JP3957049B2 - 色彩を帯びたボトル型アルミ缶 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも缶の外面側となる面に接着剤層を介して熱可塑性樹脂の保護被膜がラミネートされた樹脂被覆金属板から絞りしごき加工等により一体成形されるボトル型缶に関し、特に、アルミニウム合金板の両面に熱可塑性樹脂の保護被膜がラミネートされた樹脂被覆アルミニウム合金板から絞りしごき加工等により一体成形されたアルミ缶であって、缶の外面側で金属下地が全体的に色彩を帯びているボトル型アルミ缶に関する。
【0002】
【従来の技術】
絞りしごき加工等により胴部が円筒状に薄肉化されている飲料用のシームレス缶(側面無継目缶)として、キャップが螺着されるネジ付きで小径の口頸部を有し、口頸部と胴部の間が滑らかなドーム状の肩部に成形されて、胴部の下端開口部に別体の底蓋の巻き締めにより固着されたボトル型缶が、最近飲料缶の市場を賑わすようになっており、そのようなボトル型缶の多くでは、透明な熱可塑性樹脂(ポリエステル樹脂)フィルムをアルミニウム合金板の両面に保護被膜としてラミネートした樹脂被覆アルミニウム合金板を材料として缶体(キャップと底蓋を除く缶本体)が一体成形されていて、ボトル型に成形された缶体の胴部外面には、直接印刷または印刷済み樹脂フィルムの貼着により所望の印刷デザイン(印刷による文字や装飾模様)が施されている。
【0003】
そのように胴部外面に印刷デザインが施されたボトル型アルミ缶では、通常は、印刷デザインが施されない領域である肩部と口頸部や、胴部の印刷インキ層がない部分では、アルミニウム合金の地色(銀色)をしているが、最近では、ボトル型アルミ缶で陶磁器のイメージを出すために、缶外面側の地色を白色にしたボトル型アルミ缶も製造されていて、陶磁器をイメージさせる色の印刷デザインとも相俟って、その美しい装飾効果により評判を呼んでいる。そのような地色を白色にしたボトル型アルミ缶では、缶外面側で、地色となる白色を出すために、アルミニウム合金板に保護被膜としてラミネートされる熱可塑性樹脂フィルムとして白色フィルムを使用している。
【0004】
なお、アルミ系やスチール系の金属板から深絞り加工や絞りしごき加工等により製造される普通のシームレス缶(ボトル型ではない略円筒状の缶)でも、熱可塑性樹脂フィルムの保護被膜を金属板にラミネートする際に、フィルムがラミネートされた樹脂被覆金属板の地色を白色にするということが従来から行われており、特に、スチール缶の場合には、暗い金属色を隠蔽して印刷鮮明性を上げるために白色顔料を使用して印刷下地を白色にすることが多く行われている。
【0005】
そのように樹脂被覆金属板の地色を白色にするための具体的な手段については、樹脂フィルムをラミネートする前の金属板に予め白色塗料を塗装し、その上に透明な樹脂フィルムをラミネートする方法や、樹脂フィルムを製造する前の熱可塑性樹脂中に白色顔料を混入し、この樹脂を白色フィルムに製膜して、この白色フィルムを金属板に直接或いは接着剤層を介して接着する方法や、樹脂フィルムを金属板に接着するための樹脂(または接着剤)に白色顔料を混入し、この白色接着樹脂層を介して透明な熱可塑性樹脂フィルムを金属板に接着する方法や、白色フィルムを白色接着樹脂層を介して金属板に接合する方法などがある(例えば、特開昭53−81530号公報,特開昭54−143387号公報,特開昭56−10451号公報,特開平1−258822号公報等参照)。
【0006】
上記のような方法の何れを採用しても、白色顔料を使用することで、印刷を施す缶外面側の下地(熱可塑性樹脂フィルム面)が白色に見えて、印刷するインキの色に悪影響を及ぼすことがないので、印刷デザインの鮮明度が向上するという利点があって、実際に、表面処理鋼板の一方の表面にラミネートするポリエステル樹脂フィルムに白色顔料である二酸化チタンを含有させて、缶の外面の印刷下地を白色にした深絞り缶や絞りしごき缶が大量に生産されている。
【0007】
