JP3899554B2 - シームレス缶及びその製造法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、耐衝撃性(耐デント性)及び耐食性に優れたシームレス缶及びその製造方法に関する。本発明は、特に印刷及び二次成形後の上記特性に優れたシームレス缶ならびにその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、側面無継目缶(サイド・シームレス缶)としては、アルミニウム板、ブリキ板或いはティン・フリー・スチール板等の金属素材を、絞りダイスとポンチとの間で少なくとも1段の絞り加工に付して、側面継目のない胴部と該胴部に、継目なしに一体に接続された底部とから成るカップに形成し、次いで所望により前記胴部に、しごきポンチとダイスとの間でしごき加工を加えて、容器胴部を薄肉化したものが知られている。また、しごき加工の代わりに、再絞りダイスの曲率コーナ部で曲げ伸ばして側壁部を薄肉化することも既に知られている(特公昭56−501442号公報)。
【0003】
また、側面無継目缶の有機被覆法としては一般に広く使用されている成形後の缶に有機塗料を施す方法の他に、成形前の金属素材に予め樹脂フィルムをラミネートする方法が知られており、特公昭59−34580号公報には金属素材にテレフタル酸とテトラメチレングリコールとから誘導されたポリエステルフィルムをラミネートしたものを用いることが記載されている。また、曲げ伸ばしによる再絞り缶の製造に際して、ビニルオルガノゾル、エポキシ、フェノリクス、ポリエステル、アクリル等の被覆金属板を用いることも知られている。
【0004】
本発明者等の提案に係る特公平7−55552号公報には、金属板と、エチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル層と、必要により金属板とポリエステルフィルム層の間に介在する接着プライマー層との積層体から成り、該ポリエステルフィルム層は、式(1)
X =IA /IB ‥(1)
式中、IA はポリエステルフィルム表面に平行な、面間隔約0.34nm(CuKαX線回折角が24゜から28゜)の回折面によるX線回折強度、IB はポリエステルフィルム表面に平行な面間隔約0.34nm(CuKαX線回折角が21.5゜から24゜)の回折面によるX線回折強度、
で定義されるX線回折強度比が0.5乃至15の範囲内にあり且つ結晶の面配向の異方性指数が30以下であるポリエステル層から成ることを特徴とする缶用被覆金属板が記載されている。
【0005】
一方、成形後のシームレス缶には、缶開口部を縮径するためのネックイン加工や、缶胴を補強するための補強加工等の二次加工が一般に行われており、これらの二次加工に先立って、缶胴外面に印刷を施すことが一般に行われている。
【0006】
例えば、本出願人の提案にかかる実公平6−16739号公報には、TFS(電解クロム酸処理鋼板)の内面にクリアポリエステルフィルム及び外面に二酸化チタン配合ポリエステルフィルムを積層したものを深絞りし、このカップの外面に印刷インキ層と仕上げニス層とを塗布し、これを焼き付けした後、ネックイン加工及びフランジ加工を行って、缶とすることが記載されている。
【0007】
薄肉金属容器の補強手段として、容器の側壁に周方向にビードを形成させることが知られている。ビード加工法により耐圧性を向上させることは可能であるが、そのためには比較的深いビードを多段に入れる必要がある。しかし、多段のビード加工を施した容器では、容器側壁の印刷画面がゆがむ、或いは見えにくい等の問題点が生じ、美的感覚上実際の容器に殆ど採用されていないのが現状である。
【0008】
本出願人の提案にかかる特公平7−5128号公報には、缶胴の少なくとも一部に周状多面体壁が形成され、該多面体壁は構成単位面と、構成単位面同士が接する境界稜線及び境界稜線同士が交わる交叉部を有し、該境界稜線及び交叉部は構成単位面に比べて相対的に容器外側に凸となっており、構成単位面は対向する交叉部間で滑らかに窪んだ部分を有し、構成単位面の周方向に隣合った容器軸方向配列が位相差をなしており、且つ構成単位面の窪んだ部分は式(2)
5t≦R≦r ‥(2)
式中、tは缶胴の厚み(mm)、rは缶胴の半径(mm)、Rは曲率半径(mm)である、
を満足する曲率半径を有することを特徴とする耐変形性及び装飾効果に優れた薄肉金属容器が記載されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記のラミネート板をシームレス缶の製造に用いる提案は、成形前の金属素材に樹脂フィルムを施せばよく、通常の塗装処理のように、塗膜の焼き付け炉や塗料排ガスの処理施設が不要で、大気汚染がなく、また成形後の缶体に塗装処理を行わなくてもよいという利点を与えるものであるが、成形後の缶体に、印刷を施し、ネックイン加工、ビード加工、或いは上記特公平7−5128号公報に見られるような二次加工(周状多面体壁加工)を行った場合には、最終缶体の耐衝撃性及び耐食性が未だ不十分であることが分かった。
【0010】
即ち、上記シームレス缶の製造では、金属板にポリエステルとのラミネートは、軸方向には引き延ばされ且つ周方向には圧縮される加工を受け、更に曲げ伸ばし或いはしごき加工による薄肉化を受け、次いで、上記実公平6−16739号公報に見られるような印刷インキ層と仕上げニス層を形成するために焼き付けに付される。この場合、上記ネックイン加工、フランジ加工あるいは周状多面体壁加工をすべき部分のポリエステル層は熱履歴を受け、この熱による結晶化に伴って脆くなり、上記二次加工の際、ポリエステル被覆が損傷乃至潜在的損傷を受けやすく、この部分の被覆が衝撃に耐えられなくなり、また耐食性も低下するのである。
【0011】
本発明の目的は、金属板とポリエステルとの積層体の絞り加工及びしごき加工で形成されており、成形後の缶が印刷及び二次加工を受けた場合にも優れた耐衝撃性及び耐食性を示すシームレス缶及びその製造方法を提供するにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、金属板の少なくとも内面にポリエステルを積層したラミネートで製造されたシームレス缶において、前記缶の少なくとも胴部の内面のポリエステル層は、示差熱分析において、最高温側の吸熱ピーク(TW3)と、前記最高温側吸熱ピークよりも若干低温側の少なくとも1個の吸熱ピーク(TW2)との連峰型吸熱ピークを有すると共に、前記吸熱ピーク(TW2)よりも低温側でしかもガラス転移点(Tg)よりも高温側に少なくとも1個の吸熱ピーク(TW1)を有し、前記缶のフランジ部直下のポリエステル層は、Tg−10℃乃至Tg+10℃の温度域において自発的熱伸張性を有することを特徴とする耐腐食性に優れたシームレス缶が提供される。
【0013】
本発明のシームレス缶においては、
1.前記吸熱ピーク(TW2)が最高温側吸熱ピーク(TW3)よりも3乃至15℃低温側に現れるピークであること、
2.前記吸熱ピーク(TW1)が吸熱ピーク(TW2)よりも10乃至20℃低温側に現れるピークであること、
3.前記吸熱ピーク(TW2)が、最高温側吸熱ピーク(TW3)との谷と低温側の裾とを結ぶ線をベースラインとして、最高温側吸熱ピーク(TW3)の吸熱量の400乃至2000%の吸熱量を有すること、
4.前記吸熱ピーク(TW1)が、最高温側吸熱ピーク(TW3)の吸熱量の0.5乃至5.0%の吸熱量を有すること、
5.前記フランジ部直下のポリエステル層が、200g/mm2 以下の熱収縮荷重に相当する自発的熱伸張性を有すること、
が好ましい。
【0014】
本発明は、缶胴の外面に印刷が施され且つ、缶開口部を縮径するためのネックイン加工或いは缶胴の少なくとも一部に周状多面体壁が形成されているシームレス缶、特に周状多面体壁が、構成単位面と、構成単位面同士が接する境界稜線及び境界稜線同士が交わる交叉部を有し、該境界稜線及び交叉部は構成単位面に比べて相対的に容器外側に凸となっており、構成単位面は対向する交叉部間で滑らかに窪んだ部分を有し、構成単位面の周方向に隣合った容器軸方向配列が位相差をなしている缶に適応した場合に著効がある。
【0015】
本発明によればまた、金属板の少なくとも内面に二軸延伸ポリエステルフィルムを、該ポリエステルフィルムの二軸配向が残留する条件下で積層してラミネート板を製造する工程と、このラミネート板を絞り成形或いは絞り−しごき成形して、前記ポリエステル層が一軸配向された缶胴に成形し、成形後の缶を熱処理する工程と、缶胴の外面に印刷を施すと共に、前記ポリエステル層に二軸配向及び一軸配向が残留する条件下に印刷インキを硬化させる工程と、前記印刷缶胴を二次成形した後熱処理する工程とから成ることを特徴とする耐腐食性に優れた上記シームレス缶の製造法が提供される。
【0016】
本発明の製造法において、印刷インクが紫外線硬化型インキであり、印刷インクの硬化を紫外線照射により行うことが好ましく、シームレス缶への成形後の熱処理をTm−60℃乃至Tm−5℃の温度で、また二次成形後の印刷缶胴の熱処理をTg+100乃至Tg+150℃の温度で行うことが望ましい。
【0017】
【発明の実施形態】
本発明のシームレス缶は、金属板の少なくとも内面にポリエステルを積層したラミネート板から形成されているが、このシームレス缶の少なくとも胴部内面のポリエステル層が、示差熱分析において、最高温側の吸熱ピーク(TW3)と、前記最高温側吸熱ピークよりも若干低温側の少なくとも1個の吸熱ピーク(TW2)との連峰型吸熱ピークを有すると共に、前記吸熱ピーク(TW2)よりも低温側でしかもガラス転移点よりも高温側に少なくとも1個の吸熱ピーク(TW1)を有することが顕著な特徴である。
【0018】
添付図面の図1は、本発明によるシームレス缶(A)及び本発明以外のシームレス缶(B)及び(C)について、胴部内面のポリエステル層の示差熱分析(DSC)曲線を示している(詳細は後述する例参照)。
【0019】
