JPH05209190A - 油脂含有粉末組成物の製造方法 - Google Patents

油脂含有粉末組成物の製造方法

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JPH05209190A
JPH05209190A JP4040238A JP4023892A JPH05209190A JP H05209190 A JPH05209190 A JP H05209190A JP 4040238 A JP4040238 A JP 4040238A JP 4023892 A JP4023892 A JP 4023892A JP H05209190 A JPH05209190 A JP H05209190A
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JP
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oil
oils
fat
emulsion
fats
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JP4040238A
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Shinya Ono
晋也 大野
Yoshihide Nagasaka
義秀 長坂
Yoshiharu Tanaka
善晴 田中
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Nippon Oil and Fats Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】固形分中に油脂5〜70重量%とタンパク質や
その分解物10〜50重量%とを含有し、さらに場合に
より固形分とエタノールとの合計重量に基づきエタノー
ル2〜15重量%を含有する水中油型の均質乳化液を乳
化剤を用いて調製したのち、高真空下で乾燥させること
により、油脂含有粉末組成物を製造する。 【効果】粉末化時の過酸化物の生成が極めて少なく、風
味が良好で溶解性及び保存安定性に優れ、特に乳化液調
製時にエタノールを添加することによって、一般生菌数
が低く、かつ極めて長期保存安定性に優れた油脂含有粉
末組成物が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は油脂含有粉末組成物の新
規な製造方法、さらに詳しくは、風味や溶解性、長期安
定性に優れる油脂含有組成物を効率よく製造する方法に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、油脂含有粉末組成物は、食品素材
として各種加工食品に配合使用したり、健康食品などと
して広く用いられている。該油脂含有粉末組成物の製造
方法としては、従来噴霧乾燥法が多用されている。この
噴霧乾燥法は油脂にタンパク質、炭水化物などを適宜添
加し、水と乳化したものを熱風乾燥する方法である。そ
の他、小麦粉、デンプンなどに溶解した油脂を散布又は
スプレーしながら撹拌混合する方法やマイクロカプセル
化する方法、さらには凍結乾燥法などが用いられてい
る。これらの方法によって得られた油脂含有粉末組成物
における油脂の酸化安定性については、油脂を散布し混
和して得られた油脂含有粉末組成物は空気との接触面積
が大きくなるため、油脂の酸化に対する安定性が低下す
るのを免れないが、噴霧乾燥法、マイクロカプセル化
法、凍結乾燥法などにより得られた油脂含有粉末組成物
は、油脂がタンパク質や炭水化物でコーティングされて
いるため、前記の油脂を散布し混和して得られた油脂含
有粉末組成物よりも、高い油脂の酸化安定性を有してい
る。ところで近年、成人病あるいは老化防止策の点で、
不飽和脂肪酸、特にリノール酸、リノレン酸、エイコサ
ペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DH
A)のような高度不飽和脂肪酸の重要性が注目されてい
る。しかしながらこれらの脂肪酸は熱や酸素により劣化
を受けやすく、保存安定性が著しく悪い上、油脂の酸化
によって生じる過酸化物は人体に対して有害であること
が知られている。そのため最近、前記高度不飽和脂肪酸
含有油のカプセルや噴霧乾燥により得られた粉末製品な
どが開発され、市販されている。しかしながら、前記の
カプセルは手軽に水に溶かして使用することが困難であ
るという問題を有しているし、また、従来の噴霧乾燥に
よって得られた粉末製品は(特開昭60−49097号
公報、特開昭62−126933号公報、特開平2−2
18796号公報)、噴霧時に高温度下で酸素と接触す
るため、得られる粉末中に油脂の過酸化物が多量に生成
し、かつ微粒子であるため、水などに溶解した場合にダ
マになりやすい上、水に溶かして飲んだ場合に、強い不
快臭を有し、後味が悪く、そのまま継続的に飲むことが
困難であり、しかも製造後2か月以上経過した場合には
さらに油脂の酸化劣化が進み、食べにくくなるなどの欠
点を有している。また、油脂含有粉末組成物の製造にお
いては、殺菌などの加熱処理において、組成物中の油
脂、特に不飽和脂肪酸含有油脂やタンパク質の加熱変性
が生じやすく、そのため加熱による殺菌処理が行われに
くいという問題もある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
事情のもとで、その乾燥製造時に油脂の酸化劣化や風味
劣化をもたらすことがなく、さらに油脂やタンパク質の
加熱変性をもたらさずに殺菌処理が可能な、溶解性、風
味、保存安定性、乳化安定性に優れた油脂含有粉末組成
物を製造する方法を提供することを目的としてなされた
ものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記の好
ましい性質を有する油脂含有粉末組成物の製造方法を開
発すべく鋭意研究を重ねた結果、油脂とタンパク質及び
/又はその分解物と場合により用いられるエタノールと
を、それぞれ特定の割合で含有する水中油型乳化液を高
真空で乾燥させ、必要に応じて粉砕し粉末化することに
より、その目的を達成しうることを見い出し、この知見
に基づいて本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は固形分中に油脂5〜70重量%とタ
ンパク質及び/又はその分解物10〜50重量%とを含
有し、さらに場合により固形分とエタノールとの合計重
量に基づきエタノール2〜15重量%を含有する水中油
型の均質乳化液を、乳化剤及び乳化機を用いて調製した
