JP2005008810A - 不飽和脂肪酸含有油脂粉末 - Google Patents
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Abstract
【課題】変色がなく酸化安定性に優れる不飽和脂肪酸含有油脂粉末の提供。
【解決手段】不飽和脂肪酸含有油脂(A)、乳化剤(B)、水溶性糖類(C)及び水を含有するO/W型乳化物を乾燥させて得られる油脂粉末であって、L−アスコルビン酸脂肪酸エステル(D)及びトコフェロール(E)を含有し、かつアミノ酸又はアミノ酸残基を実質上含まない、不飽和脂肪酸含有油脂粉末、並びにその製造法。
【選択図】 なし
【解決手段】不飽和脂肪酸含有油脂(A)、乳化剤(B)、水溶性糖類(C)及び水を含有するO/W型乳化物を乾燥させて得られる油脂粉末であって、L−アスコルビン酸脂肪酸エステル(D)及びトコフェロール(E)を含有し、かつアミノ酸又はアミノ酸残基を実質上含まない、不飽和脂肪酸含有油脂粉末、並びにその製造法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、変色を防ぎ且つ酸化安定性に優れた機能的な不飽和脂肪酸含有油脂粉末及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
油脂は、栄養源あるいは生理活性(薬効)物質として配合素材、製品として有用である。特に、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、アラキドン酸(ADP)等に代表される不飽和脂肪酸を構成脂肪酸として含む不飽和脂肪酸含有油脂は、健康との関わりが深い多様な生理機能を発現することから、健康食品や医薬品等への利用が活発となってきている。
【0003】
これらの不飽和脂肪酸含有油脂は、液状でも有用であるが、粉末化することにより新たな機能を付加することができる。例えば、配合の自由度向上、加工性の付与、安定性向上等が挙げられ、これらの機能を有効に活用することで、多様な商品を作り出すことが可能である。しかしながら、不飽和脂肪酸含有油脂は、酸化に対する安定性が極めて低く、酸化安定性に優れる粉末を得ることは困難であった。
【0004】
かかる欠点を解決すべく、特許文献1には、ビタミンC及び/又はその塩を特定比率配合することを特徴とする保存性が改善された魚油添加粉乳及びその製造方法が開示されている。これは、乳化工程で失活する抗酸化剤量を見込んで、過剰に抗酸化剤を配合するものであるが、不飽和脂肪酸含有油脂に対する抗酸化剤の配合量が多く、味覚への影響が懸念される。
【0005】
又、特許文献2には、W/O型に乳化されたアスコルビン酸又はその塩を油脂中に分散させ、噴霧乾燥する方法が開示されている。これは、水溶性抗酸化剤を油脂中に分散させることによりその効果を向上させたもので、抗酸化剤は少量で良いが、乳化操作が煩雑となる。
【0006】
又、特許文献3には、脂溶性抗酸化剤であるL−アスコルビン酸パルミテート400〜1200ppm,β−カロチン6〜20ppm,混合トコフェロール200〜1200ppmを併用して粉末中に配合することで、油脂中に含まれる少量のDHA(油脂全体の1%)の酸化を抑制することが開示されている。これは、脂溶性抗酸化剤を使用することで油脂中に抗酸化剤を存在させ、かつ、抗酸化剤の併用効果を利用することで、効率よく不飽和脂肪酸含有油脂の酸化を抑制させようとするものである。しかしながら、不飽和脂肪酸含有油脂の含有量が増加するに従い、記述の配合量では酸化を抑制することができなく、また、配合量を増加させると粉末基剤とL−アスコルビン酸パルミテートが呈色反応を起こし、食品の見た目を著しく低下させることが懸念される。
【0007】
以上の様に、不飽和脂肪酸含有油脂の酸化抑制に対する様々な工夫が提案されているが、充分満足できるものではなく未だ検討の余地がある。
【0008】
【特許文献1】
特許第3142601号
【特許文献2】
特開平7−305088号公報
【特許文献3】
特公平8−11047号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、変色がなく酸化安定性に優れる不飽和脂肪酸含有油脂粉末を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、不飽和脂肪酸含有油脂の乳化物調製時又は、それ以前に、L−アスコルビン酸脂肪酸エステルとトコフェロールを配合し、且つ、乳化物中にアミノ酸又はアミノ酸残基を含まないことで、保存時の変色がなく酸化安定性に優れる不飽和脂肪酸含有油脂粉末が得られることを見出した。
【0011】
即ち、本発明は、不飽和脂肪酸含有油脂(A)、乳化剤(B)、水溶性糖類(C)及び水を含有するO/W型乳化物を乾燥させて得られる油脂粉末であって、L−アスコルビン酸脂肪酸エステル(D)及びトコフェロール(ビタミンEともいう)(E)を含有し、かつアミノ酸又はアミノ酸残基を実質上含まない、不飽和脂肪酸含有油脂粉末、並びにその製造法を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
[(A)成分]
(A)成分は、本発明により粉末化される不飽和脂肪酸含有油脂であり、油脂を構成する脂肪酸成分の一部又は全部が、不飽和脂肪酸である植物性油脂及び/又は動物性油脂が好ましい。植物性油脂としては、ナタネ油、大豆油、ヤシ油、パーム油、サフラワー油、オリーブ油、綿実油、コーン油、ひまわり油、紅花油、ゴマ油、米油、亜麻仁油、月見草油、ボラージ油、シソ実油等が挙げられ、動物性油脂としては、牛脂、豚脂、羊脂、魚油(マグロ、サバ、イワシ、カツオ、ニシン等)等が挙げられる。
【0013】
これらの中でも、炭素数18以上で、不飽和結合を2つ以上有する不飽和脂肪酸成分を含有する油脂が特に好ましい。具体的な不飽和脂肪酸成分としては、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、アラキドン酸(ADP)等が挙げられる。
【0014】
これらの(A)成分は、トリグリセリドでも、一部又は全部がジグリセリドの形態であっても良く、場合によっては少量のモノグリセリドが存在していても良い。中でもジグリセリドは、体内へ油が蓄積しにくい等の健康上の効果が認められ好適な実施形態である。(A)成分中のジグリセリドの含有量は、健康上の観点から30重量%以上が好ましく、55重量%以上が更に好ましい。また、(A)成分は、一部が水素添加により硬化したものであっても良い。
【0015】
これらの(A)成分は、必要に応じ2種以上の不飽和脂肪酸含有油脂を組合わせて使用しても良く、又、比較的酸化安定性に優れる他の油脂と混合して使用しても良い。
【0016】
