本発明の多価不飽和脂肪酸含有油脂組成物は、多価不飽和脂肪酸含有油脂に、塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチド、ならびに乳化剤を含有することを特徴とする。なお、以降において、本発明の多価不飽和脂肪酸含有油脂組成物のことを、単に本発明の油脂組成物と記載することもある。
多価不飽和脂肪酸、なかでもドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)、リノール酸(なかでも共役リノール酸)は優れた生理活性作用を有しながらも、時間の経過と共に酸化されて不快な味や風味、いわゆる戻り臭(オフフレーバー)を生じる。この戻り臭は、その成分や発生機構が複雑であることから、その抑制メカニズムが未だ十分解明されていない。しかしながら、本発明では、驚くべきことに、多価不飽和脂肪酸含有油脂に、塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチドと共に、乳化剤を混ぜ合わせたところ、戻り臭の発生が長期間に亘って抑制されることが判明した。その詳細なメカニズムは定かではないが、前記多価不飽和脂肪酸含有油脂から発生する悪臭成分の末端カルボニル基と塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチドのアミノ基とが反応してイミン化合物が形成され、不揮発化されることに加えて、該不揮発化された化合物を乳化剤により液中に分散させることによって、より揮発が抑えられると推定される。また、乳化剤が油脂に難溶な塩基性アミノ酸や塩基性ペプチドの相溶性を向上させることにより悪臭成分との接触効率を向上させることで、イミン化合物の形成を促進させて、前記効果がより奏されると考えられる。
多価不飽和脂肪酸含有油脂とは、多価不飽和脂肪酸を含む油脂のことであり、多価不飽和脂肪酸を含むのであれば特に限定されない。本発明における多価不飽和脂肪酸とは、炭素数18以上で分子内に二重結合を2個以上有する脂肪酸又はこれを構成成分とする化合物を総称するものであり、その二重結合の位置によりn−3系とn−6系に大別される。n−3系脂肪酸としては、α−リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ドコサペンタエン酸(DPA)が、n−6系の脂肪酸としてはリノール酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸といった脂肪酸が例示される。
これらの脂肪酸はこれらの誘導体の形でも利用できる。例えば、脂肪酸塩やグリセリン、エタノールとのエステル、リン脂質の構成成分であってもよい。なかでも、グリセリンエステルであるトリグリセリドは、簡便に使用できることから好適に使用することができる。
天然由来の植物油、魚油、動植物プランクトンの抽出油又は油脂、ならびに合成により得られる油脂には、多価不飽和脂肪酸がトリグリセリドとして含まれており、そのまま本発明において使用できる。これらは目的に応じて適宜選択すればよいが、生理的効果を期待するならば多価不飽和脂肪酸の含有量が高い方が望ましいことから、合成油脂、ならびに魚油及び植物プランクトンからの抽出油又は油脂が好適に利用できる。
これらの油脂における多価不飽和脂肪酸の含有量としては、生理的効果が高いことが好ましいことから、1重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましく、10重量%以上がさらに好ましく、上限は特に設定されない。ここでいう多価不飽和脂肪酸の含有量とは、複数の多価不飽和脂肪酸を含有する場合は合計含有量を意味する。なお、多価不飽和脂肪酸の含有量が20〜90重量%程度の油脂が市販されており、これらを使用することも可能である。また、天然由来の抽出油脂に他の原料由来の油脂や合成油を加えて多価不飽和脂肪酸含量を調節してもよい。
本発明の油脂組成物における多価不飽和脂肪酸の含有量は、0.1重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましく、5重量%以上がさらに好ましく、上限は特に設定されない。
本発明の油脂組成物における多価不飽和脂肪酸含有油脂の含有量は、0.1重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましく、6重量%以上がさらに好ましく、上限は特に設定されない。
本発明における塩基性アミノ酸としては、等電点が生理的条件よりアルカリ側にあるアミノ酸をいい、例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン、オルニチン、カルニチン、クレアチン、及びこれらの塩等が挙げられる。なかでも、入手性の観点から、リジン、アルギニン、ヒスチジン、及びこれらの塩酸塩からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
本発明における塩基性ペプチドとしては、構成アミノ酸に塩基性アミノ酸を含む等電点が生理的条件よりアルカリ側にあるペプチドをいう。塩基性アミノ酸としては、前記アミノ酸が挙げられ、好ましくは、リジン、アルギニン、及びヒスチジンからなる群より選ばれる1種以上を含む。ペプチドの重合度は通常5〜100であり、好ましくは5〜60個のアミノ酸からなるものが挙げられる。好適な塩基性ペプチドとしては、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリヒスチジン、ヒストン、及びプロタミンが挙げられる。
塩基性ペプチドは、公知の方法に従って合成したものを用いてもよく、市販品を用いることができる。
本発明においては、塩基性アミノ酸を単独で又は2個以上組み合わせて用いてもよく、塩基性ペプチドを単独で又は2個以上組み合わせて用いてもよく、あるいは、塩基性アミノ酸と塩基性ペプチドを組み合わせて用いてもよく、その組み合わせは特に限定されない。
本発明の油脂組成物における塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチドの含有量は、0.001重量%以上が好ましく、0.01重量%以上がより好ましく、0.1重量%以上がさらに好ましく、20重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましく、5重量%以下がさらに好ましい。ここでいう塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチドの含有量とは、複数の塩基性アミノ酸や塩基性ペプチドを含有する場合は合計含有量を意味する。
また、多価不飽和脂肪酸に対する塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチドの重量比〔多価不飽和脂肪酸/(塩基性アミノ酸+塩基性ペプチド)〕は、90/0.01〜5/1が好ましく、30/0.01〜9/1がより好ましい。
本発明における乳化剤としては、公知の乳化剤を用いることができる。例えば、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、モノグリセリド誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、SAIB、レシチン、酵素分解レシチン等のリン脂質、サポニン、キラヤ抽出物、ユッカ抽出物、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン誘導体、グリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、アルキルグリコシドなどのノニオン系乳化剤、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸、N−アシル−L−グルタミン酸、脂肪酸、及びこれらの塩等のアニオン系乳化剤、アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルアンモニウム、及びこれらの塩等のカチオン系界面活性剤、N−アシル−L−アルギニン、ベタイン等の両性乳化剤が挙げられる。なかでも、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及びリン脂質からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、多価不飽和脂肪酸を安定に保つことができることから、グリセリン脂肪酸エステルがより好ましい。
グリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンと脂肪酸とのエステル化により得られるものであり、グリセリンの重合度により、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。
グリセリンとしては、特に限定されず、モノグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等を用いることができる。また、ポリグリセリンとしては、水酸基価が1200以下であり、かつ全ての水酸基のうち1級水酸基が50個数%以上であるポリグリセリンが好ましい。なかでも、多価不飽和脂肪酸含有油脂と塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチドとの相溶性を上げる効果の観点から、1級水酸基が好ましくは55個数%以上、より好ましくは60個数%以上であり、さらに上限値は特に規定するものではないが、その効果を最大限に発揮させるためには90個数%以下、好ましくは80個数%以下、より好ましくは70個数%以下のポリグリセリンが望ましい。また、水酸基価は、用途に応じてポリグリセリン脂肪酸エステルの親水性(HLB)を調整できる観点から、1100以下が好ましく、1000以下がより好ましい。また、作業性及び脂肪酸とのエステル化の容易性の観点から、水酸基価は770以上が好ましい。
全ての水酸基のうちの1級水酸基の割合は、炭素原子に対する核磁気共鳴スペクトル(NMR)を測定する方法を用いて測定される。また、水酸基価は当該分野で公知の方法により測定することができる。
なお、炭素原子に対する核磁気共鳴スペクトル(NMR)は、以下のようにして測定することができる。ポリグリセリン500mgを重水2.8mLに溶解し、ろ過後ゲートつきデカップリングにより13C−NMR(125MHz)スペクトルを得る。ゲートデカップルド測定手法によりピーク強度は炭素数に比例する。1級水酸基と2級水酸基の存在を示す13C化学シフトはそれぞれメチレン炭素(CH2OH)が63ppm付近、メチン炭素(CHOH)が71ppm付近であり、2種それぞれのシグナル強度の分析により、1級水酸基と2級水酸基の存在比を算出する。但し、2級水酸基を示すメチン炭素(CHOH)は、1級水酸基を示すメチレン炭素に結合するメチン炭素にさらに隣接するメチレン炭素ピークと重なり、それ自体の積分値を得られないため、メチン炭素(CHOH)と隣り合うメチレン炭素(CH2)の74ppm付近のシグナル強度により積分値を算出する。
本発明の油脂組成物に使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルのポリグリセリン調製方法は限定するものではない。例えば、公知の合成法又は市販のポリグリセリンから分画精製により得ることができる。
グリセリン脂肪酸エステルのもう一つの構成成分である構成脂肪酸としては、多価不飽和脂肪酸と塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチドとの界面改質の観点から、炭素数が好ましくは10以上、より好ましくは12以上、さらに好ましくは14以上の、飽和又は不飽和脂肪酸が好ましい。具体的には、飽和脂肪酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、及びこれらの異性体等が挙げられる。不飽和脂肪酸としては、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、リノレン酸、リシノレイン酸、アラキドン酸、エルカ酸、及びこれらの異性体、縮合物、該縮合物の異性体等が挙げられる。これらのなかでも、好ましくは、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノレイン酸、及びこれらの異性体、縮合物、該縮合物の異性体が挙げられる。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、他の脂肪酸を含んでいてもよい。例えば、カプロン酸、カプリル酸の他、12−ヒドロキシステアリン酸、9−ヒドロキシステアリン酸、10−ヒドロキシステアリン酸、水素添加ヒマシ油脂肪酸(12−ヒドロキシステアリン酸の他に少量のステアリン酸及びパルミチン酸を含有する脂肪酸)等が挙げられる。
グリセリンと脂肪酸とのエステル化反応は、一般的な合成法であれば特に限定されない。例えば、特開2011−168716号公報に記載の方法に従って行うことができる。なお、得られたグリセリン脂肪酸エステルは使用される製品の使用上の要求によって公知の方法に従ってさらに精製することができる。
グリセリン脂肪酸エステルの乳化剤における含有量としては、多価不飽和脂肪酸と塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチドとの反応物を安定に保つことが好ましいことから、0.01重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましく、上限は特に設定されない。ここでいうグリセリン脂肪酸エステルの含有量とは、乳化剤が複数のグリセリン脂肪酸エステルを含有する場合は合計含有量を意味する。
また、本発明の油脂組成物で用いられる乳化剤のうち1種以上は、塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチドと多価不飽和脂肪酸含有油脂との相溶性を向上させ、より高い効果が得られる観点から、HLB値が好ましくは10未満、より好ましくは9〜1であることが好ましい。前記HLB値を有する乳化剤の含有量は特に限定されないが、全乳化剤中、1重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましく、前記HLB値を有する乳化剤のみで構成されていてもよい。なお、本明細書において、HLB値は既知の親油性界面活性剤と油脂を用いて実測できるほか、エステルのケン化価と使用された脂肪酸の中和価から次式により算出できる。
HLB=20×(1−S/A)(S:ケン化価、A:脂肪酸の中和価)
また、本発明の油脂組成物におけるHLB値が10未満の乳化剤の含有量は、0.001重量%以上が好ましく、0.01重量%以上がより好ましく、0.1重量%以上がさらに好ましく、60重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、20重量%以下がさらに好ましい。ここでいうHLB値が10未満の乳化剤の含有量とは、複数の乳化剤を含有する場合はHLB値が10未満の乳化剤の合計含有量を意味する。
本発明の油脂組成物における乳化剤の含有量は、0.001重量%以上が好ましく、0.01重量%以上がより好ましく、0.1重量%以上がさらに好ましく、80重量%以下が好ましく、70重量%以下がより好ましく、60重量%以下がさらに好ましい。ここでいう乳化剤の含有量とは、複数の乳化剤を含有する場合は合計含有量を意味する。
また、多価不飽和脂肪酸と乳化剤の重量比〔多価不飽和脂肪酸/乳化剤〕は、100/0.01〜0.05/1が好ましく、100/1〜0.1/1がより好ましい。ここでいう乳化剤の含有量とは、複数の乳化剤を含有する場合は合計含有量を意味する。
また、多価不飽和脂肪酸とHLB値が10未満の乳化剤の重量比〔多価不飽和脂肪酸/乳化剤〕は、100/0.01〜0.05/1が好ましく、100/1〜0.2/1がより好ましい。ここでいうHLB値が10未満の乳化剤の含有量とは、複数の乳化剤を含有する場合はHLB値が10未満の乳化剤の合計含有量を意味する。
また、本発明の油脂組成物は、多価不飽和脂肪酸を安定に保つ観点から、抗酸化剤及び/又は酸化防止剤をさらに含有することができる。
