JP3921272B2 - 調味用ゴマソース - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、調味用ゴマソースに関する。詳しくは、本発明は、栄養豊富なゴマが安定に乳化された調味用ゴマソース及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ゴマは、その内容組成の約半分が脂質であり、次いでタンパク質が20%を占める。そして糖質は少なく、ミネラル、特にカルシウムが多いのが特徴である。また、ビタミンとしてビタミンB1、B2、ナイアシンを比較的多く含む。また、ゴマに多く含まれる多価不飽和脂肪酸には結晶コレステロールを正常に保つ作用がある。
【0003】
従って、近年、このような栄養豊富なゴマを多く含む調味料が求められる傾向にあり、とりわけ、調理用途の広い調味用ソース(ブラウン系ソース等)にゴマを多く含有させたものを開発することが望まれている。
【0004】
しかしながら、油分を多く含むゴマをソース中に含有させるためには該油分を乳化させて安定化させることが必要となるが、従来のソースでは、乳化剤として乳化力が若干劣るシュガーエステルを用いているため、ゴマを乳化させるのは困難であった。従って、ゴマを含有物の主体とするソースは今までなかったのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、栄養価の高いゴマを安定な乳化状態で含む調味用ゴマソースを提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討した結果、水溶性ヘミセルロースを有効成分とする乳化剤を用いることにより、ゴマの油分を安定に乳化できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、ゴマ成分と、水溶性ヘミセルロースを有効成分とする乳化剤とを含む調味用ゴマソースを提供する。前記水溶性ヘミセルロースは、好ましくは大豆抽出繊維である。
【0008】
また、本発明は、水溶性ヘミセルロースを有効成分とする乳化剤を熱水に溶解させる溶解工程と、前記溶解工程で得られる乳化剤溶液を用いてゴマ成分を乳化させる乳化工程とを含む、前記調味用ゴマソースの製造方法を提供する。
【0009】
本発明によれば、従来乳化が困難であったゴマペースト、ゴマ油等のゴマ成分を、良好な乳化安定性を保持しつつ調味用ソースに含有させることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
(1)調味用ゴマソース
本発明の調味用ゴマソースは、ゴマ成分と、水溶性ヘミセルロースを有効成分とする乳化剤とを含むものである。詳しくは、前記ゴマ成分中の油分が水溶性ヘミセルロースを有効成分とする乳化剤によって乳化されている。尚、調味用ソースとしては、ブラウン系ソースであれば特に限定されず、例えばウスターソース、中濃ソース等、あるいはとんかつソース、お好み焼きソース、焼きソバソース等の用途が特定されたソースなどが挙げられる。
【0011】
(i)ゴマ成分
本発明のゴマ成分は、通常ゴマペースト(練りゴマ)及び/又はゴマ油として含まれる。ゴマペーストとゴマ油は、各々単独で用いてもよく、また両者を併用してもよい。好ましくはゴマペースト及びゴマ油が、ゴマペースト:ゴマ油=10:0〜1の割合で含まれる。調味用ゴマソースにおけるゴマ成分の含有量は、前記ソース全量に対し、好ましくは5〜10重量%程度である。
【0012】
(ii)乳化剤
乳化剤の有効成分である水溶性ヘミセルロースは、一般に、穀類等の陸生植物の細胞壁構成成分で、セルロース、ペクチンを除く多糖区分であり、ヘミセルロースを含む原料から、水抽出や、場合によっては酸又はアルカリ条件下で加熱溶出させるか、酵素により分解溶出させることによって得ることができる。
【0013】
