JP2005143372A - 水中油滴型組成物の酸化抑制法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ホイップクリームのような高脂肪含有水中油滴型食品の脂質の酸化を抑制する実用的な技術を提供する。
【解決手段】 10〜60%の脂肪分を含有する水中油滴型組成物を殺菌のために加熱処理をするに際し、加熱処理前及び加熱処理後に水中油滴型組成物を流通させながら、多孔質膜を介して水中油滴型組成物に不活性ガスを注入することにより溶存酸素を低減する。特に、加熱処理前の溶存酸素を5〜7ppmに低減し、加熱処理後の溶存酸素を5ppm以下に低減し、加熱処理後の溶存酸素の低減処理温度を60℃以上とするのが好ましい。
【選択図】 図1
【解決手段】 10〜60%の脂肪分を含有する水中油滴型組成物を殺菌のために加熱処理をするに際し、加熱処理前及び加熱処理後に水中油滴型組成物を流通させながら、多孔質膜を介して水中油滴型組成物に不活性ガスを注入することにより溶存酸素を低減する。特に、加熱処理前の溶存酸素を5〜7ppmに低減し、加熱処理後の溶存酸素を5ppm以下に低減し、加熱処理後の溶存酸素の低減処理温度を60℃以上とするのが好ましい。
【選択図】 図1
Description
本発明は、脂肪の酸化による風味の劣化を、酸化防止剤等の添加物を使用せずに抑制する酸化防止法に関するものであり、特に、クリーム類に代表される、脂肪分を多く含有する水中油滴型組成物よりそのエマルジョンの安定に影響を与えることなく溶存酸素を低減して酸化を防止する方法に関するものである。
従来、脂肪分を多く含有する食品は、脂質の酸化により風味の劣化が生じることが良く知られている。脂質の酸化抑制の手法としては、酸化防止剤を添加する方法、容器にガスバリヤ性のある材質を使用し容器内の酸素を不活性ガスと置換する方法、もしくは、脱酸素剤等で酸素を除去する方法、更に、溶存酸素自体を不活性ガス、あるいは脱気処理にて低減、あるいは除去する方法等が行われている。しかしながら、これらの処理を行っている高脂肪食品は、油脂そのもの(料理用植物性油脂等)や、油中水滴型食品(バター、マーガリン等)であり、水中油滴型食品には殆ど行われておらず、特にホイップクリームなどのクリーム類の報告はないのが現状である。
脂肪を多く含有する食品から不活性ガスを利用する溶存酸素の低減あるいは除去については、上記した油脂そのもの(料理用植物性油脂)に対しては行われている。また、牛乳や乳性飲料など脂肪分を5%以下含む水中油滴組成物についても、特開平10−295341号公報や特開2001−078665号公報などに見られるように不活性ガスのバブリングが試みられているようであるが、それらの組成物は、元々乳化安定性が高くバブリングなどある程度手荒な扱いを受けても組成変化が少ないものである。本発明が対象とする高脂肪含有水中油滴型食品、特に、ホイップクリームからの不活性ガスによる溶存酸素の低減あるいは除去については、乳化の不安定さや粘度などの影響による溶存酸素の低減のしにくさ、不活性ガス吹き込み中の泡立ちの問題などがあり実用化はまったくなされていないのが現状である。
特開平10−295341号公報
特開2001−078665号公報
不活性ガスを用いる溶存酸素の従来の低減方法は、不活性ガスをその目的とする組成物へバブリングすることにより、酸素とガスとの置換を行っていた。それにより、置換率の悪さ、それにともなう不活性ガスの使用量の増加、そして、発泡性のある組成物では多量の泡の発生が問題であった。
特に本発明の対象とする水中油滴型組成物、特にホイップクリームにおいては、その組成中にたんぱく質や糖質を含むことが必須であるため、上記したように多量の泡の発生がある。更に、この泡の発生があると次工程への速やかな移行が出来ず、次工程である均質処理が不十分で脂肪球の大きさがバラツキ、それにより最終製品でのエマルジョン状態(乳化安定性、ホイップ性)に大きな影響がでるという欠点があつた。
