JP3902835B2 - ポジ型ホトレジスト組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規なポジ型ホトレジスト組成物、さらに詳しくは、ArFエキシマレーザー光に対する透明性が高く、高感度で高解像度を有し、かつアルカリに対して親和性が高く、パドル現像により、パターン形状、耐ドライエッチング性、密着性の良好なパターンが得られるポジ型ホトレジスト組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
これまで、化学増幅型レジストの樹脂成分としては、KrFエキシマレーザー光(248nm)に対し高い透明性を有するポリヒドロキシスチレンやこのヒドロキシル基を酸解離性の溶解抑制基で保護したものが主に用いられてきた。
しかしながら、近年半導体素子の微細化に対する要求はますます高まり、その光源もKrFエキシマレーザー光からより短波長のArFエキシマレーザー光(193nm)を用いるプロセスに移行しつつある。
【0003】
ところで、ArFエキシマレーザー光(193nm)を光源とするプロセスにおいては、従来用いていたポリヒドロキシスチレンのような芳香族環をもつ樹脂では、このArFエキシマレーザー光に対する透明性が不十分で使用できないため、これに代わるものとして芳香族環をもたないアクリル系樹脂が注目されるようになってきたが、このアクリル系樹脂は、耐ドライエッチング性が低いという欠点を有している。
【0004】
このような欠点を改善したものとして、透明性と耐ドライエッチング性を共に兼ね備えたアクリル系樹脂、例えばエステル部にアダマンタン骨格をもつアクリル酸エステルの重合体(特開平4−39665号公報)や、エステル部にアダマンタン骨格をもつアクリル酸エステルとアクリル酸テトラヒドロピラニルエステルとの共重合体(特開平5−265212号公報)などが提案されているが、このようなアダマンタン骨格を有するアクリル酸エステルを構成単位として導入するには、特別な原料を用いなければならないので、コスト高になるのを免れない上に、これらのものは感度が低く、しかもレジストパターン形状も良好でないという欠点があるため、工業化するのは難しい。
【0005】
一方、ArFエキシマレーザー光を用いるプロセスにおいては、0.2μm以下の超微細パターンを解像性よく形成させることが重要な目的となっているが、このような超微細パターンを形成させる場合、これまでのホトレジストでは基板とレジスト層との密着性が不足し、パターン倒れを生じる。
【0006】
このため、アクリル酸の3‐オキソシクロヘキシルエステル(特開平5−346668号公報)や、γ‐ブチロラクトン(特開平7−181677号公報)のような含酸素複素環基をもつアクリル酸エステルを構成単位として導入したものが提案されているが、このような含酸素複素環基をもつアクリル酸エステル単位を導入したアクリル系樹脂は、密着性の点では幾分改善が認められるものの、製造工程が煩雑であって、量産に不適である上、現像液として用いられるアルカリ水溶液に対する親和性が不十分で、半導体素子製造の主流となっているパドル現像においては、忠実なレジストパターンが形成できない。このため、基板に対する密着性が優れ、しかもパドル現像可能なアルカリ水溶液に対する親和性を有するArFエキシマレーザー光用レジストの出現が、この分野において要望されている。
【0007】
そのほか、メバロニックラクトンのようなラクトン環中のβ位でアクリル酸とのエステルを形成し、かつこのβ位の炭素にアルキル基を導入することにより脱離性を高めたアクリル酸エステルを構成単位とするものも知られているが(特開平9−90637号公報)、このものは、露光部と未露光部のコントラストが十分でないため、感度、解像度共に満足しうるものではない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとで、ArFエキシマレーザー光に対する透明性が高く、高感度で高解像度を有し、かつアルカリに対して親和性が高く、パドル現像により、パターン形状、耐ドライエッチング性、密着性の良好なパターンが得られるポジ型ホトレジスト組成物を提供することを目的としてなされたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ArFエキシマレーザー用のポジ型ホトレジスト組成物を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が変化するアクリル系樹脂と酸発生剤とを含有させ、かつ上記アクリル系樹脂として、エステル部に、ラクトン化合物、ケトン化合物又はエステル化合物の残基が結合した分枝状アルキル基、特にイソプロピル基を有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを構成単位とするものを用いることにより、ArFエキシマレーザー光に対する透明性が高く、高感度、高解像性を有し、かつ優れた物性のパターンを形成するポジ型ホトレジスト組成物が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、(A)酸の作用によりアルカリに対する溶解性が変化するアクリル系樹脂及び(B)放射線照射により酸を発生する酸発生剤を含有するポジ型ホトレジスト組成物において、(A)成分が、一般式
