JP4168832B2 - 演奏装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術の分野】
本発明は、振動発生部の振動を響板に伝達して音響を得る演奏装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、オルゴール装置のように、リード等の振動発生体を振動させて、その振動を響板に伝えて音響を得るようにした演奏装置が知られている。また、下記特許文献1に例示されるように、発音体を収容した本体の上蓋の開き角度を可変にすることで、発音体が発する音の音量を段階的に調整可能に構成した演奏装置も知られている。さらに、各振動発生体と響板との間に両者の接触面積を手動で変更可能な調節手段を設け、音量等を調節可能に構成した演奏装置も知られている。
【0003】
【特許文献1】
特開平09−160541号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1では、音量を段階的に調整できるだけであり、また、接触面積を変更するようにした上記従来の演奏装置では、振動発生体と響板との接触面積を変更するのみであるので、音量変更等の発音特性の単純な変更しか行えず、音色や音量のより細かな可変制御等による多様な発音特性を得る上で、改善の余地があった。
【0005】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、発音特性を多様に変化させることができる演奏装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の請求項1の演奏装置は、固定部材と、前記固定部材に固定された基端部及び該基端部から延設され振動する複数のリードを有して構成される振動発生部と、複数の響板と、前記複数の各響板に対応し、対応する響板と前記固定部材との間に介装され、前記対応する響板と前記固定部材とを連結状態にするように動作して、前記振動発生部の前記リードの振動を前記固定部材を介して前記対応する響板に伝達することが可能な複数の振動伝達手段と、前記複数の振動伝達手段に動作指示を与える指示手段とを有し、前記指示手段により動作指示が与えられた振動伝達手段により前記固定部材に対して連結状態となっている響板に、前記振動発生部の前記リードの振動が伝達され、前記響板が振動することで、音響が得られるように構成されたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、動作指示が与えられた振動伝達手段が、複数の響板のうち、対応する響板と固定部材とを連結状態にするように動作し、連結状態となっている響板に前記振動発生部のリードの振動が伝達され、前記響板が振動することで、音響が得られる。よって、発音特性を多様に変化させることができる。
上記目的を達成するために本発明の請求項8の演奏装置は、振動を発生させる振動発生部と、複数の響板と、前記複数の各響板に対応し、対応する響板と前記振動発生部との間に介装され、前記対応する響板と前記振動発生部とを連結状態にするように動作して、前記振動発生部の振動を前記対応する響板に伝達することが可能な複数の振動伝達手段と、前記複数の振動伝達手段に動作指示を与える指示手段とを有し、前記指示手段により動作指示が与えられた振動伝達手段により前記振動発生部に対して連結状態となっている響板に、前記振動発生部の振動が伝達され、前記響板が振動することで、音響が得られるように構成され、前記指示手段は、前記振動発生部の振動発生継続中に、前記複数の各振動伝達手段に対し、対応する響板と前記振動発生部との連結状態を時間的に変化させることで変調効果が生じるように、前記動作指示を与えることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る演奏装置の制御機構の構成を示すブロック図である。
【0010】
本装置は、CPU11に、バス15を通じて、第1ROM12、メモリ13、MIDIインターフェイス(MIDII/F)14、第2ROM18及びドライバ(PWM)17が接続されて構成される。CPU11は、本装置全体の制御を司る。第1ROM12は、不図示のプログラムROM、データROM及びワーキングROMで構成され、CPU11が実行する制御プログラムや各種データ等を記憶する。MIDII/F14は、不図示のMIDI機器等からの演奏データをMIDI(Musical Instrument Digital Interface)信号として入力する。メモリ13はRAM等で構成され、演奏データを記憶するほか、MIDII/F14から入力された演奏データも記憶することができる。第2ROM18は、パラメータテーブル等を記憶している。ドライバ17は、後述するアクチュエータCYL1及び振動伝達機構部EMを駆動制御する。
