JP4016861B2 - 演奏装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術の分野】
本発明は、振動発生体の振動を響体に伝達して音響を得る演奏装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、オルゴール装置のように、リード等の振動発生体を振動させて、その振動を響体に伝えて音響を得るようにした演奏装置が知られている。また、下記特許文献1に例示されるように、振動発生体と響体との間に両者の接触面積を手動で変更可能な調節手段を設け、音量等を調節可能に構成した演奏装置も知られている。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−149157号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1の演奏装置では、振動発生体と響体との接触面積を変更するのみであるので、音量変更等の発音特性の単純な変更しか行えず、減衰特性の制御や変調効果の付与等による多様な発音特性を得る上で、改善の余地があった。
【0005】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、発音特性を多様に変化させることができる演奏装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の請求項1の演奏装置は、励振手段と、前記励振手段により励振されることで振動する振動発生体と、響体と、前記振動発生体と前記響体との間に介装され、両者を連結状態にして前記振動発生体の振動を前記響体に伝達することで、該響体を振動させ音響を発生させる振動伝達手段と、少なくとも、発音を指示する発音指示信号及び振動を制御する振動制御信号を入力する信号入力手段と、前記響体に接離可能に構成された制振手段と、前記信号入力手段により入力された発音指示信号に基づいて前記励振手段を駆動することで、前記振動発生体を振動させると共に、前記信号入力手段により入力された振動制御信号に基づいて前記制振手段を駆動することで前記響体の振動状態を制御する駆動制御手段とを有することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、例えば、発音される楽音の立ち上がり特性、発音途中の特性、または減衰特性等が可変となり、よって、発音特性を多様に変化させることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る演奏装置の制御機構の構成を示すブロック図である。
【0010】
本装置は、CPU11(駆動制御手段)に、バス15を通じて、第1ROM12、メモリ13、MIDIインターフェイス(MIDII/F)14、第2ROM18及びドライバ(PWM)17が接続されて構成される。CPU11は、本装置全体の制御を司る。第1ROM12は、不図示のプログラムROM、データROM及びワーキングROMで構成され、CPU11が実行する制御プログラムや各種データ等を記憶する。MIDII/F14は、不図示のMIDI機器等からの演奏データをMIDI(Musical Instrument Digital Interface)信号として入力する。メモリ13はRAM等で構成され、演奏データを記憶するほか、MIDII/F14から入力された演奏データも記憶することができる。第2ROM18は、パラメータテーブル等を記憶している。ドライバ17は、それぞれ後述する、励振手段としてのアクチュエータCYL1、振動伝達手段としての振動伝達機構部EM、及び制振手段としての変調機構部MODを駆動制御する。
【0011】
本実施の形態で用いる演奏データには、少なくとも、発音指示のためのキーオンデータ、発音音高を指示する音高データ、振動伝達機構部EMを駆動するためのEM指示コマンド、曲の終わりを指示するエンドデータ、及び変調機構部MODを駆動するためのモジュレーションデータが含まれる。なお、これら各データの形式は問わないが、演奏データがMIDIデータであるとした場合、モジュレーションデータは、例えば、エクスクルーシブ・メッセージに含まれる。なお、このほか、演奏データには、音色データ、キーオンベロシティデータ、キーオフデータ(消音指示信号)、キーオフベロシティデータ等が含まれるものとする。なお、これら各データは、必ずしも演奏データ中に含まれるものに限られるものではなく、例えば、演奏データに付随するものであってもよい。
