JP3931660B2 - プラスチックフィルム用オーバーコート樹脂組成物及びその利用 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチックフィルム用オーバーコート樹脂組成物に関し、詳しくは飲料缶の缶胴部の外面を被覆するプラスチックフィルムに好適に用いられるオーバーコート樹脂組成物に関する。
さらに、本発明は、上記オーバーコート樹脂組成物の利用に関し、詳しくは印刷層及び接着剤層付きプラスチックフィルムの非接着剤層面が上記オーバーコート樹脂組成物で覆われてなるオーバーコート層等付きプラスチックフィルム、並びに該オーバーコート層等付きプラスチックフィルムで被覆されてなるプラスチックフィルム被覆金属缶に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、食物や飲料(以下、飲料等という)を保存し収容する缶の内・外面は、それぞれ耐食性、装飾性等を付与する目的で各種の塗装や印刷が施されている。ところで、飲料等用の缶は、その形態から大きく3ピース缶と2ピース缶とに分類できる。3ピース缶は、円筒状の側面部材、即ち缶胴部材と、底部材と蓋部材とからなる。一方、2ピース缶は、一体化した缶胴部・底部、即ち有底筒状部材と、蓋部材とからなる。
これら缶のうち3ピース缶の缶胴部は、一般に予め所定の大きさに切った金属板に、内面塗料及び外面下塗り塗料を塗布した後、外面側に印刷層を設け、該印刷層の上に外面仕上げ塗料を塗布した後、一缶毎の大きさの四辺形に切断し、次いでその四辺形の金属板を円筒状に丸め、端面を接着、溶接等することによって形成される。その後、円筒状の缶胴部の上端部及び下端部を縮める加工(ネックイン加工、フランジ加工等)が施される。
一方、これら缶のうち2ピース缶の一体化した缶胴部・底部は、一缶分の金属板を有底筒状にした後、内面塗料及び外面下塗り塗料を塗布した後、外面側に印刷層を設け、該印刷層の上に外面仕上げ塗料を塗布し、形成される。
【0003】
近年、2ピース缶、3ピース缶いずれの場合も、金属に直に塗料を塗布したり、インキを印刷したりする上記の方法の他に、缶胴部の金属の内・外面をプラスチックフィルムで被覆する方法が提案されている。
【0004】
(A)3ピース缶
例えば、3ピース缶の缶胴部は、外面被覆用のプラスチックフィルムの一方の面に仕上げ用塗料層を、外面被覆用のプラスチックフィルムの他方の面に印刷層を設け、該印刷層上に接着剤層を設けてなる金属外面被覆用の接着剤層付きプラスチックフィルムを得、金属板の一方の面に金属内面被覆用プラスチックフィルムを、金属板の他方の面に前記金属外面被覆用接着剤層付きプラスチックフィルムの接着剤層をそれぞれ積層してなるプラスチックフィルム被覆金属板を得、該プラスチックフィルム被覆金属板を一缶毎の大きさの四辺形に切断し、次いでその四辺形の金属板を円筒状に丸め、端部を接着、溶接等することによって形成される。
【0005】
(B)2ピース缶
(B−1)一方、2ピース缶の有底筒状部は、金属板の一方の面に金属内面被覆用プラスチックフィルムを、金属板の他方の面に金属外面被覆用プラスチックフィルムをそれぞれ積層し、両面をプラスチックフィルムで被覆した金属板を得た後、該プラスチックフィルム被覆金属板を一缶分毎に打ち抜き、打ち抜いたものを有底筒状にし、次いで筒状部(缶胴部)の外面に、オフセット印刷で印刷層を設け、その印刷層の上に耐傷付き性を付与するために外面仕上げ塗料(オーバーコート塗料)を塗布することによって形成される。
【0006】
しかし、前記オフセット印刷では1工程の印刷色数に制限がある上に、筒状部(缶胴部)の曲面に印刷するので位置合せが困難で重ね刷りができないため十分な美粧性を付与できないという不都合がある。また、製缶速度自体は毎分1000缶以上という高速であり、前記曲面印刷の速度を前記製缶速度に対応させると、美麗な印刷を安定して行うことがより困難になるという不都合がある。さらに、金属缶体の製造はロット毎の生産量の少ない多品種少量生産になることが多いため、前記オフセット印刷用の版型を交換する頻度が高くなり、生産性が低下するという不都合もある。
【0007】
(B−2) そこで、かかる不都合を解消して、金属板から有底筒状に成形された金属缶体の缶胴部外面側に優れた美粧性を付与することを目的として、グラビア印刷等で美粧性に優れ高級感のある印刷層を設けた接着剤層付きプラスチックフィルムで、金属板から有底筒状に成形された金属缶体の缶胴部外面を一周するようにして被覆する方法が、特開平04−057747号公報、特開平07−089552号公報、特開平09−029842号公報等に提案された。
この方法によれば缶胴部外面に美粧性に優れ高級感のある印刷層を設けることができるが、缶底及び缶底近傍はプラスチックフィルムで覆うことができないという問題があった。
【0008】
(B−3) そこで、このような問題に対して、金属板の少なくとも一方の面に被覆用プラスチックフィルムを積層してなるプラスチックフィルム被覆金属板を得た後、該プラスチックフィルム被覆金属板を一缶分毎に打ち抜き、打ち抜いたものをプラスチックフィルムが外側になるように有底筒状にし、次いで該プラスチックフィルム被覆有底筒の筒状部(缶胴部)の外面のプラスチックフィルム上に、別途グラビア印刷等で美粧性に優れ高級感のある印刷層を設けた接着剤層付きプラスチックフィルムを積層するという方法が、特開平2000−177745号公報に提案された。
【0009】
ところで、(B−3)の場合も、(B−1)(B−2)の場合と同様に、缶胴部を被覆するプラスチックフィルムには、耐傷付き性を付与するために外面仕上げ塗料(オーバーコート塗料)層が設けられる。外面仕上げ塗料(オーバーコート塗料)層を設ける方法としては、
(1) 印刷層及び接着剤層付きプラスチックフィルムを、プラスチックフィルム被覆有底筒の筒状部(缶胴部)の外面に積層した後に、外面仕上げ塗料(オーバーコート塗料)を塗布する方法と、
(2) 印刷層、接着剤層及びオーバーコート層と設けてなるプラスチックフィルムを形成し、得られたプラスチックフィルムを、プラスチックフィルム被覆有底筒の筒状部(缶胴部)の外面に積層する方法とがある。
後者(2)の場合、プラスチックフィルム被覆缶の缶胴部に、印刷層、接着剤層及びオーバーコート層付きプラスチックフィルムを積層する場合、該フィルム同士が重なり合う部分(ラップ部)が生じる。
【0010】
2ピース缶は、缶胴と缶底とが一体化した有底筒が形成された後、蓋部材を取り付ける前に、筒状部(缶胴部)の開口端部を縮める各種加工(ネックイン加工、フランジ加工等)が施される。
上記(2)の場合、缶胴部被覆後に生じる、印刷層、接着剤層及びオーバーコート層付きプラスチックフィルム同士のラップ部にも各種加工が施されるので、各層には上記(1)の場合よりも、より厳しい密着性が要求される。
【0011】
また、印刷層、接着剤層及びオーバーコート層付きプラスチックフィルムは、製造後巻き取って保存されることが多いが、この場合、オーバーコート層は一層外側の接着剤層に接触することとなる。オーバーコート層はその目的から一般に滑り性に富む物質を含有することが多いが、巻き取り保存時にオーバーコート層中の滑り性に富む物質が接着剤層表面を汚染をすることがある。接着剤層表面が汚染されると、プラスチックフィルム被覆有底筒の筒状部(缶胴部)との接着性が損なわれる。
従って、オーバーコート層には、ラップ部の高度な加工に耐え得る密着性、滑り性、非汚染性等が要求される。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、プラスチックフィルム被覆有底筒の筒状部(缶胴部)を被覆するための、印刷層及び接着剤層付きプラスチックフィルム用のオーバーコート用樹脂組成物であって、密着性、滑り性、非汚染性等に優れるオーバーコート層を形成し得る樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、数平均分子量1500〜6000、エポキシ当量800〜5000のエポキシ樹脂(A)、数平均分子量900〜1300、エポキシ当量180〜500のエポキシ樹脂(B)、数平均分子量5000〜15000の分岐型ポリエステル樹脂(C)、アミノ樹脂(D)、及び上記(A)〜(D)成分の少なくとも1種と反応し得る官能基を有するシリコーン化合物(E)を含有することを特徴とするプラスチックフィルム用オーバーコート樹脂組成物(以下、OPニスともいう)である。
