JP4609872B2 - 印刷済みフィルム貼着缶体の製造方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、缶体の胴部外面側に印刷済みの樹脂フィルムが貼着された印刷済みフィルム貼着缶体を製造するための方法に関し、特に、内外両面が熱可塑性樹脂の保護被膜により被覆されている缶体に対して、加熱された缶体の胴部外面側に印刷済みの樹脂フィルムを接着剤層を介して貼着するようにした印刷済みフィルム貼着缶体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
板状の缶胴用のブランクに対して予め文字や図柄の印刷を施している3ピース缶では、グラビア印刷やオフセット印刷による重ね刷り印刷等の適宜の印刷方法が適用可能であるのに対して、胴部と底部が一体成形された2ピース缶では、有底円筒状に成形された缶体(2ピース缶の缶本体)の胴部に対して印刷を施すため、グラビア印刷やオフセット印刷による重ね刷り印刷が事実上できないことから、従来から一般的にドライオフセット印刷が適用されているが、この印刷方法では、異なる色のインキによる重ね刷りが事実上できず、その色数や色調に限界があるため、缶内に充填する食品等の実物の外観を微妙な色合いの変化までも忠実に再現した写実的印刷や多色インキを使用した豪華でしかも上品な装飾印刷を施すことが不可能である。
【0003】
しかしながら、2ピース缶による缶詰製品についても、消費動向やニーズの変化による製品の多様化によって一層美麗な外観が要求されており、そのために、例えば、特開平9−295639号公報や特開平11−147515号公報等にも記載されているように、缶体の胴部外面に直接印刷するのではなく、二軸配向されたポリエステル樹脂フィルム等の熱可塑性樹脂フィルムに対して、予めグラビア印刷方法により美麗な多色印刷の文字や図柄を施しておくと共に、この印刷済み樹脂フィルムの内面側(缶の胴部外面に接触する側の面)に熱硬化性樹脂の接着剤層を形成しておいて、この印刷済み樹脂フィルムをその接着剤層を介して缶体の胴部外面側に熱接着法で貼着することにより、2ピース缶の缶体の胴部外面に対してグラビア印刷等による文字や図柄の印刷デザインを付与するということが従来から提案されており、実際に商業生産もされている。
【0004】
一方、従来から缶体の金属面に保護被膜として塗装される塗料として広く使用されていた熱硬化性のエポキシ樹脂やフェノール樹脂の原料であるビスフェノールAが、近年、人体内に入るとホルモンと同様に作用して生殖能力に悪影響を与えるという学説が発表されて問題になっていることから、ビスフェノールAを含まないポリエステル樹脂,ポリプロピレン樹脂,ポリエチレン樹脂,ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂の保護被膜を金属板の一方の面(缶内面側の金属面)又は両面にラミネートして、この被覆金属板から2ピース缶の缶本体(胴部と底部)や3ピース缶の缶胴(メガネ缶)及び缶蓋(天蓋や底蓋)を製造することが提案され、実際に、ポリエステル樹脂の被膜(フィルム)を両面にラミネートした電解クロム酸処理鋼板から2ピース缶の缶体(缶本体)が製造されている。
【0005】
しかしながら、ポリエステル樹脂やポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂の保護被膜を金属板の一方の面(缶内面側となる金属面)にだけを被覆してから、絞り加工によりカップに成形した後、再絞り加工を施して深絞り缶に成形したり、再絞り加工してから更にしごき加工を施して絞りしごき缶に成形するような場合には、金属板の他方の面(缶外面側となる金属面)に対して多量の潤滑剤を塗布又は吹き付けながら再絞り加工又はしごき加工する必要があって、そうしないと、再絞り加工やしごき加工をする際に、金属板の成形加工により熱が発生することで、カップが再絞りダイスやしごきダイスに焼き付いたり、カップの胴部が傷付いたり破断したりして、連続して缶の成形ができなくなってしまうという問題が起きる。
【0006】
そのため、金属板の缶内面側となる金属面だけを熱可塑性樹脂の保護被膜で被覆して反対側の金属面に熱可塑性樹脂の保護被膜を被覆しない場合には、金属板の両面を熱可塑性樹脂の保護被膜で被覆した場合と比べて、多量に潤滑剤を使用することとなり、その潤滑剤を脱脂処理し、化成処理し、水洗処理する工程が必要となることから多量の洗浄水も必要となって、しかも、後で直接印刷や印刷済み樹脂フィルムの貼着等による文字や図柄が施されることのない缶体の底部には、保護被膜として熱硬化性樹脂等の塗料を改めてスプレー塗装することが必要となる(保護被膜を塗装しておかないと缶体や缶詰製品の保管中に底部の金属面が腐食する虞がある)。
【0007】
これに対して、金属板の両面が熱可塑性樹脂の保護被膜で被覆された被覆金属板を使用して、絞りしごき加工や深絞り加工により缶体(シームレス金属缶)を成形すると共に、そのように成形された缶体の胴部外面側に対して、予めグラビア印刷により美麗な印刷デザインが施された印刷済み樹脂フィルムを熱接着により貼着するということが、例えば、特開2000−177745号公報等により従来から公知となっている。
【0008】
