JP2007028901A - 水中油型乳化物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】油脂、無脂乳固形、及び水を含む未乳化乃至乳化途中の原料混合物の溶存酸素量を、予備乳化工程途中以前に低下せしめ、乳化物を得た後に加熱殺菌及び冷却を行うことを特徴とする水中油型乳化物の製造方法であり、溶存酸素量の低下された原料混合物の調製を、予め溶存酸素を低下せしめた水性原料の使用、窒素シールされていた油脂の使用、又は、ヘッドスペースを窒素ガスで満たした装置中での予備乳化、のいずれか1以上の手段により行う、水中油型乳化物の製造方法。
【選択図】図1
Description
具体的には、水中油型乳化物はプリン、ゼリー等のデザート類の上に添加したり、プリン、ババロア、ゼリー等の練り込み用に使用されたり、更に水中油型乳化物がケーキ等のデコレーションやサンド等に用いられる起泡性水中油型乳化物(ホイップクリーム)に使用されたりしている。
水中油型乳化物には生クリーム、コンパウンドクリーム、合成クリーム、生乳、濃縮乳、無脂乳固形分含有水中油型乳化物等がある。
食品の風味劣化を防止する方法としては、特許文献1では、構成成分である水として、脱気された水を使用することを特徴とする果汁または清涼飲料水の製造法が提案され、特許文献2では、乳、又は乳を含有する未加熱液を、加熱処理する前に液中溶存酸素を低下せしめた状態で加熱処理すること、を特徴とする生乳又は未加熱液に近似した風味を有する飲料を製造する方法が提案されているが、これらのものは果汁または飲料の製造法であり、水中油型乳化物の製造方法とは異なるものである。同じような水中油型乳化物では、特許文献3に、牛乳等の溶存酸素を窒素ガスと置換して殺菌する方法において、牛乳等に窒素ガスを直接混合分散する手段と、窒素ガスを混入していない牛乳等を、窒素ガス雰囲気下の窒素ガス置換タンク内に貯留された窒素ガスを混合分散した牛乳等に、上方からノズルで噴霧する手段とを併用して、溶存酸素と窒素ガスとの置換により牛乳等の溶存酸素量を低下させた後、殺菌することを特徴とした牛乳等の溶存酸素と窒素ガスと置換して殺菌する方法が提案されているが、装置が大掛かりな上に、本発明のクリーム状の水中油型乳化物は牛乳に比較して粘度が高く適応できなかった。特許文献4では、クリーム類に不活性ガスを通気して液中溶存酸素を低下せしめたのちに、脱泡処理を行い、ついで加熱殺菌することを特徴とする、風味が良く、流通・保存時の乳化安定性にすぐれたクリーム類の製造法が提案せれている。
しかしながら、本発明のクリーム状の水中油型乳化物は、乳以外の油脂や乳化剤を使用する合成の水中油型乳化物であって予備乳化工程が必須であり、特許文献4の方法を適用しても満足する結果が得られなかった。これは、実験室的にはともかく大規模に生産しようとする場合、予備乳化工程において混合液が長時間酸素存在下に晒されるためではないかと考え種々検討を行った。
又、付随的効果として本発明の予備乳化工程における混合物の溶存酸素量を低下させるための装置としては、予備乳化タンクのヘッドスペースを窒素ガスで満たした装置中で予備乳化を行うという簡単な設備であり、設備経費も少なくてすみ、脱泡しなくても乳化安定性が損なわれない水中油型乳化物を得ることができる。
予備乳化の温度が55℃以上が好ましく、より好ましくは55℃〜80℃の範囲であり、更に好ましくは60℃〜75℃の範囲である。溶存酸素量の低下された原料混合物の調製は、予め溶存酸素を低下せしめた水性原料の使用、窒素シールされていた油脂の使用、又は、ヘッドスペースを窒素ガスで満たした装置中での予備乳化、のいずれか1以上の手段により行うことが出来る。
予備乳化工程において、55℃超過後30分以内に原料混合物の溶存酸素量を3.5ppm以下で行うのが好ましい。溶存酸素量は混合物の温度60℃で通常5ppm程度であるが、上記の方法により、混合物の溶存酸素量を温度60℃で3.5ppm以下、更に好ましくは3ppm以下、最も好ましくは2ppm以下に低下させるのが好ましい。
液状の水中油型乳化物又は、起泡性水中油型乳化物の油脂分としては、好ましくは15〜48重量%、更に好ましくは20〜48重量%が好ましい。油脂分が多すぎると水中油型乳化物又は起泡性水中油型乳化物がボテ(可塑化状態)易くなり、少なすぎると、液状の水中油型乳化物の場合は油脂分に由来する濃厚な口あたり、風味が得にくくなり、起泡性水中油型乳化物の場合は起泡性、保形性が悪化する傾向になる。
