JP3932550B2

JP3932550B2 - 演奏装置

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Publication number: JP3932550B2
Application number: JP2002216490A
Authority: JP
Inventors: 繁村松; 保敏兼子
Original assignee: Yamaha Corp
Current assignee: Yamaha Corp
Priority date: 2002-07-25
Filing date: 2002-07-25
Publication date: 2007-06-20
Anticipated expiration: 2022-07-25
Also published as: US6936757B2; JP2004061608A; US20040123718A1

Description

【０００１】
【発明の属する技術の分野】
本発明は、ソレノイドコイル等を用いてリード等の発音体を発音させる演奏装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、バレルドラムを用いることなく、ソレノイドコイル等の駆動手段を用いて、リード等の発音体に対して弾く等のように接触作用し、発音体を発音させるようにしたオルゴール型等の演奏装置が知られている。
【０００３】
例えば、本出願人により既に提案されている提案技術の演奏装置（特願２００２−０７９１３２号）の１つでは、外周部に複数の駆動爪を設けた発音体駆動部材としての回転部材と、フラットコイルを設けたアクチュエータ部としてのスイングアームとを設け、形成した磁場に上記フラットコイルを介在させ、該フラットコイルに通電すると、上記スイングアームが回動するようにし、スイングアームの自由端部により回転部材の駆動爪が駆動されて回転部材が回転すると、他の駆動爪でリードが弾かれ発音するように構成されている。
【０００４】
また、同じく提案されている提案技術の他の演奏装置では、上記発音体駆動部材としての回転部材の駆動爪を、ソレノイドコイルにより往復動作するアクチュエータ部としてのプランジャに固定的に設けた溝部に係合させて駆動し、同様にリードを弾くようにしている。あるいは、回転部材を用いることなくソレノイドコイルでプランジャを往復動作させ、プランジャに固定的に設けた駆動部でリードを直接弾くようにしている。
【０００５】
ところで、オルゴール等の演奏装置では、澄んだきれいな音で発音させるために、メカノイズの除去は重要な課題である。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記提案技術の演奏装置では、複数の要素の協働作用により発音動作がなされるため、要素間の係合、当接により多数の箇所でメカノイズが発生する。
【０００７】
例えば、回転部材等の発音体駆動部材とアクチュエータ部とが係合、当接する際の衝撃でメカノイズが発生する。また、スイングアームやプランジャ等、往復動作する往復部材がストッパに当接してその行程終了位置が規定される場合は、往復部材とストッパとの当接によるメカノイズも無視できない。さらに、リード等の発音体に対して、前回の発音動作による振動が未だ減衰しきっていないうちに次回の発音動作がなされる場合は、駆動部と発音体との間でチャタリングによるメカノイズが発生し得る。
【０００８】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、簡単な構成でメカノイズを低減させることができる演奏装置を提供することにある。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の請求項１の演奏装置は、発音可能な複数の発音体と、発音体駆動部材と、前記発音体駆動部材に設けられ、前記発音体に接触する発音動作によって該発音体を発音させることが可能な発音体駆動部と、前記発音体駆動部材と係合して該発音体駆動部材を駆動するアクチュエータ部と、前記アクチュエータ部及び前記発音体駆動部材の少なくとも一方に設けられ、前記アクチュエータ部が前記発音体駆動部材に係合する際に、その係合による衝撃を吸収するための第１の緩衝材とを有し、前記アクチュエータ部は、往復運動し、その往行程において前記発音体駆動部材を駆動するように構成され、さらに、前記アクチュエータ部と当接して該アクチュエータ部の上限位置及び下限位置をそれぞれ規定する上限、下限ストッパを有し、前記上限、下限ストッパは、前記アクチュエータ部との当接による衝撃を吸収するための第２、第３の緩衝材を含んで構成されたことを特徴とする。
【００１０】
この構成によれば、アクチュエータ部が発音体駆動部材に係合する際に、その係合による衝撃が第１の緩衝材により吸収されるので、簡単な構成でメカノイズを低減させることができる。