本発明は以上のような欠点に鑑み、高脂肪含有水中油滴型組成物、特にホイップクリームを最終製品のエマルジョンに影響を与えることなく長期に脂質の酸化による劣化を抑制した、風味の良好な水中油滴型食品として得ることができる実用的な技術を提供することを目的とするものである。
本発明に従えば、上記の課題を解決するものとして、10〜60%の脂肪分を含有する水中油滴型組成物を殺菌のために加熱処理をするに際し、前記加熱処理前及び加熱処理後に、前記水中油滴型組成物を流通させながら多孔質膜を介して該水中油滴型組成物に不活性ガスを注入することにより溶存酸素を低減することを特徴とする酸化抑制法が提供されるものである。
本発明の方法によれば、高脂肪を含有する水中油的型組成物から、効率的且つ経済的に溶存酸素を低減でき、特に、溶存酸素の低減処理時に発生する発泡を抑制することにより、最終製品のエマルジョンに影響を与えることなく溶存酸素を低減できる。
本発明により溶存酸素を低減された、ホイップクリームなどの水中油滴型組成物は、バリヤ性のあるカートン及びヘッドスペース部の酸素を窒素ガスにて置換して充填されることにより、酸化防止剤等の添加をすることなく長期に脂肪の酸化などに由来する風味の劣化が一層抑制される。
本発明により溶存酸素を低減された、ホイップクリームなどの水中油滴型組成物は、バリヤ性のあるカートン及びヘッドスペース部の酸素を窒素ガスにて置換して充填されることにより、酸化防止剤等の添加をすることなく長期に脂肪の酸化などに由来する風味の劣化が一層抑制される。
本発明は、高脂肪分を含有する水中油滴型食品より、その加熱処理前及び加熱処理後において、多孔質膜と不活性ガスを用いて、溶存酸素を低減し、ガスバリヤ性の容器に充填する製造工程により脂肪の酸化を抑制する方法である。
本発明の対象とする高脂肪分を含有する水中油滴型組成食品としては、ホイップクリーム(植物性クリーム、動物性クリーム、コンパウンドクリーム等)などのクリーム類の他、ドレッシング、マヨネーズなどがあげられる。その組成物には、植物性油脂、動物性油脂、たんぱく質、糖質、乳化剤、りん酸塩、増粘多糖類、調味料等が含有される。
本発明の方法に使用する多孔質膜は、孔径を自由に選択でき耐熱性も高く、加熱処理後のラインに設置する場合にも、熱湯、高圧蒸気等、機器殺菌の為の加熱処理にも耐えることが出来る。そのため、加熱処理後の溶存酸素の低減処理にも適している。さらに従来の製造ラインの中へ簡単に設置でき、設備投資も安価ですむ。多孔質膜は、公知のものであり、アルミナセラミックス膜、ガラス質ミクロ多孔膜、シラス多孔質ガラス等を使用することができ、特に、シラス多孔質ガラスが好ましい。シラス多孔質ガラスは、例えば、SPGテクノ(株)より市販されている。これらの膜は、0.05〜20μmの任意の孔径(細孔径)で製造可能であり、目的とする食品の組成、溶存酸素の低減率によって適宜孔径の異なる膜を使用できるが、0.1〜10μmの範囲の孔径が特に好ましい。
多孔質膜は、円筒状の形態を成してモジュール本体内に装着され、その典型的な使用態様は図1に示す通りである。
多孔質膜は、円筒状の形態を成してモジュール本体内に装着され、その典型的な使用態様は図1に示す通りである。
モジュールに装着される多孔質膜(円筒)の本数は、流通させる液(水中油滴組成物)の流量により任意に変更することが可能である。更に、流通させる液と、圧入させる不活性ガスの経路は、図2に示す通りに、多孔質膜内へ液を流通させ、不活性ガスを多孔質膜外より圧入させる経路(図2の上方)と、逆に、多孔質膜外へ液を流通させ、多孔質膜内より不活性ガスを圧入させる経路(図2の下方)もある。
製造ライン中の多孔質膜モジュールの設置位置例を図3に示す。すなわち、配合タンク(1)で配合された水中油滴型組成物をクッションタンク(6)へロータリーポンプ(2)で移送するラインの途中に多孔質膜モジュール(4)が設置され、加熱前溶存酸素低減が行われる。クッションタンク(6)において過剰な窒素ガスは安全弁(9)より排出される。その後、バランスタンク(8)を経て第一均質機(10)にて脂肪球の大きさを調整後、殺菌機(プレート式殺菌機)(11)で加熱殺菌され加熱後の溶存酸素低減のため多孔質膜モジュール(12)を通過しホールディングタンク(14)へ入る。ここで再度過剰な窒素ガスが安全弁を通して排出され、第二均質機にて再度脂肪球の大きさを調整後、殺菌機(冷却プレート)(17)にて冷却されヘッドスペース部が窒素ガス(19)で満たされたサージタンク(18)に貯められる。