【0014】
第2の発明は、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、ポリエステル樹脂(C)、及びアミノ樹脂(D)の合計100重量%中に、
エポキシ樹脂(A):35〜75重量%、
エポキシ樹脂(B):5〜25重量%、
ポリエステル樹脂(C):10〜30重量%、及び
アミノ樹脂(D):10〜30重量%を含有することを特徴とする第1の発明に記載のプラスチックフィルム用オーバーコート樹脂組成物であり、
第3の発明は、 エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、ポリエステル樹脂(C)、及びアミノ樹脂(D)の合計100重量部に対して、シリコーン化合物(E)を0.001〜5重量部を含有することを特徴とする第1又は第2の発明に記載のプラスチックフィルム用オーバーコート樹脂組成物である。
【0015】
第4の発明は、エポキシ樹脂(B)が、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂であることを特徴とする第1〜第3の発明いずれかに記載のプラスチックフィルム用オーバーコート樹脂組成物である。
【0016】
第5の発明は、第1〜第4の発明のいずれかに記載のプラスチックフィルム用オーバーコート樹脂組成物から形成されてなるオーバーコート層(以下、OPニス層ともいう)、プラスチックフィルム、印刷層、及び接着剤層が順次積層されてなることを特徴とするオーバーコート層等付きプラスチックフィルムであり、第6の発明は、第1〜第4の発明のいずれかに記載のプラスチックフィルム用オーバーコート樹脂組成物から形成されてなるオーバーコート層、印刷層、プラスチックフィルム、及び接着剤層が順次積層されてなることを特徴とするオーバーコート層等付きプラスチックフィルムである。
【0017】
第7の発明は、有底筒状金属缶体の外面がプラスチックフィルムで被覆されてなるプラスチックフィルム被覆缶(1)の缶胴部外面に、第5又は第6の発明に記載のオーバーコート層等付きプラスチックフィルムが該フィルムの接着剤層を介して積層されてなることを特徴とするプラスチックフィルム被覆金属缶(2)である。
【0018】
第8の発明は、金属板の一方の面に、第5又は第6の発明に記載のオーバーコート層等付きプラスチックフィルムが該フィルムの接着剤層を介して積層されてなることを特徴とするプラスチックフィルム被覆金属板であり、
第9の発明は、第8の発明に記載のプラスチックフィルム被覆金属板を用いてなるプラスチックフィルム被覆金属缶(3)である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のオーバーコート組成物(=OPニス)について説明する。
【0020】
エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)
本発明の特徴の1つは、数平均分子量とエポキシ当量の異なる2種類のエポキシ樹脂を用いることである。即ち、相対的に数平均分子量及びエポキシ当量の大きい特定のエポキシ樹脂(A)と、相対的に数平均分子量及びエポキシ当量の小さい特定のエポキシ樹脂(B)とを併用することが必要である。
後述するように、有底円筒状プラスチックフィルム被覆金属缶体の円筒部(缶胴部)外面をオーバーコート層及び接着剤層付きプラスチックフィルムで被覆する場合には、フィルム積層後、該プラスチックフィルムの端部同士がオーバーラップした部分のうち開口部付近は、ネック加工を施されるが、エポキシ樹脂(A)しか用いないと、塗料中に占めるエポキシ基の数が少なくなり、このオーバーラップ&ネック加工部におけるプラスチックフィルムのOPニス層と接着剤層との密着性が確保できない。
【0021】
一方、エポキシ樹脂(B)しか用いないと、数平均分子量が小さいため硬化塗膜凝集力が弱くなり、OPニス層の傷付き性や耐レトルト性、ネック加工性などが低下する。また、一般的に数平均分子量及びエポキシ当量の小さいエポキシ樹脂は液状であったり、固形状ではあっても融点もしくは軟化点の低いものが多いため、エポキシ樹脂(B)しか用いない場合には、OPニス層付きプラスチックフィルムを巻き取る際に、OPニス層と接着剤層とのブロッキングが生じるといった問題がある。
さらに、相対的に数平均分子量及びエポキシ当量の大きいエポキシ樹脂と、相対的に数平均分子量及びエポキシ当量の小さいエポキシ樹脂とを単に併用するだけでは不十分であり、それぞれ特定の数平均分子量及びエポキシ当量のエポキシ樹脂(A)、(B)を併用する必要がある。
例えば、数平均分子量が1500〜6000、エポキシ当量が800〜5000のエポキシ樹脂(A)と、数平均分子量が900未満、エポキシ当量が180未満のエポキシ樹脂(B‘)とを併用すると、OPニス層と接着剤層のブロッキングが生じてプラスチックフィルムを巻き戻せなくなる。
【0022】
一方、数平均分子量が900〜1300、エポキシ当量が180〜500のエポキシ樹脂(B)を、数平均分子量が6000を越え、エポキシ当量が5000を越えるようなエポキシ樹脂(A‘)とを併用すると、塗料中に占めるエポキシ基の数が少なくなり、ネック加工部においてOPニス層と接着剤層との密着不良を生じてしまう。
従って、エポキシ樹脂(A)は、数平均分子量が1500〜6000、エポキシ当量が800〜5000であることが必要であり、数平均分子量が1500〜3000、エポキシ当量が900〜2500であることが好ましい。また、エポキシ樹脂(B)としては、数平均分子量が900〜1300、エポキシ当量が180〜500のエポキシ樹脂(B)であることが必要であり、融点もしくは軟化点が60℃以上のものが好ましい。
【0023】
エポキシ樹脂(A)、(B)としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、さらにはこれらのエポキシ樹脂中のエポキシ基または水酸基に各種変性剤を反応せしめた変性エポキシ樹脂や、メチレン結合の水素引き抜き反応により各種変性剤をグラフト反応せしめたグラフト化エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0024】
エポキシ樹脂(A)、(B)のうち、ビスフェノール型エポキシ樹脂は、例えばエピクロルヒドリンとビスフェノールとを、必要に応じてアルカリ触媒などの触媒の存在下に所定の分子量まで縮合させてなる樹脂、エピクロルヒドリンとビスフェノールとを、必要に応じてアルカリ触媒などの存在下に、縮合させて低分子量のエポキシ樹脂とし、この低分子量のエポキシ樹脂とビスフェノールとを重付加させることにより得られる樹脂のいずれであってもよい。
【0025】
ビスフェノール型エポキシ樹脂の原料であるビスフェノールとしては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、1,1−ビス(4−ヒドルキシフェニル)エタン、2,2ビス(ヒドロキシフェニル)プロパン、[ビスフェノールA]、2,2ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン[ビスフェノールB]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、p−(4−ヒドロキシフェニル)フェノール、オキシビス(4−ヒドロキシフェニル)、スルホニルビス(4−ヒドロキシフェニル)、4,4‘−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタンなどを挙げることができ、なかでもビスフェノールA、ビスフェノールFが好適に用いられる。上記ビスフェノール類は、1種又は2種以上の混合物として用いてもよい。
【0026】
このようなビスフェノール型エポキシ樹脂のうちエポキシ樹脂(A)の市販品としては、例えば、油化シェルエポキシ(株)社製の、エピコート1004(数平均分子量(以下、Mnという)=1600、エポキシ当量(以下、Epという)=875〜975)、同1007(Mn=2900、Ep=1750〜2200)、同1009(Mn=3750、Ep=2400〜3300)、同1010(Mn=5500、Ep=3000〜5000)、旭化成エポキシ(株)社製の、アラルダイトAER6004(Mn=1600、Ep=875〜975)、同6097(Mn=2900、Ep=1750〜2200)、同6099(Mn=3750、Ep=2400〜3300)などを挙げることができる。