【0011】
図2は、本実施の形態に係る演奏装置の平面図、図3は、図2のA−A線に沿う断面図である。なお、図2では、後述する共鳴プレートPLA、PLB、PLCの図示が省略されている。図4(c)は図2のA−A線に沿う部分断面図であり、特に「振動発生部」を示している。図4(b)はアクチュエータCYL1上部の平面図、図4(a)は同図(b)のF1矢視図である。
【0012】
図2、図4(c)に示すように、複数(例えば20本)のリード61の各々の基端部62は、センターブロック63に固定され、各リード61は基端部62から延設される。各リード61は、外周方向に向かって平面的に放射状に延びている。
【0013】
複数のアクチュエータCYL1は、リード61に対応して設けられ、図4(c)に示すように、ソレノイドコイル68、プランジャ70、プランジャスプリング69、フック部71、上下ヨーク64、65等を備える。なお、上下ヨーク64、65は全アクチュエータCYL1に共通のものとして構成され。構成が簡単になっている。すなわち、上下ヨーク64、65は、いずれも円盤状に形成され、センターブロック63にヨークスペーサ67で適当な間隔が保たれて略平行に配設される。なお、本実施の形態では、アクチュエータCYL1の配列は、各リード61の長さの違いに起因して渦巻き状を成すが、基端部62の位置を個々に異ならせて、アクチュエータCYL1が円形状に配列されるように構成してもよい。
【0014】
ソレノイドコイル68は、上下ヨーク64、65間に配設される。プランジャ70は、ソレノイドコイル68内に内装され、上下方向に往復運動可能に構成されている。また、プランジャ70の下方にはプランジャスプリング69が取り付けられており、プランジャスプリング69はプランジャ70を常に上方に付勢している。ソレノイドコイル68に駆動電流が供給されると磁力が発生し、プランジャ70は下方に移動する。駆動電流が遮断されると、プランジャ70はプランジャスプリング69による付勢力によって上昇して元の初期位置に復帰する。
【0015】
プランジャ70の上部にはフック部71が取り付けられており、フック部71とプランジャ70との間に溝状段差部70aが形成される。溝状段差部70a内において、フック部71の下端部が後述する係合部71aを構成する。プランジャ70が収容されたシリンダ77の上部、下部にはそれぞれ、上、下クッション部72、73が設けられ、これらによりプランジャ70の上下運動の衝撃が吸収される。
【0016】
リード61の先端部に近接して、ロータリーピック66が各リード61に対応して配設される。ロータリーピック66の外周部には、複数(例えば4つ)の駆動爪66a(66a1〜66a4(図5(a)参照))が一体に形成される。ただし、ロータリーピック66には、ラチェットが設けられる代わりに、四角形のカム部76が両面に固定的に設けられると共に、リード61の方向においてカムスプリング75が近接して設けられる。ロータリーピック66は、駆動爪66aが溝状段差部70aの係合部71aから駆動力を受けることで回転軸74を中心に回転する。後述するように、カム部76及びカムスプリング75の作用によって、ロータリーピック66は、実質的に一方向(図4(c)における時計方向)にのみ回転する。
【0017】
カムスプリング75は金属等の板状弾性部材で構成され、図4(a)に示すように、コ字状に形成される。カムスプリング75の一端部が装置本体に対して固定的に取り付けられ、カムスプリング75の中間部から他端にかけての部分は2つの分離した部位を有し、これらの部位がロータリーピック66を挟むようにして、カム部76を常にリード61から離間する方向に付勢する。カム部76の4隅は略弧状に形成されている。
【0018】
リード61、アクチュエータCYL1、ロータリーピック66及びカムスプリング75等により、リード61を振動させるための上記「振動発生部」が構成される。
【0019】
図5は、アクチュエータCYL1の要部の動作の遷移を示す図である。まず、同図(a)に示すように、初期位置では、溝状段差部70a内にロータリーピック66の駆動爪66a1が入り込んでいる。次に、ソレノイドコイル68に通電されると、プランジャ70(及びフック部71)が下降を開始し、係合部71aが駆動爪66a1に当接し(同図(b))、ロータリーピック66が時計方向に回転して係合部71aに係合している駆動爪66a1とは対称位置にある駆動爪66a3がリード61の先端部を弾いて発音させる(同図(c))。このとき、カムスプリング75の反力によりカム部76を介してロータリーピック66に与えられる回転駆動力の方向が、一時的に反時計方向となるが、係合部71aによる時計方向への回転駆動力がそれに勝っているので、ロータリーピック66は反時計方向に回転することがない。