抗酸化剤及び/又は酸化防止剤としては、特に限定はなく、公知のものが用いられる。例えば、トコフェロール類;ポリフェノール類;ジブチルヒドロキシトルエン(BHT);ブチルヒドロキシアニソール(BHA);グルコン酸、コウジ酸、フィチン酸、ポリリン酸、フェルラ酸、エラグ酸、クエン酸、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、エリソルビン酸、没食子酸、クロロゲン酸、キナ酸、核酸又はこれらの塩もしくは脂肪酸エステル;カテキン類;ブドウ種子抽出物、ローズマリー抽出物、ヒマワリ抽出物、ヤマモモ抽出物、アムラ抽出物、食用カンナ抽出物、ブルーベリー葉抽出物、セリ抽出物、ヘゴ・イチョウ抽出物、ホウセンカ抽出物、キュウリ抽出物、パセリ抽出物、ザクロ抽出物、酵素処理ルチン、ケルセチン、レスベラトロール、ユビキノン、α−リポ酸、アントシアン;茶抽出物等のポリフェノール類含有天然抽出物;アスタキサンチン、リコピン、ルテイン等のカロテノイド類;カンゾウ抽出物、ナタネ抽出物、ゴマ油不けん化物、γ−オリザノール、ドクダミ抽出物、アオイ花抽出物、ピメンタ抽出物、ヘスペリジン、ヘスペレチン、セサモリン、セサモール、キチン、キトサン等が挙げられる。これらのなかでも、トコフェロール、カテキン類、及びアスコルビン酸からなる群より選ばれる1つ以上を用いることができる。
本発明の油脂組成物における抗酸化剤及び/又は酸化防止剤の含有量は、0.001重量%以上が好ましく、0.01重量%以上がより好ましく、0.1重量%以上がさらに好ましく、10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましく、2重量%以下がさらに好ましい。ここでいう抗酸化剤及び/又は酸化防止剤の含有量とは、複数の抗酸化剤及び/又は酸化防止剤を含有する場合は合計含有量を意味する。
本発明の油脂組成物は、前記以外の他の成分として、本発明の目的を損なわない範囲で、他の有用成分を併用して組成物の安定性や付加価値を向上させることも可能である。そのような成分を例示するならば、炭素数が18以上で二重結合を2個以上有する多価不飽和脂肪酸を含まない油脂、カンゾウ抽出物、サッカリンナトリウム、アスパルテーム等の甘味料、アラビアガム、ペクチン、カラギーナン、ファーセレラン、グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アルギン酸、メチルセルロース、オリゴ糖、デキストリン、サイクロデキストリン、水溶性食物繊維、非水溶性食物繊維等の多糖類、クチナシ色素、トマト色素、ヘマトコッカス藻色素、マリーゴールド色素、カロテノイド色素、黄色4号等の着色料、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ヒノキチオール等の保存料、クエン酸、フィチン酸等の酸味料、イノシン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム等の調味料、柑橘系フレーバー、ミルクフレーバー、ヨーグルトフレーバー、マスキングフレーバー等の香料、緩衝剤、pH調整剤、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ剤、消泡剤、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンC、ビタミンB群、パントテン酸等のビタミン類、L−グリシン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−テアニン、L−グルタミン酸塩等のアミノ酸類、カルシウム、鉄、亜鉛、銅、マグネシウム等のミネラル類又はその塩、セサミン、イソフラボン、ラクトフェリン、ラクチュロース、乳酸菌、フィトステロール、コラーゲン、エラスチン、セラミド、コンドロイチン硫酸、N−アセチルグルコサミン、ヒアルロン酸、プラセンタ、スクワレン、クルクミン、硫化アリル、アリイン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、クマリン、ローヤルゼリー、プロポリス、アガリクス茸末、霊芝末、スピルリナ末、クロレラ末、冬虫夏草抽出物、桑の葉抽出物、高麗人参抽出物、田七人参抽出物、グリチルリチン酸等の機能性素材、ガランタミン、リバスチグミンドネペジル等のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤、メバスタチン、フェノフィブラート、コレスチミド等の高脂血症改善剤、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、フマル酸ケトチフェン、塩酸セチリジン等の抗ヒスタミン剤、乳清タンパク、ホエイペプチド、卵ペプチド、大豆ペプチド、酵素等のタンパク質等が挙げられる。これらの含有量は、特に限定されず公知技術に従って適宜設定することができる。
本発明の油脂組成物は、多価不飽和脂肪酸含有油脂、塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチド、ならびに乳化剤を含有するのであれば、その調製方法は特に限定されない。例えば、撹拌機、乳化装置等を用いて前記原料を混合して調製することができる。例えばプロペラ型、アンカー型、パドル型、ディスクタービン型等の撹拌翼を具える撹拌機、ローター・ステーター型乳化機、ミル型乳化機、高圧ノズル型乳化機、高圧衝突型乳化機、超音波乳化機、膜乳化機、マイクロチャンネル乳化機、スタティックミキサー、粉末溶解機といったものが例示できる。これらは単独で使用できるほか、2種以上を組み合わせて使用してもよいが、なかでも、パドル翼撹拌機、ローター・ステーター型乳化機、高圧ノズル型乳化機、高圧衝突型乳化機は、汎用性が高い点から好適に使用することができる。
本発明の油脂組成物は、多価不飽和脂肪酸からの不快な味や風味の発生を長期に亘って抑制することができることから、不快な味や風味を呈することなく多価不飽和脂肪酸による生理活性作用を発現するために、例えば、飲食品、医薬組成物、化粧料又はこれらの原料として好適に用いられる。
これらの形態としては、油脂組成物を体内に摂取、又は皮膚等に外用することができる形態であれば特に限定はなく、本発明の油脂組成物そのままの状態で、あるいは、本発明の油脂組成物を乳化した物や粉末化した物、該乳化物をさらに粉末化させた物として摂取することができる。よって、本発明はまた、本発明の油脂組成物の態様の一つとして、本発明の油脂組成物を乳化した乳化組成物、及び本発明の油脂組成物又は前記乳化組成物を粉末化させた粉末組成物を提供する。なお、本発明における乳化組成物は、水中油型組成物である。
本発明の乳化組成物としては、本発明の油脂組成物を乳化したものであれば特に限定はない。よって、本発明の乳化組成物は、多価不飽和脂肪酸含有油脂、塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチド、ならびに乳化剤に加えて、例えば、水、アルコール等を含有することができる。なお、多価不飽和脂肪酸含有油脂、塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチド、ならびに乳化剤については、前記した本発明の油脂組成物と同様にして用いることができる。また、水、アルコール等の含有量は、特に限定されず公知技術に従って適宜設定することができる。
アルコールとしては1価のアルコール、多価アルコールが挙げられる。1価のアルコールとしては、1価の低級アルコール、1価の高級アルコールが含まれ、1価の低級アルコールとしては、具体的には、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノールが、1価の高級アルコールとしては、具体的には、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコールが例示される。多価アルコールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビタン、キシロース、アラビノース、マンノース、乳糖、砂糖、カップリングシュガー、ブドウ糖、酵素水飴、酸糖化水飴、麦芽糖水飴、麦芽糖、異性化糖、果糖、還元麦芽糖水飴、還元澱粉糖化物、蜂蜜、果糖ブドウ糖液糖、及びこれらの水溶液が例示できる。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いることができ、なかでも製剤の調製のしやすさ、安定性から、多価アルコールが好ましく、プロピレングリコール、グリセリン、還元澱粉糖化物がより好ましい。なお、本明細書において多価アルコールとは、1分子中に水酸基を2個以上有する化合物を意味する。
