JP3884884B2 - インコーナ切削加工方法および切削工具 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
この発明は、インコーナ切削加工方法および切削工具に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
ダイ金型のダイ孔等のポケットの内角部の切削加工は、円柱状のエンドミル等の回転切削工具による切削加工、或いは棒状電極やワイヤ電極による放電加工により行われる。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
エンドミルによるポケットの切削加工では、工具半径より小さい曲率半径の内角部の加工（コーナＲ加工）はできず、或る内角部の最小曲率半径が与えられると、これを加工するエンドミルの半径は、最大でも、この曲率半径以内にしなければならない。また、ポケットが深いと、小径で軸長が長い工具が必要になり、工具の剛性が不足して適正な切削が行われない状況になる。また、エンドミルでは、ピン角と云われる９０度等の尖った角度の内角部の加工を行うことができない。
【０００４】
このため、内角部の曲率半径が小さく、深いポケットの加工や、ピン角の加工は放電加工により行うことが通常になっている。しかし、放電加工は、切削加工に比して加工効率が悪く、加工費が高いと云う欠点があり、加工リードタイムの短縮のためには、放電加工と云う別工程を必要とせず、一台の工作機械で全ての加工を完了したいと云うニーズが強い。
【０００５】
この発明は、上述の如き問題点を解消するためになされたもので、内角部の曲率半径が小さく、深いポケットのコーナＲ加工や、ピン角と云われる９０度等の尖った角度の内角部の加工を切削加工により効率よく行うインコーナ切削加工方法、および、このインコーナ切削加工方法の実施に使用する切削工具を提供することを目的としている。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、請求項１に記載の発明によるインコーナ切削加工方法は、ピン角と云われる９０度等の尖った角度の内角部を切削加工により被加工物に形成するインコーナ切削加工方法であって、前記内角部の内角より小さい内角の頂点を有する多角形状底面の少なくとも一辺と、その一辺の外端点より軸線方向に延在する稜線部とに切刃を具備した切削工具を数値制御式の工作機械の主軸に取り付け、前記主軸によって前記切削工具を回転駆動し、前記外端点が前記被加工物の内角部のピン角形状に合致する移動軌跡を描くようにするために、前記切削工具の回転角度に応じて前記工作機械のＸ軸とＹ軸の２軸同時制御によるＸ軸移動とＹ軸移動を行って、当該切削工具と前記被加工物とを前記多角形状底面と平行な面で相対移動させ、前記切削工具の軸線方向に切り込み移動を与えて前記内角部を切削する。
【０００７】
また、上述の目的を達成するために、請求項２に記載の発明によるインコーナ切削加工方法は、被加工物の内角部をコーナＲ加工するインコーナ切削加工方法であって、前記コーナＲ加工の半径より大きい工具半径で、多角形状底面の少なくとも一辺と、その一辺の外端点より軸線方向に延在する稜線部とに切刃を具備した切削工具を数値制御式の工作機械の主軸に取り付け、前記主軸によって前記切削工具を回転駆動し、前記外端点が前記被加工物の内角部のコーナＲ加工形状に合致する移動軌跡を描くようにするために、前記切削工具の回転角度に応じて前記工作機械のＸ軸とＹ軸の２軸同時制御によるＸ軸移動とＹ軸移動を行って、当該切削工具と前記被加工物とを前記多角形状底面と平行な面で相対移動させ、前記切削工具の軸線方向に切り込み移動を与えて前記内角部を切削する。
【０００８】
請求項３に記載の発明によるインコーナ切削加工方法は、前記切削工具と前記被加工物の前記多角形状底面と平行な面での相対移動を、前記切削工具の軸線方向の切り込み移動の全域に亙って一定にする。
【０００９】
請求項４に記載の発明によるインコーナ切削加工方法は、前記切削工具と前記被加工物との前記多角形状底面と平行な面での相対移動を、前記切削工具の軸線方向の切り込み移動に応じて変化させる。
【００１０】
