JP3931406B2 - ガスセンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明の主たる対象は、一般大気中もしくはガス、石油を燃料とする各種燃焼機器の排ガス中の可燃性ガスとくに一酸化炭素を検出するためのセンサに関し、過酷な使用環境でのセンサ動作の安定性の面、ならびに化学センサにおいて最大の課題となる耐久性の面で優れた特性を備えてなるガスセンサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一酸化炭素は無色、無味、無臭の気体で、空気よりやや軽いが毒性が強く200PPMくらいの低濃度でも2〜3時間呼吸すると頭痛などが生じ、3000PPM以上の濃度になると10分位で、6000PPM以上の濃度になると数分間の呼吸で死亡する。
【0003】
一般家庭でも一酸化炭素は、瞬間湯沸かし器、風呂釜、石油暖房器具およびガス暖房器具や炭火などから発生するので、これらの機器に内蔵して用いたり、または室内に設置して用いることのできる安価で小型で信頼性の高い一酸化炭素ガス検知センサが強く要望されている。
【0004】
従来から提案されているガスセンサとくに一酸化炭素を検知する化学センサとしては、電解液に一酸化炭素を吸収して酸化する電極を設けて、一酸化炭素濃度に比例する電流値から一酸化炭素濃度を検知する方式(定電位電解式ガスセンサ)、貴金属などの微量の金属元素を添加して増感したN型半導体酸化物、例えば酸化スズなどの焼結体タイプを用いて、これらの半導体が可燃性ガスと接触した際に電気電導度が変化する特性を利用してガスを検知する方式(半導体式ガスセンサ)、20μm程度の白金の細線にアルミナを添着し、貴金属を担持したものと担持しないものとの一対の比較素子を用いて一定温度に加熱し、可燃性ガスがこの素子に接触して触媒酸化反応を行った際の発熱差を検出する方式(接触燃焼式ガスセンサ)などが知られている。例えば [文献1]大森豊明監修:「センサ実用事典」:フジ・テクノシステム[第14章 ガスセンサの基礎(春田正毅担当)、P112−130(1986)に詳しい記述がある。
【0005】
また、ジルコニア電気化学セルを構成し、電極の一方側に白金/アルミナの触媒層を形成して一酸化炭素を検出する固体電解質式一酸化炭素センサも提案されている[例えば、H.OKAMOTO、H.OBAYASI AND T.KUDO,Solid State Ionics、1、319(1980)参照]。
【0006】
この固体電解質式一酸化炭素センサの原理は、触媒層側と裸側の電極上で一種の酸素濃淡電池ができることによるもので、触媒層側の電極では、酸素がそのまま到達し、一酸化炭素が到達しない状態にあるのに対して、裸側の電極では、酸素も一酸化炭素も到達し、この一酸化炭素が酸素を還元し、両者の電極の間に酸素濃淡電池が形成され、起電力出力が現れることを利用するものである。
【0007】
またガス選択透過透過体については、セラミックガス分離膜すなわち無機分離膜が提案されているが[例えば、大久保達也、諸岡成冶、「無機分離膜の現状と今後の展開」、ケミカルエンジニアリング、12、1(1988、1989)参照]しかし、無機分離膜をガスセンサに応用することの提案は、従来においてはなされていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
これらの化学センサは、いずれも以下の欠点を有している。すなわち定電位電解ガスセンサ、半導体型ガスセンサ、接触燃焼式ガスセンサとも原理的に還元性ガス(可燃性ガス)に無差別に反応するため各種工夫をおこなったとしても基本的には、一酸化炭素(CO)以外の水素、アルコールなども検知してしまう特性を持っている。つまりCOの選択性が悪いという欠点を持っている。また、センサおよびセンサシステムが全般的に高価で、センサの信号処理回路も複雑になる欠点を持っている。また接触燃焼式を除いては、CO濃度に対してセンサの出力が非線形なため制御性が悪いという欠点もある。
【0009】
特に、従来からガスセンサとして広く用いられている化学センサの最大の課題は、それが安全性に関わる決定的なセンサであるにも拘わらず、どうしてもフェールアウトの検出システムになってしまうことである。これは、原理的には、センサとしての信号が一酸化炭素を検出しないときにはゼロとなり、一酸化炭素の検出により信号を出力し、またセンサの劣化によりこの出力信号が低下してしまうことに要因がある。
【0010】
具体的にフェールアウトの問題点を説明すると、例えば、一酸化炭素センサを用いて一酸化炭素の濃度の臨界値を設定し、対象の一酸化炭素濃度がこの臨界値を越えると安全上支障がでるため機器を停止させる条件で機器が設計されたとする。万が一のトラブルが発生したとしても、機器としては、最終的に安全側に動作するように機器を設計するのがフェールセーフの設計思想になるが、従来からの化学センサ方式の一酸化炭素センサの場合、劣化のトラブルにより、実際には、一酸化炭素がある臨界値以上に発生しているにも拘わらず動作しないという危険性を含んでいる。これはシステムがフェールセーフになっておらず、フェールアウトになっているためで、システムの安全性からすると致命的な問題となる。これは、センサの故障に関して、加熱手段の断線などの問題は検出できたとしても、センサ自体が劣化したか否かの判定ができていないことと関係する。また、機器の寿命よりもセンサのライフが短いことにも関係する。
