JP3908426B2 - セラミックコンデンサー電極形成用ペースト - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックコンデンサー電極形成用ペーストに関する。
【0002】
【従来の技術】
コンデンサーは、電極層の間に配置された誘電体層に電気容量を持たせることを目的とした電子部品である。コンデンサーは、図1に示すように、誘電体層2の表裏面に電極層3を配置した構造を有するが、近年においては、コンデンサーに耐熱性、耐食性等を付与すべく、誘電体をチタン酸バリウム(BaTiO3)等のセラミックスで構成したセラミックコンデンサも使用されている。
また、電気機器の小型化の要請に伴い、コンデンサの小型化も進み、今日において、このようなセラミックコンデンサは、電極層を、誘電体層に電極用ペーストにて形成した被膜により構成するとともに、小型で大容量のコンデンサを得るために図2に示すような積層構造を採用することが一般的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のセラミックコンデンサーは、電極層を構成する被膜の誘電体層への密着性が不十分であったため、使用に伴って、電極層が誘電体層から徐々に剥離していくという問題があった。
【0004】
電極層が誘電体層から剥離すると、電極層と誘電体層との間に隙間ができ、その部分に誘電率が小さい空気層が介在するため、コンデンサの容量特性が上記理由から経時劣化を引き起こし、コンデンサの目的機能を発揮できなくなるという結果を招く。
【0005】
また、従来のセラミックコンデンサは、電極層に貫通孔が存在する場合があり、貫通孔の大きさにより、コンデンサの容量値を決める有効電極面積が個々にばらつくために、コンデンサの容量ばらつきが大きくなり、コンデンサの特性歩留まりを低下させるという不都合を生じるという問題があった。
【0006】
更に、積層構造を有するセラミックコンデンサを製造する場合には、端部に位置する誘電体層に電極層と誘電体層を交互に形成した後、一度で焼成を行う。この場合に、2つの誘電体層に挟まれた電極層に貫通孔が存在すると、貫通孔内に存在する空気及び焼成中に発生する脱ガスが、焼成過程において、気孔内で膨張し、その内部圧力を高めるために、誘電体層と電極層との間で層間剥離を起こし、結果的に誘電体層にふくれや亀裂が発生し、セラミックコンデンサを製造する際の歩留まりが低下するという問題もあった。その問題を解決する手段として長時間焼成を実施すればよいが、ランニングコストアップやリードタイム延長により製造コストを引き上げてしまう。
【0007】
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電極層が誘電体層から剥離しにくく、かつ、製造する際の歩留まりの向上を図ることのできるセラミックコンデンサー電極形成用ペーストを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明によれば、セラミックコンデンサー電極形成用ペーストであって、10〜14重量%の有機ビヒクル及び86〜90重量%の白金粉末から成り、当該白金粉末は、100重量%中、54〜60重量%の球状粉末、36〜40重量%のフレーク状粉末及び0〜10重量%の不定形粉末を含有することを特徴とする電極形成用ペーストが提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の電極形成用ペーストは、10〜14重量%の有機ビヒクル及び86〜90重量%の白金粉末から成り、上記白金粉末は、100重量%中、54〜60重量%の球状粉末、36〜40重量%のフレーク状粉末及び0〜10重量%の不定形粉末を含有するものである。
【0010】
このとき、電極形成用ペーストにおける白金粉末の含有量を86〜90重量%に制限したのは、86重量%未満では著しい膜密度低下を起こし、90重量%を超える場合には、印刷適性が悪化するからである。白金粉末の含有量は、88〜90重量%であることがより好ましい。
【0011】
又、白金粉末100重量%のうち、球状粉末が占める割合を54〜60重量%、フレーク状粉末が占める割合を36〜40重量%、不定形粉末が占める割合を0〜10重量%としたのは、セラミックコンデンサーの電極層を構成する被膜の膜密度を80%以上、表面粗さ(Ra)を0.4〜0.6μmかつ接着強度を2kg以上に調整するためである。