すなわち、アルミニウム合金板の両面を熱可塑性の共重合ポリエステル樹脂フィルムで被覆した被覆金属板に対して、高温揮発性の潤滑剤(グラマーワックス)を均一に塗布してから、例えば、同時絞りしごき加工と同時薄肉化絞りしごき加工等を行って、深絞りカップを成形した後、常法にしたがってドーミング成形をしてから、深絞りカップを熱処理して、フィルムの加工歪みを取り除くと共にワックスを揮発させて除去することにより、印刷済み樹脂フィルムを貼着する前の缶体を製造する、ということが上記の公報中に開示されている。
【0009】
そのように金属板の両面が熱可塑性樹脂の保護被膜で被覆された被覆金属板から缶体を一体成形すれば、成形加工時に潤滑剤の使用量を抑えることができ、成形後に潤滑剤を除去するために多量の洗浄水を使用する必要がなく、また、有底円筒状の缶体(深絞りカップ)に成形した後で缶内面側と缶外面側に保護被膜をスプレー塗装する必要がなく、しかも、缶内容物と接触する缶内面側の保護被膜にはビスフェノールAを含まない熱可塑性樹脂である共重合ポリエステル樹脂を使用しているので、缶詰の保管時に缶内容物中にビスフェノールAが溶出する虞がないという利点がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のように両面が熱可塑性樹脂の保護被膜で被覆された被覆金属板から一体成形された缶体(シームレス金属缶)の胴部外面に印刷済みの樹脂フィルムを貼着する際には、印刷済み樹脂フィルムに形成された接着剤層の熱接着温度以上の温度となるように、高周波誘導加熱等によって予め缶体を加熱しておき、フィルム貼着装置のマンドレルに冠着させた缶体に対して、一缶分毎の大きさのシートに切断された印刷済み樹脂フィルムを、その接着剤層の側が缶体の胴部外面に接触するように貼着ロールにより押圧することで熱接着させて貼着している。
【0011】
そのように印刷済み樹脂フィルムが貼着された缶体は、通常、その後で開口端部の側を一段以上縮径するネックイン加工を受け、更にフランジ加工を受けることから、多数の缶体の中にはそれらの加工中に印刷済み樹脂フィルムが缶体の金属面から剥離するものがでる虞があるのに対して、そのような剥離が起きない程度に印刷済み樹脂フィルムと缶体の接着性を充分に確保できるように、従来は、印刷済み樹脂フィルムを貼着する前の缶体の温度(缶体の胴部外面の温度)が好ましくは170〜210℃となるように加熱している。
【0012】
しかしながら、本発明者による研究の結果、そのように缶体を170〜210℃の温度に加熱した状態で印刷済み樹脂フィルムを貼着した場合、以下に述べるような問題のあることが判明した。
すなわち、印刷済み樹脂フィルムを貼着する際に、缶体が比較的高い温度(170〜210℃)に加熱されて、缶内面側を被覆する熱可塑性樹脂の保護被膜が軟化した状態となることによって、フィルム貼着時に缶体に加えられる押圧力により缶体がフィルム貼着装置のマンドレルに強く押圧されることで、缶内面側を被覆する保護被膜の熱可塑性樹脂が白く変色するように傷付いて耐内容物性が悪化するという問題や、フィルム貼着装置のマンドレルと缶内面側の熱可塑性樹脂とが粘着して缶体がマンドレルから外れ難くなることで、その都度フィルム貼着装置を停止させる必要が生じて生産効率が悪化するという問題のあることが判った。
【0013】
本発明は、上記のような問題の解消を課題とするものであり、具体的には、内外両面が熱可塑性樹脂の保護被膜で被覆されている缶体の胴部外面側に印刷済み樹脂フィルムを貼着するに際して、缶内面側を被覆する熱可塑性樹脂の保護被膜の耐内容物性が悪化したり、フィルム貼着装置のマンドレルから缶体が外れ難くなって生産効率が悪化したりすることがなく、しかも、その後の加工時において印刷済み樹脂フィルムが缶体から剥離しないようにすることを課題とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記のような課題を解決するために、内外両面が熱可塑性樹脂の保護被膜で被覆されている缶体に対して、加熱された缶体の胴部外面側に印刷済みの樹脂フィルムを接着剤層を介して貼着するようにした印刷済みフィルム貼着缶体の製造方法において、缶内面側の保護被膜として、粘着開始温度が170℃以上の熱可塑性樹脂を使用し、印刷済み樹脂フィルムの接着剤層として、缶外面側の保護被膜の熱可塑性樹脂と100〜160℃で熱接着可能な樹脂を使用し、印刷済み樹脂フィルムを缶体の胴部外面側に貼着する際に、缶体の胴部外面の温度を100〜160℃にすると共に、印刷済み樹脂フィルムが貼着された後の缶体を、印刷済み樹脂フィルムの接着剤層の活性化温度以上の加熱温度で後加熱処理するようにしたことを特徴とするものである。
【0015】
なお、熱可塑性樹脂の粘着開始温度(軟化開始温度)については、加熱した金属板に熱可塑性樹脂フィルムを接触させながら一対の押圧ロールにより狭圧して、40kg/cmの線圧をかけながら、100m/分の速度で貼り付けるということを、金属板の加熱温度を少しずつ変えて行ってから、得られた各サンプルについて、熱可塑性樹脂フィルム貼着金属板から熱可塑性樹脂フィルムを剥離する剥離試験を行って、その剥離強度(Tピール強度)を測定し、1kg/cm2 以上の強度が得られた場合の金属板の加熱温度の最低温度を粘着開始温度としたものである。
【0016】
