JP3862051B2 - フィルム貼着缶体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、缶胴と缶底が一体的に成形された金属製缶体に対してその缶胴外面に印刷済みの樹脂製フィルムが貼着されているフィルム貼着缶体に関し、特に、印刷済みの樹脂製フィルムが貼着された缶胴の上端開口部を大きく縮径化するようにネックイン加工するようなフィルム貼着缶体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
缶詰用容器の缶胴に対して所望の文字や図柄を付与する場合、板状の金属板を丸めてその両端を電気抵抗溶接や接着剤等で接合した缶胴に対して缶蓋(天蓋)と缶底(地蓋)を巻き締めるようなスリーピース缶では、缶胴用のブランクとなる板状の金属板に対して予め文字や図柄の印刷を行なうのに対して、金属板から深絞り加工や絞りしごき加工により缶胴と缶底(地蓋)が一体的に成形されるツーピース缶では、円筒状に成形された缶胴に対して文字や図柄の印刷を行なうこととなる。
【0003】
そのため、板状の金属板に対して文字や図柄の印刷を行なうスリーピース缶では、オフセット印刷による重ね刷り印刷やその他の印刷方法も適宜選択的に実施することが可能であるのに対して、円筒状に成形された缶胴に対して文字や図柄の印刷を行なうツーピース缶では、オフセット印刷による重ね刷り印刷などを直接施すことが実際上は困難であることから、通常、ドライオフセット印刷により文字や図柄の印刷が行われている。
【0004】
ところが、ツーピース缶へのドライオフセット印刷では、共通のブランケットにより全ての色のインキを塗布し、また、各色のインクが重ならないように塗布することから、その色数や色調に限界があるため、消費動向やニーズの変化による製品の多様化によって一層美麗な外観が要求された場合についての対応が困難である。
【0005】
そこで、そのような要求に対処するために、缶胴の表面に直接印刷するのではなく、ポリエステルなど熱可塑性樹脂のフィルムに対して予め文字や図柄の印刷を施しておき、この印刷済みの樹脂製フィルムをその接着剤層を介して缶胴に貼着することにより、缶胴に対して所望の文字や図柄を付与するということが従来から種々提案されている。(例えば、特開平3−230940号公報,特開平4−57747号公報,特開平7−89552号公報等参照)
【0006】
そのようなフィルム貼着缶体によれば、主体層となる熱可塑性樹脂のフィルムに対して、オフセット印刷以外に、グラビア印刷やその他の印刷方法も適宜選択的に実施することが可能であるため、例えば、文字や図柄をグラビア印刷で印刷することにより、ドライオフセット印刷の場合と比べて、その色数や色調の自由度を増大させることができて、一層美麗な印刷を施すことが可能になると共に、個々の缶体に対してそれぞれ個別に印刷するのではなく、多数の缶体分を長尺の熱可塑性樹脂フィルムに対して連続して印刷するため、印刷の高速化も期待できる。
【0007】
一方、缶詰を製造する場合に、缶容器に要するトータルコストの低減化を図る上から、使用金属板の低板厚化や缶蓋(天蓋)となる開口容易缶蓋(イージーオープンエンド、通称EOE)の径を小さくすることが従来から進められており、開口容易缶蓋について言えば、例えば、350mlのビール缶の場合、通称211と呼ばれる缶胴内径が約65.8mm(缶蓋巻締部外径が2+11/16インチ)の缶体では、通常は巻締める缶蓋も211用となるが、ドライオフセット印刷缶体の開口部の内径については、現在は206(約57.4mm、缶蓋巻締部外径が2+6/16インチ)が主流で、一部には204(約54.9mm、缶蓋巻締部外径が2+4/16インチ)が使用されており、更に、今後は202(約52.3mm、缶蓋巻締部外径が2+2/16インチ)化が進められる可能性もある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような缶容器における缶蓋の小径化については、それに伴って必然的に缶体(缶容器本体)の側で缶胴上端の開口部をより小さい径に絞ること(縮径化)が必要となり、そのような缶胴の縮径化によって、缶胴の本体を形成している金属は勿論、缶胴の表面を被覆している有機樹脂層にとっても厳しい加工を受けることになる。
【0009】
特に、印刷済み樹脂製フィルムを缶胴に貼着したフィルム貼着缶体においては、絞り加工や絞りしごき加工により缶胴と缶底が一体的に成形されたツーピース缶用の金属製缶体において従来から行なわれているリン酸ジルコニウムを主成分とした薬液等による金属面に対する化成処理では、缶胴上端の縮径化が行なわれた場合における樹脂製フィルムと缶胴表面との密着性が充分でないことがあり、ネックイン加工の際に厳しい縮径化を行った後にレトルト処理が施されたときに、樹脂製フィルムが缶胴表面から剥離するような問題の起きることがあるため、樹脂製フィルムの缶胴表面に対する密着性の更なる改善が必要とされている。
【0010】
本発明は、上記のような問題の解消を課題とするものであり、具体的には、缶胴と缶底が一体的に成形された金属製缶体に対してその缶胴外面に印刷済み樹脂製フィルムを貼着したようなフィルム貼着缶体において、ネックイン加工の際に厳しい縮径化を行った後にレトルト処理が施されたときでも、接着剤層を介して貼着された樹脂製フィルムが缶胴の表面から剥離することのないようにすることを課題とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記のような課題を解決するために、樹脂が被覆されていない金属板から缶胴と缶底が一体的に成形された金属製缶体に対して、缶胴の上端を切断して缶体を所定の缶高さにするためのトリミングをしてから、缶体を脱脂処理した後、直ちに、リン(P)付着量として1〜7mg/m 2 ,皮膜炭素(C)量として5〜50mg/m 2 ,且つ,皮膜炭素量とリン付着量の比(C/P)が2〜10である有機無機複合化成処理皮膜を缶体の金属面上に形成するための化成処理を施し、次いで、缶体を130〜220℃に加熱した状態で、熱可塑性樹脂フィルムの主体層に対して少なくともトップコート層と印刷インキ層と接着剤層が形成された樹脂製フィルムを、その接着剤層を介して缶体の円筒状缶胴の外面側に熱接着した後、缶体内面の塗装・乾燥を行ってから、缶胴上端の開口部の径を缶胴の径に対し79〜87%の縮径となるようネックイン加工し、更にフランジ加工することを特徴とするものである。