のち、これを高真空下で乾燥させることを特徴とする油
脂含有粉末組成物の製造方法を提供するものである。以
下、本発明を詳細に説明する。
【0005】本発明において用いられる油脂としては、
例えばナタネ油、大豆油、ヤシ油などの植物油、牛脂、
ラード、魚油などの動物油及びこれらの天然から得られ
る硬化油、分別油、エステル交換油など、食用として使
用しうる油脂の中から任意なものを挙げることができる
が、これらの中で、特に炭素数18以上で、かつ不飽和
結合を3個以上有する高度不飽和脂肪酸、例えばリノレ
ン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸など
を含有する油脂が好適である。該リノレン酸を含有する
油脂としては、例えばシソ科植物の実から得られる油脂
であるシソ実油やエゴマ油などが用いられ、エイコサペ
ンタエン酸、ドコサヘキサエン酸を含むものとしては、
イワシ油、サバ油、ニシン油、マグロ油、カツオ油、タ
ラ肝油などの魚油を精製したものや、濃縮したものを用
いることができるし、バクテリアやクロレラなどから抽
出したものも用いることができる。
【0006】一方、該組成物に含有されるタンパク質及
び/又はその分解物としては、例えば卵タンパク質、ホ
エー(乳清及びラクトアルブミン)タンパク質、大豆タ
ンパク質、魚タンパク質、カゼイン、ゼラチン及びこれ
らの分解物などを挙げることができる。これらは単独で
用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよ
い。本発明においては、固形分中に油脂を5〜70重量
%、タンパク質及び/又はその分解物を10〜50重量
%の割合で含有し、さらに場合により固形分とエタノー
ルとの合計重量に基づきエタノールを2〜15重量%の
割合で含有する水中油型の均質乳化液を、乳化剤及び乳
化機を用いて調製したのち、この乳化液を高真空下で乾
燥させることが必要であり、さらに必要に応じ、得られ
た乾燥物を粉砕し、粉末化する処理が行われる。
【0007】本発明方法において、乳化液を高真空下で
乾燥させる際に用いられる乾燥装置としては、例えば真
空凍結乾燥装置、ベルト式連続真空乾燥装置、ドラム式
真空乾燥装置などが挙げられる。これらの装置を用いて
得られる粉末はいずれも多孔質の形状を示すため、溶解
性に優れ、また乾燥時に酸素と遮断されているために不
飽和脂肪酸からの過酸化物の生成がなく、風味について
も噴霧乾燥と比べて熱覆歴が少ないため、成分変化や風
味成分の揮散が少なく、乾燥前の風味が乾燥後もそのま
ま保持されるなどの特徴を有している。したがって、こ
れらの装置を用いて得られる粉末組成物は乾燥中の油脂
の酸化劣化による異臭の発生がないため、食品として容
易に食することができ、また水などに溶解して飲用する
こともできる。
【0008】本発明においては、乳化液の固形分中に油
脂を5〜70重量%、タンパク質及び/又はその分解物
を10〜50重量%の割合で含有させ、さらに場合によ
りエタノールを固形分とエタノールとの合計重量に基づ
き2〜15重量%の割合で含有させること、及び均質乳
化液を得るために乳化剤を用いることが必要である。各
成分の割合が前記範囲を逸脱すると本発明の効果が十分
に発揮されない。本発明で所望により用いられるエタノ
ールは通常食品に使用されるものであればよく、変性ア
ルコールも用いることができる。このエタノールは、組
成物を高真空で乾燥する場合、水とともに揮発し、乾燥
後の組成物中には含有しなくなるが、本発明における油
脂含有粉末組成物の品質に大きな効果を与える。すなわ
ち、エタノールは該粉末組成物の油脂の皮膜物質の皮膜
性を強化し、油脂からの過酸化物生成を阻止する効果を
有する。
【0009】また乾燥化前の乳化液には、油脂及びタン
パク質が含まれており、これらの物質は加熱によって、
油脂の場合には酸化劣化し、タンパク質の場合には変性
し凝固する。したがってこれらを含む乳化液の調製工程
において、通常加熱殺菌などの加熱工程を取り入れるこ
とが困難であるが、本発明の乳化液にエタノールを添加
することによって、乳化液の長時間の貯留によって生じ
る細菌汚染を防止することができる。このエタノールの
添加量が固形分とエタノールとの合計重量に基づき2重
量%未満ではエタノールの添加効果が十分に発揮されな
いし、15重量%を超えると乳化破壊を起こすおそれが
生じる。
【0010】また本発明に使用する乳化剤は、(1)粉
末化前の乳化液の長時間の保持において、乳化が破壊し
ないように油粒子を微細にする、(2)高真空下での乾
燥中における乳化液からの水分揮発による乳化の破壊を
防止する、及び(3)乾燥後の組成物を水などに溶解し
た際に、速やかに溶解し、良好な乳化安定性をもたら
す、など極めて重要な役割を有する。なお、従来油脂を
含む組成物を高真空下で乾燥する場合、油脂が組成物の
発泡を抑制し、十分な乾燥物が得られないか、又は油脂
のしみだしが起こるなどの問題があったが、本発明にお
いてはこのような問題が生じることがない。
【0011】さらに、乳化液へのエタノールの添加は、
一般に乳化破壊が生じるとされているが、本発明におい
ては、エタノールを添加しても、乳化剤及びタンパク質
と、乳化機による処理により、乳化破壊が防止され、乳
化安定性の優れた乳化液が得られる。本発明において用
いられる乳化剤としては、例えばレシチン、ショ糖脂肪
酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、プロピレングリコ
ール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどを
挙げることができるが、特にコハク酸モノグリセリド、
クエン酸モノグリセリドなどの有機酸モノグリセリド、
テトラグリセリンペンタオレエート、デカグリセリンデ
カオレエートなどのポリグリセリン脂肪酸エステルが好
適である。
【0012】本発明においては、乾燥前の乳化液の調製
においてホモジナイザーなどを用いて、均一な水中油型
乳化液を作成する。また必要に応じてコロイドミル、ホ
モミキサーなどを用いて均質化を図ることも可能であ
る。さらに、本発明における組成物には必要に応じ、デ
キストリン、乳糖、ショ糖、ブドウ糖などの糖質、微量
栄養成分であるビタミン類、ミネラル類などを配合して
もよいし、さらに酸化防止剤、乳化安定剤、果汁、香料
などを添加することもできる。
【0013】次に、本発明の油脂含有粉末組成物の好適
な製造方法の1例について説明すると、まず油脂に、乳
化剤及び所望に応じて用いられるレシチン、酸化防止
剤、油溶性ビタミン、香料などを添加して加熱溶解させ
油相部を調製する。一方、これとは別に総固形分の0.