上記のような印刷済みフィルム貼着缶体の製造方法によれば、印刷済み樹脂フィルムを缶体の胴部外面側に貼着する際に、缶体の加熱によって缶内面側の保護被膜の熱可塑性樹脂が軟化することはないため、缶体がフィルム貼着装置のマンドレルに強く押圧されても缶内面側の保護被膜が白く変色して傷付くようなことはなく、また、フィルム貼着装置のマンドレルに缶内面側の保護被膜が粘着して缶体がマンドレルから外れ難くなるようなこともない。そして、印刷済み樹脂フィルムが貼着された後の缶体に対して、印刷済み樹脂フィルムの接着剤層の活性化温度以上の加熱温度で後加熱処理が行われることで、その後の加工時に印刷済み樹脂フィルムが缶体から剥離しないように両者の接着性が充分に確保されることとなる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の印刷済みフィルム貼着缶体の製造方法の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、図1は、印刷済みフィルム貼着缶体の(A)ネック・フランジ加工前と(B)ネック・フランジ加工後のそれぞれの状態の外観を示し、図2は、(A)被覆金属板と(B)印刷済み樹脂フィルムと(C)印刷済みフィルム貼着缶体の胴部とにおけるそれぞれの断面積層構造を示すものである。なお、図面に示されている各部分の寸法については実際のものと関係なく単に模式的に示したものである。
【0018】
本実施形態の方法により製造される印刷済みフィルム貼着缶体は、2ピース缶の缶本体(缶蓋を除く部分)となるものであり、図1(A)に示すように、深絞り加工や絞りしごき加工により胴部2と底部3が一体成形された有底円筒状から、ネック・フランジ加工(ネックイン加工とフランジ加工)が施されることで、図1(B)に示すように、円筒状の胴部2の上端付近がネック部4に縮径化され、更に、ネック部4の上端にフランジ部5が形成されるものであって、ネック・フランジ加工が施された後の缶体の上端開口部は、図示していないが、内容物の充填後に缶蓋(イージーオープンエンド)がフランジ部5に巻締め固着されることで密閉されることとなる。
【0019】
そのような印刷済みフィルム貼着缶体1は、図2(A)に示すような金属板11の両面が熱可塑性樹脂の保護被膜12,13で覆われた被覆金属板10を材料として、深絞り加工や絞りしごき加工により有底円筒状の缶体を一体成形して、図2(B)に示すようなトップコート層21,熱可塑性樹脂フィルム層22,印刷インキ層23,接着剤層24の各層を有する印刷済み樹脂フィルム20を、その接着剤層24を介した熱接着により、図1(A)に示すように、有底円筒状に一体成形した缶体の胴部に貼着してから、その後のネック・フランジ加工により、図1(B)に示すように、缶体の上端開口部にネック部4とフランジ部5を形成したものであって、印刷済みフィルム貼着缶体1の胴部2では、図2(C)に示すように、金属板(薄肉化されて胴部の形状に成形された金属板)11の両面が熱可塑性樹脂の保護被膜12,13で被覆された缶体1Aの外面側で、保護被膜13の上から印刷済み樹脂フィルム20が貼着された状態となっている。
【0020】
被覆金属板10の基材である金属板11については、従来から2ピース缶で使用されている製缶用の金属板、即ち、アルミニウム板やアルミニウム合金板、ニッケルメッキ鋼板,錫メッキ鋼板,極薄錫メッキ鋼板,電解クロム酸処理鋼板,亜鉛メッキ鋼板等のような硬化性樹脂や熱可塑性樹脂との密着性に富むような表面処理が施された表面処理鋼板であれば適宜選択的に使用することができる。
【0021】
そのような基材の金属板11の両面(缶内面側と缶外面側)にそれぞれ保護被膜12,13として被覆される熱可塑性樹脂としては、ビスフェノールAを含有していない樹脂で、一定の耐加工性と耐熱性と耐水性と耐気体透過性等を備えている樹脂であれば、特に限定されるものではないが、入手のし易さやコストを考慮すると、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,エチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体,エチレンテレフタレート/アジペート共重合体,ブチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体,エチレンナフタレート/テレフタレート共重合体等のポリエステル樹脂、ポリエチレン,ポリプロピレン,エチレン/プロピレン共重合体,変性オレフィン等のポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、及びそれらの2種類以上の混合樹脂等が好適である。
【0022】
金属板11の両面の保護被膜12,13のそれぞれについては、同一の熱可塑性樹脂を使用しても良いが、両面にそれぞれ異なる熱可塑性樹脂を使用しても良く、また、熱可塑性樹脂の保護被膜12,13の態様としては、単層によるものだけでなく、異種の樹脂を組み合わせた複層構成にしても良いが、何れにしても、印刷済み樹脂フィルム20を缶体に貼着するときに、フィルム貼着装置のマンドレルに押圧されて傷付いたり、マンドレルに粘着して缶体をマンドレルから取り外し難くしないために、少なくとも缶体内面側の保護被膜12については、粘着開始温度が170℃以上の熱可塑性樹脂を使用することが必要である。
【0023】
なお、熱可塑性樹脂の保護被膜12,13を金属板11に被覆する方法としては、熱可塑性樹脂のフィルムを予め加熱した金属板に直接ラミネートする方法、予め加熱した金属板上に軟化した熱可塑性樹脂をTダイから押し出してラミネートする方法、熱可塑性樹脂のフィルムに接着剤層を形成しておき、これを予め加熱した金属板にラミネートする方法、金属板上に接着剤層を形成しておき、予め加熱した金属板上にTダイから熱可塑性樹脂を押し出してラミネートする方法等の適宜の方法を採用することができる。更にまた、下層が低融点で上層が高融点の二層構成の熱可塑性樹脂フィルムを予め加熱した金属板に直接ラミネートする方法も採用することができる。
