JP3922146B2 - 印刷用版およびそれを用いた印刷方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種電子機器に使用される両面あるいは多層配線基板などに用いられるペーストのパターンあるいは貫通孔への充填等に用いられる印刷用版およびそれを用いた印刷方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の小型化、高密度化に伴い、産業用にとどまらず民生用の分野においても回路基板の多層化が強く要望されるようになってきた。
【0003】
このような回路基板では、複数層の回路パターンの間をインナービアホール接続する接続方法および信頼度の高い構造の新規開発が不可欠なものになっているが、導電性ペーストによりインナービアホール接続した新規な構成の高密度の回路基板製造法が提案されている。
【0004】
以下従来の両面の回路基板の製造方法について説明する。
【0005】
図7(a)〜(f)は従来の回路基板の製造方法の工程断面図、図8は従来例の開口部を有するマスクを取り付けた版枠を示す斜視図、図9は従来例の開口部を有するマスクを取り付けた版枠の断面図、図10(a)〜(g)はスキージング法によるペースト充填の工程断面図、図11は従来例の回路基板を用いたペースト充填時の一部断面図である。
【0006】
図7において、21は300mm×500mm、厚さ約150μmのプリプレグシートであり、例えば不織布の全芳香族ポリアミド繊維に熱硬化性エポキシ樹脂を含浸させた複合材からなる基材が用いられる。22a,22bはマスクフィルムでありプリプレグシート21と接着する面に0.01μm以下の厚みでSi系の離型層部を形成した厚さ約16μm、幅300mmのプラスチックフィルム、例えばポリエチレンテレフタレートが用いられる。
【0007】
プリプレグシート21とマスクフィルム22a,22bの張り合わせはラミネート装置を用いてプリプレグシート21の樹脂成分を溶融させてマスクフィルム22a,22bが連続的に接着する方法が提案されている。23は貫通孔であり、プリプレグシート21の両面に貼り付ける厚さ35μmの銅などの金属箔25a,25bと電気的に接続する導電性ペースト24が充填されている。
【0008】
回路基板の製造は、まず、両面にマスクフィルム22a,22bが接着されたプリプレグシート21(図7(a))の所定の箇所に図7(b)に示すようにレーザ加工法などを利用して貫通孔23が形成される。
【0009】
次に図7(c)に示すように、貫通孔23に導電性ペースト24が充填される。導電性ペースト24を充填する方法としては、貫通孔23を有するプリプレグシート21を一般の印刷機(図示せず)のステージ6上に設置し、ウレタンゴムなどの2本のスキージを交互に用いて往復させることで直接導電性ペースト24がマスクフィルム22aの上から充填される。このとき、上面のマスクフィルム22a,22bは印刷マスクの役割と、プリプレグシート21の表面の汚染防止の役割を果たしている。
【0010】
導電性ペースト24の充填方法について図8、図9、図10(a)〜(g)を用いてさらに説明する。
【0011】
導電性ペースト24の充填にはスキージング法が用いられているが、プリプレグシート21には専用のマスクフィルム22a,22bが配置されているため、図8、図9に示すように充填用の版10の版枠1にはプリプレグシート21のペースト充填有効面積より広い250mm×450mmの開口部4を設けた厚さ約3mmのステンレス製のマスク2が取り付けられている。
【0012】
導電性ペースト24の充填は、まず、図10(a)に示すように印刷機(図示せず)のステージ6に置載した両面にマスクフィルムが接着され、貫通孔23が形成されたプリプレグシート21にマスク2がセットされる。
【0013】
次に、上方に設けられた上下左右に移動・加圧可能な往側スキージ8aと復側スキージ8bのうち往側スキージ8aのみをマスク2上の所定位置に降下させ、圧力をかけて導電性ペースト24をローリングさせながら前進させている。
【0014】
次に図10(b)に示すように、マスク2の開口縁部5bを通過してプリプレグシート21上に到達する。往復のスキージ8a,8bは圧力を保持しながら位置に応じて自由に上下可能な機能を有している。
【0015】
次に図10(c)に示すように、往側スキージ8aはプリプレグシート21上と再度マスク2の傾斜部を通過してマスク2上の定位置でストップした後、上昇させて導電性ペースト24を自然落下させている。
【0016】
次に図10(d)に示すように、復側スキージ8bのみをマスク2上の所定位置に下降させる。その後図10(e)〜(g)に示すように往側スキージ8aと同様に復側スキージ8bをマスク2とプリプレグシート21上を通過させることで貫通孔23への導電性ペースト24の充填が完了する。