【0020】
プランジャ70がさらに下降していくと、リード61を弾いた駆動爪66a3はリード61から離間していき、やがて、カムスプリング75の反力によりロータリーピック66に与えられる回転駆動力の方向が、時計方向に戻る(同図(d))。そして、プランジャ70は下死点である下降端位置に到達する(同図(e))。
【0021】
次に、ソレノイドコイル68への通電が遮断されると、プランジャスプリング69による反力によってプランジャ70は上昇を開始する。しかし、ロータリーピック66には、カムスプリング75によって依然として時計方向への回転駆動力が付与されているから、プランジャ70が上昇しても、ロータリーピック66は反時計方向に回転することがない(同図(f))。
【0022】
プランジャ70が上昇し初期位置近傍まで戻って、ロータリーピック66の駆動爪66a4の位置に溝状段差部70aが来ると(同図(g))、カムスプリング75による時計方向への回転駆動力によってロータリーピック66が時計方向に回転し、駆動爪66a4が溝状段差部70aに入り込んで、元の初期状態に復帰する(同図(h))。このようにして、リード61を1回発音させるための発音動作行程が完了する。
【0023】
なお、上記図5の説明では、ロータリーピック66の特定の回転位置を例にとり、一部の駆動爪66aの動作についてのみ説明したが、各駆動爪66a1〜66a4は順番に同様の動作をする。
【0024】
上記のように、各リード61は、駆動爪66aにより弾かれることで任意のタイミングで独立して振動し、それによって発音するが、個々のリード61の振動だけでは大きく良好な音が得られない。そこで、次に説明するように、共鳴プレートPLA、PLB、PLCに、リード61の振動を振動伝達機構部EMを介して伝達することで拡声し、音響を得るようにしている。
【0025】
図3に示すように、センターブロック63の下方には、上方から順に、円盤状の共鳴プレートPLA、PLB、PLCが積層配置されている。センターブロック63は、プレートセンターシャフト20と固定関係になっており、各共鳴プレートPLA、B、Cは、それらの中心部にて、プレートセンターシャフト20に固定されたプレートホルダ25により保持されている。プレートホルダ25は、硬質ゴムまたはエラストマ等で構成され、プレートセンターシャフト20と共鳴プレートPLA、PLB、PLCとの間の振動伝達が絶縁されている。
【0026】
各共鳴プレートPLA、B、Cは、例えば金属で構成され、それらの厚みは、PLA>PLB>PLCのように設定されている。通常、共鳴プレートの厚みが厚いほど振動しにくくなるので、振幅も小さくなって、発音音量が小さい。従って、発音音量は、PLA<PLB<PLCとなっている。
【0027】
また、センターブロック63の下面63aには、振動伝達機構部EMA、EMB、EMCが共鳴プレートPLA、PLB、PLCに対応して設けられる。各振動伝達機構部EMA、EMB、EMCは、同様の構成のものがプレートセンターシャフト20を挟んだ対称位置に例えば2つずつ設けられる。例えば、振動伝達機構部EMC及びそれに関連する要素を例に説明すると、共鳴プレートPLA、PLBにはそれぞれ穴PLAa、PLBaが設けられ、振動伝達機構部EMCは、これらの穴PLAa、PLBaを貫通して下方に垂下している。なお、共鳴プレートPLA、PLBについても共鳴プレートPLCと基本的に同様に構成されるが、振動伝達機構部EMBが貫通するための穴は、共鳴プレートPLAにだけ設けられ、最上方の振動伝達機構部EMAはその端部が最上方の共鳴プレートPLAの上方に位置するので、貫通用の穴は不要であり設けられていない。
【0028】
図6は、本演奏装置の要部を示す外観斜視図であり、特に振動伝達機構部EMC及びその近傍を示している。振動伝達機構部EMCは、馬蹄型でコ字状に形成された軟鉄等の磁性体でなるヨーク(以下、「クラッチヨーク」と称する)21と、クラッチヨーク21に巻装されたソレノイドコイル(以下、「クラッチコイル」と称する)22とから構成される。クラッチヨーク21の上端部21bがセンターブロック63の下面63aに固着される。
【0029】
一方、共鳴プレートPLCには、軟鉄等の磁性体でなる矩形で板状のヨーク(以下、「ショートヨーク」と称する)24(磁性部)が取り付けられ、ショートヨーク24の上部には緩衝プレート23が貼着されている。クラッチコイル22への非通電時においては、クラッチヨーク21の下端部21aは、緩衝プレート23に対向し、近接しており、両者の隙間は約0.3〜0.5mm程度に設定されている。
【0030】