【0013】
上記のようなフィルム貼着缶体の製造方法によれば、缶胴と缶底が一体的に成形された缶体に対して、その金属面に上記のように限定された特定の有機無機複合化成処理皮膜を形成することで、接着剤層を介して缶胴の表面に貼着する樹脂製フィルムの缶胴表面との密着性を向上させることができて、特に、缶胴上端の開口部の径を缶胴の径に対して79〜87%の範囲となるように高縮径率で縮径化した場合でも、レトルト処理の後で樹脂製フィルムが缶胴の表面から剥離するようなことが起きない。
【0014】
すなわち、缶胴と缶底が一体的に成形された金属製缶体の缶胴外面に樹脂製フィルムを熱接着することでフィルム貼着缶体を製造する場合に、缶胴上端の開口部の径を高縮径率で縮径化しても、接着剤による樹脂製フィルムと缶胴表面との密着性を良好に保つことができて、接着剤のはみ出しがない外観が優れた状態に製造することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のフィルム貼着缶体の製造方法の実施形態について詳細に説明する。
【0016】
本実施形態のフィルム貼着缶体は、深絞り加工や絞りしごき加工により缶胴と缶底(地蓋)が一体的に成形されたツーピース缶用の金属製缶体に対して、トップコート層/熱可塑性樹脂フィルム層/印刷インキ層/接着剤層からなる印刷済み樹脂製フィルムを、その接着剤層を介して缶胴の外面側に熱接着で貼着させたものである。
【0017】
そのようなフィルム貼着缶体において、印刷済み樹脂製フィルムが貼着される缶体の金属面には、リン(P)付着量として1〜7mg/m2 ,皮膜炭素(C)量として5〜50mg/m2 ,且つ,皮膜炭素量とリン付着量の比(C/P)が2〜10である有機無機複合化成処理皮膜が化成処理によって形成されており、該有機無機複合化成処理皮膜の上から印刷済み樹脂製フィルムがその接着剤層を介して缶胴の外面側に貼着されている。
【0018】
そして、印刷済み樹脂製フィルムが貼着された缶胴は、その上端の開口部の径が缶胴の径に対して79〜87%の範囲となるように、ネックイン加工によって縮径化されており、ネックイン加工と共にフランジ加工が施された缶胴上端の開口部は、内容物の充填後に開口容易缶蓋(天蓋)の巻締めによって閉鎖されることとなる。
【0019】
上記のような本実施形態のフィルム貼着缶体の詳細について以下に説明すると、先ず、ツーピース缶用の金属製缶体について、スチールやアルミニウム合金の金属円板から絞りしごき加工により円筒状の缶胴と缶底(地蓋)が一体的に成形されるDI缶(ドロー・アイアニング缶)の場合には、板厚が0.20mm〜0.30mmの薄鋼板に対して片面当たりの錫付着量が1.0〜6.0g/m2 である錫メッキ鋼板を素材としたスチール缶や、或いは、板厚が0.20mm〜0.32mmの3004系アルミニウム合金を素材としたアルミニウム缶が使用される。
【0020】
上記のようなDI缶用素材の板厚については、主に缶強度、特に缶底の耐圧強度(通称ボトム耐圧)によって決められ、内容物を充填した後の内圧により板厚を選定して、炭酸飲料やビール等を充填・密封する内圧缶(内圧の高い缶)の場合は、板厚が0.20mm以下では、所謂バックリングと呼ばれる缶底が張り出した状態になる場合があって好ましくないが、スチール素材で0.30mm以上、また、アルミニウム素材で0.32mm以上の板厚は、耐圧強度は十分に確保されるが、実質的に過剰品質であって経済的でない。
【0021】
なお、前記のバックリングといった現象については、同一板厚でも金属素材の機械的強度によって発生するか否かが分かれ、スチール素材かアルミニウム素材かを問わず、機械的強度が高い場合は板厚の薄手化は可能となることから、金属素材の板厚については、缶全体の強度バランスを考慮して適宜選択することが望ましい。
【0022】
金属製缶体の缶胴外面側に貼着される印刷済みの樹脂製フィルムについて、本実施形態では、トップコート層/熱可塑性樹脂フィルム層/インキ層/接着剤層からなる印刷済み樹脂製フィルムが使用される。
【0023】
印刷済み樹脂製フィルムの主体層となる熱可塑性樹脂フィルムについては、印刷インキ層の保持部としての役割を担うものであり、印刷される文字や図柄の印刷仕上がり外観の鮮明性や艶やかさを確保する必要があることから、基本的には透明若しくは半透明のものを使用することが必要であり、また、内容物充填後、殺菌処理として、最も厳しい場合には125℃で30分の蒸気によるレトルト処理が施されることから、この処理に耐えるため少なくとも130℃以上の耐熱性を有することが必要である。
【0024】
そのような理由から、熱可塑性樹脂フィルムとしては、ポリプロピレン樹脂フィルム,ポリアミド(ナイロン)樹脂フィルム,ポリエステル樹脂フィルム等が使用されるが、特に、透明性、耐熱性の点からはポリエステル樹脂の配向結晶化した二軸延伸フィルムが最適である。
【0025】