【化2】
(式中のR1は水素原子又はメチル基、R2及びR3は、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基、R4はラクトン化合物の中から選ばれた化合物の炭素原子に結合した水素原子1個を除いて形成される残基である)
で表わされる構成単位を含むアクリル若しくはメタクリル系重合体又は共重合体であることを特徴とするポジ型ホトレジスト組成物を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明組成物における(A)成分は、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が変化する、すなわちアルカリに対する溶解性が増加するアクリル系樹脂であって、このアクリル系樹脂としては、前記一般式(I)で表わされる構成単位を含むアクリル若しくはメタクリル系重合体又は共重合体が用いられる。
【0012】
前記一般式(I)で表わされる構成単位は、(a−1)モノマー、すなわち一般式
【化3】
(式中のR1、R2、R3及びR4は前記と同じ意味をもつ)
で表わされるアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルから誘導される。このアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルは、アクリル酸又はメタクリル酸を相当するアルコールでエステル化することにより得られ、安価で、かつ容易に製造可能であり、量産性に適している。
【0013】
前記一般式(I)及び(II)において、R2及びR3で示される炭素数1〜4のアルキル基は、直鎖状又は分枝状のいずれでもよく、具体的にはメチル基、エチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、イソブチル基、sec‐ブチル基、tert‐ブチル基などである。
【0014】
本発明においては、このR2及びR3がともに炭素数1〜4のアルキル基であることが必要であり、これらのどちらかあるいは両方が水素原子では本発明の目的が達せられない。R2及びR3は、ともに上記炭素数1〜4のアルキル基であればよく、制限されるものではないが、共にメチル基であるものが入手の容易さから好ましい。
【0015】
一方、R4のラクトン化合物の炭素原子に結合した水素原子1個を除いて形成される残基としては、γ‐ブチロラクトン残基、δ‐バレロラクトン残基及びこれらの誘導体残基などが好ましく挙げられる。ここで誘導体としては、メチル基やエチル基のような炭素数1又は2のアルキル置換体、メトキシ基、エトキシ基のような炭素数1又は2のアルコキシ置換体、ラクトン環上に酸素原子を複数有するもの、ラクトン環にメトキシカルボニル基やアシル基が結合したものなどが挙げられる。これらの中でγ‐ブチロラクトン残基及び炭素数1又は2のアルキル基又はアルコキシ基をもつγ‐ブチロラクトン残基が好ましい。
【0016】
前記一般式(II)で表わされるアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルにおいて、前記ラクトン化合物残基をもつアルコール成分としては、例えば、
【化4】
で表わされる化合物を挙げることができる。これらの中で五員環のラクトン残基を有するアルコールが好ましい。
【0017】
本発明においては、(A)成分のアクリル系樹脂は、前記一般式(I)で表わされる構成単位を20〜80モル%、好ましくは40〜70モル%の割合で含有するものが、感度、解像性、透明性、密着性及びアルカリに対する親和性をバランスよく向上させ、好ましい。
【0018】
(A)成分のアクリル系樹脂は、前記(a−1)モノマーである一般式(II)で表わされる(メタ)アクリル酸エステル(アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを指す。以下同様)を重合させて得られたものであってもよいが、一般式(II)で表わされる(メタ)アクリル酸エステルと以下に示す他のモノマーとを、一般式(I)で表わされる構成単位の割合が上記範囲になるように共重合させて得られたものが好ましい。
【0019】