【0024】
なお、金属板11と熱可塑性樹脂の保護被膜12,13を接着剤層を介してラミネートする場合の接着剤としては、ポリエステル系接着剤,メラミン系接着剤,ポリウレタン系接着剤,エポキシ樹脂系接着剤,コポリアミド樹脂系接着剤,コポリエステル樹脂系接着剤,酸変性オレフィン樹脂系接着剤等が使用でき、特に、エポキシ−フェノール系接着剤,エポキシ−アミノ系接着剤,エポキシ−アクリル系接着剤,エポキシ−ポリエステル−アミノ系接着剤,エポキシ−ポリエステル−メラミン系接着剤,エポキシ−ポリエステル−フェノール系接着剤等が好適である。
【0025】
被覆金属板10から一体成形された缶体1Aの胴部外面側に貼着される印刷済み樹脂フィルム20については、図2(B)に示すように、トップコート層21,熱可塑性樹脂フィルム層22,印刷インキ層23,接着剤層24からなる積層フィルムを使用しており、基材となる熱可塑性樹脂フィルム層22に対して、トップコート層21とは反対側の面に印刷インキ層23を形成しているが、そのようなものに限らず、トップコート層21と同じ側の面に印刷インキ層23を形成して、印刷インキ層23の上をトップコート層21で覆うようにしても良い等、適宜の積層構造として実施することが可能である。
【0026】
印刷済み樹脂フィルム20の基材となる熱可塑性樹脂フィルム層22については、印刷インキ層23の保持部としての役割を担うものであり、印刷される文字や図柄の印刷仕上がり外観の鮮明性や艶やかさを確保する必要があることから、基本的には透明若しくは半透明のものを使用することが望ましく、また、缶体との間の接着強度を上げるために施される後加熱処理に耐えられる耐熱性を有することが必要であって、例えば、ポリプロピレン樹脂フィルム,ポリアミド(ナイロン)樹脂フィルム,ポリエステル樹脂フィルム等を使用できるが、特に、透明性や耐熱性の点からはポリエステル樹脂の配向結晶化した二軸延伸フィルムが最適である。
【0027】
熱可塑性樹脂フィルム層22に使用されるポリエステル樹脂として、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンイソフタレート(PEI),ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のホモポリマー樹脂や、エチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体,ブチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のコーポリマー樹脂や、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンイソフタレートのブレンド樹脂,ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートのブレンド樹脂等のブレンド樹脂といった種々のものがある。
【0028】
印刷済み樹脂フィルム20の最上層となるトップコート層21については、缶体の滑り性不足による樹脂フィルムの傷付き防止と、レトルト処理時の樹脂フィルムの物理的変化、即ち、結晶性の変化と含水による光学特性の変化を防止するために設けられるもので、何れにしても印刷仕上がり外観の確保を目的としたものであるため、滑り性や耐レトルト処理性が良いだけでなく、更に無色透明な皮膜層であることが必要である。
【0029】
そのようなトップコート層21としては、熱硬化性樹脂塗料,電子線硬化性樹脂塗料,紫外線硬化性樹脂塗料等を使用して、更に、滑り性をより向上させるためにシリコンやワックス等の滑性剤を添加する場合もある。トップコート層21として使用できる熱硬化性樹脂塗料としては、 エポキシ−アミノ樹脂,エポキシ−メラミン樹脂,ポリエステル−アミノ樹脂等のいわゆるクリアー塗料といったものがあり、電子線硬化性樹脂塗料としては、エポキシアクリレート樹脂,ポリエステルアクリレート樹脂,ポリウレタンアクリレート樹脂,ポリエーテルアクリレート樹脂等があり、それらの樹脂の単独だけでなく2種類以上の混合物も使用できる。
【0030】
また、紫外線硬化性樹脂塗料としては、上記の電子線硬化性樹脂塗料として挙げた樹脂に対して、2−ヒドロキシエチルアクリレート,テトラヒドロフルフリールアクリレート等の単官能モノマーや、ジシクロベンテニルアクリレート, 1・4−ブタンジールアクリレート等の二官能モノマーや、トリメチロールプロパントリアクリレート等の三官能モノマーなどを光重合希釈剤として1種又は2種以上混合したもの、 更には光重合開始剤としてアセトフェノン,ベンゾフェノン等の1種又は2種以上混合した塗料等が使用できる。
【0031】
熱可塑性樹脂フィルム層22の裏面側に形成される印刷インキ層23については、文字や図柄を印刷により施すものであるため特別制限するものではないが、熱硬化性のウレタン系樹脂をバインダーとするインキが一般的に使用されており、その印刷方法としては、グラビア印刷,フレキソ印刷,オフセット印刷等、各種の印刷方法を適宜選択可能であるが、色数を豊富に使って色調豊かで美麗な文字や図柄を印刷したい場合には、グラビア印刷法により印刷するのがよい。
【0032】
