JP2019041721A - 粉末油脂、これを含有する飲食品 - Google Patents
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Abstract
Description
粉末は、食用油脂を粉末状にした形態で、ふりかけや錠剤などのサプリメントに利用され、保存性やハンドリング性などに優れる。粉末の形態としては、多孔質粉末にバルク油脂を吸着させた油脂含有粉末や、乳化液を乾燥して得られる粉末油脂等が挙げられる。粉末油脂は、水分散性、乳化性を有するため、水系食品に利用しやすい乳化液の利便性と、保存性やハンドリング性に優れた粉末の利便性を兼ね備えた最も汎用性に優れた形態といえる。
すなわち、本発明は、以下の〔1〕〜〔7〕である。
食用油脂(A)の含有量が25〜85質量%、食用蛋白質(B)の含有量が食用油脂(A)1質量部に対して0.05〜0.5質量部、食用炭水化物(C)の含有量が7〜73.75質量%であり、
食用油脂(A)は高度不飽和脂肪酸含有油脂(a)を含み、食用油脂(A)の脂肪酸組成における高度不飽和脂肪酸の含有量が3〜70質量%であり、
食用蛋白質(B)はミセル状カゼイン(b1)を含み、食用蛋白質(B)中におけるミセル状カゼイン(b1)の含有量が20質量%以上である、粉末油脂。
〔2〕高度不飽和脂肪酸含有油脂(a)は、α−リノレン酸、EPA、DHAからなる群から選ばれる1つまたは2つ以上の高度不飽和脂肪酸を有する、〔1〕に記載の粉末油脂。
〔3〕食用蛋白質(B)がさらに、カゼイネート(b2)を含み、食用蛋白質(B)中におけるカゼイネート(b2)の含有量が5〜80質量%である、〔1〕または〔2〕に記載の粉末油脂。
〔4〕食用炭水化物(C)がトレハロース(c1)または還元糖(c2)を含み、食用炭水化物(C)中におけるトレハロース(c1)または還元糖(c2)の含有量が40質量%以上である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の粉末油脂。
〔5〕さらに、食用酸化防止剤(D)として下記の成分(d1)、下記の成分(d2)を含む、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の粉末油脂。
成分(d1):ビタミンCまたは水溶性茶抽出物
成分(d2):ビタミンCの脂肪酸エステル体、ビタミンE、油溶性茶抽出物、油溶性ローズマリー抽出物からなる群から選ばれる1つまたは2つ以上
〔6〕〔5〕に記載の粉末油脂の製造方法であって、
食用油脂(A)と食用蛋白質(B)と食用炭水化物(C)を混合した水溶液を乳化する乳化工程(P1)と、
前記乳化工程により乳化された乳化液を乾燥機で水分を蒸発させる乾燥工程(P2)と、
食用酸化防止剤(D)を添加する食用酸化防止剤添加工程(P3)と、を備え、
前記食用酸化防止剤添加工程(P3)は、
HLB5以下の乳化剤を用いて、成分(d1)の水溶液を、高度不飽和脂肪酸含有油脂(a)以外の油脂中に乳化してW/O型乳化物を得る工程(P3−1)と、
前記W/O型乳化物を食用油脂(A)に混合する工程(P3−2)と、を含む、粉末油脂の製造方法。
〔7〕〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の粉末油脂を含有する飲食品。
本発明に用いる食用油脂(A)は、高度不飽和脂肪酸含有油脂(a)を含む油脂組成物であり、食用油脂(A)の脂肪酸組成における高度不飽和脂肪酸の含有量が3〜70質量%である油脂組成物である。その下限値としては、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以上である。3質量%未満だと粉末油脂に含まれる高度不飽和脂肪酸量が少なく栄養補給として価値が低い。なお、本発明における油脂組成物の脂肪酸組成は、基準油脂分析試験法に従って行う。