CPU11は、MIDII/F14から入力する等によってメモリ13に記憶されている演奏データに基づいて、その音高信号に対応したアクチュエータCYL1のソレノイドコイル68に対して駆動電流を送るよう制御する。また、演奏データには、振動伝達機構部EMCを駆動するための指示コマンド(所定のコマンド)が、例えばイベントの1つとして含まれており、この指示コマンドに応じて振動伝達機構部EMA〜EMCのいずれかに選択的に動作指示を与える。すなわち、振動伝達機構部EMA〜EMCのいずれかのクラッチコイルに駆動電流を供給する。本実施の形態では、曲毎に振動伝達機構部EMA〜EMCのいずれか1つが動作する。
【0031】
かかる構成において、例えば、振動伝達機構部EMCのクラッチコイル22に通電されると、クラッチヨーク21に磁力が発生し、ショートヨーク24を吸着する。このとき、緩衝プレート23により、クラッチヨーク21とショートヨーク24との間の衝撃が吸収されると共に、衝突音が低減される。両ヨーク21、ヨーク24の吸着によって、振動伝達機構部EMCを介して、センターブロック63と共鳴プレートPLCとが連結状態となると、振動が効率よく伝達される振動伝達状態となる。従って、リード61の振動がセンターブロック63、振動伝達機構部EMC、及びショートヨーク24を介して、共鳴プレートPLCへと伝達され、共鳴プレートPLCが振動し、拡声された良好な音響が得られる。
【0032】
その後、クラッチコイル22への通電が解除されると、クラッチヨーク21がショートヨーク24から離間していく。その際、両者間に緩衝プレート23が介在するので、両者の強固な吸着が防止されており、両者が速やかに離間するので、吸着、離間動作の応答特性が良好になっている。
【0033】
より詳しくは、クラッチヨーク21とショートヨーク24とが吸着状態になると、緩衝プレート23、ショートヨーク24及び共鳴プレートPLCが可動部として共に上下動する。その際、プレートホルダ25が、これら可動部の微少変位を吸収する。
【0034】
なお、他の振動伝達機構部EMA、EMB及びこれらの関連要素についても同様に構成され、振動伝達機構部EMA、EMBは、動作指示により動作して、それぞれ対応する共鳴プレートPLA、PLBに対して連結状態となったとき、リード61の振動を伝達する。
【0035】
本実施の形態によれば、共鳴プレートPLと振動伝達機構部EMとを複数組(3組)設け、演奏データに基づき選択した共鳴プレートPLを振動伝達機構部EMを動作させてセンターブロック63に対して連結状態、すなわち振動伝達可能な状態となるようにしたので、共鳴プレートPLを選択的に共鳴させて良好な音響を得ると共に、曲毎に音量を少なくとも3段階に異ならせることができる。
【0036】
なお、本実施の形態では、共鳴プレートPLA、PLB、PLCは厚みのみが異なり、従って、発音音量が異なるものとしたが、各共鳴プレートPLは、厚みだけでなく、大きさ、形状、材質、枚数等、各種要素を異ならせることで、多様な音色や音量の違いを生じさせることが可能である。例えば、一般に、共鳴プレートPLの面積が大きいほど、あるいは厚みが薄いほど、音量が増加する。さらには、音量は、振動部材の音速値によっても異なる。ヤング率をE、ポアソン比をρとすると、音速値は、E/ρが大きいほど大きく、音速値の増加に応じて音量も増加する。加えて、振動伝達機構部EMとショートヨーク24との関係において、両者間の接触面積や当接圧力、さらには、振動伝達機構部EMの配置位置も音量や音色に関与する。従って、これらの事項を総合的に考慮して、共鳴プレートPLの材質、形状、枚数、及び振動伝達機構部EMの構成、配置等を設計すれば、音量調節だけでなく、音色制御も含め、発音特性の多様な変化を実現することができ、応用範囲も広い。
【0037】
なお、振動伝達機構部EMの駆動は曲毎に行うのではなく、イベントデータに従って、各音符単位等、曲内でリアルタイムに行うようにしてもよい。また、例えばサイン波に応じた駆動電流を振動伝達機構部EMに与えることで、センターブロック63と共鳴プレートPLとの連結状態を時間的に変化させ、トレモロやビブラート等の変調効果を得るようにしてもよい。
【0038】
なお、本実施の形態では、演奏データに基づき、動作する振動伝達機構部EMを1つ、すなわち、共鳴する共鳴プレートPLを1つとしたが、同時に複数の振動伝達機構部EMを動作させ、対応する複数の共鳴プレートPLを同時に共鳴させるようにしてもよい。また、振動伝達機構部EMによる吸着力に強弱を付けることで、曲毎に発音音量を変える等のように、音量調節を自由に行うようにしてもよい。このような制御によれば、発音特性の一層多様な変化を実現することができる。
【0039】
なお、本実施の形態では、振動伝達機構部EMは演奏データ中の指示コマンドに基づいて動作するとしたが、これに限るものでなく、例えば、操作子を設け、この操作子をユーザが操作することで、所望の振動伝達機構部EMに動作指示が与えられるようにしてもよい。