【００１１】
上記目的を達成するために本発明の請求項３の演奏装置は、発音可能な複数の発音体と、発音体駆動部材と、前記発音体駆動部材に設けられ、前記発音体に接触する発音動作によって該発音体を発音させることが可能な発音体駆動部と、前記発音体駆動部材と係合して該発音体駆動部材を駆動するアクチュエータ部と、前記発音体駆動部材に近接して演奏装置本体に対して固定的に設けられ、前記発音体駆動部材と係合して該発音体駆動部材の動きを抑制する第１の制動部材とを有し、前記第１の制動部材は、少なくとも前記アクチュエータ部と前記発音体駆動部材との係合前に前記発音体駆動部材と係合し、前記アクチュエータ部と前記発音体駆動部材との係合時における前記発音体駆動部材の速度を抑制するように構成され、且つ、前記発音体駆動部材が前記アクチュエータ部により駆動されて動く行程において、前記発音体駆動部が前記発音体に接触している間は、前記第１の制動部材と前記発音体駆動部材との係合が解かれるように構成されたことを特徴とする。
【００１２】
この構成によれば、制動部材を適所に設けることで、発音体駆動部材の動き速度を所望の態様で遅くすることができる。例えば、発音体駆動部材とアクチュエータ部の係合直前に発音体駆動部材の速度が遅くなるように制動部材を設ければ、両者の衝撃が緩和され、係合によるメカノイズが減少する。よって、簡単な構成でメカノイズを低減させることができる。
【００１３】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【００１４】
（第１の実施の形態）
図１は、本発明の第１の実施の形態に係る演奏装置の制御機構の構成を示すブロック図である。
【００１５】
本装置は、ＣＰＵ１１に、バス１５を通じて、第１ＲＯＭ１２、メモリ１３、ＭＩＤＩインターフェイス（ＭＩＤＩＩ／Ｆ）１４、第２ＲＯＭ１８、駆動検出部ＣＳ及びドライバ１７が接続されて構成される。ＣＰＵ１１は、本装置全体の制御を司る。第１ＲＯＭ１２は、不図示のプログラムＲＯＭ、データＲＯＭ及びワーキングＲＯＭで構成され、ＣＰＵ１１が実行する制御プログラムや各種データ等を記憶する。ＭＩＤＩＩ／Ｆ１４は、不図示のＭＩＤＩ機器等からの演奏データをＭＩＤＩ（Musical Instrument Digital Interface）信号として入力する。メモリ１３はＲＡＭ等で構成され、演奏データ等の各種データを記憶するほか、ＭＩＤＩＩ／Ｆ１４から入力された演奏データも記憶することができる。第２ＲＯＭ１８は、パラメータテーブル等を記憶している。ドライバ１７は、後述するアクチュエータＣＹＬ１を駆動制御する。
【００１６】
図２は、本実施の形態に係る演奏装置の平面図である。図３は図２のＡ−Ａ線に沿う断面図を示す。図４（ａ）はアクチュエータＣＹＬ１の平面図、同図（ｂ）は同図（ａ）のＦ１矢視図である。また、同図（ｃ）は、後述するロータリーピック６６及びその近傍を取り出して上方からみた平面図である。
【００１７】
図５（ａ）は、アクチュエータＣＹＬ１の要部の拡大図であり、特に、ロータリーピック６６近傍を示す。図５（ｂ）は、溝付き制動部材７７の外観図である。
【００１８】
本装置は例えばオルゴール装置として構成され、アクチュエータＣＹＬ１を電気的に駆動制御して、後述するリード６１を個々に弾く（乃至撥く）ように作用して発音させる（以下、「弾奏」と表現する）ように構成される。
【００１９】
図２、図３に示すように、センターブロック６３に各リード基端部６２が固定され、各リード６１が、対応する基端部６２から延設される。各リード６１は、外周方向に向かって平面的に放射状に複数（例えば２０本）延びている。
【００２０】
アクチュエータＣＹＬ１は、リード６１に対応して設けられ、図３に示すように、ソレノイドコイル６８、プランジャ７０、プランジャスプリング６９、フック部７１、上下ヨーク６４、６５等を備える。なお、上下ヨーク６４、６５は全アクチュエータＣＹＬ１に共通のものとして構成され、構成が簡単になっている。すなわち、上下ヨーク６４、６５は、いずれも円盤状に形成され、センターブロック６３にヨークスペーサ６７で適当な間隔が保たれて略平行に配設される。
【００２１】
ソレノイドコイル６８は、上下ヨーク６４、６５間に配設される。プランジャ７０は、ソレノイドコイル６８内に内装され、上下方向に往復運動可能に構成されている。また、プランジャ７０の下方にはプランジャスプリング６９が取り付けられており、プランジャスプリング６９はプランジャ７０を常に上方に付勢している。ソレノイドコイル６８に駆動電流が供給されると磁力が発生し、プランジャ７０は下方に移動する。駆動電流が遮断されると、プランジャ７０はプランジャスプリング６９による付勢力によって上昇して元の初期位置に復帰する。
【００２２】