高度不飽和脂肪酸含有油脂(a)は、その脂肪酸構成として、二重結合を3以上有する高度不飽和脂肪酸を含む油脂である。高度不飽和脂肪酸としては、例えば、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、α−リノレン酸等のn−3系脂肪酸、アラキドン酸、γ−リノレン酸等のn−6系脂肪酸などが例示される。酸化劣化臭が少ない粉末油脂が得られるという本発明の効果を鑑みれば、酸化しやすいn−3系脂肪酸を含有すると、本発明の効果がより発揮される。より好ましい高度不飽和脂肪酸としては、炭素数が20〜22であって、二重結合は好ましくは4個以上であり、より好ましくは5または6個以上である。特に好ましい高度不飽和脂肪酸としては、ドコサヘキサエン酸(DHA;炭素数22、n−3系列で二重結合が6個の直鎖不飽和脂肪酸)やエイコサペンタエン酸(EPA;炭素数20、n−3系列で二重結合が5個の直鎖不飽和脂肪酸)である。
さらに、本発明に用いる食用油脂(A)には、脂肪酸組成における高度不飽和脂肪酸の含有量が3〜70質量%となる範囲に限り、高度不飽和脂肪酸含有油脂(a)以外の油脂を含有してもよい。高度不飽和脂肪酸含有油脂(a)以外の油脂は、食品に使用する油脂であれば特に制限されず、例えば、菜種油、サフラワー油、大豆油、ヒマワリ油、米糠油、コーン油、綿実油、ゴマ油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、落花生油、オリーブ油、カノーラ油、ハイエルシン酸菜種油、ハイオレイック菜種油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックコーン油、ハイオレイックヒマワリ油等の植物油脂、牛脂、ラード等の動物油脂、さらにこれらの動植物油脂を分別、水素添加あるいはエステル交換したものまたは中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)等が挙げられる。
本発明に用いる食用蛋白質(B)は、ミセル状カゼイン(b1)を含有し、食用蛋白質(B)中におけるミセル状カゼイン(b1)の含有量は、20質量%以上である。下限値として、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上である。20質量%未満の場合には、酸化劣化臭を十分に抑制することができない。
一般に粉末油脂において乳化作用を目的にカゼインが広く一般的に使用される。従来使用される「カゼイン」とは、乳蛋白質水溶液を酸性化して、上澄に含まれる酸性可溶のホエイ蛋白質(ラクトアルブミン、ラクトグロブリン、ラクトフェリンなど)を取り除いたものである。また、実質的に流通する「カゼイン」は、この酸性化により分離されたカゼインの沈殿物を、水酸化ナトリウムなどのアルカリにより中性化した塩(カゼイネート)として水溶化したものである。カゼイネートは、塩の種類によって、ナトリウム塩の場合はカゼインナトリウム、カリウム塩の場合はカゼインカリウム、カルシウム塩の場合はカゼインカルシウム、マグネシウムの場合はカゼインマグネシウムとも呼ばれる。
本発明に用いるミセル状カゼイン(b1)を含有する乳蛋白質としては、ミセルカゼインアイソレート(MCI)、ミルクプロテインコンセントレート(MPC)、トータルミルクプロテイン(TMP)等が挙げられる。MCIは、ミセル状カゼインとホエイ蛋白質の比率が9:1であり、MPC、TMPは、ミセル状カゼインとホエイ蛋白質の比率が8:2である。なお、MPCとTMPは、呼び名の違いであり、原料としての差異はほとんどない。市販のMCIとしては、「ミルカMCI80」(日本新薬製)、「Prodiet85B」(idi製)等が挙げられる。市販のMPC、TMPとしては、「MPC80」(日本新薬製)、「Promilk85y」(idi製)等が挙げられる。これらの中では、ミセル状カゼイン(b1)の含有量の高さから、ミセルカゼインアイソレート(MCI)が好ましい。
さらに、本発明に用いる食用蛋白質(B)には、ミセル状カゼイン(b1)以外の蛋白質を含有してもよい。ミセル状カゼイン(b1)以外の蛋白質としては、食品に使用する蛋白質であれば特に制限されず、例えば、カゼイネート(b2)、カゼイン、ホエイ蛋白質又はその他の乳蛋白質、大豆蛋白質、エンドウ蛋白質、トウモロコシ蛋白質(ゼイン)等の植物性蛋白質、フィッシュコラーゲン、豚コラーゲン、豚ゼラチン、牛ゼラチン等の動物性蛋白質等が挙げられる。界面活性能を向上するという観点から、カゼイネート(b2)を含有することが好ましい。