ビスフェノール型エポキシ樹脂のうちエポキシ樹脂(B)の市販品としては、油化シェルエポキシ(株)社製の、エピコート1001(Mn=900、Ep=450〜500)、旭化成エポキシ(株)社製の、AER6001(Mn=900、Ep=450〜500)などを挙げることができる。
【0027】
また、エポキシ樹脂(A)、(B)のうち、ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、分子内に多数のエポキシ基を有する多官能グリシジルエーテル樹脂など、各種のノボラック型エポキシ樹脂を挙げることが出来る。
エポキシ樹脂(B)としては、ノボラックエポキシ樹脂が好ましく、中でもクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、さらにはOPニス層の硬度、耐傷付き性、耐ブロッキング性などの観点から融点もしくは軟化点が60℃以上であるものが好適である。
【0028】
このようなフェノールノボラックエポキシ樹脂のうち、エポキシ樹脂(B)の市販品としては、例えば、ダウケミカル(株)社製のXD−7855(Mn=1100、Ep=200)、などが挙げられ、クレゾールノボラックエポキシ樹脂のうち、エポキシ樹脂(B)の市販品としては、例えば、旭化成エポキシ(株)社製のECN−1273(Mn=1040、Ep=217)、同ECN−1299(Mn=1180、Ep=219)、などが挙げられる。
【0029】
ポリエステル樹脂(C)
本発明に用いるポリエステル樹脂(C)は、数平均分子量が5000〜15000の分岐型ポリエステル樹脂である。好ましくは数平均分子量が10000〜15000の範囲である。
数平均分子量が5000未満のポリエステル樹脂を用いると、レトルト処理後のOPニス層とPETフィルム間の密着性が低下する。一方、数平均分子量が15000よりも大きなポリエステル樹脂を用いると、エポキシ樹脂(A)との相溶性が低下するため、塗料中で時間の経過と共に樹脂が析出してくる。
また、数平均分子量が上記範囲内にあるポリエステル樹脂であっても、分岐型ポリエステル樹脂ではなく、直鎖型ポリエステル樹脂を用いると、レトルト処理後のOPニス層とPETフィルム間の密着性が確保できない。
本発明に用いるポリエステル樹脂(C)は、さらに、ガラス転移温度が40〜130℃、好ましくは60℃〜130℃の範囲であることが、OPニス層の硬度、耐傷付き性、耐ブロッキング性などの点から好適である。
【0030】
本発明にいう「直鎖型」ポリエステル樹脂とは、以下に述べるポリエステル樹脂の構成成分のうち、二官能成分のみを用いて合成されるポリエステル樹脂であり、「分岐型」ポリエステル樹脂とは、二官能成分に三官能以上の成分を併用して合成されるポリエステル樹脂である。
【0031】
ポリエステル樹脂(C)は、多塩基酸成分と多価アルコール成分とをエステル化反応せしめてなるものであり、上記したように少なくと一方の成分として三官能以上の成分を用いればよい。
多塩基酸成分としては、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンニ酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ダイマー酸などから選ばれる1種以上のニ塩基酸及び、これらの酸の低級アルキルエステル化物が主として用いられ、必要に応じて、安息香酸、クロトン酸、p−t−ブチル安息香酸などの一塩基酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水ピロメリット酸などの3価以上の多塩基酸などが併用される。
多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物などのニ価アルコールが主に用いられ、さらに必要に応じてグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールを併用することができる。これらの多価アルコールは単独で、又は2種以上を混合して使用することが出来る。
両成分のエステル化又はエステル交換反応は、それ自体既知の方法によって行うことができ、例えば、前期多塩基酸成分と多価アルコール成分とを180〜250℃程度の温度で重縮合させることによって得ることができる。
【0032】
また、前記多塩基酸成分と多価アルコール成分とから水酸基を有するポリエステルを得た後、このポリエステルの水酸基に、マレイン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸などの多塩基酸を反応させることによって、樹脂中にカルボキシル基を導入したポリエステル樹脂であってもよい。
【0033】
本発明において用いられる分岐型ポリエステル(C)の市販品としては、例えば、東洋紡績(株)社製のバイロンPCR−926(Mn=12000〜14000、Tg=65℃)、ユニチカ(株)社製エリーテルUF−3300(Mn=8000、Tg=45℃)などが挙げられる。
また、直鎖型ポリエステル樹脂の市販品としては、例えば、東洋紡績(株)社製のバイロン300(Mn=22000〜25000、Tg=10℃)、同バイロン200(Mn=15000〜20000、Tg=67℃)、同バイロンGK250(Mn=12000〜14000、Tg=60℃)、同バイロン240(Mn=7000〜14000、Tg=60℃)、同バイロン220(Mn=2000〜3000、Tg=53℃)、ユニチカ(株)社製エリーテルUF−3201(Mn=20000、Tg=65℃)などが挙げられる。
【0034】
アミノ樹脂(D)
本発明に用いるアミノ樹脂は、尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等のアミノ成分とアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂、該メチロール化アミノ樹脂を適当なアルコール、もしくはグリコールエーテルによってエーテル化したものがあげられる。
アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等がある。
また、エーテル化に用いられるアルコールもしくはグリコールエーテルの例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等が挙げられる。
アミノ樹脂としては、なかでもメチロール基の少なくとも一部をアルキルエーテル化したメチロール化メラミン樹脂が好適である。
【0035】
本発明のオーバーコート樹脂組成物は、上記したエポキシ樹脂(A)、(B)、ポリエステル樹脂(C)、アミノ樹脂(D)の少なくとも1種と反応し得る官能基を有するシリコーン化合物(E)をさらに含有することが重要である。
即ち、本発明のオーバーコート樹脂組成物は、缶胴部用部材の外面被覆に用いられるので、缶体の傷付きを防止したり、搬送性を向上させたりするために、滑り性を付与する物質(以下、滑り剤ともいう)を含有することが必要である。滑り性を付与する物質としては、各種シリコーン化合物、フッ素含有化合物、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系ワックス、その他のワックス等が挙げられ、シリコーン化合物が好ましい。
【0036】
ところで、本発明のプラスチックフィルム用オーバーコート樹脂組成物は、有底円筒状プラスチックフィルム被覆金属缶体の筒状部や3ピース缶の缶胴部形成用の金属板等の缶胴部用部材に、直に塗布することもできる。
また、本発明のプラスチックフィルム用オーバーコート樹脂組成物を用いて、後述するように種々の方法によって、
▲1▼ オーバーコート層/プラスチックフィルム/印刷層/接着剤層が順次積層されてなる、オーバーコート層、印刷層及び接着剤層付き(以下、オーバーコート層等付きともいう)プラスチックフィルムを、
▲2▼ オーバーコート層/印刷層/プラスチックフィルム/接着剤層が順次積層されてなる、オーバーコート層等付きプラスチックフィルムを、
形成しておき、有底円筒状プラスチックフィルム被覆金属缶体の筒状部や缶胴部形成用の金属板等の缶胴部用部材に、上記▲1▼、▲2▼のオーバーコート層等付きプラスチックフィルムを積層することもできる。