【0011】
ガスセンサを燃焼機器に搭載して不完全燃焼の検出の目的に用いる場合、不完全燃焼の危険性が増加するのは、燃焼機器をかなり使い込んだ後の状態の場合の方が多いが、そのときにはガスセンサの劣化が進行している危険性があり、ガスセンサの劣化により出力信号が低下すると不完全燃焼を検出できないという問題点があった。
【0012】
これは、化学センサの出力が低下するのは、すなわち劣化するのは、化学センサの中心的な機能を担う電極や触媒が反応の進行とともに経時的に劣化することによるものであり、この劣化は、燃焼の排気ガス中に存在する水素、炭化水素などの還元性ガスで触媒が還元されたり、電極表面に硫黄系化合物などが強く吸着したりして、一酸化炭素の検出反応が阻害されることによる。これらの化学センサでは、センサ機能の中心を担う電極または触媒などに貴金属を用いる場合が多いが、これらの貴金属は、硫黄系化合物やシリコーン系化合物に弱くて劣化し易く、耐久性の確保が非常に困難になるという問題点があった。また燃焼機器の排気ガスに共存する炭化水素は、分子量も大きく、分子のサイズも大きいため、白金のような貴金属表面に吸着すると、一酸化炭素の吸着が阻害され、妨害ガスとして悪影響を及ぼすという問題点もあった。
【0013】
さらに、本質的にセンサシステムがフェールセーフでないため、これを高い信頼性で実用化できるようにするためには、極めて耐久性において信頼度が高いセンサが求められるが、現在、思想的レベルにおいても耐久性の保証をきちんと確立できたセンサシステムは実現されていないという問題点もあった。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の問題点を解決するために、本発明のガスセンサは、一対の白金電極を両面に形成して成る酸素イオン導電性固体電解質平板とその両面に外周をシールして配置した一対の細孔径を制御して成るセラミックガス選択透過体を備え、前記セラミックガス選択透過体の片方の面に加熱手段および多孔性触媒体を配した構成とする。酸素イオン導電性固体電解質素子の片面に一対の白金電極を形成する構成も含むが両者とも基本思想は同じである。
【0015】
本発明の基本思想は、センサの劣化は、大部分が共存ガスによって生じるので、一酸化炭素の検出に必要なガス以外の共存ガスは、ガス検出素子に触れさせないようにすれば、半永久的な耐久性が実現でき、半永久的な耐久性が実現できれば、実用的にはフェールアウトは問題にはならないという考え方である。すなわち、上記ガス選択透過体を介して、ガス検知素子に被検出ガスを含む気体が接触する構成によって、センサ寿命に悪影響を及ぼす共存ガスのガス検知素子への到達を規制するものである。すなわち酸素イオン導電体を用いる固体電解質式一酸化炭素センサの最大の課題である電極の一酸化炭素以外のガス例えば亜硫酸ガスによる劣化を細孔径を制御してなるガス選択透過体によりその電極面への侵入を抑制または遮断することで防止するものである。
【0016】
ガス選択透過体は、その細孔を制御した多孔体を用いて、多孔体中のガスの透過速度の違いを利用して、被検出ガスと検出に不要な共存ガスとの分離を行う。
【0017】
一般に多孔体の細孔内の気体分子の透過機構は、以下のように変化する。気相での流れは、分子間の衝突が支配的な粘性流領域から、細孔サイズが小さくなるとともに、分子−細孔壁間の衝突が支配的なKnudsen(クヌッセン)拡散領域に移行する。この時、分子の個々の性質が現れるようになり、透過速度の比は理論的には、分子量の比の平方根で与えられる。さらに、細孔が小さくなり、分子のサイズになると、気体分子は流れに垂直な方向の運動の自由度を失い、気体として存在することができなくなる。この状態を分子篩と呼んでいる。また、分子が細孔の壁面に吸着しつつ輸送される表面拡散が気相流と併存する。とくに、圧力が毛管凝縮圧を越えると、吸着層が全細孔を覆うため、表面拡散は毛管凝縮流に移行する。
【0018】
一酸化炭素の場合には、ガス検知素子の動作に必要な一酸化炭素と酸素に対して、悪影響を及ぼす亜硫酸ガスおよび灯油蒸気などの炭化水素ガスなどの共存ガスとは、分子量が異なるので、クヌッセン拡散領域の細孔サイズで、ガス検知素子への流入を規制することができる。さらに、表面拡散、毛管凝縮流、分子篩を利用することで、分離能を高めることができる。本発明では、とくに、オングストロームオーダーでの細孔径の制御と、細孔内の表面の化学的な改質を目的とした細孔内への被膜形成により、有効なガス選択透過性を多孔体に付与して用いる。
【0019】