本発明の粉末油脂は、食用炭水化物(C)を含有する。本発明に用いる食用炭水化物(C)は、食用蛋白質(B)に覆われた食用油脂(A)の微細粒子を保持する連続相になっていると考えられ、分散層である微細粒子同士の結着を防ぐ賦形剤としての役割を持つ。また食用炭水化物(C)は連続相であるため、粉末油脂自体の性質にも大きく寄与しており、低く好ましい甘味、低吸湿性、低変色性、高溶解性に寄与している。
トレハロース(c1)は、グルコース2分子がα、α−1、1結合した非還元性の糖質であり、その構造から水和性が高いことが知られており、砂糖などと比較して甘味が低く、ガラス転移温度が高いことから吸湿しにくく、メイラード反応などによる褐変を起こしにくく、溶解性が高いという特徴を持つ。さらに、トレハロース(c1)は、生物の細胞や蛋白質を乾燥によるストレスから保護する作用を持つといわれており、本発明ではミセル状カゼインに覆われた微細粒子が粉末化過程で受ける乾燥による変性を抑制していると思われ好適である。
還元糖(c2)は、アノマー炭素がグリコシド結合しておらず、分子内に遊離性のアルデヒド基やケトン基をもち、還元性を示す糖質である。炭水化物(C)として還元糖(c2)を含有することにより、高度不飽和脂肪酸含有油脂(a)の周囲が還元性雰囲気下となるため、高度不飽和脂肪酸含有油脂(a)の酸化抑制にも効果があるものと思われる。
本発明に用いる食用酸化防止剤(D)は、還元力を有する物質であり、食用油脂(A)の酸化を防止するという効果を奏する。食用酸化防止剤としては、ビタミンC、水溶性茶抽出物、エリソルビン酸、没食子酸等の水溶性酸化防止剤、もしくは、ビタミンCの脂肪酸エステル体、ビタミンE、油溶性茶抽出物、油溶性ローズマリー抽出物、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等の油溶性酸化防止剤が挙げられる。
本発明の粉末油脂は、本発明の範囲内で必要に応じて上記成分(A)〜成分(D)以外のその他の成分を添加してもよい。その他の成分としては、例えば、乳化剤、無機塩等を添加することができる。
乳化剤としては、例えば、モノグリセライド、有機酸モノグリセライド等のグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、サポニンなどが挙げられる。粉末油脂中における乳化剤の含有量は、特に制限されないが、好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜5質量%であり、特に好ましくは、0.5〜3質量%である。
無機塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等が挙げられる。粉末油脂で広く用いられるカゼイネートは水溶液中において単分子で溶解できるのに比較して、本発明のミセル状カゼインは架橋によりミセル構造をとっているため単分子では溶解できず、相対的に溶解度が低い。製造中の水への溶解や粉末油脂の水分散性を高めるために、リン酸塩の添加が好ましく、なかでもメタリン酸ナトリウムがより好ましい。その添加量はミセル状カゼインの質量を1質量部に対して、好ましくは0.01〜1質量部であり、より好ましくは0.05〜0.5質量部であり、特に好ましくは0.07〜0.2質量部である。
本発明の粉末油脂の製造方法は、特に制限されないが、例えば、以下の乳化工程(P1)、乾燥工程(P2)を備えたものである。また、食用酸化防止剤(D)を添加する食用酸化防止剤添加工程(P3)を備えることが好ましい。
乳化工程(P1)は、食用油脂(A)と食用蛋白質(B)と食用炭水化物(C)を混合した水溶液を乳化する工程である。例えば、タンクに準備された温水に、食用蛋白質(B)と食用炭水化物(C)を撹拌しながら投入し溶解したあとで、撹拌を続けながら食用油脂(A)を投入し粗乳化させ、次いで、この粗乳化液を均質化機で乳化させる。
