JP3924783B2 - 車両用情報提供装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、道路設備側から受信した情報を車両の乗員に提供する技術分野に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車の分野においては、道路設備側から受信した情報によって自車前方の交差点やカーブに存在する他車両等の障害物の有無を認識すると共に、その受信した情報や自車にて検出された車速等の走行状態に基づいて、危険回避のための警報出力や運転支援動作を行なうAHS(Advanced Cruise-assist Highway System)の技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−101593号公報。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のAHSによれば、例えば交差点において所謂、右折待ちをしている場合であっても、対向車両に関する情報(位置、車速、到達予想時間等)が自車にて報知(提供)されるので、対向道路への自車の不用意な頭出しによる対向車との衝突等の危険を未然に回避することができる。
【0005】
しかしながら、従来のAHSでは、自車両が走行する道路と対向する対向道路の同一車線(単一車線)において、先頭に位置する車両(対向車両)を対象として、例えば、その対向車両の交差点への到達予想時間が、当該自車両のディスプレイ上に矢印等のシンボルの長さによって報知される。
【0006】
ここで、上記のような従来のシステムを、図7に例示するような複数の対向車線からなる対向道路R1に適用した場合を考える。この場合は、個々の対向車線に存在する先頭車両について、自車両V1において別々に報知がなされる。従って、その対向道路R1の同一車線上を、図7に例示する如く複数の対向車両V2,V2’が前後して走行しており、且つ先行車両である先頭車両▲1▼よりも後続車両▲2▼の車速が速い場合には、その後続車両▲2▼が、同図に破線で示す矢印の如く、左側の対向車線から、隣接する右側の対向車線に変更することが予想されるが、この場合、前記のように個々の対向車線に存在する先頭車両について別々に報知がなされるシステムが前提であるため、今まで右側の対向車線に他車両が存在しなかった、或いは遠方に存在することによって自車両V1にて矢印等のシンボルによる報知がなされていなかった場合であっても、後続車両▲2▼が車線を変更するのに応じて、システム上では、係る右側の対向車線において当該後続車両▲2▼が先頭車両として認識されることになるので、対向車両V’の交差点への到達予想時間が、新たに表示される矢印等のシンボルによって、急遽開始される、或いは、今まで表示されていた矢印の長さが急に長くなる状況が生じるが、このような状況においては、自車両V1のドライバは運転操作の判断を戸惑うことが予想される。
【0007】
また、後続車両▲2▼が右側の対向車線に車線変更しない場合、或いは、対向道路に車線変更のためのスペースが無い単一車線の場合であっても、図7に例示する如く後続車両▲2▼が二輪車である場合には、走行中の同一車線上において先頭車両▲1▼をすり抜けることができるが、この場合にも、従来のシステムでは、同システム上で報知すべき対象として設定されていた先頭車両が、それまでの先頭車両▲1▼から後続車両▲2▼に切り替えられることになるので、今まで表示されていた矢印の長さが急に長くなる状況が生じ、やはり自車両V1のドライバの運転操作の判断を戸惑わせることが予想される。
【0008】
そこで本発明は、対向道路の同一車線上に複数の対向車両が存在する場合であっても、的確な情報提供が可能な車両用情報提供装置の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明に係る車両用情報提供装置は、以下の構成を特徴とする。
【0010】