不飽和脂肪酸含有油脂粉末中の(A)成分の含有量は、経済性,同量の油脂を摂取するための必要量、製品形態の自由度の観点から、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましい。又、油保持性(油の染み出し防止)の観点から、80重量%以下が好ましく、60重量%以下がより好ましい。従って、経済性,摂取の容易性、油保持性の観点から、不飽和脂肪酸含有油脂粉末中の(A)成分の含有量は、5〜80重量%が好ましく、10〜60重量%がより好ましい。
【0017】
[(B)成分]
(B)成分は、(A)成分を乳化させる為の乳化剤であり、安定に乳化させる機能を持つもので且つ主成分にアミノ酸又はアミノ酸残基を含まないことが望ましい。例えば、アラビアガム、キタンサンガム等のガム類、レシチン等のリン脂質、エステル化化工澱粉等の多糖類、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤等が挙げられる。これらの中では、抗酸化性及び粉末変色防止性の点で、多糖類又は非イオン界面活性剤が好ましく、特にエステル化化工澱粉が好ましい。
【0018】
エステル化化工澱粉は、澱粉に疎水基を導入し乳化機能を付与した澱粉である。その例としてはオクテニルコハク酸基を導入したものが市販されている。また、エステル化化工澱粉は、乳化工程における溶解性の面より、アルファー化処理されたものが好ましい。
【0019】
不飽和脂肪酸含有油脂粉末中の(B)成分の含有量は、乳化安定性の観点から、1重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましい。又、粉末の溶解性、コスト及び配合の自由度の観点から、50重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましい。従って、乳化安定性、溶解性、コスト及び配合の自由度の観点から、不飽和脂肪酸含有油脂粉末中の(B)成分の含有量は、1〜50重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましい。
【0020】
[(C)成分]
(C)成分は、(A)成分を固定化し粒子を形成させる為の賦形剤として用いられる、水溶性糖類である。主成分中にアミノ酸又はアミノ酸残基を含まないことが望ましく、具体的には、グルコース、果糖、乳糖、麦芽糖、蔗糖、デキストリン、シクロデキストリン、マルトース、フルクトース、プルラン、あるいはソルビトール、マンニトール等の糖アルコール等が挙げられる。この中でも、溶解性、吸湿性、粒子形成性の観点から、デキストリンが特に好ましい。又、これらの(C)成分は、必要に応じ2種以上組合わせて使用しても良い。
【0021】
不飽和脂肪酸含有油脂粉末中の(C)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の配合量により変動するので特に限定されないが、粒子形成性の観点から、5〜90重量%が好ましく、20〜70重量%がより好ましい。
【0022】
尚、(C)成分が(B)成分と同一の物質である場合、即ち(C)成分が乳化剤としての機能を有する場合には、両者を分けて考える必要はない。この様な具体例としては、アラビアガム、キタンサンガム等のガム類、エステル化化工澱粉等が挙げられる。その際の好ましい配合量としては、20〜95重量%である。
【0023】
[(D)成分]
(D)成分は、L−アスコルビン酸脂肪酸エステルであり、市場で容易に入手できる油溶性の化合物である。該エステルの種類としては、例えばL−アスコルビン酸パルミテート、L−アスコルビン酸ステアレート等が挙げられる。この2種類の抗酸化能は同様であるが、等量使用の場合、分子量が小さい分だけL−アスコルビン酸パルミテートの方が望ましい。また、必要に応じ2種を組合わせて使用しても良い。
【0024】
不飽和脂肪酸含有油脂粉末中の(D)成分の含有量は、十分な酸化抑制効果を得るために、(A)成分100重量部に対し、0.05重量部以上が好ましく、0.1重量部以上が更に好ましい。また味覚への影響を抑える観点から、5.0重量部以下が好ましく、2.0重量部以下が更に好ましい。
【0025】
[(E)成分]
(E)成分は、トコフェロールであり、ビタミンEと称される油溶性の化合物である。トコフェロールは、α−型、β−型、γ−型、δ−型等の各種の化学構造を有するものが知られているが、本発明ではいずれも使用することができる。また、天然物から採取した天然品或いは化学的手法で合成した合成品の区別なく使用できる。
【0026】
不飽和脂肪酸含有油脂粉末中の(E)成分の含有量は、十分な酸化抑制効果を得るために、(A)成分100重量部に対し、0.001重量部以上が好ましく、0.005重量部以上が更に好ましい。また味覚への影響を抑える観点から、5.0重量部以下が好ましく、2.0重量部以下が更に好ましい。
【0027】
[その他の成分]
本発明の不飽和脂肪酸含有油脂粉末には、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分以外にも、必要に応じ他の物質が含まれていても良い。例えば、増粘剤、防腐剤、着色剤、崩壊又は増量剤(水溶性無機塩類)、香料、油由来の抗酸化剤等が挙げられる。又、使用する原料及び製造プロセス由来の水分を含有しても良い。これらは、本発明の不飽和脂肪酸含有油脂粉末中に配合されても、別途配合されても良い。尚、不飽和脂肪酸含有油脂粉末中の水分含量は、菌増殖に関わる水分活性の観点から、10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましい。
【0028】
また、本発明の不飽和脂肪酸含有油脂粉末は、アミノ酸又はアミノ酸残基を実質上含まない。これらを実質上含まないことにより、保存時の変色を起こさず、高い酸化安定性を備えた油脂粉末となる。
【0029】
尚、ここで、「アミノ酸又はアミノ酸残基を実質上含まない」とは、アミノ酸、あるいはアミノ酸がペプチド結合により結合したペプチドや蛋白質等の油脂粉末中の含有量が5重量%以下であることを意味し、好ましくは1重量%以下であり、全く含まないことが更に好ましい。
【0030】
[不飽和脂肪酸含有油脂粉末の製造法]
本発明の不飽和脂肪酸含有油脂粉末の製造法は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分及び水を含有し、アミノ酸又はアミノ酸残基を実質上含まないO/W型乳化物を調製し、該乳化物を乾燥させて油脂粉末を得る方法である。その際に、油脂粉末の酸化安定性を更に向上させるために、O/W型乳化物を調製する工程において、乳化物中の酸素飽和率を30%以下、特に15%以下にすることが好ましい。
【0031】
ここで、酸素飽和率とは、市販のポーラログラフ型の溶存酸素計で測定される値であり、空気飽和水中の溶存酸素量を100%として、その状態に対して相対的に酸素濃度を表す数値である。
【0032】