請求項５に記載の発明による切削工具は、上述の発明によるインコーナ切削加工方法の実施に用いられる切削工具であって、底面が多角形状をなし、その多角形状底面の少なくとも一辺と、その一辺の前記外端点より軸線方向に延在する稜線部とに切刃を有する。
【００１１】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図を参照してこの発明の実施の形態を詳細に説明する。
【００１２】
図１はこの発明によるインコーナ切削加工方法を実施する工作機械を示している。この工作機械は、Ｘ軸方向に移動可能なＸ軸テーブル１と、Ｘ軸テーブル１上に搭載されてＹ軸方向に移動可能なＹ軸テーブル２と、Ｚ軸方向に移動可能な主軸台３と、主軸台３に取り付けられた主軸４とを有し、Ｙ軸テーブル２上に被加工物Ｗをセットされる。
【００１３】
Ｘ軸テーブル１はＸ軸サーボモータ５により駆動されるＸ軸送り機構６によりＸ軸方向に移動し、Ｙ軸テーブル２はＹ軸サーボモータ７により駆動されるＹ軸送り機構８によりＹ軸方向に移動し、主軸台３はＺ軸サーボモータ９により駆動されるＺ軸送り機構１０によりＺ軸方向に移動する。Ｘ軸、Ｙ軸、Ｚ軸の各サーボモータ５、７、９には位置検出用のロータリエンコーダ１１、１２、１３が取り付けられている。
【００１４】
主軸４は主軸モータ１４により駆動され、主軸４の回転角（Ｃ軸角度）が主軸モータ１４に取り付けられたロータリエンコーダ１５により検出できるようになっている。主軸４には切削工具５０が取り付けられる。
【００１５】
この工作機械は数値制御式のものあり、数値制御装置２０は、各軸のロータリエンコーダ１１、１２、１３、１５より位置情報、Ｃ軸角度情報を入力し、加工プログラムに従って、主軸モータ１４による主軸４の回転駆動と、各軸のサーボモータ５、７、９の駆動を制御する。
【００１６】
図２、図３はこの発明によるインコーナ切削加工方法の実施に使用する切削工具を示している。なお、図２は切削工具を上下反転して工具底面を上側にして示しており、図３は切削工具の底面図である。
【００１７】
この発明によるインコーナ切削加工方法の実施に使用する切削工具は、基本的には、３角形、４角形、５角形等の多角形状底面の少なくとも一辺およびその外周に切刃を有する回転式の切削工具であり、図示されている切削工具５０は、代表的なものとして、正３角形状の底面５１の各辺の一方の頂点（切刃の外端点）ａ、ｂ、ｃ側に辺長さの略１／２の長さに亙って切刃５２、５３、５４を有し、切刃後方に逃げ角（逃げ面５５、５６、５７）を付けられている。この場合、切刃５２、５３、５４は、頂点ａ、ｂ、ｃより軸線方向に延在する稜線部（外周）５２ａ、５３ａ、５４ａにも設けられている。
【００１８】
切削工具５０は正３角形状底面５１の内心を通る軸線に沿って円柱状の幹部５８を有し、幹部５８を主軸４のチャック（図示省省略）に把持され、前記軸線周りに図２、図３で見て反時計廻り方向に回転駆動される。なお、切刃５２、５３、５４の正面部には切屑切断用のブレーカ溝５９が設けられている。このブレーカ溝５９は被加工物Ｗの材質に応じて設けられればよい。
【００１９】
被加工物ＷのポケットＰの内角部ｉを切削加工により創成する場合には、主軸４によって切削工具５０を回転駆動し、切刃５２、５３、５４をなす辺を含む多角形状底面５１の各頂点ａ、ｂ、ｃが順次、切削対象のインコーナ形状（内角部ｉの形状）に合致する移動軌跡を描くように、ロータリエンコーダ１５より得られる切削工具５０の回転角度に応じてＸ軸サーボモータ５、Ｙ軸サーボモータ７によってＸ軸テーブル１とＹ軸テーブル２０をフィードバック制御で互いに同期駆動し、切削工具５０に対して被加工物Ｗを工具底面と平行な面で移動させ、Ｚ軸サーボ９によるＺ軸送りにより切削工具５０の軸線方向に切り込み移動を与え、工具底面の切刃５２、５３、５４によりインコーナを切削する。この場合、工具１回転に付き、切刃５２、５３、５４によって３回の切削が行われる。
【００２０】
従って、内角部のＲによって制限されることなく太い工具で切削加工ができ、深いポケットの加工でも、切削工具５０が剛性不足を生じることがない。
【００２１】