【0012】
即ち、膜密度を80%以上とすると、コンデンサ特性の劣化及び容量ばらつきを抑制できる。ここで、膜密度とは、電極膜の緻密性を表す概念であり、電極表面を電子顕微鏡又は金属顕微鏡で数カ所視野を変えて写真撮影し、孔面積と全電極面積を算出した場合のその割合((全電極面積−孔面積)/全電極面積)をいう。従って、膜密度が大きい程、電極層上に形成した被膜に発生する貫通孔の大きさが小さくなり、又は数が少なくなる。
本発明においては、白金粉末の形状における組成を所定の範囲に制限することにより、膜密度の調整を通じて、貫通孔の大きさを小さく、かつ数を少なく保ち、容量ばらつきを小さくしている。又、コンデンサ特性の劣化も抑制することができる。なお、白金粉末の形状における組成を上記の範囲に制限すると、膜密度が80%以上となるのは、3種類の形状の異なる粉末をバランスよく混合することで、ペースト中の粉末充填度を高くし、焼成収縮率を小さく抑制できることに起因する。
【0013】
又、電極層を構成する被膜の表面粗さ(Ra)を0.4〜0.6μm、接着強度を2kg以上とすると、被膜の誘電体層への密着性が向上し、電極層を誘電体層から剥離しにくくすることができる。被膜の表面粗さ(Ra)を上記範囲に規定すると膜密度が低下せずに密着性が向上するのは、積層構造を有する場合、白金の基材中への拡散による化学的結合力とともに、表面粗さと関わりの強いアンカー効果による物理的結合力によっても、基材と密着するからである。ここで、表面粗さ(Ra)とは、JlSB0601の方法により測定した値をいう。又、接着強度とは、基材と導体との密着力を表す概念であり、2mm口の導体パターンにφ0.6mmの錫被覆軟銅線をL字形に曲げたリード線を半田付けし、20mm/secの引っ張り速度で垂直に引っ張ったときの引っ張り強度をいう。なお、白金粉末の形状における組成を上記の範囲に制限すると、表面粗さ(Ra)が0.4〜0.6μmとなるのは、粒子径が大きいフレーク粉末が骨格を形成し、その隙間を粒子径が小さい球状粉末と不定形粉末が埋めることで、焼成後の表面粗さが安定するからである。又、接着強度が2kg以上φとなるのは、粒子径が小さい球状粉末と不定形粉末は粉末表面活性に富むため、基材中へ拡散しやすいからである。
【0014】
図3、4及び5に、球状粉末、フレーク状粉末及び不定形粉末の2次電子顕微鏡観察写真をそれぞれ示す。球状粉末は、直径がサブミクロンオーダーのほぼ球形の粉末であり、フレーク状粉末は、長径が数ミクロンオーダーの扁平な粉末である。又、不定形粉末とは、一次粒子径がオングストロームオーダーの粉末で、所々大きなものが見えるのは一次粒子が凝集した二次粒子である。
【0015】
以上、述べたように、本発明の電極形成用ペーストは、電極用ぺ一ストを構成する白金粉末の形状における組成を所定の範囲に制限することにより、電極層を構成する被膜の膜密度、表面粗さ(Ra)及び接着強度の調整を通じて、容量ばらつきを小さくし、かつ、コンデンサ特性の劣化を防いでいる。
【0016】
なお、電極用ぺ一ストを構成する白金粉末において、球状粉末、フレーク状粉末及び不定形粉末が占める割合は、それぞれ、57〜60重量%、38〜40重量%及び0〜5重量%であることがより好ましい。
【0017】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0018】
(実施例1) 白金粉末88重量%に、有機ビヒクル12重量%を配合したものを用い、白金粉末の形状における組成を、球状粉末57重量%、フレーク状粉末38重量%、不定形粉末5重量%とした電極用ペーストを、スクリーン印刷により、誘電体層の表裏面に電極層として形成させ、焼成を行うことにより、図1に示すようなセラミックコンデンサを製造した。
このとき、下部電極を構成する被膜の膜密度、表面粗さ(Ra)及び接着強度は、それぞれ、88%、0.45μm及び2.4kgであった。
【0019】
上記のセラミックコンデンサにおいて、誘電体層はジルコン酸チタン酸鉛より構成し、20μmの厚さとした。又、電極層の厚さは、4μmとした。
【0020】
このようなセラミックコンデンサ25個について、コンデンサとしての容量及び容量ばらつきを調べた。さらに、上記のセラミックコンデンサを1000時間、連続使用した後に、電極層の誘電体層からの剥離の有無を調べた。表1に結果を示す。