共重合させる他のモノマーとしては、例えば(a−2)従来、化学増幅型ポジ型ホトレジストに用いられている公知の耐ドライエッチング性向上基又は酸解離性基などの保護基を有する(メタ)アクリル酸誘導体、(a−3)(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸などのアルカリ可溶性とするためのエチレン性二重結合を有するカルボン酸、(a−4)アクリル樹脂として公知のモノマー成分及び(a−5)その他の酸素含有環状基を有するアクリル系モノマーなどが挙げられる。これらの他のモノマーは適宜組み合わせて用いてもよい。
【0020】
前記(a−2)モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸tert‐ブチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロピラニル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフラニル、(メタ)アクリル酸1‐メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸1‐メチルアダマンチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸と2‐ヒドロキシ‐3‐ピナノンのエステルなどのカルボキシル基の水酸基を酸解離性置換基で保護した(メタ)アクリル酸エステル、又は(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸3‐オキソシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ビシクロ[2,2,1]ヘプチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸とテルピネオールとのエステル、(メタ)アクリル酸と3‐ブロモアセトンとのエステルなどのカルボキシル基の水酸基を酸非解離性置換基で保護したものなどが挙げられる。
【0021】
このような(a−2)モノマーは、例えば一般式
【化5】
(式中のR1は水素原子又はメチル基、Yはtert‐ブチル基、エトキシエチル基、メトキシプロピル基、テルピネオール残基又は
【化6】
で示される基である)
で表わすことができる。
【0022】
また(a−3)モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられるが、これらの中で(メタ)アクリル酸が好ましい。
さらに、(a−4)他の重合性モノマーとしては、例えば(イ)(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n‐ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n‐ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2‐エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシプロピルなどのアルキルエステル、(ロ)(メタ)アクリルアミド、N‐メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどのアミド、(ハ)アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、エチルビニルエーテルなどを挙げることができる。
【0023】
(a−5)のその他の酸素含有環状基を有するアクリル系モノマーとしては、(ニ)一般式
【化7】
(式中のR11、R12及びR13は、それぞれ水素原子、低級アルキル基又は低級アルコキシ基、nは0又は1であり、R1は前記と同じ意味をもつ)
で表わされる(メタ)アクリル酸エステルが用いられる。この(メタ)アクリル酸エステルのアルコール成分を形成するアルコール又はエチレン性二重結合化合物として、例えば式
【化8】
で示される化合物がある。
この一般式(V)で表わされる(メタ)アクリル酸エステルのうち、nが1でR11及びR12がともにメチル基であるもの、またnが1でR13がメチル基であるものがアルカリに対する親和性に特に優れ、パドル現像に好適であるので特に好ましい。
【0024】
また、(ホ)一般式
【化9】
(式中のLはメチレン基又はアルキル置換メチレン基であり、R1は前記と同じ意味をもつ)
で表わされる(メタ)アクリル酸エステルも用いることができる。この(メタ)アクリル酸エステルのアルコール部分を形成するエチレン性二重結合含有化合物としては、例えば、式
【化10】
で示される化合物がある。
【0025】
さらに(ヘ)一般式
【化11】
(式中のR14は水素原子又は低級アルキル基、Uは酸素原子、メチレン基又はアシル基を有するメチレン基、Tはメチレン基、アルキル置換メチレン基又はカルボニル基であり、R1は前記と同じ意味をもつ)
で表わされる(メタ)アクリル酸エステルも用いることができる。この(メタ)アクリル酸エステルのアルコール部分を形成するエチレン性二重結合含有化合物として、例えば、式
【化12】