【0017】
そして図7(d)に示すように、プリプレグシート21の両面からマスクフィルム22a,22bを剥離する。
【0018】
次に図7(e)に示すように、プリプレグシート21の両面に銅などの金属箔25a,25bを重ねる。
【0019】
この状態で熱プレスで加熱加圧することにより、図7(f)に示すように、プリプレグシート21の厚みが圧縮される(t2=約100μm)とともにプリプレグシート21と金属箔25a,25bとが接着され、両面の金属箔25a,25bは所定位置に設けた貫通孔23に充填された導電性ペースト24により電気的に接続されている。
【0020】
そして、両面の金属箔25a,25bを選択的にエッチングして回路パターンが形成され(図示せず)て両面の回路基板が得られる。
【0021】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1、特許文献2が知られている。
【0022】
【特許文献1】
特開平6−268345号公報
【特許文献2】
特開平7−106760号公報
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記の従来のペースト充填法における課題を図11に示す。
【0024】
すなわち(導電性ペースト24粘度が高い場合、)、印刷を開始する際、マスク2の開口縁部5bを下降した時に、導電性ペースト24がプリプレグシート21面に押しつけられ、これによってスキージ8bエッジ周辺のペースト中の樹脂成分が押し出され、スキージ8bエッジ全面により高粘度の導電性ペースト24が固着する。
【0025】
この固着した導電性ペースト24がプリプレグシート21に形成された貫通孔23を通過する際、特にスキージ8bのペースト充填幅全面で、かつスキージ進行方向の最初での貫通孔23上に堅いペーストが残りやすく、マスクフィルム22a,22bを剥がす際に、導電性ペースト24の一部がマスクフィルム22a側に転写して品質に影響を及ぼす場合があるという問題があった。
【0026】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の印刷用版や回路基板およびそれを用いたペースト充填方法は、製品の貫通孔をスキージが通過する前に、印刷用版上に設けたスキージクリーニング部を通過させてスキージエッジの高粘度のペーストを除去するもので品質に優れた回路基板が得られる。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、基板材料の全周あるいは一部の略外周部を覆う額縁状の開口部を有し、傾斜部の裏面先端と他の2辺に金属シートを所定量突出させて固着した印刷用版であり、少なくとも傾斜部の一方の金属シートの突出部の上面の所定位置に凸部を設けることで、傾斜部で形成されるスキージエッジ部の高粘度ペーストを除去することができ、製品の貫通孔への堅いペースト残りがなくなり、マスクフィルムを剥がす際に、ペーストの一部がマスクフィルム側に転写して品質に悪影響を及ぼす可能性を解消するという作用を有し、ペースト充填品質の高い印刷方法を行うための印刷用版を提供するものである。
【0028】
本発明の請求項2に記載の発明は、金属シートの凸部が所定長の直線状の凸部からなる請求項1に記載の印刷用版であり、スキージ全体に付着したペーストを残らず、効率的に除去できるというものである。
【0029】
本発明の請求項3及び請求項4に記載の発明は、金属シートの凸部が所定長に千鳥状に設けた凸部からなり、この構成によりスキージに付着したペーストを効率的に除去できるものである。また前記凸部を逐次重なり合う間隔で設ける、スキージ全体に付着したペーストを残らず除去できるというものである。
【0030】
本発明の請求項5に記載の発明は、金属シートをエッチングして凸部を形成した請求項1に記載の印刷用版であり、千鳥状に設けた凸部であっても容易に形成することができるものである。
【0031】
本発明の請求項6に記載の発明は、金属シートの凸部を成型法を用いて安価で容易に行えるものである。
【0032】
本発明の請求項7に記載の発明は、凸部の高さは3μm以上40μm以下である請求項1に記載の印刷用版であり、スキージに付着したペーストを効率的に除去するとともにスキージエッジにダメージを与えないというものである。
【0033】
本発明の請求項8に記載の発明は、傾斜部は15°の傾斜を備えている請求項1に記載の印刷用版であり、スキージの通過を容易にするものである。
【0034】
本発明の請求項9に記載の発明は、凸部のエッジは丸め処理されている請求項1に記載の印刷用版であり、スキージエッジへのダメージを防止するものである。
【0035】