ポリエステル樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンイソフタレート(PEI),ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のホモポリマーや、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンイソフタレートの共重合樹脂,ポリブチレンテレフタレートとポリブチレンイソフタレートの共重合樹脂等のコーポリマー樹脂や、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンイソフタレートのブレンド樹脂,ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートのブレンド脂等のブレンド樹脂といった種々のポリエステル樹脂フィルムが使用できる。
【0026】
また、熱可塑性樹脂フィルムの厚みについては、以下のような理由から8〜20μm(好ましくは10〜18μm)とするのが良い。
【0027】
すなわち、印刷済み樹脂製フィルムは、円筒状の缶胴を一周するように貼着されるものであるが、印刷された文字や図柄よっては缶胴の円周方向の長さよりも長めのフィルムとして缶胴に貼着される場合があり、その場合にはどうしてもフィルムの両端部同士の重なり部(ラップ部)が生じて、この重なり部の脇は空隙となり易く、この空隙は、フィルム厚みが厚いほど起こり易く、また、大きなものとなる傾向にある。
【0028】
そのため、印刷済み樹脂製フィルムの主体層となる熱可塑性樹脂フィルムの厚みが20μm以上では、上記の空隙部を起点としたフィルム剥離(デラミ)が、特にレトルト処理の時点で発生し易く好ましくないため、そのような空隙部を起点としたフィルム剥離を防止するためにはフィルム厚は薄い方が有利である。
【0029】
一方、フィルム貼着缶体の製造に際して、印刷済み樹脂製フィルムを一缶毎に貼着するために、複数缶分の印刷部分が連続的に印刷された長尺フィルムを一缶分毎のフィルムシートに切断していることから、長尺フィルムを一缶分毎のサイズに精度よく切断するためには、樹脂製フィルム自体に所定以上の強度が必要となり、それにはある程度の厚さが必要となって、主体層となる熱可塑性樹脂フィルムの厚みが8μm以下では、高速で一缶分毎のサイズを精度よく切断するのが困難となる。
【0030】
印刷済み樹脂製フィルムの表面側に形成されるトップコート層については、缶体の滑り性不足による樹脂製フィルムの傷付き防止と、レトルト処理時の樹脂製フィルムの物理的変化、即ち、結晶性の変化と含水による光学特性の変化を防止するために設けるもので、いずれも印刷仕上がり外観の確保を目的としたものであるため、滑り性及び耐レトルト処理性が良く、更に無色透明な皮膜層であることが必要である。
【0031】
そのようなトップコート層としては、熱硬化型塗料,電子線硬化型塗料,紫外線硬化型塗料等が使用され、更に、滑り性をより向上させるために、シリコンやワックス等の滑性剤を添加する場合もある。
【0032】
熱硬化型塗料としては、 エポキシ−アミノ樹脂,エポキシ−メラミン樹脂,ポリエステル−アミノ樹脂等のいわゆるクリアー塗料といったものが使用され、電子線硬化型塗料としては、エポキシアクリレート樹脂,ポリエステルアクリレート樹脂,ポリウレタンアクリレート樹脂,ポリエーテルアクリレート樹脂等が上げられ、これらの樹脂の単独又は2種類以上の混合物が使用される。
【0033】
また、紫外線硬化型塗料としては、前記の電子線硬化型塗料として上げた樹脂に、2−ヒドロキシエチルアクリレート,テトラヒドロフルフリールアクリレート等の単官能モノマーや、ジシクロベンテニルアクリレート, 1・4−ブタンジールアクリレート等の二官能モノマーや、トリメチロールプロパントリアクリレート等の三官能モノマーを光重合希釈剤として1種又は2種以上混合したもの、 更には光重合開始剤としてアセトフェノン,ベンゾフェノン等の1種又は2種以上混合した塗料などが使用される。
【0034】
トップコート層の滑り性に関しては、静摩擦係数として0.2以下が好ましく、こうした摩擦係数を有する塗膜層にすることが良い。勿論、トップコート層としては、前記の熱硬化型塗料、電子線硬化型塗料、紫外線硬化型塗料を単独で適用することも可能であり、また2種以上の併用適用することも可能で、適宜設備に合った手法を採用すれば良い。
【0035】
熱硬化型塗料をトップコート層として使用する場合は、当然熱がかかるため、主体層となる熱可塑性樹脂フィルムの熱影響を考慮して、加熱条件、特に温度を該熱可塑性樹脂フィルムの融点以下で硬化するような塗料を選定する必要があることは言うまでもなく、この点から、熱のかからない電子線硬化型塗料や紫外線硬化型塗料、若しくはこれらの塗料と熱硬化型塗料の併用が好ましい。
【0036】
トップコート層の厚みについては、1〜4μmが滑り性及び耐レトルト処理性確保から最適であり、1μm以下では、塗布膜の均一性が不充分であり、滑り性及び耐レトルト処理性共に確保されず好ましくない。一方、4μm以上の場合は、塗布膜の均一性は充分であり、滑り性及び耐レトルト処理性共に確保されるが、効果は飽和しており経済的でない。
【0037】
また、トップコート層に対して滑り性向上を目的にシリコンやワックス等の滑性剤が添加されている場合には、厚みが4μm以上では、シリコンやワックスの添加量が多いとトップコート層中での光の乱反射が起こり、デザインの鮮明性を低下させる原因となるので好ましくない。
【0038】
熱可塑性樹脂フィルムの裏面側に形成される印刷インキ層については、文字や図柄を印刷により施すものであるため特別制限するものではないが、熱硬化性のウレタン系樹脂をバインダーとするインキを使用したものであって、その印刷方法としては、グラビア印刷,フレキソ印刷,オフセット印刷等、各種の印刷方法を適宜選択可能であるが、色数を豊富に使って色調豊かで美麗な文字や図柄を印刷したい場合には、グラビア印刷により印刷インキ層を形成するのがよい。
【0039】
印刷インキ層を覆うように設けられる接着剤層については、基本的には加圧および加熱により金属缶の外面に容易に貼り合わせることができる接着剤からなるもので、本実施形態では、接着剤として熱硬化型の接着剤、電子線硬化型接着剤、熱硬化と電子線硬化の併用型接着剤等が使用される。
