JP3929706B2 - イリジウム錯体からなる発光素子材料及び発光素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気エネルギーを光に変換して発光できる発光素子用材料および発光素子に関し、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信デバイス等の分野に好適に使用できる発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
今日、種々の表示素子に関する研究開発が活発であり、中でも有機電界発光(EL)素子は、低電圧で高輝度の発光を得ることができるため、有望な表示素子として注目されている。例えば、有機化合物の蒸着により有機薄膜を形成する発光素子が知られている(アプライド フィジックス レターズ、51巻、913頁、1987年)。この文献に記載された発光素子はトリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム錯体(Alq)を電子輸送材料として用い、正孔輸送材料(アミン化合物)と積層させることにより、従来の単層型素子に比べて発光特性を大幅に向上させている。
【0003】
近年、有機EL素子をカラーディスプレイへと適用することが活発に検討されているが、高性能カラーディスプレイを開発する為には青・緑・赤、それぞれの発光素子の特性を向上する必要が有る。
【0004】
発光素子特性向上の手段として、オルソメタル化イリジウム錯体(Ir(ppy)103: Tris−Ortho−Metalated Complex of Iridium(III )with 2−Phenylpyridine)からの発光を利用した緑色発光素子が報告されている(Applied Physics Letters 75,4(1999).)。本素子は外部量子収率8%を達しており、従来素子の限界といわれていた外部量子収率5%を凌駕しているが、緑色発光に限定されているため、ディスプレイとしての適用範囲が狭く、高効率で他色に発光する発光素子材料の開発が求められていた。
【0005】
一方、有機発光素子において高輝度発光を実現しているものは有機物質を真空蒸着によって積層している素子であるが、製造工程の簡略化、加工性、大面積化等の観点から塗布方式による素子作製が望ましい。しかしながら、従来の塗布方式で作製した素子では特に発光効率の点で蒸着方式で作製した素子に劣っており、新規発光素子材料の開発が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、発光特性が良好な発光素子およびそれを可能にする発光素子用材料の提供にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この課題は下記手段によって達成された。
[1] 一般式(1)で表される部分構造を有するイリジウム錯体またはその互変異性体からなる有機電界発光素子材料。
【0008】
【化2】
【0009】
式中、Q1、Q2はピリジン環を形成するに必要な原子群を表す。
[2] 下記、一般式(2)で表される化合物、または、一般式(2)で表されるイオンを有する化合物からなる [1] に記載の有機電界発光素子材料。
【化11】
式中、Q 3 、Q 4 はそれぞれ前記一般式(1)におけるとQ 1 、Q 2 と同義である。L 1 は配位子を表し、m 1 は0〜6を表し、m 1 が複数の時、複数のL 1 は同一であっても異なっても良い。n 1 は1〜4を表し、n 1 が複数の時、複数の配位子(Q 1 、Q 2 を有する配位子)は同一であっても異なっても良い。
[3] 一対の電極間に発光層もしくは発光層を含む複数の有機化合物層を形成した有機電界発光素子において、少なくとも一層に[1]または [2]に記載の有機電界発光素子材料を少なくとも一種含有することを特徴とする有機電界発光素子。
[4] 電子輸送材料および/または正孔輸送材料を、前記発光層もしくは発光層を含む複数の前記有機化合物層中にさらに含有することを特徴とする [3] に記載の有機電界発光素子材料。
[5] [1] または [2]に記載の有機電界発光素子材料を含む層を塗布プロセスで成膜することを特徴とする[3] または [4]に記載の有機電界発光素子。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
一般式(1)について説明する。Q1、Q2 はピリジン環を形成するに必要な原子群を表す。Q1とQ2がさらに結合して、縮合環(例えばフェナントロリン環など)を形成しても良い。これらの環は置換基を有していても良い。
【0011】
Q1、Q2上の置換基としては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロアリールオキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロアリールチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよく、また、置換基同士が結合して環構造を形成しても良い。
【0013】
本発明の化合物(一般式(1)で表される部分構造を有するイリジウム錯体またはその互変異性体)のイリジウムの価数は特に限定しないが、3価が好ましい。化合物中にイリジウム原子を一つ有しても良いし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であっても良い。他の金属原子を同時に含有していても良い。
【0014】
本発明の化合物は種々の配位子を有することが出来る。配位子としては種々の公知の配位子が有るが、例えば、「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer-Verlag社 H.Yersin著1987年発行、「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社山本明夫著1982年発行等に記載の配位子が挙げられ、好ましくは、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、含窒素ヘテロ環配位子(例えばフェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノールなど)、ジケトン配位子、カルボン酸配位子、PF6配位子であり、より好ましくは塩素配位子、フェニルピリジン配位子、ジケトン配位子、PF6配位子である。