また、白色フィルムをラミネートした表面処理鋼板から絞りしごき缶を成形する場合には、胴部のしごき率を高くすると、白色フィルムも大幅に薄くなるため、隠蔽力が減少して鋼板の黒味がかった色が透けて見えてしまう結果となり、一方、フィルム製膜用の熱可塑性樹脂への白色顔料の混入率を高くすると、樹脂フィルムの強度が低下して製缶工具による削れやフィルム傷付きの問題が発生したり、製缶工具(特にダイス)の摩耗が激しくなることから、そのような問題に対処するために、樹脂フィルムを多層構成にして、最外層となる層には少ない量の白色顔料を混入し、中間層や内層に多量の白色顔料を混入するという提案もなされている(特開平8−192494号公報,特許第3117729号公報,特開平11−348218号公報等参照)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、現在市場に出回っているボトル型のアルミ缶については、肩部が印刷(直接印刷又は印刷済み樹脂フィルムの貼着)の施し難いドーム形状になっており、印刷前に肩部を成形していることから、肩部には印刷デザインが施されておらず、アルミニウム合金の地色(銀色)となっているか、或いは、缶外面側の地色を白色にしたボトル型アルミ缶では白色となっていて、ボトル型アルミ缶の肩部に対しても何らかの装飾的な効果を与えるようにして欲しいという要望がある。
【0009】
そのような要望に答えるための一つの手段として、樹脂被覆アルミニウム合金板等の金属板材から有底円筒状のカップを成形した後で、そのカップの円筒部外面に印刷を施し、その後、多段の成形工程により、印刷部分の一部をドーム形状又は円錐台形状等の傾斜面となる肩部に成形するという方法が既に提案されている(特開2001ー114245号公報参照)ものの、そのような方法によれば、印刷を施した後で肩部や口頸部を成形する際に、これらの部分と接触するダイス等の製缶工具との摩擦により印刷インキ層が剥離する虞があるので、密着性や加工性に優れた特殊な印刷インキや塗料を使用する必要があり、また、印刷が施された円筒部の一部をドーム形状や円錐台形状の肩部に変形することで、その部分に施された文字や図形等の印刷デザインが歪んでしまうという問題がある。
【0010】
これに対して、その他に考えられる手段としては、缶体の材料となる樹脂被覆アルミニウム合金板について、缶の外面となる側で、保護被膜となる樹脂フィルムを有彩色に着色して、成形されたボトル型アルミ缶の缶外面側の地色に色彩を帯びさせることで、印刷が施されない肩部を、意匠性や面白味に欠ける単調な銀色や白色にするのではなく、装飾的な効果のある色彩を帯びたものにするということが考えられる。
【0011】
しかしながら、その場合に、フィルム製膜用の熱可塑性樹脂に顔料を混入すると、フィルムの強度が低下して製缶工具によるフィルムの削れや傷付きが発生したり、フィルムに含まれた顔料により製缶工具(特にダイス)の摩耗が激しくなったりする虞がある。また、フィルムの着色程度が薄すぎると、肩部での装飾効果が殆ど感じられず、一方、フィルムの着色程度が濃すぎると、この着色は胴部では印刷デザインの下地ともなるので、その上に施される類似色の印刷インキの鮮明度を低下させる結果となって、ボトル型アルミ缶の印刷が施された胴部を含む全体としての装飾効果をかえって低下させてしまう虞がある。
【0012】
本発明は、上記のような問題の解消を課題とするものであり、具体的には、保護被膜となる樹脂フィルムがラミネートされた樹脂被覆アルミニウム合金板から一体成形されるボトル型アルミ缶について、ラミネートされたフィルムの強度を低下させたり、製缶工具の摩耗を早めたりすることなく、また、胴部に施される印刷デザインの鮮明度を低下させるようなことなく、肩部を所望の色彩に着色して装飾効果を高められるようにすることを課題とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記のような課題を解決するために、予めアルミニウム合金板の両面が保護被膜となる熱可塑性樹脂層で被覆された樹脂被覆アルミニウム合金板を材料として、胴部が薄肉化された有底円筒缶の缶底側が小径の口頸部と傾斜した肩部となるように一体成形されて、その胴部に印刷デザインが施されているボトル型アルミ缶において、少なくとも缶の外面側で、保護被膜となる透明な熱可塑性樹脂層が、有彩色の着色顔料を樹脂固形分に対して1.5〜20重量%の割合で含有する接着剤層を介して、アルミニウム合金板にラミネートされていると共に、缶の胴部の大部分が元の板厚から40%以上の薄肉化率で薄肉化されていることにより、缶の胴部の大部分が、薄くなった接着剤層からなる着色層を透して地金の銀色が見える金属光沢色の印刷下地になっていることを特徴とするものである。
