豆油やべに花油等の油脂や、これらの油脂を含む食品が大量に生産されるようになってきている。また、魚油中に大量に含まれるエイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸の生理効果が明らかとなり、魚油を含む油脂やその油脂を含む食品が提供されるようになってきた。さらに、アラキドン酸やジホモγ−リノレン酸を含む油脂についても、その生理作用が明らかになるにつれて、これらの脂肪酸を含む油脂やその油脂を含む食品が提供されるようになってきた。
【0007】
しかしながら、上記の多価不飽和脂肪酸は非常に酸化されやすく、特にエイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸を含有する魚油は非常に酸化されやすいため、大量のトコフェロールを添加することや合成酸化防止剤を添加することが必須であった。このような酸化防止剤の添加を行わないと、微量の鉄や銅等の金属の存在により、油脂の自動酸化が進み、いわゆる戻り臭と呼ばれる悪臭の発生や、着色化等が発生する。また、このような現象が生じなくとも、過酸化物の生成が起こり、食用には好ましくない状態となる。さらに、植物油や動物油に多く含有されるオレイン酸等の二重結合を1個しか持たない脂肪酸も、このような過酸化物生成の原因となる。
【0008】
また、近年、牛乳に含有される油脂の安定性が非常に高く、酸化抵抗性が高いことが注目され、その酸化抑制の機構についていくつかの研究が行われている。そしてこのような酸化抵抗性を有する原因の一つとして、乳中の複合脂質画分に脂質の酸化に関係しているリパーゼを抑制する機能が存在するため、このリパーゼを抑制することで脂質の酸化反応を抑制すると推定されている(特開平5−292880号公報)。
尚、本発明者らは、乳から分離して調製したバターが、多価不飽和脂肪酸の酸化を抑制することを見出し、先に特許出願を行っている(特開平7−41791号)。即ち、バターはそれ自体は酸化されやすい食品であるが、バターを油脂に添加した場合にバターが示す酸化抑制活性は、トコフェロールやβ−カロチンの酸化抑制活性よりも、はるかに強力なものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このような現状に鑑み、本発明は、従来技術の課題を解決し、乳由来で、安全性に優れ、高い酸化防止能を有する新規な酸化防止剤を提供することを目的とする。
本発明はさらに、その酸化防止剤の製造方法及びその酸化防止剤を用いる油脂の酸化防止方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、本発明の上記目的を達成するために、バターの酸化防止能についてさらに検討を進めた結果、バターを加熱処理して、水性画分(バターカードまたはバターセーラムを含む)と油性画分(バターオイルを含む)に分離した場合に、油性画分には酸化防止能が存在せず、水性画分にはバターが持つ多価不飽和脂肪酸酸化防止作用が移行しており、水性画分中のリン脂質画分、さらにスフィンゴミエリン含有リン脂質画分に酸化防止能が存在することを、本発明者らは見出し、本発明を完成させた。
【0011】
従って、本発明は、乳由来のスフィンゴミエリン含有リン脂質画分を有効成分とする油脂の酸化防止剤からなる
本発明はまた、乳由来のスフィンゴミエリン含有リン脂質画分が、乳中のホエー画分から抽出されたものである前記酸化防止剤からなる
本発明はまた、乳由来のスフィンゴミエリン含有リン脂質画分を油脂に添加することを特徴とする油脂の酸化防止方法からなる
本発明はまた、油脂が、多価不飽和脂肪酸を含有する油脂である前記油脂の酸化防止方法からなる。
【0012】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の酸化防止剤は、油脂、特に多価不飽和脂肪酸を含有する油脂に有効であり、そのような油脂に酸化防止能を付与することができる。
本発明において、多価不飽和脂肪酸とは、二重結合を2個以上含む脂肪酸を意味する。このような脂肪酸の中で、通常の食品中に含まれているものとしては、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、γ−リノレン酸等を代表的なものとして挙げることができるが、その他にも、多様な多価不飽和脂肪酸の存在が知られている。
これらの多価不飽和脂肪酸は、微量の鉄や銅等の金属を触媒として、空気中の酸素や溶液中に溶解している酸素によって容易に酸化されたり、光化学反応によって酸化されて、種々の過酸化物を生成する。特に、食品中ではしばしば、鉄、銅等の金属元素やアスコルビン酸等の酸化促進作用を果たす物質が存在するため、窒素ガス置換を行っても食品中に含まれる微量の酸素によってこのような反応は進行し、食品の腐敗の原因となる。