で示される化合物がある。
【0026】
本発明における(A)成分のアクリル系樹脂としては、(a−1)モノマーと、前記(a−2)、(a−3)、(a−4)及び(a−5)のモノマーの中から選ばれた少なくとも1種とを重合させて得られた共重合体が好ましいが、中でも(a−1)と、(a−2)及び(a−5)の中から選ばれた少なくとも1種、特に一般式(V)で表わされる(メタ)アクリル酸エステル又は2‐ヒドロキシ‐3‐ピナノンの(メタ)アクリル酸エステルとを重合させて得られた共重合体が好適である。
【0027】
共重合体の中で、(a−1)モノマーの単位20〜80モル%、好ましくは40〜70モル%と(a−2)及び(a−5)の中から選ばれた少なくとも1種のモノマーの単位80〜20モル%、好ましくは60〜30モル%とから成る共重合体は、耐ドライエッチング性、密着性、未露光部と露光部のコントラストが優れる。
【0028】
本発明組成物においては、(B)成分として、放射線照射により酸を発生する酸発生剤が用いられる。
この酸発生剤としては、これまで化学増幅型レジストの酸発生剤として知られている化合物の中から任意に選んで用いることができる。
このような化合物としては、例えば次に示すものを挙げることができる。
【0029】
(i)ビススルホニルジアゾメタン;
ビス(p‐トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1‐ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4‐ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタンなど。
【0030】
(ii)ニトロベンジル誘導体;
p‐トルエンスルホン酸2‐ニトロベンジル、p‐トルエンスルホン酸2,6‐ジニトロベンジルなど。
【0031】
(iii)スルホン酸エステル;
ピロガロールトリメシレート、ピロガロールトリトシレートなど。
【0032】
(iv)オニウム塩;
ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロフェスフェート、(4‐メトキシフェニル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(p‐tert‐ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロフェスフェート、(4‐メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、(p‐tert‐ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネートなど。
【0033】
(v)ベンゾイントシレート及びそのアルキル置換体;
ベンゾイントシレート、α‐メチルベンゾイントシレートなど。
【0034】
(vi)ハロゲン含有トリアジン化合物;
2‐(4‐メトキシフェニル)‐4,6‐(ビストリクロロメチル)‐1,3,5‐トリアジン、2‐(4‐メトキシナフチル)‐4,6‐(ビストリクロロメチル)‐1,3,5‐トリアジン、2‐[2‐(2‐フリル)エテニル]‐4,6‐(ビストリクロロメチル)‐1,3,5‐トリアジン、2‐[2‐(5‐メチル‐2‐フリル)エテニル]‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐1,3,5‐トリアジン、2‐[2‐(3,5‐ジメトキシフェニル)エテニル]‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐1,3,5‐トリアジン、2‐[2‐(3,4‐ジメトキシフェニル)エテニル]‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐1,3,5‐トリアジン、2‐(3,4‐メチレンジオキシフェニル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐1,3,5‐トリアジン、2,4,6‐トリス(ジブロモプロピル)‐1,3,5‐トリアジン、トリス(2,3‐ジブロモプロピル)‐1,3,5‐トリアジン、トリス(2,3‐ジブロモプロピル)イソシアヌレートなど。
【0035】
(vii)シアノ基を有するオキシムスルホネート;