プランジャ７０の上部にはフック部７１が取り付けられており、フック部７１とプランジャ７０との間に溝状段差部７０ａが形成される。溝状段差部７０ａ内において、フック部７１の下端部が後述する係合部７１ａを構成する。フック部７１は、ゴム等の弾性体で成る緩衝材７１ｂでそのほぼ全体が覆われており、緩衝材７１ｂは、後述するロータリーピック６６との間の緩衝機能を果たす。また、フック部７１は、図３の上方に向かって拡径するテーパ状に形成されており、プランジャ７０が上昇する際のフック部７１と後述するロータリーピック６６との摺動を円滑にする。
【００２３】
アクチュエータＣＹＬ１内の上部、下部にはそれぞれ、ゴム等の弾性体で成る上、下クッション部７２、７３が設けられる。上、下クッション部７２、７３に、往復運動するフック部７１、プランジャ７０が当接することで、これらの上限位置及び下限位置が規定される。さらに、上、下クッション部７２、７３は緩衝材としての機能を果たし、フック部７１、プランジャ７０が当接する時の衝撃を吸収してメカノイズを減少させる。
【００２４】
また、リード６１の先端部に近接してロータリーピック６６が各リード６１に対応して配設される。ロータリーピック６６の外周部には、複数（例えば４つ）の駆動爪６６ａ（６６ａ１〜６６ａ４、図５（ａ）参照）が一体に形成される。ロータリーピック６６には、四角形のカム部７６が両面に固定的に設けられると共に、カムスプリング７５が近接して設けられる。カム部７６は４つのほぼ平坦なカム面７６ａを有する（図５（ａ）参照）。ロータリーピック６６は、駆動爪６６ａが溝状段差部７０ａの係合部７１ａから駆動力を受けることで回転軸７４を中心に回転する。後述するように、カム部７６及びカムスプリング７５の作用によって、カム機構が構成され、ロータリーピック６６は、実質的に一方向（図３でいう時計方向）（所定方向）にのみ回転する。
【００２５】
カムスプリング７５は金属等の板状弾性部材で構成され、図４（ｂ）に示すように、コ字状に形成される。カムスプリング７５は、一端部が装置本体に対して固定的に取り付けられる一方、他端部がロータリーピック６６を挟むようにして、カム部７６をリード６１から離間する方向に常に付勢する。なお、カム部７６の４隅は略弧状に処理されている。
【００２６】
また、図５（ａ）に示すように、カムスプリング７５の起立した部分におけるカム部７６側の面には、弾性シート７８が貼着されている。弾性シート７８は、カムスプリング７５がカム部７６を押圧する際、カム部７６と当接し、特に、カム部７６の各カム面７６ａとの当接時の衝撃を緩和する役割を果たす。
【００２７】
また、図５（ａ）に示すように、ロータリーピック６６の下方には、溝付き制動部材７７が装置本体に対して固定的に設けられる。溝付き制動部材７７は、各ロータリーピック６６に対応して配設される。溝付き制動部材７７は、弾性を有するゴム等の材料で構成され、図５（ｂ）に示すように、溝部７７ａを有する。溝部７７ａはロータリーピック６６に対して略平行に形成され、その幅寸法は、ロータリーピック６６の駆動爪６６ａよりやや小さく設定される。溝付き制動部材７７は、ロータリーピック６６の回転に伴い駆動爪６６ａが溝部７７ａに嵌合し、駆動爪６６ａが溝部７７ａ内を摺動して移動することで、ロータリーピック６６の回転動作に対して適当な制動が作用するように構成されている。
【００２８】
また、駆動検出部ＣＳは、ロータリーピック６６に近接して設けられる。駆動検出部ＣＳは、各リード６１に対応して各リード６１の先端部の下方に配設される。駆動検出部ＣＳの構成は後述する。
【００２９】
図６は、アクチュエータＣＹＬ１の要部の動作の遷移を示す図である。アクチュエータＣＹＬ１は、例えばパルス幅変調（ＰＷＭ）によって駆動制御されてプランジャ７０が往復動作するが、駆動制御の態様はパルス幅変調に限られるものではない。
【００３０】
まず、同図（ａ）に示すように、初期位置では、溝状段差部７０ａ内にロータリーピック６６の駆動爪６６ａ１が入り込んで、駆動爪６６ａ１がプランジャ７０に係止された状態となっている。この状態では、上述した溝付き制動部材７７の溝部７７ａに駆動爪６６ａ２が嵌合している。
【００３１】
次に、ソレノイドコイル６８に通電されると、プランジャ７０（及びフック部７１）が下降を開始し、係合部７１ａが駆動爪６６ａ１に当接し（同図（ｂ））、ロータリーピック６６が時計方向に回転して、係合部７１ａに係合している駆動爪６６ａ１とは対称位置にある駆動爪６６ａ３がリード６１の先端部を弾いて発音させる（同図（ｃ）、（ｄ））。このとき、カムスプリング７５の反力によりカム部７６を介してロータリーピック６６に与えられる回転駆動力の方向が、一時的に反時計方向となるが、係合部７１ａによる時計方向への回転駆動力がそれに勝っているので、ロータリーピック６６は反時計方向に回転することがない。
【００３２】