この結果によると、本発明によるシームレス缶(A)における胴部内面のポリエステル層は、最高温側の吸熱ピーク(TW3)と、前記最高温側吸熱ピークよりも若干低温側の吸熱ピーク(TW2)と、吸熱ピーク(TW2)よりも更に低温側の吸熱ピーク(TW1)の3個の明確な吸熱ピークを有していることが明らかとなる。また、2個の吸熱ピークTW3とTW2とは連峰型吸熱ピークを形成しており、残りの吸熱ピーク(TW1)は吸熱ピーク(TW2)よりも低温側でしかもガラス転移点(Tg)よりも高温側に位置していることも明らかである。
【0020】
最高温側吸熱ピーク(TW3)は、用いる二軸延伸ポリエステルフィルムのポリエステル組成や二軸配向の程度によっても相違するが、一般に210乃至260℃の温度に現れるものであり、一方、本発明においては、吸熱ピーク(TW2)はTW3よりも3乃至15℃低温側に現れるものであり、吸熱ピーク(TW1)はTW2よりも10乃至20℃低温側に現れるものである。
【0021】
示差熱分析における重合体層の吸熱ピークは結晶の融解に伴うものであるから、本発明のシームレス缶では、内面ポリエステル層が結晶の融解し始める温度が互いに異なる、即ちエネルギー状態の異なる3種の配向結晶状態が存在することを示している。
【0022】
これに対して、本発明と対比されるべきシームレス缶(B)の内面ポリエステル層は、最高温側の吸熱ピーク(TW3)とこれよりも若干低温側の吸熱ピーク(TW2)とを有するが、これより更に低温側の吸熱ピーク(TW1)を有していなく、またシームレス缶(C)の内面ポリエステル層は、最高温側の吸熱ピーク(TW3)と低温側吸熱ピーク(TW1)とを有するが、吸熱ピーク(TW2)を有していないものである。
【0023】
本発明のシームレス缶では、上記の3個の吸熱ピークに対応する3種の配向構造状態を有することに加えて、缶のフランジ部直下のポリエステル層が所定の自発的熱伸張性を有することも顕著な特徴である。自発的熱伸張性とは、歪みの拘束なしに熱変形できる能力を言い、本発明ではTg−10℃乃至Tg+10℃の温度域において測定した熱収縮荷重により特定する。本発明のシームレス缶は、200g/mm2 以下であるという熱機械特性を示す。熱収縮荷重を缶のフランジ部直下に特定しているのは、この部分がネックイン加工により最も過酷な加工を受けている部分であり、この部分でのポリエステル層の熱収縮荷重の値により、二次加工による残留歪みの程度を推定できるからである。熱収縮荷重値が上記のように極めて低い値を示すということは、この部分のポリエステル層の二次加工による残留歪みが有効に除去されていることを示している。本発明の典型的な例であるシームレス缶(A)(実施例1)では、上記ポリエステル層が、60g/mm2 の伸張阻止荷重に相当する自発的熱伸張性をも有している。
【0024】
このため、本発明のシームレス缶は、通常の状態で耐衝撃性に優れているばかりではなく、落下等の衝撃を受け、缶体がくぼむような変形を受けた場合にも、耐腐食性に優れているという利点があり、この事実は後述する例を参照することにより明白である。
【0025】
一方、前記シームレス缶(B)(比較例1)のフランジ部直下のポリエステル層は、同様の条件で測定して、300g/mm2 の熱収縮荷重を示すものであり、また前記シームレス缶(C)(比較例2)のフランジ部直下のポリエステル層は、400g/mm2 の熱収縮荷重を示すものである。これらの缶は、二次加工による歪みが相当程度残留しており、後述する例に示す通り、シームレス缶(A)に比して、耐衝撃性(耐デント性)及び耐腐食性に劣っている。
【0026】
以上の事実から、特定のポリエステル層が3個の吸熱ピークに対応する3種の配向結晶状態および一定の熱収縮荷重をとることにより、耐衝撃性(耐デント性)及び耐腐食性が向上していることが明らかとなる。
【0027】
本発明においては、前記吸熱ピーク(TW2)が、最高温側吸熱ピーク(TW3)との谷と低温側の裾とを結ぶ線をベースラインとして、最高温側吸熱ピーク(TW3)の吸熱量の400乃至2000%の吸熱量を有することが好ましい。TW2の吸熱量が上記範囲よりも小さくなると、ポリエステル層の金属基体への接着が不良となり、耐衝撃性(耐デント性)及び耐腐食性が低下する傾向がある。一方、TW2の吸熱量が上記範囲を越えて大きくなると缶底部の耐衝撃性や耐食性が低下する傾向がある。
【0028】
また、本発明では、前記吸熱ピーク(TW1)が、最高温側吸熱ピーク(TW3)の吸熱量の0.5乃至5.0%の吸熱量を有することが好ましい。TW1の吸熱量が上記範囲よりも小さくなると、ポリエステル層の熱収縮荷重が大きくなり、耐衝撃性(耐デント性)及び耐腐食性が低下する傾向がある。一方、TW1の吸熱量が上記範囲を越えて大きくなると缶底部の耐衝撃性や耐食性が低下する傾向がある。
【0029】
本発明のシームレス缶は、金属板の少なくとも内面に二軸延伸ポリエステルフィルムを、該ポリエステルフィルムの二軸配向が残留する条件下で積層してラミネート板を製造する工程と、このラミネート板を絞り成形或いは絞り−しごき成形して、前記ポリエステル層が一軸配向された缶胴に成形し、成形後の缶を熱処理する工程と、缶胴の外面に印刷を施すと共に、前記ポリエステル層に二軸配向及び一軸配向が残留する条件下に印刷インキを硬化させる工程と、前記印刷缶胴を二次成形した後熱処理する工程とにより製造されるが、これらの各工程における配向結晶化と、示差熱分析における各吸熱ピークとはよく対応しており、1:1の対応がある。
【0030】
即ち、最高温側の吸熱ピーク(TW3)は、ラミネートに用いたポリエステルフィルムに由来するものであり、そのピークの位置及び大きさは残留する二軸配向の程度にも関係している。
【0031】
2番目の吸熱ピーク(TW2)は、ラミネート板の製造時に溶融したポリエステルがシームレス缶への成形時に一軸配向され、歪み緩和のための熱処理時に配向結晶化したことに由来するものであり、その位置及び大きさは、シームレス缶への加工の程度(絞り率、曲げ伸ばしやしごきによる薄肉化の程度)及び熱処理の程度に関係している。
【0032】
3番目の吸熱ピーク(TW1)は、二次成形後の歪み再緩和のための熱処理に由来するものであり、その位置及び大きさは、やはり熱処理の温度や程度と関係している。
【0033】
かくして、本発明によれば、用いるポリエステルフィルムの二軸配向の程度、ラミネート条件、シームレス缶への成形条件、熱処理条件、および再熱処理条件を選択し、これらを組み合わせることにより、特定の3個の吸熱ピークに対応する3種の配向結晶状態および内部歪み状態を、シームレス缶内面のポリエステル層に具現化できることが明らかである。
【0034】
本発明の製造法では、シームレス缶への成形後の熱処理をポリエステル層の融点(Tm)−60℃乃至Tm−5℃の温度で行うことが好ましく、また二次成形後の印刷缶胴の熱処理をTg+100乃至Tg+150℃の温度で行うことが好ましい。即ち、熱処理温度が上記範囲よりも低い場合には、歪みの緩和が不十分であると共に所望の配向結晶化が達成できず、一方上記範囲よりも高いと、TW1を与える配向結晶層が生成せず、TW2を与える配向結晶層の消失と、熱結晶化が生じるので好ましくない。
【0035】
本発明の製造法において、印刷インクが紫外線硬化型インクであり、印刷インクの硬化を紫外線照射により行うことが好ましい。即ち、二次加工後の缶体に印刷を施すことは、ネック部等の存在により困難となるため、これらの加工に先立って印刷を施しておくことがどうしても必要となる。この場合、印刷インキ層やその上の仕上げニス層を加熱により焼き付けると、二次加工をすべき部分の内面被覆が熱履歴を受け、内面被覆がこの熱による結晶化や硬化の進行に伴って脆くなり、二次加工の際、顕在的或いは潜在的なダメージを受け、耐腐食性低下及びフレーバー保持性低下の原因となる。これに対して、紫外線硬化型インキを使用し、このインク層を紫外線硬化させると、余分の熱履歴を与えることなしに二次加工を行うことができ、これらの加工の際内面被覆が受けるダメージを最小限のものに留めることができる。また、二次加工後の印刷シームレス缶を熱処理に付することにより、これらの加工部の内面樹脂被覆に残留する歪みが解放され、ストレスクラッキング等による被覆欠陥の発生及び耐腐食性の低下を防止することができる。
【0036】
[ポリエステルフィルム]
ポリエステルフィルムとして、エチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルを、T−ダイ法やインフレーション製膜法でフィルムに成形し、このフィルムを延伸温度で、逐次或いは同時二軸延伸し、延伸後のフィルムを熱固定することにより製造されたフィルムを挙げることができる。
【0037】
原料ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートそのものも著しく制限された延伸、熱固定及びラミネート条件下で使用可能であるが、フィルムの到達し得る最高結晶化度を下げることが耐衝撃性や加工性の点で望ましく、この目的のためにポリエステル中にエチレンテレフタレート以外の共重合エステル単位を導入するのがよい。この共重合エステル単位の導入は、当然のことであるが、共重合で可能であり、更にポリマーブレンド或いは多層フィルムとすることによっても可能である。エチレンテレフタレート単位を主体とし、他のエステル単位の少量を含む融点が210乃至252℃共重合ポリエステルの二軸延伸フィルムを用いることが特に好ましい。尚、ホモポリエチレンテレフタレートの融点は一般に255〜265℃である。
【0038】
一般に共重合ポリエステル中の二塩基酸成分の70モル%以上、特に75モル%以上がテレフタル酸成分から成り、ジオール成分の70モル%以上、特に75モル%以上がエチレングリコールから成り、二塩基酸成分及び/又はジオール成分の1乃至30モル%、特に5乃至25%がテレフタル酸以外の二塩基酸成分及び/又はエチレングリコール以外のジオール成分から成ることが好ましい。