α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐フェニルアセトニトリル、α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシフェニルアセトニトリル、α‐(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)‐フェニルアセトニトリル、α‐(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシフェニルアセトニトリル、α‐(エチルスルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシフェニルアセトニトリル、α‐(プロピルスルホニルオキシイミノ)‐4‐メチルフェニルアセトニトリル、α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐4‐ブロモフェニルアセトニトリル、α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐[1‐(又は2‐)ナフチルスルホニルオキシイミノ]‐4‐メトキシベンジルシアニド、α‐(10‐カンファースルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシベンジルシアニド、α‐(p‐トルエンスルホニルオキシイミノ)‐フェニルアセトニトリル、α‐フェニルスルホニルオキシイミノ‐p‐メトキシフェニルアセトニトリルなど。
【0036】
これらの酸発生剤の中で特に好ましいのは、オニウム塩及びシアノ基を有するオキシムスルホネートである。(A)成分と(B)成分の配合割合は、(A)成分100重量部に対し、通常(B)成分0.5〜30重量部、好ましくは、1〜10重量部である。この範囲よりも少なくなると像形成ができにくいし、多くなると、均一な溶液とならず、保存安定性が低下する。
【0037】
本発明のポジ型ホトレジスト組成物には、所望に応じ、(A)成分及び(B)成分に加えて、通常の化学増幅型ホトレジストに慣用されている添加成分、例えば、ハレーション防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、密着性向上剤、可塑剤、着色剤、界面活性剤、付加的樹脂、有機カルボン酸、アミン類などを本発明組成物の特性が阻害されない範囲の量で配合することができる。
【0038】
本発明のポジ型ホトレジスト組成物は、その使用に当たっては上記各成分を溶剤に溶解した溶液の形で用いるのが好ましい。このような溶剤の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2‐ヘプタノンなどのケトン類や、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、又はジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル又はモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類及びその誘導体や、ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0039】
本発明のポジ型ホトレジスト組成物を用いれば、例えば次のようにしてパターン形成することができる。すなわち、このホトレジスト組成物を、シリコンウエーハなどの基板上に塗布し、70〜150℃で30〜150秒間プリベイクを行い、レジスト層を形成したのち、マスクを介してArFエキシマレーザー光などの放射線を照射し、70〜150℃程度の加熱を30秒から150秒行い、次いで現像を行う。レジストの現像液としては、アルカリ性水溶液を用いることができ現像により、露光部がアルカリ性水溶液に溶解し、ポジ型のパターンが得られる。アルカリ性水溶液としては例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、コリンなどの水溶液を用いることができる。
【0040】
【発明の効果】
本発明のポジ型ホトレジスト組成物は、ArFエキシマレーザー光に対する透明性が高く、高感度で高解像度を有し、かつアルカリに対して親和性が高く、パドル現像により、パターン形状、耐ドライエッチング性、密着性の良好なレジストパターンを与えることができる。
【0041】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0042】
参考例1 モノマーIの製造
式
【化13】
で示されるアルコール94.8g(0.6モル)、トリエチルアミン60g(0.6モル)をテトラヒドロフラン200ミリリットルに溶解し、十分かきまぜたのち、これにメタクリロイルクロリド62.4g(0.6モル)を0℃で1時間にわたって滴下した。
次いで、25℃にて24時間反応させたのち、反応液をろ過した。そのろ液の溶媒を留去し、残存生成物をジエチルエーテル300ミリリットルに溶解し、10重量%水酸化ナトリウム水溶液で10回洗浄した。次いで、n‐ヘプタンを溶媒としてカラムクロマトグラフィーにより精製し、無色の液体として、上記アルコールのメタクリル酸エステル(モノマーI)を得た。
この生成物の1H−NMR(溶媒:アセトン−d6)を測定した結果、0.99、1.19、1.4〜2.7、2.80、4.55、5.50、6.00ppmにピークが認められた。