【0012】
図2は、本実施の形態に係る演奏装置の平面図、図3は、図2のA−A線に沿う片側断面図である。なお、図2では、後述する響体としての共鳴プレートPL(PLA、PLB、PLC)の図示が省略されている。図4(c)は、図3の部分拡大図であり、特にアクチュエータCYL1の近傍を示している。図4(b)はアクチュエータCYL1上部の平面図、図4(a)は同図(b)のF1矢視図である。図5は、図3の部分拡大図であり、特に振動伝達機構部EM及び変調機構部MODの近傍を示している。
【0013】
図2、図4(c)に示すように、振動発生体である各リード61の基端部62は、センターブロック63(上側センターブロック63U及び下側センターブロック63L)に固定され、各リード61は基端部62から延設される。各リード61は、外周方向に向かって平面的に放射状に複数(例えば20本)延びている。なお、本実施の形態では、アクチュエータCYL1の配列は、各リード61の長さの違いに起因して渦巻き状を成すが、基端部62の位置を個々に異ならせて、アクチュエータCYL1が円形状に配列されるように構成してもよい。
【0014】
アクチュエータCYL1は、リード61に対応して設けられ、図4(c)に示すように、ソレノイドコイル68、プランジャ70、プランジャスプリング69、フック部71、上下ヨーク64、65等を備える。なお、上下ヨーク64、65は全アクチュエータCYL1に共通のものとして構成され、構成が簡単になっている。すなわち、上下ヨーク64、65は、いずれも円盤状に形成され、センターブロック63Lにヨークスペーサ67で適当な間隔が保たれて略平行に配設される。
【0015】
ソレノイドコイル68は、上下ヨーク64、65間に配設される。プランジャ70は、ソレノイドコイル68内に内挿され、上下方向に往復運動可能に構成されている。また、プランジャ70の下方にはプランジャスプリング69が取り付けられており、プランジャスプリング69はプランジャ70を常に上方に付勢している。ソレノイドコイル68に駆動電流(駆動パルス)が供給されると磁力が発生し、プランジャ70は下方に移動する。駆動電流が遮断されると、プランジャ70はプランジャスプリング69による付勢力によって上昇して元の初期位置に復帰する。
【0016】
プランジャ70の上部にはフック部71が取り付けられており、フック部71とプランジャ70との間に溝状段差部70aが形成される。溝状段差部70a内において、フック部71の下端部が後述する係合部71aを構成する。アクチュエータCYL1内の上部、下部にはそれぞれ、上、下クッション部72、73が設けられ、プランジャ70の上下運動の衝撃が吸収される。
【0017】
リード61の先端部に近接して、ロータリーピック66が各リード61に対応して配設される。ロータリーピック66の外周部には、複数(例えば4つ)の駆動爪66a(66a1〜66a4)が一体に形成される。ロータリーピック66には、逆回転防止のために、ラチェットではなく、四角形のカム部76が両面に固定的に設けられると共に、カムスプリング75が近接して設けられる。ロータリーピック66は、駆動爪66aが溝状段差部70aの係合部71aから駆動力を受けることで回転軸74を中心に回転する。後述するように、カム部76及びカムスプリング75の作用によって、ロータリーピック66は、実質的に一方向(図4(c)でいう時計方向)にのみ回転する。
【0018】
カムスプリング75は金属等の板状弾性部材で構成され、図4(a)に示すように、コ字状に形成される。カムスプリング75は、一端部が装置本体に対して固定的に取り付けられる一方、他端部がロータリーピック66を挟むようにして、カム部76を常にリード61から離間する方向に付勢する。なお、カム部76の4隅は略弧状に処理されている。
【0019】
各リード61は、駆動爪66aにより弾かれることで任意のタイミングで独立して振動し、それによって発音するが、個々のリード61の振動だけでは大きく良好な音が得られない。そこで、次に説明するように、共鳴プレートPLA、PLB、PLCに、リード61の振動を振動伝達機構部EM(EMA、EMB、EMC)を介して伝達することで拡声し、音響を得るようにしている。
【0020】