プランジャ７０がさらに下降していくと、リード６１を弾いた駆動爪６６ａ３はリード６１から離間していき、やがて、カムスプリング７５の反力によりロータリーピック６６に与えられる回転駆動力の方向が、時計方向に戻り、ロータリーピック６６の駆動爪６６ａ４がフック部７１に当接してロータリーピック６６の回転が停止する（同図（ｅ））。プランジャ７０がさらに下降すると、やがて下クッション部７３に当接し、下死点である下降端位置、すなわち、往行程終了位置に到達する（同図（ｆ））。
【００３３】
次に、ソレノイドコイル６８への通電が遮断されると、プランジャスプリング６９による反力によってプランジャ７０は上昇を開始する。しかし、ロータリーピック６６には、カムスプリング７５によって依然として時計方向への回転駆動力が付与されているから、プランジャ７０が上昇しても、ロータリーピック６６は反時計方向に回転することがない（同図（ｇ））。
【００３４】
プランジャ７０が上昇し初期位置近傍まで戻って、ロータリーピック６６の駆動爪６６ａ４の位置に溝状段差部７０ａが来ると（同図（ｈ））、カムスプリング７５による時計方向への回転駆動力によってロータリーピック６６が時計方向に回転し、駆動爪６６ａ４が溝状段差部７０ａに再度入り込んで、プランジャ７０に係止された状態となる。それとほぼ同時に、上クッション部７２にフック部７１が当接する。これによって、元の初期状態に復帰する（同図（ｉ））。このようにして、リード６１を１回発音させるための発音動作行程が完了する。
【００３５】
ここで、発音動作行程では、一定のタイミングでメカノイズが発生する。例えば、カムスプリング７５がカム部７６のカム面７６ａと当接する時（発生点ＮＳ０、同図（ｂ））、係合部７１ａが駆動爪６６ａ１に当接する時（発生点ＮＳ１、同図（ｂ））、駆動爪６６ａ３がリード６１の先端部に接触する時（発生点ＮＳ２、同図（ｃ））、駆動爪６６ａ４がフック部７１に当接する時（発生点ＮＳ３、同図（ｅ））、プランジャ７０が下クッション部７３に当接する時（発生点ＮＳ４、（同図（ｆ））、駆動爪６６ａ４が溝状段差部７０ａに入り込んでプランジャ７０に係止される時（発生点ＮＳ５、（同図（ｉ））、及び上クッション部７２にフック部７１が当接する時（発生点ＮＳ６、（同図（ｉ））には、主として衝撃音によるメカノイズが発生する。
【００３６】
しかしながら、本実施の形態では、上述した各種緩衝材や溝付き制動部材７７等によりメカノイズの低減がなされている。
【００３７】
すなわち、まず、発生点ＮＳ０については、カムスプリング７５がカム面７６ａと当接する際、その当接の衝撃が、弾性シート７８による緩衝作用によって緩和され、当接メカノイズが低減する。発生点ＮＳ０についてはさらに、同図（ａ）に示す状態では、溝付き制動部材７７の溝部７７ａに駆動爪６６ａ２が嵌合しているので、駆動爪６６ａ２と溝部７７ａとの摺接によりロータリーピック６６の回転動作に制動作用がかかっている。そのため、カムスプリング７５とカム面７６ａとの当接時には、ロータリーピック６６の回転速度が遅くなっていることから両者の衝撃が減少し、溝付き制動部材７７を設けない場合に比し当接メカノイズが低減する。
【００３８】
また、発生点ＮＳ３については、駆動爪６６ａ４がフック部７１に当接する際の衝撃が、緩衝材７１ｂによる緩衝作用によって緩和され、当接メカノイズが低減する。発生点ＮＳ３についてはさらに、駆動爪６６ａ３がリード６１を弾いた後、駆動爪６６ａ１が溝付き制動部材７７の溝部７７ａに嵌合し、溝部７７ａとの摺接によりロータリーピック６６の回転に急激に制動がかかる（図６（ｄ）〜（ｅ））。そのため、駆動爪６６ａ４がフック部７１に当接する直前にロータリーピック６６の回転速度が遅くなることから、駆動爪６６ａ４とフック部７１との当接の衝撃が減少し、溝付き制動部材７７を設けない場合に比し当接メカノイズが低減する。
【００３９】
また、発生点ＮＳ４については、プランジャ７０が下クッション部７３に当接する時、その当接の衝撃が、下クッション部７３の弾性によって吸収され、当接メカノイズが低減する。発生点ＮＳ６についても同様に、上クッション部７２にフック部７１が当接する時の衝撃が、上クッション部７２の弾性によって吸収され、当接メカノイズが低減する。
【００４０】
また、発生点ＮＳ５については、駆動爪６６ａ４が溝状段差部７０ａに再度入り込むとき（図６（ｈ）〜（ｉ））、駆動爪６６ａ１が溝付き制動部材７７の溝部７７ａに依然として嵌合しており、駆動爪６６ａ１と溝部７７ａとの摺接によりロータリーピック６６の回転に制動がかかっている。そのため、駆動爪６６ａ４がプランジャ７０に係止される時点では、ロータリーピック６６の回転速度が遅くなっていることから、駆動爪６６ａ４とプランジャ７０との当接の衝撃が減少し、溝付き制動部材７７を設けない場合に比し当接メカノイズが低減する。
【００４１】
なお、緩衝材７１ｂを、フック部７１の下端部である係合部７１ａにまで延設させてもよい。このようにすれば、発生点ＮＳ１において、緩衝材７１ｂによる緩衝作用により、係合部７１ａが駆動爪６６ａ１に当接する際の当接メカノイズを低減させることができる。また、緩衝材７１ｂと同様の緩衝部材を駆動爪６６ａ４が係止されるプランジャ７０の部分（溝状段差部７０ａ内におけるプランジャ７０の上端部）にも設けてもよい。このようにすれば、緩衝材による緩衝作用により、発生点ＮＳ５における当接メカノイズが一層低減する。