【0040】
熱硬化型接着剤としては、エポキシ樹脂,ポリエステル樹脂,エポキシとポリエステルの共重合樹脂等の樹脂を主剤として、硬化剤としてメラミン樹脂,イソシアネート樹脂等の硬化剤を含む樹脂組成物の接着剤が使用され、電子線硬化型接着剤としては、ポリエステル樹脂もしくはエポキシ樹脂を主剤として、電子線感応樹脂として不飽和二重結合を付加したエステルオリゴマーを配合した樹脂組成物に必要に応じて応力緩和剤を添加した樹脂組成物の接着剤が使用される。
【0041】
また、熱硬化と電子線硬化の併用型接着剤としては、ポリエステル樹脂を主剤として、電子線感応樹脂として不飽和二重結合を付加したエステルオリゴマーを配合した樹脂組成物に必要に応じて応力緩和剤を添加し、更に熱硬化剤として、メラミン樹脂,イソシアネート樹脂等の硬化剤から成る樹脂組成物の接着剤が使用される。
【0042】
なお、接着剤層を形成する接着剤については、上記のような樹脂組成物のみの接着剤だけでなく、そのような樹脂組成物に更に白色顔料を添加した接着剤も使用され、白色顔料を添加する場合には、樹脂組成物100重量部に対し、酸化チタンや雲母等の無機顔料を20〜80重量部含有させる。
【0043】
樹脂組成物100重量部に対し、白色顔料が20重量部未満では隠蔽率が不足し、下地金属の分光反射率の影響が現れ、特に、スチールを素材とした缶体では、白さが足りず印刷外観が青味がかった色調となり、商標の艶やかさや鮮明性を損ねる場合がある。一方、白色顔料を80重量部を超えて含有させても、隠蔽率は上がらず効果は飽和するため、経済的でないばかりか、接着剤自身の凝集力が低下し、むしろ密着性が劣る結果となる。
【0044】
特に、ネックイン加工における缶胴上端の高縮径化に対しては、白色顔料の含有率が高過ぎると、接着剤自身の凝集破壊による印刷済み樹脂製フィルムの剥離原因となるため、白色顔料の含有率は白さと密着性とのバランスから含有量を選択する必要があり、また、上記の隠蔽性は、塗布する接着剤の厚み、即ち後述する塗布量とも関わりがあることから、白さと密着性を兼備した接着剤とするには、白色顔料は樹脂組成物100重量部に対し、30〜70重量部を含有させることが好ましい。
【0045】
接着剤層を形成するための接着剤の塗布量については、接着剤が樹脂組成物だけから成る接着剤と、樹脂組成物に白色顔料を添加した接着剤とでは適性塗布量は異なり、上記の接着剤の3つのタイプに関係なく、前者は10〜50mg/dm2 の範囲であり、後者の場合は40〜170mg/dm2 の範囲である。
【0046】
すなわち、接着剤層として具備すべき接着力としては、当然樹脂組成物に依っているわけであるが、本実施形態では、接着剤層が印刷インキ層を覆うように形成されるため、10mg/dm2 未満では均一に接着剤を塗布することが難しく、またインキの種類によっては、接着剤の一部が印刷インキ層に吸収されることがあり、局部的に未塗布または未塗布部と同様なことが起こることがあり、局部的に印刷済み樹脂フィルムが剥離する所謂デラミが発生する場合がある。一方、50mg/dm2 を超えた場合、上記のような局部的に未塗布または未塗布部と同様なことが起こることはないが、接着剤の硬化による内部応力が大きくなり、ネックイン加工に耐えられず剥離する場合があって好ましくない。
【0047】
また、白色顔料を含有する接着剤の場合は、40mg/dm2 未満では密着性は確保されるが隠蔽性が不足して白さが確保されない。一方、170mg/dm2 を超えても白さは飽和して付着量を増やした分の効果は期待できず経済的でない。
【0048】
ところで、上記のような印刷済み樹脂製フィルム(トップコート層/熱可塑性樹脂フィルム層/インキ層/接着剤層からなる樹脂製フィルム)を密着性良く缶胴の外面側に貼着(ラミネート)するために、本実施形態の方法では、金属製缶体(スチール缶或いはアルミニウム缶)の少なくとも缶体外面側の金属面に、リン酸またはリン酸ジルコニウムと有機樹脂との有機無機複合化成処理皮膜を表面処理皮膜として形成している。
【0049】
なお、有機無機複合化成処理皮膜については、缶体の外面側だけでなく、缶体の内面側にも形成しておくことで、缶体の耐食性確保を目的として缶体の内面に施される塗装の塗膜密着性に対しても、高縮径率のネックイン加工で剥離することのない良好な特性を付与することができる。
【0050】
この有機無機複合化成処理皮膜は、リン(P)付着量として1〜7mg/m2 ,皮膜炭素(C)量として5〜50mg/m2 ,且つ,皮膜炭素量とリン付着量の比(C/P)が2〜10の範囲のものである。
【0051】
そのような有機無機複合化成処理皮膜を介して缶胴の外面側に印刷済み樹脂製フィルムが貼着(ラミネート)されたフィルム貼着缶体を、本実施形態の方法では、缶胴上端の開口部の径をネックイン加工により通常の缶胴の径よりも79〜87%縮径化した、所謂縮径缶として形成している。
【0052】
上記のようなフィルム貼着缶体について、本実施形態の方法において、金属面の表面処理皮膜として形成する有機無機複合化成処理皮膜のリン(P)付着量,皮膜炭素(C)量,及び皮膜炭素量とリン付着量の比(C/P)を特定し、更に、缶胴上端の開口部の径を缶胴の径の79〜87%に縮径化していることの意味について以下に説明する。
【0053】
缶体の金属面に有機無機複合化成処理皮膜を形成するための複合化成処理は、金属体を溶解しつつ析出する反応型の処理で、処理後の加熱乾燥により有機樹脂の重合反応が起こって高分子皮膜が形成されるという性質を有しているものであって、有機樹脂が処理皮膜の表層に比較的豊富化して存在するため、接着剤や塗料との密着力が強固なものとなり、特に、高縮径率のネックイン加工を行なう程、この有機無機複合化成処理皮膜は有効に作用する。