この場合には、シリカもしくはジルコニアの一種以上を含む皮膜にて細孔径を制御したガス選択透過体を通してガス検知素子とガスを接触させる。細孔径が10Å以下のサイズの場合、ガス分子は、分子篩型または表面拡散型の透過性を示し、ガス分子のサイズにより流入が規制される特性または、ガス分子と細孔内壁との親和性により多孔体内部への拡散性が決定される特性を持つ。ガス検出素子の動作に必要なガスの出入りの挙動はガス検知素子の原理により異なるが、固体電解質式の場合には、一酸化炭素、酸素が流入しガス検知素子に接触することと、酸化触媒との接触反応により生じる二酸化炭素が出ていくことであるが、検知素子が裸の状態にある場合には、前記以外に、検知素子の動作には直接関係はしない窒素および水蒸気や検知素子の妨害ガスになる二酸化硫黄や灯油蒸気さらにはシリコーン系化合物などが進入してくる。
【0020】
灯油蒸気やシリコーン系化合物などは、分子のサイズが大きいため、流入を有効に規制でき、また二酸化硫黄についても大幅に流入を規制できるが、水蒸気については、一酸化炭素分子と同レベルの分子サイズをもつため通常は、流入の規制ができない上に、条件によっては多孔体の細孔内で毛管凝縮を起こし細孔を閉塞してしまう懸念をもつ。その点についてガス選択透過体の表面をシリカもしくはジルコニアの一種以上を含む皮膜にて被覆することで強い疎水性を持たせることができ、水蒸気の表面拡散性を阻害し水蒸気の凝縮を防止できる。また同様に親水的な二酸化硫黄の表面拡散性も阻害し、二酸化硫黄の流入をブロックできる。上記により、酸化触媒、白金電極などのガス検出素子を構成する要素への被毒影響を軽減化することができる。なお多孔体の基材の材質は耐熱性の観点からセラミック製を用いることが必要である。
【0021】
本発明のもう一つのポイントは、酸素イオン導電性固体電解質素子を駆動させるための熱源の構成にある。熱源を多孔性触媒側に配置することおよびコスト、耐久性の面で優位となる電熱線を用いることに特徴を持たせている。加熱手段と併用して、必要に応じて、サーミスタ、熱電対などの温度検知手段を併用して温度制御を実施する。加熱手段としては、電熱線、抵抗ヒータ膜など各種手段が適用でき、抵抗ヒータ膜に用いる材料としては、白金など貴金属系のものが耐久性の点では望ましく、また電熱線を用いる場合には、鉄−クロム系、ニッケル-クロム系のものが用いることができる。
【0022】
ガス選択透過体のベースとなるセラミックの多孔体基材について以下に説明する。セラミックの多孔体基材は、すでに多孔性セラミックまたは多孔性ガラスとして市販されているものを用いて作製する。多孔性セラミックまたは多孔性ガラスはセラミックフィルターとして各種用途に利用されおり、例えば、ビールの酵母の分離などに利用されていることはよく知られている。その孔径は0.05μmから数μm程度であるが、このままでは、ガスの選択透過性は得られないので、その細孔を埋めて細孔径を制御する必要がある。
【0023】
細孔径の制御方法としては、細孔表面上にゾル−ゲル皮膜を形成して行う方法。または、熱分解により細孔内に皮膜を形成して細孔を制御するCVD法などが有力な方法であるが、これまで知られている各種皮膜形成法が適用可能である。この中で、例えば、金属アルコキシドの分解反応(ゾルゲル法)やCVD反応を利用する方法は有効で、細孔径をガスの分子拡散領域の孔径まで制御することができる。これらの方法によると孔径は、平均細孔径で10Å以下の均一な細孔に制御できる。ゾルゲル法よりは、CVD法の方が細孔径をより細かく均一に制御することができる。この場合の細孔のサイズは、ガス分子のサイズまでにする必要があり、多孔体の細孔内のガスの移動は、細孔表面の物質とガスとの相互作用の影響も加わり、現実には複雑な拡散特性をもつが、基本的にはガス透過過程は、分子篩拡散または表面拡散の領域になり、分子のサイズの大きな分子の透過を著しく阻害するかまたは、細孔内壁との親和性によって拡散特性が規制されるような特性をもつようにして、大きなサイズの分子または細孔内壁との親和性の低い分子は、ガス選択透過体を通過することができないようにする必要がある。
【0024】
本発明の構成で、細孔径を制御したセラミックガス選択透過体と電極が密着して形成されるので、多孔体の細孔径分布が、仮に不均一で欠陥(大きな細孔)が含まれたとして、その部分の電極は被毒ガスにより、被毒して劣化することがあっても、正常な細孔に接触する電極部は、保護され劣化が避けられることになる。多孔体の細孔内に酸化触媒を担持した場合の効果も上記と同様で、正常なサイズの細孔内に形成された触媒は、被毒ガスによる劣化の影響を受けずガスセンサの長寿命化を実現できる。
【0025】
本発明のガスセンサの動作について、以下に説明する。すなわち、一般大気中、もしくは燃焼機器の排ガス中に含まれるガスは、最初に、ガス選択透過体の細孔と接触するが、細孔径より分子サイズの大きなガスたとえば、灯油蒸気やシリコーンオリゴマーなどは、センサの内部へ透過できないまたは透過が著しく規制される。またSO2やNO2などの反応性ガスは、分子量が大きいことと細孔壁との親和性が悪く細孔内を拡散し難く、ガス検知部までほとんど到達できなくなる。酸素、一酸化炭素、窒素などの低分子のガス分子はクヌッセン拡散に近い状態でガス検知部に自由に到達できる。水蒸気は、細孔壁との親和性が悪いため、細孔内で毛管凝縮することはなく、したがって細孔が閉塞してしまうこともない。以上の構成により白金電極または酸化触媒などのガス検知素子の中心の機能を担う要素の劣化を防止するため、ガスセンサの長寿命化が見込める。