【００４２】
なお、発生点ＮＳ１、ＮＳ６におけるメカノイズの低減は、パルス幅変調（ＰＷＭ）によるアクチュエータＣＹＬ１の駆動制御によっても実現可能である。また、駆動制御にはＰＷＭテーブルを用いることができ、駆動検出部ＣＳの検出結果に基づきＰＷＭテーブルを更新するのが好ましい。これらの技術の詳細は、本出願人により既に提出された出願（特願２００２−１６６８５６号）で開示されている。
【００４３】
ここで、駆動検出部ＣＳに関し説明しておく。図５において、ロータリーピック６６の駆動爪６６ａに付された「Ａ〜Ｄ」は、動作行程における駆動爪６６ａの位置を示す。例えば、「Ａ」はプランジャ７０が上昇している時点（図６（ｇ）にほぼ対応）、「Ｂ」はロータリーピック６６がプランジャ７０による回動駆動を待ち受けている時点（図６（ａ）〜（ｂ）にほぼ対応）、「Ｃ」は駆動爪６６ａがリード６１を弾奏し始める時点（図６（ｃ）にほぼ対応）、「Ｄ」は弾奏完了時点（図６（ｄ）〜（ｅ）にほぼ対応）における駆動爪６６ａの各位置を示している。
【００４４】
駆動検出部ＣＳは、導電体で弾性を有する第１、第２接点リーフ５２、５３が、絶縁体５１を挟んで構成される。第１接点リーフ５２は、駆動爪６６ａと接触し得る位置まで上方に延設されている。第２接点リーフ５３の上部において、第１接点リーフ５２に対向する面には、接点メイクポイントとなる接点部５３ａが形成される。
【００４５】
弾奏完了直後に、駆動爪６６ａが「Ｄ」位置から「Ａ」位置に移行するとき、駆動爪６６ａが第１接点リーフ５２を確実に押圧する。すると、第１接点リーフ５２の上部が第２接点リーフ５３側に撓み、第２接点リーフ５３の接点部５３ａに第１接点リーフ５２が当接することで接点メイクする。これにより、駆動爪６６ａによるリード６１の弾奏完了が検出される。この検出信号はＣＰＵ１１に送られる。
【００４６】
本実施の形態によれば、リード６１の発音動作行程において、ロータリーピック６６とフック部７１乃至プランジャ７０、カムスプリング７５とカム面７６ａのような、要素間の当接や係合時、あるいはプランジャ７０の往復動作時に生じる衝撃を、緩衝材７１ｂ、弾性シート７８、上、下クッション部７２、７３による緩衝作用によって吸収するようにし、さらに、溝付き制動部材７７による制動作用によりロータリーピック６６の回転速度を遅くすることでも、各要素間の当接、係合の衝撃を緩和するようにしたので、簡単な構成でメカノイズを低減させることができる。
【００４７】
なお、溝付き制動部材７７を一体のものとして構成したが、溝付き制動部材７７は、ロータリーピック６６の回転速度を抑制することで、発生点ＮＳ０、ＮＳ１、ＮＳ３のそれぞれにおいてメカノイズ低減に寄与するので、発生点ＮＳ０、ＮＳ１、ＮＳ３に対応した位置に分けて別体で設けるようにしてもよい。
【００４８】
なお、弾性シート７８の代わりに、あるいは弾性シート７８に加えて、カム部７６の各カム面７６ａに、緩衝用の部材を貼着することで、発生点ＮＳ０でのメカノイズを低減させるようにしてもよい。
【００４９】
（第２の実施の形態）
本実施の形態では、ロータリーピック６６にリードダンパを設けた点が第１の実施の形態と異なり、その他の構成は第１の実施の形態と同様である。
【００５０】
図７は、第２の実施の形態におけるロータリーピック６６の構成を示す図である。同図（ａ）は側面図、同図（ｂ）は部分外観図である。
【００５１】
リードダンパ９８は、４つの駆動爪６６ａの各々に対応して接着等により取り付けられる。リードダンパ９８は、ゴム等の弾性体で構成され、ロータリーピック６６の回転方向における駆動爪６６ａの前方において、駆動爪６６ａがリード６１を弾くのに先んじてリード６１に接触するような位置に配設される。リードダンパ９８はまた、駆動爪６６ａよりやや短く形成され、ロータリーピック６６が回転してリードダンパ９８がリード６１から離間した直後、駆動爪６６ａがリード６１を直接弾くことができるようになっている。
【００５２】
図６を用いて説明すると、駆動爪６６ａ３がリード６１の先端部に接触しようとする時（同図（ｂ）〜（ｃ））、まず、リードダンパ９８がリード６１に接触する。この際、リード６１が前回の発音動作で未だ振動していた場合は、リードダンパ９８による緩衝作用によりリード６１の振動がチャタリングなく速やかに減衰する。そして、その直後、駆動爪６６ａ３がリード６１に接触し、リード６１を直接弾くことになるが、リード６１の残留振動は減衰しているので、チャタリングが防止される。これにより、発生点ＮＳ２におけるチャタリングによるメカノイズが低減する。
【００５３】