即ち、 交差点内における自車の右折または進入に際して、道路設備から受信した対向車両に関する情報を自車の乗員に提供する車両用情報提供装置であって、複数の対向車両が走行する対向道路の同一車線上において、後続対向車両先行対向車両を追い抜くか否かを判断する判断手段と、前記判断手段によって前記同一車線上において前記後続対向車両が前記先行対向車両を追い抜くと判断された際に、前記後続対向車両の交差点内への到達予想時間を優先させて、自車の乗員が認識可能に提供する情報提供手段とを備え、前記判断手段は、前記対向道路に隣接する隣接対向道路を走行する第2先行対向車両よりも、前記後続対向車両が前記交差点に近いか否かを判断し、近いと判断した場合に、前記後続対向車両が前記先行対向車両を追い抜くか否かを判断することを特徴とする。
【0011】
好適な実施形態において、前記判断手段は、前記同一車線上において、前記後続対向車両が前記先行対向車両を追い抜くスペースが存在するか否かを考慮して、前記後続対向車両が前記先行対向車両を追い抜くか否かを判断すると良い。
【0012】
また例えば、前記情報提供手段による情報提供が、少なくとも1つの対向車線を含む前記対向道路に対応して、単一のシンボルによって行われる場合において、
前記情報提供手段は、前記先行対向車両及び後続対向車両のうち、前記交差点内への到達予想時間が短い方の対向車両を、自車の乗員が認識可能に提供すると良い。
【0013】
【発明の効果】
上記の本発明によれば、対向道路の同一車線上に複数の対向車両が存在する場合であっても、的確な情報提供が可能な車両用情報提供装置の提供が実現する。
【0014】
即ち、請求項1の発明によれば、後続対向車両が車線変更により先行対向車両を追い抜くと判断され際には、その後続対向車両の交差点内への到達予想時間を優先させて、例えば矢印等のシンボルの長さによって、自車の乗員が認識可能に提供されるので、係る後続対向車両の車線変更よって、当該後続対向車両が、先行対向車両よりも早期に到来する可能性があることを、自車両のドライバに的確に予測させることができる。これにより、当該後続対向車両の走行状態を、視認できない状況から視認できる状況までの自車両のドライバの運転操作を的確に支援することができる。
【0015】
また、請求項2の発明によれば、後続対向車両が二輪車である場合に上記請求項1に係る発明の如く優先的な報知がなされる。これにより、差点における右折待ち等の自車両からは先行対向車両の後方に隠れてしまい、その存在自体を自車両のドライバが認識することは容易ではないという二輪車の特性を考慮した的確な情報提供が実現する。
【0016】
また、請求項3の発明によれば、同一車線上における追い抜きのためのスペースの有無が考慮されるので、先行対向車両と後続対向車両とが共に普通乗用車である場合において、その後続対向車両の車速が先行対向車両の車速より速い場合であっても、現実的な情報提供が実現する。
【0017】
また、請求項6の発明によれば、情報提供手段による情報提供が、少なくとも1つの対向車線を含む対向道路に対応して単一のシンボルによって行われる場合に、係る単一のシンボルによって、先行対向車両及び後続対向車両のうち、交差点内への到達予想時間が短い方の対向車両について情報提供がなされる。これにより、対向道路の同一車線上に複数の対向車両が存在する場合における情報提供を、最小限の情報量によって実現することができ、ドライバの認識を容易にしている。
【0018】
また、請求項7の発明によれば、追い抜くと判断された後続対向車両と、先行対向車両との双方に関して自車の乗員が認識可能であるため、同一車線上における個々の対向車両の挙動を、自車両のドライバに的確に予測させることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る車両用情報提供装置の実施形態を、車両が道路の左側車線を走行する場合を例として、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明を適用可能な車両用情報提供システムの交差点付近における構成を例示する図である。また、図2は、本実施形態に係る車両用情報提供システムにおいて車両に搭載される機器構成と、道路設備側に設けられる機器構成とを示すブロック構成図である。
【0021】
図1に示す車両用情報提供システムは、交差点における自車両の右折(右折待ちを含む)に際して、対向道路を走行する対向車との衝突防止を支援するシステムであって、本実施形態において、自車両及び/または他車両が交差点及びその周辺に存在するか否かは、図1及び図2に示すシステム構成のAHS(Advanced Cruise-assist Highway System)を利用して検出される。