乳化物中の溶存酸素を前記のごとく低減することで、乳化から乾燥までの工程においてラジカルの発生が抑制され、粉末化された後も粉末内部に存在する酸素が少ない為、酸化安定性が更に高い油脂粉末を得ることができる。
【0033】
O/W型乳化物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分及び水を混合することによって調製される。O/W型乳化物を調製する場合の各成分の混合方法は特に限定されないが、例えば、下記方法1及び2が挙げられる。
【0034】
方法1:水に(B)成分と(C)成分を溶解させた水相と、(A)成分に(D)成分と(E)成分を溶解又は分散させた油相を別々に調製し、攪拌下に水相と油相を混合する方法。この場合、水相を攪拌しておき、そこに油相を添加しても、油相を攪拌しておき、そこに水相を添加してもいずれでも良い。又、水相と油相を同時に添加し混合しても良い。
【0035】
方法2:水に(C)成分を溶解させた水相と、(A)成分に(B)成分と(D)成分と(E)成分を溶解又は分散させた油相を別々に調製し、攪拌下に水相と油相を混合する方法。この場合、水相を攪拌しておき、そこに油相を添加しても、油相を攪拌しておき、そこに水相を添加してもいずれでも良い。又、水相と油相を同時に添加し混合しても良い。
【0036】
乳化を行う場合に使用する乳化機としては、静止型乳化・分散機、一般的な攪拌機、ホモミキサー等の攪拌型乳化機、ホモジナイザー等の高圧乳化機を使用することが好ましい。特に、静止型乳化・分散機又は攪拌型乳化機で予備分散した後、高圧乳化機で処理すると、より均一で微細な乳化物が得られ好ましい。
【0037】
本発明に係わる乳化物の平均乳化粒径は、0.05〜20μmが好ましく、0.1〜10μmが更に好ましい。尚、この平均乳化粒径は、実施例の項に示す方法で測定することができる。
【0038】
本発明における乳化物中の溶存酸素低減操作は、上記の乳化物の調製工程において、減圧処理、窒素等の不活性ガスの通気、あるいは減圧と不活性ガス通気の併用等の処理法により行うことができる。これらの処理法の中でも、減圧と不活性ガス通気の併用操作が、溶存酸素低減の効率が高く好ましい。又、不活性ガスの通気は、乳化槽の気相部、液相部のいずれに通気しても良いが、液との接触を高め、溶存酸素の除去効率を上げる為には、攪拌下で液相部に通気することが好ましい。
【0039】
上記の溶存酸素低減操作を行う時期は、特に限定されないが、例えば、1)乳化操作を行う前、各種原料を各々溶存酸素低減操作を行ってから乳化するか、又は、水相と油相を調製する段階で溶存酸素低減操作を行う、2)乳化操作を行う際に、同時に溶存酸素低減操作を行う、3)乳化操作終了後に溶存酸素低減操作を行う等、いずれか又はそれらの組合せでも良い。特に、乳化操作前に溶存酸素低減操作を行うと、乳化初期におけるラジカルの発生防止及び酸素除去効率の観点から好ましい。尚、全ての時期に行うと更に好ましい。
【0040】
この様にして得られた酸素飽和率30%以下のO/W型乳化物を、乾燥することによって、酸化安定性に特に優れる不飽和脂肪酸含有油脂粉末が得られる。
【0041】
乾燥法は、一般的な方法を用いることができ、特に限定されないが、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、ベルト乾燥、棚乾燥、ドラム乾燥等が挙げられる。噴霧乾燥以外の方法で乾燥した場合には、所望の粒径の粒子を得る為に粉砕を行う。これらの乾燥法の中では、生産性、熱履歴、粒子形状等の観点から、噴霧乾燥法を用いるのが特に好ましい。
【0042】
尚、噴霧乾燥法で不飽和脂肪酸含有油脂粉末を形成させる場合、その粒径は、使用する噴霧ノズルにより任意に調整できるが、必要に応じ、更に得られた粒子を凝集させ凝集粒子とすることもできる。
【0043】
[不飽和脂肪酸含有油脂粉末]
本発明の不飽和脂肪酸含有油脂粉末は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分を含有し、前記製造法により製造された酸化安定性に優れる油脂粉末である。また、不飽和脂肪酸含有油脂粉末中には、実質上アミノ酸又はアミノ酸残基が含まれない。
【0044】
本発明の油脂粉末の平均粒径は、流動性及び溶解性の観点から10〜1000μmが好ましく、50〜500μmがより好ましい。尚、この平均粒径は、実施例の項に示す方法で測定することができる。又、本発明の油脂粉末は、単一粒子であっても凝集粒子であっても良い。
【0045】
本発明の油脂粉末中の水分含量は、菌増殖に関わる水分活性の観点から、10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましい。
【0046】
本発明の不飽和脂肪酸含有油脂粉末は、荷重を加えても成分が染み出し難いので、押出造粒、ブリケット、打錠等により、顆粒や錠剤とすることも可能である。また、本発明の油脂粉末は、粉末、顆粒、錠剤等の形態で服用することも可能であるが、水又はお湯に溶解し飲料として服用することや、他の材料と混合/焼成等の操作を行い、パンやクッキー等の固形食品とすることも可能である。
【0047】
この様に、本発明の不飽和脂肪酸含有油脂粉末は、酸化安定性が高く、且つ取扱い性及び形状加工性に優れる工業的に好ましい油脂粉末である。
【0048】
【実施例】
例中の%は、特記しない限り重量%である。また、以下の例において、乳化物中の酸素飽和率及び平均乳化粒径、油脂粉末の平均粒径、油脂粉末の水分含量は以下の方法で測定した。
【0049】
<乳化物中の酸素飽和率>
酸素飽和率の測定には、ポーラログラフ型の溶存酸素計(メトラー・トレド(株)製 MO128型)を採用した。乳化物を攪拌子の入った100mLの三角フラスコに空気が混入しないように注意深く分取し、大気下で校正した測定電極を装着して測定を行った。この時、フラスコ内に空気相が出来ない様に注意した。スターラーで乳化物を攪拌しながら、溶存酸素計のマニュアルに従い溶存酸素を測定した。測定により得られた%表示の値をその乳化物中の酸素飽和率とした。
【0050】
<乳化物の平均乳化粒径、油脂粉末の平均粒径>
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(堀場製作所(株)製)を用い、メジアン径を乳化物の平均乳化粒径又は油脂粉末の平均粒径とした。分散溶媒には、乳化物の平均乳化粒径を測定する場合には水、油脂粉末の平均粒径を測定する場合にはエタノールを使用した。測定においては、攪拌を中位(具体的には、測定装置LA−920の7段階の4)とし、サンプルを添加して所定濃度に調整後、油脂粉末測定時のみ中位レベル(具体的には、測定装置LA−920の7段階の4)の超音波を1分間照射し、各々の粒径を測定した。
【0051】
<油脂粉末の水分含量>