上述のような切削加工法では、切削工具５０の工具径に制限されることなく、図４に示されているような、小さい曲率半径によるコーナＲを、当該コーナＲより半径の大きい工具を使って切削加工で創成でき、また多角形状底面５１の内角以上の角度のピン角の加工を行うことができる。正３角形状底面の切削工具５０では、内角は６０度であるから、たとえば、図５に示されているような９０度のピン角の加工を切削加工で創成できる。図６は９０度のピン角加工を行う場合の工具の運動軌跡を示している。なお、図６において、符合Ａはインコーナ切削加工前のインコーナ形状を示しており、仮想線ＡとＸ座標軸線とＹ座標軸線とで囲まれたコーナ領域を切削除去できる。
【００２２】
上述のような切削加工において、切削工具５０と被加工物Ｗとの工具底面と平行な面での相対移動の軌跡を切り込み移動の全域に亙って一定に設定すれば、図７（ａ）、（ｂ）に示されているような垂直面によるコーナＲ加工、ピン角加工を行える。
【００２３】
また、上述のような切削加工において、切削工具５０と被加工物Ｗとの工具底面と平行な面での相対移動の軌跡を切り込み移動に応じて変化させると、図８に示されているような傾斜面によるインコーナ加工を行える。
【００２４】
なお、Ｘ軸とＹ軸の移動に関しては、２軸同時制御を行う必要があるが、切り込み方向送りであるＺ軸に関しては、Ｘ軸、Ｙ軸に対して、同時に制御する場合と、切り込み量を単独で与え、Ｘ軸、Ｙ軸のみで、創成運動を行う非同時制御の場合を選択することができる。
【００２５】
また、この発明によるインコーナ切削加工方法に使用する切削工具は、上述した多角形状底面の切削工具５０に限られることはなく、図９に示されているように、工具本体６１に切刃（直刃）をなすチップ６２、６３、６４を交換可能に取り付けられた三つ葉形状のスローアウェイタイプの切削工具６０を使用することもできる。また、二葉形状、四葉形状のスローアウェイタイプの切削工具も使用できる。
【００２６】
【発明の効果】
以上の説明から理解される如く、請求項１に記載の発明によるインコーナ切削加工方法によれば、ピン角と云われる９０度等の尖った角度の内角部を切削加工により被加工物に形成するインコーナ切削加工方法であって、前記内角部の内角より小さい内角の頂点を有する多角形状底面の少なくとも一辺と、その一辺の外端点より軸線方向に延在する稜線部とに切刃を具備した切削工具を数値制御式の工作機械の主軸に取り付け、前記主軸によって前記切削工具を回転駆動し、前記外端点が前記被加工物の内角部のピン角形状に合致する移動軌跡を描くようにするために、前記切削工具の回転角度に応じて前記工作機械のＸ軸とＹ軸の２軸同時制御によるＸ軸移動とＹ軸移動を行って、当該切削工具と前記被加工物とを前記多角形状底面と平行な面で相対移動させ、前記切削工具の軸線方向に切り込み移動を与えて前記内角部を切削するから、ピン角と云われる９０度等の尖った角度の内角部の加工を切削加工によって効率よく行うことができる。
【００２７】
、請求項２に記載の発明によるインコーナ切削加工方法によれば、被加工物の内角部をコーナＲ加工するインコーナ切削加工方法であって、前記コーナＲ加工の半径より大きい工具半径で、多角形状底面の少なくとも一辺と、その一辺の外端点より軸線方向に延在する稜線部とに切刃を具備した切削工具を数値制御式の工作機械の主軸に取り付け、前記主軸 によって前記切削工具を回転駆動し、前記外端点が前記被加工物の内角部のコーナＲ加工形状に合致する移動軌跡を描くようにするために、前記切削工具の回転角度に応じて前記工作機械のＸ軸とＹ軸の２軸同時制御によるＸ軸移動とＹ軸移動を行って、当該切削工具と前記被加工物とを前記多角形状底面と平行な面で相対移動させ、前記切削工具の軸線方向に切り込み移動を与えて前記内角部を切削するから、工具剛性を充分保って、内角部の曲率半径が小さく、深いポケットのコーナＲ加工を切削加工によって効率よく行うことができる。
【００２８】
請求項３に記載の発明によるインコーナ切削加工方法によれば、切削工具と被加工物との工具底面と平行な面での相対移動を切り込み移動の全域に亙って一定にしてインコーナを切削するから、垂直面によるコーナＲ加工、ピン角加工を切削加工によって効率よく行うことができる。
【００２９】