【0014】
上記のような構成のボトル型アルミ缶によれば、印刷デザインが施されない肩部では、透明性のある有彩色に着色された光沢のある地色となって、単なる金属地色(銀色)や白色と比べて装飾効果の高い外観となっており、一方、印刷デザインが施される胴部の大部分では、40%以上の高い薄肉化率となるように薄肉化されていることで、印刷下地となる地色の着色程度が肩部と比べて大幅に低下して(胴部の薄肉化に伴って着色度合いが薄くなって)、薄くなった接着剤層からなる着色層を透して地金の銀色が見える金属光沢色の印刷下地になっているため、その上に施される類似色の印刷インキの鮮明度をそれ程低下させることはなく、むしろ、面白味のある印刷下地となって、印刷デザインによる装飾効果を減殺することはない。
【0015】
また、有彩色の着色顔料を、保護被膜である熱可塑性樹脂層にではなく、それをアルミニウム合金板にラミネートさせるための接着剤層に含有させていることで、樹脂被覆アルミニウム合金板から缶体を成形する工程において、顔料の添加に起因するフィルム強度の低下によってフィルムが傷付けられるようなことはなく、また、フィルムに含まれた顔料により製缶工具(特にダイス)の摩耗が促進されるようなこともない。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の色彩を帯びたボトル型アルミ缶の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明の一実施形態に係るボトル型アルミ缶について、図1は、(A)ボトル型アルミ缶の外観形状と(B)缶体の材料となる樹脂被覆アルミニウム合金板の積層構造とをそれぞれ示し、図2は、ボトル型アルミ缶の製造工程について概略的に示すものである。
【0017】
本実施形態のボトル型アルミ缶では、図1(A)に示すように、大径円筒状の胴部2から上方に、縦断面が円弧状となるドーム状曲面の肩部3を介して、小径円筒状の口頸部4が一体的に形成され、胴部2の外面には所望の文字や装飾模様等による印刷デザインが施され、胴部2の下端開口部は、別体で金属製の底蓋5を巻き締め固着することで密閉されていて、ネジが形成された口頸部4には、別部品のキャップ(図示せず)が螺合によって取り外し可能なように冠着されることとなる。
【0018】
そのようなボトル型アルミ缶1の缶体(底蓋5を除く一体成形部分)を製造する材料となる金属板材は、図1(B)に示すように、アルミニウム合金板11の両面に保護被膜となる熱可塑性樹脂フィルム12が接着剤層13を介してラミネートされている樹脂被覆アルミニウム合金板10であって、このような樹脂被覆アルミニウム合金板10から缶体を一体成形するのに際して、予め、その両面で熱可塑性樹脂フィルム12の上から、ノルマルブチルステアレート,流動パラフィン,ペトロラタム,ポリエチレンワックス,食用油,水添食用油,パーム油,合成パラフィン,セバシン酸ジオクチル等の一種類又は二種類以上を潤滑剤として塗布しておく。
【0019】
そして、そのような潤滑剤が塗布された樹脂被覆アルミニウム合金板10を材料として、図2に示すように、先ず、カップ成形工程で、樹脂被覆アルミニウム合金板を円板状に打ち抜いたブランクを絞り加工してカップ形状に成形してから、次の缶胴成形工程で、このカップに対して少なくとも一回以上の再絞り加工(同時に曲げ伸ばし加工を行っても良い)としごき加工を行って胴部が小径で薄肉化された有底円筒状の缶に成形する。
【0020】