乾燥した平底皿に無水硫酸ナトリウム(1級)を20〜30g及び撹拌棒を入れ重量測定する。そこに試料(油脂粉末)を入れ重量を測定する(乾燥前の重量)。その後、撹拌棒で均一混合後、105℃の乾燥機にて2時間乾燥させる。乾燥後、デシケーター内で30分間、室温まで放冷し、重量を測定し(乾燥後の重量)、下記式で表される乾燥前後の重量差をパーセント表示したものを油脂粉末の水分含量とする。
【0052】
水分含量(%)=[(乾燥前の重量−乾燥後の重量)/乾燥後の重量]×100
実施例1
不飽和脂肪酸含有油脂としてボラージ油(ロシュ・ビタミン・ジャパン(株)製 ロプファ ボラージ油 タイプ25)を用いた。本油脂には抗酸化剤として、トコフェロール50ppm及びL−アスコルビン酸パルミテート200ppmが含有されている。下記の工程に従い不飽和脂肪酸含有油脂粉末を作製した。
【0053】
(1)水相の調製
3Lスケールのセパラブルフラスコに水720gを仕込み、デキストリン(松谷化学工業(株)製 パインデックス#2)180gを投入して完全に溶解した。その間及びその後、溶解時の空気混入防止と溶存酸素低減の為、水相に窒素を通気した(250NmL/min)。
【0054】
(2)油相の調製
3Lスケールのセパラブルフラスコにボラージ油240gを仕込み、タービン翼による攪拌下(150r/min:0.5m/s)、エマルスター#30A(エステル化化工澱粉;松谷化学製)60g、L−アスコルビン酸パルミテート2.40g(ロシュ・ビタミン・ジャパン(株)製)を添加し10分間攪拌して分散/溶解した。その間及びその後、溶解時の空気混入防止と溶存酸素低減の為、油相に窒素を通気した(250NmL/min)。
【0055】
(3)乳化
上記の操作で得られた油相302.40gに、水相900gを添加し、液部に窒素を通気した(250NmL/min)状態で、攪拌下(150r/min:1.0m/s)、30分間予備乳化操作を行い乳化物を得た。得られた乳化物の酸素飽和率は1.1%であった。
【0056】
次に、予備乳化物を、高圧ホモゲナイザー(ナノマイザー製)を用い、一次圧力35MPaで処理し、乾燥用のO/W型の均質乳化物を得た。この間、高圧乳化処理にかけられる予備乳化物は、大気圧下、窒素雰囲気状態とした。又、高圧乳化物も同様な状態とし、大気からの空気混入を防止した。乾燥直前の乳化物の酸素飽和率は、予備乳化物と同様であった。又、平均乳化粒径は約0.41μmであった。
【0057】
(4)乾燥
上記の乳化操作で得られた乳化物を、噴霧乾燥機(東京理化器機(株)製 SD−1000型)を用い、乳化物供給量600g/hr、送風温度150℃、排風温度80℃の条件で噴霧乾燥し、平均粒径12.5μmのボラージ油粉末を得た。
【0058】
比較例1
L−アスコルビン酸パルミテートを配合せず、乳化剤をカゼインナトリウム(三栄源FFI(株)製)に置き換えた以外は実施例1と同様の操作を行い、ボラージ油粉末を得た。
【0059】
比較例2
L−アスコルビン酸パルミテートを配合せず、乳化剤をカゼインナトリウムに置き換え、更にトコフェロール(理研Eオイル600;理研ビタミン製)を油相調合時に0.48g添加した以外は実施例1と同様の操作を行い、ボラージ油粉末を得た。
【0060】
比較例3
L−アスコルビン酸パルミテートの配合量を0.36gに変更し、乳化剤をカゼインナトリウムに置き換えた以外は実施例1と同様の操作を行い、ボラージ油粉末を得た。
【0061】
比較例4
L−アスコルビン酸パルミテートの配合量を1.20gに変更し、乳化剤をカゼインナトリウムに置き換えた以外は実施例1と同様の操作を行い、ボラージ油粉末を得た。
【0062】
比較例5
乳化剤をカゼインナトリウムに置き換えた以外は実施例1と同様の操作を行い、ボラージ油粉末を得た。
【0063】
比較例6
L−アスコルビン酸パルミテートを配合せず、乳化剤をカゼインナトリウムに置き換え、更にアスコルビン酸Na(シグマ・アルドリッチ・ジャパン製)を水相に2.40gを配合した以外は実施例1と同様の操作を行い、ボラージ油粉末を得た。
【0064】
実施例1及び比較例1〜6で得られた油脂粉末の組成、水分含量及び乾燥直前の乳化物の酸素飽和率をまとめて表1に示す。
【0065】
試験例1
実施例1及び比較例1〜6で得られた油脂粉末の酸化安定性及び粉末色を、以下の測定方法に従って測定した。結果を表1に示す。
【0066】
<酸化安定性>
油脂粉末を50mLのスクリュー管に約6割充填し、栓をせずに、50℃に設定した恒温槽で所定日数保存した。所定日数保存した油脂粉末から、高速溶媒抽出装置(日本ダイオネクス(株)製 ASE−200型)を用いて含有する油脂を抽出した。この時、抽出溶媒として、イソプロパノール/ヘキサン混合溶媒(比率4:6)を用い、抽出温度125℃、抽出圧力7MPaとし、抽出操作を3回行った。得られた抽出液から、30℃、減圧下で溶媒を除去し、酸化安定性評価用サンプル油脂を調製した。
【0067】
この様にして得た抽出油脂のPOV(過酸化物価)を測定し、その値を酸化の指標とした。尚、POVの測定は、基準油脂分析測定法(社団法人日本油化学会、1996年)に基づき実施した。
【0068】
<粉末色>
油脂粉末を50mLのスクリュー管に約6割充填し、栓をせずに、50℃に設定した恒温槽で所定日数保存した。所定日数保存した油脂粉末を軽く圧密して表面を平たくした後、色彩色差計CR−300(ミノルタ(株)製)を用いて測定を行った。a値のプラス(+)の値が高いほど測定物が赤色であることを示し、マイナス(−)の値が高いほど測定物が緑色であることを示している。また、a値がゼロに近いほど測定物は白色に近くなることを示している。
【0069】
【表1】
【0070】
表1の結果から、実施例1で得られた油脂粉末は高い酸化安定性及び変色防止性を示すのに対し、比較例1〜6で得られた油脂粉末は酸化及び変色し易いものであることがわかる。
【0071】
【発明の効果】
本発明の油脂粉末は、抗酸化剤としてL−アスコルビン酸脂肪酸エステルとトコフェロールを併用して配合することで酸化安定性の高い不飽和脂肪酸含有油脂粉末が得られる。また、L−アスコルビン酸脂肪酸エステルの配合量を増加させることで、酸化抑制の度合を高くすることができるが、乳化剤として、カゼインナトリウム等の蛋白質を用いた場合には、保存時に変色を起こし、著しく商品価値が低下する。これに対し、本発明では、乳化剤としてアミノ酸又は蛋白質等のアミノ酸残基を含まないものを選定することで、粉末の変色がなく、酸化安定性のより高い不飽和脂肪酸含有油脂粉末を得ることができる。また、本発明の製造法は製造工程もシンプルであり工業的に有利である。
【0072】
更に、本発明の不飽和脂肪酸含有油脂粉末は、水に対する溶解・分散性が高く、油脂が染み出し難いので、顆粒化や錠剤化することも容易であり、製品形態の多様化への対応性が高い。
【発明の属する技術分野】