請求項４に記載の発明によるインコーナ切削加工方法によれば、切削工具と被加工物との工具底面と平行な面での相対移動を切り込み移動に応じて変化させてインコーナを切削するから、傾斜面によるコーナＲ加工、ピン角加工を切削加工によって効率よく行うことができる。
【００３０】
請求項５に記載の発明による切削工具は、底面が多角形状をなし、その多角形状底面の少なくとも一辺と、その一辺の前記外端点より軸線方向に延在する稜線部とに切刃を有するものであるから、この切削工具によって請求項１〜４の何れかに記載の発明によるインコーナ切削加工方法を効率よく実施できる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 この発明によるインコーナ切削加工方法を実施する工作機械の一例を示す斜視図である。
【図２】 この発明によるインコーナ切削加工方法の実施に使用する切削工具を上下反転して工具底面を上側にして示す斜視図である。
【図３】 この発明によるインコーナ切削加工方法の実施に使用する切削工具の底面図である。
【図４】 この発明によるインコーナ切削加工方法によるコーナＲの切削加工例を示す平面図である。
【図５】 この発明によるインコーナ切削加工方法によるピン角の切削加工例を示す平面図である。
【図６】 ９０度のピン角加工を行う場合の工具の運動軌跡を示す説明図である。
【図７】 （ａ）、（ｂ）は垂直面によるコーナＲ、ピン角の切削加工例を示す斜視図である。
【図８】 傾斜面によるインコーナの切削加工例を示す斜視図である。
【図９】 この発明によるインコーナ切削加工方法の実施に使用する他の切削工具の底面図である。
【符号の説明】
１ Ｘ軸テーブル
２ Ｙ軸テーブル
３ 主軸台
４ 主軸
５ Ｘ軸サーボモータ
７ Ｙ軸サーボモータ
９ Ｚ軸サーボモータ
１１、１２、１３ ロータリエンコーダ
１４ 主軸モータ
１５ ロータリエンコーダ
２０ 数値制御装置
５０ 切削工具
５１ 正３角形状底面
５２、５３、５４ 切刃
５５、５６、５７ 逃げ面
５８ 幹部 ６０ 切削工具
６２、６３、６４ チップ
【発明の属する技術分野】
この発明は、インコーナ切削加工方法および切削工具に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
ダイ金型のダイ孔等のポケットの内角部の切削加工は、円柱状のエンドミル等の回転切削工具による切削加工、或いは棒状電極やワイヤ電極による放電加工により行われる。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
エンドミルによるポケットの切削加工では、工具半径より小さい曲率半径の内角部の加工（コーナＲ加工）はできず、或る内角部の最小曲率半径が与えられると、これを加工するエンドミルの半径は、最大でも、この曲率半径以内にしなければならない。また、ポケットが深いと、小径で軸長が長い工具が必要になり、工具の剛性が不足して適正な切削が行われない状況になる。また、エンドミルでは、ピン角と云われる９０度等の尖った角度の内角部の加工を行うことができない。
【０００４】
このため、内角部の曲率半径が小さく、深いポケットの加工や、ピン角の加工は放電加工により行うことが通常になっている。しかし、放電加工は、切削加工に比して加工効率が悪く、加工費が高いと云う欠点があり、加工リードタイムの短縮のためには、放電加工と云う別工程を必要とせず、一台の工作機械で全ての加工を完了したいと云うニーズが強い。
【０００５】
この発明は、上述の如き問題点を解消するためになされたもので、内角部の曲率半径が小さく、深いポケットのコーナＲ加工や、ピン角と云われる９０度等の尖った角度の内角部の加工を切削加工により効率よく行うインコーナ切削加工方法、および、このインコーナ切削加工方法の実施に使用する切削工具を提供することを目的としている。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、請求項１に記載の発明によるインコーナ切削加工方法は、ピン角と云われる９０度等の尖った角度の内角部を切削加工により被加工物に形成するインコーナ切削加工方法であって、前記内角部の内角より小さい内角の頂点を有する多角形状底面の少なくとも一辺と、その一辺の外端点より軸線方向に延在する稜線部とに切刃を具備した切削工具を数値制御式の工作機械の主軸に取り付け、前記主軸によって前記切削工具を回転駆動し、前記外端点が前記被加工物の内角部のピン角形状に合致する移動軌跡を描くようにするために、前記切削工具の回転角度に応じて前記工作機械のＸ軸とＹ軸の２軸同時制御によるＸ軸移動とＹ軸移動を行って、当該切削工具と前記被加工物とを前記多角形状底面と平行な面で相対移動させ、前記切削工具の軸線方向に切り込み移動を与えて前記内角部を切削する。