本発明の請求項10に記載の発明は、請求項1記載の印刷用版を用いて、スキージを往復させペーストを被印刷物に印刷する方法であって、印刷する前に印刷用版の凸部でスキージエッジに付着したペーストを除去する印刷方法であり、傾斜部で形成されるスキージエッジ部の高粘度ペーストを除去することができ、製品の貫通孔への堅いペースト残りがなくなり、マスクフィルムを剥がす際に、ペーストの一部がマスクフィルム側に転写して品質に悪影響を及ぼす可能性を解消するという作用を有し、ペースト充填品質の高い印刷方法を提供するものである。
【0036】
本発明の請求項11に記載の発明は、印刷用版の凸部の前でスキージを所定時間停止する請求項10に記載の印刷方法であり、これによりスキージエッジ部の高粘度ペーストを確実に除去することができる。
【0037】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0038】
(実施の形態1)
ペースト充填方法と充填用の版について以下に説明する。
【0039】
図1は本発明の印刷用版の平面図、図2は本発明の印刷用版の断面図である。
【0040】
また、図3(a)〜(c)は本発明の第1の金属シートであり、図3(a)はその平面図、図3(b)、図3(c)はその断面図である。
【0041】
図4(a)〜(c)は本発明の第2の金属シートであり、図4(a)はその平面図、図4(b)はその断面図、図4(c)はその拡大平面図である。図5は本発明のスキージング法によるペースト充填の工程断面図であり、図6は本発明の印刷用版を用いたペースト充填時の一部断面図である。
【0042】
なお、従来の技術で説明した同一の構成部分や部品には同一の番号を付与して詳細な説明は省略する。
【0043】
本発明の印刷用版は図1、図2に示すように、版枠1にはプリプレグシート21のペースト充填エリアより広い250mm×450mmの開口部4を有する厚さ約3mmのステンレス製のマスク2を取り付けている(なお、300×500mm、厚さ約150μmのプリプレグシート21には専用のマスクフィルムを配置している)。
【0044】
マスク2の開口部4のスキージ進行方向(450mm側)にはスキージの通過を容易にするため15°傾斜を備えた傾斜部5を設けている。
【0045】
そしてマスク2の2辺の傾斜部5の裏面と他方の2辺の裏面には接着剤などで固定した金属シート3を約5mm突出させている。
【0046】
そして、マスク2の傾斜部5裏面から突出した厚さ約100μmの金属シート3の上面の所定位置に図3(a)〜(c)に示すように直線上の約40μmの凸部や、図4(a)〜(c)に示すように約300μm径で500μmピッチに形成した高さ約40μmの凸部を500μmの間隔で千鳥状に配列したスキージクリーニング部7を形成している。
【0047】
凸部の高さは実施の形態では40μmとしたが、3μm以上あれば同等の効果が得られることを確認している。スキージエッジにダメージを与えない高さの40μm以下が望ましい。
【0048】
直線上の凸部の形成はエッチング法や成型法を用い、千鳥状の凸部はエッチング法を用いた。
【0049】
また、凸部のエッジはスキージエッジへのダメージを防止するため、エッチング法などを用いて丸め処理をするのが好ましい。
【0050】
特に千鳥状に形成した場合は、形成した凸部が図4(c)に示すように、各々の凸部が面一あるいは重なり合うよう配置するのが好ましい。また、実施の形態では凸部のみでスキージクリーニング部7を形成したが、凸部内に貫通孔や非貫通孔を設けても構わない。
【0051】
導電ペーストへの充填方法を、図5(a)〜(g)を用いて簡単に説明する。
【0052】
導電性ペースト24の充填は、まず、図5(a)に示すように印刷機(図示せず)のステージ6に置載した両面にマスクフィルム22a,22bが接着され、貫通孔23が形成されたプリプレグシート21にマスク2がセットされる。
【0053】
そして、上方に設けられた上下左右に移動・加圧可能な往側スキージ8aと復側スキージ8bのうち往側スキージ8aのみをマスク2上の所定位置に降下させ、圧力をかけて導電性ペースト24をローリングさせながら前進させている。
【0054】
そして図5(b)に示すようにマスク2の傾斜部5を通過してプリプレグシート21上に到達する。往復のスキージ8a,8bは圧力を保持しながら位置に応じて自由に上下可能な機能を有している。
【0055】
そして図5(c)に示すように往側スキージ8aはプリプレグシート21上と再度マスク2の傾斜部5を通過してマスク2上の定位置でストップした後、上昇させて導電性ペースト24を自然落下させている。
【0056】
次に図5(d)に示すように復側スキージ8bのみをマスク2上の所定位置に下降させる。
【0057】