図3に示すように、センターブロック63の下方には、上方から順に、円盤状の共鳴プレートPLA、PLB、PLCが積層配置されている。センターブロック63は、プレートセンターシャフト20と固定関係になっており、各共鳴プレートPLA、PLB、PLCは、それらの中心部にて、プレートセンターシャフト20に固定されたプレートホルダ25(25A、25B、25C)により保持されている。
【0021】
各共鳴プレートPLA、PLB、PLCは、例えば金属板で構成され、それらの厚みは、PLA>PLB>PLC、直径は、PLA<PLB<PLCのように設定されている。発音音量は、PLA<PLB<PLCとなっている。
【0022】
また、振動伝達機構部EMA、EMB、EMCは、共鳴プレートPLA、PLB、PLCに対応してプレートセンターシャフト20の周りに設けられる。例えば、振動伝達機構部EMC及びそれに関連する要素を例に説明すると、図5に示すように、振動伝達機構部EMCは、平面視ドーナツ状に形成された軟鉄等の磁性体でなるヨーク(以下、「クラッチヨーク21C」と称する)と、クラッチヨーク21C内で、プレートセンターシャフト20を中心に巻装されたソレノイドコイル(以下、「クラッチコイル22C」と称する)とから構成される。クラッチヨーク21Cはその中心部でプレートセンターシャフト20に固着されている。
【0023】
一方、共鳴プレートPLCには、軟鉄等の磁性体でなる板状でドーナツ状のヨーク(以下、「ショートヨーク24C」と称する)が取り付けられ、ショートヨーク24Cの上部には同形状の緩衝プレート23Cが貼着されている。クラッチコイル22Cへの非通電時においては、クラッチヨーク21Cの下端部は、緩衝プレート23Cに近接対向しており、両者の隙間は約0.3〜0.5mm程度に設定されている。
【0024】
他の振動伝達機構部EMA、EMBのクラッチヨーク21A、21B、クラッチコイル22A、22B、緩衝プレート23A、23B、ショートヨーク24A、24Bの構成は、クラッチヨーク21C、クラッチコイル22C、緩衝プレート23C、ショートヨーク24Cと同様であり、関連要素についても同様に構成される。
【0025】
ここで、まず、アクチュエータCYL1の動作を説明する。CPU11は、MIDII/F14から入力する等によってメモリ13に記憶された演奏データを読み出し、該演奏データ中の音高データに対応したアクチュエータCYL1のソレノイドコイル68に対して、演奏データ中のキーオンデータをトリガとして駆動電流を送るよう制御する。
【0026】
図6は、アクチュエータCYL1の要部の動作の遷移を示す図である。まず、同図(a)に示すように、初期位置では、溝状段差部70a内にロータリーピック66の駆動爪66a1が入り込んでいる。次に、ソレノイドコイル68に通電されると、プランジャ70(及びフック部71)が下降を開始し、係合部71aが駆動爪66a1に当接し(同図(b))、ロータリーピック66が時計方向に回転して係合部71aに係合している駆動爪66a1とは対称位置にある駆動爪66a3がリード61の先端部を弾いて発音させる(同図(c))。このとき、カムスプリング75の反力によりカム部76を介してロータリーピック66に与えられる回転駆動力の方向が、一時的に反時計方向となるが、係合部71aによる時計方向への回転駆動力がそれに勝っているので、ロータリーピック66は反時計方向に回転することがない。
【0027】
プランジャ70がさらに下降していくと、リード61を弾いた駆動爪66a3はリード61から離間していき、やがて、カムスプリング75の反力によりロータリーピック66に与えられる回転駆動力の方向が、時計方向に戻る(同図(d))。そして、プランジャ70は下死点である下降端位置に到達する(同図(e))。
【0028】
次に、ソレノイドコイル68への通電が遮断されると、プランジャスプリング69による反力によってプランジャ70は上昇を開始する。しかし、ロータリーピック66には、カムスプリング75によって依然として時計方向への回転駆動力が付与されているから、プランジャ70が上昇しても、ロータリーピック66は反時計方向に回転することがない(同図(f))。
【0029】
プランジャ70が上昇し初期位置近傍まで戻って、ロータリーピック66の駆動爪66a4の位置に溝状段差部70aが来ると(同図(g))、カムスプリング75による時計方向への回転駆動力によってロータリーピック66が時計方向に回転し、駆動爪66a4が溝状段差部70aに入り込んで、元の初期状態に復帰する(同図(h))。このようにして、リード61を励振させて1回発音させるための発音動作行程が完了する。