均質化機での乳化については、ラインミキサーやマントンゴーリン型ホモジナイザーの使用が好ましい。マントンゴーリン型ホモジナイザーの場合は10MPa以上の処理条件が好ましく、より好ましくは20MPa、最も好ましくは30MPa以上である。この乳化によって油滴が1.0μm以下まで微細化されていることが、そのあとの工程や保管において酸化を抑制するために好ましい。
乾燥工程(P2)は、乳化工程により乳化された乳化液を乾燥機で水分を蒸発させる工程である。例えば、乳化工程により乳化された乳化液をスプレードライヤーなどの乾燥機にて水分を蒸発させ乾燥させる。乾燥機はフリーズドライヤーやドラムドライヤーやスプレードライヤーや真空ベルト乾燥機等が例示される。スプレードライヤーは高度不飽和脂肪酸の酸化を抑制するために、熱風温度を100〜120℃、排風温度を70〜90℃とすることが好ましい。また乾燥のあと適宜、粉砕、篩過、充填を行うが、粉砕の際に混合を兼ねて粉末流動性を向上させるために微粒二酸化ケイ素を添加しても構わない。そのあと適宜、粉砕、篩過、充填を行う。
食用酸化防止剤添加工程(P3)は、食用酸化防止剤(D)を添加する工程である。例えば、乳化工程(P1)の前段において、油相又は水相に添加する工程や、乳化工程(P1)の後段において、乳化液の水相に添加する工程等が挙げられる。食用酸化防止剤(D)の添加方法としては、油相中に油溶性酸化防止剤を添加する方法、水相中に水溶性酸化防止剤を添加する方法のほか、乳化により油溶性酸化防止剤又は水溶性酸化防止剤をそれぞれの異相に添加する方法等が挙げられる。
また、高度不飽和脂肪酸含有油脂(a)以外の油脂として、融点が常温(25℃)以上であるものを使用してもよい。融点が常温以上であることにより、W/O型乳化物の保存時の乳化安定性に優れるという効果を奏する。なお、融点は、基準油脂分析試験法の融点(上昇)に基づいて測定するものである。W/O型乳化物の乳化安定性に優れるという観点から見れば、高度不飽和脂肪酸含有油脂(a)以外の油脂の融点は、より好ましくは30℃以上であり、特に好ましくは40℃以上である。
HLB5以下の乳化物の使用量としては、W/O型乳化物中の食用油脂(A)1質量部に対して0.001〜5質量部が好ましく、0.01〜3質量部がより好ましく、0.1〜1.5質量部が特に好ましい。
本発明の粉末油脂は、これを含有する飲食品となすことができる。本発明の飲食品としては、例えばパン、ビスケット、ゼリー等のパン・菓子類;ヨーグルト、ハム等の乳肉加工食品;味噌、ソース、ドレッシング等の調味料;豆腐、麺類の加工食品;カプセル状、タブレット状、顆粒状等にした健康食品等を挙げることができる。
原料として以下の材料を用いた
<食用油脂(A)>
DHA含有精製魚油(DHA含有量23質量%)、EPA含有精製魚油(EPA含有量28質量%)
<食用蛋白質(B)>
ミセルカゼインアイソレート(MCI)(日本新薬(株)製「ミルカMCI80」、ミセル状カゼイン69質量%、ホエイ蛋白質8質量%、乳糖10質量%)
<食用酸化防止剤(D)>
油溶性ビタミンE(商品名:イーミックスD、タマ生化学(株)製)
油溶性茶抽出物製剤(商品名:サンカテキン油性E、三井農林(株)製)
油溶性ローズマリー抽出物((株)光洋商会製「KALSEC」)
表1〜3の配合組成で以下の方法により粉末油脂を製造した。
<油相の調製>
食用油脂(A)に、油溶性食用酸化防止剤(D)、乳化剤(ステアリン酸モノグリセライド)、乳化剤(レシチン)を溶解した。
<水相の調製>
温水(40℃)に、食用蛋白質(B)、食用炭水化物(C)、水溶性食用酸化防止剤(D)、メタリン酸Naを溶解した。
<粉末油脂の製造>
水相(70vol%)を撹拌しながら油相(30vol%)を投入して、粗乳化液を調製した。この粗乳化液をマントンゴーリン型ホモジナイザーで乳化させ(30MPa)、スプレードライヤーを用いて乾燥を行い(熱風温度120℃、排風温度85℃)、得られた乾燥物を粉砕することで粉末油脂を得た。次いで、得られた粉末油脂に対して微粒二酸化ケイ素を添加し、混合した。
表4の配合組成で以下の方法により粉末油脂を製造した。
<W/O乳化物の調製>