このサージタンクより充填機へ送られ容器へ充填される。
このサージタンクより充填機へ送られ容器へ充填される。
本発明で使用する不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス等が上げられるが、そのうち窒素は、空気中に大量に存在し、比較的コストも低く、しかも安全性が確認されていると同時に食品の風味に影響を与えることがないため、不活性ガスとしては好適である。
本発明者は、加熱処理前の溶存酸素を低減し過ぎると最終製品の風味が、水っぽい、淡泊等の好ましくない風味になるため、加熱処理前の溶存酸素は5〜7ppmにするのが好ましいことを見出した。この時の、窒素ガスの必要量は、多孔質膜通過する水中油滴組成物食品量に対して容積基準で、例えば5%と少量ですむ。
他方、加熱処理後の溶存酸素については、5ppm未満、好ましくは3ppm未満であれば充分に、脂肪の酸化抑制効果にて風味の良い物が得られ、1ppm以下の場合には充分に初期の目的を達成できることも見出している。この時の窒素ガスの必要量は多孔質膜を通過する水中油滴組成物食品量に対して容積基準で約5〜10%である。
さらに、溶存酸素の除去時の温度は、30℃以下では、発泡の量が多く、エマルジョンに与える影響も大きく、したがって、溶存酸素の除去時の温度は、40℃以上、特に60℃以上で行うのが好ましいことがわかった。
さらに、溶存酸素の除去時の温度は、30℃以下では、発泡の量が多く、エマルジョンに与える影響も大きく、したがって、溶存酸素の除去時の温度は、40℃以上、特に60℃以上で行うのが好ましいことがわかった。
如上の本発明の方法に従い溶存酸素が低減された水中油滴型組成物は、適当な容器に充填して保存されるが、ガスバリヤ性の容器に連続的に充填することが好ましく、このとき、容器充填後ヘッドスペースが生じる場合にはヘッドスペース部もガス置換を行うことが特に好ましい。これによって、エマルジョンの安定性にも影響を与えることもなく、一層効果的な酸化抑制が確保される。本発明において用いられるそのような包装材料としては、ガスバリヤ性のある公知の材質が全て使用できる。また、ヘッドスペース部のガス置換についても、公知の方法が全て適用出来る。
以下、本発明に従う水中油滴型組成物の酸化抑制法を実施する好適条件を確認する試験例について述べる。
<試験例1> 窒素ガス量とそれにともなう溶存酸素と泡の発生試験
クリーム(脂肪分48%、無脂乳固形分5%)をロータリーポンプにて多孔質膜(円筒径10mm、長さ500mm、孔径0.5μm、1本、SPGテクノ(株)社製)を装着したモジュールへ送液し、多孔質膜の内面を流速300L/hで通過させ、それと同時に多孔質膜の外側より窒素ガスを圧送した。その時の窒素ガス流量を変化させ、クリームの溶存酸素量及び泡の発生量を測定し、窒素ガスをクリームにバブリングさせて溶存酸素を低減させたコントロールと比較した。それにより得られた結果を下記表1に示す。
<試験例1> 窒素ガス量とそれにともなう溶存酸素と泡の発生試験
クリーム(脂肪分48%、無脂乳固形分5%)をロータリーポンプにて多孔質膜(円筒径10mm、長さ500mm、孔径0.5μm、1本、SPGテクノ(株)社製)を装着したモジュールへ送液し、多孔質膜の内面を流速300L/hで通過させ、それと同時に多孔質膜の外側より窒素ガスを圧送した。その時の窒素ガス流量を変化させ、クリームの溶存酸素量及び泡の発生量を測定し、窒素ガスをクリームにバブリングさせて溶存酸素を低減させたコントロールと比較した。それにより得られた結果を下記表1に示す。