【0039】
テレフタル酸以外の二塩基酸としては、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸:シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸:コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸:の1種又は2種以上の組合せが挙げられ、エチレングリコール以外のジオール成分としては、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の1種又は2種以上が挙げられる。勿論、これらのコモノマーの組合せは、共重合ポリエステルの融点を前記範囲とするものでなければならない。
【0040】
用いるポリエステルは、フィルムを形成するに足る分子量を有するべきであり、このためには固有粘度(I.V)が0.55乃至1.9dl/g、特に0.65乃至1.4dl/gの範囲にあるものが望ましい。
【0041】
フィルムの延伸は一般に80乃至110℃の温度で、面積延伸倍率が2.5乃至16.0、特に4.0乃至14.0となる範囲で行うのがよく、フィルムの熱固定は、130乃至240℃、特に150乃至230℃の範囲で行うのがよい。
【0042】
ポリエステルフィルムは、二軸延伸されていることが重要である。二軸配向の程度は、偏光蛍光法、複屈折法、密度勾配管法密度等でも確認することができる。
【0043】
(金属板)
本発明では、金属板としては各種表面処理鋼板やアルミニウム等の軽金属板が使用される。
【0044】
表面処理鋼板としては、冷圧延鋼板を焼鈍後二次冷間圧延し、亜鉛メッキ、錫メッキ、ニッケルメッキ、電解クロム酸処理、クロム酸処理等の表面処理の一種または二種以上行ったものを用いることができる。好適な表面処理鋼板の一例は、電解クロム酸処理鋼板であり、特に10乃至200mg/m2 の金属クロム層と1乃至50mg/m2 (金属クロム換算)のクロム酸化物層とを備えたものであり、このものは塗膜密着性と耐腐食性との組合せに優れている。表面処理鋼板の他の例は、0.5乃至11.2g/m2 の錫メッキ量を有する硬質ブリキ板である。このブリキ板は、金属クロム換算で、クロム量が1乃至30mg/m2 となるようなクロム酸処理或いはクロム酸−リン酸処理が行われていることが望ましい。
【0045】
更に他の例としては、アルミニウムメッキ、アルミニウム圧接等を施したアルミニウム被覆鋼板が用いられる。
【0046】
軽金属板としては、所謂アルミニウム板の他に、アルミニウム合金板が使用される。耐腐食性と加工性との点で優れたアルミニウム合金板は、Mn:0.2乃至1.5重量%、Mg:0.8乃至5重量%、Zn:0.25乃至0.3重量%、及びCu:0.15乃至0.25重量%、残部がAlの組成を有するものである。これらの軽金属板も、金属クロム換算で、クロム量が20乃至300mg/m2 となるようなクロム酸処理或いはクロム酸/リン酸処理が行われていることが望ましい。
【0047】
金属板の素板厚、即ち缶底部の厚み(tB )は、金属の種類、容器の用途或いはサイズによっても相違するが、一般に0.10乃至0.50mmの厚みを有するのがよく、この内でも表面処理鋼板の場合には、0.10乃至0.30mmの厚み、また軽金属板の場合には0.15乃至0.40mmの厚みを有するのがよい。
【0048】
[ラミネート及びその製造方法]
本発明に用いる積層体の断面構造の一例を示す図2において、この積層体1は金属基体2と少なくとの内面側に位置するポリエステル層3とから成っている。金属基体2には外面被膜4が形成されているが、この外面被膜4はポリエステル層3と同様のものであってもよいし、また通常の缶用塗料や樹脂(ポリエステル)フィルム被覆であってもよい。
【0049】
積層体の断面構造の他の例を示す図3において、ポリエステル層3と金属基体2との間に接着用プライマーの層5を設けている以外は、図2の場合と同様である。
【0050】
本発明に用いるポリエステル−金属ラミネートは、二軸延伸ポリエステルフィルムを金属に熱接着させることにより製造することができる。この際、ポリエステル層に、二軸分子配向の少なくとも一部が残存し、且つポリエステル層の一部が溶融するようにする。このラミネートの際残留する二軸配向が吸熱ピーク(TW3)となり、溶融した部分がシームレス缶への成形に際して分子配向され、熱処理により結晶化して、吸熱ピーク(TW2)となる。
【0051】
ポリエステル−金属の製造方法を説明するための図4において、金属板20を加熱ロール21により用いるポリエステルの融点(Tm)前後の温度(T1 )に加熱し、ラミネートロール22、22間に供給する。一方、ポリエステルフィルム23は、供給ロール24から巻きほぐされ、ラミネートロール22、22間に金属板20をサンドイッチする位置関係で供給される。ラミネートロール22、22は、加熱ロール21よりも低い温度(T2 )に保たれており、金属板20の両面にポリエステルフィルムを熱接着させる。ラミネートロール22、22の下方には、形成されるラミネート25を急冷するための冷却水26を収容した水槽が設けられており、この水槽中にラミネートを導くガイドローラ27が配置されている。
【0052】
金属板の加熱温度(T1 )は、一般にTm乃至Tm+100℃の温度が適当であり、一方ラミネートロール22の温度T2 は、T1 −250℃乃至T1 −50℃の範囲が適当である。上記の温度設定により、金属板上のポリエステルには、上記温度差に対応する温度勾配が形成され、二軸配向が残留する条件下でラミネート板を製造できる。
【0053】
ポリエステルフィルムと金属素材の間に所望により設ける接着プライマーは、金属素材とフィルムとの両方に優れた接着性を示すものである。密着性と耐腐食性とに優れたプライマー塗料の代表的なものは、種々のフェノール類とホルムアルデヒドから誘導されるレゾール型フェノールアルデヒド樹脂と、ビスフェノール型エポキシ樹脂とから成るフェノールエポキシ系塗料であり、特にフェノール樹脂とエポキシ樹脂とを50:50乃至5:95重量比、特に40:60乃至10:90の重量比で含有する塗料である。
【0054】
接着プライマー層は、一般に0.01乃至10μmの厚みに設けるのがよい。接着プライマー層は予め金属素材上に設けてよく或いは予めポリエステルフィルム上に設けてもよい。
【0055】
[シームレス缶及びその成形方法]
二次加工前のシームレス缶の一例を示す図5において、このシームレス缶11は前述したポリエステル−金属ラミネート1の絞り−再絞り加工による曲げ伸ばし或いは更にしごき加工により形成され、底部10と側壁部12とから成っている。側壁部12の上端には比較的厚肉のフランジ形成部13が形成されている。この缶11では、底部10に比して側壁部12は曲げ伸ばし或いはしごき加工により積層体元厚の30乃至85%の厚みとなるように薄肉化されている。
【0056】
本発明の好適なシームレス缶は、上記のポリエステル−金属ラミネートをポンチとダイスとの間で、有底カップに絞り−深絞り成形し、深絞り段階で曲げ伸しとしごきによりカップ側壁部の薄肉化を行なうことにより製造される。即ち、薄肉化のための変形を、缶軸方向(高さ方向)の荷重による変形(曲げ伸ばし)と缶厚み方向の荷重による変形(しごき)との組み合わせでしかもこの順序に行う。曲げ伸ばしはポリエステルのc軸方向への分子配向を与え、一方しごきはポリエステルのベンゼン面のフィルム面に平行な分子配向を与える。
【0057】
ラミネートの絞り−しごき成形は次の手段で行われる。即ち、図6に示す通り、被覆金属板から成形された前絞りカップ30は、このカップ内に挿入された環状の保持部材31とその下に位置する再絞り−しごきダイス32とで保持される。これらの保持部材31及び再絞り−しごきダイス32と同軸に、且つ保持部材31内を出入し得るように再絞り−しごきポンチ33が設けられる。再絞り−しごきポンチ33と再絞り−しごきダイス32とを互いに噛みあうように相対的に移動させる。
【0058】
再絞り−しごきダイス32は、上部に平面部34を有し、平面部の周縁に曲率半径の小さい作用コーナー部35を備え、作用コーナー部に連なる周囲に下方に向けて径の増大するテーパー状のアプローチ部36を有し、このアプローチ部に続いて小曲率部37を介して円筒状のしごき用のランド部(しごき部)38を備えている。ランド部38の下方には、逆テーパ状の逃げ39が設けられている。
【0059】
前絞りカップ30の側壁部は、環状保持部材31の外周面40から、その曲率コーナ部41を経て、径内方に垂直に曲げられて環状保持部材31の環状底面42と再絞りダイス32の平面部34とで規定される部分を通り、再絞りダイス32の作用コーナ部35により軸方向にほぼ垂直に曲げられ、前絞りカップ30よりも小径の深絞りカップに成形される。この際、作用コーナー部35において、コーナー部35と接する側の反対側の部分は、曲げ変形により伸ばされ、一方、作用コーナー部35と接する側の部分は、作用コーナー部を離れた後、戻し変形で伸ばされ、これにより側壁部の曲げ伸ばしによる薄肉化が行われる。
【0060】
曲げ伸ばしにより薄肉化された側壁部は、その外面が径の次第に増大する小テーパー角のアプローチ部36と接触し、その内面がフリーの状態で、しごき部38に案内される。側壁部がアプローチ部を通過する行程は続いて行うしごき行程の前段階であり、曲げ伸ばし後のラミネートを安定化させ、且つ側壁部の径を若干縮小させて、しごき加工に備える。即ち、曲げ伸ばし直後のラミネートは、曲げ伸ばしによる振動の影響があり、フィルム内部には歪みも残留していて、未だ不安定な状態にあリ、これを直ちにしごき加工に付した場合には、円滑なしごき加工を行い得ないが、本発明によれば、側壁部の外面側をアプローチ部36と接触させてその径を縮小させると共に、内面側をフリーの状態にすることにより、振動の影響を防止し、フィルム内部の不均質な歪みも緩和させて、円滑なしごき加工を可能にするものである。
