JP3933236B2 - センターベアリングのシール構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の推進軸を軸支するセンターベアリングのシール構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常センターベアリングは、内環と外環を弾性部材を介して接続した環状支持部材により支持され、内環内部の所定位置に固定される。
こうして推進軸を軸支するセンターベアリングはアウターレースを環状支持部材の内環で支持されるが、内環の前後開口が開放されていると、泥水や異物等がセンターベアリングに浸入することになるので、ダストカバー等により覆うようにしている。
【0003】
例えば実開平7−2633号公報に記載された例を図6に示す。
推進軸01は、ラジアルボールベアリングであるセンターベアリング02のインナーレース02aに嵌入されて軸支され、センターベアリング02はアウターレース02bを環状支持部材03により固定支持されている。
【0004】
環状支持部材03は、内環04と外環05を弾性部材06が接続しており、内環04はセンターベアリング02のアウターレース02bの外周面に圧接する円筒部04aからアウターレース02bの前後両端面に接する絞り段部を経てシール部04b,04bが前後方向に延設されている。
【0005】
そして推進軸01に嵌合するアダプター07の外周に係合されたダストカバー08が断面コ字状をして前記前側のシール部04bを内部に挿入するように組み合わされてラビリンスを構成しており、他方推進軸01に係合されたやはり断面コ字状をしたダストカバー09の内部に後側のシール部04bを挿入し組み合わせてラビリンスを構成している。
【0006】
その他特公平4−63259号公報および実公平7−16510号公報等にセンターベアリングのシール構造が開示されているが、基本的に前記公報記載の例と同じである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の例において、ダストカバー08は推進軸01に嵌合するアダプター07とは別体で両者の組付け作業を必要とし、またダストカバー08自体の形状も複雑であり寸法精度も必要となり、組付性が悪い。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、部品点数が少なく簡単な構造で組付性に優れたセンターベアリングのシール構造を供する点にある。
【0009】
【課題を解決するための手段および作用効果】
上記目的を達成するために、本請求項1の発明は、内環と外環を弾性部材を介して接続した環状支持部材が、推進軸を軸支するセンターベアリングを、前記内環内部で保持するセンターベアリング支持構造において、前記推進軸に対して前記センターベアリングの位置を規制するストッパーピースが、前記推進軸に嵌合し前記センターベアリングのインナーレースを規制する円筒本体部と、同円筒本体部から遠心方向に延出したフランジ部とをプレス成形により一体に形成してなり、前記ストッパーピースのフランジ部の外周端面が前記環状支持部材の内環の内周面に対向し、同両対向面の間でラビリンス隙間を構成したセンターベアリングのシール構造とした。
【0010】
推進軸に対してセンターベアリングの位置を規制するストッパーピースが、推進軸に嵌合する円筒本体部と一体にフランジ部を有して、環状支持部材の内環との間でラビリンス隙間を構成するので、ストッパーピースとラビリンス隙間が異物や泥水等のセンターベアリングへの浸入を防止している。
ストッパーピースはダストカバーを兼ね、ラビリンス隙間は環状支持部材の内環を利用して構成しているので、部品点数が少なく、構造が簡単で組付性に優れている。
【0011】
ストッパーピースは容易に作成でき安価である。
【0012】
ストッパーピースは、全体が環状支持部材の内環内に納まるので、軸方向の幅を最小限に抑えることができ、シール構造をコンパクトに構成することができる。
【0013】