1〜5重量倍量の水に、タンパク質及び/又はその分解
物、さらに必要に応じて用いられる乳化剤、糖質、ミネ
ラル、乳化安定剤、水溶性ビタミン、香料、果汁など
を、所定の割合で添加し、40〜80℃程度の温度で撹
拌しながら完全に溶解させ、水相部を調製する。次い
で、この水相部と前記油相部とを撹拌しながら混合して
予備乳化液を作成したのち、乳化機を用いて均質化して
水中油型乳化液を得る。所望により用いられるエタノー
ルは前記水相部及び/又は乳化液に添加することができ
る。次にこの乳化液を高真空下で乾燥させ、乾燥物を得
る。この際用いられる乾燥方法としては真空凍結乾燥法
や、真空乾燥法(ベルト式連続真空乾燥法、ドラム式連
続真空乾燥法など)が挙げられる。特にベルト式連続真
空乾燥法は凍結乾燥法と異なり、連続的に乾燥を行うこ
とができ、また処理時間も短いため、コスト的にもメリ
ットが大きい[「月刊フードケミカル」9月号、第50
〜56ページ(1989年)]。これらの方法によって
得られた乾燥物は、通常ブロック状を呈しており、必要
に応じて粉砕することにより粉末化することが可能であ
る。
【0014】さらに必要ならば油脂含有粉末組成物に、
タンパク質や糖質、ビタミン、ミネラル、粉末果汁、粉
末香料などを粉体混合することも可能である。本発明の
製造方法によって得られた油脂含有粉末組成物を長期間
安定に保存するためには、5〜100gずつ酸素透過性
のほとんどない包装容器に窒素置換、又は脱酸素剤を用
いて密封することが望ましい。本発明の製造方法によっ
て得られた油脂含有粉末組成物は、例えば水やお湯に溶
解させ、飲料として飲んでもよいし、粉末のまま、ある
いはブロック状のまま、直接食べてもよく、また食品素
材として加工食品に利用することもできる。
【0015】
【実施例】次に実施例により本発明をさらに詳細に説明
するが、本発明はこれらの例によってなんら限定される
ものではない。 実施例1 水500gに第1表に示す配合組成の材料のうち、砂
糖、デキストリン、カゼインナトリウムを除く620g
を加え、70℃に昇温した。大豆レシチン、コハク酸モ
ノグリセリドはEPA、DHA濃縮イワシ油に溶解させ
たのちに加えた。なお、イワシ油には天然ビタミンEミ
ックス(d−α−トコフェロール50wt%含有)を対
油0.05wt%の割合で添加した。この混合液を70
℃で15分間予備乳化したのち、1段目200kg/c
m2、2段目50kg/cm2の2段階均質化法で均質処理し
て水中油型乳化液を得た。この乳化液に砂糖、デキスト
リン、カゼインナトリウムを均一に溶解し、次いでこの
ようにして得た溶液を連続式真空ベルト乾燥機(日阪製
作所製、SBD80型)にて1mmHgの真空下、加熱温度
120℃で約20分間の滞留時間となるように乾燥を行
った。
【0016】このようにして得られたブロック状の乾燥
物はそのまま直接、あるいは菓子食品として刺激味や異
味はなくおいしく食べることができた。またこの乾燥物
を粉砕後、20メッシュのふるいにて分級し、粉末製品
を得た。この粉末製品の過酸化物価を測定したところ、
0.16meq/kgと低い値であった。この乾燥製品を60
gずつアルミ箔フイルムの小袋に窒素シールしながら密
封した。この小袋の乾燥製品10gを100mlの温湯に
溶解したところ、速やかに溶解した。さらにこれを飲用
したところ刺激味や異味はなく、良好なミルク風味を有
しており、おいしく飲用できた。また室温で6か月間保
存後の小袋中の乾燥製品は、製造直後の製品の色、臭
い、性状と比べて変化はなく、乾燥製品の油分中の過酸
化物価(POV)は0.2meq/kgと低く、問題はなかっ
た。またこれをお湯に溶解してもおいしく飲用すること
ができた。
【0017】
【表1】
【0018】実施例2 水350gに第2表に示す配合組成の材料1000gを
加え、70℃に昇温した。大豆レシチン、クエン酸モノ
グリセリド、コハク酸モノグリセリド、ストロベリーフ
レーバーはタラ肝油(エイコサペンタエン酸13wt
%、ドコサヘキサエン酸6wt%)に溶解させたのちに
加えた。なお、油には天然ビタミンEミックス(d−α
−トコフェロール50wt%含有)を対油0.05wt
%の割合で添加した。この混合液を70℃で15分間予
備乳化したのち、1段目200kg/cm2、2段目50kg
/cm2の2段階均質化法で均質処理して水中油型乳化液
を得、次いでこの乳化液を真空凍結乾燥機(共和真空技
術社製、RLE−21型)にて0.1mmHgの真空下、棚
温度−20℃で乾燥を行った。
【0019】このようにして得られたブロック状の乾燥
物を粉砕後、20メッシュのふるいで分級、乾燥製品を
得た。この粉末製品の過酸化物価を測定したところ、
0.08meq/kgと低い値であった。この粉末製品を60
gずつアルミ箔フイルムの小袋に窒素シールしながら密
封した。この小袋の粉末製品10gを100mlの温湯に
溶解したところ速やかに溶解し、これを飲用したとこ
ろ、刺激味や異味はなく、良好なストロベリー風味を有
しており、おいしく飲用できた。さらにこの粉末製品を
果汁や牛乳に溶解させてよりおいしく飲用できた。また
この粉末製品はヨーグルト、プリンなどの原材料として
配合して使用することができ、これらの食品は異味や刺
激味がなくおいしく食べることができた。一方、室温で
6か月間保存後の小袋中の乾燥製品は、製造直後の製品