【0030】
次に、振動伝達機構部EMの動作を説明する。CPU11は、演奏データ中のEM指示コマンドに応じて、振動伝達機構部EMA〜EMCのいずれかに選択的に動作指示を与える。すなわち、振動伝達機構部EMA〜EMCのいずれかのクラッチコイル22に駆動電流を供給する。本実施の形態では、曲毎に振動伝達機構部EMA〜EMCのいずれか1つが動作するようにしているが、同時に複数が動作するように構成してもよい。
【0031】
例えば、振動伝達機構部EMCのクラッチコイル22Cに通電されると、クラッチヨーク21Cに磁力が発生し、ショートヨーク24Cを吸着する。このとき、緩衝プレート23Cにより、クラッチヨーク21Cとショートヨーク24Cとの間の衝撃が吸収されると共に、衝突音が低減される。両ヨーク21C、ヨーク24Cの吸着によって、振動伝達機構部EMCを介して、センターブロック63(U/L)と共鳴プレートPLCとが連結状態となると、振動が効率よく伝達される振動伝達状態となる。従って、リード61の振動がセンターブロック63から振動伝達機構部EMCを介してショートヨーク24C、共鳴プレートPLCへと伝達され、共鳴プレートPLCが振動し、拡声された良好な音響が得られる。
【0032】
その後、演奏データ中のエンドデータに応じて、クラッチコイル22Cへの通電が解除されると、クラッチヨーク21Cがショートヨーク24Cから離間しようとする。その際、両者間に緩衝プレート23が介在するので、両者の強固な吸着が防止されており、両者が速やかに離間するので、吸着、離間動作の応答特性が良好になっている。
【0033】
他の振動伝達機構部EMA、EMBについても同様に、動作指示により動作して、それぞれ対応する共鳴プレートPLA、PLBに対して連結状態となったとき、リード61の振動を伝達する。
【0034】
本演奏装置にはさらに、変調機構部MODが設けられている。各変調機構部MOD(MODA、MODB、MODC)は、共鳴プレートPLA、PLBに対応して設けられる。図3、図5では、変調機構部MODのうち変調機構部MODBのみが現され、変調機構部MODA、変調機構部MODBは現されていないが、共鳴プレートPLの円周方向における異なる位置に配置されている。
【0035】
変調機構部MODB及びそれに関連する要素を例に説明すると、変調機構部MODBは、ヨーク32内において巻装されたソレノイドコイル31内にプランジャ35が内挿され、プランジャ35が上下方向に往復運動可能に構成されている。また、プランジャ35の上端部に固着された固着板38にスプリング36が取り付けられ、スプリング36は、プランジャ35を常に同図上方に付勢する。さらに、プランジャ35の下端部からは鉛直棒33が延設され、鉛直棒33は、共鳴プレートPLAに設けられた穴PLAaを貫通して下方に垂下されている。また、鉛直棒33の先端に設けられた押さえ板34の下面にフェルト等の緩衝部材37が貼着されている。
【0036】
他の変調機構部MODA、MODCについても、鉛直棒の長さが異なるだけで、他は変調機構部MODBと同様に構成される。また、変調機構部MODCの鉛直棒が貫通するための穴は、共鳴プレートPLA及び共鳴プレートPLBに設けられる。
【0037】
次に、変調機構部MODの動作を説明する。CPU11は、演奏データ中のモジュレーションデータに応じて、変調機構部MODに駆動電流を送る。なお、本実施の形態では、駆動電流は、動作指示が与えられている振動伝達機構部EMに対応する変調機構部MOD、すなわち、振動して音響を発生している共鳴プレートPLに対応する変調機構部MODに対してのみ送られるが、変調機構部MODの動作状況にかかわらず全変調機構部MODに対して一律に送られるようにしてもよい。
【0038】
例えば、変調機構部MODBのソレノイドコイル31に駆動電流が供給されると、ヨーク32に磁力が発生し、プランジャ35が下方に動作するので、駆動電流の強さ(パルス幅)に応じた強さで緩衝部材37が共鳴プレートPLBに当接する。また、駆動電流が遮断あるいは弱まると、スプリング36の反力によってプランジャ35が上昇するので、緩衝部材37が共鳴プレートPLBから離間するか、あるいは緩衝部材37の共鳴プレートPLBに対する押圧力が弱まる。駆動電流が完全に遮断されると、プランジャ35と共に緩衝部材37が初期位置に復帰する。緩衝部材37が共鳴プレートPLBから離間する方向に移動したとき、リード61の振動が残っていれば、共鳴プレートPLBは振動エネルギを受けることができるので、その振動を再び強めることができる。