【0061】
アプローチ部36を通過した側壁部は、しごき用のランド部(しごき部)38と再絞り−しごきポンチ33との間隙に導入され、この間隙(C1)で規制される厚みに圧延される。最終側壁部の厚みC1は積層体元厚(t)の30乃至85%の厚みとなるように定める。尚、しごき部導入側の小曲率部37は、しごき開始点を有効に固定しながら、しごき部38への積層体の導入を円滑に行うものであり、ランド部38の下方の逆テーパ状の逃げ39は、加工力の過度の増大を防ぐものである。
【0062】
再絞り−しごきダイス32の曲率コーナー部35の曲率半径Rdは、曲げ伸ばしを有効に行う上では、ラミネートの肉厚(t)の2.9倍以下であるべきであるが、この曲率半径があまり小さくなるとラミネートの破断が生じることから、ラミネートの肉厚(t)の1倍以上であるべきである。
【0063】
テーパー状のアプローチ部36のアプローチ角度(テーパー角度の1/2)αは1乃至5゜を有するべきである。このアプローチ部角度が上記範囲よりも小さいと、ポリエステルフィルム層の配向緩和やしごき前の安定化が不十分なものとなり、アプローチ部角度が上記範囲よりも大きいと、曲げ伸ばしが不均一な(戻し変形が不十分な)ものとなり、何れの場合もフィルムの割れや剥離を生じることなしに、円滑なしごき加工が困難となる。
【0064】
小曲率部37の曲率半径Riは、しごき開始点の固定有効に行う上では、ラミネートの肉厚(t)の0.3倍以上、20倍以下であるべきであるが、この曲率半径があまり大きくなるとラミネートの削れが生じることから、ラミネートの肉厚(t)の20倍以下にすることが特に好ましい。
【0065】
しごき用のランド部38と再絞り−しごきポンチ33とクリアランスは前述した範囲にあるが、ランド長Lは、一般に0.5乃至30mmの長さを有しているのがよい。この長さが上記範囲よりも大きいと加工力が過度に大きくなる傾向があり、一方上記範囲よりも小さいとしごき加工後の戻りが大きく、好ましくない場合がある。
【0066】
本発明のシームレス缶において、フランジ部のポリエステル層は、過酷な巻締加工を受けることから、缶側壁部のポリエステル層に比して、マイルドな加工を受けていることが好ましい。これにより、巻締部の密封性及び耐腐食性を向上させることができる。この目的のため、しごき後の缶側壁部の上端に、缶側壁部の厚みよりも厚いフランジ形成部が形成されるようにする。即ち、缶側壁部の厚みをt1 及びフランジ部の厚みをt2 とすると、t2 /t1 の比は、1.0乃至2.0、特に1.0乃至1.7の範囲に定めるのがよい。
【0067】
再絞り−しごき成形後のシームレス缶を示す図5、図7および図8において、シームレス缶は、素板厚とほぼ同じ厚みを有する底部10と、再絞り−しごき加工により薄肉化された側壁部12とから成るが、側壁部12の上部には、これよりも厚肉のフランジ形成部13が形成されている。
【0068】
フランジ形成部13には、種々の構造があり、図5に示した例では、側壁部12の外面とフランジ形成部13の外面とが同一径の円筒面上にあり、フランジ形成部13の内面は側壁部12の内面よりも小さい径を有している。このタイプのフランジ形成部13は、再絞り−しごきポンチ32において、側壁部が伸ばされてフランジ形成部13が位置する部分を他の部分に比して小径にしておくことにより形成される。
【0069】
フランジ形成部13の図7に示した例では、側壁部12の内面とフランジ形成部13の内面とが同一径の円筒面上にあり、フランジ形成部13の外面は側壁部12の外面よりも大きい径を有している。このタイプのフランジ形成部13は、再絞り−しごきダイのランド部の長さLを短くすると共に、このランド部に続く部分にランド部よりも小径の部分を設けて、フランジ形成部13が戻り変形させることにより形成される。
【0070】
フランジ形成部13の図8に示した例では、フランジ形成部13の外面は側壁部12の外面よりも大きい径を有すると共に、フランジ形成部13の内面は側壁部12の内面よりも小さい径を有している。このタイプのフランジ形成部13は、再絞り−しごきポンチ32において、側壁部が伸ばされてフランジ形成部13が位置する部分を他の部分に比して小径にしておくと共に、再絞り−しごきダイのランド部の長さLを短くし、更に、このランド部に続く部分にランド部よりも小径の部分を設けて、フランジ形成部13を戻り変形させることにより形成される。
【0071】
絞り成形等に際して、被覆金属板或いは更にカップに、各種潤滑剤、例えば流動パラフィン、合成パラフィン、食用油、水添食用油、パーム油、各種天然ワックス、ポリエチレンワックスを塗布して成形を行うのがよい。潤滑剤の塗布量は、その種類によっても相違するが、一般に0.1乃至10mg/dm2 、特に0.2乃至5mg/dm2 の範囲内にあるのがよく、潤滑剤の塗布は、これを溶融状態で表面にスプレー塗布することにより行われる。
【0072】
また、再絞り−しごき加工時の温度(しごき終了直後の温度)は、ポリエステルのガラス転移点(Tg)よりも50℃高い温度以下で且つ10℃以上の温度であることが好ましい。このため、工具の加温を行ったり、或いは逆に冷却を行うことが好ましい。
【0073】
[シームレス缶成形後の熱処理]
本発明によれば、次いで絞り−しごき成形後のシームレス缶を、トリミング後、少なくとも一段の熱処理に付する。この熱処理には、種々の目的があり、加工により生じるフィルムの残留歪を除去すること、加工の際用いた潤滑剤を表面から飛散させること等が目的であるが、本発明では、シームレス缶成形時に生ずる一軸配向を熱固定して結晶化することが主たる目的であり、これにより吸熱ピーク(TW2)が形成される。この熱処理には、赤外線加熱器、熱風循環炉、誘導加熱装置等それ自体公知の加熱装置を用いることができる。また、この熱処理は一段で行ってもよく、2段或いはそれ以上の多段で行うこともできる。熱処理の温度は、ポリエステル層の融点(Tm)−60℃乃至Tm−5℃の範囲が適当である。熱処理の時間は、一般的にいって、1乃至10分のオーダーである。
【0074】
熱処理後の容器は急冷してもよく、また放冷してもよい。即ち、フィルムや積層板の場合には急冷操作が容易であるが、容器の場合には、三次元状でしかも金属による熱容量も大きいため、工業的な意味での急冷操作はたいへんであるが、本発明では急冷操作なしでも、結晶成長が抑制され、優れた組合せ特性が得られるのである。勿論、所望によっては、冷風吹付、冷却水散布等の急冷手段を採用することは任意である。
【0075】
[印刷]
本発明では、印刷インキ及び所望により印刷インキ上に設ける仕上げワニスとして、紫外線硬化型のものを使用するのが望ましい。このインキ及び仕上ワニスには、紫外線硬化型樹脂組成物が含有されており、紫外線硬化型樹脂組成物には、大別してカチオン硬化型のものとラジカル重合型のものがある。
【0076】
紫外線カチオン重合型樹脂組成物としては、紫外線硬化型エポキシ樹脂と光カチオン重合触媒の組み合わせが使用される。
【0077】
紫外線硬化型エポキシ樹脂としては、分子内に脂環族基を有し且つ脂環基の隣接炭素原子がオキシラン環を形成しているエポキシ樹脂成分を含有するものであり、例えば分子内に少なくとも1個のエポキシシクロアルカン基、例えばエポキシシクロヘキサン環、エポキシシクロペンタン環等を有するエポキシ化合物等が単独或いは組み合わせで使用される。
【0078】
その適当な例は、これに限定されないが、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ビニルシクロヘキセンモノエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサン・カーボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート等である。
【0079】
上記エポキシ樹脂と組み合わせで用いるカチオン性紫外線重合開始剤とは、紫外線によって分解し、ルイス酸を放出し、このルイス酸がエポキシ基を重合する作用を有するものであり、その例として、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルフォニウム塩、芳香族セレニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩等が挙げられる。
【0080】
ジアリルヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサオロホスフェート、4−クロルフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジ(4−メトキシフェニル)ヨードニウムクロライド、(4−メトキシフェニル)フェニルヨードニウム等が挙げられる。
【0081】
トリアリールスルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
【0082】
トリアリールセレニウム塩としては、例えば、トリフェニルセレニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルセレニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0083】
その他のカチオン重合開始剤として、(2,4−シクロペンタジェン−1−イル)[(1−メトキシチエチル)−ベンゼン]−アイロン−ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルスルホニウムヘキサフルロアンチモネート、ジアルキルフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジアルキルフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス[ジ(βヒドロキシエトキシ)フェニルスルフォニオ]フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモーネート、4,4-ビス[ジ(βヒドロキシエトキシ)フェニルスルフォニオ]フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェード等が挙げられる。