請求項2記載の発明は、内環と外環を弾性部材を介して接続した環状支持部材が、推進軸を軸支するセンターベアリングを、前記内環内部で保持するセンターベアリング支持構造において、前記推進軸に対して前記センターベアリングの位置を規制するストッパーピースが、前記推進軸に嵌合し前記センターベアリングのインナーレースを規制する円筒本体部と、同円筒本体部から遠心方向に延出したフランジ部とをプレス成形により一体に形成してなり、前記ストッパーピースのフランジ部の外周端部が前記環状支持部材の内環の開口端部を外周面側に回り込んで、両端部間で前記ラビリンス隙間を構成したものである。
簡単な構造を維持したまま構成されるラビリンス隙間の距離を長くとることができ、より確実なシール性を確保することができる。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載のセンターベアリングのシール構造において、前記ストッパーピースのフランジ部と前記内環の一方の端部との間に前記ラビリンス隙間を構成し、前記推進軸が拡径部を有し、前記拡径部と前記内環の他方の端部との間でラビリンス隙間を構成したものである。
内環の一端はストッパーピースとの間で、他端は推進軸の拡径部との間でラビリンス隙間を形成することで、ストッパーピースは1個で足り、組み付け作業も容易である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下本発明に係る一実施の形態について図1ないし図4に図示し説明する。
図1は、自動車の推進軸である第1プロペラシャフト1と第2プロペラシャフト2との連結部を軸支するセンターベアリング3を本実施の形態に係るセンターベアリング支持構造で支持した状態を示している。
【0016】
第1プロペラシャフト1と第2プロペラシャフト2は連結部材6で連結され、連結部材6は、前側より後方へインナー軸部7,中間軸部8,後側円筒部9が順に形成されており、中間軸部8においてセンターベアリング3によって軸支される。
【0017】
第1プロペラシャフト1の後端はトリポード自在継手5のアウター5aが形成され、連結部材6の前側に形成されたインナー軸部7がアウター5a内に挿入され、アウター5aの円筒内周面に軸方向に指向して形成された3条の溝条にインナー軸部7から放射方向に突設した3個のトリポード5bが摺動自在に嵌入して動力の伝達が行われる。
なおアウター5aの開口はブーツ10が覆っている。
【0018】
連結部材6の中間軸部8をセンターベアリング3が軸支し、後部円筒部9に第2プロペラシャフト2の前端が摩擦圧着により接続され、第2プロペラシャフト2の後端は自在継手15を介して差動装置に連結される。
【0019】
かかる推進軸において連結部材6の中間軸部8を軸支するセンターベアリング3は、ラジアルボールベアリングであり、インナーレース3aに中間軸部8が嵌入軸支される。
かかるセンターベアリング3は、車体側に固定されるブラケット25に環状支持部材20を介して支持される構造である。
【0020】
このセンターベアリング支持構造を図2および図3に示し説明する。
ブラケット25は、長尺板部材を加工したもので、半円弧部25aの両端が左右に延出して取付けフランジ部25b,25bが形成され、取付けフランジ部25b,25bが車体側に取付けられ、半円弧部25aに円環状のリング部材26が固着されている。
このリング部材26の内部に環状支持部材20が嵌合固着される。
【0021】
環状支持部材20は、直管状をした内環21と外環22とをラバー23を介して接続したものあり、外環22は外径と幅が、ブラケット25のリング部材26の内径と幅に等しく、内環21は外環22より幅が大きく特に後方に大きく突出しており、内環21の内径はセンターベアリング3のアウターレース3bの外径に等しい。
【0022】
ラバー23は内周面が内環21の外周面前半部に焼き付けられ、外周面が外環22の内周面に焼き付けられて、環状中間部が前方に膨出するように屈曲している。
このラバー23の中間部の前方へ膨出した位置まで前記内環21の前端は延出しており、したがって内環21の前端はラバー23内に納まっている。
【0023】
かかる環状支持部材20は、先にブラケット25のリング部材26の内周面に外環22を圧入嵌合して固着する。
その後環状支持部材20の内環21にセンターベアリング3を所定位置に圧入する。
そして内環21の両側から環状部材であるダストシール30,30が圧入される。
【0024】
ダストシール30は、金属製シールリング31が内環21の内径より僅かに大きい外径を有する円筒部31aとその端縁から内側に屈曲した環状側板部31bとからなり、この円環板部31bの内周縁にゴム製のシールリップル32が固着されている。