【0039】
ここで、モジュレーションデータは、変調機構部MODを駆動して共鳴プレートPLの振動状態を制御するためのデータであるので、「振動制御信号」とも称する。共鳴プレートPLの振動態様は、モジュレーションデータの内容によって決まり、緩衝部材37の共鳴プレートPLへの接離状態を時間的に変化させることで、様々な振動態様が可能で、変調等の効果が得られる。変調制御によれば、音色変化やトレモロのような効果も実現可能である。
【0040】
具体的には、例えば、緩衝部材37により時間的に強弱を繰り返して押圧する等の振動制御が考えられる。あるいは、単純に、共鳴プレートPLに緩衝部材37を強く当接させ、三角波漸増により振動を急激に減衰させる等の強制止音制御も考えられる。
【0041】
このような振動制御は、振動終了時に限るものでなく、発音される楽音の立ち上がりから発音途中を通じて減衰するまでの領域のいずれにも適用可能であるので、全領域において発音特性を可変にすることができる。例えば、リード61の振動開始時点では共鳴プレートPLに緩衝部材37を当接させておき、リード61の振動開始直後に緩衝部材37を徐々に離間させれば、オルゴール的でないアタックの弱い楽音を発音させることも可能である。
【0042】
また、共鳴プレートPLの振動制御は、緩衝部材37による接離状態の時間的変化だけでなく、例えば、緩衝部材37による押圧で共鳴プレートPLを変形させることで行うこともでき、両者を混合して行うことも可能である。これらによっても、共鳴プレートPLの振動状態を変化させ、変調等の効果を実現することができる。
【0043】
本実施の形態によれば、リード61の振動が振動伝達機構部EMを介して共鳴プレートPLに伝達されて音響が発生するようにし、演奏データ中のモジュレーションデータに基づいて変調機構部MODが駆動され、共鳴プレートPLに緩衝部材37が接離することで、共鳴プレートPLの振動状態が制御されるので、発音される楽音の立ち上がりから減衰するまでに亘って発音特性が可変となり、発音特性を多様に変化させることができる。特に、発生する音響に変調効果を与えることにより、アコースティックでありながら、一般のオルゴールにはないような楽音も発音可能になるので、音楽的に優れた演奏の実現可能性を広げることができる。
【0044】
なお、各変調機構部MODは、対応する共鳴プレートPLの円周方向において2つ以上設けてもよく、例えば、プレートセンターシャフト20を挟んだ対称位置に2つ設けてもよい。あるいは、変調機構部MODを1つの共鳴プレートPLに対して2つ以上設ける場合は、プレートセンターシャフト20からの距離が異なる位置に設け、モジュレーションデータに応じて、そのうちのいずれかまたはすべての変調機構部MODが駆動されるようにしてもよい。共鳴プレートPLの半径方向における緩衝部材37の当接位置が異なれば、同じ接離態様であっても振動制御に関する作用が異なるため、制御態様が豊富になる。
【0045】
さらには、リード61、センターブロック63、振動伝達機構部EM及び変調機構部MODは、これらで1つの振動系とみなすことができ、この振動系におけるいずれかの所定部分に変調機構部MODの緩衝部材37に相当する部材を接離可能に構成してもよい。例えば、リード61に接離可能に構成すれば、リード61に緩衝部材が接触したとき、その振動が直ちに減衰するので、急速な止音制御が可能になる。このように、振動制御により変調等の効果を付与できるならば、緩衝部材37の接触位置、乃至、振動系における変調機構部MODの作用対象は、共鳴プレートPLに限定されない。
【0046】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態は、共鳴プレートPLの振動状態を検出してフィードバック制御する点が第1の実施の形態と異なる。振動伝達機構部EM、アクチュエータCYL1及びその他の構成は第1の実施の形態と同一である。
【0047】
図7は、第2の実施の形態に係る演奏装置の部分拡大断面図であり、特に変調機構部の近傍を示している。共鳴プレートPL(PLA2、PLB2、PLC2)にそれぞれ対応して、変調機構部MOD(MODA2、MODB2、MODC2)が設けられ、同図(a)は変調機構部MODB2、同図(b)は変調機構部MODA2を示す。