次いで、トップドーム成形工程において、有底円筒状の缶の缶底側を口頸部と肩部に成形するために、先ず、その1工程目で、DI缶の缶底コーナー部(底部及び底部近傍の胴部)を縦断面が円弧状の肩部下部の曲面なる曲面に成形すると共に、小径の有底円筒部を絞り成形し、2〜3工程目で、その缶底側に対して絞り加工を複数回行うことにより有底円筒部の径を口頸部の径と略同じになるまで縮径してから、4工程目で、そのような絞り加工の繰り返しにより当初の肩部下部曲面に続いて形成された肩部の部分を連続した滑らかな曲面に再成形(リフォーム)した後、5工程目と6工程目で、口頸部と略同じ径に成形された有底円筒部に2回の口絞り成形を施す。
【0021】
次いで、トップドーム成形工程で缶底側を未開口の口頸部と肩部に成形した缶について、潤滑剤除去工程で、缶の少なくとも外面から潤滑剤を除去し、トリミング工程で、口頸部とは反対側の胴部の開口端側をトリミングして缶を所定の長さにした後、印刷・塗装工程で、口頸部とは反対側の端部が開放された円筒状の胴部に対して、通常の2ピース缶の円筒状の胴部に対する印刷・塗装の場合と同様に、先ず缶外面に所望のデザイン(文字や装飾模様等)を印刷してから、印刷が施された缶外面を保護するための透明な硬化型塗料(クリアー塗料)をトップコートとして胴部の外面に塗布する。
【0022】
次いで、乾燥工程で、印刷インキ層やトップコート層を充分に乾燥させ、その後、ラミネートされている熱可塑性樹脂フィルムを、その結晶融解温度以上に加熱溶融させてから、8秒以内に160℃まで冷却することで非晶質化させた後、ネジ・カール成形工程において、先ず、未開口の口頸部の先端閉鎖部をトリミングすることで口頸部を開口させてから、その開口端部を外巻きで環状のカール部に成形し、その円筒状周壁にキャップ螺合用のネジを成形し、ネジ形成部分の下方にビード部を形成する。
【0023】
そして、ネック・フランジ成形工程で、口頸部とは反対側の胴部下端開口端部に対してネックイン加工とフランジ加工を順次施した後、図示していない底蓋巻締工程において、シーマー(缶蓋巻締機)により、金属板材からなる別部材の底蓋を、胴部の下端開口部に形成されたフランジ部に二重巻き締め法により一体的に固着することで、図1(A)に示したボトル型アルミ缶が完成する。
【0024】
上記のように製造されるボトル型アルミ缶1において、本実施形態では、缶体の材料となる樹脂被覆アルミニウム合金板10の缶外面となる側で、保護被膜となる透明な熱可塑性樹脂層12をアルミニウム合金板11にラミネートするための接着剤層13に対して、接着剤の樹脂固形分に対して1.5〜20重量%の割合となるように有彩色の着色顔料による着色剤を含有させており、また、そのような樹脂被覆アルミニウム合金板10のブランクを絞り加工によりカップ形状に成形し、更に、絞り・しごき加工により有底円筒状の缶に成形することで、胴部2の大部分の壁厚を元の樹脂被覆アルミニウム合金板10の板厚から40%以上の薄肉化率で薄肉化している。なお、薄肉化率(%)は、〔(元板厚−胴壁厚)/元板厚〕×100によるものである。
【0025】
すなわち、缶体の材料となる樹脂被覆アルミニウム合金板10では、図1(B)に示すように、基材となるアルミニウム合金板11(例えば、表面にリン酸クロメート処理やリン酸ジルコニウム処理等の化成処理が施された厚さが0.24mmから0.38mmのアルミニウム合金板等)の両面に、保護被膜となる透明な熱可塑性樹脂のフィルム12を接着剤層13を介してラミネートしているが、そのような樹脂被覆アルミニウム合金板10の一方の面(缶外面となる側の面)において、アルミニウム合金板11と樹脂フィルム12を接着する接着剤層13に、赤色,黄色,青色,緑色等の有彩色の着色顔料を含有させている。
【0026】