また赤外吸収スペクトルによる分析の結果、1755、1777cm-1にカルボニルに由来するピークが認められた。
【0043】
参考例2 共重合体A−1の製造
参考例1で得たモノマーI 15.1g(0.0625モル、全モノマーに対し、50モル%)及び式
【化14】
で示されるメタクリル酸エステル11.5g(0.0625モル、全モノマーに対し、50モル%)をテトラヒドロフラン150gに溶解し、反応開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.82gを加え、75℃で3時間重合反応させた。反応終了後、反応物をn‐ヘプタン5リットル中に注加して重合体を析出させ、得られた共重合体を室温下で減圧乾燥した。このようにして、モノマーIと式(VIII)で示されるメタクリル酸エステルとの共重合体(共重合体A−1)21.0gを得た。このものの重量平均分子量は17,400であり、分散度は2.30であった。
【0044】
参考例3 共重合体A−2の製造
参考例1で得たモノマーI 15.1g(0.0625モル、全モノマーに対し、50モル%)及び式
【化15】
で示されるメタクリル酸エステル14.6g(0.0625モル、全モノマーに対し、50モル%)をテトラヒドロフラン150gに溶解し、反応開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.82gを加え、75℃で3時間重合反応させた。反応終了後、反応物をn‐ヘプタン5リットル中に注加して重合体を析出させ、得られた共重合体を室温下で減圧乾燥した。このようにして、モノマー(I)と式(IX)で示されるメタクリル酸エステルとの共重合体(共重合体A−2)22.0gを得た。このものの重量平均分子量は14,600であり、分散度は2.00であった。
【0045】
参考例4 共重合体A−3の製造
参考例2において、前記式(VIII)で示されるメタクリル酸エステル11.5gの代わりに、2‐ヒドロキシ‐3‐ピナノンのメタクリル酸エステル14.8g(0.0625モル、全モノマーに対し、50モル%)を用い、溶媒をテトラヒドロフラン150gからジオキサン100gに代えた以外は、参考例2と同様にして、モノマーIと2‐ヒドロキシ‐3‐ピナノンのメタクリル酸エステルの共重合体(共重合体A−3)16.3gを得た。このものの重量平均分子量は9,200であり、分散度は2.6であった。
【0046】
実施例1
参考例2で得た共重合体(A−1)100重量部、ビス(p‐tert‐ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート2重量部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート680重量部に溶解してポジ型ホトレジスト溶液を得た。
次いで、このホトレジスト溶液をスピンナーを用いてシリコンウエーハ上に塗布し、ホットプレート上で100℃で90秒間乾燥することにより、膜厚0.5μmのレジスト層を形成した。次いで、ArF露光装置(ニコン社製)により、ArFエキシマレーザー光(193nm)を選択的に照射したのち、110℃,90秒間加熱処理し、次いで2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で65秒間パドル現像し、30秒間水洗して乾燥した。
このような操作で形成された0.30μmのラインアンドスペースが1:1に形成される露光時間を感度としてmJ/cm2(エネルギー量)単位で測定したところ、11.0mJ/cm2であった。
次に、このようにして形成された0.25μmのレジストパターンの断面形状をSEM(走査型電子顕微鏡)写真により、観察したところ、基板に対して垂直な矩形のレジストパターンであった。
また、このような操作で0.20μmのレジストパターンまで解像され、パターン倒れはなかった。
次いで、テトラフルオロメタンガスをエッチングガスとして、エッチング装置OAPM−406(東京応化工業株式会社製)でドライエッチング処理し、耐ドライエッチング性を単位時間当たりの膜減り量で評価し、ポリヒドロキシスチレンを1.0とした場合、1.08であった。
【0047】
実施例2
実施例1において、共重合体A−1の代わりに、参考例3で得た共重合体A−2を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポジ型ホトレジスト溶液を調製し、次いで実施例1と同様な条件でレジストパターンを形成した。
その際の実施例1と同様にして測定した感度は、6mJ/cm2であり、形成された0.25μmのレジストパターンの断面形状をSEM(走査型電子顕微鏡)写真により、観察したところ、基板に対して垂直な矩形のレジストパターンであった。
また、このような操作で0.20μmのレジストパターンまで解像され、パターン倒れはなかった。