印刷インキ層23を覆うように印刷済み樹脂フィルム20の最下層に設けられる接着剤層24については、基本的には加圧および加熱により缶体の胴部外面側に容易に貼着できる接着剤によるもので、例えば、不飽和ポリエステル樹脂,イソシアネート樹脂,アミノ樹脂,ポリウレタン樹脂,エポキシ樹脂,アクリル樹脂等の熱硬化型接着剤を使用することができ、特に、ポリエステル−イソシアネート−アミノ系接着剤,ポリエステル−エポキシ−アミノ系接着剤,エポキシ−フェノール系接着剤,エポキシ−アミノ系接着剤が好適に使用できる。更には、電子線硬化型接着剤、熱硬化と電子線硬化の併用型接着剤等も使用できる。
【0033】
なお、印刷済み樹脂フィルム20の接着剤層24を形成する接着剤については、上記のような樹脂組成物のみの接着剤だけでなく、そのような樹脂組成物に対して更に酸化チタンや雲母等の無機顔料による白色顔料を添加した接着剤を使用することができ、また、そのような顔料だけでなく、染料,密着付与剤,アンチブロッキング剤等の添加物を含有させることもできる。
【0034】
しかしながら、何れにしても、印刷済み樹脂フィルム20を缶体に貼着するときに、缶内面側の保護被膜12の熱可塑性樹脂がフィルム貼着装置のマンドレルに押圧されて傷付いたりせず、また、保護被膜12がマンドレルに粘着して缶体がマンドレルから取り外し難くならないように、缶体の加熱温度を制限している関係上、印刷済み樹脂フィルム20の接着剤層24として使用する接着剤については、缶内面側の保護被膜12の熱可塑性樹脂の粘着開始温度よりも低い温度(100〜160℃)で接着可能な接着剤であることが必要である。
【0035】
上記のような各材料によって実施される本実施形態の印刷済みフィルム貼着缶体の製造方法について以下に説明すると、先ず、製缶用の金属板材となる被覆金属板として、帯状の金属板の両面(缶内面側と缶外面側)にそれぞれ熱可塑性樹脂のフィルムをラミネートしておくことで、図2(A)に示すように、金属板11の両面が熱可塑性樹脂の保護被膜12,13で被覆された被覆金属板10の帯状板材を製造して用意しておく。その際、缶内面側の保護被膜12として、粘着開始温度が170℃以上の熱可塑性樹脂を使用し、また、缶外面側の保護被膜13として、粘着開始温度が180℃以上の熱可塑性樹脂を使用している。
【0036】
そして、上記のように製造された帯状の被覆金属板を材料として、先ず、加工に先立って被覆金属板の両面に高温揮発性の潤滑剤(例えば、ノルマルブチルステアレート,セバシン酸ジオクチル,流動パラフィン,ポリエチレンワックス,ペトロラタム,パーム油等の1種類又は2種類以上)をグラビアロール等によりそれぞれ薄く均一に塗布した後、帯状の被覆金属板を一缶分毎の大きさの円板に打ち抜いて絞り加工によりカップに成形してから、このカップを更に再絞り加工やしごき加工等により胴部が薄肉化された有底円筒状の缶体に一体成形した後、この缶体を高温に加熱して高温揮発性の潤滑剤を缶体から除去している。
【0037】
なお、缶体を高温に加熱して高温揮発性の潤滑剤を除去する際に、缶体の加熱温度を保護被膜の熱可塑性樹脂の融点以上にした後で急冷することにより、缶体の内外両面の保護被膜の熱可塑性樹脂を非晶質化しておくのが、その後のネック・フランジ加工の際に成形性や熱可塑性樹脂の金属面への密着性の観点から好ましいのであるが、缶内面側の保護被膜の熱可塑性樹脂を非晶質化すると若干耐食性が悪くなるので、腐食性の強い内容物を充填する缶体の場合には、少なくとも缶内面側の保護被膜の熱可塑性樹脂には二軸配向結晶部分を残す方が好ましく、缶体の内外両面の保護被膜の熱可塑性樹脂の二軸配向結晶を残すか非晶質化するかは、缶体のその後の加工度と充填する内容物との兼ね合いによって決定するのが良い。
【0038】
一方、缶体の胴部に貼着する印刷済み樹脂フィルムとして、例えば、図2(B)に示すように、基材となる熱可塑性樹脂フィルム22の帯状フィルムに対して、その片面にトップコートを塗布してから乾燥させることでトップコート層21を形成すると共に、トップコート塗布面とは反対面に、適宜の印刷方法により所望の印刷デザインを施してから乾燥させて印刷インキ層23を形成した後、印刷インキ層23を覆うように接着剤を塗布・乾燥して接着剤層24を形成することで、印刷済み樹脂フィルム20の帯状フィルムを製造して用意しておく。その際、缶体の胴部外面に接触する接着剤層24として、缶内面側の保護被膜の熱可塑性樹脂の粘着開始温度よりも低い温度(100〜160℃)で接着可能な接着剤を使用している。
【0039】
なお、この印刷済み樹脂フィルムについては、既に述べたように、図2(B)に示したような積層構造に限らず、図示していないが、トップコート層と同じ側の面に印刷インキ層を形成して、印刷インキ層の上をトップコート層で覆うようにしても良く、その場合には、基材となる熱可塑性樹脂フィルムとして、缶体と接触する側(裏面側)が低融点の熱可塑性樹脂で形成され、その反対側(表面側)が高融点の熱可塑性樹脂で形成された二層構成の熱可塑性樹脂フィルムを使用することにより、接着剤を塗布・乾燥するようなことなく、低融点の熱可塑性樹脂(缶内面側の保護被膜の熱可塑性樹脂の粘着開始温度よりも低い100〜160℃で熱接着可能な樹脂)の熱可塑性樹脂層によって接着剤層の役目をさせることができる。そのような低融点の熱可塑性樹脂としては、酸変性ポリオレフィン,アイオノマー,エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂、エチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体,エチレンテレフタレート/アジペート共重合体,エチレンテレフタレート/セバケート共重合体,ブチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体,及び2種類以上のジカルボン酸と2種類以上のジオールとの共重合体等の共重合体ポリエステル樹脂、更には、それらの樹脂の2種類以上を混合したブレンド樹脂が使用できる。