【0040】
なお、緩衝プレート23は、ショートヨーク24の上部に設けたが、クラッチヨーク21の下端部21aまたは双方に設けるようにしてもよい。また、本実施の形態では、振動伝達機構部EMはセンターブロック63側に設け、ショートヨーク24は共鳴プレートPL側に設けられたが、これとは逆に、振動伝達機構部EMを各共鳴プレートPL側に、ショートヨーク24をセンターブロック63側に、それぞれ設けるようにしてもよい。
【0041】
なお、センターブロック63と共鳴プレートPLとを連結状態にする機構は、振動伝達機構部EMのような磁気吸着機構に限定されず、例えば、ソレノイドコイルでプランジャを共鳴プレートPL側に当接させる等のように、振動伝達が可能な状態で連結状態を確保することができる機構であればよい。
【0042】
なお、上記演奏データは、ROM等から読み出されたものに限定されず、例えば、鍵盤やパッド等の入力操作部の操作によって発生したデータであってもよい。
【0043】
なお、本実施の形態では、クラッチコイル22への通電が解除され、クラッチヨーク21がショートヨーク24から離間した後は、共鳴プレートPLの振動は自然減衰するようにしたが、次に例示するように、ダンパ機構を設けて強制的に減衰させように構成してもよい。
【0044】
図7は、上述した第1の実施の形態の演奏装置にダンパ機構を追加して設けた変形に係る演奏装置の構成を例示する部分模式図である。同図では、共鳴プレートPLCに対するダンパ機構を設けた場合を例示するが、その他の共鳴プレートPLについても同様に適用可能である。
【0045】
同図に示すように、センターブロック63の下面63aには、振動伝達機構部EMCに加えて、ダンパ機構部DAが例えば2つ設けられる。ダンパ機構部DAはいずれも、ソレノイドコイル31と、不図示のプランジャに連結された棒状部材32と、棒状部材32の下端部に取り付けられたフェルト製のプッシュ部材33とで構成される。プッシュ部材33は共鳴プレートPLCに近接している。ソレノイドコイル31へは、例えば、演奏データに含まれるエンドデータに応じて駆動電流が供給される。
【0046】
ソレノイドコイル31に駆動電流が供給されると、棒状部材32が下方へ突出動作し、プッシュ部材33が共鳴プレートPLCに当接し、共鳴プレートPLCの振動が急速に減衰する。例えば、曲間において共鳴プレートPLの振動を強制減衰すれば、次の曲に対し不要な音が残存することを回避することができる。また、演奏データ中のイベントデータに応じてプッシュ部材33を動作させてもよく、多彩な楽音制御が可能である。
【0047】
(第2の実施の形態)
次に、図1、図8〜図10を用いて本発明の第2の実施の形態を説明する。
【0048】
図8は、第2の実施の形態に係る演奏装置の断面図である。本装置は、筐体80内にスイングアームユニットSAUが配設されて成る。
【0049】
本実施の形態では、制御機構の構成は第1の実施の形態と同様であるが、アクチュエータとして、アクチュエータCYL1に代えてフラットコイル型のアクチュエータFLAT2が採用される。
【0050】
図9は、スイングアームユニットSAUの平面図である。図10は、スイングアームユニットSAUの断面図(同図(a))、同図(a)の左方からみた要部を示す正面図(同図(b))、並びに、溝状段差部及びその近傍の部分拡大図(同図(c))である。
【0051】
図9に示すように、ベースプレート81に対して固定された基端部82から、発音音高の異なる複数本の発音体であるリード83が櫛歯状に延設される。また、リード83の先端部に近接してロータリーピック92が各リード83に対応して配設される。
【0052】
アクチュエータFLAT2は、図10(a)に示すように、マグネット84、ヨーク85、スイングアーム88及びフラットコイル86等で構成される。ネオジ系等の希土類磁石であるマグネット84とヨーク85とで、磁場形成手段が構成される。
【0053】
すなわち、マグネット84は、ベースプレート81上に、リード83に対応してリード83の並び方向に配列固定される。ヨーク85は、マグネット84間に配設され、従って、マグネット84とヨーク85とが交互に配列されている。ヨーク85は、隣接するマグネット84間にその下端部85aが挟着されると共に、その上端部85bが上方に延出し、これにより、マグネット84の上方であって隣接するヨーク85の上端部85b同士の間に磁場が形成される。
【0054】