また、実施例1と同様にして耐ドライエッチング性を調べたところ、0.95であった。
【0048】
実施例3
参考例4で得た共重合体(A−3)100重量部、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート2重量部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート680重量部に溶解してポジ型ホトレジスト溶液を得た。
次いで、このホトレジスト溶液をスピンナーを用いてシリコンウエーハ上に塗布し、ホットプレート上で100℃で90秒間乾燥することにより、膜厚0.5μmのレジスト層を形成した。次いで、ArF露光装置(ニコン社製)により、ArFエキシマレーザー光(193nm)を選択的に照射したのち、110℃,90秒間加熱処理し、次いで2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で65秒間パドル現像し、30秒間水洗して乾燥した。
このような操作で形成された0.30μmのラインアンドスペースが1:1に形成される露光時間を感度としてmJ/cm2(エネルギー量)単位で測定したところ、12mJ/cm2であった。
また、このようにして形成された0.25μmのレジストパターンの断面形状をSEM(走査型電子顕微鏡)写真により、観察したところ、基板に対して垂直な矩形のレジストパターンであった。
また、このような操作で0.18μmのレジストパターンまで解像され、パターン倒れはなかった。
次いで、テトラフルオロメタンガスをエッチングガスとして、エッチング装置OAPM−406(東京応化工業株式会社製)でドライエッチング処理し、耐ドライエッチング性を単位時間当たりの膜減り量で評価し、ポリヒドロキシスチレンを1.0とした場合、1.1であった。
【0049】
比較例1
式
【化16】
で示されるメタクリル酸エステル17.2g(0.094モル、全モノマーに対し、50モル%)及びメタクリル酸テトラヒドロピラニル16.1g(0.094モル、全モノマーに対し、50モル%)をテトラヒドロフラン150gに溶解し、反応開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.82gを加え、75℃で3時間重合反応させた。反応終了後、反応物をn‐ヘプタン5リットル中に注加して重合体を析出させ、得られた共重合体を室温下で減圧乾燥した。このようにして、共重合体15.0gを得た。このものの重量平均分子量は14,000であり、分散度は1.90であった。
【0050】
このようにして得た共重合体を用いて、実施例1と同様にしてポジ型ホトレジスト溶液を調製し、次いで実施例1と同様な条件でレジストパターンを形成した。
その際の実施例1と同様にして測定した感度は、8mJ/cm2であり、0.40μm以下のレジストパターンは解像することができなかった。
また、実施例1と同様にして耐ドライエッチング性を調べたところ、1.2であった。
【0051】
比較例2
式
【化17】
で示されるメタクリル酸エステル11.5g(0.0625モル、全モノマーに対し、50モル%)及び式
【化18】
で示されるメタクリル酸エステル14.6g(0.0625モル、全モノマーに対し、50モル%)をジオキサン150gに溶解し、反応開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.82gを加え、75℃で3時間重合反応させた。反応終了後、反応物をメタノール5リットル中に注加して重合体を析出させ、得られた共重合体を室温下で減圧乾燥した。
このようにして、共重合体23gを得た。このものの重量平均分子量は18,000であり、分散度は2.3であった。
【0052】
このようにして得た共重合体を用いて、実施例1と同様にしてポジ型ホトレジスト溶液を調製し、次いで実施例1と同様な条件でレジストパターンを形成した。
その際の実施例1と同様にして測定した感度は、30mJ/cm2であり、0.35μm以下のレジストパターンは解像することができなかった。
また、実施例1と同様にして耐ドライエッチング性を調べたところ、1.02であった。
Claims (5)
- 化1のR2及びR3がメチル基である請求項1記載のポジ型ホトレジスト組成物。
- 化1のR4がブチロラクトン又は置換基として炭素数1又は2のアルキル基又はアルコキシ基をもつブチロラクトンの炭素原子に結合した水素原子1個を除いて形成される残基である請求項1又は2記載のポジ型ホトレジスト組成物。
- 化1で表わされる構成単位の含有割合が20〜80モル%である請求項1ないし3のいずれかに記載のポジ型ホトレジスト組成物。
- (A)成分が酸解離性保護基を有するアクリル若しくはメタクリル酸誘導体モノマー単位を含む共重合体である請求項1ないし4のいずれかに記載のポジ型ホトレジスト組成物。
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