本発明の乳化組成物は、公知の方法に従って調製することができる。具体的には、例えば、アルコール及び/又は水と乳化剤を混合したところに、別途乳化剤に混合させた多価不飽和脂肪酸含有油脂、次いで塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチドをそのまま、あるいは水に添加したものを、ならびに必要により他の添加剤を順次混合して調製することが出来る。なお、塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチドは多価不飽和脂肪酸含有油脂に分散させてもよい。また、これらの添加順序は特に制限されない。なお、前記原料の混合は、前記油脂組成物の調製時に用いることが可能な撹拌機、乳化装置を好適に用いることができる。
本発明の粉末組成物としては、本発明の油脂組成物をそのまま粉末化、あるいは、前記した本発明の乳化組成物を粉末化したものであれば特に限定はない。よって、本発明の粉末組成物は、多価不飽和脂肪酸含有油脂、塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチド、ならびに乳化剤に加えて、粉末化に必要な当該分野で公知の物質、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、矯味剤、防腐剤、キレート剤、抗酸化剤、清涼化剤、コーティング剤、安定化剤、流動化剤、粘稠剤、溶解補助剤、増粘剤、緩衝剤、香料、着色剤、吸着剤、湿潤剤、防湿剤、帯電防止剤、可塑剤、消泡剤、発泡剤、界面活性剤、乳化剤等の添加剤をさらに含有することができる。なお、多価不飽和脂肪酸含有油脂、塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチド、ならびに乳化剤については、前記した本発明の油脂組成物と同様にして用いることができる。また、粉末化に必要な物質の含有量は、特に限定されず公知技術に従って適宜設定することができる。
本発明の粉末組成物は、公知の方法に従って調製することができる。具体的には、例えば、乳化剤に多価不飽和脂肪酸含有油脂、次いで塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチド、ならびに必要により他の添加剤を順次混合した後、さらに乳化させる場合は乳化した後、賦形剤等の添加剤を混合し、スプレードライや凍結乾燥に供する等して調製することが出来る。なお、多価不飽和脂肪酸含有油脂は予め乳化剤により乳化させたものを用いてもよい。
本発明の油脂組成物の具体的な形態としては、例えば、油脂組成物や乳化組成物の場合は、ドライシロップ剤、液剤〔懸濁剤、乳剤、シロップ剤、リモナーデ剤等を含む〕等が挙げられる。また、粉末組成物としては、散剤、粉末剤、細粒剤、顆粒剤等が例示される。これらのなかでも、液剤、粉末剤が好ましい。
また、本発明の油脂組成物は、その形態に応じて特に限定なく利用することができる。例えば、血中中性脂質の低下作用、血圧コントロール作用、免疫機能活性化、アレルギー症状の改善、認知症の予防、抗炎症作用、学習機能向上、体脂肪低減作用、抗疲労作用、筋力増強作用、動脈硬化抑制といった生理活性作用の発現や向上のために用いることができる。
本発明の油脂組成物の摂取量は、その形態、摂取方法、摂取目的及び該組成物の摂取対象者の年齢、体重、症状によって適宜設定され一定ではないが、例えば、多価不飽和脂肪酸のDHA及びEPAの合計量が1g以上/日となる量、あるいは共役リノール酸では1〜4g/日となる量が好ましい摂取量として挙げられる。また、所望の摂取量範囲内において、1日内において単回で又は複数回で摂取してもよく、摂取時間も期間も任意である。
本発明の油脂組成物の摂取対象者としては、好ましくは血中中性脂質の低下作用、血圧コントロール作用、免疫機能活性化、アレルギー症状の改善、認知症の予防、抗炎症作用、学習機能向上、体脂肪低減作用、抗疲労作用、筋力増強作用、動脈硬化抑制といった生理活性作用の向上を必要とするヒトを挙げることができる。また、本発明の油脂組成物は、安全な組成物であるため、他の疾患を併発している患者や一般的な健常人も摂取対象者とすることができ、更にペット等の動物等であってもよい。
本発明の油脂組成物として、例えば、油脂を50重量%以上含有する油脂組成物である態様の組成割合の一例を示す。炭素数が18以上で二重結合を2個以上有する多価不飽和脂肪酸を含む油脂50〜99.998重量%、塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチド0.001〜10重量%、乳化剤0.001〜60重量%を含むことが好ましく、炭素数が18以上で二重結合を2個以上有する多価不飽和脂肪酸を含む油脂50〜99.98重量%、塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチド0.01〜5重量%、乳化剤0.01〜50重量%を含むことがより好ましい。また、上記成分の合計量が100重量%に満たない場合の残りの成分は、その他の成分を公知技術に従って適宜設定することができる。
また、本発明の油脂組成物として、乳化組成物である態様の組成割合の一例を示す。炭素数が18以上で二重結合を2個以上有する多価不飽和脂肪酸を含む油脂1〜60重量%、塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチド0.001〜10重量%、乳化剤0.001〜40重量%、を含むことが好ましく、炭素数が18以上で二重結合を2個以上有する多価不飽和脂肪酸を含む油脂5〜50重量%、塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチド0.01〜5重量%、乳化剤0.01〜30重量%、重量%を含むことがより好ましく、炭素数が18以上で二重結合を2個以上有する多価不飽和脂肪酸を含む油脂10〜40重量%、塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチド0.1〜3重量%、乳化剤0.1〜20重量%、重量%を含むことがさらに好ましい。また、上記成分の合計量が100重量%に満たない場合の残りの成分は、水及び/又はアルコール、あるいはその他の成分を公知技術に従って適宜設定することができる。
また、本発明の油脂組成物として、粉末組成物である態様の組成割合の一例を示す。炭素数が18以上で二重結合を2個以上有する多価不飽和脂肪酸を含む油脂1〜80重量%、塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチド0.001〜20重量%、乳化剤0.001〜50重量%を含むことが好ましく、炭素数が18以上で二重結合を2個以上有する多価不飽和脂肪酸を含む油脂5〜60重量%、塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチド0.01〜10重量%、乳化剤0.01〜40重量%を含むことがより好ましく、炭素数が18以上で二重結合を2個以上有する多価不飽和脂肪酸を含む油脂10〜40重量%、塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチド0.1〜5重量%、乳化剤0.1〜30重量%を含むことがさらに好ましい。また、上記成分の合計量が100重量%に満たない場合の残りの成分は、賦形剤等その他の成分を公知技術に従って適宜設定することができる。
本発明はまた、本発明の油脂組成物を含むことを特徴とする組成物を提供する。即ち、該組成物は、本発明の油脂組成物、本発明の乳化組成物、及び/又は本発明の粉末組成物を含むことを特徴とするものであり、かかる特徴を有することにより、例えば、飲食品、医薬組成物、又は化粧料として好適に使用され得る。
飲食品としては、本発明の油脂組成物をいずれの形態のものであっても含有すればよく、例えば、血中中性脂質の低下作用、血圧コントロール作用、免疫機能活性化、アレルギー症状の改善、認知症の予防、抗炎症作用、学習機能向上、体脂肪低減作用、抗疲労作用、筋力増強作用、動脈硬化抑制といった生理活性作用の発現や向上のための飲食品が挙げられる。具体的には、特定保健用食品、栄養機能食品、老人用食品、特別用途食品、機能性食品、健康補助食品(サプリメント)として、例えば、前記作用の発現や向上あるいは維持のために用いられるものである旨の表示を付して提供することが可能になると考えられる。