かかるダストシール30をシールリング31の環状側板部31bを内側に向けて内環21内に圧入し、環状側板部31bを既に所定位置に圧入されているセンターベアリング3のアウターレース3bの端面に当接する。
【0025】
内環21の両側からダストシール30,30が圧入され、センターベアリング3のアウターレース3bの両端面に当接してセンターベアリング3を挟み込む。
したがってセンターベアリング3は、環状支持部材20の内環21の所定位置に位置決めされ、かつ抜け止めされる。
【0026】
このように環状支持部材20に支持されたセンターベアリング3内に推進軸の連結部材6の中間軸部8が嵌入されて図4に示すように軸支される。
中間軸部8は、センターベアリング3が支持される基径部8aから後方へ段階的に径を大きくして第1拡径部8b,第2拡径部8c,第3拡径部8dが順次形成され、第3拡径部8dよりさらに拡径して後側円筒部9となっており、第1拡径部8bがセンターベアリング3によって軸支される。
【0027】
センターベアリング3のインナーレース3aに中間軸8の第1拡径部8bが後方から嵌入され、インナーレース3aの後端面に中間軸部8の第2拡径部8cの端面が当接して位置決めがなされる。
すると第3拡径部8dは、内環21の端部内周面に近接し、後側円筒部9の端面が内環21の端面に近接して両者間でラビリンス隙間40を構成する。
【0028】
一方センターベアリング3の前方からはストッパーピース12が中間軸8の第1拡径部8bに嵌入される。
ストッパーピース12は、円筒本体部12aの一端部が遠心方向に拡径して円形のフランジ部12bを一体に形成した形状をしており、フランジ部12bの外径は環状支持部材20の内環21の内径より僅かに小さい。
【0029】
円筒本体部12aとフランジ部12bとはプレス成形により一体に作成される。
かかるストッパーピース12は、フランジ部12bを前方にした姿勢で円筒本体部12aを前方から第1拡径部8bに嵌入され、円筒本体部12aの後端面をセンターベアリング3のインナーレース3aの端面に当接する。
【0030】
こうしてストッパーピース12によりセンターベアリング3が中間軸部8の第2拡径部8cとの間で挟まれ、センターベアリング3が連結部材6を所定箇所で軸支することになる。
そしてストッパーピース12のフランジ部12bは、内環21内に納まり、フランジ部12bの外周端面と内環21の内周面との間にラビリンス隙間41が構成される。
【0031】
センターベアリング3の前側のダストシール30は、そのシールリップル32がストッパーピース12の円筒本体部12aの外周面に接し、他方後側のダストシール30のシールリップル32は中間軸部8の第2拡径部8cの外周面に接しており、両側のダストシール30,30はセンターベアリング3を外界から遮断している。
なおストッパーピース12の円筒本体部12aの外径と中間軸部8の第2拡径部8cの外径を同径とすることで、左右のダストシール30,30を共用化することができる。
【0032】
以上のようにセンターベアリング3の両側はダストシール30,30に覆われ、さらに前方はストッパーピース12のフランジ部12bがダストカバーを兼ねて覆い、後方は連結部材6の第3拡径部8d,後側円筒部9がダストカバーを兼ねて覆っており、ラビリンス隙間40,41のみが外界と連通しているので、異物や泥水等がセンターベアリング3まで浸入するのを略完全に防止することができる。
【0033】
ストッパーピース12はダストカバーを兼ね、ラビリンス隙間41は環状支持部材20の内環21を利用しているので、部品点数が少なく、構造が簡単で組付性に優れている。
ストッパーピース12は、形状が単純で円筒本体部12aとフランジ部12bとをプレス成形により一体に作成して製作コストを低減している。
【0034】
ストッパーピース12は、全体が環状支持部材20の内環21内に納まるので、軸方向の幅を最小限に抑えることができ、シール構造をコンパクトに構成することができる。
センターベアリング3の後方は連結部材6の第3拡径部8d,後側円筒部9がダストカバーを兼ねてラビリンス隙間40を構成するので、ストッパーピース12は前方でラビリンス隙間41を構成すべく1個で足り、組み付け作業も容易にできる。