【0026】
ガス選択透過体を介して、固体電解質素子の電極面に被検出ガスを含む気体が接触する構成を用いることで、一般には、ガス検知素子を単独で用いる場合と比較して、応答性が損なわれたり、感度が低下したりすることが懸念される。本発明のガスセンサは、応答性には、ほとんど影響しない。ガス選択透過体は、検出対象ガスである一酸化炭素の透過を妨害するものではないため当然の挙動である。また、感度については、ガスセンサの原理により、その特性は異なり、固体電解質素子の場合には、センサ出力の若干の低下が認められる。ただし、これは実用上支障のないレベルである。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明の第一の実施の形態は、一対の白金電極を両面に形成して成る酸素イオン導電性固体電解質平板とその両面に外周をシールして配置した一対の細孔径を制御して成るセラミックガス選択透過体を備え、前記セラミックガス選択透過体の片方の面に加熱手段および多孔性触媒体を備えて構成する。加熱手段により酸素イオン導電性固体電解質平板の動作および多孔性触媒体の触媒活性が確保される。とくに触媒体側に加熱手段を配しているため触媒反応に必要な温度が得られやすい。上記の構成により、酸素イオン導電性固体電解質式一酸化炭素センサの最大の課題である電極の劣化は、以下のように防止される。電極を劣化させるガスは、細孔径を制御して成るセラミックガス選択透過体により電極面への流入が規制またはブロックされることで電極の劣化が防止される。とくに電極とガス選択透過体とが密着した配置であるため、本実施形態の場合には、分子サイズの大きな妨害ガスが流入しても、その細孔に密着しているガス検知素子の部分は局部的に劣化することがあっても、異常のない大部分の細孔については、効果が持続するため、実用的な信頼性のレベルが高いガスセンサが実現できる。以上により、従来からの化学センサの最大の弱点である不安定性、すなわちガス検知素子の中心の機能を担う電極の劣化により、ゼロ点が経時的に大きく移動したり、センサ出力が低下したりするなどの耐久性にまつわる問題点を解消できる。
【0028】
本発明の第二の実施の形態は、加熱手段として、セラミックガス選択透過体の表面に、スパッタリング膜、電子ビーム蒸着膜、印刷膜の群から選定して成る抵抗膜を用いた構成としたものである。これらの抵抗膜は、いずれもセラミックガス選択透過体のガスの透過特性を大きく損なうことなく形成可能であり、抵抗体として白金など貴金属系を用いることで高い信頼性のもとセンサ駆動に必要な動作温度を実現することができる。このようにして構成したセンサが耐久性および動作の安定性の面で優れていることは第一の実施の形態の場合と同様である。
【0029】
本発明の第三の実施の形態は、多孔性触媒体として、酸化触媒をセラミック繊維中に混抄したセラミックシートでその内部に電熱線を備えた多孔性触媒体を用いた構成としたものである。本構成は抄紙工程で電熱線を内部に入れても実現できるが、2枚の触媒混抄セラミックシートを電熱線を挟み込んだ状態で接着または耐熱繊維で電熱線を固定して作製してもよい。
【0030】
セラミック繊維としては、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、ジルコニアなどの一種以上を組み合わせた繊維を用いる。これらの無機繊維は1000℃レベルの高い耐熱性と安定性を有する。酸化触媒としては、鉄、マンガン、銅、ニッケル、コバルトなどの遷移金属酸化物や複合酸化物およびγアルミナなどの耐熱性多孔性担体上に白金、パラジウムなどの貴金属を担持した触媒のいずれも用いることができる。耐水蒸気安定性の観点からは、貴金属系が望ましい。多孔性触媒体としては、前記酸化触媒粒子をセラミック繊維とともに混抄して作製したセラミックシートを用いて、この内部に電熱線を配して作製する。本構成により、多孔性触媒体および酸素イオン導電性固体電解質の動作に必要な温度が得られる。このようにして構成したセンサが耐久性および動作の安定性の面で優れていることは第一の実施の形態の場合と同様である。
【0031】
本発明の第四の実施の形態は、多孔性触媒体として、酸化触媒をセラミック繊維中に混抄したセラミックシートおよび電熱線およびセラミック繊維シートを積層した構成を持たせたものである。電熱線がガスセンサの駆動に必要な温度を提供するのは、先の実施形態と同様である。本実施形態の多孔性触媒体を構成するエレメントの作製方法は、第三の実施の形態と同様である。このようにして構成したセンサが耐久性および動作の安定性の面で優れていることは第一の実施の形態の場合と同様である。
【0032】