【0054】
この有機無機複合化成処理皮膜が有効に作用するためには、以下に述べるような理由から、リン(P)付着量として1〜7mg/m2 ,皮膜炭素(C)量として5〜50mg/m2 ,且つ,リン付着量と皮膜炭素量の比(C/P)が2〜10の範囲のものであることが必要であり、そのようにリン(P)付着量,皮膜炭素(C)量,及び皮膜炭素量とリン付着量の比(C/P)の範囲が限定された有機無機複合化成処理皮膜については、特に、呼称211(缶胴内径約65.8mm) の缶体の開口部に対して、呼称204(開口部内径約54.9mm) や呼称202(開口部内径約52.3mm) といった高縮径率のネックイン加工が施される場合に有効に作用するものである。
【0055】
まず、リン(P)の付着量であるが、リン(P)はリン化合物として皮膜中に存在し、前記有機樹脂の加熱乾燥時の結合を強固なものにし、皮膜全体を強靱にすると推定される。P付着量が下限値の1mg/m2 未満では、得られる皮膜の結合力が劣り、その上に接着剤層で貼着される印刷済み樹脂製フィルムが、缶胴の上端開口部をネックイン加工で高縮径化すると剥離(通称デラミと呼ばれている)する場合があって好ましくない。
【0056】
一方、P付着量が上限値の7mg/m2 を超えても、やはりその上に接着剤層で貼着される印刷済み樹脂製フィルムがネックイン加工で剥離する場合がある。この理由は皮膜析出時の歪みが原因と推定され、上限値の7mg/m2 を超えるとネックイン加工に耐えられず皮膜自体が凝集破壊するためと考えられる。このことから、P付着量を1〜7mg/m2 (好ましくは1.5〜6mg/m2 )の範囲と限定している。
【0057】
次に皮膜炭素(C)量であるが、皮膜C量は有機樹脂の付着量の換算量として測定されるものであって、皮膜C量が下限値の5mg/m2 以下では、アルミニウム缶及びスチール缶の化成皮膜の被覆性が劣るため密着性が不充分となり、印刷済み樹脂製フィルムを貼着した後で行われるネックイン加工やフランジ加工において、局部的に樹脂製フィルムが剥離したり、またネックイン加工やフランジ加工では樹脂製フィルムの剥離が目立たなくても、内容物充填後に行われるレトルト処理で明らかなフィルム剥離となって現れる場合がある。
【0058】
一方、皮膜C量が上限値の50mg/m2 を超えると、被覆性は良好であるが、ネックイン加工度が大きい(例えば、呼称211の缶体を縮径して、開口部の径を呼称204や呼称202にする。)高縮径化加工では、上記のP付着量の限定理由で述べたと同じように、皮膜自体が凝集破壊を起こして密着性が低下し、それによって樹脂製フィルムが剥離することがある。このことから、皮膜C量を5〜50mg/m2 (好ましくは10〜40mg/m2 )の範囲と限定している。
【0059】
更に、有機無機複合化成処理皮膜については、有機樹脂の持つ接着剤や塗料との密着性確保と有機樹脂の高分子化による皮膜全体の強靱さ確保といった特性を有するものであるため、皮膜C量とP付着量の比(C/P)によって皮膜の加工密着性は影響される。そこで、以下の理由から皮膜C量とP付着量の比(C/P)を2〜10(好ましくは3〜8)の範囲と限定している。
【0060】
すなわち、皮膜C量とP付着量の比(C/P)が2未満では、有機樹脂の持つ接着剤や塗料との密着性確保といった特性が十分に発揮されず、貼着された樹脂製フィルムが高縮径化ネックイン加工によって剥離することがあり、また、(C/P)が10を超えると、皮膜の結合力が不充分で皮膜全体の強靱さが劣ることにより、貼着された樹脂製フィルムが高縮径化ネックイン加工によって剥離することがある。
【0061】
なお、上記のような有機無機複合化成処理皮膜に対して、例えば、現在多くの場合に行われているアルミニウムの絞りしごき加工から得られる缶体に施されるリン酸ジルコニウム単独の化成処理皮膜でも、ネックイン加工の縮径化率〔(缶胴内径−缶胴開口端内径)/缶胴内径〕が13%の未満の場合には、密着性は確保される。
【0062】
しかし、ネックイン加工の加工度を上げて縮径化率が13%以上になると、缶胴に貼着されている印刷済み樹脂製フィルムがレトルト処理で剥離する場合があり、特に縮径化率が16%付近となると、印刷済み樹脂製フィルムがレトルト処理で剥離する確率は一層高くなり安心して使用出来ない。
【0063】
それに対し、上記のような本実施形態の有機無機複合化成処理皮膜の場合は、良好な密着性を発揮して、ネックイン加工の縮径化率が13%以上となる高縮径加工を行っても、印刷済み樹脂製フィルムがレトルト処理で剥離することなく有効に作用する。そのことは、以下に記載する各実験例の結果(表1〜4)からも確認されている。
【0064】
上記のような本実施形態のフィルム貼着缶体について、以下のような各実験例によりその効果を確認した。なお、各実験例で行った評価方法は以下の通りである。
(1)有機無機複合化成処理皮膜の皮膜C量は、島津製作所(株)製の全有機体炭素計(TOC-5000/SSM-5000A 固体試料TOC測定システム)で測定した。
(2)有機無機複合化成処理皮膜のP付着量は、蛍光X線分析(X-Ray Spectrometer/理学電機工業製)で測定した。
(3)多層有機被膜積層缶の接着剤のはみ出し状況については、肉眼観察や光学顕微鏡で観察し評価した。接着剤のはみ出し状況の評価は、次のように評価基準を設定して行った。
〇:接着剤のはみ出しなく良好 □:軽微なはみ出しあり(実用性有)
△:肉眼で確認できるはみ出しあり(実用性不可) ×:はみ出し多い(実用性不可)
(4)ネックイン加工およびフランジ加工での印刷済み樹脂製フイルムの状態については、剥離状況やクラック発生状況を肉眼観察や光学顕微鏡で観察し評価した。剥離状況やクラック発生状況の評価は、次のように評価基準を設定して行った。
〇:剥離やクラックなく良好 □:軽微なクラック発生(実用性有)