【0048】
同図(a)に示すように、変調機構部MODB2は、第1の実施の形態における変調機構部MODBのヨーク32に相当するヨーク132Bから、延設部132Baが下方に延設された点のみが変調機構部MODBと異なり、その他の構成は同様である。また、共鳴プレートPLA2には、第1の実施の形態における共鳴プレートPLAの穴PLAaに代えて、延設部132Baが貫通するための穴PLA2aが設けられる点が共鳴プレートPLAと異なり、その他は同様である。
【0049】
変調機構部MODB2にはさらに、光学的に非接触で共鳴プレートPLB2の振動を検出する振動検出手段としての振動センサOPTが設けられる。振動センサOPTは、共鳴プレートPLA2の下方であって共鳴プレートPLB2の上面に対向して、延設部132Baの側部に取り付けられ、例えば、共鳴プレートPLB2に光を照射し、その反射光の位相の変化から共鳴プレートPLB2の振動状態を検出する。なお、共鳴プレートPLB2の振動状態を非接触で検出することができれば、振動センサOPTの構成や取り付け位置は例示したものに限定されるものではない。
【0050】
変調機構部MODC2は、図示はしないが、変調機構部MODB2と基本的に同様に構成され、振動センサOPTも設けられる。変調機構部MODC2を設けるために、共鳴プレートPLB2にも、穴PLA2aに相当する穴(図示せず)が設けられ、その他は共鳴プレートPLBと同様に構成される。変調機構部MODA2については、ヨーク132Aの側部に振動センサOPTが設けられる点だけが第1の実施の形態における変調機構部MODAと異なる。
【0051】
また、本実施の形態では、振動パターンテーブルが第2ROM18に記憶される。振動パターンテーブルは、図示はしないが、予め定めた複数の各区分毎に、共鳴プレートPLの振動態様を目標振動パターンとして登録したものであり、例えば、第1区分には急速減衰、第2区分には強弱の繰り返し等、のように対応付けられる。そして、モジュレーションデータをその内容によっていずれかの区分に割り当てる。従って、モジュレーションデータによって、対応する目標振動パターンが設定される。
【0052】
そして、CPU11は、モジュレーションデータに応じて変調機構部MODを駆動制御する際、対応する振動センサOPTによる検出結果を参照しつつ、変調機構部MODへの駆動電流を増減することで、共鳴プレートPLの振動状態が上記設定した目標振動パターンに近づくようにフィードバック制御する。これにより、モジュレーションデータに沿った共鳴プレートPLの振動状態が確保される。
【0053】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を奏するだけでなく、フィードバック制御により、モジュレーションデータに沿った一層忠実な楽音効果を実現することができる。
【0054】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態は、変調機構部MODの押さえ板34の下面に設けられる緩衝部材の構成が第1の実施の形態と異なり、振動伝達機構部EM、アクチュエータCYL1及びその他の構成は第1の実施の形態と同一である。
【0055】
図8は、第3の実施の形態における変調機構部MODの構成を示す部分側面図であり、緩衝部材のバリエーションが例示されている。例えば、同図(a)に示すように、押さえ板34の下面には、第1の実施の形態における緩衝部材37に代えて、緩衝部材41が貼着される。緩衝部材41はゴム等の弾性体でその下面が緩やかな凸面状に形成されている。また、同図(b)の例では、押さえ板34の下面に設けられたゴム等の緩衝部材42は、その下面にギザギザ状の凹凸を有する。また、同図(c)の例では、押さえ板34の下面には、2層構造の緩衝部材43、44が設けられる。例えば、緩衝部材43はゴム、緩衝部材44はフェルト等で構成され、その硬さは、緩衝部材43>緩衝部材44となっている。
【0056】
同図(a)に示す緩衝部材41で共鳴プレートPLを押圧すれば、平坦面である場合に比し押圧力を徐々に大きくすることができる。同図(b)に示す緩衝部材42、または同図(c)に示す緩衝部材43、44で押圧すれば、当接当初の押圧力を小さくすることができる。
【0057】