【0040】
そのように基材となる熱可塑性樹脂フィルムの製膜時に接着剤層となる低融点の熱可塑性樹脂層を形成しておいて、トップコート層と同じ側の面に印刷インキ層を形成することにより、印刷インキ層の上に接着剤層を形成する裏刷り印刷方法で印刷済み樹脂フィルムを製造する場合(トップコート塗装、乾燥、フィルム巻取り。フィルムを巻き解いて、印刷、接着剤塗布、乾燥、フィルム巻取り。)と比べると、接着剤を塗布・乾燥することなく、印刷工程とトップコート塗装工程を連続して行った後で乾燥することにより印刷インキ層の上にトップコート層を形成してリールに巻き取るだけで済むことから、印刷済み樹脂フィルムの製造速度を速めることができて、生産効率を高めることができる。また、熱可塑性樹脂フィルムを製造するための樹脂の透明性が問題になることもない(不透明であっても良い)。
【0041】
上記のような何れかの方法により製造された帯状の印刷済み樹脂フィルムは、一缶分の幅に切断したものを一旦リールに巻き取ってから、缶体に貼着する直前に一缶分毎の大きさのフィルムシートに切断しており、印刷済み樹脂フィルムを缶体に貼着する工程では、従来から知られた適宜のフィルム貼着装置において、加熱された缶体に対して、一缶分毎の大きさにされた印刷済み樹脂フィルムのシートを、その最下層に形成された接着剤層の側を缶体の胴部外面側に押し付けることで熱接着させて貼着している。
【0042】
すなわち、本実施形態の方法では、高温揮発性の潤滑剤を除去した缶体を、フィルム貼着装置のマンドレルに冠着させて搬送しながら、フィルム貼着装置のフィルム貼着ステーションにおいて、印刷済み樹脂フィルムの接着剤層の接着温度以上の温度となるように100〜160℃に加熱されてマンドレルに冠着されている缶体に対し、印刷済み樹脂フィルムのシートを、その接着剤層の側を缶体の外面に向けて接触させながら、貼着ロールにより1961〜3923N(200〜400kgf)の押圧力、好ましくは、1961〜2452N(200〜250kgf)の押圧力で押圧することにより、缶体の胴部外面に接着剤層を介して印刷済み樹脂フィルムを熱接着で貼着している。
【0043】
そして、胴部外面側に印刷済み樹脂フィルムが貼着されてフィルム貼着装置のマンドレルから取り外された缶体に対して、その後、ネック・フランジ加工を施すよりも前に、印刷済み樹脂フィルムと缶体との間の接着力を増強しておくための後加熱処理として、印刷済み樹脂フィルムの接着剤層の活性化温度以上となるように100〜180℃で20〜240秒の間だけ缶体を加熱するようにしている。
【0044】
【実施例】
上記のような本実施形態の印刷済みフィルム貼着缶体の製造方法について、更に具体的な実施例を以下に示す。
【0045】
〔実施例1〕
予め260℃に加熱しておいた厚さ0.31mmの絞りしごき缶用のアルミニウム合金製帯板の両面に、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂を60:40の混合比で混合したポリエステル樹脂から製造した厚さ20μmの二軸配向フィルムを連続的に貼り付けローラで押圧しながら貼り付ける。その後、このアルミニウム合金製帯板を260〜270℃になるまで加熱してから直ちに水中を通して急冷することにより、アルミニウム合金製帯板の両面に非晶質化されたポリエステル樹脂の保護被膜をラミネートする。
【0046】
そのように製造した被覆アルミニウム合金製帯板の両面に、周知の高温揮発性の潤滑剤であるノルマルブチルステアレートをグラビアロールによりそれぞれ薄く塗布してから、この被覆アルミニウム合金製帯板を打ち抜き絞り用のプレス装置に送りこんでカップ状に成形し、続いて、再絞り装置により、更に小径のカップとするように再絞り加工とストレッチ加工とを加え、続いて、しごき加工装置により胴部の厚さを約0.12mmの薄さにしごき加工すると共にドーマーにより底部を缶内面側にドーム状に突出させて外径約66mmの有底円筒状の缶体に成形する。
【0047】
そのように成形した有底円筒状の缶体を倒置状態でオーブン内に送り込んで加熱して潤滑剤を揮発させて除去する。その際に、缶体の内外両面を被覆しているポリエステル樹脂の融点以上の温度に加熱した後、急冷(風冷)させることによりポリエステル樹脂層を非晶質化させておく。
【0048】
そのようにポリエステル樹脂層を非晶質化させた各缶体について、その長さを所定寸法に揃えるために、胴部の開口部側をトリミングしてから、搬送スクリューにより熱風加熱炉内を通過させて缶体を100〜120℃の温度に予備加熱した後、フィルム貼着装置のマンドレルに冠着させた状態で、該装置のフィルム貼着ステーションにまで搬送する。このマンドレルは、誘導加熱装置部を通過する際に、表面側が140〜160℃の温度に予備加熱されているので、冠着された缶体はマンドレルの熱により110〜130℃の温度に昇温される。
【0049】
一方、印刷済み樹脂フィルムとしては、基材となる厚さ16μmの二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムに対して、その一方の面に、シリコンを含有させた熱硬化性のエポキシ−アミノ樹脂塗料を塗布して乾燥させると共に、その他方の面に、グラビア印刷方法により多色印刷を施してから、印刷インキ層を覆うように、変性ポリエステル樹脂を主体とする下記の接着剤組成物を溶剤で希釈したものを塗布して乾燥させることで、帯状の印刷済み樹脂フィルムを予め製造しておいて、リールに巻き取っておく。