の色、臭い、性状と比べて変化はなく、乾燥製品の油分
中の過酸化物価(POV)は0.12meq/kgと低く、問
題はなかった。またこれをお湯に溶解してもおいしく飲
用することができた。
【0020】
【表2】
【0021】比較例1 実施例1の水を1000gにし、かつ噴霧乾燥(芦沢製
作所製スプレードライヤー、乾燥温度150℃、出口温
度60℃)により乾燥した以外は実施例1と同様にして
粉末製品を得た。この粉末製品の過酸化物価(POV)
を測定したところ5.20であった。またこの粉末を温
湯に溶解したところ、粉末同士がダマになり、溶解性が
劣っていた。さらにこの粉末溶解液を飲用したところ、
ミルク風味はほとんど感じられず、魚油臭が感じられ、
飲用に不適であった。
【0022】実施例3 第3表に示す配合割合の材料混合物100重量部に対
し、水50重量部を計量し、50℃に昇温したのち、こ
れに第3表に示す配合割合でラクトアルブミンと大豆タ
ンパク分解物を加え、溶解させ、次いでこの溶解液にあ
らかじめコハク酸モノグリセリドを溶かしておいたEP
A、DHA濃縮イワシ油を加えた。次にこの混合液を5
0℃で20分間予備乳化したのち、均質機により1段目
150kg/cm2、2段目50kg/cm2の均質圧で均質処理
して乳化液を得た。この乳化液にデキストリンを加え、
溶解させたのち、エタノールを徐々に加えた。このよう
にして得た乳化液をベルト式連続真空乾燥装置[(株)日
阪製作所製]にて真空乾燥を行ったのち、このブロック
状の乾燥物を粉砕後、20メッシュのフルイにて分級
し、粉末組成物を得た。この粉末組成物の油脂の過酸化
物価は、0.15meq/kgと低い値であり、また、一般生
菌数は、2×10個/gと低かった。この粉末組成物を
アルミ袋に密封し、これを40℃の恒温槽に保存して保
存期間中の油脂の過酸化物価の変化の測定を行ったとこ
ろ、40℃で30日間保存した粉末組成物の油脂の過酸
化物価は5.2meq/kgであった。
【0023】
【表3】
【0024】また、エタノールを配合しなかったこと以
外は、前記と同様にして粉末組成物を得た。この粉末組
成物の一般生菌数は10×103個/gであり、エタノ
ールを配合した場合に比べ、かなり高かった。また、前
記と同様な保存試験を行ったところ、40℃で30日間
保存した粉末組成物の油脂の過酸化物価は21.5meq/
kgであった。これらの結果から、乳化液の調製にエタノ
ールを配合することにより、一般生菌数が少なく、かつ
保存中の油脂の酸化安定性が向上することが明らかであ
る。
【0025】実施例4 第4表に示す配合割合の材料混合物100重量部に対
し、水40重量部を計量し、50℃に昇温したのち、こ
れに第4表に示す配合割合でカゼインナトリウムとラク
トアルブミンを加え、溶解させ、次いでこの溶解液にテ
トラグリセリンペンタオレエートをあらかじめ溶かして
おいた大豆油を加えた。次にこの混合液を50℃で20
分間予備乳化させたのち、均質機により1段目200kg
/cm2、2段目50kg/cm2の均質圧で均質処理して乳化
液を得た。この乳化液に乳糖、デキストリンを加え、溶
解させたのち、エタノールを徐々に加えた。このように
して得た乳化液を真空凍結乾燥機[共和真空技術(株)
製]にて乾燥を行ったのち、この乾燥物を粉砕後、20
メッシュのフルイで分級し、粉末組成物を得た。
【0026】この粉末組成物の油脂の過酸化物価は0.
12meq/kgと低い値であり、また一般生菌数は2×1
0個/gであった。なおこの粉末組成物をアルミ袋に密
封し、これを40℃の恒温槽に保存して保存期間中の油
脂の過酸化物価の変化の測定を行った。40℃で30日
間保存した粉末組成物の油脂の過酸化物価は6.5meq/
kgであった。
【0027】
【表4】
【0028】また、エタノールを配合しないこと以外
は、前記と同様にして粉末組成物を得た。この粉末組成
物の一般生菌数は7×103個/gであり、エタノール
を配合した場合に比べ、かなり高かった。また、前記と
同様な保存試験を行ったところ、40℃で30日間保存
した粉末組成物の油脂の過酸化物価は25.3meq/kgで
あった。これらの結果から、乳化液の調製にエタノール
を配合することにより、一般生菌数が少なく、かつ保存
中の油脂の酸化安定性が向上することが明らかである。
【0029】実施例5 第5表に示す配合割合の材料混合物100重量部に対
し、水70重量部を計量し、55℃に昇温したのち、こ
れを第5表に示す配合割合でラクトアルブミン、魚肉タ
ンパク分解物、脱脂粉乳、リン酸三ナトリウムを加え、
溶解させ、次いでこれにエタノール5重量部を徐々に加
えた。さらにこの溶解液に、あらかじめクエン酸モノグ
リセリドを溶かしておいたエゴマ油を加えた。次にこの
混合液を50℃で20分間予備乳化したのち、均質機に
より1段目200kg/cm2、2段目50kg/cm2の均質圧
で均質化処理して乳化液を得た。この乳化液に、砂糖、
デキストリン、ミルクフレーバーを加え、溶解させたの
ち、エタノール8重量部を徐々に加えた。このようにし
て得た乳化液をベルト式連続真空乾燥機[(株)日阪製作
所製]にて真空乾燥を行ったのち、このブロック状の乾
燥物を粉砕後、20メッシュのフルイにて分級し、粉末
組成物を得た。
【0030】この粉末組成物の油脂の過酸化物価は0.