本実施の形態では、同図(a)〜(c)に示す構成の変調機構部MODが、1つの共鳴プレートPLに対して1つずつ設けられる。そして、モジュレーションデータに基づいて、いずれかまたは複数種類の変調機構部MODが選択され、その選択された変調機構部MODに、第1の実施の形態と同様にモジュレーションデータに応じた駆動電流が送られる。
【0058】
本実施の形態によれば、変調機構部MODの緩衝部材の種類を複数設け、それらを、モジュレーションデータに応じて選択的に駆動するようにしたので、第1の実施の形態に比し、発音特性を一層多様に変化させることができる。
【0059】
なお、図8(a)〜(c)に例示するような、緩衝部材の種類が異なる変調機構部MODは、共鳴プレートPLの円周方向における同じ位置に配置してもよいが、異なる位置に配置すれば、制御態様の豊富化につながる。
【0060】
従って、駆動電流の与え方、変調機構部MODの同時駆動数、及び緩衝部材の形状・材質、という要素の組み合わせは各種考えられ、その組み合わせをモジュレーションデータに基づいて規定するようにすれば、共鳴プレートPLの振動制御の態様のバリエーションは極めて広くなる。さらには、半径方向における変調機構部MODの配置位置を異ならせれば、バリエーションは一層広くなる。
【0061】
なお、図8(a)〜(c)に例示する変調機構部MODを交換可能に構成し、変調機構部MODを異なる種類に取り替えて演奏することで、同じ演奏データであっても異なった印象に聞こえるようにする、等の応用が可能になる。
【0062】
なお、変調機構部MODのバリエーションは、図8(a)〜(c)に例示するものに限定されず、また、例えば、共鳴プレートPLを上下両側から挟み込むような構成を採用してもよい。
【0063】
なお、第1〜第3の実施の形態では、共鳴プレートPLの振動状態を制御する「振動制御信号」としては、モジュレーションデータのみであるとしたが、これに限るものでなく、例えば、キーオフデータ、キーオフベロシティデータ、音色データ、キーオンベロシティデータ等の他のデータも「振動制御信号」に含め、これらに基づいて変調機構部MODの駆動制御を行うように構成してもよい。
【0064】
例えば、モジュレーションデータに基づき変調機構部MODを駆動制御すると共に、キーオフデータがあったときは、強制止音、すなわち、共鳴プレートPLの振動を強制的に減衰させるように制御してもよい。あるいは、変調を行わない構成を採用する場合は、モジュレーションデータを用いず、キーオフデータのみに基づいて変調機構部MODを駆動制御することで、変調機構部MODをダンパ専用機構として機能させることも可能である。上記のようにキーオフデータに応じて強制止音を行う場合は、さらにキーオフベロシティデータに応じて押圧態様を変え、減衰速度を制御するようにしてもよい。
【0065】
また、例えば、モジュレーションデータを用いず、音色データに基づいて、適した音色となるような態様で変調機構部MODを駆動制御するようにしてもよい。
【0066】
また、例えば、モジュレーションデータと共にキーオンベロシティデータを用い、キーオンベロシティデータに応じて、制御中の全期間に亘って変調機構部MODによる共鳴プレートPLの押圧強さを制御し(キーオンベロシティデータ値が大きいほど全期間に亘って弱く押圧する等)、その発音に関し、全体としてキーオンベロシティデータに応じて発音音量が推移するようにしてもよい。
【0067】
上記のように、モジュレーションデータ以外の他のデータを変調機構部MODの駆動制御に用いる場合、第2の実施の形態では、上記他のデータに基づく目標振動パターンの設定、第3の実施の形態では、駆動する変調機構部MODの選択、という形で制御態様の変更を行えばよい。
【0068】
なお、第1〜第3の実施の形態において、用いられる演奏データは、メモリ13等から読み出されたものに限定されず、例えば、鍵盤やパッドやホイール等の入力操作部の操作者による操作によって発生するデータであってもよい。
【0069】
なお、第1〜第3の実施の形態において、変調機構部MODの駆動制御による発音特性の制御を可能にする観点からは、センターブロック63と共鳴プレートPLの両者が常時連結状態となるように振動伝達機構部EMを制御するか、あるいは振動伝達機構部EMを設けることなく、当初から両者を振動伝達可能に構成してもよい。
【0070】