【0084】
このカチオン硬化型樹脂組成物には、それ自体公知の希釈剤、他のエポキシ樹脂、増感剤、架橋剤等を含有させることができる。
【0085】
希釈剤としては、フェニルグリシジルエーテル、メチルフェニルグリシジルエーテル、n-ブチルグリシジルエーテル、1,2−エポキシヘキサデカン等が挙げられる。
【0086】
変性用の他のエポキシ樹脂としては、製缶塗料等に普通に使用されるビスフェノール型エポキシ樹脂等が使用される。
【0087】
増感剤としては、チオキサントン誘導体、例えば2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンが挙げられる。
【0088】
架橋剤としては、種々のポリオール類、例えばε−カプロラクトントリオール等を挙げることができる。
【0089】
カチオン硬化型樹脂組成物の処方の適当な例は、これに限定されないが、脂環式エポキシ樹脂100重量部当たり、カチオン性紫外線重合開始剤0.1乃至20重量部、特に0.5乃至15重量部、希釈剤0乃至50重量部、特に5乃至45重量部、他のエポキシ樹脂0乃至50重量部、特に5乃至45重量部、増感剤0乃至20重量部、特に0.5乃至10重量部及び架橋剤0乃至50重量部、特に5乃至45重量部からなるものである。
【0090】
紫外線ラジカル重合型樹脂組成物としては、紫外線重合性モノマー乃至プレポリマーと光重合触媒の組み合わせが使用される。
【0091】
紫外線重合性モノマー乃至プレポリマーとしては、分子内に複数のエチレン系不飽和基を有するモノマー乃至プレポリマー或いはそれらの混合物が使用される。その適当な例はエポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート、熱硬化型アクリル樹脂、熱硬化型ポリエステル樹脂等である。
【0092】
エポキシアクリレート樹脂としては、前記式(1)のビスフェノール型エポキシ樹脂とエチレン系不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタアクリル酸との付加物、或いはこの付加物とエチレン系不飽和多価カルボン酸無水物、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸等との反応物等が使用される。
【0093】
ウレタンアクリレート樹脂としては、イソシアネート末端ポリエステル或いはイソシアネート末端ポリオールと官能基含有アクリル単量体、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等とを反応させて得られたウレタンアクリレート樹脂が使用される。
【0094】
熱硬化型アクリル樹脂としては、1,6 −ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、1,6 −ヘキサンジオールジメタクリレート(HDDMA) 、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート(EGDA)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA) 、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGMA−A)、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGMA) 、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、1,4 −ブタンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、N,N, N′,N′−テトラキス(β−ヒドロキシエチル)エチレンジアミンのアクリル酸エステル、2,2−ビス[4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン等が使用される。
【0095】
熱硬化型ポリエステル樹脂としては、分子中にエチレン系不飽和結合を含むポリエステル、例えば、エチレン系不飽和多価カルボン酸、例えばマレイン酸、フマール酸、イタコン酸、テトラヒドロフタール酸等と、イソフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、アジピン酸、セバチン酸、重合脂肪酸等の他の酸成分との組み合わせと、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ビスフエノール類等の多価アルコールとを縮合させて得られるポリエステル樹脂が使用される。
【0096】
上記の多官能性モノマー乃至プレポリマーは、通常1官能性モノマーと組み合わせで使用するのが普通であり、このようなモノマーとして、グリシジルアクリレート(GA)、グリシジルメタクリレート(GMA) 、カルビトールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ジシクロペンタジエニルアクリレート、ジヒドロジシクロペンタジエニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、アクリルアミド(AAm) 、メタクリルアミド(MAm) 、N−メチロールアクリルアミド(N-MAM) 、N−ジアセトンアクリルアミド(DAAM)、N−ビニルピロリドン、マレイン酸、イタコン酸、メチルメタクリレート(MMA) 、エチルアクリレート(EA)、スチレン(ST)、 アクリロニトリル(AN)、酢酸ビニル(VAc)、ビニルトルエン(VT)等。
【0097】
更に、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート(DAP)、ジアリルイソフタレート、ジアリルアジペート、ジアリルグリコレート、ジアリルマレエート、ジアリルセバケート、トリアリルフオスフエート、トリアリルアコニテート、トリメリット酸アリルエステル、ピロメリット酸アリルエステル等の他の多官能性モノマーも使用しうる。。
【0098】
光ラジカル重合開始剤の代表的なものとしては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン及びそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類またはキサントン類、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリ−メチルペンチルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類等がある。
【0099】
かかる光重合開始剤は、安息香酸系又は第三級アミン系など公知慣用の光重合促進剤の1種あるいは2種以上と組み合わせて用いることが出来る。
【0100】
ラジカル重合性樹脂組成物において、光重合開始剤は紫外線硬化性樹脂100重量部に対して0.1〜30重量部、好ましくは1〜25重量部となる割合で用いるのが好ましい。
【0101】
本発明に用いる紫外線硬化型インキは、上記紫外線硬化性樹脂組成物に着色顔料を含有して成るが、このインクは著しい非ニュートン挙動を示すため、その粘度を定義するのは難しいが、一般に剪断速度が1sec-1における見かけ粘度が500乃至5000ポイズ(p、20℃)の範囲にあるのが望ましい。
【0102】
着色顔料の適当な例は次の通りである。
黒色顔料
カーボンブラック、アセチレンブラック、ランブラック、アニリンブラック。
黄色顔料
黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマンネントイエローNCG、タートラジンレーキ。
橙色顔料
赤口黄鉛、モリブテンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK。
赤色顔料
ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B。
紫色顔料
マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ。
青色顔料
紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC。
緑色顔料
クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファナルイエローグリーンG。
白色顔料
亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛。
体質顔料
バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト。
【0103】
インク用配合剤としては、消泡剤としてシリコーンオイル等、レベリング剤としてフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アクリル共重合体等、増粘剤、減粘剤等を用いることができる。
【0104】
仕上げワニスとしては、着色顔料の配合がなく、透明性に優れているという点をのぞけば、印刷インクと同様のものが使用される。その粘度は、一般に100乃至400センチポイズ(cp、20℃)の範囲にあるのが望ましい。
【0105】