【0050】
接着剤組成物
(1)ポリエステル樹脂にエポキシ樹脂及びイソシアネート化合物を数%添加してから温度をかけて変性させた変性ポリエステル樹脂であって下記3種類の樹脂混合したもの・・・・・31%
変性ポリエステル樹脂A:Tg60℃(50%)
変性ポリエステル樹脂B:Tg22℃(40%)
変性ポリエステル樹脂C:Tg10℃(10%)
(2)ブロックイソシアネート(所定の温度になるとイソシアネートが解離して硬化剤としての反応を開始する)・・・・・1.6%
(3)イソシアネート化合物(−NCO:硬化剤)・・・・・1.6%
(4)酸化チタン(白色顔料)・・・・・65%
(5)その他の添加物(密着付与剤及びアンチブロッキング剤)・・0.8%
【0051】
そのようにリールに巻き取られた印刷済み樹脂フィルムについて、フィルム貼着装置のリール軸に装着して所定長さずつ送り出し、一缶分毎の長さのシートに切断してから、フィルム貼着装置の貼着ロールに吸着させた状態で、該装置のフィルム貼着ステーションにまで搬送する。
【0052】
そして、フィルム貼着装置のフィルム貼着ステーションにおいて、マンドレルに冠着されて搬送されている缶体に対して、貼着ロールに吸着されている一缶分毎の大きさに形成された印刷済みの二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムのシートを、その接着剤層を缶体の胴部外面側とした状態で、貼着ロールにより1961〜2452N(200〜250kgf)の押圧力をかけながら、接着剤の接着温度以上に加熱されている缶体の胴部外面に印刷済み樹脂フィルムを端部から徐々に巻き付けるように熱接着させて貼着する。
【0053】
そして、胴部外面に印刷済み樹脂フィルムが貼着された缶体をフィルム貼着装置のマンドレルから取り外した後、開口端部を下にした倒置状態でオーブン内を通過させることにより、缶体を約180℃で60秒間ほど後加熱処理して、印刷済み樹脂フィルムを完全に缶体の胴部外面に熱接着させてから、その後、缶体の開口端部側に対して、4段のネックイン加工を施して開口端部を外径約50mmに縮径してから、更に開口端部にフランジ加工を施した。
【0054】
〔実施例2〕
印刷済み樹脂フィルムとして、外層(缶体と接触しない側)の樹脂の融点が255℃で、内層(缶体と接触する側)の樹脂の融点が148℃で、外層の厚さが12〜13μmで、内層の厚さが2〜3μmで、全体の厚さが15μmである二層構造(内層がエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体で外層がポリエチレンテレフタレート)の二軸配向ポリエステルフィルムを基材として使用し、この二層構造のポリエステルフィルムの外層の表面にグラビア印刷を施してから、シリコンを含有させた熱硬化性のエポキシ−アミノ樹脂塗料によるトップコートを印刷インキ層の上から塗布して乾燥させた、所謂外刷りの印刷済み樹脂フィルムを使用した。この印刷済み樹脂フィルムでは、基材であるポリエステルフィルムの内層が接着剤層としての役目をしている。
また、缶体は、120〜140℃の温度に予備加熱した後、フィルム貼着装置のマンドレルに冠着させた(このマンドレルは上記の実施例1と同様に表面側が140〜160℃の温度に予備加熱されているので、冠着された缶体はマンドレルの熱により120〜150℃の温度に昇温される)。そして、印刷済み樹脂フィルムを貼着した後の後加熱処理として140〜150℃で120秒間の加熱を行った。
その他の点については全て上記の実施例1の場合と同様である。
【0055】
上記のような各実施例(実施例1および実施例2)により製造された印刷済みフィルム貼着缶体のサンプル(各実施例毎にそれぞれ10個)について、各缶体の外面を目視により検査したが、印刷済み樹脂フィルムの重合部を含め、何れにも印刷済み樹脂フィルムの剥離は全く認められなかった。
また、それら各缶体の胴部を切り開いて缶内面側を目視により検査したが、何れもポリエステル樹脂の保護被膜に傷付きや剥離は全く認められなかった。
さらに、各実施例により製造されたサンプル(各実施例毎にそれぞれ10個)について、各缶体に70℃の温水を充填してから、開口端部に缶蓋を巻き締めて密封し、80℃で30分間の温水加熱処理を施した後、缶体外面の印刷済み樹脂フィルムの剥離の有無を観察したが、全ての缶体で印刷済み樹脂フィルムの剥離や浮きは全く認められなかった。
【0056】
上記のような各実施例を含む本実施形態の印刷済みフィルム貼着缶体の製造方法によれば、缶内面側の保護被膜として粘着開始温度(軟化開始温度)が170℃以上の熱可塑性樹脂を使用し、印刷済み樹脂フィルムの接着剤層を100〜160℃で熱接着が可能なものとし、印刷済み樹脂フィルムを缶体の胴部外面に貼着する際の缶体の加熱温度を100〜160℃としていることから、印刷済み樹脂フィルムを缶体の胴部外面に熱接着で貼着する際に、缶内面側の保護被膜の熱可塑性樹脂が軟化することはなく、その結果、缶内面側の保護被膜がフィルム貼着装置のマンドレルに粘着してマンドレルから缶体を取り外し難くなったりすることはなく、また、缶体がマンドレルに押圧されても缶内面側の保護被膜が傷付いて耐内容物性が悪化したりすることはない。
【0057】
