JP7367275B2 - 油性組成物 - Google Patents
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Description
このような問題を解決するため、特許文献1には、油脂組成物を構成するトリグリセリドに、中鎖脂肪酸トリグリセリドを配合し、含有されるDHAなどのn-3系長鎖多価不飽和脂肪酸の吸収性を改善する技術が提案されている。
また、特許文献2には、消化吸収性の良い高度不飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするトリグリセリドの構造を変換した、2位の脂肪酸がC8~C12の脂肪酸に置換された油脂が記載されている。
本発明は、EPAやDHA等の高度不飽和脂肪酸の吸収効率を高めることを課題とする。さらに本発明は、EPAやDHA等の、体内吸収性に優れたソフトカプセル製剤を提供することを課題とする。
(1)以下の成分を含有する高度不飽和脂肪酸含有油性組成物。
A成分.高度不飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするトリグリセリドを含有する油脂 40~90質量%
B成分.カプリル酸グリセリル及び/又はカプリル酸ジグリセリル 2~17質量%
C成分.グリセリン単位の数が4~10のポリグリセリンに、オレイン酸1~3分子がエステル結合したポリグリセリン脂肪酸エステル 5質量%以上
D成分.ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル 1~10質量%
(2)C成分とD成分の配合質量比がC/D=1~10、かつB成分とC成分とD成分の合計量とD成分の質量比D/(B+C+D)が0.05~0.5である(1)に記載の油性組成物。
(3)A成分中に、高度不飽和脂肪酸を10~80質量%含有する(1)又は(2)に記載の油性組成物。
(4)高度不飽和脂肪酸中にエイコサペンタエン酸(EPA)及び/又はドコサヘキサエン酸(DHA)を含有する(1)~(3)のいずれかに記載の油性組成物。
(5)油性組成物中に、エイコサペンタエン酸を1~65質量%、及び/又はドコサヘキサエン酸を1~55質量%含有する(1)~(4)のいずれかに記載の油性組成物。
(6)(1)~(5)のいずれかに記載の油性組成物を含むソフトカプセル。
また、本発明のソフトカプセル剤は、経口で摂取したときのEPAやDHA等の高度不飽和脂肪酸の吸収性が向上した製剤となる。その結果、ソフトカプセル製剤1錠あたりの内包するトリグリセリド量を減量できるため、製剤を小型化することができる。このため、本発明の製剤は、嚥下能力の低下した高齢者や、小児でも楽に嚥下することが可能となる。さらにまた、高価な多価不飽和脂肪酸含有トリグリセリドの配合を減量できるために、製造コストの低減が可能となる。
また本発明は、EPA、DHA等の高度不飽和脂肪酸を構成脂肪酸として含有するトリグリセリドを含む油性組成物のソフトカプセル製剤の発明である。
<高度不飽和脂肪酸を含むトリグリセリド>
本発明の油性組成物は、高度不飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするトリグリセリドを含有する。高度不飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするトリグリセリドは、魚油に由来するものが具体的に例示できる。あるいは、高度不飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするトリグリセリドが含有されていることが公知の微生物(藻類や菌類)由来、又は甲殻類由来の油であってもよい。
魚油は、高度不飽和脂肪酸を高濃度に含んでいることが知られ、すでに高度不飽和脂肪酸を構成主成分とする精製魚油が市販されており、これを購入して本発明に使用することができる。
精製魚油としては、魚類に含まれる油脂、リン脂質、ワックスエステルなどを含む脂質を例示できる。いわゆる青魚に分類されるニシン、イワシ、カタクチイワシ、サンマ、あるいはマグロ類及びこれらに由来の油混合物である。
魚油は、必要により公知の方法によって、高度不飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするトリグリセリドを選択的に精製した油脂とすることができる。
本発明の油性組成物は、A成分として、上記の高度不飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするトリグリセリドを含む油脂(例えば魚油)、又は高度不飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするトリグリセリドを含む油脂(魚油)と植物油とを混合して得られた油脂と、下記に示すB~Dの水性乳化剤を配合することで得られる。油性組成物には乳化剤以外に酸化防止剤、油溶性ビタミン等任意の油溶性成分を配合してもよい。
本発明の油性組成物においては、高度不飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするトリグリセリドを含有する油脂を40~90質量%、好ましくは50~85質量%含有する。
また、本発明の組成物にあっては、(A)成分中、高度不飽和脂肪酸を10~80質量%含有する。高度不飽和脂肪酸としてはEPA及び/又はDHAを含有する。
本発明に使用する高度不飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするトリグリセリドを含有する油脂は、市販されている精製魚油を使用してもよい。このような市販の精製魚油としては、EPA-28G2(日本水産株式会社)、EPA-70(タマ生化学株式会社)、DHA-55(日本水産株式会社)を例示できる。
本発明の油性組成物は、
B成分.カプリル酸グリセリル及び/又はカプリル酸ジグリセリル
C成分.グリセリン単位の数が4~10のポリグリセリンに、オレイン酸1~3分子がエステル結合したポリグリセリン脂肪酸エステル
D成分.ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル
を乳化剤として含有する。
本発明に適した市販されている縮合リシノレイン酸ポリグリセリル-5として、サンソ
フトNo.818R(太陽化学株式会社)を例示できる。
本実施形態の油性組成物は、前記した各成分の他に、必要に応じて任意の他の成分(例えば、栄養成分、有効成分、薬理成分など生理活性成分、色素酸化防止剤、糖類を含有していてもよい。このような成分としては、飲食品、医薬品に使用可能なものであれば、特に制限されない。