中鎖脂肪酸油、油溶性ビタミンE、油溶性茶抽出物製剤(実施例11)又は油溶性ローズマリー抽出物(実施例12)、乳化剤を混合して油相部を調製した。別に、L−アスコルビン酸を水に溶解して水相部を調製した。油相部に水相部を投入して、W/O型乳化物を調製した。
得られたW/O型乳化物を食用油脂(A)と混合し、以後、実施例1と同様にして粉末油脂を得た。
(成分) 配合量(質量%)
油溶性ビタミンE 38.14
油溶性茶抽出物製剤又は油溶性ローズマリー抽出物 23.77
L−アスコルビン酸 4.74
乳化剤「グリセリン脂肪酸エステル(HLB3)」 21.41
乳化剤「酵素処理レシチン」 2.40
中鎖脂肪酸油「パナセート810」(日油(株)製) 9.54
(小計) 100.00
水 9.54
(合計) 109.53
[酸化劣化臭の評価について]
酸化劣化臭の評価については、評価検体10gをシャーレに敷き、10名の官能評価により評価した。官能評価のスコアは、1:魚臭を感じない、2:魚臭をやや感じる、3:魚臭を感じる、4:魚臭を強く感じる、5:魚臭を著しく感じる、とした。
経時変化後の酸化劣化臭の評価として、評価検体10gをシャーレに敷き、60℃3日間放置後に、上記の酸化劣化臭の評価と同様に実施した。なお60℃3日は20℃6ヶ月に相当すると考えられる。
粉末流動性の評価については、JIS9301−2−2に準じて安息角を測定することで評価した。
水分散性の評価については、評価検体10gを25℃の温水500mLに静かに投入し、プロペラ撹拌にて1分間攪拌し、溶け残りの状態を目視で確認し以下のとおり評価した。
◎:溶け残りがまったくない
○:溶け残りがごくわずかしかない
△:溶け残りが評価検体全体に対し半分以下
×:溶け残りが評価検体全体に対し半分以上
乳化性の評価については、評価検体10gを25℃の温水500mLに溶解させたあと、レーザー回折式粒度分布計「LA−950((株)堀場製作所製)」にて平均径を測定することで評価した。平均径が小さいほど乳化性に優れると評価した。
経時変化後の変色(メイラード反応)の評価として、評価検体10gをシャーレに敷き、60℃3日間放置後に、目視観察により評価を実施した。なお60℃3日は20℃6ヶ月に相当すると考えられる。
○:変色が認められない、もしくは変色がわずかである。
△:変色が認められる。
×:著しい変色が認められる。
さらに、比較例3、4を見ると、食用蛋白質の含有量(B)が食用油脂(A)1質量部に対して0.05質量部未満の場合、乳化工程においてオイルオフが観察され乳化できなかった。また、食用蛋白質の含有量(B)が食用油脂(A)1質量部に対して0.5質量部超の場合、乳化工程において乳化液の粘度が高く、乳化や噴霧乾燥ができなかった。
実施例1、13、14を対比すると、酸化劣化臭を抑制するという効果において、水溶性酸化防止剤より油溶性酸化防止剤の方が優れており、水溶性酸化防止剤と油溶性酸化防止剤を併用することによりさらに優れた効果が認められた。
また、実施例1と実施例17を対比すると、カゼイネートを含有することにより、乳化性が優れることがわかる。
また、実施例1と実施例18を対比すると、微粒二酸化ケイ素を含有することにより、粉末流動性、水分散性が優れることがわかる。
また、実施例2と実施例19を対比すると、乳化剤、メタリン酸Naを含有することにより、酸化劣化臭を抑制し、粉末流動性、水分散性、乳化性を向上することがわかる。
[実施例11−1〜3]スティック粉末
スティック1包分を口の中に入れ、そのままもしくは水で飲用するためのスティック粉末。
<配合>
(実施例11−1)スティック粉末(イチゴミルク風味)
mg/包
実施例11の粉末油脂 1000
粉末マルチトール 1484
脱脂粉乳 150
ミルクフレーバーパウダー※ 90
ストロベリーコートン 90
イチゴパウダー 150
微粒二酸化ケイ素 36
※ミルクフレーバーパウダーRSC60802(長岡香料(株)製)
mg/包
実施例11の粉末油脂 1000
粉末マルチトール 1559
脱脂粉乳 150
ヨーグルトフレーバーパウダー※ 150
ヨーグルトコートン 60
クエン酸(無水) 45
微粒二酸化ケイ素 36
※ヨーグルトフレーバーパウダーRSC63543(長岡香料(株)製)
mg/包
実施例11の粉末油脂 1000