かかる飲食品としては、例えば、即席麺、カップ麺、レトルト・調理食品、調理缶詰、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰、フリーズドライ食品等の即席食品、炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、清涼飲料水(果汁入りも含む)、果肉飲料、果粒入り果実食品、野菜系飲料、豆乳・豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、ゼリー飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料等の嗜好飲料類、パン、マカロニ・スパゲッティ、麺類、ケーキミックス、から揚げ粉・パン粉、ギョーザ・春巻の皮等の小麦粉食品、キャラメル・キャンディー、チューイングガム、チョコレート、クッキー・ビスケット、ケーキ・パイ、スナック・クラッカー、和菓子・米菓子・豆菓子・焼菓子、ゼリー、プリン、ババロア、デザート菓子等の菓子類、しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類、甘味料、魚醤、ニョクマム等の基礎調味料、風味調味料、調理ミックス、カレーの素、たれ類、ドレッシング、麺つゆ、スパイス等の複合調味料、バター、マーガリン、マヨネーズ等の油脂食品、牛乳・加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、発酵乳飲料、乳酸菌飲料、チーズ、アイスクリーム、調製粉乳、乳児用調製粉乳、クリーム等の乳・乳製品、液卵、粉末卵、錦糸玉子等の卵加工食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等の冷凍食品、水産缶詰・ペースト類、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、水産乾物類、佃煮等の水産加工品、畜産缶詰・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ、畜産珍味類等の畜産加工品、農産缶詰、果実缶詰、フルーツソース、フルーツプレパレーション、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆、農産乾物類、シリアル等の農産加工品、流動食、ベビーフード、離乳食、ふりかけ、お茶漬けのり、バー食品等の栄養食品、サプリメント、丸剤、ハードカプセル剤、ソフトカプセル剤、錠剤〔素錠、糖衣錠、口腔内速崩壊錠、咀嚼可能錠(チュアブル錠)、発泡錠、トローチ剤、フィルムコーティング錠等を含む〕等を例示できる。なお、これらは、既成の食品に対して本発明の油脂組成物、乳化組成物、及び/又は粉末組成物を調製時又は調製後に添加させたものであればよく、添加時期や添加方法については特に限定されるものではない。
医薬組成物としては、医薬品、医薬部外品等として幅広く利用することができる。例えば、血中中性脂質の低下作用、血圧コントロール作用、免疫機能活性化、アレルギー症状の改善、認知症の予防、抗炎症作用、学習機能向上、体脂肪低減作用、抗疲労作用、筋力増強作用、動脈硬化抑制といった生理活性作用の発現や向上が望まれている任意の疾患の治療や予防のために用いることができる。具体的には、高脂血症、アレルギー症状、動脈硬化等の治療や予防の用途に好適に用いることができる。なお、本発明の医薬組成物は、本発明の油脂組成物と同じ作用を有する他の成分等を共に配合して調製することもできる。
医薬組成物の製剤形態としては、本発明の油脂組成物をいずれの形態のものであっても含有するのであれば特に制限されず、具体的には、散剤、粉末剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤、錠剤〔素錠、糖衣錠、口腔内速崩壊錠、咀嚼可能錠(チュアブル錠)、発泡錠、トローチ剤、フィルムコーティング錠等を含む〕、ドライシロップ剤、フィルム剤、液剤〔懸濁剤、乳剤、シロップ剤、リモナーデ剤等を含む〕、ゼリー剤が例示され、製菓剤〔キャンディー(飴)、グミ剤、ヌガー剤等〕も包含される。なお、カプセル剤としては、ハードカプセル剤の他に、本発明の油脂組成物や乳化組成物をそのまま充填したソフトカプセル剤も含まれる。
化粧料としては、例えば、免疫機能活性化、アレルギー症状の改善、血行促進作用、抗炎症作用、抗シワ作用といった生理活性作用の発現や向上のための化粧料が挙げられる。具体的には、炎症やシワ等の改善や予防の用途に好適に用いることができる。
化粧料としては、本発明の油脂組成物をいずれの形態のものであっても含有すればよく、免疫機能活性化、アレルギー症状の改善、血行促進作用、抗炎症作用、抗シワ作用といった生理活性作用の発現や向上を目的とした化粧水、乳液、クリーム等が挙げられる。また、剤型は特に限定されるものではなく、溶液、乳液、クリーム剤、ジェル剤、軟膏剤、液剤、パウダー剤、ペースト剤、パップ剤、プラスター剤、エアゾール剤等、外用適用可能な様々な剤型とすることができる。
本発明の飲食品、本発明の医薬組成物、及び本発明の化粧料は、前記の本発明の油脂組成物の他に製剤分野や食品分野等において通常使用される担体、基剤、及び/又は添加剤等を本発明の目的を達成する範囲内で適宜配合して調製することができる。例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の乳化剤、トコフェロール類、カテキン類、アスコルビン酸類などの酸化防止剤、リジン、アルギニン、トレオニン、トリプトファン、テアニン、グルタミン酸塩等のアミノ酸類等が挙げられる。なお、これらの飲食品、医薬組成物、及び化粧料における本発明の油脂組成物の含有量は、前記した本発明の油脂組成物の好適な摂取量、例えば、多価不飽和脂肪酸のDHA及びEPAの合計量が1g以上/日となる量、あるいは共役リノール酸では1〜4g/日となる量において、常法に従って適宜設定することができる。また、本発明の飲食品、本発明の医薬組成物、及び本発明の化粧料は所望の摂取量範囲内において、1日内において単回で又は複数回で摂取してもよく、摂取時間も期間も任意である。例えば、化粧料、コーヒー飲料、野菜系飲料、果汁飲料、栄養飲料、清涼飲料水等の飲料、牛乳・加工乳、乳飲料、発酵乳飲料、ヨーグルト類、プリン・ゼリー類、チーズ、クリーム、アイスクリーム等の乳製品、フルーツプレパレーション、玉子顆粒、ふりかけ等には、多価不飽和脂肪酸の含有量が0.1〜4000mg/100gとなるように配合することができる。また、パン、焼菓子、チョコレート、キャラメル・キャンディー、バー食品等のバランス栄養食品、スナック・クラッカー等の菓子、即席スープ、ドレッシング、錠剤、カプセル剤、乳児用調製粉乳等には0.1〜4000mg/1食となるように配合することができる。
本発明の油脂組成物は、多価不飽和脂肪酸を含有しながらも、不快な味や風味の発生が抑制されるという効果を奏するものである。よって、本発明はまた、炭素数が18以上で二重結合を2個以上有する多価不飽和脂肪酸を含む油脂に、塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチドと共に、乳化剤を含有させることを特徴とする、多価不飽和脂肪酸含有油脂の戻り臭を低減させる方法を提供する。
多価不飽和脂肪酸含有油脂の戻り臭を低減させる方法としては、具体的には、多価不飽和脂肪酸含有油脂に、塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチドと共に、乳化剤を含有させるのであれば特に限定はない。
なお、前記多価不飽和脂肪酸含有油脂の戻り臭を低減させる方法において、塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチドと乳化剤の配合は同時であっても、別々であってもよく、その順序も特に限定されない。また、これらの方法において、使用する塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチドならびに乳化剤の種類、これらの含有量、含有割合、その他に添加配合される成分の種類、調製方法、用途、製剤形態、摂取対象等については、前記本発明の多価不飽和脂肪酸含有油脂組成物と同様である。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
試験例1
表1に示す塩基性アミノ酸又は塩基性ペプチドの魚油の脱臭及び戻り臭抑制効果を確認した。