【0021】
(実施例2〜9) 実施例1と同様にセラミックコンデンサを製造した。但し、電極用ぺ一ストにおける白金粉末と有機ビヒクルとの配合比及び白金粉末の形状における組成を表1に示す値とすることにより、下部電極を構成する被膜の膜密度、表面粗さ(Ra)及び接着強度を表1に示す値に調整した。
【0022】
このようなセラミックコンデンサ25個について、コンデンサとしての容量及び容量ばらつきを調べた。さらに、電極層の誘電体層からの剥離の有無を、実施例1と同様の条件にて調ぺた。表1に結果を示す。
【0023】
(比較例1) 電極用ペーストとして、実施例1と同様の白金粉末84重量%に、有機ビヒクル16重量%を配合したものを用い、白金粉末の形状における組成を、球状粉末35.7重量%、フレーク状粉末40.5重量%、不定形粉末23.8重量%としたことにより、電極層を構成する被膜の膜密度、表面粗さ(Ra)及び接着強度は、それぞれ、70%、0.63μm及び1.5kgとなった点を除いては、実施例1と同様のセラミックコンデンサを製造した。
【0024】
このセラミックコンデンサ25個について、コンデンサとしての容量及び容量ばらつきを調べた。さらに、電極層の誘電体層からの剥離の有無を、実施例1と同様の条件にて調ぺた。表1に結果を示す。
【0025】
(比較例2〜5) 実施例1と同様にセラミックコンデンサを製造した。但し、電極用ぺ一ストにおける白金粉末と有機ビヒクルとの配合比及び白金粉末の形状における組成を表1に示す値としたことにより、下部電極を構成する被膜の膜密度、表面粗さ(Ra)及び接着強度は表1に示す値となった。
【0026】
このようなセラミックコンデンサ25個について、コンデンサとしての容量及び容量ばらつきを調べた。さらに、電極層の誘電体層からの剥離の有無を、実施例1と同様の条件にて調ぺた。表1に結果を示す。尚、比較例2については、被膜にちぢれが生じたため、膜密度及び容量を測定できなかった。
【0027】
【表1】
【0028】
実施例と比較例との比較から、電極層を構成する白金粉末と有機ビヒクルとの配合比及び電極層を構成する被膜の膜密度、表面粗さ(Ra)及び接着強度を所定の値に制限することにより、セラミックコンデンサの容量に影響を与えることなく、電極層の誘電体層からの剥離及び誘電体層におけるふくれの発生を防止できることがわかる。
【0029】
【発明の効果】
本発明の電極形成用ペーストは、ペーストに含まれる白金粉末の形状における組成が、所定の範囲に制限されているため、セラミックコンデンサーの電極層を構成する被膜の膜密度、表面粗さ(Ra)及び接着強度が所定の値に制限され、電極層の誘電体層への密着性を向上させることができるとともに、電極層に発生する貫通孔の大きさを小さく保つことができる。
従って、電極層の誘電体層からの剥離や貫通孔の存在に起因するコンデンサ特性の劣化を防ぐことができるとともに、容量ばらつきの抑制を介してコンデンサを製造する際の歩留まりの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 コンデンサの一例を示す模式断面図である。
【図2】 積層構造を有するセラミックコンデンサの一例を示す模式断面図である。
【図3】 球状粉末の粒子構造の一例を示す2次電子顕微鏡観察による(a)2000倍の拡大写真、(b)7500倍の拡大写真である。
【図4】 フレーク状粉末の粒子構造の一例を示す2次電子顕微鏡観察による(a)2000倍の拡大写真、(b)7500倍の拡大写真である。
【図5】 不定形粉末の粒子構造の一例を示す2次電子顕微鏡観察による(a)2000倍の拡大写真、(b)7500倍の拡大写真である。
【符号の説明】
1…コンデンサ、2…誘電体層、3…電極層。
Claims (1)
- セラミックコンデンサー電極形成用ペーストであって、
10〜14重量%の有機ビヒクル及び86〜90重量%の白金粉末から成り、当該白金粉末は、100重量%中、54〜60重量%の球状粉末、36〜40重量%のフレーク状粉末及び0〜10重量%の不定形粉末を含有することを特徴とする電極形成用ペースト。
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