【０００７】
また、上述の目的を達成するために、請求項２に記載の発明によるインコーナ切削加工方法は、被加工物の内角部をコーナＲ加工するインコーナ切削加工方法であって、前記コーナＲ加工の半径より大きい工具半径で、多角形状底面の少なくとも一辺と、その一辺の外端点より軸線方向に延在する稜線部とに切刃を具備した切削工具を数値制御式の工作機械の主軸に取り付け、前記主軸によって前記切削工具を回転駆動し、前記外端点が前記被加工物の内角部のコーナＲ加工形状に合致する移動軌跡を描くようにするために、前記切削工具の回転角度に応じて前記工作機械のＸ軸とＹ軸の２軸同時制御によるＸ軸移動とＹ軸移動を行って、当該切削工具と前記被加工物とを前記多角形状底面と平行な面で相対移動させ、前記切削工具の軸線方向に切り込み移動を与えて前記内角部を切削する。
【０００８】
請求項３に記載の発明によるインコーナ切削加工方法は、前記切削工具と前記被加工物の前記多角形状底面と平行な面での相対移動を、前記切削工具の軸線方向の切り込み移動の全域に亙って一定にする。
【０００９】
請求項４に記載の発明によるインコーナ切削加工方法は、前記切削工具と前記被加工物との前記多角形状底面と平行な面での相対移動を、前記切削工具の軸線方向の切り込み移動に応じて変化させる。
【００１０】
請求項５に記載の発明による切削工具は、上述の発明によるインコーナ切削加工方法の実施に用いられる切削工具であって、底面が多角形状をなし、その多角形状底面の少なくとも一辺と、その一辺の前記外端点より軸線方向に延在する稜線部とに切刃を有する。
【００１１】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図を参照してこの発明の実施の形態を詳細に説明する。
【００１２】
図１はこの発明によるインコーナ切削加工方法を実施する工作機械を示している。この工作機械は、Ｘ軸方向に移動可能なＸ軸テーブル１と、Ｘ軸テーブル１上に搭載されてＹ軸方向に移動可能なＹ軸テーブル２と、Ｚ軸方向に移動可能な主軸台３と、主軸台３に取り付けられた主軸４とを有し、Ｙ軸テーブル２上に被加工物Ｗをセットされる。
【００１３】
Ｘ軸テーブル１はＸ軸サーボモータ５により駆動されるＸ軸送り機構６によりＸ軸方向に移動し、Ｙ軸テーブル２はＹ軸サーボモータ７により駆動されるＹ軸送り機構８によりＹ軸方向に移動し、主軸台３はＺ軸サーボモータ９により駆動されるＺ軸送り機構１０によりＺ軸方向に移動する。Ｘ軸、Ｙ軸、Ｚ軸の各サーボモータ５、７、９には位置検出用のロータリエンコーダ１１、１２、１３が取り付けられている。
【００１４】
主軸４は主軸モータ１４により駆動され、主軸４の回転角（Ｃ軸角度）が主軸モータ１４に取り付けられたロータリエンコーダ１５により検出できるようになっている。主軸４には切削工具５０が取り付けられる。
【００１５】
この工作機械は数値制御式のものあり、数値制御装置２０は、各軸のロータリエンコーダ１１、１２、１３、１５より位置情報、Ｃ軸角度情報を入力し、加工プログラムに従って、主軸モータ１４による主軸４の回転駆動と、各軸のサーボモータ５、７、９の駆動を制御する。
【００１６】
図２、図３はこの発明によるインコーナ切削加工方法の実施に使用する切削工具を示している。なお、図２は切削工具を上下反転して工具底面を上側にして示しており、図３は切削工具の底面図である。
【００１７】