本発明は、変色を防ぎ且つ酸化安定性に優れた機能的な不飽和脂肪酸含有油脂粉末及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
油脂は、栄養源あるいは生理活性(薬効)物質として配合素材、製品として有用である。特に、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、アラキドン酸(ADP)等に代表される不飽和脂肪酸を構成脂肪酸として含む不飽和脂肪酸含有油脂は、健康との関わりが深い多様な生理機能を発現することから、健康食品や医薬品等への利用が活発となってきている。
【0003】
これらの不飽和脂肪酸含有油脂は、液状でも有用であるが、粉末化することにより新たな機能を付加することができる。例えば、配合の自由度向上、加工性の付与、安定性向上等が挙げられ、これらの機能を有効に活用することで、多様な商品を作り出すことが可能である。しかしながら、不飽和脂肪酸含有油脂は、酸化に対する安定性が極めて低く、酸化安定性に優れる粉末を得ることは困難であった。
【0004】
かかる欠点を解決すべく、特許文献1には、ビタミンC及び/又はその塩を特定比率配合することを特徴とする保存性が改善された魚油添加粉乳及びその製造方法が開示されている。これは、乳化工程で失活する抗酸化剤量を見込んで、過剰に抗酸化剤を配合するものであるが、不飽和脂肪酸含有油脂に対する抗酸化剤の配合量が多く、味覚への影響が懸念される。
【0005】
又、特許文献2には、W/O型に乳化されたアスコルビン酸又はその塩を油脂中に分散させ、噴霧乾燥する方法が開示されている。これは、水溶性抗酸化剤を油脂中に分散させることによりその効果を向上させたもので、抗酸化剤は少量で良いが、乳化操作が煩雑となる。
【0006】
又、特許文献3には、脂溶性抗酸化剤であるL−アスコルビン酸パルミテート400〜1200ppm,β−カロチン6〜20ppm,混合トコフェロール200〜1200ppmを併用して粉末中に配合することで、油脂中に含まれる少量のDHA(油脂全体の1%)の酸化を抑制することが開示されている。これは、脂溶性抗酸化剤を使用することで油脂中に抗酸化剤を存在させ、かつ、抗酸化剤の併用効果を利用することで、効率よく不飽和脂肪酸含有油脂の酸化を抑制させようとするものである。しかしながら、不飽和脂肪酸含有油脂の含有量が増加するに従い、記述の配合量では酸化を抑制することができなく、また、配合量を増加させると粉末基剤とL−アスコルビン酸パルミテートが呈色反応を起こし、食品の見た目を著しく低下させることが懸念される。
【0007】
以上の様に、不飽和脂肪酸含有油脂の酸化抑制に対する様々な工夫が提案されているが、充分満足できるものではなく未だ検討の余地がある。
【0008】
【特許文献1】
特許第3142601号
【特許文献2】
特開平7−305088号公報
【特許文献3】
特公平8−11047号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、変色がなく酸化安定性に優れる不飽和脂肪酸含有油脂粉末を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、不飽和脂肪酸含有油脂の乳化物調製時又は、それ以前に、L−アスコルビン酸脂肪酸エステルとトコフェロールを配合し、且つ、乳化物中にアミノ酸又はアミノ酸残基を含まないことで、保存時の変色がなく酸化安定性に優れる不飽和脂肪酸含有油脂粉末が得られることを見出した。
【0011】
即ち、本発明は、不飽和脂肪酸含有油脂(A)、乳化剤(B)、水溶性糖類(C)及び水を含有するO/W型乳化物を乾燥させて得られる油脂粉末であって、L−アスコルビン酸脂肪酸エステル(D)及びトコフェロール(ビタミンEともいう)(E)を含有し、かつアミノ酸又はアミノ酸残基を実質上含まない、不飽和脂肪酸含有油脂粉末、並びにその製造法を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
[(A)成分]
(A)成分は、本発明により粉末化される不飽和脂肪酸含有油脂であり、油脂を構成する脂肪酸成分の一部又は全部が、不飽和脂肪酸である植物性油脂及び/又は動物性油脂が好ましい。植物性油脂としては、ナタネ油、大豆油、ヤシ油、パーム油、サフラワー油、オリーブ油、綿実油、コーン油、ひまわり油、紅花油、ゴマ油、米油、亜麻仁油、月見草油、ボラージ油、シソ実油等が挙げられ、動物性油脂としては、牛脂、豚脂、羊脂、魚油(マグロ、サバ、イワシ、カツオ、ニシン等)等が挙げられる。
【0013】
これらの中でも、炭素数18以上で、不飽和結合を2つ以上有する不飽和脂肪酸成分を含有する油脂が特に好ましい。具体的な不飽和脂肪酸成分としては、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、アラキドン酸(ADP)等が挙げられる。
【0014】
これらの(A)成分は、トリグリセリドでも、一部又は全部がジグリセリドの形態であっても良く、場合によっては少量のモノグリセリドが存在していても良い。中でもジグリセリドは、体内へ油が蓄積しにくい等の健康上の効果が認められ好適な実施形態である。(A)成分中のジグリセリドの含有量は、健康上の観点から30重量%以上が好ましく、55重量%以上が更に好ましい。また、(A)成分は、一部が水素添加により硬化したものであっても良い。
【0015】
これらの(A)成分は、必要に応じ2種以上の不飽和脂肪酸含有油脂を組合わせて使用しても良く、又、比較的酸化安定性に優れる他の油脂と混合して使用しても良い。
【0016】
不飽和脂肪酸含有油脂粉末中の(A)成分の含有量は、経済性,同量の油脂を摂取するための必要量、製品形態の自由度の観点から、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましい。又、油保持性(油の染み出し防止)の観点から、80重量%以下が好ましく、60重量%以下がより好ましい。従って、経済性,摂取の容易性、油保持性の観点から、不飽和脂肪酸含有油脂粉末中の(A)成分の含有量は、5〜80重量%が好ましく、10〜60重量%がより好ましい。
【0017】
[(B)成分]
(B)成分は、(A)成分を乳化させる為の乳化剤であり、安定に乳化させる機能を持つもので且つ主成分にアミノ酸又はアミノ酸残基を含まないことが望ましい。例えば、アラビアガム、キタンサンガム等のガム類、レシチン等のリン脂質、エステル化化工澱粉等の多糖類、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤等が挙げられる。これらの中では、抗酸化性及び粉末変色防止性の点で、多糖類又は非イオン界面活性剤が好ましく、特にエステル化化工澱粉が好ましい。
【0018】
エステル化化工澱粉は、澱粉に疎水基を導入し乳化機能を付与した澱粉である。その例としてはオクテニルコハク酸基を導入したものが市販されている。また、エステル化化工澱粉は、乳化工程における溶解性の面より、アルファー化処理されたものが好ましい。