また、リードダンパ９８は、駆動爪６６ａ４がフック部７１に当接しようとする時（図６（ｄ）〜（ｅ））においても、駆動爪６６ａ４に先んじてフック部７１に当接する。従って、発生点ＮＳ３については、上述した緩衝材７１ｂによる緩衝作用、及び溝付き制動部材７７による制動作用だけでなく、リードダンパ９８による緩衝作用によっても当接の衝撃が減少し、当接メカノイズが効果的に低減する。
【００５４】
本実施の形態によれば、リードダンパ９８が、リード６１の残留振動を速やかに減衰させるので、リード６１を弾く際のチャタリングによるメカノイズを低減させることができる。また、リードダンパ９８は、駆動爪６６ａとフック部７１との間の緩衝機能も兼ねるので、構成を複雑化することなく、メカノイズ低減効果を高めることができる。
【００５５】
なお、本実施の形態では、フック部７１の緩衝材７１ｂに加えてリードダンパ９８を設ける構成を例示したが、駆動爪６６ａとフック部７１との間の緩衝機能に関していえば、緩衝材７１ｂに代えてリードダンパ９８のみを設ける構成を採用してもよい。
【００５６】
（第３の実施の形態）
次に、図１、図６、図８、図９を用いて本発明の第３の実施の形態を説明する。
【００５７】
図８は、第３の実施の形態に係る演奏装置の平面図、図９は、同装置の側面図（同図（ａ））、同図（ａ）の左方からみた要部を示す正面図（同図（ｂ））、並びに、溝状段差部及びその近傍の部分拡大図（同図（ｃ））である。
【００５８】
本実施の形態では、制御機構の構成は第１の実施の形態と同様で基本的に図１に示す通りであるが、アクチュエータとして、アクチュエータＣＹＬ１に代えてフラットコイル型のアクチュエータＦＬＡＴ２が採用される。また、駆動検出部ＣＳに代えて、駆動検出部ＣＳ２が採用される。アクチュエータＦＬＡＴ２の駆動制御は、第１の実施の形態と同様にパルス幅変調（ＰＷＭ）により行われる。
【００５９】
図８に示すように、ベースプレート８１に対して固定された基端部８２から、発音音高の異なる複数本の発音体であるリード８３が櫛歯状に延設される。また、リード８３の先端部に近接してロータリーピック９２が各リード８３に対応して配設される。
【００６０】
アクチュエータＦＬＡＴ２は、図９（ａ）に示すように、マグネット８４、ヨーク８５、スイングアーム８８及びフラットコイル８６等で構成される。また、スイングアーム８８を駆動する力を発生させるための磁場形成手段は、ネオジ系等の希土類磁石であるマグネット８４とヨーク８５とで構成される。
【００６１】
すなわち、マグネット８４は、ベースプレート８１上に、リード８３に対応してリード８３の並び方向に配列固定される。ヨーク８５は、マグネット８４間に配設され、従って、マグネット８４とヨーク８５とが交互に配列されている。ヨーク８５は、隣接するマグネット８４間にその下端部８５ａが挟着されると共に、その上端部８５ｂが上方に延出し、これにより、マグネット８４の上方であって隣接するヨーク８５の上端部８５ｂ同士の間に磁場が形成される。
【００６２】
図９（ａ）に示すように、スイングアーム８８は、回動軸８７を中心として自由端部８８ａが上下方向に回動自在に構成される。スイングアーム８８の回動軸８７近傍にはスイングアームスプリング８９が設けられ、スプリング８９はスイングアーム８８を同図時計方向に常に付勢している。同図（ａ）ではスイングアーム８８の回動途中が示されており（スイングアーム８８（Ｐ１））、初期状態では、スイングアーム８８は、スプリング８９による付勢力により上限ストッパ９０に当接している（スイングアーム８８（Ｐ０）で示す位置）。下限ストッパ９５はスイングアーム８８の回動の終了位置を規定する。各スイングアーム８８間には、横ガイド９４が配設され（図８）、横ガイド９４によってスイングアーム８８の横方向（並び方向）への移動が規制される。
【００６３】
フラットコイル８６は板状に形成され、各スイングアーム８８に取り付けられる。フラットコイル８６は、上下方向及びリード８３の長手方向の双方に対して略平行に設けられる。フラットコイル８６は、ヨーク８５の上端部８５ｂ間に形成された磁場に介在し、フラットコイル８６に通電したとき、フレミングの左手の法則により、対応するスイングアーム８８が下方に回動するようになっている。なお、各フラットコイル８６への通電を解除すると、対応するスイングアーム８８は自重により元の初期位置に復帰する。
【００６４】
第１の実施の形態と同様に、ロータリーピック９２の外周部には複数（例えば４つ）の駆動爪９２ａが一体に形成され、四角形のカム部９６が両面に固定的に設けられると共に、カムスプリング９３が近接して設けられる。スイングアーム８８にはまた、第１の実施の形態における溝状段差部７０ａと同様の溝状段差部８８ｂが自由端部８８ａに一体に形成される。図９（ｃ）に示すように、溝状段差部８８ｂは第１の実施の形態の溝状段差部７０ａと同様の機能を果たす部分であり、フック部７１の係合部７１ａに相当する係合部８８ｃを有する。
【００６５】