原料としては、具体的には油糧種子、例えば大豆、パーム、ヤシ、コーン、綿実などの油脂やタンパク質を除いた殻、或いは穀類、例えば米、小麦などの澱粉等を除いた粕等の植物を挙げることができる。原料が大豆であれば豆腐や豆乳、分離大豆蛋白を製造するときに副生するオカラを利用することができる。これらの原料を酸性又はアルカリ性の条件下、好ましくは各々のタンパク質の等電点付近のpHで、好ましくは80〜130℃、より好ましくは100〜130℃にて加熱分解し、水溶性画分を分画した後そのまま乾燥するか、例えば活性炭処理、樹脂吸着処理、エタノール沈殿処理等を行って疎水性物質或いは低分子物質を除去した後乾燥することによって、水溶性ヘミセルロースを得ることができる。
【0014】
本発明で用いられる水溶性ヘミセルロースの分子量については特に制限はないが、好ましくは平均分子量が数千〜数百万、より好ましくは5000〜100万(標準プルランを標準物質として0.1MのNaNO3溶液中の粘度を測定する極限粘度法で求めた値)である。この水溶性ヘミセルロースの分子量が大きく溶液の粘度が高すぎると、良好な乳化が得られない場合があるため、前記製造工程に、さらに低分子化処理を含めることもできる。低分子化は、加熱分解するときに加熱条件を強くすることによっても可能であるが、ヘミセルロースの分解抽出溶液をアルカリ・酸・熱・酵素等を用いて処理することによって行うこともできる。水溶性ヘミセルロース溶液の粘度は、例えば10%水溶液の場合、150センチポイズ以下が良く、より好ましくは60センチポイズ以下、さらに好ましくは30センチポイズ以下が良い。
【0015】
本発明で用いられる水溶性ヘミセルロースの好ましいものとしては、豆類由来のもの、特に大豆を原料として抽出される大豆抽出繊維が挙げられる。このような水溶性ヘミセルロースを有効成分とする乳化剤は市販されており、容易に入手することができる。市販品としては、例えば商品名ソヤファイブS(不二製油(株)製)等が挙げられる。
【0016】
水溶性ヘミセルロースは、単独で乳化剤として使用することができる。また、他の既存の乳化剤と併用することもできる。併用可能な他の既存の乳化剤としては、単分子乳化剤として、脂肪酸石鹸に代表される各種アニオン界面活性剤、4級アンモニウム塩等のカチオン界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル、シュガーエステル等の非イオン界面活性剤、レシチンのような両性界面活性剤等が挙げられる。また、高分子乳化剤として、天然系乳化剤、例えば布海苔、寒天、カラギーナン、ファーセレラン、タマリンド種子多糖類、タラガム、カラヤガム、ペクチン、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、トラガントガム、グワーガム、ローカストビーンガム、プルラン、ジェランガム、アラビアガム、ゼラチン、ホエー等のアルブミン、カゼインナトリウム、各種澱粉等が挙げられる。又、半合成糊剤として、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル及び可溶性澱粉に代表される加工澱粉等が例示でき、合成糊剤としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム等が例示できる。
【0017】
乳化剤の含有量は、本発明の調味用ゴマソース全量に対し、1.0〜3.0重量%が好ましい。また、乳化剤とゴマ成分との割合は、乳化剤:ゴマ成分=1:1.5〜5.0が好ましい。さらに、乳化剤とゴマ成分中の油分との割合は、乳化剤:油分=1:1〜3が好ましい。油分の量に対する乳化剤の量がこの範囲内であれば、乳化しやすくかつ経済性もよい。
【0018】
(iii)その他の成分
本発明の調味用ゴマソースには、前記ゴマ成分及び乳化剤の他に、従来よりかかる調味用ソース類に配合することが知られている種々の成分を添加することができる。具体的には、野菜・果実汁や野菜・果実エキス等の野菜・果実類、香辛料等が挙げられる。
【0019】
野菜・果実類としては、タマネギ、トマト、ニンニク、マッシュルーム、セロリ、ニンジン、リンゴ、ミカン、パセリ、ホウレンソウ等が挙げられる。これらは、例えばオニオンエキス、ガーリックエキス等の野菜・果実エキスとして添加されていてもよく、また、例えばトマトジュース、発酵トマト液、タマネギ液、タマネギパルプ等の野菜・果実汁の形態で添加されていてもよい。