上記結果から明らかなように、多孔質膜と窒素ガスを使用して溶存酸素を低減する方がクリームの量に対して非常に少ない窒素ガス量で、しかも効率的に除去されている。また、その時発生する泡の量も溶存酸素濃度が、2ppmであれば、容積比で110%程度である。それに比べて、バブリングでの溶存酸素の低減法では窒素ガス量を容積比で100%バブリングしても、その溶存酸素濃度は2ppmまでしか低減できず、しかも大量の泡の発生によりその容積基準で300%に達している。このことにより、窒素ガスバブリングでの溶存酸素の低減方法は実用的ではないと思われる。
<試験例2> 溶存酸素を低減時の温度の影響
クリーム(脂肪分48%、無脂乳固形分5%)をロータリーポンプにて多孔質膜(円筒径10mm、長さ500mm、孔径0.5μm、1本、SPGテクノ(株)社製)を装着したモジュールへ送液し、多孔質膜の内面を流速300L/hで通過させ、それと同時に多孔質膜の外側より窒素ガスを流量30L/h、圧力0.2Mpasで圧送した。その時のクリームの温度を変化させ、クリームの溶存酸素量及び発泡の度合いを確認した。更に、それぞれの温度での溶存酸素低減クリームをその後、均質、加熱処理し、脂肪の粒径、ホイップタイム、オーバーランを測定し、絞り袋での造花性を観察した。その結果を下記表2に示す。
クリーム(脂肪分48%、無脂乳固形分5%)をロータリーポンプにて多孔質膜(円筒径10mm、長さ500mm、孔径0.5μm、1本、SPGテクノ(株)社製)を装着したモジュールへ送液し、多孔質膜の内面を流速300L/hで通過させ、それと同時に多孔質膜の外側より窒素ガスを流量30L/h、圧力0.2Mpasで圧送した。その時のクリームの温度を変化させ、クリームの溶存酸素量及び発泡の度合いを確認した。更に、それぞれの温度での溶存酸素低減クリームをその後、均質、加熱処理し、脂肪の粒径、ホイップタイム、オーバーランを測定し、絞り袋での造花性を観察した。その結果を下記表2に示す。
上記結果より、低温での処理は置換率が悪くなり、泡の発生量も増加している。また、その後均質、加熱処理を経たクリームの物理的性質は、脂肪球の平均粒径が大きくなる傾向がみられ、さらに、ホイップタイムの短縮及びオーバーランの低下によりその造花性は悪く、締まりのあるホイップクリームになっている。これは発生する泡の均質機への噛み込みが脂肪球の均質化に影響していると思われる。よって、クリームの多孔質膜及び窒素ガスを利用する溶存酸素低減処理温度は40℃以上が良く、60℃以上が最適である。なお、このときの上限温度は、一般に、90℃とする。
<試験例3> 加熱処理前、溶存酸素濃度の殺菌後の風味に与える影響
クリーム(脂肪分48%、無脂乳固形分5%)をロータリーポンプにて多孔質膜(円筒径10mm、長さ500mm、孔径0.5μm、1本、SPGテクノ社製)を装着したモジュールへ送液し、多孔質膜の内面を流速300L/hで通過させ、それと同時に多孔質膜の外側より窒素ガスを圧送した。その時の窒素ガス流量を変化させ、任意の溶存酸素濃度に調整したクリームを110℃2秒にて加熱処理をし、その風味を評価した。その結果を下記表3に示す。
クリーム(脂肪分48%、無脂乳固形分5%)をロータリーポンプにて多孔質膜(円筒径10mm、長さ500mm、孔径0.5μm、1本、SPGテクノ社製)を装着したモジュールへ送液し、多孔質膜の内面を流速300L/hで通過させ、それと同時に多孔質膜の外側より窒素ガスを圧送した。その時の窒素ガス流量を変化させ、任意の溶存酸素濃度に調整したクリームを110℃2秒にて加熱処理をし、その風味を評価した。その結果を下記表3に示す。
上記結果より、加熱処理前の溶存酸素濃度が5ppm以上であれば通常クリームと差がなく、5ppm以下であると差があるいう評価である。差があるという評価には、通常クリームよりコクがない、あっさりしていて淡泊であるという評価が多かった。
<試験例4> 加熱処理前及び加熱処理後の溶存酸素低減処理
上記結果より、クリームの溶存酸素を5ppm以下に低減して、加熱処理すると通常加熱処理クリームと比較して風味的に異なることがわかった。よって、風味の変化をともなわず溶存酸素濃度を低減するために加熱処理前に溶存酸素低減処理を行い、再度加熱処理後に溶存酸素低減処理を行なった。