その後図5(e)〜(g)に示すように往側スキージ8aと同様に復側スキージ8bをマスク2とプリプレグシート21上を通過させることで貫通孔23への導電性ペースト24の充填が完了する。本発明の印刷用版は復側スキージ8bのスタート側のマスク2の傾斜部5裏面に上面の所定位置に凸部で形成したスキージクリーニング部7を有する金属シート3を突出させている。
【0058】
図6は復側スキージ8bがスタートしてマスク2上、傾斜部5、金属シート3上のスキージクリーニング部7、製品内の貫通孔23を通過した時点の一部断面図である。
【0059】
その結果、復側スキージ8bで充填開始後、マスク2の傾斜部5を経由してスキージクリーニング部7を通過した際に、スキージクリーニング部7のマスク2の傾斜部5側の凸部エッジに除去された導電性ペースト24が残っているのを確認した。
【0060】
マスク2の傾斜部5からスキージクリーニング部7までの距離は傾斜部5下降時のスキージ8b変形の復帰が可能な距離とするか、スキージ8bの速度を低速にするか一旦停止してスキージ8bの変形を復帰してから通常の速度で充填するとよい。
【0061】
本実施の形態ではスキージクリーニング部7の前でスキージ8bを約1秒停止する方法で充填した。
【0062】
そして、スキージクリーニング部7に残った導電性ペースト24は次のプリプレグシート21充填時に往側スキージ8aで除去され、連続して効果のあることを確認した。
【0063】
また、貫通孔に導電性ペースト24が充填されたプリプレグシート21を100枚確認したが、スキージクリーニング部7通過後、貫通孔上にペースト残りはなく、マスクフィルム22a,22b剥離時もマスクフィルム22a,22bに導電性ペースト24が転写して品質に影響を及ぼすことがないことを確認した。
【0064】
【発明の効果】
以上のように本発明の印刷用版及び印刷方法は、回路基板の貫通孔にペースト充填する前に印刷用版に設けたスキージクリーニング部でスキージエッジの高粘度のペーストを除去することで、製品の貫通孔上に高粘度のペースト残りを防止することが可能となり、品質に優れた回路基板を提供できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の印刷用版の平面図
【図2】本発明の印刷用版の断面図
【図3】(a)〜(c)はそれぞれ本発明の第1の金属シートを示す図
【図4】(a)〜(c)はそれぞれ本発明の第2の金属シートを示す図
【図5】(a)〜(g)はそれぞれ本発明のスキージング法によるペースト充填の工程断面図
【図6】本発明の印刷用版を用いたペースト充填時の一部断面図
【図7】(a)〜(f)はそれぞれ従来の両面の回路基板の製造方法の工程断面図
【図8】従来例の開口部を有するマスクを取り付けた版枠を示す斜視図
【図9】従来例の開口部を有するマスクを取り付けた版枠の断面図
【図10】(a)〜(g)はそれぞれ従来のスキージング法によるペースト充填の工程断面図
【図11】従来例の回路基板を用いたペースト充填時の一部断面図
【符号の説明】
1 版枠
2 マスク
3 金属シート
4 開口部
5 傾斜部
6 ステージ
7 スキージクリーニング部
8a 往側スキージ
8b 復側スキージ
21 プリプレグシート
22a,22b マスクフィルム
23 貫通孔
24 導電性ペースト
25a,25b 金属箔
Claims (11)
- 基板材料の全周あるいは一部の略外周部を覆う額縁状の開口部を有し、前記開口部のスキージ進行方向2辺の上方に傾斜部を設けたマスクを少なくとも四辺の版枠に固定し、傾斜部の裏面先端と他の2辺に金属シートを所定量突出させて固着した印刷用版であり、少なくとも傾斜部の一方の金属シートの突出部の上面に凸部を設けた印刷用版。
- 金属シートの凸部が所定長の直線状の凸部からなる請求項1に記載の印刷用版。
- 金属シートの凸部が所定長に千鳥状に設けた凸部からなる請求項1に記載の印刷用版。
- 金属シートに千鳥状に設けた凸部が逐次重なり合う間隔で設けた請求項3記載の印刷用版。
- 金属シートをエッチングして凸部を形成した請求項1に記載の印刷用版。
- 金属シートを成型して凸部を形成した請求項1に記載の印刷用版。
- 凸部の高さは3μm以上40μm以下である請求項1に記載の印刷用版。
- 傾斜部は15°の傾斜を備えている請求項1に記載の印刷用版。
- 凸部のエッジは丸め処理されている請求項1に記載の印刷用版。
- 請求項1記載の印刷用版を用いて、スキージを往復させペーストを被印刷物に印刷する方法であって、印刷する前に印刷用版の凸部でスキージエッジに付着したペーストを除去する印刷方法。
- 印刷用版の凸部の前でスキージを所定時間停止する請求項10に記載の印刷方法。
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