【0020】
香辛料としては、例えばタイム油、セージ油、桂皮油、ニクズク油、丁字油、ういきょう油、タイムオレオレジン、セージオレオレジン、クローブオレオレジン、ナツメグオレオレジン、ブラックペッパーオレオレジン等が挙げられる。
【0021】
本発明の調味用ゴマソースには、そのほかに、ショ糖、糖蜜、ブドウ糖、異性化液糖等の糖分、醸造酢、クエン酸等の酸分、塩分等が適宜添加される。
【0022】
(2)調味用ゴマソースの製造方法
本発明の調味用ゴマソースの製造方法としては、ゴマ成分を前記乳化剤で乳化する工程を含む方法であれば特に限定されないが、好ましくは、水溶性ヘミセルロースを有効成分とする乳化剤を熱水に溶解させる溶解工程と、前記溶解工程で得られる乳化剤溶液を用いてゴマ成分を乳化させる乳化工程とを含む方法により製造される。この方法により、乳化剤を十分に溶解させることができ、ゴマ成分を十分に乳化させることができる。尚、ゴマ成分としては、好ましくはゴマペースト及び/又はゴマ油が用いられる。
【0023】
具体的には、溶解工程において、乳化剤と熱水とを混合撹拌して乳化剤を完全に溶解させ、乳化剤溶液を調製する。ここで、乳化剤は80℃以上の熱水に溶解させるのが好ましい。これにより、乳化剤の溶解性がより向上する。
【0024】
次に、乳化工程において、まず前記乳化剤溶液とゴマ成分とを混合し、十分に撹拌することで予備乳化を行ってゴマ成分の乳化物を得る。次いで、得られたゴマ成分の乳化物を常法にしたがって、例えば上述した他のソース原料成分と共に混合し、ホモジナイズ処理によって本乳化を行う。本発明の調味用ゴマソースは、かかる予備乳化工程と本乳化工程とを経ることによって得ることができる。
【0025】
乳化作業はホモジナイザー等を用いてホモジナイズ(微細・均質化)処理することにより行われる。ホモジナイザーとしては、撹拌方式によるホモミキサー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、コロイドミル等が挙げられる。
【0026】
具体的には、例えば、ゴマ成分と乳化剤溶液とを混合し、これに適宜水を加えて、好ましくは40〜80℃程度の温度で10〜20分間程度タンク内で撹拌し、予備乳化する。次いで、これと他のソース原料成分とを共に混合し、加熱調合後(沸点達温)、高圧ホモジナイザー(例えば三丸機械工業(株)製)でホモジナイズ処理し、調味用ゴマソースを得る。このときの圧力は100〜500kgf/cm2程度、ホモジナイズ処理回数は1〜2回程度が好ましい。
【0027】
このように、本発明においては、ゴマ成分の乳化物をさらに1〜2回程度ホモジナイズ処理するという予備乳化工程と本乳化工程とを組み合わせた乳化工程を採用するのが好ましく、これにより十分に乳化させることができ、例えば乳化径を1μm以下とすることができる。ただし、条件によっては、ゴマ成分と乳化剤溶液と他のソース原料とを一度に調味用ゴマソースとして調合した後、高圧ホモジナイザー等によるホモジナイズ処理を行う方法によっても十分な乳化状態を達成することができる。
【0028】
乳化剤として大豆レシチン等を使用した従来の乳化作業に比べ、水溶性ヘミセルロースを有効成分とする乳化剤を使用する本発明においては、このように簡単な操作で十分な乳化状態を達成することができる。
【0029】
本製造方法においては、ゴマ成分と乳化剤と熱水との割合が、ゴマ成分:乳化剤:熱水=1〜4:1:4〜10となるようにするのが好ましい。特に、この割合が4:1:4の場合、最も効率的にゴマ成分を分散させることができ、短時間で乳化状態が得られる。ただし、溶解工程における乳化剤と熱水との割合は、乳化剤:熱水=1:6〜10、より好ましくは1:8とするのがよい。これにより、次の乳化工程へ送液するために希釈して粘度を低減させる必要がなく、速やかな送液が可能である。
【0030】