図10(a)に示すように、スイングアーム88は、回動軸87を中心として自由端部88aが上下方向に回動自在に構成される。スイングアーム88の回動軸87近傍にはスイングアームスプリング89が設けられ、スプリング89はスイングアーム88を同図時計方向に常に付勢している。同図(a)ではスイングアーム88の回動途中が示されており(スイングアーム88(P1))、初期状態では、スイングアーム88は、スプリング89による付勢力により上限ストッパ90に当接している(スイングアーム88(P0)で示す位置)。下限ストッパ95はスイングアーム88の回動の終了位置を規定する。各スイングアーム88間には、横ガイド94が配設され(図9)、横ガイド94によってスイングアーム88の横方向(並び方向)への移動が規制される。
【0055】
フラットコイル86は板状に形成され、各スイングアーム88に取り付けられる。フラットコイル86は、上下方向及びリード83の長手方向の双方に対して略平行に設けられる。フラットコイル86は、ヨーク85の上端部85b間に形成された磁場に介在し、フラットコイル86に通電されたとき、フレミングの左手の法則により、対応するスイングアーム88が下方に回動するようになっている。各フラットコイル86への通電が解除されると、対応するスイングアーム88は、スプリング89の付勢力により元の初期位置に復帰する。
【0056】
第1の実施の形態と同様に、ロータリーピック92の外周部には複数(例えば4つ)の駆動爪92aが一体に形成され、四角形のカム部96が両面に固定的に設けられると共に、カムスプリング93が近接して設けられる。スイングアーム88にはまた、第1の実施の形態における溝状段差部70aと同様の溝状段差部88bが自由端部88aに一体に形成される。図10(c)に示すように、溝状段差部88bは第1の実施の形態の溝状段差部70aと同様の機能を果たす部分であり、フック部71の係合部71aに相当する係合部88cを有する。
【0057】
第1の実施の形態と同様に、ロータリーピック92は、駆動爪92aが溝状段差部88bの係合部88cから駆動力を受けることで回転軸91を中心に回転する。また、カム部96及びカムスプリング93の作用によって、ロータリーピック92は、実質的に一方向(図10(a)における時計方向)にのみ回転する。
【0058】
かかる構成において、第1の実施の形態におけるプランジャ70の往復動作に代わってスイングアーム88が上下方向に回動するが、溝状段差部88bとロータリーピック92との作用上の関係は、第1の実施の形態における溝状段差部70aとロータリーピック66との関係と同様であり、動作の遷移も図5に示すものと同様となる。
【0059】
また、図8に示すように、筐体80内において、スイングアームユニットSAUは、ベースプレート81がベースホルダ40によって保持される。スイングアームユニットSAUの下方には、上方から順に、平面視長方形の共鳴プレートPLD、PLE、PLFが積層配置されている。各共鳴プレートPLD、E、Fは、それらの同図左右方向の端部にて、一対のプレートホルダ45により保持されている。各共鳴プレートPLD、E、Fの構成は、形状以外は共鳴プレートPLA、B、Cと同様であり、互いに発音音量が異なっている。
【0060】
また、ベースプレート81の下面81aには、振動伝達機構部EMD、EME、EMFが共鳴プレートPLD、PLE、PLFに対応して設けられる。共鳴プレートPLFには、ショートヨーク44が取り付けられ、ショートヨーク44の上部には緩衝プレート43が貼着されている。各振動伝達機構部EMD、EME、EMF、ショートヨーク44、緩衝プレート43の構成及び機能は、第1の実施の形態と同様である。
【0061】
かかる構成において、振動伝達機構部EMD〜Fのいずれかが動作して、スイングアームユニットSAUと共鳴プレートPLとを連結状態にすることで、各リード83の振動が、振動伝達機構部EMによって共鳴プレートPLに伝達され、音響が得られる。従って、本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0062】
(第3の実施の形態)
次に、図11及び図12を用いて本発明の第3の実施の形態を説明する。
【0063】
第3の実施の形態では、振動伝達機構部の構成が第1の実施の形態と異なり、その他は同様である。
【0064】
図11は、本発明の第3の実施の形態に係る演奏装置の部分断面図であり、特に振動伝達機構部の近傍を示している。第3の実施の形態では、第1の実施の形態における振動伝達機構部EMA、EMB、EMCに代えて、振動伝達機構部EMA2、EMB2、EMC2が設けられる。図12は、1つの振動伝達機構部(EMC2)の分解図である。
【0065】
図11に示すように、センターブロック63は、プレートセンターシャフト120と固定関係になっており、プレートセンターシャフト120には、各共鳴プレートPLA、PLB、PLCに対応して、プレートホルダ125(125A、125B、125C)が固定される。各共鳴プレートPLA、PLB、PLCは、それらの各中心部にて、プレートホルダ125A、125B、125Cによりそれぞれ保持されている。各プレートホルダ125は、硬質ゴムまたはエラストマ等で構成され、プレートセンターシャフト120と共鳴プレートPLA、PLB、PLCとの間の振動伝達が絶縁されている。