なお、アルミニウム合金板11の両面にラミネートする樹脂フィルム12の熱可塑性樹脂については、例えば、ポリプロピレン,エチレン−プロピレン,変性プロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,エチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体,エチレンテレフタレート/アジペート共重合体,ブチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体,エチレンナフタレート/テレフタレート共重合体等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ナイロン樹脂、及びそれらの2種類以上の混合樹脂を好適に使用することができる。
【0027】
アルミニウム合金板11と樹脂フィルム12を接着させる接着剤層13の接着剤については、樹脂フィルムおよび金属板表面と熱接着性の良好なものが使用可能であり、熱硬化型接着剤や紫外線硬化型接着剤や電子硬化型接着剤のような硬化型接着剤、或いは、熱接着性の良好な熱可塑性樹脂が好適に使用できる。具体的には、例えば、エポキシ−フェノール系樹脂接着剤,エポキシ−ポリアミド系樹脂接着剤、エポキシ−ユリア系樹脂接着剤,エポキシ−アミノ系樹脂接着剤,ポリウレタン系樹脂接着剤,共重合ポリエステル−エレタン系樹脂接着剤,コポリアミド系樹脂接着剤,ポリエステル系樹脂接着剤等の熱硬化型又は電子線硬化型接着剤、或いは、熱可塑性樹脂フィルムとの接着性が良い熱可塑性樹脂接着剤(変性ポリオレフィン系樹脂、共重合ポリエステル系樹脂)が使用できる。なお、缶内面となる側の接着剤層13は、必ず設けなくてはならないものではなく、樹脂フィルム12が金属板表面と熱接着性が良好でない場合や、缶内容物が腐食性の強いものである場合に設ければ良いものである。
【0028】
上記のような接着剤による接着剤層13について、本実施形態では、缶外面となる側で(少なくとも缶外面となる側で)、有彩色の着色顔料を混合して含有させているが、この着色顔料としては、ベンガラ,鉛丹,カドミウムレッド,アンチモン朱,ナフトールレッド,パーマネントレッド等の赤色顔料、群青,紺青,コバルト青,セルリアンブルー,銅フタロシアニンブルー,アルカリブルーレーキー等の青色顔料、黄鉛,亜鉛黄,チタン黄,クロム酸バリウム,カドミニウムイエロー,黄色酸化鉄,縮合アゾ系顔料,ハンザイエロー等の黄色顔料、クロムグリーン,ジンクグリーン,酸化クロム,ピリジアン,エメラルドグリーン,コバルトグリーン,ピグメントグリーンB,フタロシアニングリーン等の緑色顔料が使用できる。
【0029】
また、上記のような顔料を単独で使用する場合の他に、異なる色の2種類以上の顔料を混合して特定の色を作ることもでき、中間色を出すために2種類以上混合して使用する(例えば、黄色顔料と青色顔料とを混合すると緑色が得られ、黄色顔料と緑色顔料とを混合すると黄緑色が得られ、赤色顔料と黄色顔料とを混合すると橙色が得られる。)ことも可能であって、さらには、少し白味がかった色にするために、有彩色の着色顔料の使用量の半分以下の量ならば、白色顔料と一緒に使用しても良い。
【0030】
上記のような着色顔料の接着剤への混合量については、接着剤の樹脂固形分に対して1.5〜20重量%の範囲内(複数の顔料を混合して使用する場合には、複数の顔料の合計量がこの範囲内)としており、この範囲内であれば、肩部(及び口頸部)において充分な着色装飾の効果が得られると共に、胴部においても、胴部の大部分が元の板厚から40%以上の薄肉化率で薄肉化されていることと関連して、印刷下地として印刷デザインに悪影響を与える(印刷下地の上に施される類似色の印刷インキの鮮明度を低下させる)ようなこともなく、むしろ、印刷デザインと調和した今までにない装飾効果が得られる。
【0031】
すなわち、印刷下地については、印刷で多く使用するインキの色と同系色の色に薄く着色した場合には、装飾全体に統一感を与え、また装飾全体に上品さを与えることができ、一方、印刷で多く使用するインキの色と反対色(補色)に着色した場合には、多く使用されている印刷インキの色を強調する役目を果たして、印刷の鮮明度又はアイキャッチ性を高める効果を得ることができる。
【0032】