【0037】
▲1▼、▲2▼のようなオーバーコート層等付きプラスチックフィルムを形成しておく場合、オーバーコート層等付きプラスチックフィルムを形成する過程でコイル状に巻き取ったり、あるいは形成した後に、オーバーコート層等付きプラスチックフィルムは、一旦コイル状に巻き取り、保存されることもある。コイル状に巻き取った場合、オーバーコート層は、プラスチックフィルム、印刷層、接着剤層の少なくともいずれかと重なり合う。この時、オーバーコート層に含有される滑り剤が接触しているプラスチックフィルム等の表面に移行付着しやすい。
【0038】
オーバーコート層等付きプラスチックフィルムを形成する過程で、オーバーコート層中の滑り剤が接触面に移行すると、その後当該移行面上に形成される層の密着性(接着性)を阻害する。例えば、上記▲1▼の場合において、印刷層をまだ設けていないプラスチックフィルムにオーバーコート層を積層し、これを巻き取った場合、オーバーコート層に含まれる滑り剤が、接触しているプラスチックフィルムの表面に移行付着し、印刷性を阻害したり、プラスチックフィルムと印刷層との密着性を阻害したりすることがある。あるいは、印刷層を設けてなるプラスチックフィルムの他の面にオーバーコート層を積層し、これを巻き取り、その後接着剤層を印刷層上に設ける場合、オーバーコート層に含まれる滑り剤が、接触している印刷層の表面に移行付着し、接着剤の塗工性を阻害したり、接着剤層と印刷層との密着性を阻害したりすることがある。
【0039】
さらに、オーバーコート層等付きプラスチックフィルムを形成した後に、オーバーコート層中の滑り剤が接着剤層表面に移行すると、オーバーコート層等付きプラスチックフィルムを缶胴部用部材に積層する際、密着性を阻害する。
【0040】
ところで、有底円筒状プラスチックフィルム被覆金属缶体は、筒状部(缶胴部)には接合部がないので、その外面をオーバーコート層及び接着剤層付きプラスチックフィルムで被覆する場合には、該プラスチックフィルムの端部同士がオーバーラップする様にして被覆される。
オーバーラップ部では、下側に位置するフィルムのOPニス層と、上側に位置するフィルムの接着剤層とが重ね合わせられることになる。従って、オーバーコート樹脂組成物に配合されるシリコーン化合物などの滑り剤がOPニス層から離脱し易い場合には、オーバーラップ部におけるOPニス層と接着剤層との密着性阻害の影響が特に大きい。
【0041】
そこで、オーバーコート層に滑り性を付与するシリコーン化合物は、プラスチックフィルム等に移行しないように、オーバーコート層を形成する上記したエポキシ樹脂(A)、(B)、ポリエステル樹脂(C)、アミノ樹脂(D)の少なくとも1種と反応し得る官能基を有することが重要である。
(A)〜(D)と反応し得る官能基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基等が挙げられ、中でも水酸基が好ましい。
水酸基含有シリコーン化合物としては、ジメチルポリシロキサンの側鎖、片末端、両末端または側鎖及び両末端をカルビノールで変性した反応性シリコーンオイルが挙げられる。水酸基含有シリコーン化合物の市販品としては、例えば、信越化学工業(株)社製の末端水酸基ポリエステル変性シロキサンX−24−8300、同X−24−8301、X−22−170DX、X−22−176DX、X−22−176Fなどを挙げることができる。両末端X−22−160AS、KF−6001、KF−6002、KF−6003などを挙げることが出来る。また、側鎖に水酸基を有するものとしてはX−22−4015などが挙げられる。
(A)〜(D)と反応し得る官能基を有しないシリコーン化合物、例えば信越シリコーン(株)製のX22−4272、X22−4952、X24−8310等を含有すれば、滑り性に富むオーバーコート層を得ることができるが、オーバーコート層に含有されるこれらシリコーン化合物が巻き取り保管時に接触しているプラスチックフィルム等に移行し、これを汚染すると、上記したようにオーバーコート層等付きプラスチックフィルム自体の各層の層間密着性や、オーバーコート層等付きプラスチックフィルムと缶胴部用部材との密着性や、オーバーラップ部の密着性が阻害される。
【0042】
本発明のプラスチックフィルム用オーバーコート樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、ポリエステル樹脂(C)、アミノ樹脂(D)の合計100重量%中に、エポキシ樹脂(A):35〜75重量%、エポキシ樹脂(B):5〜25重量%、ポリエステル樹脂(C):10〜30重量%、及びアミノ樹脂(D):10〜30重量%を含有することが好ましい。
有底円筒状プラスチックフィルム被覆金属缶体の円筒部(缶胴部)外面を、後述する本発明のオーバーコート層付きプラスチックフィルで被覆する場合、フィルム積層後、該プラスチックフィルムの端部同士がオーバーラップした部分のうち開口部付近は、ネック加工を施されるが、エポキシ樹脂(B)が5重量%未満になると、塗料中に占めるエポキシ基の数が少なくなり、この「オーバーラップ&ネック加工」部におけるOPニス層と接着剤層との密着性が低下する傾向にある。一方、エポキシ樹脂(B)が、25重量%を超えると、低分子量のエポキシ樹脂が増えるので、OPニス層の耐傷付き性や耐レトルト性、ネック加工性などが低下する傾向にある。
【0043】
ポリエステル樹脂(C)が10重量%未満になると、プラスチックフィルムとOPニス層との密着性が低下し、ポリエステル樹脂(C)が30重量%を超えると、相対的にエポキシ樹脂(A)及び(B)の占める割合が減少するため、「オーバーラップ&ネック加工」部におけるOPニス層と接着剤層との密着性が低下する傾向にある。
アミノ樹脂(D)が10重量%未満では、塗膜の硬化性が不十分となり、耐傷付き性や耐レトルト性、ブロッキング性などが低下する。一方、アミノ樹脂(D)が30重量%を越えると硬化した塗膜(OPニス層)が脆くなり、ネック加工性が低下する傾向にある。
【0044】
本発明のオーバーコート樹脂組成物は、上記したエポキシ樹脂(A)、(B)、ポリエステル樹脂(C)、アミノ樹脂(D)の少なくとも1種と反応し得る官能基を有するシリコーン化合物(E)を含有することが重要であり、(A)〜(D)の合計100重量部に対して、(A)〜(D)と反応し得る官能基を有するシリコーン化合物(E)は、0.001〜5重量部使用することが望ましい。好ましくは0.1〜3重量部の範囲内にあることが、滑り性とオーバーラップ部におけるOPニス層と接着剤層との密着性などの観点から優れている。
【0045】
さらに、本発明のプラスチックフィルム用オーバーコート組成物は、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、ポリエステル樹脂(C),アミノ樹脂(D)、および反応性シリコーン化合物(E)以外に、必要に応じて硬化触媒、有機溶剤、艶消し剤、消泡剤、帯電防止剤なども含有することができる。
【0046】
上記硬化触媒としては、アミノ樹脂(D)が、低分子量のアルキルエーテル化アミノ樹脂である場合には、スルホン酸化合物又はスルホン酸化合物のアミン中和物が好適に用いられる。スルホン酸化合物の代表例としては、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、リン酸などを挙げることができる。スルホン酸化合物のアミン中和物におけるアミンとしては、1級アミン、2級アミン、3級アミンのいずれであってもよい。
【0047】
上記艶消し剤としては、塗料用、インキ用として一般的に用いられるシリカやポリエチレンワックス、シリコーンパウダーなどが好適に用いられる。上記消泡剤としては、塗料用、インキ用に一般的に用いられるものをそのまま使用出来る。
【0048】
オーバーコート層等付きプラスチックフィルム
次に本発明のオーバーコート層等付きプラスチックフィルムについて説明する。
本発明のオーバーコート層等付きプラスチックフィルムには、印刷層の設けられる位置によって「裏刷り」「表刷り」の大きく2つの態様がある。即ち、
(a) 「裏刷り」タイプ:前記オーバーコート樹脂組成物から形成されてなるオーバーコート層、プラスチックフィルム、印刷層、および接着剤層が順次積層されてなる接着剤層付きプラスチックフィルム。缶胴部用部材の外面に、接着剤層を介してオーバーコート層等付きプラスチックフィルムを貼着・積層した後、オーバーコート層とプラスチックフィルムとを通してプラスチックフィルムの裏面に形成された印刷層を見るタイプである。