【0015】
本発明の化合物の配位子の種類は1種類でも良いし、複数の種類があっても良い。錯体中の配位子の数は好ましくは1〜3種類であり、特に好ましくは1、2種類である。
【0016】
本発明の化合物の炭素数は、好ましくは5〜100、より好ましくは10〜50、さらに好ましくは14〜30である。
【0017】
本発明の化合物の好ましい形態は、一般式(2)で表される化合物、または、一般式(2)で表されるイオンを有する化合物である。
【0018】
【化3】
【0019】
一般式(2)で表される化合物について説明する。Q3、Q4はそれぞれ前記Q1、Q2と同義である。L1は配位子を表し、例えば、前記で説明した配位子(一般式(1)で表される部分構造を有するイリジウム錯体またはその互変異性体が有しても良い配位子)が挙げられ、好ましい範囲も同様である。m1は0〜6を表し、0〜3が好ましい。m1が複数の時、複数のL1は同一であっても異なっても良い。n1は1〜4を表し、1〜3が好ましく、3がより好ましい。n1が複数の時、複数の配位子(Q1、Q2を有する配位子)は同一であっても異なっても良い。
【0020】
一般式(2)で表されるイオンを有する化合物について説明する。一般式(2)で表されるイオンを有する化合物は、一般式(2)で表されるイオンとその電荷を中和する対イオンからなる。対イオンは特に限定されないが、例えば「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社山本明夫著1982年発行等に記載の対イオンが挙げられ、ハロゲンイオン(フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)、シアノイオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、PF6イオンが好ましく、塩素イオン、PF6イオンがより好ましい。
【0021】
本発明の化合物は一般式(1)の繰り返し単位をひとつ有する、いわゆる低分子化合物であっても良く、また、一般式(1)の繰り返し単位を複数個有するいわゆる、オリゴマー化合物、ポリマー化合物(質量平均分子量(ポリスチレン換算)は好ましくは1000〜5000000、より好ましくは2000〜1000000、さらに好ましくは3000〜100000である。)であっても良い。本発明の化合物は低分子化合物が好ましい。
【0022】
次に本発明の化合物例を示すが、本発明はこれに限定されない。
【0023】
【化4】
【0024】
【化5】
【0025】
【化6】
【0026】
【化7】
【0027】
【化8】
【0028】
本発明の化合物の一例は Pure Appl. Chem., 52, 2717, (1980).等に記載されており、種々の公知の手法で合成することができる。例えば、配位子(ビピリジル誘導体など)、またはその解離体と遷移金属化合物(例えばK3IrCl6、イリジウムトリスアセチルアセナト錯体)を溶媒(例えば、ハロゲン系溶媒、アルコ−ル系溶媒、エ−テル系溶媒、水などが挙げられる)の存在下、もしくは、溶媒非存在下、塩基の存在下(無機、有機の種々の塩基、例えば、ナトリウムメトキサイド、t−ブトキシカリウム、トリエチルアミン、炭酸カリウムなどが挙げられる)、もしくは、塩基非存在下、室温以下、もしくは加熱し(通常の加熱以外にもマイクロウェ−ブで加熱する手法も有効である)得ることができる。
以下に、本発明の化合物(1−4)の合成例を示す。
(1−4)の合成。
K3IrCl60.5gと2,2’−ビピリジル0.75gを2−メトキシエタノ−ル20ml、水5mlの混合溶媒中で8時間加熱し、析出した橙色結晶を濾別することにより、(1−4)0.3gを得た。
【0029】
次に、本発明の化合物を含有する発光素子に関して説明する。本発明の発光素子は、本発明の化合物を利用する素子であればシステム、駆動方法、利用形態など特に問わないが、本発明の化合物からの発光を利用するもの、または本化合物を電荷輸送材料として利用する物が好ましい。代表的な発光素子として有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子を挙げることができる。
【0030】
本発明の化合物を含有する発光素子の有機層の形成方法は、特に限定されるものではないが、抵抗加熱蒸着、電子ビーム、スパッタリング、分子積層法、コーテング法、インクジェット法、印刷法、転写法などの方法が用いられ、製造面で抵抗加熱蒸着、コーテング法が好ましい。
【0031】
本発明の発光素子は陽極、陰極の一対の電極間に発光層もしくは発光層を含む複数の有機化合物膜を形成した素子であり、発光層のほか正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、保護層などを有してもよく、またこれらの各層はそれぞれ他の機能を備えたものであってもよい。各層の形成にはそれぞれ種々の材料を用いることができる。
【0032】
陽極は正孔注入層、正孔輸送層、発光層などに正孔を供給するものであり、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、またはこれらの混合物などを用いることができ、好ましくは仕事関数が4eV以上の材料である。具体例としては酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性金属酸化物、あるいは金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、およびこれらとITOとの積層物などが挙げられ、好ましくは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からITOが好ましい。陽極の膜厚は材料により適宜選択可能であるが、通常10nm〜5μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは50nm〜1μmであり、更に好ましくは100nm〜500nmである。
【0033】