粉末マルチトール 960
脱脂粉乳 150
チョコレートフレーバーパウダー※ 180
チョコレートコートン 30
ココアパウダー 150
微粒二酸化ケイ素 30
※チョコレートフレーバーパウダーRSC60364(長岡香料(株)製)
<評価>
上記、実施例11−1〜3で調整したスティック粉末1食分(3g)を酸素遮断性のあるアルミフィルムに充填し40℃で2ヶ月保管したが、魚臭はほとんど感じられなかった。
<配合>
インスタントスープミックスパウダー 17.6g
実施例11の粉末油脂 3.0g
上記配合にて混合して得られたインスタントスープミックスにおいて、インスタントスープ1杯あたりのDHA含量は300mgに相当する。インスタントスープは典型的には、上記インスタントスープミックス20.6gを熱湯150mLに溶解して調整することができる。
<評価>
上記、実施例11−4で調整したインスタントスープミックス1食分(20.6g)を酸素遮断性のあるアルミフィルムに充填し40℃で2ヶ月保管したが、魚臭はほとんど感じられなかった。
<配合>
グリーンスムージーパウダー 8.5g
実施例11の粉末油脂 2.0g
上記配合にて混合して得られたグリーンスムージーにおいて、グリーンスムージー1杯あたりのDHA含量は200mgに相当する。グリーンスムージー飲料は典型的には、上記グリーンスムージー10.5gを水100mLに混合、溶解して調製することができる。
<評価>
上記、実施例11−5で調整したグリーンスムージー1食分(10.5g)を酸素遮断性のあるアルミフィルムに充填し40℃で2ヶ月保管したが、魚臭はほとんど感じられなかった。
<配合・製法>
生地重量 焼成前7.5g/枚(焼成後6.5g)
焼成温度 上火175℃ 下火150℃
焼成時間 約12分
上記表3の配合・製法にて得られたクッキーにおいて、クッキー10枚あたりのDHA含量は200mgに相当する。
<評価>
上記、実施例11−6で調整したクッキー1枚(6.5g)を酸素遮断性のある透明フィルムに包装し、この包装物(約50袋)をシリカゲルとともに酸素遮断性のあるアルミ袋に入れ保管した。(個包装)
同様に上記、実施例11−6で調整したクッキー10枚(6.5g)を酸素遮断性のないポリフィルムに包装し、この包装物(約5袋)をシリカゲルとともに酸素遮断性のあるアルミ袋に入れ保管した。(大包装)
これらを40℃で2ヶ月保管したが、いずれの包装形態においても魚臭はほとんど感じられなかった。
<配合>
ホットケーキミックスパウダー 150g
実施例11の粉末油脂 2g
<ホットケーキの作成例>
上記のホットケーキミックス 152g
卵(Mサイズ) 1個
牛 乳 100mL
上記配合にて混合・焼成して得られたホットケーキミックスにおいて、ホットケーキミックス3枚あたりのDHA含量は200mgに相当する。
<評価>
上記、実施例11−7で調整したホットケーキミックス1食分(152g)を酸素遮断性のあるアルミフィルムに充填し40℃で2ヶ月保管した後、ホットケーキを焼成したが、魚臭はほとんど感じられなかった。
<配合>
配合 配合(1) 配合(2) 配合(3)
(中 種)
強力粉 70 70 70
イースト 3 3 3
イーストフード 0.1 0.1 0.1
水 42 42 42
(本 捏)
実施例11の粉末油脂 1.2 2.9 5.9
強力粉 10 10 10
薄力粉 20 20 20
上白糖 14 14 14
食塩 1.7 1.7 1.7
脱脂粉乳 3 3 3
全卵 12 12 12
デリシャスコンパウンド 14 14 14
水 8 8 8
計 199 201 204
<製法>
上記の配合(1)〜(3)の各々において、中種原料をミキサーボウルに投入し、低速2分、中速2分混捏し、捏ね上げ温度26℃の中種を28℃で2時間醗酵させた。醗酵させた中種をミキサーボウルに投入し、さらに本捏原料を投入し、低速4分、中速8分混捏し、捏ね上げ温度28℃の生地を得た。フロアタイムを30分取った後、35gに分割し、次いでベンチタイムを15分取った後、テーブルロールに成型し鉄板に並べた。さらに38℃、相対湿度85%のホイロに55分入れて最終醗酵を行った。最終醗酵後、上火200℃、下火200℃のオーブンに入れて、8分焼成しパンを得た。このパンを20分間室温で放冷した。