(b) 「表刷り」タイプ:前記オーバーコート樹脂組成物から形成されてなるオーバーコート層、印刷層、プラスチックフィルム、および接着剤層が順次積層されてなるオーバーコート層等付きプラスチックフィルム。缶胴部用部材の外面に、接着剤層を介してオーバーコート層等付きプラスチックフィルムを貼着・積層した後、オーバーコート層のみを通してプラスチックフィルム上に形成された印刷層を見るタイプである。
【0049】
上記(a)「裏刷り」オーバーコート層等付きプラスチックフィルムは、種々の方法で得ることができる。例えば、
(a−1) プラスチックフィルムの一方の面に、オーバーコート樹脂組成物を塗布・乾燥し、オーバーコート層を形成し、次いでプラスチックフィルムの他の面にインキを印刷・乾燥し、印刷層を形成し、該印刷層上に接着剤を塗布・乾燥し、接着剤層を設ける。
(a−2) プラスチックフィルムの一方の面に、インキを印刷・乾燥し、印刷層を形成し、プラスチックフィルムの他方の面に、オーバーコート樹脂組成物を塗布・乾燥し、オーバーコート層を形成し、次いで前記印刷層上に接着剤を塗布・乾燥し、接着剤層を設ける。
(a−3) プラスチックフィルムの一方の面に、インキを印刷・乾燥し、印刷層を形成し、該印刷層上に接着剤を塗布・乾燥し、接着剤層を設け、次いでプラスチックフィルムの他方の面に、オーバーコート樹脂組成物を塗布・乾燥し、オーバーコート層を設ける。
上記(a−1)〜(a−3)いずれの場合も、オーバーコート層、印刷層、接着剤層を設ける度毎に巻き取ることができる。
【0050】
同様に上記(b)「表刷り」オーバーコート層等付きプラスチックフィルムも、種々の方法で得ることができる。例えば、
(b−1) プラスチックフィルムの一方の面に、インキを印刷・乾燥し、印刷層を形成し、該印刷層上にオーバーコート樹脂組成物を塗布・乾燥し、オーバーコート層を形成し、次いでプラスチックフィルムの他の面に接着剤を塗布・乾燥し、接着剤層を設ける。
(b−2) プラスチックフィルムの一方の面に、接着剤を塗布・乾燥し、接着剤層を形成し、プラスチックフィルムの他の面にインキを印刷・乾燥し、印刷層を形成し、次いで該印刷層上にオーバーコート樹脂組成物を塗布・乾燥し、オーバーコート層を設ける。
【0051】
オーバーコート層は、「裏刷り」の場合にはプラスチックフィルムの片面上に、「表刷り」の場合には印刷層の上に、オーバーコート樹脂組成物をロールコーターやグラビアコーターなどの塗装機にて、通常、乾燥膜厚が0.5〜10μm程度となるように塗装し、通常、雰囲気温度80〜240℃程度の条件で1〜60秒間程度加熱乾燥することによって、形成することができる。
【0052】
オーバーコート層付きプラスチックフィルムに用いられるプラスチックフィルムとしては、耐熱性、強度を有するプラスチックフィルムであれば使用可能であり、ポリエステルフィルム、なかでもエステル反復単位の75〜100%がエチレンテレフタレート単位からなるものが好適である。エチレンテレフタレート単位以外のエステル単位としてはフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸などのエステル単位を挙げることができる。
本発明のオーバーコート樹脂組成物は、格別コロナ放電処理等を施さないプラスチックフィルムに対しても十分な密着性を有するが、オーバーコート層、接着剤層、印刷層との密着性をより向上させるために、プラスチックフィルムとしては、その表面をコロナ放電処理を施したものを用いることが好ましい。
プラスチックフィルムの厚さは特に限定されるものではないが、通常、厚さ5〜30μm程度のものを好適に使用することができる。
尚、「裏刷り」タイプの場合、缶胴部用部材の外面に、オーバーコート層等付きプラスチックフィルムを貼着・積層した後、プラスチックフィルムを通してプラスチックフィルムの裏面に形成された印刷層を見るので、用いられるプラスチックフィルムは透明性に優れるものである必要がある。
【0053】
オーバーコート層等付きプラスチックフィルム中の印刷層の形成に用いられるインキは、包装フィルムの印刷用に使用されるそれ自体既知の印刷インキを特に制限なく使用でき、印刷インキの塗布方法も包装フィルムの印刷と同様の方法によって行うことができる。印刷インキの種類としては架橋型の耐熱性インキであることが好ましく、例えば、ウレタン樹脂系、ポリエステル樹脂系、アクリル樹脂系、アルキッド樹脂系などが挙げられる。
【0054】
次に、オーバーコート層等付きプラスチックフィルム中の接着剤層の形成に用いられる接着剤について説明する。
本発明のオーバーコート層等付きプラスチックフィルム中の接着剤層を形成するのに用いられる接着剤としては、イソシアネート基と反応し得る官能基を有する樹脂成分100重量部に対して、非ブロック化またはブロック化ポリイソシアネート化合物を1〜50重量部含有するものを好適に使用することができ、非ブロック化またはブロック化ポリイソシアネート化合物を1〜30重量部含有するものを用いることが、加工性、耐ブロッキング性、耐水性、初期及びレトルト処理後の接着性などの観点からより好適である。
イソシアネート基と反応し得る官能基を有する樹脂成分としては、水酸基を含有する樹脂を好適に使用することができる。このような水酸基含有樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などを挙げることができる。
【0055】
接着剤に用いられる非ブロック化またはブロック化ポリイソシアネート化合物は、上記水酸基含有樹脂の硬化剤として機能するほか、
「表刷り」の場合、オーバーコート層等付きプラスチックを構成するプラスチックフィルムと接着剤層との接着性の向上に寄与したり、
「裏刷り」の場合、オーバーコート層等付きプラスチックを構成する印刷層と接着剤層との接着性の向上に寄与したり、
「表刷り」及び「裏刷り」いずれの場合も、有底円筒状プラスチックフィルム被覆金属缶体の円筒部外面を被覆しているプラスチックフィルムと接着剤層との接着性の向上に寄与したり、
「表刷り」及び「裏刷り」いずれの場合も、オーバーコート層等付きプラスチックを構成するオーバーコート層と接着剤層とのオーバーラップ部における接着性の向上に寄与したりする。
【0056】
非ブロック化ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの如き脂肪族ジイソシアネート類、水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートの如き環状脂肪族ジイソシアネート類、トリレンジイソシアネート、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート野如き芳香族ジイソシアネート類、トリフェニルメタン−4,4’,4“−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4‘−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5‘−テトライソシアネートなどの3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物の如き有機ポリイソシアネートそれ自体、
またはこれらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコールとの付加物である(いわゆるアダクト体)、
またはこれらの各有機ポリイソシアネートと水との付加物(いわゆるビウレット体)、
あるいは上記した各有機ポリイソシアネート同志の環化重合体(いわゆるイソシアヌレート体等を挙げることができる。中でもヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体、イソシアヌレート体が好適である。
【0057】
非ブロック化ポリイソシアネート化合物(E)の市販品としては、例えば、旭化成(株)社製のデュラネート24A70PX(ヘキサメチレンジイソシアネート(以下HDIと称す)のビウレット体)、同デュラネートTPA−100(HDIのイソシアヌレート体)、同デュラネートP−301−75E(HDIのアダクト体)等が挙げられる。
【0058】