11meq/kgと低い値であり、またこの粉末組成物の一
般生菌数は2×10個/gと低かった。この粉末組成物
をアルミ袋に密封し、これを40℃の恒温槽に保存して
保存期間中の油脂の過酸化物価の変化の測定を行ったと
ころ、40℃で30日間保存した粉末組成物の油脂の過
酸化物価は3.5meq/gであった。
【0031】
【表5】
【0032】また、エタノールを配合しなかったこと以
外は、前記と同様にして粉末組成物を得た。この粉末組
成物の一般生菌数は6×103個/gであり、エタノー
ルを配合した場合に比べ、かなり高かった。また、前記
と同様な保存試験を行ったところ、40℃で30日間保
存した粉末組成物の油脂の過酸化物価は32.7meq/kg
であった。これらの結果から、乳化液の調製にエタノー
ルを配合することにより、一般生菌数が少なく、かつ保
存中の油脂の酸化安定性が向上することが明らかであ
る。
【0033】
【発明の効果】本発明の製造法によって得られた油脂含
有粉末組成物は次に示す特徴を有している。 (1)乾燥時の油脂からの過酸化物の生成が極度に抑え
られているため、製造直後の油脂の変敗がなく、かつ保
存安定性についても良好である。 (2)噴霧乾燥ほど熱がかからないため、風味成分の揮
散が少なく、フレーバーなどによる風味付けが容易であ
る。 (3)水に対する溶解性が著しく良好であるため、これ
を水に溶かしてあるいは飲料に添加して手軽に飲めるこ
とができる。 (4)乳化液の調製時にエタノールを添加することによ
り、一般生菌数が低く、衛生的に安全なものとして食品
に使用しうる上、長期間保存した場合にも油脂の酸化が
極度に抑えられる。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成4年4月23日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 油脂含有粉末組成物の製造方法
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は油脂含有粉末組成物の新
規な製造方法、さらに詳しくは、風味や溶解性、長期安
定性に優れる油脂含有組成物を効率よく製造する方法に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、油脂含有粉末組成物は、食品素材
として各種加工食品に配合使用したり、健康食品などと
して広く用いられている。該油脂含有粉末組成物の製造
方法としては、従来噴霧乾燥法が多用されている。この
噴霧乾燥法は油脂にタンパク質、炭水化物などを適宜添
加し、水と乳化したものを熱風乾燥する方法である。そ
の他、小麦粉、デンプンなどに溶解した油脂を散布又は
スプレーしながら撹拌混合する方法やマイクロカプセル
化する方法、さらには凍結乾燥法などが用いられてい
る。これらの方法によって得られた油脂含有粉末組成物
における油脂の酸化安定性については、油脂を散布し混
和して得られた油脂含有粉末組成物は空気との接触面積
が大きくなるため、油脂の酸化に対する安定性が低下す
るのを免れないが、噴霧乾燥法、マイクロカプセル化
法、凍結乾燥法などにより得られた油脂含有粉末組成物
は、油脂がタンパク質や炭水化物でコーティングされて
いるため、前記の油脂を散布し混和して得られた油脂含
有粉末組成物よりも、高い油脂の酸化安定性を有してい
る。しかしながら、前記のカプセルは手軽に水に溶かし
て使用することが困難であるという問題を有している
し、また、従来の噴霧乾燥によって得られた粉末製品は
(特開昭60−49097号公報、特開昭62−126
933号公報、特開平2−218796号公報)、噴霧
時に高温度下で酸素と接触するため、得られる粉末中に
油脂の過酸化物が多量に生成し、かつ微粒子であるた
め、水などに溶解した場合にダマになりやすい上、水に
溶かして飲んだ場合に、強い不快臭を有し、後味が悪
く、そのまま継続的に飲むことが困難であり、しかも製
造後2か月以上経過した場合にはさらに油脂の酸化劣化
が進み、食べにくくなるなどの欠点を有している。ま
た、油脂含有粉末組成物の製造においては、殺菌などの
加熱処理において、組成物中の油脂、特に不飽和脂肪酸
含有油脂やタンパク質の加熱変性が生じやすく、そのた
め加熱による殺菌処理が行われにくいという問題もあ
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
事情のもとで、その乾燥製造時に油脂の酸化劣化や風味
劣化をもたらすことがなく、さらに油脂やタンパク質の
加熱変性をもたらさずに殺菌処理が可能な、溶解性、風
味、保存安定性、乳化安定性に優れた油脂含有粉末組成
物を製造する方法を提供することを目的としてなされた
ものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記の好
ましい性質を有する油脂含有粉末組成物の製造方法を開
発すべく鋭意研究を重ねた結果、油脂とタンパク質及び
/又はその分解物とエタノールとを、それぞれ特定の割
合で含有する水中油型乳化液を高真空で乾燥させ、必要
に応じて粉砕し粉末化することにより、その目的を達成
しうることを見い出し、この知見に基づいて本発明を完
成するに至った。すなわち、本発明は固形分中に油脂5
〜70重量%とタンパク質及び/又はその分解物10〜
50重量%とを含有し、さらに固形分とエタノールとの
合計重量に基づきエタノール2〜15重量%を含有する
水中油型の均質乳化液を、乳化剤及び乳化機を用いて調
製したのち、これを高真空下で乾燥させることを特徴と
する油脂含有粉末組成物の製造方法を提供するものであ
る。以下、本発明を詳細に説明する。
【0005】本発明において用いられる油脂としては、
例えばナタネ油、大豆油、ヤシ油などの植物油、牛脂、
ラード、魚油などの動物油及びこれらの天然から得られ
る硬化油、分別油、エステル交換油など、食用として使
用しうる油脂の中から任意なものを挙げることができ