この発明によるインコーナ切削加工方法の実施に使用する切削工具は、基本的には、３角形、４角形、５角形等の多角形状底面の少なくとも一辺およびその外周に切刃を有する回転式の切削工具であり、図示されている切削工具５０は、代表的なものとして、正３角形状の底面５１の各辺の一方の頂点（切刃の外端点）ａ、ｂ、ｃ側に辺長さの略１／２の長さに亙って切刃５２、５３、５４を有し、切刃後方に逃げ角（逃げ面５５、５６、５７）を付けられている。この場合、切刃５２、５３、５４は、頂点ａ、ｂ、ｃより軸線方向に延在する稜線部（外周）５２ａ、５３ａ、５４ａにも設けられている。
【００１８】
切削工具５０は正３角形状底面５１の内心を通る軸線に沿って円柱状の幹部５８を有し、幹部５８を主軸４のチャック（図示省省略）に把持され、前記軸線周りに図２、図３で見て反時計廻り方向に回転駆動される。なお、切刃５２、５３、５４の正面部には切屑切断用のブレーカ溝５９が設けられている。このブレーカ溝５９は被加工物Ｗの材質に応じて設けられればよい。
【００１９】
被加工物ＷのポケットＰの内角部ｉを切削加工により創成する場合には、主軸４によって切削工具５０を回転駆動し、切刃５２、５３、５４をなす辺を含む多角形状底面５１の各頂点ａ、ｂ、ｃが順次、切削対象のインコーナ形状（内角部ｉの形状）に合致する移動軌跡を描くように、ロータリエンコーダ１５より得られる切削工具５０の回転角度に応じてＸ軸サーボモータ５、Ｙ軸サーボモータ７によってＸ軸テーブル１とＹ軸テーブル２０をフィードバック制御で互いに同期駆動し、切削工具５０に対して被加工物Ｗを工具底面と平行な面で移動させ、Ｚ軸サーボ９によるＺ軸送りにより切削工具５０の軸線方向に切り込み移動を与え、工具底面の切刃５２、５３、５４によりインコーナを切削する。この場合、工具１回転に付き、切刃５２、５３、５４によって３回の切削が行われる。
【００２０】
従って、内角部のＲによって制限されることなく太い工具で切削加工ができ、深いポケットの加工でも、切削工具５０が剛性不足を生じることがない。
【００２１】
上述のような切削加工法では、切削工具５０の工具径に制限されることなく、図４に示されているような、小さい曲率半径によるコーナＲを、当該コーナＲより半径の大きい工具を使って切削加工で創成でき、また多角形状底面５１の内角以上の角度のピン角の加工を行うことができる。正３角形状底面の切削工具５０では、内角は６０度であるから、たとえば、図５に示されているような９０度のピン角の加工を切削加工で創成できる。図６は９０度のピン角加工を行う場合の工具の運動軌跡を示している。なお、図６において、符合Ａはインコーナ切削加工前のインコーナ形状を示しており、仮想線ＡとＸ座標軸線とＹ座標軸線とで囲まれたコーナ領域を切削除去できる。
【００２２】
上述のような切削加工において、切削工具５０と被加工物Ｗとの工具底面と平行な面での相対移動の軌跡を切り込み移動の全域に亙って一定に設定すれば、図７（ａ）、（ｂ）に示されているような垂直面によるコーナＲ加工、ピン角加工を行える。
【００２３】
また、上述のような切削加工において、切削工具５０と被加工物Ｗとの工具底面と平行な面での相対移動の軌跡を切り込み移動に応じて変化させると、図８に示されているような傾斜面によるインコーナ加工を行える。
【００２４】
なお、Ｘ軸とＹ軸の移動に関しては、２軸同時制御を行う必要があるが、切り込み方向送りであるＺ軸に関しては、Ｘ軸、Ｙ軸に対して、同時に制御する場合と、切り込み量を単独で与え、Ｘ軸、Ｙ軸のみで、創成運動を行う非同時制御の場合を選択することができる。
【００２５】
また、この発明によるインコーナ切削加工方法に使用する切削工具は、上述した多角形状底面の切削工具５０に限られることはなく、図９に示されているように、工具本体６１に切刃（直刃）をなすチップ６２、６３、６４を交換可能に取り付けられた三つ葉形状のスローアウェイタイプの切削工具６０を使用することもできる。また、二葉形状、四葉形状のスローアウェイタイプの切削工具も使用できる。
【００２６】
【発明の効果】