水中油型乳化物に使用する油脂としては、大豆油、綿実油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、パーム油、菜種油、米ぬか油、ゴマ油、カポック油、ヤシ油、パーム核油、乳脂、ラード、魚油、鯨油等の各種の動植物油脂及びそれらの硬化油、分別油、エステル交換油等の加工油脂(融点15〜40℃程度のもの)が例示できる。
特に、添加剤の添加順序或いは油相を水相へ又は水相を油相へ加える等の乳化順序が以下の例示によって限定されるものではないことは言うまでもない。また、結果については以下の方法で評価した。
プリンやコーヒーゼリー、果汁ゼリー、ムース等のデザート類の上に添加して使用する水中油型乳化物(クリーム)を想定して水中油型乳化物を直接食して美味しさを評価した。
5段階評価 5;乳味非常に良好 4;乳味良好
3;通常の風味 2;やや悪い風味 1;悪い風味
B.水中油型乳化物を起泡させた場合の評価方法
(1)ホイップタイム:水中油型乳化物4Kgをカントーミキサー(関東混合機工業株式会社製、CS型20)高速(110rpm)にてホイップし、最適起泡状態に達するまでの時間
(2)オーバーラン:[(一定容積の水中油型乳化物重量)ー(一定容積の起泡後の起泡物重量)]÷(一定容積の起泡後の起泡物重量)×100
(3)ホイップした水中油型乳化物の美味しさ
5段階評価 5;乳味非常に良好 4;乳味良好
3;通常の風味 2;やや悪い風味 1;悪い風味
「図1」に示す製造工程(予備乳化工程、殺菌工程、冷却工程)の予備乳化タンク上部a及び殺菌工程前のバランスタンク上部bを窒素ガスで満たし以下の要領で実施した。
仕込み量は80Kgで行った。
硬化大豆パーム油10部、パーム中融点部10部、やし油13.0部にレシチン0.2部、グリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン株式会社製、商品名:ポエムH−100)0.02部をを添加混合溶解し油相とした。
これとは別に、水59.39部に、脱脂粉乳7.0部、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.2部、リン酸水素2ナトリウム0.05部、重曹0.02部、グァーガム(太陽化学株式会社製、商品名:ネオソフトG)0.01部、キサンタンガム(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、商品名:サンエース)0.01部、クリーム香料0.1部を溶解し水相を調製した。通常は上記油相と水相を60℃で30分間予備乳化タンクで高速攪拌(1000から1800rpm)し予備乳化するのであるが、現場スケールを想定し4時間まで予備乳化を行った。
予備乳化に際しては、予備乳化タンク上部aを窒素ガスで満たし、混合物中の溶存酸素量を低下せしめた状態で予備乳化を行なった。タンク上部の空隙に注入された窒素ガスは、空隙の酸素を置換し高速攪拌により、渦を巻き混合物中に分散されやがて混合物中の溶存酸素量を低下させた。混合物中の溶存酸素の低下度合いを予備乳化開始から10分、20分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間と経時的にサンプリングし、混合物の溶存酸素量(mg/l)を測定した。測定は、ポータブルDOメーター(東亜ディーケイケイ株式会社製 DO−24P、)の電極を浸漬して行った。結果を表1に纏めた。
4時間の予備乳化後の混合物を、攪拌を止めタンク下部より抜き出し、超高温滅菌装置(岩井機械工業(株)製)によって、144℃において4秒間の直接加熱方式による滅菌処理を行った。超高温滅菌装置の前のバランスタンク上部bの空隙に窒素ガスを満たし、空気中の酸素の影響を防いだ。その後、3MPa の均質化圧力で均質化して、直ちに5℃に冷却した。冷却後約24時間エージングして、水中油型乳化物を得た。各工程の混合物の溶存酸素量(mg/l)を測定し表2に纏めた。 水中油型乳化物の風味評価を行った。又、起泡性水中油型乳化物の評価として、水中油型乳化物4Kgに320gのグラニュー糖を加えて上記ホイップ方法にてホイップし、上記の方法に従いオーバーラン、風味の評価を行った。