陽極は通常、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、透明樹脂基板などの上に層形成したものが用いられる。ガラスを用いる場合、その材質については、ガラスからの溶出イオンを少なくするため、無アルカリガラスを用いることが好ましい。また、ソーダライムガラスを用いる場合、シリカなどのバリアコートを施したものを使用することが好ましい。基板の厚みは、機械的強度を保つのに十分であれば特に制限はないが、ガラスを用いる場合には、通常0.2mm以上、好ましくは0.7mm以上のものを用いる。
【0034】
陽極の作製には材料によって種々の方法が用いられるが、例えばITOの場合、電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、化学反応法(ゾルーゲル法など)、酸化インジウムスズの分散物の塗布などの方法で膜形成される。
陽極は洗浄その他の処理により、素子の駆動電圧を下げたり、発光効率を高めることも可能である。例えばITOの場合、UV−オゾン処理、プラズマ処理などが効果的である。
【0035】
陰極は電子注入層、電子輸送層、発光層などに電子を供給するものであり、電子注入層、電子輸送層、発光層などの負極と隣接する層との密着性やイオン化ポテンシャル、安定性等を考慮して選ばれる。陰極の材料としては金属、合金、金属ハロゲン化物、金属酸化物、電気伝導性化合物、またはこれらの混合物を用いることができ、具体例としてはアルカリ金属(例えばLi、Na、K等)及びそのフッ化物または酸化物、アルカリ土類金属(例えばMg、Ca等)及びそのフッ化物または酸化物、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金またはそれらの混合金属、リチウム−アルミニウム合金またはそれらの混合金属、マグネシウム−銀合金またはそれらの混合金属、インジウム、イッテリビウム等の希土類金属等が挙げられ、好ましくは仕事関数が4eV以下の材料であり、より好ましくはアルミニウム、リチウム−アルミニウム合金またはそれらの混合金属、マグネシウム−銀合金またはそれらの混合金属等である。陰極は、上記化合物及び混合物の単層構造だけでなく、上記化合物及び混合物を含む積層構造を取ることもできる。例えば、アルミニウム/フッ化リチウム、アルミニウム/酸化リチウムの積層構造が好ましい。陰極の膜厚は材料により適宜選択可能であるが、通常10nm〜5μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは50nm〜1μmであり、更に好ましくは100nm〜1μmである。
陰極の作製には電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、コーティング法などの方法が用いられ、金属を単体で蒸着することも、二成分以上を同時に蒸着することもできる。さらに、複数の金属を同時に蒸着して合金電極を形成することも可能であり、またあらかじめ調整した合金を蒸着させてもよい。
陽極及び陰極のシート抵抗は低い方が好ましく、数百Ω/□以下が好ましい。
【0036】
発光層の材料は、電界印加時に陽極または正孔注入層、正孔輸送層から正孔を注入することができると共に陰極または電子注入層、電子輸送層から電子を注入することができる機能や、注入された電荷を移動させる機能、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層を形成することができるものであれば何でもよい。また、一重項励起子から発光するものでも、三重項励起子から発光するもののいずれでも良い。発光材料としては例えばベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、スチリルベンゼン、ポリフェニル、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、ナフタルイミド、クマリン、ペリレン、ペリノン、オキサジアゾール、アルダジン、ピラリジン、シクロペンタジエン、ビススチリルアントラセン、キナクリドン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、シクロペンタジエン、スチリルアミン、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノールの金属錯体や希土類錯体、遷移金属錯体に代表される各種金属錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シランやそれらの誘導体、等が挙げられる。発光層の膜厚は特に限定されるものではないが、通常1nm〜5μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは5nm〜1μmであり、更に好ましくは10nm〜500nmである。
発光層の形成方法は、特に限定されるものではないが、抵抗加熱蒸着、電子ビーム、スパッタリング、分子積層法、コーティング法(スピンコート法、キャスト法、ディップコート法など)、インクジェット法、印刷法、LB法、転写法などの方法が用いられ、好ましくはコーティング法である。
【0037】
正孔注入層、正孔輸送層の材料は、陽極から正孔を注入する機能、正孔を輸送する機能、陰極から注入された電子を障壁する機能のいずれか有しているものであればよい。その具体例としては、カルバゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、イミダゾール、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン、スチリルアミン、芳香族ジメチリディン系、ポルフィリン系、ポリシラン系、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シランやそれらの誘導体、等が挙げられる。正孔注入層、正孔輸送層の膜厚は特に限定されるものではないが、通常1nm〜5μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは5nm〜1μmであり、更に好ましくは10nm〜500nmである。正孔注入層、正孔輸送層は上述した材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