また、印刷済み樹脂フィルムを缶体の胴部外面に貼着した後、印刷済み樹脂フィルムの接着剤層の活性化温度以上となるように缶体を後加熱処理していることで、印刷済み樹脂フィルムを缶体に貼着する際の短い時間では接着力不足であった部分についても、その後の後加熱処理により充分に接着されることから、その後で缶体にネック・フランジ加工を施す際に、その加工部分で印刷済み樹脂フィルムが缶体から剥離するようなことは殆どない。
【0058】
なお、缶外面側の保護被膜の熱可塑性樹脂の粘着開始温度よりも高い温度で後加熱処理(例えば、180〜250℃の温度で40〜240秒間ほど加熱処理)した場合には、缶体と印刷済み樹脂フィルムとの間にある保護被膜(缶外面側の保護被膜)の熱可塑性樹脂の軟化により、缶体に貼着された印刷済み樹脂フィルムの熱収縮が抵抗なく促進されて、缶体の胴部上端及び下端からそれぞれ2〜5mmの部分に印刷済み樹脂フィルムの存在しない部分が現れるというような問題が起きる虞があるのに対して、本実施形態の方法では、缶外面側の保護被膜として粘着開始温度が180℃以上の熱可塑性樹脂を使用し、後加熱処理する際の加熱温度を100〜180℃としていることで、即ち、後加熱処理する際の温度を缶外面側の保護被膜の熱可塑性樹脂の粘着開始温度(軟化開始温度)よりも低くしていることで、そのような印刷済み樹脂フィルムの熱収縮による問題が発生することは殆どない。
【0059】
以上、本発明の印刷済みフィルム貼着缶体の製造方法の一実施形態について説明したが、本発明は、上記のような実施形態にのみ限定されるものではなく、例えば、対象となる印刷済みフィルム貼着缶体については、有底円筒状に一体成形された2ピース缶用の缶体に限らず、口頸部と肩部と胴部が一体成形されたボトル型缶用の缶体や、円筒状に形成された3ピース缶用の缶胴に対して印刷済み樹脂フィルムを貼着するような缶体などについて実施することも可能であり、また、缶体の胴部に貼着する印刷済み樹脂フィルムについては、トップコート層と熱可塑性樹脂フィルム層と印刷インキ層と接着剤層とからなる印刷済み樹脂フィルムに限らず、その他にホログラム形成層や金属蒸着層などの層を適宜に形成したような印刷済み樹脂フィルムを使用して実施することも可能である等、適宜変更可能なものであることは言うまでもない。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したような本発明の印刷済みフィルム貼着缶体の製造方法によれば、印刷済み樹脂フィルムを缶体の胴部外面側に貼着する際に、缶内面側の保護被膜の熱可塑性樹脂を軟化させないことで、缶内面側の保護被膜が傷付くことにより耐内容物性が悪化したり、缶内面側の保護被膜が粘着して缶体がマンドレルから外れ難くなることにより生産効率が悪化したりするのを防止することができ、しかも、印刷済み樹脂フィルムが貼着された缶体に対して後加熱処理を行っていることで、印刷済み樹脂フィルムを缶体との接着性を充分に確保することができて、その後の加工時に印刷済み樹脂フィルムが缶体から剥離するのを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法により製造される印刷済みフィルム貼着缶体の一例について、(A)ネック・フランジ加工前と(B)ネック・フランジ加工後のそれぞれの状態の外観を示す側面図。
【図2】本発明の方法の一実施形態について、(A)缶体を製造するための被覆金属板,(B)印刷済み樹脂フィルム,および(C)印刷済みフィルム貼着缶体の胴部における積層構造をそれぞれ示す断面図。
【符号の説明】
1 印刷済みフィルム貼着缶体
1A 缶体(印刷済み樹脂フィルムを除いた缶体)
2 (缶体の)胴部
12 缶内面側の保護被膜(熱可塑性樹脂の保護被膜)
13 缶外面側の保護被膜(熱可塑性樹脂の保護被膜)
20 印刷済み樹脂フィルム
24 (印刷済み樹脂フィルムの)接着剤層
Claims (3)
- 内外両面が熱可塑性樹脂の保護被膜で被覆されている缶体に対して、加熱された缶体の胴部外面側に印刷済みの樹脂フィルムを接着剤層を介して貼着するようにした印刷済みフィルム貼着缶体の製造方法において、缶内面側の保護被膜として、粘着開始温度が170℃以上の熱可塑性樹脂を使用し、印刷済み樹脂フィルムの接着剤層として、缶外面側の保護被膜の熱可塑性樹脂と100〜160℃で熱接着可能な樹脂を使用し、印刷済み樹脂フィルムを缶体の胴部外面側に貼着する際に、缶体の胴部外面の温度を100〜160℃にすると共に、印刷済み樹脂フィルムが貼着された後の缶体を、印刷済み樹脂フィルムの接着剤層の活性化温度以上の加熱温度で後加熱処理するようにしたことを特徴とする印刷済みフィルム貼着缶体の製造方法。
- 缶外面側の保護被膜として、粘着開始温度が180℃以上の熱可塑性樹脂を使用すると共に、印刷済み樹脂フィルムが貼着された後の缶体を100〜180℃の加熱温度で後加熱処理するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の印刷済みフィルム貼着缶体の製造方法。
- 印刷済み樹脂フィルムの基材となる熱可塑性樹脂フィルムとして、缶体と接触する側が低融点の熱可塑性樹脂層となり、その反対側が高融点の熱可塑性樹脂層となる二層構成の熱可塑性樹脂フィルムを使用することで、低融点の熱可塑性樹脂層が接着剤層となるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷済みフィルム貼着缶体の製造方法。
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