具体的には、魚油(マルハニチロ社製、DHA含量22重量%、EPA含量5重量%)94.9gに、乳化剤:ジグリセリンモノオレイン酸エステル(太陽化学社製、サンソフトQ−17D HLB=7.0)5gを添加して40℃においてホモミキサーで十分に撹拌後、ホモミキサーで3000rpmで撹拌しながら、表1に示す種類のアミノ酸又はペプチド0.1gを徐々に添加した。その後、10分間よく撹拌し、DHA・EPA含有精製魚油製剤を得た。なお、多価不飽和脂肪酸に対するアミノ酸及び/又はペプチドの重量比〔多価不飽和脂肪酸/(塩基性アミノ酸+塩基性ペプチド)〕は256/1、多価不飽和脂肪酸に対する乳化剤の重量比〔多価不飽和脂肪酸/乳化剤〕は5.1/1であった。
得られた製剤を三等分して密栓し、25℃で10分間静置したサンプルを初期魚臭評価サンプル、55℃で24時間静置したサンプルを戻り臭評価サンプルA、37℃で3ヶ月間静置したサンプルを戻り臭評価サンプルBとした。
それぞれの保存後サンプルの魚臭について官能評価を行った。具体的には、得られたサンプルを開栓し、そのまま臭気を確認して、魚臭がしない場合を0、強く感じられる場合を10として、パネラーが感じた官能の程度をスコアとして、パネラー10人のスコア平均値を算出した。その際、参考例1の初期魚臭のスコア平均値が5.0となるように標準化を行い、サンプル間の比較を行った。また、初期魚臭サンプルについてはその外観も評価した。結果を表1に示す。
表1より、塩基性アミノ酸と塩基性ペプチドの評価が良好であり、次いで、中性アミノ酸、酸性アミノ酸の順であることが分かる。これより、塩基性アミノ酸と塩基性ペプチドが、初期魚臭及び戻り臭を効果的に抑制すること、ならびに、長期にわたりその効果が持続することが明らかとなった。一方、アミノ酸を添加しない比較例1では、初期魚臭、戻り臭低減の効果は認められなかった。また、乳化剤を添加しない比較例8〜11では、魚臭は若干抑えられるものの実施例と比べてその効果は低く、また、その効果は持続せず、ごく短時間でアミノ酸が沈殿して分離してしまい製品として成立しないことが分かった。
試験例2
表2に示す塩基性アミノ酸又は塩基性ペプチドの魚油の脱臭及び戻り臭抑制効果を確認した。
具体的には、グリセリン400gに乳化剤:デカグリセリンモノステアリン酸エステル(太陽化学社製、サンソフトQ−18Y HLB=17.5)60gを添加して70℃においてホモミキサーで十分に撹拌後、品温を50℃まで冷却した。ここへホモミキサーで3000rpmで撹拌しながら、別途乳化剤:デカグリセリンテトラオレイン酸エステル(太陽化学社製、サンソフトQ−175S HLB=4.5)5gを溶解させて澄明にした精製魚油(日油社製、DHA含量24重量%、EPA含量4重量%)300gを徐々に添加した。次いでホモミキサーで3000rpmで撹拌しながら、表2に示す種類のアミノ酸又はペプチド5gを添加した水230gを徐々に投入後(一部は完全に溶解せず分散状態)、ホモミキサー8000rpmで10分間撹拌し、DHA・EPA含有精製魚油乳化製剤を得た。また、酸化防止剤を配合する製剤は、乳化剤:デカグリセリンテトラオレイン酸エステルと共にトコフェロール(タマ生化学社製、イーミックス−D)1gを溶解して精製魚油に添加し、かつ、茶抽出物(太陽化学社製、サンフェノンEGCg)5g及びアスコルビン酸(田辺製薬社製、L−アスコルビン酸)1gをアミノ酸又はペプチドを添加する水溶液に添加した以外は、前記と同様にして調製した。なお、乳化剤、アミノ酸、ペプチド、又は抗酸化剤を含まない製剤については、配合しないことによる減量分は水を増量することで合計量を合わせた。なお、多価不飽和脂肪酸に対するアミノ酸及び/又はペプチドの重量比〔多価不飽和脂肪酸/(塩基性アミノ酸+塩基性ペプチド)〕は16.8/1、多価不飽和脂肪酸に対する乳化剤の重量比〔多価不飽和脂肪酸/乳化剤〕は1.3/1、多価不飽和脂肪酸に対するHLB値が10未満の乳化剤の重量比〔多価不飽和脂肪酸/乳化剤〕は16.8/1であった。
得られた乳化製剤を試験例1と同様に三等分にしてサンプルを保存し、官能評価を行った。具体的には、得られたサンプルの1重量%水溶液をそのまま服用して、魚臭がしない場合を0、強く感じられる場合を10として、パネラーが感じた官能の程度をスコアとして、パネラー10人のスコア平均値を算出した。また、初期魚臭サンプルについてはその外観も評価した。なお、スコアの標準化として、参考例2の初期魚臭のスコア平均値が5.0となるように標準化を行い、サンプル間の比較を行った。結果を表2に示す。
表2より、試験例1と同様に、塩基性アミノ酸と塩基性ペプチドの評価が良好であり、次いで、中性アミノ酸、酸性アミノ酸の順であることが分かる。これより、乳化製剤においても、塩基性アミノ酸と塩基性ペプチドが、初期魚臭及び戻り臭をより顕著に抑制すること、ならびに、長期にわたりその効果が持続することが明らかとなった。一方、アミノ酸を添加しない比較例12では、初期魚臭、戻り臭低減の効果は認められず、乳化剤を添加しない比較例19〜22では、魚臭は若干抑えられるものの実施例と比べてその効果は低く、また、その効果は持続せず、ごく短時間で分離してしまい製品として成立しないことが分かった。また、酸化防止剤を添加した系については、塩基性アミノ酸を添加しない比較例23も戻り臭抑制に効果は確認できるが不充分であり、一方、酸化防止剤と塩基性アミンを添加した実施例11は、初期魚臭、戻り臭低減に共に効果があることが分かる。なお、結果一覧で「白濁分散」したものは、静置終了後も良好に分散していた。
試験例3
試験例2で調製した乳化製剤を用いて調製した飲料の戻り臭抑制効果を確認した。
具体的には、水198gに試験例2で作製した乳化製剤2gを添加し、均一に撹拌した。その後、充分に撹拌されたことを確認し、二等分してサイダー瓶に充填し王冠にて封緘し、121℃1分間のレトルト殺菌に供し、飲料サンプルを調製した。
得られた飲料サンプルは、55℃で1ヶ月間静置したものをサンプルA、37℃で4ヶ月間静置したものをサンプルBとした。それぞれの保存後サンプルの風味について官能評価を行った。具体的には、服用して魚臭がしない場合を0、強く感じられる場合を10として、パネラーが感じた官能の程度をスコアとして、パネラー10人のスコア平均値を算出した。なお、スコアの標準化として、比較例24の戻り臭A、Bそれぞれのスコア平均値を10となるように標準化を行い、サンプル間の比較を行った。結果を表3に示す。
表3より、試験例1と同様に、塩基性アミノ酸と塩基性ペプチドの評価が良好であり、次いで、中性アミノ酸、酸性アミノ酸の順であることが分かる。これより、乳化製剤を添加した飲料においても、塩基性アミノ酸と塩基性ペプチドが、魚油の戻り臭を長期にわたり効果的に抑制することが明らかとなり、常温保存流通の飲料にDHA・EPA含有精製油脂を配合できる可能性が示唆された。一方、アミノ酸を添加しない比較例24では、戻り臭低減の効果はなかった。また、酸化防止剤を添加した系については、塩基性アミノ酸を添加しない比較例31も比較例24に比べて戻り臭抑制に効果は確認できるが不充分であり、一方、酸化防止剤と塩基性アミノ酸を添加した実施例17は、戻り臭低減に効果があることが分かる。なお、乳化剤を添加しない系(試験例2における比較例19〜22)は、飲料サンプルの作製ができなかったため、試験を行わなかった。
試験例4
魚油含有粉末製剤を調製し、魚油の脱臭及び戻り臭抑制効果を確認した。
具体的には、水680gに乳化剤:ペンタグリセリンモノミリスチン酸エステル(太陽化学社製、サンソフトA−141E HLB=12.2)60gを添加し、70℃においてホモミキサーで十分に撹拌後、品温を50℃まで冷却した。別途乳化剤:グリセリンモノステアリン酸エステル(太陽化学社製、サンソフトNo.8000V HLB=4.1)5gを透明に溶解させた精製魚油(日油社製、DHA含量24重量%、EPA含量4重量%)250gに、表4に示す種類のアミノ酸又はペプチドを5g分散させたものを、上記水相にホモミキサーで3000rpmで撹拌しつつ徐々に添加した。その後、ホモミキサーで8000rpm、10分間撹拌し、乳化製剤サンプルを得た。なお、乳化剤、アミノ酸、又はペプチドを含まない製剤については、配合しないことによる減量分は水を増量することで合計量を合わせた。なお、多価不飽和脂肪酸に対するアミノ酸及び/又はペプチドの重量比〔多価不飽和脂肪酸/(塩基性アミノ酸+塩基性ペプチド)〕は14/1、多価不飽和脂肪酸に対する乳化剤の重量比〔多価不飽和脂肪酸/乳化剤〕は1.1/1、多価不飽和脂肪酸に対するHLB値が10未満の乳化剤の重量比〔多価不飽和脂肪酸/乳化剤〕は14/1であった。
次に、水1400gに賦形剤であるα-サイクロデキストリン(塩水港製糖社製、デキシーパール α−100)600gを溶解し、この溶液を先に調製した乳化製剤サンプルと混合後、凍結乾燥処理を行ってDHA・EPA含有精製魚油粉末製剤を得た。