【0022】
図1に示す構成には、信号機の設置された少なくとも片側1車線の道路R1と、この道路R1と交差する少なくとも片側1車線の道路R2との交差点及びこの交差点付近において、交差点手前(例えば、30m)の道路R1における自車両V1の走行車線側の路側に設置された基点11と、道路R1における自車両V1の走行車線に対向する他車両(対向車両)V2の走行車線側の路側に設置された車両検出センサ12と、交差点付近の道路R1における自車両V1の走行車線側(走行道路側)と対向車線側(対向道路側)の両路側に対角線上に設置された2つの路側アンテナ13とが設けられている。
【0023】
ここで、道路R1は、自車両V1が走行する走行車線を含む走行道路と、対向車両V2が走行する少なくとも1つの車線(対向車線)を含む対向道路とからなる。
【0024】
基点11は、固有の識別情報(以下、基点IDという)とこの基点IDに対応付けられた提供情報を識別するための提供ID(後述する)とを、自車両V1に搭載された基点検出器71(図2参照)による検出が可能に保持されており、自車両V1は、この基点11を通過したことを基点検出器71により検出すると共に、この基点通過時に基点IDと提供IDとを基点11から取得する。
【0025】
また、基点11は、当該基点11から交差点への自車両V1の走行距離を計測するための基準位置となる。この基点11から交差点への走行距離は、路側アンテナ13による提供情報受信区間A1を特定するための基準となる。
【0026】
車両検出センサ12は、交差点内の中間地点付近(地点Z)から交差点手前の所定検出範囲B1の自車両V1の対向道路に存在する他車両(対向車両)V2を検出し、当該所定検出範囲B1における他車両V2の位置情報、車速情報、並びに車種情報などを検出して上記システム基地局41に送信する。
【0027】
ここで、交差点内の中間地点付近である地点Zは、本実施形態において、対向車両の交差点への到達予想時間Tの基準位置(T=0、L=0)である。
【0028】
路側アンテナ13は、上記基点11と同様に固有の識別情報(以下、提供IDという)とこの提供IDに対応付けられた基点IDを持ち、この提供IDと共に、基点ID、車両検出センサ12によって検出された他車両V2の位置情報、車速情報、車種情報、道路形状(交差点及びその周辺の勾配の状態、車線幅、車線数など)に関する情報を、上記提供情報受信区間A1において自車両V1に送信(提供)する。
【0029】
尚、前記の道路形状に関する情報は、路側アンテナ13を介して入手するのではなく、例えば自車両V1に搭載されたところの、道路地図の表示や経路誘導に際して参照される地図情報データベース72から入手しても良い。
【0030】
即ち、提供情報受信区間A1において、自車両V1に搭載された路車間通信機36は、路側アンテナ13から送出された基点ID、提供ID、他車両V2の位置情報、車速情報、車種情報、道路形状に関する情報(以下、これらを総称して提供情報と称する)を受信し、システムコントローラ31は、受信した提供情報に基づいて、表示装置37及び/またはスピーカ38を利用して、自車両V1の乗員に対する情報提供(情報提示)のための制御処理を行なう。この情報提示には、表示装置37を利用した画像や文字表示の他に、スピーカ38からの音声メッセージや警告音の出力などが含まれる。
【0031】
また、本実施形態において、システム基地局41(路側アンテナ13)は、上記の提供情報を、他車両V2が走行する対向道路の所定検出範囲B1を構成する車線毎に提供することができ、更に、当該所定検出範囲B1内の同一車線上において前後して複数の車両が存在する場合には、他車両V2に関する情報として、所定の台数分まで提供可能であるものとする。
【0032】
更に、本実施形態において、システム基地局41(路側アンテナ13)は、当該所定検出範囲B1内の同一車線上における個々の他車両V2の横位置(例えば路肩からの離間距離)を提供することができるものとする。
【0033】
尚、上記システムにおいては、図1に示す場合とは反対に、他車両V2も自車両V1と同様な被情報提供車両となり、他車両V2は対向道路を走行する自車両V1の提供情報を路側アンテナ13から受信することになる。
【0034】