抗酸化剤としては、特に限定されず、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、トコフェロール等のビタミンE及びその誘導体、ビタミンA、レチノイン酸、レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、レチニルアセテート、レチニルパルミテート、レチノイン酸トコフェリルなどを例示できる。また抗酸化剤は、本発明の油性組成物の原料である高度不飽和脂肪酸含有トリグリセリドや油脂にあらかじめ配合しておいてもよい。
本発明の実施形態の組成物は、A~Dの各成分を秤量後、50~70℃、好ましくは60℃で加温しながら撹拌し、各成分を溶解混合することで容易に調製することができる。また、必要に応じて増粘剤を添加して増粘してもよい。増粘剤として、室温で固体のグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。溶解液が気泡を含む場合は、減圧脱気などの方法で気泡を除去することが好ましい。
調製した油性組成物は、加温状態で公知のソフトカプセル成型機を用いてソフトカプセル製剤とする。ソフトカプセル製剤製造に当たっては、特段の制限はなく、ソフトカプセル封入装置の製造条件にしたがって製造可能である。
なお、ソフトカプセル皮膜(以下、単に皮膜とも称する。)を形成する基材としては、デンプン、加工デンプン、寒天、ゼラチン、ジェランガム、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース等の物質を皮膜成分として使用することが可能である。
1.油性組成物の調製
下記表1に示す市販の高度不飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするトリグリセリド含有油脂を用いて油性組成物を調製した。
水への分散性の評価は次のとおりである。
調製した油性組成物を採取し、これをピペットで採取し、ビーカー中の室温の水100mLに1滴(約0.1mL)を滴下し、マグネチックスターラーで3分間撹拌後目視観察した。
滴下した油性組成物が水に均一に分散したことが観察された場合を「〇」、わずかに分散するが一部分離が観察された場合を「△」、全く分散が観察されない場合(油滴が浮上)を「×」と評価した。その結果を表2及び表3に分散性評価として記載した。
また上記のとおり、水分散性が「〇」評価となった実施例1~14及び「△」の評価となった比較例4~6の組成物について、目視評価の結果を数値化するため、分散液をレーザー回折式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、LA-960)を用いて平均粒子径を測定した。
測定結果を表4に示す。
この結果から、水分散性の良い組成は、分散粒子径が20μm以下となる必要があることが分かった。
実施例1~14、比較例1~15の分散性評価結果から、高度不飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするトリグリセリドを含む油性組成物は、従来使用されている乳化剤の配合では、きわめて水分散性が悪いことが分かった。この分散性の悪さが、EPAやDHAの吸収性低下に悪影響を与えることが考えられた。
実施例、比較例の結果からB成分、C成分、D成分以外の類似の特性を持つ他の乳化剤を置換しても水分散性が改善しないことから、高度不飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするトリグリセリドの水分散性には、B、C、Dの3種の乳化剤を含有することが必須であると結論付けられた。
(1)試験条件
6匹のラット(SD、雄性)に絶食条件下で、実施例1の組成物を、EPAとして233mg/kg DHAとして100mg/kg、となるよう単回強制的に経口投与した。投与前、投与後1、2、4、6、8、24時間後に尾静脈より採血した。血液を次の手順で処理し、血漿中のEPA及びDHA濃度をLCクロマトグラフ質量計(LC/MS)により測定した。
・サンプル前処理方法
血漿 50μL
↓
メタノール(90):10N-NaOH(10) 200μL
90℃ 60分 インキュベーション
↓
ヘキサン 400μL 5分Mix
↓ヘキサン除去
水層 6N-HCl 200μL
↓
ヘキサン 600μL 5分Mix
↓
ヘキサン層 400μL dryup
↓
アセトニトリル 50μL
↓
LCMS注入
カラム:BEH C18, 2.1mm×50mm 1.7μm カラム温度:40℃
A:0.1%ギ酸水溶液
B:アセトニトリル
A:B=20:80
流速 0.35mL/分
Source (ES-)
Capillary(kV) 4
Cone (V) 30
Source Temp 120℃
Desolvation Temp 50℃
Parent(M/Z)327
Daughter(M/Z)283
Dwell(s)0.1
Cone(V)32
Collision(v)12
・MS検出(EPA)
Parent(M/Z)301
Daughter(M/Z)257
Dwell(s)0.1
Cone(V)32
Collision(v)12
実施例1及びコントロールをそれぞれ投与したラット血漿中のEPA及びDHA濃度から、薬物濃度時間曲線下面積(AUC)を求め、結果を下記の表5及び図1、図2に示した。
すなわち、本発明の組成物は、経口で投与すると、含有する高度不飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするトリグリセリドの吸収性を改善し、血中の高度不飽和脂肪酸濃度を高めた。
Claims (5)
- 以下の成分を含有する高度不飽和脂肪酸含有油性組成物。
A成分.エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸及びアラキドン酸から選ばれた1種以上の高度不飽和脂肪酸のトリグリセリドを含有する油脂 40~90質量%
B成分.カプリル酸グリセリル及び/又はカプリル酸ジグリセリル 2~17質量%
C成分.グリセリン単位の数が4~10のポリグリセリンに、オレイン酸1~3分子がエステル結合したポリグリセリン脂肪酸エステル 5~30質量%
D成分.ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル 1~10質量% - C成分とD成分の配合質量比がC/D=1~10、かつB成分とC成分とD成分の合計量とD成分の質量比D/(B+C+D)が0.05~0.5である請求項1に記載の油性組成物。
- A成分中に、高度不飽和脂肪酸を10~80質量%含有する請求項1又は2に記載の油性組成物。
- 油性組成物中に、エイコサペンタエン酸を1~65質量%、及び/又は、ドコサヘキサエン酸を1~55質量%含有する請求項1~3のいずれかに記載の油性組成物。
- 請求項1~4のいずれかに記載の油性組成物を含むソフトカプセル。
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