得られた粉末製剤サンプルを三等分して密栓し、25℃で10分間静置したサンプルを初期魚臭評価サンプル、55℃で24時間静置したサンプルを戻り臭評価サンプルA、37℃で3ヶ月間静置したサンプルを戻り臭評価サンプルBとした。それぞれの保存後サンプルを、それぞれ2重量%の水溶液に調製後、服用して魚臭がしない場合を0、強く感じられる場合を10として、パネラーが感じた官能の程度をスコアとして、パネラー10人のスコア平均値を算出した。その際、参考例3の初期魚臭のスコア平均値が5.0となるように標準化を行い、サンプル間の風味の比較を行った。また、初期魚臭サンプルの水溶液についてはその外観も評価した。結果を表4に示す。
表4より、試験例1と同様に、塩基性アミノ酸と塩基性ペプチドの評価が良好であり、次いで、中性アミノ酸、酸性アミノ酸の順であることが分かる。これより、粉末製剤においても、塩基性アミノ酸と塩基性ペプチドが、初期魚臭及び戻り臭を効果的に抑制すること、ならびに、長期にわたりその効果が持続することが明らかとなった。また、一旦乳化して得られた組成物を粉末化したことから、添加したアミノ酸やペプチドの溶解性が向上して悪臭成分との反応が向上し、より効果が奏されることが分かる。一方、アミノ酸を添加しない比較例32では、初期魚臭、戻り臭低減の効果は認められず、乳化剤を添加しない比較例37〜40では、初期魚臭及び戻り臭は若干抑えられるものの、ごく短時間で分離してしまい製品として成立しないことが分かった。
試験例5
表5に示す塩基性アミノ酸又は塩基性ペプチドの共役リノール酸含有油脂の戻り臭抑制効果を確認した。
具体的には、還元澱粉糖化物(三菱商事フードテック社製、アマミール)633gに乳化剤:デカグリセリンモノミリスチン酸エステル(太陽化学社製、サンソフトQ−14S HLB=14.5)60gを添加して60℃においてホモミキサーで十分に撹拌後、品温を50℃まで冷却した。ここへ、ホモミキサーで3000rpmで撹拌しながら、別途乳化剤:テトラグリセリントリミリスチン酸エステル(太陽化学社製、サンソフトA−143E HLB=7.6)5gを溶解させて澄明にした共役リノール酸含有油脂(日清オイリオグループ社製 共役リノール酸含量80重量%)300gに、表5に示す種類のアミノ酸又はペプチド2gを予め分散させたものを徐々に投入後、ホモミキサー8000rpmで3分間撹拌した後、湿式微粒化装置(スギノマシン社製、スターバースト)にて圧力245MPaで処理することで、共役リノール酸含有油脂乳化製剤を得た。なお、乳化剤、アミノ酸、又はペプチドを含まない製剤については、配合しないことによる減量分は還元澱粉糖化物を増量することで合計量を合わせた。なお、多価不飽和脂肪酸に対するアミノ酸及び/又はペプチドの重量比〔多価不飽和脂肪酸/(塩基性アミノ酸+塩基性ペプチド)〕は120/1、多価不飽和脂肪酸に対する乳化剤の重量比〔多価不飽和脂肪酸/乳化剤〕は3.7/1、多価不飽和脂肪酸に対するHLB値が10未満の乳化剤の重量比〔多価不飽和脂肪酸/乳化剤〕は48/1であった。
得られた乳化製剤を二等分して密栓し、55℃で1週間静置したサンプルを戻り臭評価サンプルA、37℃で4ヶ月間静置したサンプルを戻り臭評価サンプルBとし、官能評価を行った。具体的には、保存後サンプルの1重量%水溶液をそのまま服用して、戻り臭がしない場合を0、強く感じられる場合を10として、パネラーが感じた官能の程度をスコアとして、パネラー10人のスコア平均値を算出した。また、戻り臭評価サンプルAについてはその外観も評価した。なお、スコアの標準化として、参考例4の戻り臭A、Bそれぞれのスコア平均値を10となるように標準化を行い、サンプル間の比較を行った。結果を表5に示す。
表5より、試験例1〜4と同様に、塩基性アミノ酸と塩基性ペプチドの評価が良好であり、次いで、中性アミノ酸、酸性アミノ酸の順であることが分かる。これより、異なる多価不飽和脂肪酸を含む油脂の乳化製剤においても、塩基性アミノ酸と塩基性ペプチドが、戻り臭をより顕著に抑制すること、ならびに、長期にわたりその効果が持続することが明らかとなった。一方、アミノ酸を添加しない比較例41では、戻り臭低減の効果は認められず、乳化剤を添加しない比較例46〜49では、戻り臭の増加は若干抑えられるものの、ごく短時間で分離してしまい製品として成立しないことが分かった。なお、結果一覧で「白濁分散」したものは、静置終了後も良好に分散していた。
試験例6
表6に示す乳化剤が配合された場合の、塩基性アミノ酸の微細藻類由来精製油の脱臭及び戻り臭抑制効果を確認した。
具体的には、微細藻類由来精製油(DSMニュートリションジャパン社製、DHA含量24重量%)94.5gに、表6に示す乳化剤5gを添加して40℃においてホモミキサーで十分に撹拌後、ここへホモミキサーで3000rpmで撹拌しながら、微粒のリジン塩酸塩0.5gを徐々に添加して10分間撹拌し、DHA含有精製油製剤を得た。なお、多価不飽和脂肪酸に対するアミノ酸及び/又はペプチドの重量比〔多価不飽和脂肪酸/(塩基性アミノ酸+塩基性ペプチド)〕は45/1、多価不飽和脂肪酸に対する乳化剤の重量比〔多価不飽和脂肪酸/乳化剤〕は4.5/1であった。
得られた製剤を三等分して密栓し、25℃で10分間静置したサンプルを初期魚様臭評価サンプル、55℃で24時間静置したサンプルを戻り臭評価サンプルA、37℃で2ヶ月間静置したサンプルを戻り臭評価サンプルBとした。
それぞれの保存後サンプルの魚様臭について官能評価を行った。具体的には、得られたサンプルを開栓し、そのまま臭気を確認して、魚様臭がしない場合を0、強く感じられる場合を10として、パネラーが感じた官能の程度をスコアとして、パネラー10人のスコア平均値を算出した。なお、スコアの標準化として、参考例5の初期魚様臭のスコア平均値が5.0となるように標準化を行い、サンプル間の比較を行った。また、戻り臭評価サンプルBについてはその外観及び沈殿量を目視で確認した。沈殿量は、全く認められない参考例5を「0」、アミノ酸が全て沈殿した比較例50の沈殿量を「4」として、判断した。結果を表6に示す。
表6より、いずれの乳化剤も、戻り臭を低減させ、長期にわたり効果的に抑制することが明らかとなった。なかでも、グリセリン脂肪酸エステルを用いた場合はより顕著な効果が得られることが分かる。
試験例8
塩基性アミノ酸の精製魚油の脱臭及び戻り臭抑制効果を確認した。
具体的には、精製魚油(POLARIS社製、DHA含量56重量%、EPA含量6重量%)75gに、乳化剤:ジグリセリンモノカプリン酸エステル(太陽化学社製、サンソフトQ−10D HLB=9.5)7g、ジグリセリンモノラウリン酸エステル(太陽化学社製、サンソフトQ−12D HLB=8.5)10g、ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(太陽化学社製、サンソフトNo.818H HLB=約2)2g、ヘキサグリセリンオクタステアリン酸エステル(太陽化学社製、サンファットPS−68 HLB=3.5)1gを添加して40℃において窒素雰囲気下でパドル翼攪拌機で十分に撹拌後、撹拌しながらアミノ酸:微粒アルギニン5gを徐々に添加した。その後、10分間よく撹拌し、DHA・EPA含有精製魚油製剤を得た(実施例33)。また、乳化剤およびアミノ酸を添加しない製剤については、配合しないことによる減量分は補正せずに、合計量を75gとした(比較例51)。なお、多価不飽和脂肪酸に対するアミノ酸及び/又はペプチドの重量比〔多価不飽和脂肪酸/(塩基性アミノ酸+塩基性ペプチド)〕は9.3/1、多価不飽和脂肪酸に対する乳化剤の重量比〔多価不飽和脂肪酸/乳化剤〕は2.3/1であった。
得られた製剤を三等分して密栓し、25℃で10分間静置したサンプルを初期魚臭評価サンプル、55℃で24時間静置したサンプルを戻り臭評価サンプルA、37℃で2ヶ月間静置したサンプルを戻り臭評価サンプルBとした。
それぞれの保存後サンプルの魚様臭について官能評価を行った。具体的には、得られたサンプルを開栓し、そのまま臭気を確認して、魚臭がしない場合を0、強く感じられる場合を10として、パネラーが感じた官能の程度をスコアとして、パネラー10人のスコア平均値を算出した。なお、スコアの標準化として、比較例51の初期魚臭のスコア平均値が5となるように標準化を行い、サンプル間の比較を行った。結果を表7に示す。
表7より、塩基性アミノ酸が戻り臭をより顕著に抑制することが明らかとなった。一方、乳化剤及びアミノ酸を添加しない比較例51では、戻り臭低減の効果は認められないことが分かった。