上記の配合(1)、(2)、(3)はそれぞれ、DHA含有量20、50、100mg/個に相当する。
<評価>
上記、実施例11−8で調整したテーブルロール1個(30g)をポリフィルム袋に充填し30℃で8日間保管したが、配合(1)〜(3)のいずれにおいても魚臭はほとんど感じられなかった。
<配合・製法>
<評価>
上記、実施例11−6で調整したサンドクリーム20gをプラスチック容器に入れ、さらにこれを酸素遮断性のあるアルミフィルムに30℃で3ヶ月保管したが、魚臭はほとんど感じられなかった。
<配合・製法>
<評価>
上記、実施例11−10で調整したバタークリーム20gをプラスチック容器に入れ、容器内に脱酸素剤を入れる/入れないの2条件下で、さらにこれを酸素遮断性のあるアルミフィルムに30℃で5日間保管したが、魚臭はほとんど感じられなかった。
<配合>
ミルクチョコレート生地(市販品) 92.42部
実施例11の粉末油脂 7.58部
上記配合にて混合して得られたチョコレートにおいて、チョコレート1食(3.3g)あたりのDHA含量は25mgに相当する。
<評価>
上記、実施例11−11で調整したチョコレート1食(3.3g)を酸素遮断性のあるアルミフィルムに充填し30℃で2ヶ月保管したが、魚臭はほとんど感じられなかった。
Claims (7)
- 食用油脂(A)、食用蛋白質(B)、食用炭水化物(C)、食用酸化防止剤(D)を含有する粉末油脂であって、
食用油脂(A)の含有量が25〜85質量%、食用蛋白質(B)の含有量が食用油脂(A)1質量部に対して0.05〜0.5質量部、食用炭水化物(C)の含有量が7〜73.75質量%であり、
食用油脂(A)は高度不飽和脂肪酸含有油脂(a)を含み、食用油脂(A)の脂肪酸組成における高度不飽和脂肪酸の含有量が3〜70質量%であり、
食用蛋白質(B)はミセル状カゼイン(b1)を含み、食用蛋白質(B)中におけるミセル状カゼイン(b1)の含有量が20質量%以上である、粉末油脂。 - 高度不飽和脂肪酸含有油脂(a)は、α−リノレン酸、EPA、DHAからなる群から選ばれる1つまたは2つ以上の高度不飽和脂肪酸を有する、請求項1に記載の粉末油脂。
- 食用蛋白質(B)がさらに、カゼイネート(b2)を含み、食用蛋白質(B)中におけるカゼイネート(b2)の含有量が5〜80質量%である、請求項1または2に記載の粉末油脂。
- 食用炭水化物(C)がトレハロース(c1)または還元糖(c2)を含み、食用炭水化物(C)中におけるトレハロース(c1)または還元糖(c2)の含有量が40質量%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粉末油脂。
- さらに、食用酸化防止剤(D)として下記の成分(d1)、下記の成分(d2)を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉末油脂。
成分(d1):ビタミンCまたは水溶性茶抽出物
成分(d2):ビタミンCの脂肪酸エステル体、ビタミンE、油溶性茶抽出物、油溶性ローズマリー抽出物からなる群から選ばれる1つまたは2つ以上 - 請求項5に記載の粉末油脂の製造方法であって、
食用油脂(A)と食用蛋白質(B)と食用炭水化物(C)を混合した水溶液を乳化する乳化工程(P1)と、
前記乳化工程により乳化された乳化液を乾燥機で水分を蒸発させる乾燥工程(P2)と、
食用酸化防止剤(D)を添加する食用酸化防止剤添加工程(P3)と、を備え、
前記食用酸化防止剤添加工程(P3)は、
HLB5以下の乳化剤を用いて、成分(d1)の水溶液を、高度不飽和脂肪酸含有油脂(a)以外の油脂中に乳化してW/O型乳化物を得る工程(P3−1)と、
前記W/O型乳化物を食用油脂(A)に混合する工程(P3−2)と、を含む、粉末油脂の製造方法。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載の粉末油脂を含有する飲食品。
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