次に、車両(自車両)V1及び車両(他車、対向車両)V2に搭載される機器構成と、道路設備側に設けられる機器構成とを示す機能構成について、図2を参照して説明する。
【0035】
図2において、システムコントローラ31には、基点11を通過した時に基点検出器71を介して基点ID及び提供IDが入力されると共に、システム基地局41から路側アンテナ13を介して送信される基点ID、提供ID、他車両の位置情報、車速情報、車種情報、道路形状に関する情報等の提供情報が、車載アンテナ35及び路車間通信機36を介して入力される。
【0036】
システムコントローラ31では、先ず、路側アンテナ13から受信した基点ID及び提供IDが基点通過時に取得した基点ID及び提供IDと一致するか否かを判定し、一致した場合に、当該基点IDと対応した提供IDを持つ路側アンテナ13からの提供情報を、表示装置37への画面表示や、スピーカ38への音声(警報音、合成音等)出力によって、乗員に提供する。
【0037】
また、システムコントローラ31は、基点ID受信後の自車両V1の走行距離を検出し、この検出した走行距離から自車両V1が交差点内に入ったか否かを判定する。
【0038】
本実施形態において、システムコントローラ31、表示装置37及びスピーカ38には、目的地への経路誘導等を行なうカーナビゲーションシステムを利用することができる。また、地図情報データベース72には、道路地図の表示や経路誘導に際して参照される地図情報が記憶されている。
【0039】
また、本実施形態において、車々間通信機73は、交差点における他車両V2の右左折等の経路情報を受信することができ、システムコントローラ31は、受信した情報を、後述する情報提供制御に利用する。
【0040】
以下、上記AHSシステムから取得した提供情報を利用して、対向道路R2と複数の対向車線からなる対向道路R1とが交差する交差点内における自車両V1の右折(右折待ちを含む)に際して、図3に例示する如く他車両V2,V2’(対向車両▲1▼乃至▲4▼)に関する情報として、その他車両V2の交差点への到達予想時間Tを、図4に示す如く、車線毎に1つ表示される矢印等のシンボル表示の長さの違いによって、当該自車両の乗員に提供(報知)すべくシステムコントローラ31にて行われる情報提供制御について説明する。
【0041】
図4は、本実施形態に係る情報提供制御処理によって交差点への対向車両の到達予想時間Tを報知すべく自車両V1にて行われる表示態様を例示する図であり、交差点への到達予想時間Tは、車線毎に1つ表示される矢印の長さの違いによって表現されており、矢印の長さが長いほど到達予想時間Tが短く、交差点における右折のための「頭出し」が不可能な状態を表わす(図4において△印は自車両V1である)。
【0042】
即ち、本実施形態では、以下に説明する情報提供制御(図5)によって、複数の対向車両が走行する対向道路の同一車線上において、後続対向車両が先行対向車両を追い抜くと判断され際には、その後続対向車両の交差点内への到達予想時間Tを優先させて、自車V1の乗員が認識可能に提供する。
【0043】
ここで、「頭出し」とは、交差点において対向車両(他車両)V2の走行状態を自車両のドライバが目視によって判断できる場所まで移動することである。
【0044】
尚、到達予想時間Tの乗員への報知は、矢印型のシンボルによる表示態様に限られるものではなく、表示色の変更や、表示するセグメントの数や大きさ、警報音やガイダンス表示を適宜併用する等の各種の態様が想定される。
【0045】
図5は、本実施形態に係る車両用情報提供システムにおいて車両に搭載されたシステムコントローラが行なう情報提供制御処理を示すフローチャートである。
【0046】
同図において、ステップS1では、上記提供情報を、路車間通信機36を利用して入手することにより、車線毎に、対向車両(V2)に関しての位置情報、車速情報、並びに車種情報を入手すると共に、交差点及びその付近の道路形状として、車線幅、車線数等の情報を入手する(道路形状の入手は、必要に応じて地図情報データベース72の参照を含むものとする)。
【0047】
また、本実施形態において、所定検出範囲B1の同一車線上に存在する対向車両(V2)が前後して複数存在する場合には、所定の台数分だけ、個々の他車両V2の横位置と共に検出が可能であるものとする。
【0048】