△:一部剥離やクラック発生(実用性不可) ×:剥離発生(実用性不可)
【0065】
〔実験例1〕
板厚0.28mmのアルミニウム板(3004合金)を周知の手法で絞りしごき加工を行い、開口部をトリミングして、缶胴径が呼称211の350mlビール缶用のツーピース缶を作成後、周知の手法で脱脂を行い、直ちにリン酸と水溶性フェノール樹脂を主成分とした薬液で、スプレー法により皮膜C量やP付着量やその比(C/P)を変えた化成処理を行い、水洗後熱風乾燥した。
こうして得られた缶体について、塗布量130mg/m2 の熱硬化型接着剤層(白色顔料含む),印刷インキ層,厚み12μmの二軸延伸ポリエステル樹脂フイルム層,2μmのトップコート層からなる樹脂製フィルムを、接着剤層が該缶体の外面に相接するようにして、高周波誘導加熱で缶体を加熱し、缶体温度を165℃,線圧35kgf/cm,速度175m/分の条件で貼着(ラミネート)した。
この後、缶体の内面をスプレー塗装し、200℃で60秒乾燥後、開口部(開口端)を缶径呼称206及び缶径呼称202にする多段のネックイン加工を行って縮径缶にした後、レトルト処理を125℃で30分行ってから、ネック加工部における樹脂製フィルムの剥離状況を調べた。その結果について以下の表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
上記の表1から見て、テストNO. 2〜6(本発明の各実施例)は、テストNO. 1,7(各比較例)に比べ、良好な密着性を有していることが判る。特に、呼称211の缶胴の開口部径を呼称202にネックイン加工するというような高縮径化加工に対して有効であることが判る。なお、接着剤のはみ出しは全ての化成処理サンプルで見られず良好であった。
【0068】
〔実験例2〕
板厚0.24mmの片面の錫付着量が2.8g/m2 両面錫メッキ鋼板を周知の手法で絞りしごき加工を行い、開口部をトリミングして、缶胴径が呼称211の350mlビール缶用のツーピース缶を作成後、周知の手法で脱脂を行い、直ちにリン酸と水溶性フェノール樹脂を主成分とした薬液で、スプレー法により皮膜C量やP付着量やその比(C/P)を変えた化成処理を行い、水洗後熱風乾燥した。
こうして得られた缶体について、塗布量130mg/m2 の熱硬化型接着剤層(白色顔料含む),印刷インキ層,厚み12μmの二軸延伸ポリエステル樹脂フイルム層,2μmのトップコート層からなる樹脂製フィルムを、接着剤層が該缶体の外面に相接するようにして、高周波誘導加熱で缶体を加熱し、 缶体温度を165℃、線圧35kgf/cm、 速度175m/分の条件で貼着(ラミネート)した。
この後、更に、缶体の内面をスプレー塗装し、200℃で60秒乾燥後、開口部を缶径呼称206及び缶径呼称202にする多段のネックイン加工をそれぞれ行って縮径缶にした後、レトルト処理を125℃で30分行ってから、ネック加工部における樹脂製フィルムの剥離状況を調べた。 その結果について以下の表2に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
上記の表2から見て、テストNO. 9〜12(本発明の各実施例)は、テストNO. 8,13(比較例)に比べ、良好な密着性を有していることが判る。なお、接着剤のはみ出しは全ての化成処理サンプルで見られず良好であった。
【0071】
〔実験例3〕
板厚0.28mmのアルミニウム板(3004合金)を周知の手法で絞りしごき加工を行い、開口部をトリミングして、缶胴径が呼称211の350mlビール缶用のツーピース缶を作成後、周知の手法で脱脂を行い、直ちにリン酸と水溶性フェノール樹脂を主成分とした薬液で、スプレー法により皮膜C量やP付着量やその比(C/P)を変えた化成処理を行い、水洗後熱風乾燥した。
こうして得られた缶体について、塗布量130mg/m2 の熱硬化型接着剤層(白色顔料含む),印刷インキ層,厚み12μmの二軸延伸ポリエステル樹脂フイルム層,2μmのトップコート層からなる樹脂製フィルムを、接着剤層が該缶体の外面に相接するようにして、高周波誘導加熱で缶体を加熱し、缶体温度を165℃,線圧35kgf/cm,速度175m/分の条件で貼着(ラミネート)した。
この後、缶体の内面をスプレー塗装し、200℃で60秒乾燥後、開口部を缶径呼称206及び缶径呼称202にする多段のネックイン加工をそれぞれ行って縮径缶にした後、レトルト処理を125℃で30分行ってから、ネック加工部における樹脂製フィルムの剥離状況を調べた。 その結果について以下の表3に示す。
【0072】
【表3】
【0073】
上記の表3から見て、テストNO. 15〜18(本発明の各実施例)は、テストNO. 14,19(各比較例)に比べ、良好な密着性を有していることが判る。なお、接着剤のはみ出しは全ての化成処理サンプルで見られず良好であった。
【0074】
〔比較例〕
板厚0.28mmのアルミニウム板(3004合金)を周知の手法で絞りしごき加工を行い、開口部をトリミングして、缶胴径が呼称211の350mlビール缶用のツーピース缶を作成後、周知の手法で脱脂を行い、直ちに有機樹脂を含まないリン酸ジルコニウムを主成分とした慣用されている薬液で、スプレー法を用いて化成処理を行い、水洗後熱風乾燥した。
得られた缶体の化成処理皮膜の付着Zr量は15mg/m2 である。(なお、皮膜中のC量は0mg/m2 である。)
こうして得られた缶体について、実験例1で用いた樹脂製フィルムを、接着剤層が該缶体の外面に相接するようにして、高周波誘導加熱で缶体を加熱し、缶体温度を165℃、線圧35kgf/cm、 速度175m/分の条件で貼着(ラミネート)した。
この後、缶体の内面をスプレー塗装し、200℃で60秒乾燥後、開口部を缶径呼称206及び缶径呼称202にする多段のネックイン加工をそれぞれ行って縮径缶にした後、レトルト処理を125℃で30分行ってから、ネック加工部における樹脂製フィルムの剥離状況を調べた。