以下に処方例を挙げる。
処方例:クッキー
有塩バター26gを常温で溶解させよく混合し、上白糖14gを追加し、ざらつきがなくなるまでよく混合する。そこに薄力粉55g及び実施例6で作製した乳化製剤5gを投入し、十分に混合する。得られた生地をまとめてラップで包み、4℃にて1時間静置した後、カットして成型する。成型物を160℃で25分焼成させることで、DHA・EPA420mg配合クッキーが得られる。
処方例:食パン
強力小麦粉250g、ドライイースト7g、上白糖15g、塩3gに、実施例7で作製した乳化製剤14gを混合した30℃程度の湯146gを投入し、滑らかにまとまるまで捏ねる。そこにバター5gを常温で溶解させよく混合する。得られた生地をまとめて油を引いたボウルに入れ、30℃で1時間程度一次発酵を行う。生地を2分割して丸めなおし5分ほど休ませる。その後生地からガス抜きをし、三つ折りにして丸め、油を引いた型に入れる。蓋をして30℃で1時間程度二次発酵を行う。190℃で予熱したオーブンに蓋をしたままの型を入れ、30分焼成し、さらに蓋を外して5分焼成する。焼きあがったら素早く型から取り出し、網の上などで冷却することで、DHA・EPA1176mg配合食パンが得られる。
処方例:フルーツプレパレーション
イチゴ50gにグラニュー糖35gを添加して冷蔵庫にて一晩静置したものを90℃で5分間、よく撹拌しながら煮込み、そこに水8.6gにペクチン0.3g、クエン酸ナトリウム0.5g、実施例8で作製した乳化製剤5gを80℃程度に熱して十分に溶解させたものを投入する。よく撹拌した後、クエン酸0.2g、レモン果汁0.4gを添加し、90℃まで加熱した後、冷却することで、DHA・EPA420mg配合フルーツプレパレーションが得られる。
処方例:ドレッシング
塩18g、米酢40g、ワインビネガー10gを溶け残りがなくなるまで撹拌する。そこにサラダ油50g、オリーブオイル25g、実施例2で作製した油脂製剤8gを加え、十分に撹拌することで、DHA・EPA2041mg配合ドレッシングが得られる。
処方例:アイスクリーム
脱脂粉乳80g、グラニュー糖120g、グリセリンステアリン酸エステル2g、グアーガム0.6g、ローカストビーンガム0.6g、カラギーナン0.2g、実施例9にて作製した乳化製剤100gを60℃に加熱した水614.6gに溶解させる。そこにヤシ油80gを投入して十分に混合した後、ホモジナイザーにて圧力150kgf/cm2で均質化させる。これを85℃で15秒間殺菌し、5℃以下に急冷した後、バニラ香料を2g添加し、十分に混合した後、5℃にて一晩エージングを行う。これを連続式アイスクリームフリーザーにてオーバーラン30%でフリージングし、出口温度−5℃にてカップに充填し、−40℃で急速凍結することで、DHA・EPA8400mg配合アイスクリームが得られる。
処方例:プリン
生全卵18g、グラニュー糖10g、牛乳64g、実施例10にて作製した乳化製剤8gをよく混合し、カップに充填する。これを蒸し器にて90℃で20分加熱した後、冷却することで、DHA・EPA672mg配合プリンが得られる。
処方例:ゼリー
カラギーナン0.4g、クエン酸ナトリウム0.1g、グラニュー糖10gをよく混合し、水64.35gに撹拌しながら投入する。これを85℃に加熱し、十分に溶解させた後、実施例25で作製した乳化製剤5g、100%オレンジジュース20gを添加し、よく混合する。ここにオレンジ香料製剤0.15gを投入してよく混合した後、カップに充填し、冷却してゲル化させることで、共役リノール酸1200mg配合ゼリーが得られる。
処方例:玉子顆粒
全卵粉末10g、コーンスターチ15g、小麦粉25g、上白糖30gに実施例27で作製した油脂製剤5gを混合した後、水30gを投入し、よく練り合わせる。これを押出成型機に供し、得られた成型物を棚段乾燥機にて風乾する。得られた乾燥物を粉砕することで、DHA1134mg配合玉子顆粒が得られる。
処方例:ふりかけ
塩茶顆粒5g、かつお顆粒調味料10g、昆布顆粒調味料5g、玉子顆粒5g、もみ海苔1g、ゴマ1g、乾燥桜えび1g、実施例18で作製した粉末製剤1gを混合することで、DHA・EPA76mg配合ふりかけが得られる。
処方例:即席スープ
水500gに顆粒鳥ガラ調味料10g、醤油5g、ゴマ油4g、実施例23で作製した乳化製剤16gを入れ沸騰させる。そこへ溶き卵100gを回し入れ、加熱を止める。得られたスープを冷却した後、凍結乾燥に供することで、共役リノール酸3840mg配合即席スープが得られる。
処方例:レトルトカレー
ヤシ油4.5g、ナタネ油4.5g、小麦粉7.5gを140℃にて加熱混合した後、カレー粉4.2g、食塩1.5gを加えてよく混合する。ここに砂糖5.4g、グルタミン酸ナトリウム1.8g、刻んだ玉ねぎ12g、顆粒ビーフエキス2.4g、ウスターソース1g、しょうゆ1g、実施例1で作製した油脂製剤2.5g、水120gを加え、90℃にて15分間加熱混合する。ここに牛肉8g、じゃがいも8g、人参6gを加え、レトルトパウチに入れて充填密封する。これを121℃、30分間レトルト処理することにより、DHA・EPA638mg配合レトルトカレーが得られる。
処方例:乳飲料
実施例7で作製した乳化製剤6g、または60gに、牛乳を合計1000gになるように混合して、ホモジナイザーにて圧力150kgf/cm2で均質化させることで、DHA・EPA504mg、または5040mg配合乳飲料が得られる。また、これをスプレードライに供することにより、DHA・EPA5040mg配合粉乳が得られる。
処方例:発酵乳飲料
ヨーグルト500g、果糖ぶどう糖液糖100g、ペクチン2g、実施例6で作製した乳化製剤0.4g、4g、又は40gに水を合計1000gになるように混合して、ホモジナイザーにて圧力150kgf/cm2で均質化させることで、DHA・EPA33.6mg、336mg、又は3360mg配合発酵乳飲料が得られる。
処方例:コーヒー飲料
コーヒー豆(L値:27)200gに約10重量倍の沸騰水を加えてBx.2.6のコーヒー抽出液2000gを得る。この抽出液を使用し、以下の<処方1>に示す割合にしたがってコーヒー飲料を調製する。このコーヒー飲料178.5gに実施例22で作製した乳化製剤を1.5g添加した後、180ml容缶に充填、殺菌(121℃、30分)することで共役リノール酸360mg配合コーヒー飲料が得られる。
処方例:錠剤
実施例19で作製した粉末製剤15g、粉末還元麦芽糖水飴35g、澱粉分解物(DE値16)46g、ショ糖ベヘニン酸エステル3g、微粒二酸化ケイ素1gを混合して、打錠機にて打錠圧力100kgf/cm2で打錠させることで、DHA・EPA1141mg配合錠剤が得られる。
処方例:ソフトカプセル剤
実施例1で作製した油脂製剤55g、ジグリセリンラウリン酸エステル(太陽化学社製、サンソフトQ−12D)40g、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル5gを均一になるまで混合したものを、ソフトカプセルに充填機で充填することで、DHA・EPA14033mg配合ソフトカプセルが得られる。
処方例:ハードカプセル剤
実施例33で作製した油脂製剤100gを、そのままハードカプセルに充填機で充填することで、DHA・EPA46500mg配合ハードカプセルが得られる。
処方例:化粧料(O/Wクリーム)
水69.8g、グリセリン3.3g、グリセリンラウリン酸エステル(太陽化学社製、サンソフトNo.750−C)0.5g、デカグリセリンオレイン酸エステル(太陽化学社製、サンソフトQ−17Y−C)1.5g、デカグリセリンジイソステアリン酸エステル0.1g、及びキサンタンガム0.4gを混合して、70℃で加熱溶解させる。
次いで、パーム核油9.0g、MCT(グリセリンカプリル酸/カプリン酸トリエステル(太陽化学社製、サンオイルMCT−7))3.0g、アルギニン1重量%及びデカグリセリントリオレイン酸エステル(太陽化学社製 サンソフトQ−173Y)2重量%を含む魚油(DHA含量24重量%、EPA含量4重量%)5g、グリセリンベヘン酸エステル・ヘキサグリセリンオクタステアリン酸エステル混合物(太陽化学社製、TAISET 50−C)4.0g、ジグリセリンカプリン酸エステル(太陽化学社製、サンソフトQ−10D−C)0.4g、及びステアリン酸3gを混合して、70℃で加熱溶解させる。
これらの溶液を、ホモミキサーにてせん断力をかけてよく撹拌する。その後、撹拌を止め、室温まで冷却することで、DHA・EPA1358mg配合化粧料が得られる。