なお、着色顔料の樹脂固形分に対する混合量が1.5重量%未満であると、着色の程度が薄すぎて肩部での装飾効果が殆ど感じられなくなり、一方、混合量が20重量%を越えると、樹脂フィルムに接着剤を塗装する時の塗装性が悪くなり、しかも、接着剤の塗装により着色された樹脂フィルムの色が濃すぎて、薄肉化加工により40%以上の薄肉化率になっている胴部でさえも色が濃すぎることとなり、その上に施される印刷デザインの類似色の印刷インキの鮮明度を減殺させるので、印刷デザインによる装飾効果を大幅に低下させてしまうことになって好ましくない。
【0033】
もっとも、着色顔料の色の違いによって好ましい混合量は若干異なるものであって、赤色顔料や青色顔料のような強い色の場合には、1.5〜6重量%の範囲が好ましく、特に、2〜4重量%の範囲が好適であり、一方、緑色顔料や黄色顔料の場合には、5〜20重量%の範囲が好ましく、特に、10〜15重量%の範囲が好適である。
【0034】
上記のように着色顔料を含有する接着剤層13の厚さについては、硬化型接着剤の場合、塗装性と装飾効果(着色性)とを満足させるという観点から、乾燥後の膜厚が1.0〜2.0μmとなることが好ましい。なお、接着剤層として熱接着性の良好な熱可塑性樹脂を使用する場合には、保護被膜となる透明な熱可塑性樹脂フィルムと共に同時に押し出して二層フィルムに製膜するのが良く、その場合の接着剤層の厚さは、2〜6μmが製膜性と装飾効果(着色性)の観点から好ましい。
【0035】
上記のように着色顔料を混合した接着剤を塗布することで接着剤層が形成されて着色された樹脂フィルムの具体例として、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂とを6:4の混合割合で混合した樹脂から製膜した厚さ20μmの二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムと、エポキシ樹脂とフェノール樹脂とを95:5の重量割合で混合したエポキシ−フェノール系樹脂接着剤(熱硬化性接着剤)とを使用した各具体例を以下に述べる。
【0036】
エポキシ−フェノール系樹脂接着剤の樹脂固形分当たり、3重量%のナフトールレッド(赤色顔料)を混合して赤色接着剤を製造し、この接着剤を、周知のグラビア塗装ロールにより、厚さ20μmで透明な二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムの上に、乾燥膜厚が1.5μmに成るように塗装したのち、温風により乾燥させて、接着剤層により赤色に着色された状態の樹脂フィルムを製造した。
【0037】
エポキシ−フェノール系樹脂接着剤の樹脂固形分当たり、3重量%の銅フタロシアニンブルー(青色顔料)を混合して青色接着剤を製造し、この接着剤を、グラビア塗装ロールにより、厚さ20μmで透明な二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムの上に、乾燥膜厚が1.5μmに成るように塗装したのち、温風により乾燥させて、接着剤層により青色に着色された状態の樹脂フィルムを製造した。
【0038】
エポキシ−フェノール系樹脂接着剤の樹脂固形分当たり、12重量%の縮合アゾ系顔料(黄色顔料)を混合して黄色の接着剤を製造し、この接着剤を、グラビア塗装ロールにより、厚さ20μmで透明な二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムの上に、乾燥膜厚が1.5μmに成るように塗装したのち、温風により乾燥させて、接着剤層により黄色に着色された状態の樹脂フィルムを製造した。
【0039】
エポキシ−フェノール系樹脂接着剤の樹脂固形分当たり、9重量%の縮合アゾ系顔料(黄色顔料)と3重量%の銅フタロシアニンブルー(青色顔料)を混合して緑色接着剤を製造し、この接着剤を、グラビア塗装ロールにより、厚さ20μmで透明な二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムの上に、乾燥膜厚が1.5μmに成るように塗装したのち、温風により乾燥させて、接着剤層により緑色に着色された状態の樹脂フィルムを製造した。
【0040】