上記結果より、クリームの溶存酸素を5ppm以下に低減して、加熱処理すると通常加熱処理クリームと比較して風味的に異なることがわかった。よって、風味の変化をともなわず溶存酸素濃度を低減するために加熱処理前に溶存酸素低減処理を行い、再度加熱処理後に溶存酸素低減処理を行なった。
加熱処理前のクリーム(脂肪分48%、無乳固形分5%、溶存酸素濃度8ppm)を、ロータリーポンプにて多孔質膜(円筒径10mm、長さ500mm、孔径0.5μm、1本、SPGテクノ(株)社製)を装着したモジュールへ送液し、多孔質膜の内面を流速300L/hで流通させ、それと同時に多孔質膜の外側より窒素ガスを(窒素ガス流量10L/h)圧送し、溶存酸素濃度を5.2ppmに低減した。その後、プレート式殺菌機にて110℃2秒の加熱処理後プレート式冷却装置にて60℃まで冷却し、連続的に再度、多孔質膜(円筒径10mm、長さ500mm、孔径0.5μm、1本、SPGテクノ(株)社製)の内面を流速300L/hで流通させ、それと同時に多孔質膜の外側より窒素ガスを圧送した。この時の窒素ガスの流量を10〜150L/hにて変化させ、溶存酸素濃度及び泡の発生を比較した。さらにその後、均質処理(圧力0.2Mpas)を行い、プレート式冷却装置で冷却した。クリームの評価は脂肪の粒径、ホイップタイム、オーバーランを測定し、絞り袋での造花性にて判定した。その結果を下記表4に示す。尚、加熱処理前の窒素ガス流量の変化による、溶存酸素濃度及び泡の量も合わせて示す。
上記結果より、加熱前処理の多孔質膜を使用した溶存酸素の低減処理効果は、溶存酸素を2ppm以下まで低減するのに、窒素ガスの流量75L/h、容積基準にて25%の窒素ガス量を必要としたが、加熱処理前の溶存酸素低減処理にて溶存酸素濃度を5.2ppmまで低減したクリームを、再度加熱後に処理することにより溶存酸素を2ppm以下まで低減するのに、加熱前処理にて、窒素ガス流量10L/h、容積基準3.3%の窒素ガス量、加熱処理後の処理にて窒素ガス流量45L/h、容積基準で15%使用し、加熱前、加熱後処理合わせても容積基準で18.3%の窒素ガス量で溶存酸素2ppm以下まで低減されている。これは、加熱前処理のみで行った場合の73%の窒素ガス量であるばかりでなく、処理時に発生する泡の量も加熱前処理のみより少ない結果である。
よって、加熱処理前の溶存酸素量を風味に影響の出ない範囲、つまり溶存酸素5〜7ppmになるように処理をし、加熱処理後に再度溶存酸素低減処理を実施することにより、初期の目的を達成することができた。さらに、置換効率からしても加熱前処理のみにて初期の目的が達成される溶存酸素濃度まで低減するより効率的であり、経済的である。また、泡の発生も抑制され、溶存酸素2ppmまで低下させたクリームにおいて、その後の均質処理及びエマルジョンの安定等に影響を与えていないことが、脂肪球の粒径、ホイップタイム、オーバーラン、造花性に問題がないことによりわかった。以下、本発明の実施例を述べる。
溶存酸素濃度8ppmのクリームを、ロータリーポンプにて多孔質膜を装着したモジュール(多孔質膜:円筒径10mm、長さ500mm、孔径0.5μm、本数2本、SPGテクノ(株)社製)へ送液し、同モジュールへ窒素ガスを供給し、多孔質膜の中を通過するクリームへ混合される。その時のクリームの流量600L/h、窒素ガスの流量30L/h、圧力0.2Mpasである。
窒素ガスと混合されたクリームは、ラインを通って次のクションタンクへ送液される。クションタンクでは、タンクの上方より入り、その時余分な窒素ガスは大気へと放出され、その時の溶存酸素濃度は、5.5ppmである。尚、製造工程の略図は、図3に示している。
窒素ガスと混合されたクリームは、ラインを通って次のクションタンクへ送液される。クションタンクでは、タンクの上方より入り、その時余分な窒素ガスは大気へと放出され、その時の溶存酸素濃度は、5.5ppmである。尚、製造工程の略図は、図3に示している。
その後、クションタンクより、ポンプにて第一均質機に送液されプレート式殺菌機にて、110℃15秒の加熱処理を経て、冷却プレートにて予備冷却を行う。その時の温度を60℃に設定し、その温度のまま、インラインに設置された多孔質膜モジュール(多孔質膜:円筒径10mm、長さ500mm、孔径0.5μm、本数2本、SPGテクノ(株)社製)に送液され、モジュールへ無菌処理した窒素ガスを供給する。その時の、クリームの流量600L/h、窒素ガス流量60L/h、圧力0.2Mpasである。