本発明において、紫外線硬化型インキの印刷は、オフセット印刷、平版印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷等のそれ自体公知の製缶印刷法により行うことができる。一方、紫外線硬化型仕上ワニスの塗布は、グラビアロール、通常のコーティングロール等を用いて行うことができる。仕上げワニスの塗布厚みは一般に2乃至20μmの範囲にあるのがよい。
【0106】
インク層等の硬化に使用する紫外線としては、近紫外領域をも含めて、一般に波長200乃至440nm、特に240乃至420nmの光線が使用される。紫外光源としては、ハライドランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯等が使用される。インク層及び仕上げニス層の厚みは著しく小さいので、硬化に要するエネルギーはかなり少なくてすむことが利点であり、一般に500乃至5000ジュール/m2 等のエネルギーで十分である。
【0107】
[二次加工]
本発明において、印刷カップの二次加工としては、ネックイン加工やフランジ加工の他に、缶胴を補強するための周状多面体壁加工、ビード加工等が挙げられる。
【0108】
本発明の好適態様では、印刷後のシームレス缶を、ネックイン加工やフランジ加工に先立って、周状多面体壁加工を施す。
【0109】
本発明の周状多面体壁缶の一例を示す図9において、(A)はこの容器の側面図、(B)は部分側面断面図及び(C)は水平断面図である。この容器60は、前述したラミネートの絞りしごき加工で形成された上部開口の側壁部66及び缶底部67と上端に巻締めにより設けられた蓋体68から成っている。この胴部60には、周状に多面体壁が形成されており、この多面体壁は、構成単位面61と、構成単位面同士が接する境界稜線62及び境界稜線同士が交わる交叉部63を有し、該境界稜線62及び交叉部63は構成単位面に比べて相対的に容器外側に凸、構成単位面61の対向する交叉部間の部分65は相対的に容器内側に凹となっている。またこの多面体壁では、構成単位面61の隣合った容器軸方向配列が位相差をなした配列とされている。
【0110】
この具体例において、構成単位面61は、四辺形(菱形)abcd(図10参照)から成っており、構成単位面61の周方向に隣合った容器軸方向配列が丁度1/2の位相差をなした配列されている。
【0111】
図10は構成単位面の説明図であって、(A)は構成単位面の平面図であり、(B)、(C)及び(D)は、窪みの曲率半径Rとの関係で構成単位面の中央部の垂直断面を示す図である。図10(A)は図9の容器胴部に使用される多面体壁面の四辺形単位面61の一部を取り出したものであり、菱形abcdが構成単位面61となっている。菱形における各辺ab、bc、cd、daは容器側面に形成される境界稜線62に相当する辺であり、外向きに凸となる頂点a、b、c、dが交叉部63に該当する。
【0112】
側壁が円筒の場合、上方頂点aと下方頂点cとは同一径の円周面上に位置しており、左方頂点bと右方頂点dとは同一径の円周面上に位置している。配列が1/2の位相差をなしている場合、全ての頂点は同一径の円周面上に位置しており、図10(D)に示す通り、これら頂点に対応する容器胴部内半径は、最大半径rである。一方、各稜線ab、bc、cd、daは端で径外方に最も突出しているが、中間に行くに従って容器中心軸からの距離、即ち径が減少するようになっている。周方向の対角線bdの中点の径sをとると、この径sはrよりも小さく、図10(C)の場合、最小内半径を与える。容器胴上の単位面を軸方向に投影したとき、頂点acは重なるが、軸方向の対角線acは、周方向の対角線bdとは重ならずに対角線bdよりも径外方向に位置しており、四辺形abcdは滑らかに湾曲した面となっている。
【0113】
図10の(A)において、構成単位面としての菱形寸法は、周方向対角線bdの長さをwとし、軸方向対角線acの高さをLとすると、w及びLはそれぞれ構成単位面の周方向最大巾及び軸方向の最大長さとなる。軸方向対角線の長さac(高さL)に比して、実際の構成単位面上のac断面での長さは長く、このac断面は容器内側に滑らかに窪んだ曲線となっている。構成単位面のac断面の長さは、窪みの曲率半径R=5t(図10(B))、R=0.3r(図10(C))、R=r(図10(D))が大きくなるに従って、短くなる。
【0114】
各構成単位面において、周方向対角線bdの長さ(w)と実際の構成単位面上のbd断面での長さとが異なる場合がある。例えば、図10の(B)では、周方向対角線bdと実際の構成単位面上のbd断面が一致していて、それらの長さが等しいが、この断面における辺の中点は周方向対角線bdの位置よりも径外方向に位置していたり、径内方向に位置している場合がある。
【0115】
図9及び図10に示す例では、ac断面が滑らかに湾曲しており、bd断面は実質上ストレートであるが、他の具体例を示す図11においては、ac断面もbd断面も共に内方に滑らかに窪むように湾曲している。
【0116】
また、本発明においては、構成単位面は四辺形、特に菱形であることが好ましいが、これに限定されず、他の多角形とする事も勿論可能であり、例えば六角形とすることができる。図12は構成単位面が六角形であるである例を示す。この場合も、多面体の基本的構成は、前述した場合と同様である。
【0117】
多面体パターンは、容器胴部のほぼ全面に設けることが好ましいが、容器の中央部にのみ設けるようにすることもできる。図13は、多面体壁を容器胴部の中央部に設けた例を示す。
【0118】
本発明の周状多面体壁缶は、蓋を取り付ける前のシームレス缶を、内型と外型とで型押して前記多面体を形成することにより製造される。使用する内型は、前記多面体の交叉部及び稜線に対応する突起を表面に有するものであり、一方使用する外型は、前記多面体の窪みに対応する滑らかな突起を表面に有するものであり、これらの内型及び外型をシームレス缶胴部を介して噛み合わせることにより、多面体の形成が行われる。
【0119】
図14は、容器胴部への多面体刻設の方法を示す説明図であり、理解が容易なように容器胴部の一部を切り欠いた状態で示してある。この例では構成単位面が四辺形の場合を示すが、構成単位面が四辺形以外の場合でも原理的にこれと変わりがない。容器胴部50は内型71及び外型72に挟まれた状態で回転される。内型71の表面には、多面体の交叉部に対応した突起73及び境界稜線に対応した突条74と、構成単位面に対応する窪んだ凹面75とが形成されている。一方、外型72の表面には、多面体の交叉部及び境界稜線に対応した溝76と、構成単位面に対応する凸面77とが形成されている。
【0120】
これらの内型71と外型72とを容器胴部50を介して噛み合わせ、且つこれらを同期した速度で回転させることにより、容器胴部への多面体の刻設が行われる。尚、回転に際して一部に噛み合わせがずれる場合には内型或いは外型の回転軸が若干上下動するようにしてもよい。
【0121】
図14に示す具体例において、内型71及び外型72は、容器胴部よりも小さい径を有しているが、内型71と外型72の表面における基本面構成単位の周方向への配置数は容器胴部周囲のそれに比べて1個或いは複数個少ないものとしているが、実用上多面体の形成には問題がない。内型71と外型72とを離すことにより、多面体刻設容器胴部の取り出しが容易に行われる。
【0122】
本発明においては、構成単位面をバルジ方式で缶胴に付けることもできる。バルジ方式は膨縮構造の部材、例えばすりわり状構成の合成ゴムを缶胴内に挿入し、これを缶胴内で拡張することによって缶胴の径を大きくする方法である。このような方式にあっては、構成単位面の外型を缶胴周囲に配し、膨縮部材によって缶胴を膨張させ、缶胴を外型に圧着させて缶胴の径を大きく加工および缶胴の厚みを薄く加工すると同時に、前述した優れた構成単位面を缶胴に形成することができる。このような構成単位面の形成においては、缶胴のネックイン加工を予め行うことができる。
【0123】
構成単位面の窪んだ部分は式(2)
5t≦R≦r ‥(2)
式中、tは缶胴の厚み(mm)、rは缶胴の半径(mm)、Rは曲率半径(mm)である、
を満足する曲率半径を有することが望ましい。
【0124】
窪みの曲率半径Rが缶壁の板厚tの5倍を下回る場合、その窪みに加工時の折れ目が形成されるが、保形性の評価の際の局部圧縮時にその折れ目にて折れ込む様に比較的容易に変形を生じるため、保形性上好ましくない。一方、窪みの曲率半径Rが缶胴の半径rを上回る場合、窪みの深さが浅くなり局部的な変形抵抗力が小さくなるため好ましくない。
【0125】
耐減圧変形性の点で、本発明の多面体パターンを構成する構成単位面の窪みの曲率半径Rは缶胴の半径r以下で有ることが好ましく、特に好ましくは0.6r以下である。窪みの曲率半径Rが缶胴の半径rを上回る場合、窪みの深さが浅くなり、有効な耐減圧変形性を保持することが難しくなる。
【0126】
また、本発明のシームレス缶では、前記構成単位面の容器軸方向の最大長さをLとし、構成単位面の缶周方向の最大巾をwとしたとき、L及びwが式(3)
0.2≦L/w≦4 ‥(3)
の関係を満たすことが好ましく、また構成単位面の周方向最大巾を与える交叉点間対角線と構成単位面の軸方向最大長さを与える交叉点間対角線との距離(両対角線をそれぞれ直角に結ぶ線の長さ)をd0 及びこの線が構成単位面と交わる位置と構成単位面の軸方向最大長さを与える交叉点間対角線との距離をd1 としたとき、d1 はd0 の関係で次式(4)
0.5≦d1 /d0 ≦2 ‥(4)
を満足する範囲内にあることが望ましい。
【0127】
L/Wが上記範囲をはずれると、保形性、耐減圧変形性が劣ってくる。L/wの値は缶径と缶高との比率を考慮したデザイン上の観点から上記範囲内にて適時決めることが出来る。
【0128】
また、構成単位面の周方向最大巾を与える交叉点間対角線と構成単位面の軸方向最大長さを与える交叉点間対角線との距離(両対角線をそれぞれ直角に結ぶ線の長さ)をd0 及びこの線が構成単位面と交わる位置と構成単位面の軸方向最大長さを与える交叉点間対角線との距離をd1 としたとき、d1 はd0 の関係で式(4)を満足する範囲内にあることが望ましい。d1 /d0 が上記範囲を下回ると保形性及び耐減圧変形性の点で劣るようになる。d1 /d0 が上記範囲を上回ると、多面体パターンの成形が難しくなり、また装飾効果の点で劣ってくる。