【0013】
本発明の酸化防止剤の有効成分であるスフィンゴミエリン含有リン脂質は、乳由来のリン脂質画分であることが好ましい。
乳由来のリン脂質画分は、バター中の水性画分(バターカードまたはバターセーラムを含む)であることが特に好ましい。
バター製造原料の乳を搾乳する哺乳動物は、特に限定されず、牛、羊、山羊、水牛、ヤク等の各種家畜や、その他の野性の動物であることができる。
【0014】
本発明の酸化防止剤の有効成分である乳由来のリン脂質画分を、バターから得るためには、バターを加熱処理、例えば、加温融解して得られるバターの水性画分(バターカードまたはバターセーラムを含む)をリン脂質画分としてそのまま使用することができる。その水性画分の乾燥物中には、約30%の脂溶性物質が含まれており(実施例1の表1参照)、そのほとんどがリン脂質からなる。
また、特開平3−47192号公報に開示の方法により、乳または乳製品(例えば、ホエー蛋白濃縮物(WPC)を、エーテル抽出及びアセトン抽出して得られたリン脂質画分を、乳由来のリン脂質画分として用いることもできる。
【0015】
乳由来のリン脂質の主要成分は、実施例2の表3に示されるように、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)及びスフィンゴミエリン(SPM)であり、公知の大豆リン脂質(実施例2の表4)にはほとんど含まれていないSPMを含んでおり、その含量が非常に高いことが特徴である。食品由来のリン脂質画分で、このようなリン脂質の成分比率を有するものは他にはない。従って、リン脂質の中でも、SPMに油脂の酸化防止能があると推定される。さらに、乳由来のリン脂質画分に含まれるSPM、PC及びPEの3種類のリン脂質の相乗作用により、さらに、油脂の酸化防止効果が高められることが推定される。
▲1▼バター中の水性画分及び▲2▼特開平3−47192号公報に記載の方法により乳または乳製品をエーテル抽出及びアセトン抽出して得られるリン脂質画分は、それぞれ、SPMを、リン脂質当たり▲1▼約9重量%及び▲2▼約28重量%含有している。
これらの各リン脂質画分は、さらに、必要に応じて、リン脂質のみが得られるように、公知の精製方法によって精製して使用してもよく、また、リン脂質を30%程度含有するリン脂質画分の段階で、精製を終了して、使用してもよい。
このようにして得られた精製リン脂質またはリン脂質画分は、凍結乾燥等の公知の方法で乾燥粉末としても用いることができる。
【0016】
本発明の酸化防止剤は、油脂に添加することにより、油脂の酸化を防止することができる。特に、本発明の酸化防止剤は、常温の油脂、または融点以上に加温して液状にした油脂中に添加し、混合または分散させることが好ましい。
本発明の酸化防止剤の油脂への添加量は、油脂や食品の種類に応じて適当に変更することができるが、通常は、リン脂質分として換算して、油脂に対して、0.05重量%以上、特に、0.5重量%の割合で添加することが好ましい。添加量が、0.05重量%未満となると、酸化防止効果が期待できず、酸化防止効果のみを目的とする場合は、添加量を増加するほど、顕著な効果を油脂に付与することができる。しかしながら、本発明の酸化防止剤の油脂への添加量は、リン脂質分として換算して、油脂に対して、約5重量%未満であることが好ましい。この量よりも多くなると、抗酸化剤としてのコストが高くなりすぎるからである。
【0017】
本発明の酸化防止剤は、さらに、乳化作用をも有しており、油脂中において、非常に分散し易い状態となる。
さらに、本発明の酸化防止剤がバター由来の場合には、バターの風味成分がリン脂質画分である水性画分に移行しているため、油脂の風味を改善する効果も有しており、添加量を増加することにより、魚油等の有する生臭み(魚臭)等をマスクすることもできる。バターは、乳成分の旨味の本体の一つであるので、本発明の酸化防止剤の添加によって、油脂や食品に好ましい風味を賦与することも期待できる。
【0018】
本発明によって酸化防止能を付与された油脂は、単独で通常の食用油脂として用いることもでき、または、マーガリン、スプレッド等の油性食品、サラダドレッシング、クッキー、バターケーキ、育児用粉乳等の調製粉乳、コーヒークリーム、ホイップクリーム等のクリーム類等の食品の原料として用いることもでき、これらの食品においては、抗酸化能が維持されて、保存に伴うPV(POV)の上昇や、酸化臭の発生等がない。