ブロック化ポリイソシアネート化合物は、上記非ブロック化ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック化剤でブロック化したものであり、該ブロック化剤としては、フェノール、クレゾール、キシレノールなどのフェノール系、
ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタムなどのラクタム系、
メタノール、エタノール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコールなどのアルコール系、
ホルムアミドキシム、アセトアルドキシム、アセチキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系、
マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系などのブロック化剤を挙げることができる。なかでもオキシム系ブロック剤が好適に使用される。
【0059】
接着剤には、上記したイソシアネート基と反応し得る樹脂成分及びポリイソシアネート化合物以外に、必要に応じて、硬化触媒、顔料、有機溶剤などを含有することができる。例えば、ブロック化ポリイソシアネート化合物を用いた場合には、必要に応じて有機金属触媒を適宜使用することができる。
【0060】
顔料としては、例えば、チタン白、亜鉛華、チタンイエロー、ベンガラ、カーブンブラック、および各種焼成顔料などの無機着色顔料、シアニンブルー、シアニングリーン、有機赤色顔料、有機黄色顔料などの有機着色顔料、アルミニウム粉、光輝性マイカ粉などの金属光沢顔料、沈降性硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、クレー、シリカ、マイカ、アルミナなどの体質顔料などが挙げられる。
顔料の配合量は特に限定されるものではないが、通常、イソシアネート基と反応し得る官能基を有する樹脂成分100重量部に対して、140重量部以下の範囲であることが好適である。顔料として、チタン白などの白色顔料を用いることによりホワイトコートとしても役割を兼ねることが可能である。
【0061】
「裏刷り」の場合、プラスチックフィルムの一方の面に設けられた印刷層上に前記接着剤をロールコーター、グラビアコーター、スプレーなどの、それ自体既知の塗装手段にて、通常、乾燥膜厚が0.3〜15μmとなるように塗装し、必要に応じてタックフリーの状態になるまで、例えば、50〜180℃の温度で乾燥することによって、接着剤層を形成することができる。
また、「表刷り」の場合には、オーバーコート層付きプラスチックフィルムを構成するプラスチックフィルムの一方の面に、上記と同様にして、接着剤を塗布・乾燥することによって、接着剤層を形成することができる。
【0062】
得られたオーバーコート層等付きプラスチックフィルムは、製造直後に各種包装材(有底円筒状プラスチックフィルム被覆金属缶体の円筒部外面を被覆しているプラスチックフィルム、有底円筒状金属缶体の円筒部外面、またいわゆる3ピース缶の缶胴部を構成する金属板等)に貼り合わせることもできるが、製造後、一旦コイル状に巻き取られ、上記各種包装材に貼り合わされるまで保管されることできる。
保管される場合、保管時にオーバーコート層と接着剤層とが重なり合うので、これらの層間の耐ブロッキング性が要求される。耐ブロッキング性が悪いと、コイルを解くことができなかったり、コイルを解くことができても接着剤層の一部がオーバーコート層の表面に付着するといった問題が生じる。
【0063】
プラスチックフィルム被覆金属缶(2)
次に、本発明のプラスチックフィルム被覆金属缶(2)について説明する。
本発明のプラスチックフィルム被覆金属缶(2)は、上記オーバーコート層等付きプラスチックフィルムを該フィルムの接着剤層を介して、有底円筒状金属缶体の外面が予めプラスチックフィルムで被覆されてなるプラスチックフィルム被覆金属缶(1)の缶胴部外面のプラスチックフィルムに積層してなるものである。
プラスチックフィルム被覆金属缶(1)の缶胴部外面に、上記オーバーコート層等付きプラスチックフィルムの接着剤層を積層する条件は、オーバーコート層等付きプラスチックフィルムが劣化せず、接着剤層とプラスチックフィルム被覆金属缶(1)の缶胴部外面のプラスチックフィルムとが十分に接着され、良好な外観のプラスチックフィルム被覆金属缶(2)が得られる限り、特に限定されるものではない。
積層(貼着)条件としては、例えば、加熱ロールを用いる方法や、プラスチックフィルム被覆金属缶(1)を余熱する方法などにより、プラスチックフィルム被覆金属缶(1)表面を120〜200℃程度にし、該温度下で、短時間(通常、2秒以下程度)、プラスチックフィルム被覆金属缶(1)の缶胴部外面のプラスチックフィルムとオーバーコート層付きプラスチックフィルムの接着剤層とを圧着して、積層(貼着)する方法を挙げることができる。積層(貼着)後、接着剤層の硬化反応をさらに進行するために、プラスチックフィルムが劣化しない程度の条件で(例えば、200〜210℃×40〜100秒)さらに加熱することが好ましい。この場合、缶内面塗料を焼き付け硬化する際の熱を利用することもできる。
【0064】
有底円筒状プラスチックフィルム被覆金属缶(1)は、各種金属板の少なくとも一方の面にプラスチックフィルムを常法に従い、積層してなるプラスチックフィルム被覆金属板から一缶分の大きさの板を切り出し、この一缶分のプラスチックフィルム被覆金属板をプラスチックフィルム被覆層が外側になるように有底円筒状にしたものである。
【0065】
有底円筒状プラスチックフィルム被覆金属缶(1)に用いられる金属板としては、例えば、熱延鋼板、冷延鋼板、溶融亜鉛合金、メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、鉄−亜鉛合金メッキ鋼板、亜鉛−アルミニウム合金メッキ鋼板、ニッケル−亜鉛合金メッキ鋼板、ニッケル−錫合金メッキ鋼板、ブリキ、クロムメッキ鋼板、アルミニウムメッキ鋼板、ターンメッキ鋼板、ニッケルメッキ鋼板、ステンレススチール、ティンフリースチール、アルミニウム板、銅板、チタン板などの金属素材、これらの金属素材に化成処理、例えば、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化膜処理などを行った化成処理金属板、これらの金属素材または化成処理金属板の表面にホワイトコートなどのプライマー層を形成したプライマー塗装金属板などの塗装金属板を挙げることができる。
【0066】
有底円筒状プラスチックフィルム被覆金属缶(1)に用いられるプラスチックフィルムとしては、セロハン、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリサルホン及びこれらのプラスチックの複合材などでできたフィルムを用いることができる。
【0067】
プラスチックフィルム被覆金属板、及びプラスチックフィルム被覆金属缶(3)
次に、本発明のプラスチックフィルム被覆金属板、及びプラスチックフィルム被覆金属缶(3)について説明する。
本発明のプラスチックフィルム被覆金属板は、金属板の一方の面に、上記オーバーコート層等付きプラスチックフィルムを該フィルムの接着剤層を介して積層してなるものである。
用いられる金属板としては、プラスチックフィルム被覆金属缶(1)を得る際に用いられるものと同様の金属板が挙げられる。
金属板とオーバーコート層等付きプラスチックフィルムの接着剤層とを積層する条件は、プラスチックフィルム被覆金属缶(1)の缶胴部外面のプラスチックフィルムと、オーバーコート層付きプラスチックフィルムの接着剤層とを積層する場合と同様である。
本発明のプラスチックフィルム被覆金属板は、次に述べるようにプラスチックフィルム被覆金属缶(3)に特に好適に用いられるが、その他キャップなどの金属蓋用途、ラミネートチューブ、魔法ビン、冷蔵庫外面などの家庭用機器の外面などにも適用できる。
【0068】
本発明のプラスチックフィルム被覆金属缶(3)は、上記のようにして得られたプラスチックフィルム被覆金属板を、オーバーコート層が外側になるように円筒状に丸め、両端を接着したり、溶接したりすることによって、筒状部材を得、該筒状部材の開口部に蓋部材、及び底部材を取り付けたものである。
【0069】