また、ステップS1においてシステムコントローラ31は、自車両において妥当な情報提供(即ち、自車両が進行する走行環境に合致する情報提供)がなされるように、受信した基点ID及び提供IDが、基点11の通過時に取得した基点ID及び提供IDと一致するか否も判定し、その判定において一致の判断がなされた場合に前記の位置情報、車速情報等を、自車両における情報提供対象とすべき対向車両(V2)と認識する。
【0049】
ステップS2では、ステップS1にて入手した提供情報を参照することによって、対向道路R1を構成する個々の車線において、同一車線上を前後して走行する複数の対向車両V2,V2’が存在するかを検知する。図3に示す例の場合には、左側の対向車線(中央寄り車線)において、普通乗用車である車両▲1▼が先行対向車両として、二輪車である車両▲2▼が後続対向車両として検知され、右側の対向車線(外側車線)において、普通乗用車である車両▲3▼が先行対向車両として、二輪車である車両▲4▼が後続対向車両として検知される。
【0050】
そして、ステップS2にて同一車線上に複数の対向車両V2,V2’が前後して走行することが検出された場合に、ステップS3では、検出された車両が共に二輪車であるかが車線毎に判断され、この判断の結果、同一車線上に複数の二輪車が前後して走行している場合にはステップS6に進み、そうでない場合にはステップS4に進む。
【0051】
ステップS3の判断の結果から同一車線上に前後して検出された複数の対向車両は車種が異なることが判った場合であっても、図3に例示する如く後続対向車両が二輪車である場合には、同一車線上において先行対向車両の側方をすり抜けることが比較的容易に行なえる。そこで、ステップS4では、前後して走行する同一車線上の複数の対向車両の一方が二輪車であり、且つ二輪車とは異なる他方の対向車両(普通乗用車、トラック等)との相対速度に基づいて衝突が予想されるかを判断すると共に、ステップS1にて入手した提供情報に含まれる車線幅と車種別の所定の車幅とを考慮して当該同一車線上にすり抜けのためのスペースが存在するかを判断する。そして、この判断の結果、すり抜けのためのスペースが存在する場合にはステップS6に進み、存在しない場合にはステップS5に進む。
【0052】
ステップS4の判断の結果から、すり抜けのためのスペースは存在しないと判った場合であっても、交差点付近において先行対向車両が、例えば右左折のために、停止または減速中の場合に、後続対向車両は、隣接する対向車線または自車両V1が走行している走行車線側に進入した(はみ出した)状態で追い越すことも予想される。そこで、ステップS5では、先行対向車両が交差点付近において停止または減速中であり、後続対向車両が車線変更することが予想されるかを判断する。そして、この判断の結果、後続対向車両が車線変更することが予想される場合にはステップS6に進み、そうでない場合にはステップS8に進む。
【0053】
ステップS6では、ステップS3またはステップS4にて予測されたすり抜け、或いはステップS5にて予測された車線変更によって、後続対向車両が先行対向車両を追い抜くかを判断する。この判断は、当該先行対向車両及び後続対向車両に関して算出した交差点への到達予想時間T(T1,T2)の比較によってなされる。
【0054】
即ち、個々の対向車両の交差点への到達予想時間Tは、地点Zを基準位置(T=0、L=0)として、
T=L/V ・・・・・・・・・(1),
なる計算によって求めることができる(但し、L:交差点中心付近の地点Zからの対向車両の距離、V:対向車両の実車速)。
【0055】
そして、ステップS6では、対向車線毎に、後続対向車両の到達予想時間T2が、先行対向車両の到達予想時間T1より小さい値である場合に、当該後続対向車両が当該先行対向車両を追い越すと判断してステップS7に進み、到達予想時間T2が到達予想時間T1以下の場合には、係る追い越しはなされないと判断してステップS8に進む。
【0056】
より具体的に、ステップS3乃至ステップS6では、以下の判断処理が行われる。
【0057】
・ステップS3において同一車線を前後して走行する対向車両が共に二輪車であると判断された場合に、ステップS6では、両者の到達予想時間Tを比較して小さい方を、ステップS7またはステップS8における情報提供対象とする。
【0058】
・ステップS4において同一車線上の先行対向車両が二輪車であり、後続対向車両が二輪車とは異なる普通自動車等であると判断された場合に、ステップS6では、以下のa及びbの処理を行なう。