上記の各具体例に示したような透明な樹脂フィルムに対して着色顔料を含む接着剤が塗布されたことで着色された状態となっている樹脂フィルムは、予め200〜210℃に加熱されたアルミニウム合金板の一方の面(缶外面となる側の面)に対して、接着剤層をアルミニウム合金板にロールにより接触させて押し付けることで、缶外面側の保護被膜としてアルミニウム合金板に熱接着でラミネートされる(同時にアルミニウム合金板の他方の面には着色顔料を含まない接着剤が塗布されている透明な樹脂フィルムがロールにより押し付けられてラミネートされる)。
【0041】
そして、その後、周知の加熱オーブンで260〜280℃に加熱されてから、加熱オーブンの次に設けられている空冷ゾーンにおいて冷風が吹き付けられることで、アルミニウム合金板の両面にラミネートされた樹脂フィルムは、二軸延伸の状態から溶融された後で急冷されることにより、その後の樹脂被覆アルミニウム合金板の成形加工に先立って予め非晶質化されることとなる。
そのように製造された上記4種類の着色樹脂被覆アルミニウム合金板から、図2に示す加工工程により、印刷する前のボトル型アルミ缶の缶体を成形した。この缶体の円筒状の胴部の領域のうち、約49.7%が薄肉化率59.3%で、約18.6%が薄肉化率53.7%で、約24.3%が薄肉化率43.8%で、残りの部分が薄肉化率40%未満であった。
【0042】
上記のように缶外面側で保護被膜となる透明な樹脂フィルムが着色顔料を含む接着剤層を介してラミネートされた樹脂被覆アルミニウム合金板から製造される本実施形態のボトル型アルミ缶によれば、缶の外面側でアルミニウム合金板と保護被膜の樹脂フィルムとを接着している接着剤層に、接着剤の樹脂固形分に対して1.5〜20重量%の割合で有彩色の着色顔料を含有させていることにより、印刷デザインが施されない肩部では、透明性のある有彩色に着色された光沢のある地色となって、単なる金属地色(銀色)や白色と比べて装飾効果の高い外観を得ることができる。
【0043】
一方、印刷デザインが施される胴部では、胴部の大部分(92%以上)の壁厚が元の板厚(アルミニウム合金板と両面の樹脂フィルム及び接着剤層の厚さの合計)から40%以上の高い薄肉化率(40%台の薄肉化率が胴部の約24%を占め、50%台の薄肉化率が胴部の約68%を占める)となるように薄肉化され、それに応じて樹脂フィルムや接着剤層の厚さも薄くなっていて、その結果、接着剤層には肩部と同じ割合で着色顔料が含有されていても、接着剤層の厚さが肩部よりも薄くなっている分だけ、印刷下地となる地色の着色程度が肩部と比べて大幅に低下している(胴部の薄肉化に伴って着色度合いが薄くなっている)ため、その上に施される類似色の印刷インキの鮮明度がそれ程低下することはなく、むしろ、薄い着色層を透して地金の銀色が見える金属光沢色の面白味のある印刷下地となるため、印刷下地の着色によって印刷デザインの装飾効果が減殺されるようなことはない。
【0044】
すなわち、着色顔料を含む接着剤層を介して透明な樹脂フィルムが缶外面側にラミネートされた樹脂被覆アルミニウム合金板から製造されたボトル型アルミ缶の胴部では、例えば、着色顔料が赤色の場合には、薄いピンク色になって、果汁飲料やカクテルを充填する缶のイメージに合った外観となり、また、着色顔料が青色の場合には、薄い水色になって、サイダーやラムネ等の炭酸飲料のイメージに合致した外観となり、更に、着色顔料が黄色の場合には、色が濃いと黄金色になって、コーヒーやお茶やお酒等の高級飲料を充填する缶のイメージを表現するのに合った外観となり、色が薄いと薄黄色になって、柑橘系の果汁飲料やお酒やビタミンCを多く含む炭酸飲料を充填する缶のイメージに合った外観となり、更にまた、着色顔料が緑色の場合には、薄い緑色になって、緑茶や混合茶や緑色の野菜ジュースを充填する缶のイメージを表現するのに合致した外観となる。
【0045】
また、本実施形態のボトル型アルミ缶では、有彩色の着色顔料を、保護被膜である樹脂フィルム自体(熱可塑性樹脂層)にではなく、それをアルミニウム合金板にラミネートさせるための接着剤層に含有させていることで、樹脂被覆アルミニウム合金板から缶体を成形する工程において、顔料の添加に起因するフィルム強度の低下によってフィルムが傷付けられるのを防止することができ、また、フィルムに含まれた顔料により製缶工具(特にダイス)の摩耗が促進されるのを防止することができる。