筒状部材は、蓋部材又は底部材を取り付ける前に、又は取り付けた後に、溶接部に補修塗料を塗布したり、缶内面塗料を塗布したりするので、金属板とオーバーコート層等付きプラスチックフィルムとを軽く積層(貼着)しておき、これら塗料を加熱硬化する際の熱を利用して、プラスチックフィルム被覆金属板の接着剤の硬化反応を進行することもできる。
【0070】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、以下、特に断らない限り、「部」及び「%」は、いずれも重量基準によるものとする。
【0071】
製造例1 ポリエステル樹脂(C1)の製造
4つ口フラスコにジメチルテレフタル酸445.7部、エチレングリコール71.2部、,プロピレングリコール192.1部、トリメチロールプロパン41.0部、酢酸亜鉛0.15部を仕込み、180℃まで昇温する。脱メタノール反応が始まってから220℃まで徐々に温度を上げ、理論脱メタノール量が95%以上になるまで、3〜4時間反応を続ける。理論脱メタノール量が95%以上になったら温度を200℃まで下げてテトラ−n−ブチルチタネートを0.0075部入れて220℃まで昇温する。220℃になったら減圧を開始し、5mmHg以下の減圧下に、徐々に温度を240℃まで上げて、3〜4時間脱グリコール反応を行ない、数平均分子量が6000になったところで反応を停止し、分岐型ポリエステル樹脂(C1)を得た。得られた分岐型ポリエステル樹脂(C1)のガラス転移温度は65℃であった。
【0072】
製造例2 ポリエステル樹脂(C2)の製造
4つ口フラスコにジメチルテレフタル酸400部、プロピレングリコール305部、エチレングリコール42部、ネオペンチルグリコール32部、及び酢酸マグネシウム0.18部、テトラ−n−ブチルチタネート0.29部を加え徐々に昇温し、反応温度が220℃になるまで4時間反応を続けた。次いでトリフェニルフォスファイト0.14部を加えて反応温度を250℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後0.5mmHg以下の減圧下で4時間反応させて直鎖型ポリエステル樹脂(C2)を得た。得られた直鎖型ポリエステル樹脂(C2)の数平均分子量は17000で、ガラス転移点は72℃であった。
【0073】
製造例3 ポリエステル樹脂(C3)の製造
4つ口フラスコにイソフタル酸398.4部、エチレングリコール75.9部、ネオペンチルグリコール127.3部、トリメチロールプロパン38.6部、酢酸亜鉛0.012部を仕込み、200℃まで昇温する。脱水反応がはじまってから徐々に240℃まで温度を上げて約4時間反応を続け、酸化が5以下になったら200℃まで温度を下げてから、
減圧を開始する。2mmHg以下の減圧下で約30分間反応させて分岐型ポリエステル樹脂(C3)を得た。得られた分岐型ポリエステル樹脂(C3)の数平均分子量は1300で、ガラス転移点は60℃であった。
【0074】
製造例4 接着剤溶液(P)の製造
ユニチカ(株)社製ポリエステル樹脂、商品名「エリーテルUE3200」(Mn=16000、Tg=65℃)85部、旭化成(株)社製ヘキサメチレンジイソシアネートのトリイソシアヌレート体のブロック化合物溶液、商品名「デュラネートTPA−B80E」12.5部(固形分量で10部)、旭化成(株)社製ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート化合物、商品名「デュラネートTPA100」5部、およびジブチル錫ジラウレート0.5部を、混合溶剤(メチルエチルケトン/トルエン=50/50)中に混合分散させて、不揮発分約30%の接着剤溶液(P)を調整した。
【0075】
[実施例1]:オーバーコート樹脂組成物
「エピコート1004」(Mn=1600、Ep=875〜975)50部、「ECN−1273」(Mn=1040、Ep=217)10部、製造例1で得られた「ポリエステル樹脂(C1)」(Mn=6000、Tg=65℃)20部、「サイメル303」20部、「信越シリコーンX24−8300」1部、「パラトルエンスルホン酸」1部を、混合溶剤(メチルエチルケトン/メチルプロピレングリコール/酢酸エチル=80/10/10)中に溶解させて、不揮発分15%、粘度10秒(フォードカップ#4、25℃)のオーバーコート樹脂組成物を調整した。
【0076】
[実施例2〜8]及び[比較例1〜11]:オーバーコート樹脂組成物
実施例1と同様の方法で、表−1、表−2に記載したオーバーコート樹脂組成物を調整した。
【0077】
[実施例9〜16]及び[比較例12〜22]:オーバーコート層付きプラスチックフィルム
片面をコロナ放電処理した厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の、コロナ放電処理をしていない片面に、各実施例、比較例で調整したオーバーコート樹脂組成物を乾燥膜厚が1μmとなるように塗装し、乾燥機にて雰囲気温度120℃で8秒間乾燥させた。
ついで、PETフィルムのコロナ放電処理面に、ポリウレタン樹脂系のインキ層を設け、該印刷層上に製造例3で調整した接着剤(P)を乾燥膜厚が3μmとなるように塗装し、乾燥機にて雰囲気温度160℃で20秒間乾燥させて、オーバーコート層/プラスチックフィルム/印刷層/接着剤層が順次積層されてなる、オーバーコート層付きプラスチックフィルムを得た。
【0078】
[実施例17〜24]及び[比較例23〜33]:プラスチックフィルム被覆金属板にオーバーコート層付きプラスチックフィルムを積層してなる積層体
各実施例及び各比較例で得たオーバーコート層付きプラスチックフィルムを2枚づつ用意し、一方のフィルムの接着剤層が他方のフィルムのオーバーコート層に接するように2枚のフィルムを2〜3mmの幅でオーバーラップさせ、両フィルムの接着剤層と、両面にポリエチレンテレフタレートフィルムを貼ったティンフリースチール金属板の片面とを重ね合わせ、150℃にセットされたラミネーターにて圧力3kg/cm2、速度2m/分の条件で、圧着させて、オーバーコート層付きプラスチックフィルム/プラスチックフィルム被覆金属板の積層体を得た。
【0079】
評価方法
1.<耐ブロッキング性>:実施例9〜16、比較例12〜22で得たオーバーコート層付きプラスチックフィルムフィルムをそれぞれ2枚づつ用意し、各フィルムのオーバーコート層面と接着剤層面とを重ね合わせて、温度50℃、圧力5kg/cm2の条件下に2時間加熱圧着した後、室温まで放令した。室温まで冷却したら、重ね合わせたフィルム同士を手で剥がし、オーバーコート層/PETフィルム間、および接着剤層/PETフィルム間の剥離状況、並びに剥がす時の抵抗感を評価した。
◎:オーバーコート層/PETフィルム間、および接着剤層/PETフィルム間のいずれにおいても剥離が全くなく、手で剥がした時の抵抗感が、PETフィルム同士を剥がした時の抵抗感よりも小さい。
○:オーバーコート層/PETフィルム間、および接着剤層/PETフィルム間のいずれにおいても剥離が全くなく、手で剥がした時の抵抗感が、PETフィルム同士を剥がした時の抵抗感と同じ。
△:手で剥がした時の抵抗感が、PETフィルム同志を剥がした時の抵抗感よりも大きいが、オーバーコート層/PETフィルム間、および接着剤層/PETフィルム間のいずれにおいても剥離は全くない。
×:オーバーコート層又は接着剤層の一部または全部がPETフィルムから剥離し、接触していた反対面に附着する。
【0080】
2.<裏汚染性>:実施例9〜16、比較例12〜22で得たオーバーコート層付きプラスチックフィルムフィルムのオーバーコート層面とPETフィルムのコロナ放電処理面(表面張力:45dyne/cm以上)とを重ね合わせて、上記耐ブロッキング性試験と同様の方法で圧着した。室温まで冷却し、重ね合わせたフィルムを手で剥がして、剥がしたPETフィルムのオーバーコート層と圧着していた面の表面張力を、濡れ指数液で測定した。
◎:表面張力が45dyne/cm以上
○:表面張力が38〜45dyne/cm
△:表面張力が33〜37dyne/cm
×:表面張力が33dyne/cm以下
【0081】
3.<PETフィルムへの密着性>:実施例17〜24、比較例23〜33で得たオーバーコート層付きプラスチックフィルム/プラスチックフィルム被覆金属板の積層体のオーバーコート層面(非オーバーラップ部)にナイフでクロスカットを入れ、そのクロスカット部にセロハンテープを密着させた後、セロハンテープを急激に上方に引き剥がしたときのオーバーコート層のPETフィルムからの剥離程度を下記基準により評価した。