正孔注入層、正孔輸送層の形成方法としては、真空蒸着法やLB法、前記正孔注入輸送剤を溶媒に溶解または分散させてコーティングする方法(スピンコート法、キャスト法、ディップコート法など)、インクジェット法、印刷法、転写法が用いられる。コーティング法の場合、樹脂成分と共に溶解または分散することができ、樹脂成分としては例えば、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂などが挙げられる。
【0038】
電子注入層、電子輸送層の材料は、陰極から電子を注入する機能、電子を輸送する機能、陽極から注入された正孔を障壁する機能のいずれか有しているものであればよい。その具体例としては、例えばトリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、イミダゾール、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、縮合アゾール、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、8−キノリノールの金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シランやそれらの誘導体、等が挙げられる。電子注入層、電子輸送層の膜厚は特に限定されるものではないが、通常1nm〜5μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは5nm〜1μmであり、更に好ましくは10nm〜500nmである。電子注入層、電子輸送層は上述した材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
電子注入層、電子輸送層の形成方法としては、真空蒸着法やLB法、前記電子注入輸送剤を溶媒に溶解または分散させてコーティングする方法(スピンコート法、キャスト法、ディップコート法など)、インクジェット法、印刷法、転写法などが用いられる。コーティング法の場合、樹脂成分と共に溶解または分散することができ、樹脂成分としては例えば、正孔注入輸送層の場合に例示したものが適用できる。
【0039】
保護層の材料としては水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであればよい。その具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO2、Al2O3、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe2O3、Y2 O3、TiO2等の金属酸化物、MgF2、LiF、AlF3、CaF2等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。
保護層の形成方法についても特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法などが適用できる。
【0040】
【実施例】
以下に本発明の具体的実施例を述べるが、本発明の実施の態様はこれらに限定されない。
比較例1
ポリ(N−ビニルカルバゾール)40mg、PBD(2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)12mg、化合物A1mgをジクロロエタン2.5mlに溶解し、洗浄した基板上にスピンコートした(1500rpm,20sec)。有機層の膜厚は98nmであった。有機薄膜上にパターニングしたマスク(発光面積が4mm×5mmとなるマスク)を設置し、蒸着装置内でマグネシウム:銀=10:1を50nm共蒸着した後、銀50nmを蒸着してEL素子を作製した。東陽テクニカ製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流定電圧をEL素子に印加し発光させ、その輝度をトプコン社の輝度計BM−8、発光波長を浜松フォトニクス社製スペクトルアナライザーPMA−11を用いて測定した。その結果、ELmax(最大発光波長)=510nmの青緑色発光が得られ、その発光開始電圧は11Vであった。
【0041】
【化9】
【0042】
実施例1
比較例1の化合物Aの替わりに(I−1)を用い、比較例1と同様にEL素子を作製した。ELmax=530nmの発光が得られ、その発光開始電圧は9Vであった。
実施例2
比較例1の化合物Aの替わりに(I−2)を用い、比較例1と同様にEL素子を作製した。ELmax=530nmの発光が得られ、その発光開始電圧は9Vであった。
実施例3
比較例1の化合物Aの替わりに(I−3)を用い、比較例1と同様にEL素子を作製した。ELmax=570nmの発光が得られ、その発光開始電圧は10Vであった。
実施例4
比較例1の化合物Aの替わりに(I−12)を用い、比較例1と同様にEL素子を作製した。ELmax=630nmの発光が得られ、その発光開始電圧は9Vであった。
実施例5
比較例1の化合物Aの替わりに(I−21)を用い、比較例1と同様にEL素子を作製した。ELmax=530nmの発光が得られ、その発光開始電圧は8Vであった。
同様に、本発明の他の化合物を含有するEL素子を作製・評価したところ、種々の発光色を有するEL素子を作製できること、駆動電圧が低下することが確認できた。
【0043】
【発明の効果】
本発明の化合物は有機発光素子用材料として使用可能である。本発明の化合物を用いた発光素子は、種々の発光色を有する発光素子を作製でき、低電圧駆動が可能である。
Claims (5)
- 一対の電極間に発光層もしくは発光層を含む複数の有機化合物層を形成した有機電界発光素子において、少なくとも一層に請求項1または2に記載の有機電界発光素子材料を少なくとも一種含有することを特徴とする有機電界発光素子。
- 電子輸送材料および/または正孔輸送材料を、前記発光層もしくは発光層を含む複数の前記有機化合物層中にさらに含有することを特徴とする請求項3に記載の有機電界発光素子材料。
- 請求項1または2に記載の有機電界発光素子材料を含む層を塗布プロセスで成膜することを特徴とする請求項3または4に記載の有機電界発光素子。
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