【0046】
以上、本発明の色彩を帯びたボトル型アルミ缶の一実施形態について説明したが、本発明は、上記のような実施形態に限られるものではなく、例えば、アルミニウム合金板への保護被膜(熱可塑性樹脂層)のラミネートについては、予め製膜した樹脂フィルムに接着剤を塗布しておき、この樹脂フィルムの接着剤層を予熱した金属板上に押し付けるような方法に限らず、予め金属板に接着剤を塗布しておき、Tダイから溶融した熱可塑性樹脂を金属板の接着剤層の上に押出して熱接着するような方法でも良く、また、円筒状の胴部への印刷・塗装については、胴部の外面に印刷と塗装を順次施してから乾燥するような方法に限らず、予め印刷インキ層やトップコート層が形成された印刷済み樹脂フィルムを胴部に熱貼着するような方法でも良く、さらに、ボトル型アルミ缶の肩部の形状についても、ドーム状曲面に限らず、円錐台形状や階段形状の傾斜面としても良い等、適宜設計変更可能なものであることは言うまでもない。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したような本発明の色彩を帯びたボトル型アルミ缶によれば、印刷デザインが施されない肩部において、透明性のある有彩色に着色された光沢のある地色にすることで、装飾効果の高い外観を得ることができると共に、印刷デザインが施される胴部でも、薄い着色層を透して地金の銀色が見える金属光沢色の印刷下地にすることで、地色の上に施される類似色の印刷インキの鮮明度をそれ程低下させることはなく、むしろ、面白味のある印刷下地とすることができて、印刷下地の着色により印刷デザインの装飾効果が減殺されるのを防止することができる。しかも、有彩色の着色顔料を使用しているにもかかわらず、缶体の成形工程で、顔料によりフィルム強度が低下してフィルムが傷付けられるようなことはなく、顔料により製缶工具の摩耗が促進されるようなこともない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るボトル型アルミ缶について、(A)ボトル型アルミ缶の外観形状を示す側面図,および(B)缶体の材料となる樹脂被覆アルミニウム合金板の積層構造を示す断面図。
【図2】ボトル型アルミ缶を製造するための製造工程の一例を概略的に示す説明図。
【符号の説明】
1 ボトル型アルミ缶
2 胴部
3 肩部
4 口頸部
5 底蓋
10 樹脂被覆アルミニウム合金板
11 アルミニウム合金板
12 熱可塑性樹脂層(熱可塑性樹脂フィルム)
13 接着剤層
Claims (2)
- 予めアルミニウム合金板の両面が保護被膜となる熱可塑性樹脂層で被覆された樹脂被覆アルミニウム合金板を材料として、胴部が薄肉化された有底円筒缶の缶底側が小径の口頸部と傾斜した肩部となるように一体成形されて、その胴部に印刷デザインが施されているボトル型アルミ缶において、少なくとも缶の外面側で、保護被膜となる透明な熱可塑性樹脂層が、有彩色の着色顔料を樹脂固形分に対して1.5〜20重量%の割合で含有する接着剤層を介して、アルミニウム合金板にラミネートされていると共に、缶の胴部の大部分が元の板厚から40%以上の薄肉化率で薄肉化されていることにより、缶の胴部の大部分が、薄くなった接着剤層からなる着色層を透して地金の銀色が見える金属光沢色の印刷下地になっていることを特徴とする色彩を帯びたボトル型アルミ缶。
- 接着剤層に含有される着色顔料が、赤色,黄色,青色,緑色の何れかの顔料であって、接着剤の樹脂固形分に対する着色顔料の混合量が、赤色顔料の場合には1.5〜6重量%、黄色顔料の場合には5〜20重量%、青色顔料の場合には1.5〜6重量%、緑色顔料の場合には5〜20重量%であることを特徴とする請求項1に記載の色彩を帯びたボトル型アルミ缶。
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