また、本発明の酸化防止剤により酸化防止能を付与された油脂は、てんぷら、ポテトチップス、ドーナッツ、かき揚げ、フライ等の揚げ物用の油として使用した場合、長時間使用しても油の劣化が起こらず、業務用に大量のフライ食品を製造する際の揚げ油として適している。また通常、このような業務用食品は、油の酸化を防止するため、パーム油などを使用しているが、本発明の抗酸化剤を用いて抗酸化能を付与する場合には、大豆油や菜種油をも用いることが可能となる。さらに、本発明により酸化防止能を付与された油脂を、このような揚げ物用の油として使用すると、調製された揚げ物にも抗酸化能が付与される。
さらに、本発明の酸化防止剤は、上記したように乳化作用も有しているので、常法により水中油型のエマルジョンとして使用することができ、種々の乳化系食品、例えば、マヨネーズ等の食品の酸化防止剤としても使用することができる。また、油脂に添加する場合に、公知の油溶性抗酸化剤であるトコフェロールや、β−カロチンと併用して用いることもでき、これらの抗酸化剤を安定化させることもできるので、非常に有用である。
【0019】
尚、本発明の酸化防止剤の酸化防止効果は、下記の方法により測定を行い、確認した。
(1)オーブン保存試験
50ml容のビーカーに、試料油脂を入れ、30℃、暗所の恒温装置中に保存し、試料の一部を定期的に採取し、試料油脂の酸化安定性を測定した。酸化安定性の測定は、鉄−チオシアネート法(R.A. Chapman et al.,J.American Oil
Chemist's Society, Vol.26, July,360-363,1949)に記載の方法に従って、過酸化物価(PV)を測定することにより行った。
各試料の保存時間に対するPV値を図にプロットし、PV値上昇曲線を作成し、PV値の立ち上がりの速さの違いにより、油脂の安定性に対する酸化防止剤の効果を比較した。即ち、立ち上がりが速いほど、酸化防止効果が弱く、立ち上がりが遅いほど、酸化防止効果が強いことが示される。
【0020】
(2)ランシマット法による酸化安定性試験
本試験は、市販の測定装置を用いた強制劣化試験であり、強制劣化温度を90℃に設定したランシマット装置(ランシマットE679型;メトロノーム社製)を用いて、酸化誘導期の測定を行った。
即ち、本方法は油脂を強制劣化させ、分解生成した揮発性物質を水中補集し、水の導伝率の経時変化を測定する方法である。導伝率が急激に変化する折曲点までの時間を酸化誘導期と定義し、酸化誘導期の長さによって評価した(詳細は、J.Frank, Food Technology, June,71-76,1982またはM.W. Laubili, J. AmericanOil Chemist's Society,Vol.63,792-795,1986 を参照されたい)。
【0021】
【実施例】
以下に実施例及び試験例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1
(バターから本発明の酸化防止剤を製造する方法)
バター5kgを50℃において2時間保持して溶解させ、水相と油相に分離させて、水相部を回収した。この水相部を少量の水に懸濁溶解させた後、凍結乾燥を行い、本発明の酸化防止剤80gを得た。得られた酸化防止剤の一般成分を分析した。結果を下記表1に示す。
【0022】
【表1】
成分 含有量(重量%)
−−−−−−−−−−−−−−−−
水分 1.39
蛋白質 26.38
脂質 36.74
灰分 4.70
糖質 30.79
−−−−−−−−−−−−−−−−
【0023】
試験例1
(魚油に対する酸化防止効果の確認)
精製魚油に、実施例1で得られた酸化防止剤を、それぞれ、0.5重量%、1.0重量%、1.5重量%の比率で添加混合し、乳化装置を用いて添加混合した。これを上記(1)のオーブン保存試験法によって、酸化状態の変化、即ちPV値の経時変化を測定し、測定結果を図1に示した。図1に示された結果より明らかであるように、本発明の酸化防止剤の添加によって、魚油の酸化は顕著に抑制された。
また、上記(2)のランシマット法によって、実施例1で得られた酸化防止剤及びそれを含有するバターの酸化防止効果を測定した。測定は、市販カツオ油(植田製油(株)製)を用い、これに市販のバター(雪印乳業(株)製)を5重量%添加した場合と、実施例1の酸化防止剤を5重量%添加した場合における酸化誘導期の変化を測定した。測定結果を下記表2に示す。
【0024】
【表2】
Figure 0003813197
【0025】
表2に示される結果から明らかであるように、実施例1で得られた本発明の酸化防止剤を添加した油脂では、酸化誘導期間が顕著に延長した。このことから、本発明の酸化防止剤が油脂の酸化防止に有効であることが判明した。