る。また、本発明に用いる油脂としては、炭素数18以
上で、かつ不飽和結合を3個以上有する高度不飽和脂肪
酸、例えばリノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサ
ヘキサエン酸、α−リノレン酸、アラキドン酸などを主
として含有する油脂なども好適に使用することができ
る。
【0006】一方、該組成物に含有されるタンパク質及
び/又はその分解物としては、例えば卵タンパク質、ホ
エー(乳清及びラクトアルブミン)タンパク質、大豆タ
ンパク質、魚タンパク質、カゼイン、ゼラチン及びこれ
らの分解物などを挙げることができる。これらは単独で
用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよ
い。本発明においては、固形分中に油脂を5〜70重量
%、タンパク質及び/又はその分解物を10〜50重量
%の割合で含有し、さらに固形分とエタノールとの合計
重量に基づきエタノールを2〜15重量%の割合で含有
する水中油型の均質乳化液を、乳化剤及び乳化機を用い
て調製したのち、この乳化液を高真空下で乾燥させるこ
とが必要であり、さらに必要に応じ、得られた乾燥物を
粉砕し、粉末化する処理が行われる。
【0007】本発明方法において、乳化液を高真空下で
乾燥させる際に用いられる乾燥装置としては、例えば真
空凍結乾燥装置、ベルト式連続真空乾燥装置、ドラム式
真空乾燥装置などが挙げられる。これらの装置を用いて
得られる粉末はいずれも多孔質の形状を示すため、溶解
性に優れ、また乾燥時に酸素と遮断されているために不
飽和脂肪酸からの過酸化物の生成がなく、風味について
も噴霧乾燥と比べて熱覆歴が少ないため、成分変化や風
味成分の揮散が少なく、乾燥前の風味が乾燥後もそのま
ま保持されるなどの特徴を有している。したがって、こ
れらの装置を用いて得られる粉末組成物は乾燥中の油脂
の酸化劣化による異臭の発生がないため、食品として容
易に食することができ、また水などに溶解して飲用する
こともできる。
【0008】本発明においては、乳化液の固形分中に油
脂を5〜70重量%、タンパク質及び/又はその分解物
を10〜50重量%の割合で含有させ、さらにエタノー
ルを固形分とエタノールとの合計重量に基づき2〜15
重量%の割合で含有させること、及び均質乳化液を得る
ために乳化剤を用いることが必要である。各成分の割合
が前記範囲を逸脱すると本発明の効果が十分に発揮され
ない。本発明で所望により用いられるエタノールは通常
食品に使用されるものであればよく、変性アルコールも
用いることができる。このエタノールは、組成物を高真
空で乾燥する場合、水とともに揮発し、乾燥後の組成物
中には含有しなくなるが、本発明における油脂含有粉末
組成物の品質に大きな効果を与える。すなわち、エタノ
ールは該粉末組成物の油脂の皮膜物質の皮膜性を強化
し、油脂からの過酸化物生成を阻止する効果を有する。
【0009】また乾燥化前の乳化液には、油脂及びタン
パク質が含まれており、これらの物質は加熱によって、
油脂の場合には酸化劣化し、タンパク質の場合には変性
し凝固する。したがってこれらを含む乳化液の調製工程
において、通常加熱殺菌などの加熱工程を取り入れるこ
とが困難であるが、本発明の乳化液にエタノールを添加
することによって、乳化液の長時間の貯留によって生じ
る細菌汚染を防止することができる。このエタノールの
添加量が固形分とエタノールとの合計重量に基づき2重
量%未満ではエタノールの添加効果が十分に発揮されな
いし、15重量%を超えると乳化破壊を起こすおそれが
生じる。
【0010】また本発明に使用する乳化剤は、(1)粉
末化前の乳化液の長時間の保持において、乳化が破壊し
ないように油粒子を微細にする、(2)高真空下での乾
燥中における乳化液からの水分揮発による乳化の破壊を
防止する、及び(3)乾燥後の組成物を水などに溶解し
た際に、速やかに溶解し、良好な乳化安定性をもたら
す、など極めて重要な役割を有する。なお、従来油脂を
含む組成物を高真空下で乾燥する場合、油脂が組成物の
発泡を抑制し、十分な乾燥物が得られないか、又は油脂
のしみだしが起こるなどの問題があったが、本発明にお
いてはこのような問題が生じることがない。
【0011】さらに、乳化液へのエタノールの添加は、
一般に乳化破壊が生じるとされているが、本発明におい
ては、エタノールを添加しても、乳化剤及びタンパク質
と、乳化機による処理により、乳化破壊が防止され、乳
化安定性の優れた乳化液が得られる。本発明において用
いられる乳化剤としては、例えばレシチン、ショ糖脂肪
酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、プロピレングリコ
ール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどを
挙げることができるが、特にコハク酸モノグリセリド、
クエン酸モノグリセリドなどの有機酸モノグリセリド、
テトラグリセリンペンタオレエート、デカグリセリンデ
カオレエートなどのポリグリセリン脂肪酸エステルが好
適である。
【0012】本発明においては、乾燥前の乳化液の調製
においてホモジナイザーなどを用いて、均一な水中油型
乳化液を作成する。また必要に応じてコロイドミル、ホ
モミキサーなどを用いて均質化を図ることも可能であ
る。さらに、本発明における組成物には必要に応じ、デ
キストリン、乳糖、ショ糖、ブドウ糖などの糖質、微量
栄養成分であるビタミン類、ミネラル類などを配合して
もよいし、さらに酸化防止剤、乳化安定剤、果汁、香料
などを添加することもできる。
【0013】次に、本発明の油脂含有粉末組成物の好適
な製造方法の1例について説明すると、まず油脂に、乳
化剤及び所望に応じて用いられるレシチン、酸化防止
剤、油溶性ビタミン、香料などを添加して加熱溶解させ
油相部を調製する。一方、これとは別に総固形分の0.