【0129】
シームレス缶のネックイン加工は、それ自体公知のネックイン加工法、例えば、ダイ方式、或はスピンネックイン方式により一段或は複数段で行うことができる。
下記数式(5)
Figure 0003899554
式中、RL はネックイン加工前の缶胴外径を表わし、RS はネックイン加工部の缶胴外径を表わす。
で定義されるネックイン加工率(NR )は、一段で1.01乃至1.10、特に1.02乃至1.07の範囲にあるのがよく、多段ネックイン加工の場合には、全体で1.10乃至1.30、特に1.11乃至1.25の範囲内にあるのがよい。
【0130】
ネックイン加工は、被覆のガラス転移温度(Tg )前後の温度で行うのが推奨される。即ち、被覆のTg 以上50℃の高温度域では、被覆と工具との係合等により、被覆自体に傷が入るので好ましくなく、一方Tg以下60℃の低温度域では、ネックイン加工に際して被覆が金属素材の塑性流動に追従しない傾向があり、被覆の剥離やクラック発生等の被覆欠陥が発生しやすい。
ネックイン加工に際して、工具と接触する缶胴部に潤滑剤を塗布したり、あるいは缶胴と接触する工具表面を潤滑性能に優れた素材で形成したりし得ることは任意である。
【0131】
ネックイン加工されたカップは、その開口端部をフランジングダイと係合させて、フランジ加工を行い、缶端と二重巻締するためのフランジを形成させる。
【0132】
[再熱処理]
二次加工後の金属製カップ状容器を、内面側有機被覆のガラス転移点(Tg)以上の温度、特に好適にはTg+100乃至Tg+150℃の温度で加熱して、周状多面体壁加工、ネックイン加工およびフランジ加工部の内面樹脂被覆に残留する歪みを有効に解放させる。この熱処理により、二次加工後の缶体は、ポリエステル層の最終的な熱固定が行われて、示差熱分析の吸熱ピーク(TW1)に対応する配向結晶が生成する。加熱時間は10秒乃至5分が適当である。
【0133】
この加熱は、熱風加熱炉、赤外線加熱炉等により容器全体について行ってもよいし、胴部のみについてのみ行ってもよい。
【0134】
【実施例】
本発明を次の例で説明する。
本発明の特性値は以下の測定法による。
【0135】
[評価用試料の調整]
得られたシームレス缶の所定部を切り出し、塩酸水溶液に浸漬し、金属基質を溶解させ、ポリエステル樹脂被膜のみを剥離し、測定に供した。
【0136】
[示差熱分析]
示差走査熱量分析装置(DSC−7、パーキンエルマー社)を用い、昇温速度20℃/minでの熱曲線を測定した。吸熱ピーク温度(TW1ないしTW3)は前記熱曲線の最大値を与える温度である。試料のサンプリングは缶胴部の前記剥離被膜を約5mg秤量し、測定に供した。
なお、後記表に示すガラス転移温度および融点は上記測定を300℃まで行ったのち、急冷し再度20℃/minで昇温測定した(2ndラン)とき、求められる値である。ガラス転移温度はベースラインの曲率が変化する温度とした。
【0137】
[熱収縮荷重測定]
本発明における熱収縮荷重とは、熱機械分析装置(TAS−200、理学電機(株)製)を用いて測定した初期荷重3g、昇温速度10℃/min,Tg−10乃至Tg+10での最大荷重を言う。試料のサンプリングは前記剥離被膜の缶フランジ部下10mmの位置から幅4乃至5mmの幅で缶高さ方向に並行に切り出した。収縮荷重はサンプルの幅および厚みから単位面積当たりの荷重に換算した。
【0138】
[耐食性評価]
シームレス缶に腐食モデル液(蒸留水1000mlにクエン酸5g、酢酸5g、食塩30gを添加した水溶液)を充填巻締めし、37℃で6ヶ月間保存し、缶内面のネックイン部および周状多面体壁加工を付した缶については該加工部の腐食状態を目視で観察した。試験は100缶について実施し、1mm2 以上の面積を有する腐食点1個以上有する場合、腐食有りと判断し、腐食缶が100缶中何缶あるかで耐食性を評価した。
【0139】
[耐衝撃性評価]
シームレス缶に前記腐食モデル液を充填巻締めした後、7℃で2日保持し、7℃の雰囲気で30cmの高さから正立で落下させ、缶下部に衝撃変形を加えた後、37℃で1ケ月間保存し、缶内面ネックイン部および周状多面体壁加工を付した缶については該加工部の腐食状態を目視で観察した。試験は100缶について実施し、1mm2 以上の面積を有する腐食点1個以上有する場合、腐食有りと判断し、腐食缶が100缶中何缶あるかで耐食性を評価した。
【0140】
実施例1
テレフタル酸/イソフタル酸(モル比88/12)とエチレングリコールからなるポリエチレンテレフタレート/イソフタレートを290℃で溶融押し出しし、急冷固化して未延伸フィルムとして、次いで該未延伸フィルムを縦方向に105℃で3.1倍、横方向に115℃で3.1倍に延伸し、続いて185℃にて熱固定して、厚み25μmの2軸延伸フィルムを得た。
次いで、素板厚0.18mm、調質度DR−9のティンフリースチール板(表面処理被覆量として金属クロム量120mg/m2 、クロム酸化物量15mg/m2 )の両面に前記2軸延伸フィルムを、板温度を240℃とし、ラミネートロール温度を150℃の条件で熱接着し、直ちに水冷することによりラミネート板を得た。このラミネート板にワックス系潤滑剤を塗布した後、直径166mmの円板に打ち抜き、浅絞りカップを得た。次いで、この浅絞りカップを3段の再絞り(曲げ伸ばし)を行い深絞りカップを得た。深絞りカップの諸特性は以下の通りである。
カップ径 66mm
カップ高さ 128mm
素板厚に対するカップ側壁部の厚み比 80%
この深絞りカップを、常法に従いドーミング成形を行い、シームレス缶を作成した。シームレス缶を、トリミング後、215℃にて成形後の熱処理を行った。次いで、シームレス缶の外面にエポキシアクリレート系ラジカル硬化性紫外線硬化型インキを用いてドライオフセット方式で印刷を行った後、出力160w/cmのメタルハライドランプにより紫外線を照射しインキ層を硬化させた。この印刷缶胴の外面全面に更に脂環式エポキシ系カチオン硬化性紫外線硬化型仕上ワニスを乾燥塗膜量150mg/缶で塗布した後、出力160w/cmのメタルハライドランプにより紫外線を照射し、仕上ワニス層を硬化させた。
引き続き、缶胴の開口端部をそのままで3段のダイ方式によりネックインした後、フランジ加工の2次加工を行った。
最後に、前記シームレス缶体を200℃にて30秒間再熱処理をし、本発明のシームレス缶を作製し、評価に供した。
実施例1のシームレス缶の諸特性を表1に示す。耐食性および耐衝撃性にすぐれたシームレス缶が得られた。
【0141】
実施例2
浅絞りブランクの直径を166mmとし、浅絞りカップを再絞り、しごき成形に付して深絞りカップを作成した(素板厚に対するカップ側壁部の厚み:65%)。
上記以外は実施例1に準じて行い、本発明のシームレス缶を作成し、評価に供した。
実施例2のシームレス缶の諸特性を表1に示す。耐食性および耐衝撃性にすぐれたシームレス缶が得られた。
【0142】
実施例3
テレフタル酸/アジピン酸(モル比88/12)とエチレングリコールからなるポリエチレンテレフタレート/アジペートを280℃で溶融押し出しし、急冷固化して未延伸フィルムとして、次いで該未延伸フィルムを縦方向に90℃で3.4倍、横方向に100℃で3.5倍に延伸し、続いて180℃にて熱固定して、厚み25μmの2軸延伸フィルムを得た。
次いで、素板厚0.185mm、調質度DR−9のティンフリースチール板(表面処理被覆量として金属クロム量120mg/m2 、クロム酸化物量15mg/m2 )の両面に前記2軸延伸フィルムを、板温度を240℃とし、ラミネートロール温度を140℃の条件で熱接着し、直ちに水冷することによりラミネート板を得た。このラミネート板にワックス系潤滑剤を塗布した後、直径143mmの円板に打ち抜き、浅絞りカップを得た。次いで、この浅絞りカップを3段の再絞り(曲げ伸ばし)を行いシームレス缶を得た。シームレス缶の諸特性は以下の通りである。
カップ径 52mm
カップ高さ 110mm
素板厚に対する缶側壁部の厚み比 75%
シームレス缶を、トリミング後、215℃にて成形後の熱処理を行った。
次いで、シームレス缶の外面に脂環式エポキシ系カチオン硬化性紫外線硬化型インキを用いてドライオフセット方式で印刷を行った後、、出力160w/cmのメタルハライドランプにより紫外線を照射しインキ層を硬化させた。この印刷缶胴の外面全面に更に脂環式エポキシ系カチオン硬化性紫外線硬化型仕上ワニスを乾燥塗膜量150mg/缶でウエットオンウエット方式で塗布した後、出力160w/cmのメタルハライドランプにより紫外線を照射し、インキ層、仕上ワニス層を同時に硬化させた。
次いで、シームレス缶の缶胴に、図9に示す最小構成単位面を、缶高の中心を含み、円周方向に9個連続させ、且つ缶軸方向に1/2位相差で90mm幅で設け、構成単位面の窪んだ部分の曲率半径Rを5mm、L/wの比を0.20、窪み量d1 /d0 を0.95となるように外面体を押し具を用いて周状多面体壁加工を行った。
引き続き、缶胴の開口端部を1段のダイ方式によりネックインした後、フランジ加工の2次加工を行った。
最後に、前記シームレス缶体を200℃にて30秒間再熱処理をし、本発明のシームレス缶を作製し、評価に供した。
実施例3のシームレス缶の諸特性を表1に示す。耐食性および耐衝撃性にすぐれたシームレス缶が得られた。
【0143】
実施例4
テレフタル酸/イソフタル酸(モル比95/5)とエチレングリコールからなるポリエチレンテレフタレート/イソフタレートを300℃で溶融押し出しし、急冷固化して未延伸フィルムとして、次いで該未延伸フィルムを縦方向に105℃で2.9倍、横方向に30℃で3.0倍に延伸し、続いて220℃にて熱固定して、厚み25μmの2軸延伸フィルムを得た。