本発明の第五の実施の形態は、一対の白金電極を両面に形成して成る酸素イオン導電性固体電解質平板とその両面に外周をシールして配置した一対の細孔径を制御して成るセラミックガス選択透過体と前記ガス選択透過体の外側を片面側に対応する領域のみ酸化触媒を坦持したセラミックシートで外包しその外側に電熱線を配した構成のものである。本実施形態により、外部に配した電熱線によりガスセンサの動作に必要な温度が提供される。本実施形態で用いるその一部の領域に酸化触媒を備えたセラミックシートは、γアルミナなどの多孔性担体を混抄したセラミックシートを作製し、これに必要な領域のみ貴金属溶液中に浸漬したのち、乾燥、焼成、還元して作製される。このシートをベース素子の外側に実施形態の配置にて外包し、さらに外側に電熱線を巻回しして得られる。本構成のガスセンサは優れた一酸化炭素ガスの検出能力を備えた上、とくに電極部は、細孔径を制御したガス選択透過体で保護されているため耐久性および動作の安定性の面で優れていることは第一の実施の形態の場合と同様である。
【0033】
本発明の第六の実施の形態は、一対の白金電極を片面に形成して成る酸素イオン導電性固体電解質平板と前記電極を備えた面に外周をシールして配置した細孔径を制御して成るセラミックガス選択透過体と前記セラミックガス選択透過体の表面に前記一対の白金電極の片方側の電極面に対応する領域に備えた多孔性触媒体とよりなる構造体の外面をセラミック繊維の織布もしくは不織布で外包し、その外側に電熱線を配した構成をもつ。本実施形態により、外部に配した電熱線によりガスセンサの動作に必要な温度が提供される。本実施形態では、電極に配置が酸素イオン導電性固体電解質平板の同じ側の面に配置されるが、ガスセンサとしての動作の原理は、対向面に電極が配置された実施形態1から5の場合と同様である。ガスセンサの電極が細孔径を制御して成るセラミックガス選択透過体により保護されているため耐久性および動作の安定性の面で優れていることは第一の実施の形態の場合と同様である。本実施形態の場合には、細孔径を制御して成るセラミックガス選択透過体が一枚で済むためコスト面で優位になる。ただし、酸素イオン導電性固体電解質平板の表面の導電特性を利用するため固体電解質の表面特性が安定した固体電解質素子を用いる必要がある。
【0034】
【実施例】
以下本発明の実施例について図1ないし図6を用いて説明する。
【0035】
(実施例1)
図1は本発明の実施例1のガスセンサの断面概念図を示すものである。図1において、1は、酸素イオン導電性固体電解質で、イットリア安定化ジルコニア(イットリア8モル%品)などの平板状のものである。酸素イオン導電性固体電解質平板の両面に一対の白金電極2が形成されている。白金電極は、厚膜印刷法やスパッタリング、電子ビーム蒸着法などの真空系製膜法により、0.3μmから20μmの膜厚に形成して用いる。スクリーンやマスクを用いて必要なパターンに電極を形成する。前記一対の電極に密着して細孔径を制御したセラミックガス選択透過体3が両面に形成される。細孔径を制御したセラミックガス選択透過体3の片方の面に加熱手段5および多孔性触媒体6が配置される。
【0036】
シール4は、酸素イオン導電体固体電解質平板と細孔径を制御したセラミックガス選択透過体とを接合することに加えて、ガスがバイパスして白金電極2へ到達することがないように、ガスは、細孔径を制御したセラミックガス選択透過体3のみを介して流入するように備えたものである。各種無機接着剤やガラス組成物を用いて接合する。いずれの場合も、組成的に熱膨張係数を調整したものを用いる必要がある。シール4は図1では外側に設けているが、細孔径を制御したセラミックガス選択透過体3と酸素イオン導電性固体電解質平板1の白金電極2を含まない対向した接触面に設けてもよい。
【0037】
多孔性触媒体は、ガスの透過特性を備えた上で一酸化炭素含有ガスがその間を透過する際に一酸化炭素を酸化する特性を備えたものであればよく、各種の耐熱性多孔体に酸化触媒を担持したものを用いることができる。図1で加熱手段は、細孔径を制御したセラミックガス選択透過体の多孔性触媒側表面に配置されているが、そこに限定されるものではなく、多孔性触媒体の側であれば多孔性触媒体の外側や内部に配置してもよい。固体電解質式ガスセンサとしての動作のための400〜500℃の温度は、加熱手段5により提供される。酸素イオン導電性固体電解質平板1の両面の白金電極上には、片方の電極には一酸化炭素を含有する空気が、他方の電極には、多孔性触媒体により一酸化炭素を除去された空気が、いずれも細孔径を制御したセラミックガス選択透過体の細孔内を拡散した上で、到達し、両電極間で、一酸化炭素濃度に対応して酸素濃淡電池型起電力出力が得られる。これにより一酸化炭素濃度が検出される。また固体電解質式ガスセンサの電極に吸着して寿命に悪影響を及ぼすガス成分は、細孔径を制御したセラミック製ガス選択透過体3により、電極面への到達を抑制または阻止されるため長寿命化が図れる。
【0038】
セラミック製ガス選択透過体3は、アルミナあるいはジルコニアなどの焼結法により作製された細孔径が0.1〜1μmのセラミック製多孔体基材を用いて、ゾルゲル法もしくは、CVD法により、細孔表面上に細孔制御皮膜を形成し用いる。セラミック原料粉末をそのままもしくは樹脂などの有機物と混合して所定の形状に成型した後、完全焼結する温度よりも低温側で焼結して作製する。焼結法で作製される多孔体の平均細孔径は、0.1μmが限度である。したがって、本発明の目的に用いるためには、焼結法で作製された多孔性基材を用いて、その細孔をコーティング膜により処理する必要がある。焼結法で作製された、多孔体は精密濾過膜として一般に市販されているので、本発明においても、セラミック製多孔性基材は、この市販品を用いることができる。