【0059】
a:本実施形態においてステップS1にて入手可能な当該同一車線上の先行対向車両及び後続対向車両の進行方向横方向の位置を比較して、両者が重ならないようであれば、両者の到達予想時間Tを比較して小さい方を、ステップS7またはステップS8における情報提供対象とする。
【0060】
b:下記の式(2)において不等号が成立する場合は、後続対向車両である普通自動車等が交差点に先に到達すると判断できるので、両者の到達予想時間を比較して小さい方を、ステップS7またはステップS8における情報提供対象とする。
【0061】
Lv−Lb+Vb×(Vv−Vb)/α < (Vv2−Vb2)/2α ・・・・(2),
但し、Lv:車両の交差点中心からの距離、Lb:二輪車の交差点中心からの距離Vv:車両の車速、Vb:二輪車の車速、α:通常時の平均減速度である。
【0062】
・ステップS4において同一車線上の先行対向車両が普通自動車であり、後続対向車両が二輪車であると判断された場合に、ステップS6では、以下のaまたはbの処理を行なう。
【0063】
a:本実施形態においてステップS1にて入手可能な当該同一車線の車線幅が閾値以上である場合は、両者の到達予想時間Tを比較して小さい方を、ステップS7またはステップS8における情報提供対象とする。
【0064】
b:下記の式(3)において不等号が成立する場合は、後続対向車両である二輪車等が交差点に先に到達すると判断できるので、両者の到達予想時間を比較して小さい方を、ステップS7またはステップS8における情報提供対象とする。
【0065】
Lb−Lv+Vv×(Vb−Vv)/α < (Vb2−Vv2)/2α ・・・・(3),
但し、Lv:車両の交差点中心からの距離、Lb:二輪車の交差点中心からの距離Vv:車両の車速、Vb:二輪車の車速、α:通常時の平均減速度である。
【0066】
・ステップS5において対向道路の複数車線のうち、中央寄り車線(図3にて左側の車線)の交差点に停止している先行対向車両が存在し、その後方から接近する後続対向車両が存在する場合において、接近する当該後続対向車両が、外側車線(図3にて右側の車線)に車線変更すると判断される場合は、当該後続対向車両の到達予想時間T2と、当該先行対向車両の到達予想時間T1とを比較し、小さい方を、ステップS7またはステップS8における情報提供対象とする。この場合において、接近する当該後続対向車両が外側車線(図3にて右側の車線)に「車線変更する」との判断は、以下に説明するa乃至cの各条件が全て成立するときとする。
【0067】
a:車線変更しなければ、接近する後続対向車両が停止中の先行対向車両に衝突する可能性が高いことを、下記の式(4)を用いて判断する。
【0068】
Lsa < Va2/2α ・・・・(4),
但し、Lsa:停止車両と接近車両の距離、Va:接近車両の速度、α:一般的な平均減速度である。
【0069】
b:接近する後続対向車両と外側車線(図3にて右側の車線)の車両▲3▼との交差点中央からの距離を比較した結果、当該後続対向車両のほうが交差点に近い、または距離の差が所定値以上(この場合、無理な割り込みではなく通常の車線変更と判断できる)であり、当該後続対向車両が車両▲3▼の前に車線変更すると判断できる場合。
【0070】
c:個々の対向車両から車々間通信にて右左折等の経路情報が得られる場合には、当該交差点にて右折ではないとの情報を受信した場合。
【0071】
ステップS7では、ステップS6において同一車線上において後続対向車両が先行対向車両を追い越すと判断されたので、その後続対向車両の交差点内への到達予想時間T2を、自車V1の乗員が認識可能に提供する。
【0072】
ステップS8では、ステップS6において同一車線上において後続対向車両が先行対向車両の追い越しはなされないと判断されたので、その先行対向車両の交差点内への到達予想時間T1を、自車V1の乗員が認識可能に提供する。
【0073】
即ち、本実施形態において、前記のステップS7及びステップS8にて行われる情報提供による表示装置37への表示態様は、何れのステップにおいても、図4に例示する如く対向道路の同一車線毎に1つ矢印形状のシンボルが表示される表示態様である。但し、本実施形態では、表示される矢印形状のシンボルによって報知される到達予想時間Tは、制御周期毎の処理の流れにおいて、ステップS7が実行される場合には後続対向車両の到達予想時間T2が表わされ、ステップS8が実行される場合には先行対向車両の到達予想時間T1を表わされることになる。