【0035】
次にストッパーピースの変形例である別の実施の形態について図5に基づき説明する。
ストッパーピースが異なる以外他の部材は全て前記実施の形態と同じであるので、同じ部材は同じ符号を用いる。
【0036】
本ストッパーピース50は、推進軸連結部材6の中間軸部8の基径部8aと第1拡径部8bに嵌合する円筒本体部51と、同円筒本体部51の基径部8aに嵌合する部分から遠心方向に延出した中空円板状のフランジ部52と、同フランジ部52の外周端縁が屈曲して円筒本体部51と同心の環状の突条53とからなる。
【0037】
該ストッパーピース50の円筒本体部51が中間軸部8の基径部8aと第1拡径部8bに嵌合すると、フランジ部52が環状支持部材20の内環21の開口を前方から覆い、突条53は内環21の前端外周を覆っている。
すなわちストッパーピース50は、フランジ部52の外周端縁の突条53が内環21の開口端部を外周面側に回り込んでおり、フランジ部52と内環21の前端面との間および突条53と内環21の前端外周面との間にラビリンス隙間60が構成されている。
【0038】
部品点数が少なく簡単でコンパクトなシール構造であるが、ラビリンス隙間60の距離を長く確保することができ、シール性を向上させて、より確実に異物や泥水のセンターベアリング3への浸入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る推進軸の支持状態を示す一部断面とした部分平面図である。
【図2】センターベアリングのシール構造を示す正面図である。
【図3】図2においてIII −III 線に沿って切断した断面図である。
【図4】図1の要部拡大断面図である。
【図5】別の実施の形態のセンターベアリングのシール構造を示す要部断面図である。
【図6】従来のセンターベアリング支持構造を示す一部断面とした側面図である。
【符号の説明】
1…第1プロペラシャフト、2…第2プロペラシャフト、3…センターベアリング、5…トリポード自在継手、6…連結部材、7…インナー軸部、8…中間軸部、9…後側円筒部、10…ブーツ、12…ストッパーピース、
15…自在継手、
20…環状支持部材、21…内環、22…外環、23…ラバー、
25…ブラケット、26…リング部材、
30…ダストシール、31…シールリング、32…シールリップル。
40,41…ラビリンス隙間、
50…ストッパーピース、51…円筒本体部、52…フランジ部、53…突条、
60…ラビリンス隙間。

Claims (3)

  1. 内環と外環を弾性部材を介して接続した環状支持部材が、推進軸を軸支するセンターベアリングを、前記内環内部で保持するセンターベアリング支持構造において、
    前記推進軸に対して前記センターベアリングの位置を規制するストッパーピースが、前記推進軸に嵌合し前記センターベアリングのインナーレースを規制する円筒本体部と、同円筒本体部から遠心方向に延出したフランジ部とをプレス成形により一体に形成してなり、
    前記ストッパーピースのフランジ部の外周端面が前記環状支持部材の内環の内周面に対向し、同両対向面の間でラビリンス隙間を構成したことを特徴とするセンターベアリングのシール構造。
  2. 内環と外環を弾性部材を介して接続した環状支持部材が、推進軸を軸支するセンターベアリングを、前記内環内部で保持するセンターベアリング支持構造において、
    前記推進軸に対して前記センターベアリングの位置を規制するストッパーピースが、前記推進軸に嵌合し前記センターベアリングのインナーレースを規制する円筒本体部と、同円筒本体部から遠心方向に延出したフランジ部とをプレス成形により一体に形成してなり、
    前記ストッパーピースのフランジ部の外周端部が前記環状支持部材の内環の開口端部を外周面側に回り込んで、両端部間で前記ラビリンス隙間を構成したことを特徴とするセンターベアリング支持構造。
  3. 前記ストッパーピースのフランジ部と前記内環の一方の端部との間に前記ラビリンス隙間を構成し、
    前記推進軸が拡径部を有し、
    前記拡径部と前記内環の他方の端部との間でラビリンス隙間を構成したことを特徴とする請求項1または請求項2記載のセンターベアリングのシール構造。
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