その結果、缶径呼称206に縮径化したネック加工部における剥離状況の評価は○〜□で、本発明の各実施例と同様に良好であり密着性については実用性を有しているが、缶径呼称202に縮径化したネック加工部における剥離状況の評価は△〜×で、本発明の各実施例と比べ劣っていた。
【0075】
上記のような各実験例によりその効果が確認されたフィルム貼着缶体を製造するための本実施形態の製造方法について、更に、その一例を以下に説明する。
【0076】
印刷済み樹脂製フィルムを貼着する前の缶体については、金属板を深絞り加工あるいは絞りしごき加工を行い、ツーピース缶用で有底円筒状の金属製缶体に成形した後、所定の缶高さとなるように円筒状缶胴の上端開口部を切断するトリミングをし、トリミング後の金属製缶体を脱脂してから、金属面の表面処理として有機無機複合化成処理を行っておくが、有機無機複合化成処理を行う前の缶体製造技術については、現在製缶メーカーが行っている周知の技術によるもので、特別制限するものではない。
【0077】
金属製缶体を脱脂した後に行なう有機無機複合化成処理については、リン酸またはリン酸とフッ化ジルコニウムと水溶性有機樹脂(例えば、水溶性フェノール樹脂,水溶性アクリル樹脂等)を含む水溶液に必要に応じて反応性を促進させるためにフッ酸,ポリリン酸を添加した処理液を、従来の化成処理方法と同様に、缶体にスプレー塗布した後、水洗・乾燥して硬化させたり、缶体を処理液に浸潰した後、水洗・乾燥して硬化させたりするものである。また、乾燥硬化方法としても、熱風での乾燥や電気炉での乾燥等の従来の方法が適用でき、温度は150℃〜250℃で乾燥時間は10秒〜2分程度である。
【0078】
一方、印刷済み樹脂製フィルムの製造については、先ず、 主体層となる熱可塑性樹脂フィルムの片面にトップコートを塗布・乾燥させてトップコート層を形成した後、トップコート塗布面とは反対面に、インキを印刷・乾燥して印刷インキ層を形成してから、印刷インキ層を覆うように接着剤を塗布・乾燥して接着剤層を形成する。
【0079】
印刷インキ層は充分に乾燥させた方が良いが、接着剤層については、その後で上記の金属製缶体の外面側への接着面となるため、熱硬化型接着剤や熱硬化型接着剤と電子線硬化型接着剤の併用の接着剤の場合は硬化させない半乾燥状態にすることが肝要である。
【0080】
トップコートと接着剤の塗装については、グラビア塗装でも平ロール塗装でも良いが、トップコート層と接着剤層では塗布の仕方を変える場合がある。
即ち、缶体に貼着される印刷済み樹脂製フィルムの文字や図柄が缶胴の途中で切れないように、缶胴の円周方向の長さよりもやや長めに貼着させると、樹脂製フィルムの両端部分が僅かに重なるようなラップ部が形成されることになり、その場合には、接着剤は全面に塗布するが、トップコートはラップ部に塗布されないようにラップ代を見込んで短めに塗布する必要がある。
【0081】
なお、印刷済み樹脂製フィルムを缶胴の円周方向の長さと同じ長さか、或いは僅かに短くなるように貼着するような場合には、樹脂製フィルムの両端部分が突き合わされるので、トップコートと接着剤は一缶分の大きさの全面に塗布することとなる。
【0082】
上記のようにそれぞれ製造されたツーピース缶用の金属製缶体と印刷済み樹脂製フィルムについて、缶体の缶胴外面に樹脂製フィルムを貼着(ラミネート)するに際して、平板な金属板に対して樹脂製フィルムを貼着するような場合と異なり、円筒状に成形された缶胴の外面、即ち曲面に接着させるため、接着条件としての重要な要件である温度,加圧力,速度の内で加圧力を充分に確保することが難しい。そのため、接着剤を金属面に充分濡らすためには、接着時の温度における接着剤の粘度(溶融粘度)を低くする必要がある。
【0083】
また、印刷済み樹脂製フィルムは、円筒状の缶胴全周にわたって貼着されるが、上記のように文字や図柄が途中で切れないように缶胴の円周方向の長さよりもやや長めに貼着させてラップ部が生じる場合に、ラップ部の重なりの内側が空隙となり易く、この空隙部には接着剤がはみ出し入り込んだ方が良いわけで、そのような点でも接着剤の溶融粘度が低い方が有利となる。
【0084】
しかしながら、接着剤の溶融粘度が低すぎると、接着剤が印刷済み樹脂製フィルムからはみ出すといった現象が起こり、このはみ出しが激しい場合は、印刷外観を損ねる結果となって好ましくない。
【0085】
接着剤の溶融粘度については、接着剤を構成する樹脂の分子量や接着剤の硬化程度によって異なるが、上記のはみ出しは、印刷済み樹脂製フィルムを貼着する接着条件が決まると、接着剤のガラス転移温度(Tg)によってほぼ決まってくる。このことから、接着剤はガラス転移温度(Tg)が0〜40℃の範囲が好ましく、更に好適な範囲は10〜40℃である。(なお、既に述べたような熱硬化型接着剤や熱硬化型接着剤と電子線硬化型接着剤の併用の接着剤の場合は硬化させない半乾燥状態にすることとは、このような意味を含むものである。)
【0086】
印刷済み樹脂製フィルムを貼着させるときの温度および圧力条件としては、缶体の温度を130〜220℃に加熱し、圧力は線圧で20〜60kgf/cmとするのが良い。
【0087】
すなわち、缶体はマンドレルに挿入保持され、マンドレルを加熱して熱を缶体に伝播させる間接加熱や、高周波誘導加熱等の直接加熱や、これらの併用によって加熱され、缶体温度(缶体の表面温度)としては130〜220℃に加熱されるが、130℃未満では温度が足りず、圧力を高くしても接着剤の缶体への濡れが充分でなく密着力は不足するので、剥離が起こり易く好ましくない。
【0088】
一方、缶体温度が220℃を超すと、圧力を低くしても缶体への濡れは充分確保されるが、上記のような接着剤のはみ出しが起こり過ぎ、印刷済み樹脂製フィルムの両端部分のラップ部(重なり部)では密着力は有利となるが、印刷外観を損ねる結果となって好ましくない。