【0074】
このように、本実施形態では、複数の対向車両が走行する対向道路の同一車線上において、後続対向車両が先行対向車両を追い抜くと判断され際には、ステップS7において、その後続対向車両の交差点内への到達予想時間T2を優先させて、自車V1の乗員が認識可能に提供される。これにより、後続対向車両が、先行対向車両よりも交差点に早期に到来する可能性があることを、自車両V1のドライバに的確に予測させることができ、当該後続対向車両の走行状態を、視認できない状況から視認できる状況までの自車両V1のドライバの運転操作を的確に支援することができる。
【0075】
また、本実施形態では、1つの対向車線毎に単一のシンボル(矢印)によって、先行対向車両及び後続対向車両のうち、交差点内への到達予想時間が短い方の対向車両について情報提供がなされるので、対向道路の同一車線上に複数の対向車両が存在する場合における情報提供を最小限の情報量によって実現することができ、ドライバの認識を容易にしている。
【0076】
尚、上述した実施形態では、ステップS3乃至ステップS5の何れかの判断が成立した場合に、ステップS6にて追い抜きが予想された場合に後方対向車両の到達予想時間T2を優先して表示したが、少なくとも後続対向車両が二輪車であることが検出された場合に、その二輪車を対象とする上述した優先的な報知を行なえば、車線変更のためのスペースが十分に無い場合であっても、同一車線上において先行対向車両を容易にすり抜けることができ、且つ交差点における右折待ち等の自車両からは先行対向車両の後方に隠れてしまい、その存在自体を自車両のドライバが認識することは容易ではないという二輪車の特性を考慮した的確な情報提供が実現する。
【0077】
<実施形態の変形例>
図6は、本実施形態の変形例において情報提供制御処理によって交差点への対向車両の到達予想時間Tを報知すべく自車両V1にて行われる表示態様を例示する図である。
【0078】
上述した実施形態では、図4に例示する如く対向車線毎に、交差点への到達予測時間Tが最も短い対向車両を対象とする1つ矢印を表示する表示形態を説明したが、これに限られるものではなく、本変形例において説明するように、図3に示す如く同一車線上に存在する先行対向車両及び後続対向車両の到達予想時間T1,T2を、車線毎に個別に表示しても良い。この場合、追い抜くと判断された後続対向車両と、先行対向車両との双方に関して自車の乗員が認識可能であるため、同一車線上における個々の対向車両の挙動を、自車両のドライバに的確に予測させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用可能な車両用情報提供システムの交差点付近における構成を例示する図である。
【図2】本実施形態に係る車両用情報提供システムにおいて車両に搭載される機器構成と、道路設備側に設けられる機器構成とを示すブロック構成図である。
【図3】交差点及びその周辺の対向道路(所定検出範囲B1)における道路形状が複数車線であって、個々の車線を走行する対向車両V2として自動車だけでなく二輪車が存在する場合を説明する図である。
【図4】本実施形態に係る情報提供制御処理によって交差点への対向車両の到達予想時間Tを報知すべく自車両V1にて行われる表示態様を例示する図である。
【図5】本実施形態に係る車両用情報提供システムにおいて車両に搭載されたシステムコントローラが行なう情報提供制御処理を示すフローチャートである。
【図6】本実施形態の変形例において情報提供制御処理によって交差点への対向車両の到達予想時間Tを報知すべく自車両V1にて行われる表示態様を例示する図である。
【図7】交差点及びその周辺の対向道路(所定検出範囲B1)における道路形状が複数車線であって、同一車線上において、先行対向車両(車両▲1▼)として普通乗用車が存在し、後続対向車両(車両▲2▼)として、当該先行対向車両より車速が速い二輪車が存在する場合を説明する図である。
【符号の説明】
11:基点,
12:車両検出センサ,
13:路側アンテナ,
31:システムコントローラ,
35:車載アンテナ,
36:路車間通信機,