第１の実施の形態と同様に、ロータリーピック９２は、駆動爪９２ａが溝状段差部８８ｂの係合部８８ｃから駆動力を受けることで回転軸９１を中心に回転する。また、カム部９６及びカムスプリング９３の作用によって、ロータリーピック９２は、実質的に一方向（図９（ａ）でいう時計方向）にのみ回転する。
【００６６】
かかる構成において、第１の実施の形態におけるプランジャ７０の往復動作に代わってスイングアーム８８が上下方向に回動するが、溝状段差部８８ｂとロータリーピック９２との作用上の関係は、第１の実施の形態における溝状段差部７０ａとロータリーピック６６との関係と同様であり、動作の遷移も図６に示すものと同様となる。
【００６７】
また、図９（ａ）に示すように、駆動検出部ＣＳ２が、ロータリーピック９２に近接して設けられる。駆動検出部ＣＳ２は、各リード８３に対応して各リード８３の先端部の下方に配設される。駆動検出部ＣＳ２の構成、動作は、第１の実施の形態における駆動検出部ＣＳと同様である。
【００６８】
ここで、上限ストッパ９０の下面に貼着されたクッション部９０ａ、下限ストッパ９５はそれぞれ、第１の実施の形態における上、下クッション部７２、７３と同様に構成され、緩衝材としての機能を果たし、スイングアーム８８が当接する際の衝撃を吸収してメカノイズを減少させる。
【００６９】
また、図９（ａ）に示すように、ロータリーピック９２の下方には、溝付き制動部材７７と同様に構成される溝付き制動部材９９が装置本体に対して固定的に設けられる。溝付き制動部材９９は、例えば全ロータリーピック９２に対して共通に設けられ、各ロータリーピック９２に対応して溝部７７ａに相当する溝部（図示せず）を有する。溝付き制動部材９９の機能は、溝付き制動部材７７と同様で、ロータリーピック９２の回転動作に制動をかける。従って、カムスプリング９３とカム部９６のカム面９６ａとの当接メカノイズ、及びロータリーピック９２の駆動爪９２ａとスイングアーム８８との当接メカノイズを低減させる機能を果たす。
【００７０】
さらに、図９（ａ）、（ｃ）に示すように、スイングアーム８８の先端部には、ゴム等の弾性体で成る緩衝材９７が取り付けられている。緩衝材９７は、第１の実施の形態における緩衝材７１ｂと同様の機能を果たし、ロータリーピック９２の駆動爪９２ａとスイングアーム８８との当接メカノイズを低減させる。
【００７１】
また、カムスプリング９３のカム部９６側の面には、弾性シート７８と同様の構成で同様の機能を果たす弾性シートが貼着される（図示せず）。
【００７２】
本実施の形態によれば、メカノイズ低減に関し、第１の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【００７３】
なお、図７に示すリードダンパ９８は、第３の実施の形態においても適用可能で、第２の実施の形態と同様の効果が期待できる。
【００７４】
なお、第１〜第３の実施の形態では、発音体駆動部として駆動爪を有するロータリーピックを発音体駆動部材として例示したが、これに限るものでない。例えば、リード等の発音体に接触する発音動作によって発音させる発音体駆動部を有するロータリーピック等の発音体駆動部材を、アクチュエータによって駆動するような構成であれば、発音体駆動部材及びアクチュエータ間の係合メカノイズや、発音体のチャタリングは生じ得るから、このような構成における要素間に緩衝材を設けたり、発音体駆動部材の移動速度を抑制する制動部材を設けたりして、個々のメカノイズを逐一低減させるようにしてもよい。
【００７５】
なお、第１〜第３の実施の形態において、発音体としてリードを例示したが、これに限定されるものではなく、物理的、磁気的問わず、何らかの作用を及ぼすことで、アコースティックな発音をするもの、例えば、機械的に励振されて発音する「弦」や「音板」のような発音体であっても本発明を適用可能である。例えば、金属製や木製等の板状発音体も含まれる。
【００７６】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の請求項１に係る演奏装置によれば、アクチュエータ部と発音体駆動部材との係合による衝撃を吸収して、簡単な構成でメカノイズを低減させることができる。
【００７７】
本発明の請求項３に係る演奏装置によれば、発音体駆動部材の動き速度を所望の態様で遅くすることで、要素間の係合の衝撃を緩和して、簡単な構成でメカノイズを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の第１の実施の形態に係る演奏装置の制御機構の構成を示すブロック図である。
【図２】本演奏装置の平面図である。
【図３】図２のＡ−Ａ線に沿う断面図である。
【図４】アクチュエータの平面図（同図（ａ））、同図（ａ）のＦ１矢視図（同図（ｂ））、並びに、ロータリーピック及びその近傍を取り出して上方からみた平面図（同図（ｃ））である。