【0019】
不飽和脂肪酸含有油脂粉末中の(B)成分の含有量は、乳化安定性の観点から、1重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましい。又、粉末の溶解性、コスト及び配合の自由度の観点から、50重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましい。従って、乳化安定性、溶解性、コスト及び配合の自由度の観点から、不飽和脂肪酸含有油脂粉末中の(B)成分の含有量は、1〜50重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましい。
【0020】
[(C)成分]
(C)成分は、(A)成分を固定化し粒子を形成させる為の賦形剤として用いられる、水溶性糖類である。主成分中にアミノ酸又はアミノ酸残基を含まないことが望ましく、具体的には、グルコース、果糖、乳糖、麦芽糖、蔗糖、デキストリン、シクロデキストリン、マルトース、フルクトース、プルラン、あるいはソルビトール、マンニトール等の糖アルコール等が挙げられる。この中でも、溶解性、吸湿性、粒子形成性の観点から、デキストリンが特に好ましい。又、これらの(C)成分は、必要に応じ2種以上組合わせて使用しても良い。
【0021】
不飽和脂肪酸含有油脂粉末中の(C)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の配合量により変動するので特に限定されないが、粒子形成性の観点から、5〜90重量%が好ましく、20〜70重量%がより好ましい。
【0022】
尚、(C)成分が(B)成分と同一の物質である場合、即ち(C)成分が乳化剤としての機能を有する場合には、両者を分けて考える必要はない。この様な具体例としては、アラビアガム、キタンサンガム等のガム類、エステル化化工澱粉等が挙げられる。その際の好ましい配合量としては、20〜95重量%である。
【0023】
[(D)成分]
(D)成分は、L−アスコルビン酸脂肪酸エステルであり、市場で容易に入手できる油溶性の化合物である。該エステルの種類としては、例えばL−アスコルビン酸パルミテート、L−アスコルビン酸ステアレート等が挙げられる。この2種類の抗酸化能は同様であるが、等量使用の場合、分子量が小さい分だけL−アスコルビン酸パルミテートの方が望ましい。また、必要に応じ2種を組合わせて使用しても良い。
【0024】
不飽和脂肪酸含有油脂粉末中の(D)成分の含有量は、十分な酸化抑制効果を得るために、(A)成分100重量部に対し、0.05重量部以上が好ましく、0.1重量部以上が更に好ましい。また味覚への影響を抑える観点から、5.0重量部以下が好ましく、2.0重量部以下が更に好ましい。
【0025】
[(E)成分]
(E)成分は、トコフェロールであり、ビタミンEと称される油溶性の化合物である。トコフェロールは、α−型、β−型、γ−型、δ−型等の各種の化学構造を有するものが知られているが、本発明ではいずれも使用することができる。また、天然物から採取した天然品或いは化学的手法で合成した合成品の区別なく使用できる。
【0026】
不飽和脂肪酸含有油脂粉末中の(E)成分の含有量は、十分な酸化抑制効果を得るために、(A)成分100重量部に対し、0.001重量部以上が好ましく、0.005重量部以上が更に好ましい。また味覚への影響を抑える観点から、5.0重量部以下が好ましく、2.0重量部以下が更に好ましい。
【0027】
[その他の成分]
本発明の不飽和脂肪酸含有油脂粉末には、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分以外にも、必要に応じ他の物質が含まれていても良い。例えば、増粘剤、防腐剤、着色剤、崩壊又は増量剤(水溶性無機塩類)、香料、油由来の抗酸化剤等が挙げられる。又、使用する原料及び製造プロセス由来の水分を含有しても良い。これらは、本発明の不飽和脂肪酸含有油脂粉末中に配合されても、別途配合されても良い。尚、不飽和脂肪酸含有油脂粉末中の水分含量は、菌増殖に関わる水分活性の観点から、10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましい。
【0028】
また、本発明の不飽和脂肪酸含有油脂粉末は、アミノ酸又はアミノ酸残基を実質上含まない。これらを実質上含まないことにより、保存時の変色を起こさず、高い酸化安定性を備えた油脂粉末となる。
【0029】
尚、ここで、「アミノ酸又はアミノ酸残基を実質上含まない」とは、アミノ酸、あるいはアミノ酸がペプチド結合により結合したペプチドや蛋白質等の油脂粉末中の含有量が5重量%以下であることを意味し、好ましくは1重量%以下であり、全く含まないことが更に好ましい。
【0030】
[不飽和脂肪酸含有油脂粉末の製造法]
本発明の不飽和脂肪酸含有油脂粉末の製造法は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分及び水を含有し、アミノ酸又はアミノ酸残基を実質上含まないO/W型乳化物を調製し、該乳化物を乾燥させて油脂粉末を得る方法である。その際に、油脂粉末の酸化安定性を更に向上させるために、O/W型乳化物を調製する工程において、乳化物中の酸素飽和率を30%以下、特に15%以下にすることが好ましい。
【0031】
ここで、酸素飽和率とは、市販のポーラログラフ型の溶存酸素計で測定される値であり、空気飽和水中の溶存酸素量を100%として、その状態に対して相対的に酸素濃度を表す数値である。
【0032】
乳化物中の溶存酸素を前記のごとく低減することで、乳化から乾燥までの工程においてラジカルの発生が抑制され、粉末化された後も粉末内部に存在する酸素が少ない為、酸化安定性が更に高い油脂粉末を得ることができる。
【0033】
O/W型乳化物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分及び水を混合することによって調製される。O/W型乳化物を調製する場合の各成分の混合方法は特に限定されないが、例えば、下記方法1及び2が挙げられる。
【0034】
方法1:水に(B)成分と(C)成分を溶解させた水相と、(A)成分に(D)成分と(E)成分を溶解又は分散させた油相を別々に調製し、攪拌下に水相と油相を混合する方法。この場合、水相を攪拌しておき、そこに油相を添加しても、油相を攪拌しておき、そこに水相を添加してもいずれでも良い。又、水相と油相を同時に添加し混合しても良い。
【0035】
方法2:水に(C)成分を溶解させた水相と、(A)成分に(B)成分と(D)成分と(E)成分を溶解又は分散させた油相を別々に調製し、攪拌下に水相と油相を混合する方法。この場合、水相を攪拌しておき、そこに油相を添加しても、油相を攪拌しておき、そこに水相を添加してもいずれでも良い。又、水相と油相を同時に添加し混合しても良い。