◎:オーバーコート層の剥離が認められない。
○:オーバーコート層の剥離がわずかに認められるが、ナイフ傷から0.5mm以内の幅である。
△:オーバーコート層の剥離がかなり認められる。
×:オーバーコート層の剥離が著しく認められる。
【0082】
4.<焼き付け後熱水処理後の密着性>:実施例17〜24、比較例23〜33で得たオーバーコート層付きプラスチックフィルム/プラスチックフィルム被覆金属板の積層体を、雰囲気温度210℃の乾燥機で75秒間焼き付けた。
次いで、上記焼き付け後の積層体を脱イオン水中にて125℃で30分間熱水処理した後、オーバーコート層面の非オーバーラップ部とオーバーラップ部にクロスカットを入れ、セロハンテープで密着試験を行ない、非オーバーラップ部におけるオーバーコート層とPETフィルム、間の密着性、並びにオーバーラップ部におけるオーバーコート層と接着剤層と間の密着性を下記基準で評価した。
◎:非オーバーラップ部におけるオーバーコート層とPETフィルムとの間に剥離はなく、オーバーラップ部におけるオーバーコート層と接着剤層との間にも剥離は認められない。
○:非オーバーラップ部におけるオーバーコート層とPETフィルムとの間、又はオーバーラップ部におけるオーバーコート層と接着剤層との間のいずれかに剥離がわずかに認められるが、ナイフ傷から0.5mmの幅以内である。
△:非オーバーラップ部におけるオーバーコート層とPETフィルムとの間、又はオーバーラップ部におけるオーバーコート層と接着剤層との間のいずれかに剥離がかなり認められる。
×:非オーバーラップ部におけるオーバーコート層とPETフィルムとの間、又はオーバーラップ部におけるオーバーコート層と接着剤層との間のいずれかに剥離が著しく認められる。
【0083】
5.<焼き付け後オーバーラップ部&加工部の密着性>:実施例17〜24、比較例23〜33で得たオーバーコート層付きプラスチックフィルム/プラスチックフィルム被覆金属板の積層体を、雰囲気温度210℃の乾燥機で75秒間焼き付けた。
次いで、オーバーコート層側が凸状の外側(凸側)になるように、かつオーバーラップ部が凸部のほぼ中央に位置するよう、上記焼き付け後の積層体に、直径35mm、深さ10mmのキャップ状に絞り加工を施した後、脱イオン水中にて125℃で30分間熱水処理を行い、絞り加工を施したオーバーラップ部分の剥離度合いを下記基準で評価した。
◎:キャップの円周上に剥離が認められない。
○:キャップの円周上に1箇所剥離が認められる。
△:キャップの円周上に2〜3箇所剥離が認められる。
×:キャップの円周上に4箇所以上剥離が認められる。
【0084】
6.<焼き付け後の動摩擦係数>:実施例17〜24、比較例23〜33で得たオーバーコート層付きプラスチックフィルム/プラスチックフィルム被覆金属板の積層体を、雰囲気温度210℃の乾燥機で75秒間焼き付けた。
20℃において、スリップテスターを用い、鋼球3点接触式の荷重1kgの重りを、上記焼き付け後の積層体のオーバーコート層上に設置し、移動速度100cm/分における動摩擦係数[摩擦抵抗[(g)/1000(g)]を求め、下記基準により評価した。
◎:動摩擦係数が0.08未満
○:動摩擦係数が0.08以上で0.10未満
△:動摩擦係数が0.10以上で0.14未満
×:動摩擦係数が0.14以上
【0085】
7.<焼き付け後の耐傷付き性>:実施例17〜24、比較例23〜33で得たオーバーコート層付きプラスチックフィルム/プラスチックフィルム被覆金属板の積層体を、雰囲気温度210℃の乾燥機で75秒間焼き付けた。
バウデン摩擦試験機を用い、荷重100gの重りを、上記焼き付け後の積層体のオーバーコート層上に載せ、30往復こすったときのオーバーコート層表面の傷付きの程度を下記基準で評価した。
◎:ほとんど傷が認められない。
○:わずかに傷が認められる。
△:傷がかなり認められる。
×:全面に傷が認められる。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【発明の効果】
本発明のオーバーコート樹脂組成物を用い、オーバーコート層/プラスチックフィルム/印刷層/接着剤層が順次積層されてなるオーバーコート層等付きプラスチックフィルム、又はオーバーコート層/印刷層/プラスチックフィルム/接着剤層が順次積層されてなるオーバーコート層等プラスチックフィルムを得、これらのオーバーコート層等付きプラスチックフィルムを用いて、有底円筒状に成型された金属缶体の円筒部(缶胴部)外面を、または有底円筒状に成型されたプラスチックフィルム被覆金属缶体の円筒部(缶胴部)外面を、あるいは3ピース缶の場合、金属板を被覆することによって、缶胴部外面側にグラビア印刷などで優れた高級感のある美粧性を付与することができる。
また、本発明のオーバーコート樹脂組成物は、プラスチックフィルムとの密着性に優れ、オーバーラップ部におけるオーバーコート層と接着剤層との密着性にも優れるため、円筒部の開口部付近にネック加工やフランジ加工あるいはカール加工などを施し、さらに熱水中処理(レトルト処理)を施しても、剥離することがない。
さらに、本発明のオーバーコート樹脂組成物から形成されるオーバーコート層は、優れた滑り性を有するにも関らず、シリコーン化合物による裏汚染等がなく、グラビア印刷などの印刷性を損なうことも、接着剤層と有底円筒状に成型されたプラスチックフィルム被覆金属缶体の円筒部(缶胴部)外面との密着阻害を生じることもない。
Claims (9)
- 数平均分子量1500〜6000、エポキシ当量800〜5000のエポキシ樹脂(A)、数平均分子量900〜1300、エポキシ当量180〜500のエポキシ樹脂(B)、数平均分子量5000〜15000の分岐型ポリエステル樹脂(C)、アミノ樹脂(D)、及び上記(A)〜(D)成分の少なくとも1種と反応し得る官能基を有するシリコーン化合物(E)を含有することを特徴とするプラスチックフィルム用オーバーコート樹脂組成物。
- エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、ポリエステル樹脂(C)、及びアミノ樹脂(D)の合計100重量%中に、
エポキシ樹脂(A):35〜75重量%、
エポキシ樹脂(B):5〜25重量%、
ポリエステル樹脂(C):10〜30重量%、及び
アミノ樹脂(D):10〜30重量%を含有することを特徴とする請求項1記載のプラスチックフィルム用オーバーコート樹脂組成物。 - エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、ポリエステル樹脂(C)、及びアミノ樹脂(D)の合計100重量部に対して、シリコーン化合物(E)を0.001〜5重量部を含有することを特徴とする請求項1又は2記載のプラスチックフィルム用オーバーコート樹脂組成物。
- エポキシ樹脂(B)が、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のプラスチックフィルム用オーバーコート樹脂組成物。
- 請求項1〜4いずれか記載のプラスチックフィルム用オーバーコート樹脂組成物から形成されてなるオーバーコート層、プラスチックフィルム、印刷層、及び接着剤層が順次積層されてなることを特徴とするオーバーコート層等付きプラスチックフィルム。
- 請求項1〜4いずれか記載のプラスチックフィルム用オーバーコート樹脂組成物から形成されてなるオーバーコート層、印刷層、プラスチックフィルム、及び接着剤層が順次積層されてなることを特徴とするオーバーコート層等付きプラスチックフィルム。
- 有底筒状金属缶体の外面がプラスチックフィルムで被覆されてなるプラスチックフィルム被覆缶(1)の缶胴部外面に、請求項5又は6記載のオーバーコート層等付きプラスチックフィルムが該フィルムの接着剤層を介して積層されてなることを特徴とするプラスチックフィルム被覆金属缶(2)。
- 金属板の一方の面に、請求項5又は6記載のオーバーコート層等付きプラスチックフィルムが該フィルムの接着剤層を介して積層されてなることを特徴とするプラスチックフィルム被覆金属板。
- 請求項8記載のプラスチックフィルム被覆金属板を用いてなるプラスチックフィルム被覆金属缶(3)。
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