【図５】アクチュエータの要部の拡大図（同図（ａ））及び溝付き制動部材の外観図（同図（ｂ））である。
【図６】アクチュエータの要部の動作の遷移を示す図である。
【図７】本発明の第２の実施の形態におけるロータリーピックの構成を示す図である。
【図８】本発明の第３の実施の形態に係る演奏装置の平面図である。
【図９】同演奏装置の側面図（同図（ａ））、同図（ａ）の左方からみた要部を示す正面図（同図（ｂ））、並びに、溝状段差部及びその近傍の部分拡大図（同図（ｃ））である。
【符号の説明】
１１ＣＰＵ、６１、８３リード（発音体）、６６、９２ロータリーピック（発音体駆動部材、回転部材）、６６ａ、９２ａ駆動爪（発音体駆動部）、７０プランジャ（アクチュエータ部の一部）、７１フック部（アクチュエータ部の一部）、７１ｂ、９７緩衝材（第１の緩衝材）、７２上クッション部（第２の緩衝材）、７３下クッション部（第３の緩衝材）、７５、９３カムスプリング（押圧部材）、７６、９６カム部、７６ａ、９６ａカム面、７７、９９溝付き制動部材（第１の制動部材、第２の制動部材）、７８弾性シート（第５の緩衝材）、８８スイングアーム（アクチュエータ部）、９０上限ストッパ、９０ａクッション部（第２の緩衝材）、９５下限ストッパ（第３の緩衝材）、９８リードダンパ（第４の緩衝材）、ＣＹＬ１、ＦＬＡＴ２アクチュエータ

Claims

発音可能な複数の発音体と、
発音体駆動部材と、
前記発音体駆動部材に設けられ、前記発音体に接触する発音動作によって該発音体を発音させることが可能な発音体駆動部と、
前記発音体駆動部材と係合して該発音体駆動部材を駆動するアクチュエータ部と、
前記アクチュエータ部及び前記発音体駆動部材の少なくとも一方に設けられ、前記アクチュエータ部が前記発音体駆動部材に係合する際に、その係合による衝撃を吸収するための第１の緩衝材とを有し、
前記アクチュエータ部は、往復運動し、その往行程において前記発音体駆動部材を駆動するように構成され、さらに、前記アクチュエータ部と当接して該アクチュエータ部の上限位置及び下限位置をそれぞれ規定する上限、下限ストッパを有し、前記上限、下限ストッパは、前記アクチュエータ部との当接による衝撃を吸収するための第２、第３の緩衝材を含んで構成されたことを特徴とする演奏装置。
前記第１の緩衝材は前記アクチュエータ部にのみ設けられ、さらに、前記発音体駆動部材の発音体駆動部に近接して、前記発音体駆動部が前記発音体に接触する直前に該発音体と接触することで該発音体の残留振動を強制減衰させる第４の緩衝材が設けられ、前記第４の緩衝材はさらに、前記アクチュエータ部が前記発音体駆動部材に係合する際に前記アクチュエータ部と当接して該アクチュエータ部と前記発音体駆動部材との係合による衝撃を吸収するように構成されたことを特徴とする請求項１記載の演奏装置。
発音可能な複数の発音体と、
発音体駆動部材と、
前記発音体駆動部材に設けられ、前記発音体に接触する発音動作によって該発音体を発音させることが可能な発音体駆動部と、
前記発音体駆動部材と係合して該発音体駆動部材を駆動するアクチュエータ部と、
前記発音体駆動部材に近接して演奏装置本体に対して固定的に設けられ、前記発音体駆動部材と係合して該発音体駆動部材の動きを抑制する第１の制動部材とを有し、
前記第１の制動部材は、少なくとも前記アクチュエータ部と前記発音体駆動部材との係合前に前記発音体駆動部材と係合し、前記アクチュエータ部と前記発音体駆動部材との係合時における前記発音体駆動部材の速度を抑制するように構成され、且つ、前記発音体駆動部材が前記アクチュエータ部により駆動されて動く行程において、前記発音体駆動部が前記発音体に接触している間は、前記第１の制動部材と前記発音体駆動部材との係合が解かれるように構成されたことを特徴とする演奏装置。
前記発音体駆動部材は、駆動されることで回転する回転部材として構成され、前記発音体駆動部材の発音体駆動部は、前記発音体駆動部材の外周部に設けられ、前記アクチュエータ部は、往復運動し、その往行程において前記発音体駆動部材に係合して該発音体駆動部材を所定方向に回転させるように構成され、複数のカム面を有し前記発音体駆動部材に対して固定的に設けられたカム部と前記カム部を常に押圧する押圧部材とで構成され、前記発音体駆動部材の回転動作に連動して前記押圧部材が前記カム部のカム面に離接することで、発音動作直後の発音体駆動部材を前記所定方向へのみ付勢するカム機構をさらに有し、前記カム機構における前記押圧部材と前記カム部のカム面との少なくとも一方に、両者が当接する際の衝撃を吸収するための第５の緩衝材が設けられたことを特徴とする請求項１〜３のいずれか１項に記載の演奏装置。
前記発音体駆動部材に近接して設けられ、少なくとも前記カム機構における前記押圧部材と前記カム部のカム面との当接前に前記発音体駆動部材と係合して、前記押圧部材と前記カム部のカム面との当接時における前記発音体駆動部材の速度を抑制する第２の制動部材が設けられたことを特徴とする請求項４記載の演奏装置。