【0036】
乳化を行う場合に使用する乳化機としては、静止型乳化・分散機、一般的な攪拌機、ホモミキサー等の攪拌型乳化機、ホモジナイザー等の高圧乳化機を使用することが好ましい。特に、静止型乳化・分散機又は攪拌型乳化機で予備分散した後、高圧乳化機で処理すると、より均一で微細な乳化物が得られ好ましい。
【0037】
本発明に係わる乳化物の平均乳化粒径は、0.05〜20μmが好ましく、0.1〜10μmが更に好ましい。尚、この平均乳化粒径は、実施例の項に示す方法で測定することができる。
【0038】
本発明における乳化物中の溶存酸素低減操作は、上記の乳化物の調製工程において、減圧処理、窒素等の不活性ガスの通気、あるいは減圧と不活性ガス通気の併用等の処理法により行うことができる。これらの処理法の中でも、減圧と不活性ガス通気の併用操作が、溶存酸素低減の効率が高く好ましい。又、不活性ガスの通気は、乳化槽の気相部、液相部のいずれに通気しても良いが、液との接触を高め、溶存酸素の除去効率を上げる為には、攪拌下で液相部に通気することが好ましい。
【0039】
上記の溶存酸素低減操作を行う時期は、特に限定されないが、例えば、1)乳化操作を行う前、各種原料を各々溶存酸素低減操作を行ってから乳化するか、又は、水相と油相を調製する段階で溶存酸素低減操作を行う、2)乳化操作を行う際に、同時に溶存酸素低減操作を行う、3)乳化操作終了後に溶存酸素低減操作を行う等、いずれか又はそれらの組合せでも良い。特に、乳化操作前に溶存酸素低減操作を行うと、乳化初期におけるラジカルの発生防止及び酸素除去効率の観点から好ましい。尚、全ての時期に行うと更に好ましい。
【0040】
この様にして得られた酸素飽和率30%以下のO/W型乳化物を、乾燥することによって、酸化安定性に特に優れる不飽和脂肪酸含有油脂粉末が得られる。
【0041】
乾燥法は、一般的な方法を用いることができ、特に限定されないが、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、ベルト乾燥、棚乾燥、ドラム乾燥等が挙げられる。噴霧乾燥以外の方法で乾燥した場合には、所望の粒径の粒子を得る為に粉砕を行う。これらの乾燥法の中では、生産性、熱履歴、粒子形状等の観点から、噴霧乾燥法を用いるのが特に好ましい。
【0042】
尚、噴霧乾燥法で不飽和脂肪酸含有油脂粉末を形成させる場合、その粒径は、使用する噴霧ノズルにより任意に調整できるが、必要に応じ、更に得られた粒子を凝集させ凝集粒子とすることもできる。
【0043】
[不飽和脂肪酸含有油脂粉末]
本発明の不飽和脂肪酸含有油脂粉末は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分を含有し、前記製造法により製造された酸化安定性に優れる油脂粉末である。また、不飽和脂肪酸含有油脂粉末中には、実質上アミノ酸又はアミノ酸残基が含まれない。
【0044】
本発明の油脂粉末の平均粒径は、流動性及び溶解性の観点から10〜1000μmが好ましく、50〜500μmがより好ましい。尚、この平均粒径は、実施例の項に示す方法で測定することができる。又、本発明の油脂粉末は、単一粒子であっても凝集粒子であっても良い。
【0045】
本発明の油脂粉末中の水分含量は、菌増殖に関わる水分活性の観点から、10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましい。
【0046】
本発明の不飽和脂肪酸含有油脂粉末は、荷重を加えても成分が染み出し難いので、押出造粒、ブリケット、打錠等により、顆粒や錠剤とすることも可能である。また、本発明の油脂粉末は、粉末、顆粒、錠剤等の形態で服用することも可能であるが、水又はお湯に溶解し飲料として服用することや、他の材料と混合/焼成等の操作を行い、パンやクッキー等の固形食品とすることも可能である。
【0047】
この様に、本発明の不飽和脂肪酸含有油脂粉末は、酸化安定性が高く、且つ取扱い性及び形状加工性に優れる工業的に好ましい油脂粉末である。
【0048】
【実施例】
例中の%は、特記しない限り重量%である。また、以下の例において、乳化物中の酸素飽和率及び平均乳化粒径、油脂粉末の平均粒径、油脂粉末の水分含量は以下の方法で測定した。
【0049】
<乳化物中の酸素飽和率>
酸素飽和率の測定には、ポーラログラフ型の溶存酸素計(メトラー・トレド(株)製 MO128型)を採用した。乳化物を攪拌子の入った100mLの三角フラスコに空気が混入しないように注意深く分取し、大気下で校正した測定電極を装着して測定を行った。この時、フラスコ内に空気相が出来ない様に注意した。スターラーで乳化物を攪拌しながら、溶存酸素計のマニュアルに従い溶存酸素を測定した。測定により得られた%表示の値をその乳化物中の酸素飽和率とした。
【0050】
<乳化物の平均乳化粒径、油脂粉末の平均粒径>
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(堀場製作所(株)製)を用い、メジアン径を乳化物の平均乳化粒径又は油脂粉末の平均粒径とした。分散溶媒には、乳化物の平均乳化粒径を測定する場合には水、油脂粉末の平均粒径を測定する場合にはエタノールを使用した。測定においては、攪拌を中位(具体的には、測定装置LA−920の7段階の4)とし、サンプルを添加して所定濃度に調整後、油脂粉末測定時のみ中位レベル(具体的には、測定装置LA−920の7段階の4)の超音波を1分間照射し、各々の粒径を測定した。
【0051】
<油脂粉末の水分含量>
乾燥した平底皿に無水硫酸ナトリウム(1級)を20〜30g及び撹拌棒を入れ重量測定する。そこに試料(油脂粉末)を入れ重量を測定する(乾燥前の重量)。その後、撹拌棒で均一混合後、105℃の乾燥機にて2時間乾燥させる。乾燥後、デシケーター内で30分間、室温まで放冷し、重量を測定し(乾燥後の重量)、下記式で表される乾燥前後の重量差をパーセント表示したものを油脂粉末の水分含量とする。
【0052】
水分含量(%)=[(乾燥前の重量−乾燥後の重量)/乾燥後の重量]×100
実施例1
不飽和脂肪酸含有油脂としてボラージ油(ロシュ・ビタミン・ジャパン(株)製 ロプファ ボラージ油 タイプ25)を用いた。本油脂には抗酸化剤として、トコフェロール50ppm及びL−アスコルビン酸パルミテート200ppmが含有されている。下記の工程に従い不飽和脂肪酸含有油脂粉末を作製した。
【0053】
(1)水相の調製
3Lスケールのセパラブルフラスコに水720gを仕込み、デキストリン(松谷化学工業(株)製 パインデックス#2)180gを投入して完全に溶解した。その間及びその後、溶解時の空気混入防止と溶存酸素低減の為、水相に窒素を通気した(250NmL/min)。
【0054】
(2)油相の調製