【0066】
振動伝達機構部EMA2、EMB2、EMC2は、共鳴プレートPLA、PLB、PLCに対応してプレートセンターシャフト120の周りに設けられる。第1の実施の形態では、クラッチヨーク21は馬蹄型に形成され、ショートヨーク24及び緩衝プレート23は方形に形成された。しかし、本第3の実施の形態では、例えば、振動伝達機構部EMC2及びそれに関連する要素を例に説明すると、クラッチヨーク121C、クラッチコイル122C、ショートヨーク124C及び緩衝プレート123Cがドーナツ型に形成される(図12参照)。
【0067】
磁性体でなるクラッチヨーク121Cは、その穴130Cに螺合されるスクリュー131Cがプレートセンターシャフト120に圧接することで、プレートセンターシャフト120に固定される。プレートセンターシャフト120とクラッチヨーク121Cとの間では、常に振動が伝達可能な状態となっている。クラッチコイル122Cは、クラッチヨーク121C内で、プレートセンターシャフト120を中心に巻装される。磁性体でなる板状でドーナツ状のショートヨーク124Cの上部には同形状の緩衝プレート123Cが貼着される。クラッチコイル122Cへの非通電時においては、クラッチヨーク121Cの下面121Ca1、121Ca2は、緩衝プレート123Cに近接対向しており、両者の隙間は約0.3〜0.5mm程度に設定されている。
【0068】
かかる構成において、クラッチコイル122Cに通電されると、両ヨーク121C、ヨーク124Cの吸着によって、プレートセンターシャフト120及びクラッチヨーク121Cを介して、センターブロック63と共鳴プレートPLCとが連結状態となる。すると、リード61の振動がセンターブロック63からプレートセンターシャフト120及びクラッチヨーク121Cを介してショートヨーク124C、共鳴プレートPLCへと伝達され、共鳴プレートPLCが振動する。その他の作用は第1の実施の形態と同様である。
【0069】
他の振動伝達機構部EMA2、EMB2のクラッチヨーク121A、121B、クラッチコイル122A、122B、緩衝プレート123A、123B、ショートヨーク124A、124Bの構成は、クラッチヨーク121C、クラッチコイル122C、緩衝プレート123C、ショートヨーク124Cと同様であり、関連要素についても同様に構成される。
【0070】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を奏するだけでなく、クラッチヨーク121と緩衝プレート123、緩衝プレート123とショートヨーク124との接触面積が大きいので、振動伝達時における振動伝達機構部EMの姿勢が安定し、発音が安定する。また、振動伝達機構部EMがドーナツ状に構成され、クラッチヨーク121Cの下面121Ca1を経由する経路のように、振動伝達経路がプレートセンターシャフト120近傍にも形成される。従って、リード61からの振動の伝搬効率が高い。さらには、ドーナツ状であることから組み付け作業も行いやすい。
【0071】
なお、第1、第2の実施の形態では、振動発生部の一部として、アクチュエータCYL1、FLAT2及びリード61、83を例示したが、発音のための振動を発生させるものであれば、これらに限られるものではない。また、演奏データに基づき振動するものに限定されるものでなく、例えば、演奏操作に応じて振動するようなものでもよい。また、振動を直接発生させる振動体としてリードを例示したが、これに限定されるものではなく、アコースティックな発音をするもの、すなわち、機械的に励振されて発音する「弦」や「音板」のような発音体であっても本発明を適用可能であり、金属製や木製等の板状発音体も含まれる。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、発音特性を多様に変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態に係る演奏装置の制御機構の構成を示すブロック図である。
【図2】 本実施の形態に係る演奏装置の平面図である。
【図3】 図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】 本図(b)のF1矢視図(同図(a))、アクチュエータ上部の平面図(同図(b))、及び図2のA−A線に沿う部分断面図(同図(c))である。
【図5】 アクチュエータの要部の動作の遷移を示す図である。