1〜5重量倍量の水に、タンパク質及び/又はその分解
物、さらに必要に応じて用いられる乳化剤、糖質、ミネ
ラル、乳化安定剤、水溶性ビタミン、香料、果汁など
を、所定の割合で添加し、40〜80℃程度の温度で撹
拌しながら完全に溶解させ、水相部を調製する。次い
で、この水相部と前記油相部とを撹拌しながら混合して
予備乳化液を作成したのち、乳化機を用いて均質化して
水中油型乳化液を得る。所望により用いられるエタノー
ルは前記水相部及び/又は乳化液に添加することができ
る。次にこの乳化液を高真空下で乾燥させ、乾燥物を得
る。この際用いられる乾燥方法としては真空凍結乾燥法
や、真空乾燥法(ベルト式連続真空乾燥法、ドラム式連
続真空乾燥法など)が挙げられる。特にベルト式連続真
空乾燥法は凍結乾燥法と異なり、連続的に乾燥を行うこ
とができ、また処理時間も短いため、コスト的にもメリ
ットが大きい[「月刊フードケミカル」9月号、第50
〜56ページ(1989年)]。これらの方法によって
得られた乾燥物は、通常ブロック状を呈しており、必要
に応じて粉砕することにより粉末化することが可能であ
る。
【0014】さらに必要ならば油脂含有粉末組成物に、
タンパク質や糖質、ビタミン、ミネラル、粉末果汁、粉
末香料などを粉体混合することも可能である。本発明の
製造方法によって得られた油脂含有粉末組成物を長期間
安定に保存するためには、5〜100gずつ酸素透過性
のほとんどない包装容器に窒素置換、又は脱酸素剤を用
いて密封することが望ましい。本発明の製造方法によっ
て得られた油脂含有粉末組成物は、例えば水やお湯に溶
解させ、飲料として飲んでもよいし、粉末のまま、ある
いはブロック状のまま、直接食べてもよく、また食品素
材として加工食品に利用することもできる。
【0015】
【実施例】次に実施例により本発明をさらに詳細に説明
するが、本発明はこれらの例によってなんら限定される
ものではない。 実施例1 第1表に示す配合割合の材料混合物100重量部に対
し、水40重量部を計量し、50℃に昇温したのち、こ
れに第1表に示す配合割合でカゼインナトリウムとラク
トアルブミンを加え、溶解させ、次いでこの溶解液にテ
トラグリセリンペンタオレエートをあらかじめ溶かして
おいた大豆油を加えた。次にこの混合液を50℃で20
分間予備乳化させたのち、均質機により1段目200k
g/cm、2段目50kg/cmの均質圧で均質処
理して乳化液を得た。この乳化液に乳糖、デキストリン
を加え、溶解させたのち、エタノールを徐々に加えた。
このようにして得た乳化液を真空凍結乾燥機[共和真空
技術(株)製]にて乾燥を行ったのち、この乾燥物を粉
砕後、20メッシュのフルイで分級し、粉末組成物を得
た。
【0016】この粉末組成物の油脂の過酸化物価は0.
12meq/kgと低い値であり、また一般生菌数は2
×10個/gであった。なおこの粉末組成物をアルミ袋
に密封し、これを40℃の恒温槽に保存して保存期間中
の油脂の過酸化物価の変化の測定を行った。40℃で3
0日間保存した粉末組成物の油脂の過酸化物価は6.5
meq/kgであった。
【0017】
【表1】
【0018】比較例1 エタノールを配合しないこと以外は、実施例1と同様に
して粉末組成物を得た。この粉末組成物の一般生菌数は
7×10個/gであり、エタノールを配合した場合に
比べ、かなり高かった。また、前記と同様な保存試験を
行ったところ、40℃で30日間保存した粉末組成物の
油脂の過酸化物価は25.3meq/kgであった。こ
れらの結果から、乳化液の調製にエタノールを配合する
ことにより、一般生菌数が少なく、かつ保存中の油脂の
酸化安定性が向上することが明らかである。これらの粉
末製品を60gずつアルミ箔フイルムの小袋に窒素シー
ルしながら密封した。この小袋の粉末製品10gを10
0mlの温湯に溶解したところ速やかに溶解し、これを
飲用したところ、刺激味や異味はなく、おいしく飲用で
きた。さらにこの粉末製品を果汁や牛乳に溶解させて味
の変化なく飲用できた。またこの粉末製品はヨーグル
ト、プリンなどの原材料として配合して使用することが
でき、これらの食品は異味や刺激味がなくおいしく食べ
ることができた。一方、室温で6か月間保存後の小袋中
の乾燥製品は、製造直後の製品の色、臭い、性状と比べ
て変化はなく、乾燥製品の油分中の過酸化物価(PO
V)は0.12meq/kgと低く、問題はなかった。
またこれをお湯に溶解してもおいしく飲用することがで
きた。
【0019】実施例2 第2表に示す配合割合の材料混合物100重量部に対
し、水70重量部を計量し、55℃に昇温したのち、こ
れを第5表に示す配合割合でラクトアルブミン、魚肉タ
ンパク分解物、脱脂粉乳、リン酸三ナトリウムを加え、
溶解させ、次いでこれにエタノール5重量部を徐々に加
えた。さらにこの溶解液に、あらかじめクエン酸モノグ
リセリドを溶かしておいたエゴマ油を加えた。次にこの
混合液を50℃で20分間予備乳化したのち、均質機に
より1段目200kg/cm、2段目50kg/cm
の均質圧で均質化処理して乳化液を得た。この乳化液
に、砂糖、デキストリン、ミルクフレーバーを加え、溶
解させたのち、エタノール8重量部を徐々に加えた。こ
のようにして得た乳化液をベルト式連続真空乾燥機
[(株)日阪製作所製]にて真空乾燥を行ったのち、こ
のブロック状の乾燥物を粉砕後、20メッシュのフルイ
にて分級し、粉末組成物を得た。
【0020】この粉末組成物の油脂の過酸化物価は0.