3Lスケールのセパラブルフラスコにボラージ油240gを仕込み、タービン翼による攪拌下(150r/min:0.5m/s)、エマルスター#30A(エステル化化工澱粉;松谷化学製)60g、L−アスコルビン酸パルミテート2.40g(ロシュ・ビタミン・ジャパン(株)製)を添加し10分間攪拌して分散/溶解した。その間及びその後、溶解時の空気混入防止と溶存酸素低減の為、油相に窒素を通気した(250NmL/min)。
【0055】
(3)乳化
上記の操作で得られた油相302.40gに、水相900gを添加し、液部に窒素を通気した(250NmL/min)状態で、攪拌下(150r/min:1.0m/s)、30分間予備乳化操作を行い乳化物を得た。得られた乳化物の酸素飽和率は1.1%であった。
【0056】
次に、予備乳化物を、高圧ホモゲナイザー(ナノマイザー製)を用い、一次圧力35MPaで処理し、乾燥用のO/W型の均質乳化物を得た。この間、高圧乳化処理にかけられる予備乳化物は、大気圧下、窒素雰囲気状態とした。又、高圧乳化物も同様な状態とし、大気からの空気混入を防止した。乾燥直前の乳化物の酸素飽和率は、予備乳化物と同様であった。又、平均乳化粒径は約0.41μmであった。
【0057】
(4)乾燥
上記の乳化操作で得られた乳化物を、噴霧乾燥機(東京理化器機(株)製 SD−1000型)を用い、乳化物供給量600g/hr、送風温度150℃、排風温度80℃の条件で噴霧乾燥し、平均粒径12.5μmのボラージ油粉末を得た。
【0058】
比較例1
L−アスコルビン酸パルミテートを配合せず、乳化剤をカゼインナトリウム(三栄源FFI(株)製)に置き換えた以外は実施例1と同様の操作を行い、ボラージ油粉末を得た。
【0059】
比較例2
L−アスコルビン酸パルミテートを配合せず、乳化剤をカゼインナトリウムに置き換え、更にトコフェロール(理研Eオイル600;理研ビタミン製)を油相調合時に0.48g添加した以外は実施例1と同様の操作を行い、ボラージ油粉末を得た。
【0060】
比較例3
L−アスコルビン酸パルミテートの配合量を0.36gに変更し、乳化剤をカゼインナトリウムに置き換えた以外は実施例1と同様の操作を行い、ボラージ油粉末を得た。
【0061】
比較例4
L−アスコルビン酸パルミテートの配合量を1.20gに変更し、乳化剤をカゼインナトリウムに置き換えた以外は実施例1と同様の操作を行い、ボラージ油粉末を得た。
【0062】
比較例5
乳化剤をカゼインナトリウムに置き換えた以外は実施例1と同様の操作を行い、ボラージ油粉末を得た。
【0063】
比較例6
L−アスコルビン酸パルミテートを配合せず、乳化剤をカゼインナトリウムに置き換え、更にアスコルビン酸Na(シグマ・アルドリッチ・ジャパン製)を水相に2.40gを配合した以外は実施例1と同様の操作を行い、ボラージ油粉末を得た。
【0064】
実施例1及び比較例1〜6で得られた油脂粉末の組成、水分含量及び乾燥直前の乳化物の酸素飽和率をまとめて表1に示す。
【0065】
試験例1
実施例1及び比較例1〜6で得られた油脂粉末の酸化安定性及び粉末色を、以下の測定方法に従って測定した。結果を表1に示す。
【0066】
<酸化安定性>
油脂粉末を50mLのスクリュー管に約6割充填し、栓をせずに、50℃に設定した恒温槽で所定日数保存した。所定日数保存した油脂粉末から、高速溶媒抽出装置(日本ダイオネクス(株)製 ASE−200型)を用いて含有する油脂を抽出した。この時、抽出溶媒として、イソプロパノール/ヘキサン混合溶媒(比率4:6)を用い、抽出温度125℃、抽出圧力7MPaとし、抽出操作を3回行った。得られた抽出液から、30℃、減圧下で溶媒を除去し、酸化安定性評価用サンプル油脂を調製した。
【0067】
この様にして得た抽出油脂のPOV(過酸化物価)を測定し、その値を酸化の指標とした。尚、POVの測定は、基準油脂分析測定法(社団法人日本油化学会、1996年)に基づき実施した。
【0068】
<粉末色>
油脂粉末を50mLのスクリュー管に約6割充填し、栓をせずに、50℃に設定した恒温槽で所定日数保存した。所定日数保存した油脂粉末を軽く圧密して表面を平たくした後、色彩色差計CR−300(ミノルタ(株)製)を用いて測定を行った。a値のプラス(+)の値が高いほど測定物が赤色であることを示し、マイナス(−)の値が高いほど測定物が緑色であることを示している。また、a値がゼロに近いほど測定物は白色に近くなることを示している。
【0069】
【表1】
【0070】
表1の結果から、実施例1で得られた油脂粉末は高い酸化安定性及び変色防止性を示すのに対し、比較例1〜6で得られた油脂粉末は酸化及び変色し易いものであることがわかる。
【0071】
【発明の効果】
本発明の油脂粉末は、抗酸化剤としてL−アスコルビン酸脂肪酸エステルとトコフェロールを併用して配合することで酸化安定性の高い不飽和脂肪酸含有油脂粉末が得られる。また、L−アスコルビン酸脂肪酸エステルの配合量を増加させることで、酸化抑制の度合を高くすることができるが、乳化剤として、カゼインナトリウム等の蛋白質を用いた場合には、保存時に変色を起こし、著しく商品価値が低下する。これに対し、本発明では、乳化剤としてアミノ酸又は蛋白質等のアミノ酸残基を含まないものを選定することで、粉末の変色がなく、酸化安定性のより高い不飽和脂肪酸含有油脂粉末を得ることができる。また、本発明の製造法は製造工程もシンプルであり工業的に有利である。
【0072】
更に、本発明の不飽和脂肪酸含有油脂粉末は、水に対する溶解・分散性が高く、油脂が染み出し難いので、顆粒化や錠剤化することも容易であり、製品形態の多様化への対応性が高い。
Claims (6)
- 不飽和脂肪酸含有油脂(A)、乳化剤(B)、水溶性糖類(C)及び水を含有するO/W型乳化物を乾燥させて得られる油脂粉末であって、L−アスコルビン酸脂肪酸エステル(D)及びトコフェロール(ビタミンEともいう)(E)を含有し、かつアミノ酸又はアミノ酸残基を実質上含まない、不飽和脂肪酸含有油脂粉末。
- 乳化剤(B)が、多糖類及び非イオン界面活性剤から選ばれる少なくとも1種である、請求項1記載の不飽和脂肪酸含有油脂粉末。
- 乳化剤(B)がエステル化化工澱粉である請求項1記載の不飽和脂肪酸含有油脂粉末。
- 不飽和脂肪酸含有油脂(A)が、ジグリセリドを30重量%以上含む油脂である請求項1〜3いずれかに記載の不飽和脂肪酸含有油脂粉末。
- 不飽和脂肪酸含有油脂(A)、乳化剤(B)、水溶性糖類(C)、L−アスコルビン酸脂肪酸エステル(D)、トコフェロール(E)及び水を含有し、アミノ酸又はアミノ酸残基を実質上含まないO/W型乳化物を調製し、該乳化物を乾燥させて油脂粉末を得る、請求項1〜4いずれかに記載の不飽和脂肪酸含有油脂粉末の製造法。
- O/W型乳化物を調製する工程において、乳化物中の酸素飽和率を30%以下にする、請求項5記載の製造法。
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