【0089】
また、上記の現象を回避しようと、圧力を20kgf/cmより更に低い圧力として貼着させると、全体的に不均一な圧力分布となるのか、局部的に密着不良が起こって、後のレトルト処理において剥離の発生する場合があるために好ましくない。
【0090】
以上のような理由から、印刷済み樹脂製フィルムを貼着(ラミネート)させるときの温度および圧力条件としては、缶体の温度を130〜220℃に加熱し、圧力は線圧で20〜60kgf/cmとするのが最適である。このことは以下の実験例4によっても確認されている。
【0091】
〔実験例4〕
実験例1のテストNO. 4と同様の皮膜C量19mg/m2 の化成処理缶を用いて、 ラミネート条件を、圧力50kgf/cm,速度160m/分で、缶体温度だけを変えて、実験例1で用いた印刷済み樹脂製フィルムを貼着(ラミネート)した。
こうして得たフィルム貼着缶体の接着剤のはみ出しによる外観を調べると共に、この後、更に、缶体の内面をスプレー塗装し、200℃で60秒乾燥後、開口部を缶径呼称204にする多段のネックイン加工を行って縮径缶にした後、レトルト処理を125℃で30分行ってから、ネック加工部における樹脂製フィルムの剥離状況を調べた。その結果を以下の表4に示す。
【0092】
【表4】
【0093】
上記の表4からみて、テストNO. 20(上記の製造方法によらないもの)は、接着剤のはみ出しはなく、良好であるが、密着性は劣ることが判る。また、テストNO. 26(上記の製造方法によらないもの)は、密着性は比較的良好で実用性を有しているが、接着剤のはみ出しによる印刷外観が劣ることが判る。これに対して、テストNO. 21〜25(上記の製造方法によるもの)は、接着剤のはみ出しは殆どなく、密着性も共に良好であることが判る。
【0094】
上記のような温度条件により印刷済み樹脂製フィルムを缶体の缶胴外面に貼着(ラミネート)した後、電子線硬化型接着剤や、熱硬化型接着剤と電子線硬化型接着剤の併用接着剤では、電子線を照射して接着剤の硬化を更に進める。また、熱硬化型接着剤の場合は、必要ならば更に加熱して硬化を促進させるが、この時の再加熱としては、同じ加熱炉(例えば熱風炉等)に再度通して行うこともできるが、内面の塗装焼き付けの際の加熱炉といった他の必要性から行う加熱で併用することも可能である。
【0095】
そして、最後に、上記のように印刷済み樹脂製フィルムが缶胴外面に貼着された缶体について、更に、缶胴上端の開口部を絞るネックイン加工と、缶蓋を巻締めるために必要なフランジ加工を行うのであるが、本実施形態では、ネックイン加工による缶胴上端部の縮径化率(加工度)を缶胴の径に対し79〜87%と限定している。その理由については、既に述べたように、そのような高縮径化加工において有機無機複合化成処理皮膜の特性が発揮されるからである。
【0096】
なお、ネックイン加工やフランジ加工の方法自体については、特別な制限するものではなく、現在一般的に行われている方法が適用可能であって、例えば、ネックイン加工では、ダイネック加工やスピンネック加工またはそれらの併用といった加工技術が適用可能である。
【0097】
以上、本発明のフィルム貼着缶体の製造方法の実施形態について説明したが、本発明は、上記のような実施形態にのみ限定されるものではなく、例えば、缶胴に貼着される印刷済み樹脂製フィルムについては、トップコート層/熱可塑性樹脂フィルム層/印刷インキ層/接着剤層からなる樹脂製フィルムだけに限らず、少なくともトップコート層,熱可塑性樹脂フィルム層,印刷インキ層,接着剤層を有するような印刷済み樹脂製フィルムであれば良く、その他にホログラム形成層や金属蒸着層等の他の層が形成されているような印刷済み樹脂製フィルムを使用して実施することも可能である。
【0098】
【発明の効果】
以上説明したような本発明のフィルム貼着缶体の製造方法によれば、缶胴と缶底が一体的に成形された金属製缶体の缶胴表面に対して印刷済みの樹脂製フィルムを貼着することで、缶容器の缶胴に印刷文字や印刷図柄を単に付与できるというだけでなく、印刷仕上がりや外観の美麗な缶容器を得ることができて、内容物の多様化に伴う製品の差別化に充分応えることができると共に、缶胴上端の大幅な縮径化を図ることによって、缶容器のトータルコストを低く抑えることができ、しかも、フィルム貼着缶体において缶胴上端を縮径化したときに発生するネック部での樹脂製フィルムの剥離の問題を効果的に防止することができる。
すなわち、缶胴と缶底が一体的に成形された金属製缶体の缶胴外面に樹脂製フィルムを熱接着することでフィルム貼着缶体を製造する場合に、缶胴上端の開口部の径を高縮径率で縮径化しても、接着剤による樹脂製フィルムと缶胴表面との密着性を良好に保つことができて、接着剤のはみ出しがない外観が優れた状態に製造することができる。
Claims (1)
- 樹脂が被覆されていない金属板から缶胴と缶底が一体的に成形された金属製缶体に対して、缶胴の上端を切断して缶体を所定の缶高さにするためのトリミングをしてから、缶体を脱脂処理した後、直ちに、リン(P)付着量として1〜7mg/m 2 ,皮膜炭素(C)量として5〜50mg/m 2 ,且つ,皮膜炭素量とリン付着量の比(C/P)が2〜10である有機無機複合化成処理皮膜を缶体の金属面上に形成するための化成処理を施し、次いで、缶体を130〜220℃に加熱した状態で、熱可塑性樹脂フィルムの主体層に対して少なくともトップコート層と印刷インキ層と接着剤層が形成された樹脂製フィルムを、その接着剤層を介して缶体の円筒状缶胴の外面側に熱接着した後、缶体内面の塗装・乾燥を行ってから、缶胴上端の開口部の径を缶胴の径に対し79〜87%の縮径となるようネックイン加工し、更にフランジ加工することを特徴とするフィルム貼着缶体の製造方法。
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