11meq/kgと低い値であり、またこの粉末組成物
の一般生菌数は2×10個/gと低かった。この粉末組
成物をアルミ袋に密封し、これを40℃の恒温槽に保存
して保存期間中の油脂の過酸化物価の変化の測定を行っ
たところ、40℃で30日間保存した粉末組成物の油脂
の過酸化物価は3.5meq/gであった。
【0021】
【表2】
【0022】比較例2 エタノールを配合しなかったこと以外は、実施例2と同
様にして粉末組成物を得た。この粉末組成物の一般生菌
数は6×10個/gであり、エタノールを配合した場
合に比べ、かなり高かった。また、前記と同様な保存試
験を行ったところ、40℃で30日間保存した粉末組成
物の油脂の過酸化物価は32.7meq/kgであっ
た。これらの結果から、乳化液の調製にエタノールを配
合することにより、一般生菌数が少なく、かつ保存中の
油脂の酸化安定性が向上することが明らかである。
【0023】実施例3 第1表に示す配合割合の材料混合物100重量部に対
し、水50重量部を計量し、50℃に昇温した後、これ
に第1表に示す配合割合でラクトアルブミンと大豆タン
パク分解物を加え、溶解させた。この溶解液にあらかじ
めコハク酸モノグリセリドを溶かしておいたEPA、D
HA濃縮イワシ油を加えた。次にこの混合液を50℃で
20分間予備乳化したのち、均質機により1段目150
kg/cm、2段目50kg/cmの均質圧で均質
処理して乳化液を得た。この乳化液にデキストリンを加
え、溶解させた後、エタノールを徐々に加えた。このよ
うにして得た乳化液をベルト式連続真空乾燥装置
[(株)日阪製作所製]にて真空乾燥を行った。このよ
うにして得られたブロック状の乾燥物を粉砕後、20メ
ッシュのフルイにて分級し、粉末組成物を得た。この粉
末組成物の油脂の過酸化物価は、0.15meq/kg
と低い値であった。またこの粉末組成物の一般生菌数
は、2×10個/gと低かった。この粉末組成物をアル
ミ袋に密封し、これを40℃の恒温槽に保存して保存期
間中の油脂の過酸化物価の変化の測定を行った。40℃
で30日間保存した粉末組成物の油脂の過酸化物価は
5.2meq/kgであった。
【0024】比較例3 実施例3のエタノールを配合しないこと以外は、実施例
3と同様にして粉末組成物を得た。この粉末組成物の一
般生菌数は10×10個/gであり、実施例1のそれ
に比べ、かなり高かった。また実施例3と同様な保存試
験を行い、40℃で30日間保存した粉末組成物の油脂
の過酸化物価は21.5meq/kgであった。実施例
3および比較例3の結果から、本発明の製造法に係わる
実施例3の粉末組成物は、比較例3に比べ一般生菌数が
少なく、保存中の油脂の酸化安定性に優れていることが
明らかである。
【0025】
【表3】
【0026】
【発明の効果】本発明の製造法によって得られた油脂含
有粉末組成物は次に示す特徴を有している。 (1)乾燥時の油脂からの過酸化物の生成が極度に抑え
られているため、製造直後の油脂の変敗がなく、かつ保
存安定性についても良好である。 (2)噴霧乾燥ほど熱がかからないため、風味成分の揮
散が少なく、フレーバーなどによる風味付けが容易であ
る。 (3)水に対する溶解性が著しく良好であるため、これ
を水に溶かしてあるいは飲料に添加して手軽に飲めるこ
とができる。 (4)乳化液の調製時にエタノールを添加することによ
り、一般生菌数が低く、衛生的に安全なものとして食品
に使用しうる上、長期間保存した場合にも油脂の酸化が
極度に抑えられる。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】固形分中に油脂5〜70重量%とタンパク
    質及び/又はその分解物10〜50重量%とを含有する
    水中油型の均質乳化液を、乳化剤及び乳化機を用いて調
    製したのち、これを高真空下で乾燥させることを特徴と
    する油脂含有粉末組成物の製造方法。
  2. 【請求項2】固形分中に油脂5〜70重量%とタンパク
    質及び/又はその分解物10〜50重量%とを含有し、
    さらに固形分とエタノールとの合計重量に基づきエタノ
    ール2〜15重量%を含有する水中油型の均質乳化液
    を、乳化剤及び乳化機を用いて調製したのち、これを高
    真空下で乾燥させることを特徴とする油脂含有粉末組成
    物の製造方法。
  3. 【請求項3】油脂が高度不飽和脂肪酸含有油である請求
    項1又は2記載の油脂含有粉末組成物の製造方法。
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