【0039】
次に、ゾルゲル法による、細孔制御方法について、以下で説明する。ジルコニウムイソプロボキシドやテトラエトキシシランなどの金属アルコキシドを加水分解後、塩酸等の触媒条件下で縮重合させて目的のゾル溶液を作成する。このゾル溶液を貫通する孔をもつ多孔性セラミックと接触、例えば多孔性セラミックをゾル中に浸漬すると、毛管力によりゾル溶液が吸引され、このゾルを乾燥させると、多孔性セラミックの細孔内でゾルの濃縮さらにはゲル化が起こる。さらに、加熱を進めると、ゲル化から焼結が進みコーティング膜が形成される。必要により、ゾル溶液を多孔性セラミックを用いて濾過する方法も採用できる。この方法を利用して、細孔径の制御が可能になる。多孔性セラミックの細孔表面の濡れ性、ゾルの溶剤、ゾルの濃度、浸漬時間、セラミックの引き上げ速度などを調整することで比較的均質な細孔径を持つガス選択透過体が得られる。
【0040】
ゾル-ゲル法以外にCVD法で、流通系で化合物を熱分解させながら多孔体の細孔内に酸化物皮膜を形成成長させることで細孔制御を行っても良い。
【0041】
ガス選択透過体3の基材の材質について、記載する。熱膨張係数の観点において、ガス選択透過体の基材は、アルミナ化合物もしくはジルコニア化合物を用いるのが望ましい。
【0042】
またガス選択透過体の細孔制御に用いる細孔制御被膜の材質は、ジルコニア、シリカまたはその混合物を用いるのが望ましい。ガス選択透過体を特に、10Å以下の平均細孔径にした場合に有効になる。10Å以下の細孔は、ガス選択透過体の外部より内部に流れるガス流において高分子量のガスは通過させない有効な分子篩効果を示す。また孔の内部に生成しているゲル皮膜すなわち細孔制御処理被膜との相互作用により、ガス透過性に選択性がでる。すなわち、ガス分子とゲル分子との分子間力は、永久双曲子間の相互作用による配向力および永久双曲子と誘起双曲子間の誘起力およびファンデルワールス相互作用などに基づく分散力によるガス透過の選択性、すなわち表面拡散性をもつが、シリカもしくはジルコニアの一種以上を含む疎水性の細孔制御皮膜は、10Å以下の領域の細孔径を持つ多孔体を適用する上で課題となる水蒸気の毛管凝縮による細孔閉塞の問題がなく、SO2などの白金電極を劣化させるガスの進入を完全にブロックすることができる。
【0043】
(実施例2)
図2は本発明の実施例2のガスセンサの要部斜視概念図を示すものである。図2において、細孔径を制御した平板状のセラミックガス選択透過体3の表面に、スパッタリング膜、電子ビーム蒸着膜、印刷膜の群から選定した抵抗膜7を形成して用いるものである。抵抗膜7は、印刷スクリーンのパターンまたはマスキング治具により所定の回路パターンに形成する事ができる。製造上の便宜から抵抗膜は、多数個がとれる適正なサイズで抵抗膜を形成し、あとから必要なサイズに切断して用いることもできる。またその体積固有抵抗を抵抗体組成および膜厚およびパターン幅、パターン長さ等を調整することでヒータとしての適正な動作が可能な抵抗値に調整することができる。抵抗膜を形成した部分は、ガスの透過性は低下または損なわれるが、開口比を調整してガスの透過特性をあまり損なわずに抵抗膜を形成する事ができる。ヒータ膜の形成手段として、メッキ膜などの湿式法を用いる場合には、細孔は閉塞し、ガス選択透過体の特性は失われる。本実施例のガスセンサとして動作やその長寿命化を実現できる効果などは実施例1の場合と同様である。皮膜形成法の中で、真空技術を用いるスパッタリングや電子ビーム蒸着法などはバッチ処理で生産性の面で課題があるが、基本的に本ガスセンサは、電極面に吸着する酸素濃度比を用いる原理によるので、ガスセンサの寸法を小型化してもセンサ特性は基本的に変化しない利点があり。サイズを小型化することで、コストおよび生産性の課題を解決することができる。
【0044】
(実施例3)
図3は本発明の実施例3のガスセンサの要部である多孔性触媒体の断面概念図を示すものである。図3において、多孔性触媒体はマトリックスのセラミック繊維8と酸化触媒9を混抄したセラミックシートの内部に電熱線10を備えた構成をもつ。図3において、多孔性触媒体は、酸化触媒粒子9をセラミック繊維8とともに混抄してなるセラミックペーパーより成る。当セラミックペーパーは、鉄、マンガン、銅、ニッケル、コバルト、クロムなどの遷移金属酸化物触媒粉末、または、アルミナなどの多孔質担体上に貴金属元素とともに担持した酸化触媒粉末をシリカ・アルミナ繊維などのセラミック繊維とアルミナゾルやコロイダルシリカなどの無機結合材とともに水中に分散させた状態から濾過、圧縮、乾燥して作製する。本実施例の多孔性触媒被膜は、機能を担う酸化触媒がマトリックス中に均一に分散した状態を保持していると同時に酸素の拡散性に優れているため、極めて特長のある多孔性触媒被膜を形成することができる。電熱線は、鉄-クロム系、ニッケル−クロム系などの電熱線を用いる。具体的な構成は、2枚の触媒混抄セラミックシートの間に絶縁マイカやセラミックシートなどの台座シートに固定した電熱線エレメントを挟み込んで接着する方法や端部をかしめて固定するなどの方法により作製することができる。このようにして作製した加熱手段を備えた多孔性触媒体を特徴とするガスセンサは、実施例1、2と同様に安定した動作と優れた耐久性を備えている。