37:表示装置,
38:スピーカ,
41:システム基地局,
71:基点検出器,
72:地図情報(地図情報データベース),
73:車々間通信機

Claims (9)

  1. 交差点内における自車の右折または進入に際して、道路設備から受信した対向車両に関する情報を自車の乗員に提供する車両用情報提供装置であって、
    複数の対向車両が走行する対向道路の同一車線上において、後続対向車両が先行対向車両を追い抜くか否かを判断する判断手段と、
    前記判断手段によって前記同一車線上において前記後続対向車両が前記先行対向車両を追い抜くと判断された際に、前記後続対向車両の交差点内への到達予想時間を優先させて、自車の乗員が認識可能に提供する情報提供手段と、
    を備え、
    前記判断手段は、
    前記対向道路に隣接する隣接対向道路を走行する第2先行対向車両よりも、前記後続対向車両が前記交差点に近いか否かを判断し、近いと判断した場合に、前記後続対向車両が前記先行対向車両を追い抜くか否かを判断することを特徴とする車両用情報提供装置。
  2. 前記後続対向車両は、二輪車であることを特徴とする請求項1記載の車両用情報提供装置。
  3. 前記判断手段は、
    前記同一車線上において、前記後続対向車両が前記先行対向車両を追い抜くスペースが存在するか否かを考慮して、前記後続対向車両が前記先行対向車両を追い抜くか否かを判断することを特徴とする請求項1記載の車両用情報提供装置。
  4. 前記判断手段は、
    前記同一車線上において、前記先行対向車両が減速中であるか否かを判断し、減速中であり、かつ、前記対向道路に隣接する隣接対向道路を走行する第2先行対向車両よりも、前記後続対向車両が前記交差点に近いと判断した場合に、前記後続対向車両が前記先行対向車両を追い抜くか否かを判断することを特徴とする請求項1記載の車両用情報提供装置。
  5. 前記判断手段は、
    前記同一車線上において、前記先行対向車両が前記交差点において右左折しようとしているときに、その先行対向車両を、前記後続対向車両が追い抜くと判断することを特徴とする請求項1記載の車両用情報提供装置。
  6. 前記情報提供手段による情報提供が、少なくとも1つの対向車線を含む前記対向道路に対応して、単一のシンボルによって行われる場合において、
    前記情報提供手段は、
    前記先行対向車両及び後続対向車両のうち、前記交差点内への到達予想時間が短い方の対向車両を、自車の乗員が認識可能に提供することを特徴とする請求項1記載の車両用情報提供装置。
  7. 前記情報提供手段は、
    前記判断手段によって追い抜くと判断された前記後続対向車両の前記交差点内への到達予想時間と、前記先行対向車両の前記交差点内への到達予想時間とを、前記自車の乗員が共に認識可能に提供することを特徴とする請求項1記載の車両用情報提供装置。
  8. 前記判断手段は、
    前記後続対向車両が、車線変更しなければ前記先行対向車両に衝突する可能性が高いことを判断し、衝突する可能性が高く、かつ、前記第2先行対向車両よりも、前記後続対向車両が前記交差点に近いと判断した場合に、前記後続対向車両が前記先行対向車両を追い抜くか否かを判断することを特徴とする請求項2に記載の車両用情報提供装置。
  9. 前記判断手段は、
    前記先行対向車両が二輪車で前記後続対向車両が自動車である場合には、両者の進行方向横方向の位置を比較して、両者が重なるか否かを判断し、両者が重ならない場合に、前記後続対向車両が前記先行対向車両を追い抜くか否かを判断し、
    前記先行対向車両が自動車で前記後続対向車両が二輪車である場合には、前記対向道路の車線幅と、前記先行対向車両及び前記後続対向車両の車幅とに基づいて、前記後続対向車両が前記先行対向車両の側方をすり抜けるスペースがあるか否かを判断し、前記すり抜けるスペースがある場合に、前記後続対向車両が前記先行対向車両を追い抜くか否かを判断し、
    前記すり抜けるスペースがない場合に、前記第2先行対向車両よりも、前記後続対向車両が前記交差点に近いと判断した場合に、前記後続対向車両が前記先行対向車両を追い抜くか否かを判断することを特徴とする請求項1に記載の車両用情報提供装置。
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