なお、第1〜第3の実施の形態において、振動発生体として、リード61を例示したが、励振されて発音のための振動を発生させるものであれば、これに限られるものではなく、アコースティックな発音をするもの、すなわち、機械的に励振される「弦」や「音板」のような振動発生体であっても本発明を適用可能であり、金属製や木製等の板状体も含まれる。また、リード61等の振動発生体を励振する機構として、弾く動作で励振するアクチュエータCYL1を例示したが、このような機構に限定されるものではない。
【0071】
なお、振動して音響を発する響体として板状の共鳴プレートPLを例示したが、振動発生体としてのリード61の振動を受けて振動し、音響を発する響体であればよく、その形状や材質は限定されない。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、発音特性を多様に変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態に係る演奏装置の制御機構の構成を示すブロック図である。
【図2】 本実施の形態に係る演奏装置の平面図である。
【図3】 図2のA−A線に沿う片側断面図である。
【図4】 本図(b)のF1矢視図(図(a))、アクチュエータ上部の平面図(図(b))、及びアクチュエータの近傍を示す図3の部分拡大図(図(c))である。
【図5】 振動伝達機構部及び変調機構部の近傍を示す図3の部分拡大図である。
【図6】 アクチュエータの要部の動作の遷移を示す図である。
【図7】 第2の実施の形態に係る演奏装置の部分拡大断面図である。
【図8】 第3の実施の形態における変調機構部の構成を示す部分側面図である。
【符号の説明】
11 CPU(駆動制御手段)、 13 メモリ(信号入力手段)、 14 MIDIインターフェイス(MIDII/F)(信号入力手段)、 17 ドライバ(PWM)、 31 ソレノイドコイル、 32 ヨーク、 35 プランジャ、 37 緩衝部材、 61 リード(振動発生体)、 CYL1 アクチュエータ(励振手段)、 PL 共鳴プレート(響体)、 EM 振動伝達機構部(振動伝達手段)、 MOD 変調機構部(制振手段)、 OPT 振動センサ(振動検出手段)
Claims (6)
- 励振手段と、
前記励振手段により励振されることで振動する振動発生体と、
響体と、
前記振動発生体と前記響体との間に介装され、両者を連結状態にして前記振動発生体の振動を前記響体に伝達することで、該響体を振動させ音響を発生させる振動伝達手段と、
少なくとも、発音を指示する発音指示信号及び振動を制御する振動制御信号を入力する信号入力手段と、
前記響体に接離可能に構成された制振手段と、
前記信号入力手段により入力された発音指示信号に基づいて前記励振手段を駆動することで、前記振動発生体を振動させると共に、前記信号入力手段により入力された振動制御信号に基づいて前記制振手段を駆動することで前記響体の振動状態を制御する駆動制御手段とを有することを特徴とする演奏装置。 - 前記駆動制御手段は、前記響体の振動状態を制御することで、発生する音響に変調効果を与えることが可能であることを特徴とする請求項1記載の演奏装置。
- 前記駆動制御手段は、前記響体に対する前記制振手段の接離状態を時間的に変化させるか、または前記制振手段を前記響体に押圧して前記響体を変形させるかの、少なくとも一方によって、前記変調効果を与えることを特徴とする請求項2記載の演奏装置。
- 前記駆動制御手段は、前記入力された振動制御信号に消音を指示する消音指示信号が含まれている場合は、前記響体の振動を急速に減衰させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の演奏装置。
- 前記響体の振動状態を検出する振動検出手段をさらに有し、前記駆動制御手段は、前記入力された振動制御信号に応じて目標振動パターンを設定すると共に、前記振動検出手段による検出結果に基づいて、前記響体の振動状態が前記設定した目標振動パターンに近づくようにフィードバック制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の演奏装置。
- 前記制振手段は、前記響体における互いに異なる位置に接離するように複数設けられ、前記駆動制御手段は、前記入力された振動制御信号に基づいて、前記複数の制振手段の中から駆動すべき制振手段を少なくとも1つ選択することを特徴とする請求項1記載の演奏装置。
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