次いで、素板厚0.195mm、調質度DR−9のテインフリースチール板(表面処理被覆量として金属クロム量120mg/m2 、クロム酸化物量15mg/m2 )の両面に前記2軸延伸フィルムを、板温度を250℃とし、ラミネートロール温度を150℃の条件で熱接着し、直ちに水冷することによりラミネート板を得た。このラミネート板にワックス系潤滑剤を塗布した後、直径148mmの円板に打ち抜き、浅絞りカップを得た。次いで、この浅絞りカップを3段の再絞り(曲げ伸ばし)を行いシームレス缶を得た。シームレス缶の諸特性は以下の通りである。
カップ径 52mm
カップ高さ 135mm
素板厚に対する缶側壁部の厚み比 75%
シームレス缶を、トリミング後、240℃にて成形後の熱処理を行った。
5シームレス缶の印刷以降の工程を実施例3に準じて行い、本発明のシームレス缶を作成し、評価に供した。
実施例4のシームレス缶の諸特性を表1に示す。耐食性および耐衝撃性にすぐれたシームレス缶が得られた。
【0144】
比較例1
再熱処理を実施しない以外は、実施例1に準じて本発明以外のシームレス缶を作成し、評価に供した。
比較例1のシームレス缶の諸特性を表1に示す。耐衝撃性には問題がなかったが、ネック部が耐食性に劣っていた。
【0145】
比較例2
印刷を以下に記載の方法に変更し、再熱処理を実施しない以外は、実施例1に準じて本発明以外のシームレス缶を作成し、評価に供した。
すなわち、ポリエステル系熱硬化型インキを用いて、ドライオフセット方式で印刷を行い、更にアクリルアミノ系熱硬化型仕上げワニスを乾燥塗膜量150mg/缶となるようにウエットオンウエット方式でシームレス缶の外面側壁部全面に塗布して後、このシームレス缶をガスオーブンに入れ、200℃、2分間の焼き付けを行い、インキ層、仕上げワニス層を硬化させた。
比較例2のシームレス缶の諸特性を表1に示す。耐食性および耐衝撃性に劣っていた。
【0146】
比較例3
シームレス缶へ成形後の熱処理条件を以下に記載のものに変更した以外、実施例1に準じて本発明以外のシームレス缶を作成し、評価に供した。
すなわち、シームレス缶を、トリミング後、241℃にて成形後の熱処理を行った。
比較例3のシームレス缶の諸特性を表1に示す。耐食性、耐衝撃性に劣っていた。
【0147】
比較例4
再加熱条件を以下に記載のものに変更した以外は、実施例1に準じて本発明以外のシームレス缶を作成し、評価に供した。
すなわち、前記シームレス缶体を240℃にて10秒間再熱処理をした。
比較例4のシームレス缶の諸特性を表1に示す。2次加工による歪みは緩和されていたが、耐食性および耐衝撃性に劣っていた。
【0148】
比較例5
2軸延伸フィルムのティンフリースチール板への熱接着条件を板温を225℃、ラミネートロール温度130℃に変更した以外は、実施例1に準じて本発明以外のシームレス缶を作成し、評価に供した。
比較例5のシームレス缶の諸特性を表1に示す。ポリエステル層の金属板からの剥離が見られ、耐食性および耐衝撃性に劣っていた。
【0149】
比較例6
シームレス缶への熱処理を終えた缶体に二次加工に先立ち実施例1と同じ条件の再熱処理を行う以外は、実施例1に準じて本発明以外のシームレス缶を作成し、評価に供した。
比較例6のシームレス缶の諸特性を表に示す。耐衝撃性には問題がなかったが、ネック部の耐食性に劣っていた。
【0150】
【表1】
Figure 0003899554
【0151】
【発明の効果】
本発明によれば、金属−ポリエステル積層体から形成されたシームレス缶において、少なくとも缶内面のポリエステル層に、示差熱分析において特定の3個の吸熱ピークで示される3種の配向結晶状態、および加工が過酷であるフランジ部直下のポリエステル層に自発的伸張特性を付与することにより、ネックイン、周状多面体壁等の二次加工後の耐衝撃性(耐デント性)及び耐食性を顕著に向上させることができる。また、缶胴部の金属厚みを低減することが可能となり、より軽量で、装飾効果にも優れた缶を供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるシームレス缶(A)及び本発明以外のシームレス缶(B)及び(C)についての、胴部内面のポリエステル層の示差熱分析(DSC)曲線である。
【図2】本発明に用いる積層体の断面構造の一例を示す拡大断面図である。
【図3】本発明に用いる積層体の断面構造の他の例を示す拡大断面図である。
【図4】ラミネート板の製造装置の断面図である。
【図5】本発明のシームレス缶の一例を示す断面図である。
【図6】本発明のシームレス缶の絞りしごき成形装置の要部を示す断面図である。
【図7】本発明のシームレス缶のフランジ部の一例を示す断面図である。
【図8】本発明のシームレス缶のフランジ部の他の例を示す断面図である。
【図9】四辺形を構成単位面とする多面体壁を設けた容器の一例を示し、(A)は側面図、(B)は縦断面図及び(C)は水平断面図である。
【図10】図9の容器の側面に形成され多面体壁の構成単位面の一例を示し、(A)は平面図、(B)、(C)及び(D)は窪んだ部分の曲率半径を変化させて示す構成単位面の垂直断面図である。
【図11】多面体壁の他の例を用いた容器の側面図である。
【図12】六角形を構成単位面とする多面体壁を設けた容器の側面図である。
【図13】容器の中央部にのみ多面体壁をを形成させた容器の側面図である。
【図14】容器胴部への多面体刻設の方法を説明する斜視図である。
【符号の説明】
1 積層体
2 金属基体
3 内面側ポリエステル層
4 外面被膜
5 接着用プライマー
10 缶底部
11 シームレス缶
12 缶側壁部
13 フランジ形成部
20 金属板
21 加熱ロール
22 ラミネートロール
23 ポリエステルフィルム
24 供給ロール
25 ラミネート
26 冷却水
27 ガイドローラ
30 前絞りカップ
31 環状保持部材
32 再絞り−しごきダイス
33 再絞り−しごきポンチ
34 再絞り−しごきダイスの平面部
35 再絞り−しごきダイスのコーナー部
36 再絞り−しごきダイスのアプローチ部
37 再絞り−しごきダイスの小曲率部
38 再絞り−しごきダイスのランド部
39 再絞り−しごきダイスの逆テーパー状の逃げ部
40 環状保持部材の外周面
41 環状保持部材の曲率コーナ部
42 環状保持部材の環状底面
50 容器胴部
60 胴部構成単位面
61 構成単位面
62 境界稜線
63 交叉部
65 交叉部間の部分
66 開口側壁部
67 缶底部
68 蓋体
71 内型
72 外型
73 突起
74 突条
75 凹面
76 溝
77 凸面

Claims (12)

  1. 金属板の少なくとも内面にポリエステルを積層したラミネートで製造されたシームレス缶において、前記缶の少なくとも胴部の内面のポリエステル層は、示差熱分析において、最高温側の吸熱ピーク(TW3)と、前記最高温側吸熱ピークよりも若干低温側の少なくとも1個の吸熱ピーク(TW2)との連峰型吸熱ピークを有すると共に、前記吸熱ピーク(TW2)よりも低温側でしかもガラス転移点(Tg)よりも高温側に少なくとも1個の吸熱ピーク(TW1)を有し、前記缶のフランジ部直下のポリエステル層は、Tg−10℃乃至Tg+10℃の温度域において自発的熱伸張性を有することを特徴とする耐腐食性に優れたシームレス缶。
  2. 前記吸熱ピーク(TW2)が最高温側吸熱ピーク(TW3)よりも3乃至15℃低温側に現れる請求項1記載のシームレス缶。
  3. 前記吸熱ピーク(TW1)が吸熱ピーク(TW2)よりも10乃至20℃低温側に現れる請求項1または2に記載のシームレス缶。
  4. 前記吸熱ピーク(TW2)が、最高温側吸熱ピーク(TW3)との谷と低温側の裾とを結ぶ線をベースラインとして、最高温側吸熱ピーク(TW3)の吸熱量の400乃至2000%の吸熱量を有する請求項1乃至3の何れかに記載のシームレス缶。
  5. 前記吸熱ピーク(TW1)が、最高温側吸熱ピーク(TW3)の吸熱量の0.5乃至5.0%の吸熱量を有する請求項1乃至4の何れかに記載のシームレス缶。
  6. 前記フランジ部直下のポリエステル層が、200g/mm2 以下の熱収縮荷重に相当する自発的熱伸張性を有する請求項1乃至5の何れかに記載のシームレス缶。
  7. 缶胴の外面に印刷が施され且つ缶胴の少なくとも一部に周状多面体壁が形成されている請求項1乃至6の何れかに記載のシームレス缶。
  8. 前記多面体壁は、構成単位面と、構成単位面同士が接する境界稜線及び境界稜線同士が交わる交叉部を有し、該境界稜線及び交叉部は構成単位面に比べて相対的に容器外側に凸となっており、構成単位面は対向する交叉部間で滑らかに窪んだ部分を有し、構成単位面の周方向に隣合った容器軸方向配列が位相差をなしていることを特徴とする請求項7に記載のシームレス缶。
  9. 金属板の少なくとも内面に二軸延伸ポリエステルフィルムを、該ポリエステルフィルムの二軸配向が残留する条件下で積層してラミネート板を製造する工程と、このラミネート板を絞り成形或いは絞り−しごき成形して、前記ポリエステル層が一軸配向された缶胴に成形し、成形後の缶を熱処理する工程と、缶胴の外面に印刷を施すと共に、前記ポリエステル層に二軸配向及び一軸配向が残留する条件下に印刷インキを硬化させる工程と、前記印刷缶胴を二次成形した後熱処理する工程とから成ることを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の耐腐食性に優れたシームレス缶の製造法。
  10. シームレス缶への成形後の熱処理をポリエステル層の融点(Tm)−60℃乃至Tm−5℃の温度で行う請求項9記載の製造法。
  11. 印刷インクが紫外線硬化型インクであり、印刷インクの硬化を紫外線照射により行う請求項9または10記載の製造法。
  12. 二次成形後の印刷缶胴の熱処理をTg+100乃至Tg+150℃の温度で行う請求項9乃至11の何れかに記載の製造法。
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