【図6】 本演奏装置の要部(振動伝達機構部及びその近傍)を示す外観斜視図である。
【図7】 第1の実施の形態の演奏装置にダンパ機構を追加して設けた変形に係る演奏装置の構成を例示する部分模式図である。
【図8】 本発明の第2の実施の形態に係る演奏装置の断面図である。
【図9】 スイングアームユニットの平面図である。
【図10】 スイングアームユニットの断面図(同図(a))、同図(a)の左方からみた要部を示す正面図(同図(b))、並びに、溝状段差部及びその近傍の部分拡大図(同図(c))である。
【図11】 本発明の第3の実施の形態に係る演奏装置の部分断面図であり、特に振動伝達機構部の近傍を示している。
【図12】 1つの振動伝達機構部の分解図である。
【符号の説明】
11 CPU(指示手段)、 17 ドライバ、 21 クラッチヨーク、 21a 下端部(他端部)、 21b 上端部(一端部)、 22 クラッチコイル、 23 緩衝プレート(緩衝部)、 24 ショートヨーク(磁性部)、61、83 リード(振動発生部の一部)、 CYL1、FLAT2 アクチュエータ(振動発生部の一部)、 EM 振動伝達機構部(振動伝達手段)、 PL 共鳴プレート(響板)
Claims (8)
- 固定部材と、
前記固定部材に固定された基端部及び該基端部から延設され振動する複数のリードを有して構成される振動発生部と、
複数の響板と、
前記複数の各響板に対応し、対応する響板と前記固定部材との間に介装され、前記対応する響板と前記固定部材とを連結状態にするように動作して、前記振動発生部の前記リードの振動を前記固定部材を介して前記対応する響板に伝達することが可能な複数の振動伝達手段と、
前記複数の振動伝達手段に動作指示を与える指示手段とを有し、
前記指示手段により動作指示が与えられた振動伝達手段により前記固定部材に対して連結状態となっている響板に、前記振動発生部の前記リードの振動が伝達され、前記響板が振動することで、音響が得られるように構成されたことを特徴とする演奏装置。 - 前記複数の各振動伝達手段は、その一端部が前記固定部材及び対応する響板の一方に固定的に設けられると共に、他端部が前記固定部材及び前記対応する響板の他方に設けられた磁性部に近接し、前記指示手段からの動作指示に応じて前記他端部が前記磁性部を電磁的に吸着することで、前記対応する響板と前記固定部材とを連結状態にすることを特徴とする請求項1記載の演奏装置。
- 前記他方の前記磁性部及び前記振動伝達手段の前記他端部の互いに対向する各部分の少なくとも一方に緩衝部が設けられたことを特徴とする請求項2記載の演奏装置。
- 前記振動発生部は、その前記リードを、演奏データに基づいて振動させると共に、前記指示手段は、前記演奏データに対応する所定のコマンドに基づいて前記動作指示を与えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の演奏装置。
- 前記指示手段は、前記複数の各振動伝達手段に対し、対応する響板と前記固定部材との連結強さを異ならせることで発音音量が調節されるように、前記動作指示を与えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の演奏装置。
- 前記指示手段は、前記振動発生部の前記リードの振動発生継続中に、前記複数の各振動伝達手段に対し、対応する響板と前記固定部材との連結状態を時間的に変化させることで変調効果が生じるように、前記動作指示を与えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の演奏装置。
- 操作により前記指示装置による前記動作指示を与える操作子をさらに有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の演奏装置。
- 振動を発生させる振動発生部と、
複数の響板(PL)と、
前記複数の各響板に対応し、対応する響板と前記振動発生部との間に介装され、前記対応する響板と前記振動発生部とを連結状態にするように動作して、前記振動発生部の振動を前記対応する響板に伝達することが可能な複数の振動伝達手段(EM)と、
前記複数の振動伝達手段に動作指示を与える指示手段(11)とを有し、
前記指示手段により動作指示が与えられた振動伝達手段により前記振動発生部に対して連結状態となっている響板に、前記振動発生部の振動が伝達され、前記響板が振動することで、音響が得られるように構成され、
前記指示手段は、前記振動発生部の振動発生継続中に、前記複数の各振動伝達手段に対し、対応する響板と前記振動発生部との連結状態を時間的に変化させることで変調効果が生じるように、前記動作指示を与えることを特徴とする演奏装置。
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