その後、ホールディングタンクの上部より、タンク内へ入り、余分な窒素ガスはタンク内の気層へ放出される。放出された窒素ガスは、タンク内のヘッドスペース部を窒素雰囲気下にし、更にタンク内圧力が規定の圧力以上になる場合には、安全弁よりタンク外へ放出される。その時の、タンク内のクリームの溶存酸素濃度は、1.5ppmであった。
さらに、第二均質機へ送液され、その後冷却プレートにて10℃以下まで冷却し、窒素ガス雰囲気にされたサージタンクへ送液され、ストックされる。その後、充填機にて、ガスバリヤ性のある容器に充填され、容器内のヘッドスペース部の酸素を窒素ガスで置換し、製品とした。
殺菌後の溶存酸素濃度を、変える以外は実施例1と同様な工程を行った。
充填直後のクリームの溶存酸素濃度を、5ppm、3ppm、2ppm、1ppmと通常品8ppmの5サンプルを保存し、経時変化を確認した。その結果を下記表5に示す。
充填直後のクリームの溶存酸素濃度を、5ppm、3ppm、2ppm、1ppmと通常品8ppmの5サンプルを保存し、経時変化を確認した。その結果を下記表5に示す。
上記結果より明らかなように、溶存酸素を低減して、ガスバリヤ性のある容器に充填し、ヘッドスペース部の酸素を窒素ガスにて置換したクリームは、特に溶存酸素3ppm以下にて、長期に良好な風味を保持していた。また、その風味は、コントロールの通常クリームに現れる、脂肪酸化臭がなく、良好なものであった。
さらに上記サンプルの内、通常クリーム1と、クリーム3(3ppm)の物性検査を行った。その結果を下記に示す。
さらに上記サンプルの内、通常クリーム1と、クリーム3(3ppm)の物性検査を行った。その結果を下記に示す。
上記結果より明らかなように、通常条件にて製造したクリームと比較しても、その物理的特性においてなんら問題のない同等のクリームを得ることができた。
本発明の方法は、ホイップクリームのような多量の脂肪分を含有する水中油滴型組成物の溶存酸素を添加物を使用することなく低減して、風味や外観において優れた食品として供するのに効果的な技術として利用することができる。
1 配合タンク
2 ロータリーポンプ
3 逆止弁
4、12 多孔質膜(モジュール)
5、13 窒素ガス
6 クッションタンク
7 ロータリーポンプ
8 バランスタンク
9、15 安全弁(窒素ガス排気弁)
10 第一均質機
11 殺菌機(加熱プレート)
14 ホールディングタンク
16 第二均質機
17 殺菌機(冷却プレート)
18 サージタンク
19 窒素ガス(ブランケッテング)
2 ロータリーポンプ
3 逆止弁
4、12 多孔質膜(モジュール)
5、13 窒素ガス
6 クッションタンク
7 ロータリーポンプ
8 バランスタンク
9、15 安全弁(窒素ガス排気弁)
10 第一均質機
11 殺菌機(加熱プレート)
14 ホールディングタンク
16 第二均質機
17 殺菌機(冷却プレート)
18 サージタンク
19 窒素ガス(ブランケッテング)
Claims (4)
10〜60%の脂肪分を含有する水中油滴型組成物を殺菌のために加熱処理をするに際し、前記加熱処理前及び加熱処理後に、前記水中油滴型組成物を流通させながら多孔質膜を介して該水中油滴型組成物に不活性ガスを注入することにより溶存酸素を低減することを特徴とする酸化抑制法。
加熱処理前の溶存酸素を5〜7ppmに低減し、加熱処理後の溶存酸素を5ppm以下に低減し、更に加熱処理後の溶存酸素の低減処理温度を60℃以上とする請求項1の方法。
多孔質膜の孔径が0.1〜10μmである請求項1または2の方法。
水中油滴型組成物がホイップクリームである請求項1から3のいずれかの方法。
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2003
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