【0026】
実施例2
(牛乳由来の高純度リン脂質画分を回収する方法)
ホエー蛋白質濃縮物(WPC)の10%水溶液をプロテアーゼ処理し、これをクロロホルム−メタノール(2:1)を使用して抽出を行い、さらに濃縮した後、アセトン抽出により複合脂質画分を得た。この画分をフロロシリルカラムクロマトグラフィー処理し、クロロホルム−メタノールによる段階抽出によって、リン脂質画分を得た。この精製工程を図2に示す。得られた精製画分を、それぞれ凍結乾燥し、下記の操作に使用した。
得られたリン脂質画分を、さらにシリカゲルカラムに負荷し、クロロホルム−メタノールによる段階抽出によって、リン脂質を精製した。精製リン脂質画分は、溶媒を除去した後、凍結乾燥し、酸化防止剤とした。
精製リン脂質画分を、常法により薄層クロマトグラフィーで処理し、ディットマー試薬による発色を行い、デンシトメトリー法によってリン脂質含量を測定した。測定結果を下記表3に示す。
また、同様に、対照として市販大豆油より得たリン脂質を精製し、そのリン脂質組成を測定した。測定結果を下記表4に示す。
【0027】
【表3】
Figure 0003813197
【0028】
【表4】
Figure 0003813197
【0029】
表3及び表4に示されるように、両リン脂質画分の組成は全く異なっており、この違いが、下記試験例2に示す酸化防止効果の差として現れるものと推察される。特に、大豆リン脂質には、スフィンゴミエリン(SPM)がほとんど含まれておらず、SPMが多量に存在するか否かが酸化防止効果の差として現れるものと推定される。
【0030】
試験例2
(油脂の酸化防止効果の存在の確認試験)
本試験例では、実施例2で得られた複合脂質画分、リン脂質画分、リン脂質抽出残渣のいずれに油脂の酸化防止効果が存在するかを確認した。
上記試験例1と同様に、カツオ油に対して、複合脂質画分、リン脂質画分及びリン脂質抽出残渣を、それぞれ1重量%添加し、上記(2)のランシマット法によって酸化誘導期を測定し、測定結果を図3に示した。図3に示される結果より、リン脂質画分には、強い酸化防止効果が存在することが確認できた。
【0031】
試験例3
(精製リン脂質画分の酸化防止効果の確認)
本実施例では、上記実施例2で得た精製リン脂質画分の酸化防止効果を確認した。酸化防止効果が確認されている大豆リン脂質を対照として用いた。
即ち、上記試験例1と同様に、実施例2で得られた精製牛乳リン脂質画分と精製大豆リン脂質を、カツオ油に対して、0.5重量%添加し、上記(2)のランシマット法によって電導率を測定した。測定した結果のプロット図を図4に示す。牛乳由来リン脂質画分のほうが、大豆由来のリン脂質よりも明らかに強い酸化防止効果を有することが判明した。
即ち、乳由来のリン脂質画分には強い酸化防止効果が存在すること、及びその酸化防止効果は、酸化防止効果を有することが公知の大豆リン脂質よりも強いものであることが明らかとなった。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば新規な酸化防止剤が提供される。本発明による酸化防止剤は、公知の酸化防止剤である大豆リン脂質等よりも酸化防止能が強く、しかも、乳由来であるため、安全性にも優れている。さらに、本発明の酸化防止剤は、乳化作用も有しているため、エマルジョン状態の油脂に対しても容易に添加することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の酸化防止剤を添加した油脂のPV値の経時変化を測定した結果を示すグラフである。
【図2】本発明の酸化防止剤の精製工程を示す図である。
【図3】本発明による酸化防止剤の活性の本体であるリン脂質画分の酸化防止効果を、ランシマット法を用いて確認した結果を示すグラフである。
【図4】本発明による酸化防止剤の活性の本体であるリン脂質画分と大豆リン脂質の酸化防止効果を、ランシマット法を用いて測定した結果を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 乳由来のスフィンゴミエリン含有リン脂質画分を有効成分とする油脂の酸化防止剤。
  2. 乳由来のスフィンゴミエリン含有リン脂質画分が、乳中のホエー画分から抽出されたものである請求項1記載の酸化防止剤。
  3. 乳由来のスフィンゴミエリン含有リン脂質画分を油脂に添加することを特徴とする油脂の酸化防止方法。
  4. 油脂が、多価不飽和脂肪酸を含有する油脂である請求項記載の油脂の酸化防止方法。
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