【0045】
(実施例4)
図4は本発明の実施例4のガスセンサのガスセンサの要部である加熱手段を備えた多孔性触媒体の断面概念図を示すものである。図4において、多孔性触媒体は、酸化触媒をセラミック繊維中に混抄したセラミックシート11と電熱線10とセラミック繊維シート12を積層した構成よりなる。酸化触媒をセラミック繊維中に混抄したセラミックシート11及び電熱線は、実施例3の場合と同様である。本実施例の加熱手段を備えた多孔性触媒体の作製法は実施例3の場合と同様である。セラミックシート12を配置する意味は、電熱線の絶縁性の確保にある。このようにして作製した加熱手段を備えた多孔性触媒体を特徴とするガスセンサは、先の実施例と同様に安定した動作と優れた耐久性を備えている。
【0046】
(実施例5)
図5は本発明の実施例5のガスセンサの断面概念図を示すものである。図5において、記号1から5は図1と同じである。すなわち、一対の白金電極2を両面に形成した酸素イオン導電性固体電解質平板1とその両面に外周をシール4して配置した一対の細孔径を制御したセラミックガス選択透過体3を備えた構成である。さらに本実施例では、前記細孔径を制御したセラミックガス選択透過体3の外側に片面側に対応する領域13のみ酸化触媒を担持したセラミックシート13.14で外包し、その外側に電熱線15を配した構成を持つ。セラミックシートは、シリカ、アルミナ、ジルコニアなどのセラミック耐熱性繊維を用いて、抄紙して作製したものを用いる。一部の領域への触媒の担持は、γアルミナなどの多孔性担体の粉末を先のセラミック耐熱繊維とともに混抄して作製したセラミックシートを用いて、これに貴金属系塩溶液を含浸させた吸着させた後、乾燥、焼成、還元して作製したものを用いる。
【0047】
貴金属系と比較すると特性は劣るが、遷移金属塩溶液を用いて、遷移金属の酸化物または複合酸化物を担持して用いても良い。セラミックシートはその端部をアルカリ金属珪酸塩、金属リン酸塩などの無機接着剤で固定するのが望ましい。電熱線は、先の実施例と同調のものを用いる。本実施例のガスセンサにおいて、電熱線15により、固体電解質式ガスセンサの動作に必要な温度が提供される。本構成により、一対の白金電極において、上面側の電極には、触媒層で酸化された結果、一酸化炭素を含有しない空気(酸素)が、下面側の電極には、そのまま一酸化炭素を含有する空気(酸素)が到達し、この一酸化炭素により酸素が還元され、一対の電極間には、酸素濃淡電池による起電力が発生する。
【0048】
これにより、一酸化炭素の検出ができる。また固体電解質式ガスセンサの電極に吸着して寿命に悪影響を及ぼすガス成分は、細孔径を制御したセラミック製ガス選択透過体3により、電極面への到達を抑制または阻止されるためゼロ点などの安定化と長寿命化が図れる。
【0049】
(実施例6)
図6は本発明の実施例6のガスセンサの断面概念図を示すものである。図6において一対の白金電極17を片面に形成した酸素イオン導電性固体電解質平板16と前記電極を備えた面に外周をシール20して配置した細孔径を制御したセラミックガス選択透過体18と前記セラミックガス選択透過体18の表面に前記白金電極の片方の電極面に対応する領域に備えた多孔性触媒体19とより構成される構造体の外面をセラミック繊維の織布または不織布23で外包し、その外側に電熱線22を配した構成をもつ。ここで用いるセラミック繊維は、シリカ、アルミナ、ジルコニアなどのセラミック耐熱性繊維を用いて、抄紙して作製した不織布および長繊維を織って作製した織布を用いる。本実施例においても、固体電解質式ガスセンサとしての駆動に必要な400〜500℃の温度は、電熱線により実現される。
【0050】
本構成により、上面側の一対の白金電極において、左側の電極には、多孔性触媒体を通過した結果、一酸化炭素を含有しない空気(酸素)が、右側の電極には、一酸化炭素を含有する空気(酸素)が到達し、この一酸化炭素により酸素が還元され、一対の電極間には、酸素濃淡電池による起電力が発生する。これにより、一酸化炭素の検出ができる。また固体電解質式ガスセンサの電極に吸着して寿命に悪影響を及ぼすガス成分は、細孔径を制御したセラミック製ガス選択透過体18により、電極面への到達を抑制または阻止されるためゼロ点などの安定化と長寿命化が図れる。
【0051】
以下に本発明の効果に関わる実験結果を記載する。
酸素イオン導電性固体電解質として、イットリア安定化ジルコニア(イットリア8モル%品)の市販焼結品(寸法:10mm×10mm×0.35mm)を用いた。この両面の中央部に6×8mmの寸法で、一対の電極を形成した。電極は、1300℃焼成にて、焼成膜厚で、厚膜印刷により10μmの膜厚で形成した。
【0052】