水中油型乳化物の風味評価、ホイップクリームのホイップタイム、オーバーラン、風味の評価は表3に纏めた。
実施例1の仕込み量を40Kgで行なった以外は実施例1と同配合で同様に処理し、同様な評価をおこなった。結果を表1、表2、表3に纏めた。
実施例1の予備乳化時間を通常の30分間とした以外は実施例1と同配合で同様に処理し、同様な評価をおこなった。結果を表1、表2、表3に纏めた。
実施例1の超高温滅菌装置の前のバランスタンク上部bの空隙に窒素ガスを注入せず、空気中の酸素の影響を受けた以外は、実施例1と同配合で同様に処理し、同様な評価をおこなった。結果を表1、表2、表3に纏めた。
実施例1の配合水を減圧脱気し溶存酸素を0.9(mg/l)に低下せしめた以外は、実施例1と同配合で同様に処理し、同様な評価をおこなった。結果を表1、表2、表3に纏めた。
実施例1の配合油脂を窒素封印されたタンクのもの溶存酸素2.3(mg/l)を使用した以外は、実施例1と同配合で同様に処理し、同様な評価をおこなった。結果を表1、表2、表3に纏めた。
実施例1のタンク上部のヘッドスペースに満たす窒素ガスを調整し混合物の溶存酸素量を2(mg/l)に調整した以外は、実施例1と同配合で同様に処理し、同様な評価をおこなった。結果を表1、表2、表3に纏めた。
予備乳化タンク上部a及び殺菌工程前のバランスタンク上部bより窒素ガスを注入せず、空気中の酸素の影響下で、従来の方法で行なった以外は、実施例1と同配合で同様に処理し、同様な評価をおこなった。結果を表1、表2、表3に纏めた。
予備乳化タンク上部aより窒素ガスを注入せず、空気中の酸素の影響下で、従来の方法で行なった以外は、実施例1と同配合で同様に処理し、同様な評価をおこなった。結果を表1、表2、表3に纏めた。
実施例3において、予備乳化タンク上部a及び殺菌工程前のバランスタンク上部bより窒素ガスを注入せず、空気中の酸素の影響下で、従来の方法で行なった以外は、実施例3と同配合で同様に処理し、同様な評価をおこなった。結果を表1、表2、表3に纏めた。
実施例3において、予備乳化タンク上部aより窒素ガスを注入せず、空気中の酸素の影響下で、従来の方法で行なった以外は、実施例3と同配合で同様に処理し、同様な評価をおこなった。結果を表1、表2、表3に纏めた。
実施例1において、予備乳化タンク上部aより窒素ガスを注入をせず、3時間30分予備乳化を行い、その後予備乳化タンク上部aを窒素ガスで満たし、、合計4時間の予備乳化を行い、殺菌工程前のバランスタンク上部bの空隙に窒素ガスを満たし、実施例1と同配合で同様に処理し、同様な評価をおこなった。結果を表1、表2、表3に纏めた。
表1に示した、補足データとして、3時間30分〜4時間の予備乳化時の混合液の溶存酸素濃度(mg/l)は、3時間30分(4.1mg/l)、3時間40分(1.2mg/l)、3時間50分(0.2mg/l)、4時間(<0.1mg/l)であった。
Claims (6)
- 油脂、無脂乳固形、及び水を含む未乳化乃至乳化途中の原料混合物の溶存酸素量を、予備乳化工程途中以前に低下せしめ、乳化物を得た後に加熱殺菌及び冷却を行うことを特徴とする水中油型乳化物の製造方法。
- 予備乳化が55℃以上で行われる、請求項1記載の水中油型乳化物の製造方法。
- 原料混合物の溶存酸素量を3.5ppm以下に低下せしめる、請求項1記載の水中油型乳化物の製造方法。
- 予備乳化工程において、55℃超過後30分以内に原料混合物の溶存酸素量を3.5ppm以下で行われる、請求項1記載の水中油型乳化物の製造方法。
- 溶存酸素量の低下された原料混合物の調製を、予め溶存酸素を低下せしめた水性原料の使用、窒素シールされていた油脂の使用、又は、ヘッドスペースを窒素ガスで満たした装置中での予備乳化、のいずれか1以上の手段により行う、請求項1記載の水中油型乳化物の製造方法。
- 水中油型乳化物が起泡性である、請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の水中油型乳化物の製造方法。
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