本発明の製造方法においては、前記乳化工程を酸の存在下に行うことが好ましい。乳化物の安定性はpHに大きく影響されるが、水溶性ヘミセルロースを有効成分とする乳化剤は、低いpHでの安定性及び乳化効率が高く、それゆえにpHの低い調味用ソース類への利用に適していると考えられる。よって、乳化物のpHを低く抑えて良好な乳化状態を得るために、乳化作業の際に酸を添加してpHを2〜4程度に調節するのが好ましい。添加する酸としては、酢酸(醸造酢)、クエン酸等が挙げられる。また、その添加量は特に限定されないが、好ましくは得られる乳化物(調味用ソース)全量に対し1.4〜2重量%程度である。この範囲内であれば乳化効率が高く、安定した乳化状態が得られる。
【0031】
本発明の調味用ゴマソースは、上記乳化工程で得られるゴマ成分の乳化物を常法に従って、例えば上述した他のソース原料成分とともに混合し、懸濁させることによって得られる。
【0032】
本発明の調味用ゴマソースの製造方法は、従来の大豆レシチンを乳化剤として用いた場合に比べて乳化作業が簡単である。また、乳化安定性に優れており、長期間にわたり良好な状態で保存することができる。
【0033】
尚、乳化物の安定性には保存温度も影響し、通常は温度が低いほど乳化安定性がよいが、本発明のゴマ成分の乳化物は乳化安定性に優れているため、40℃以下程度の保存温度であれば十分に安定した状態で保存できる。
【0034】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を説明する。
【0035】
【実施例1】
本実施例では、調味用ゴマソースの製造に用いるゴマ成分の乳化物を、ゴマ成分と乳化剤と熱水とを混合撹拌して予備乳化することにより製造した。ここで、各成分の割合としては、乳化剤(商品名ソヤファイブS;不二製油(株)製)とゴマ成分(ゴマペースト及びゴマ油)とを、ゴマ成分:乳化剤=4:1(重量比)(該ゴマ成分中の油分と乳化剤との割合は油分:乳化剤=2:1)となるようにし、熱水の割合は表1に示したように前記乳化剤1に対して3、4、6、8となるように変化させた。
【0036】
まず、実験用として、1リットル用ビーカーに乳化剤と熱水(80℃)とを混合撹拌して乳化剤溶液を調製した。この乳化剤溶液中に乳化剤の固まりが生じず完全に溶解したのを確認した後、これにゴマ成分(ゴマペースト及びゴマ油)を投入して撹拌した(50〜60℃)。ゴマ成分が完全に分散していることを確認した後、さらに撹拌してゴマ成分の乳化物を得た。
【0037】
また、製造工程用として、まず80℃以上の熱水を100リットル容タンクに張り込み、乳化剤を投入した後、撹拌機で乳化剤の固まりがなくなるまで約10分間撹拌した(約100rpm)。次いで、ゴマ成分を投入して撹拌し(約5分)、ゴマ成分が完全に分散していることを確認した後、さらに撹拌してゴマ成分の乳化物とした。
【0038】
乳化状態を観察した結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
【実施例2】
実施例1で得られた乳化物を用いて、次のようにして調味用ゴマソースを製造した。まず、得られた乳化物に他のソース原料成分を混合し、90℃で15分間加熱調合した。次いで、高圧ホモジナイザー(三丸機械工業(株)製)でホモジナイズ処理(圧力:100kgf/cm2)を行った。ホモジナイズ処理回数は1回であった。得られた調味用ゴマソースの配合組成を表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
【発明の効果】
本発明では、大豆抽出繊維に代表される水溶性ヘミセルロースを有効成分とする乳化剤を使用しているため、従来乳化が困難であったゴマ成分を安定に乳化することができ、しかも乳化作業を簡便に行うことができる。よって、栄養価に優れたゴマを豊富に含んだ調味用ゴマソースが得られる。
Claims (1)
- 水溶性ヘミセルロースを有効成分とする乳化剤を熱水に溶解させる溶解工程と、前記溶解工程で得られる乳化剤溶液を用いてゴマ成分を乳化させる乳化工程とを含む調味用ゴマソースの製造方法であって、前記乳化工程におけるゴマ成分と乳化剤と熱水との割合が、ゴマ成分:乳化剤:熱水=1〜4:1:4〜10(重量比)である、調味用ゴマソースの製造方法。
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