セラミックガス選択透過体は、以下の手順で作製した。ドクターブレード法にて、粒度分布および焼成温度を調整して作製したジルコニア多孔体基板(平均細孔径が0.2μmで寸法が10mm×10mm×0.5mmに切断したもの)を用いて、ジルコニアイソプロポキシドを主成分とするアルコキシド溶液に浸漬処理して細孔制御を行った。細孔制御は、アルコキシドの20Wt%溶液を用いて、塗り重ねることでより細かい細孔を作製するようにした。なお、平均細孔径は、ポロシメータを用いて水銀圧入法で評価した。平均細孔径は、塗り重ね回数1回で0.1μm、3回で0.08μmとなったので3回塗り重ねたものをサンプルとして用いた。このようにして作製した細孔径を制御したガス選択透過体を用いて、その片面に250℃の基材温度で白金をスパッタリングして、0.5μmの抵抗パターンを形成した。抵抗値は約15Ωであった。
【0053】
次に多孔性触媒体は、以下の手順で作製した。先ず触媒については、粒径が40/60メッシュのγアルミナに0.1wt%の白金およびパラジウムを坦持して(塩化白金酸、塩化パラジウムの硝酸、塩酸水溶液を吸着させた後、水素化ホウ素ナトリウム水溶液にて還元)酸化触媒粉末を作製した。この酸化触媒粉末をコロイダルシリカを結合材にして、500g/m2の坪量にてシリカ・アルミナ繊維とともに混抄して30cm角で厚み1mmのシートを得た。次にこのシートを10mm角に切断して用いた。
【0054】
以上で作製した各要素を積層して図1に示す構造のガスセンサを試作した。ガスセンサ素子を積層するための接合剤は、市販の無機接着剤「スミセラム」(商品名)を用いておこなった。
【0055】
本試作センサについて、流通型の試験装置を用いて、100ppmの亜硫酸ガスを通しての加速試験により、本試作センサの耐久性を評価した。試験は、一般大気に100ppmの濃度の亜硫酸ガスを添加した空気を連続通気し、間欠的に亜硫酸ガスと止め、一般空気のみを通気してのゼロ点の安定性の確認と、1500ppmの一酸化炭素含有空気を送気してのセンサの起電力出力を確認している。対比サンプルとして同時に試作した細孔径制御を行わない通常のセラミックフィルタすなわち、0.2μmの平均細孔径の素子の場合は、ゼロ点が100mV以上もずれた上に、約100時間で出力が出なくなった。
【0056】
これに対して、上記試作センサの試験結果を図7に示す。図7に見られるように、約700時間の経過後もガスセンサのゼロ点は安定し、センサ出力も時間経過とともに増大する傾向が認められる。これは、細孔径が亜硫酸ガスを完全に遮断するレベルにはないためわずかに電極面に侵入する。電極面への侵入は、触媒のある側と触媒のない側で差を生じ、触媒のない側がわずかに亜硫酸ガスが侵入し易いと考えられる。亜硫酸ガスは、酸素、一酸化炭素よりも吸着性が強いと考えられ、一対の電極間の酸素濃度差を拡大すると考えられる。これが、時間経過とともにセンサ出力が増加する原因と考えられる。実用的には、このセンサ動作は、フェールセーフ側の挙動になり、センサの信頼性を高めることになる。平均細孔径が0.2μmであっても、細孔は分布を持つため、亜硫酸ガスはあるレベルからは完全に遮断されると考えられ、きわめて長寿命が実現できる。
【0057】
【発明の効果】
本発明のガスセンサは以上説明したような形態で実施され、次の効果が得られる。
【0058】
(1)一酸化炭素の検出に関し、フェールアウトの弱点をカバーすることが出来、実用上のフェールセーフが見込める。このように素子構成の信頼性が高く燃焼機器等に設置するのに好適である。
【0059】
(2)化学センサの実用面において、従来から最大の課題とされていた耐久性に関して、妨害ガスの電極面への到達を規制する細孔径を制御したセラミックガス選択透過体を用いる構成によりガスセンサへの被毒影響を持つ酸性ガスを完全にブロックできるという効果により飛躍的な長寿命化が見込まれ、極めて高信頼性のガスセンサシステムが構築できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1に係わるガスセンサを示す断面図
【図2】本発明の実施例2に係わるガスセンサの要部を示す断面図
【図3】本発明の実施例3に係わるガスセンサの加熱手段を備えた多孔性触媒体を示す断面図
【図4】本発明の実施例4に係わるガスセンサの加熱手段を備えた多孔性触媒体示す断面図
【図5】 本発明の実施例5に係わるガスセンサを示す断面図
【図6】本発明の実施例6に係わるガスセンサを示す断面図
【図7】本発明の実施例に係わるガスセンサの加速試験結果を示す特性図
【符号の説明】
1 酸素イオン導電性固体電解質
2 (一対の)白金電極
3 ガス選択透過体
4 シール
5 加熱手段
6 多孔性触媒
Claims (1)
- 一対の白金電極を両面に形成して成る酸素イオン導電性固体電解質素子と、前記酸素イオン導電性固体電解質素子の外側に設けられシール部材によってシールされると共に細孔径を制御して成る一対のセラミックガス選択透過体と、前記セラミックガス選択透過体の片方の面に設けられた加熱手段および多孔性触媒体とを備えたガスセンサにおいて、前記多孔性触媒体として、酸化触媒をセラミック繊維中に混抄したセラミックシートでその内部に電熱線を備えたガスセンサ。
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