以上の説明から理解される如く、請求項１に記載の発明によるインコーナ切削加工方法によれば、ピン角と云われる９０度等の尖った角度の内角部を切削加工により被加工物に形成するインコーナ切削加工方法であって、前記内角部の内角より小さい内角の頂点を有する多角形状底面の少なくとも一辺と、その一辺の外端点より軸線方向に延在する稜線部とに切刃を具備した切削工具を数値制御式の工作機械の主軸に取り付け、前記主軸によって前記切削工具を回転駆動し、前記外端点が前記被加工物の内角部のピン角形状に合致する移動軌跡を描くようにするために、前記切削工具の回転角度に応じて前記工作機械のＸ軸とＹ軸の２軸同時制御によるＸ軸移動とＹ軸移動を行って、当該切削工具と前記被加工物とを前記多角形状底面と平行な面で相対移動させ、前記切削工具の軸線方向に切り込み移動を与えて前記内角部を切削するから、ピン角と云われる９０度等の尖った角度の内角部の加工を切削加工によって効率よく行うことができる。
【００２７】
、請求項２に記載の発明によるインコーナ切削加工方法によれば、被加工物の内角部をコーナＲ加工するインコーナ切削加工方法であって、前記コーナＲ加工の半径より大きい工具半径で、多角形状底面の少なくとも一辺と、その一辺の外端点より軸線方向に延在する稜線部とに切刃を具備した切削工具を数値制御式の工作機械の主軸に取り付け、前記主軸 によって前記切削工具を回転駆動し、前記外端点が前記被加工物の内角部のコーナＲ加工形状に合致する移動軌跡を描くようにするために、前記切削工具の回転角度に応じて前記工作機械のＸ軸とＹ軸の２軸同時制御によるＸ軸移動とＹ軸移動を行って、当該切削工具と前記被加工物とを前記多角形状底面と平行な面で相対移動させ、前記切削工具の軸線方向に切り込み移動を与えて前記内角部を切削するから、工具剛性を充分保って、内角部の曲率半径が小さく、深いポケットのコーナＲ加工を切削加工によって効率よく行うことができる。
【００２８】
請求項３に記載の発明によるインコーナ切削加工方法によれば、切削工具と被加工物との工具底面と平行な面での相対移動を切り込み移動の全域に亙って一定にしてインコーナを切削するから、垂直面によるコーナＲ加工、ピン角加工を切削加工によって効率よく行うことができる。
【００２９】
請求項４に記載の発明によるインコーナ切削加工方法によれば、切削工具と被加工物との工具底面と平行な面での相対移動を切り込み移動に応じて変化させてインコーナを切削するから、傾斜面によるコーナＲ加工、ピン角加工を切削加工によって効率よく行うことができる。
【００３０】
請求項５に記載の発明による切削工具は、底面が多角形状をなし、その多角形状底面の少なくとも一辺と、その一辺の前記外端点より軸線方向に延在する稜線部とに切刃を有するものであるから、この切削工具によって請求項１〜４の何れかに記載の発明によるインコーナ切削加工方法を効率よく実施できる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 この発明によるインコーナ切削加工方法を実施する工作機械の一例を示す斜視図である。
【図２】 この発明によるインコーナ切削加工方法の実施に使用する切削工具を上下反転して工具底面を上側にして示す斜視図である。
【図３】 この発明によるインコーナ切削加工方法の実施に使用する切削工具の底面図である。
【図４】 この発明によるインコーナ切削加工方法によるコーナＲの切削加工例を示す平面図である。
【図５】 この発明によるインコーナ切削加工方法によるピン角の切削加工例を示す平面図である。
【図６】 ９０度のピン角加工を行う場合の工具の運動軌跡を示す説明図である。
【図７】 （ａ）、（ｂ）は垂直面によるコーナＲ、ピン角の切削加工例を示す斜視図である。
【図８】 傾斜面によるインコーナの切削加工例を示す斜視図である。
【図９】 この発明によるインコーナ切削加工方法の実施に使用する他の切削工具の底面図である。
【符号の説明】
１ Ｘ軸テーブル
２ Ｙ軸テーブル
３ 主軸台
４ 主軸
５ Ｘ軸サーボモータ
７ Ｙ軸サーボモータ
９ Ｚ軸サーボモータ
１１、１２、１３ ロータリエンコーダ
１４ 主軸モータ
１５ ロータリエンコーダ
２０ 数値制御装置
５０ 切削工具
５１ 正３角形状底面
５２、５３、５４ 切刃
５５、５６、５７ 逃げ面
５８ 幹部 ６０ 切削工具
６２、６３、６４ チップ
Claims (5)
- ピン角と云われる９０度等の尖った角度の内角部（ｉ）を切削加工により被加工物（Ｗ）に形成するインコーナ切削加工方法であって、
前記内角部（ｉ）の内角より小さい内角の頂点（ａ）を有する多角形状底面（５１）の少なくとも一辺と、その一辺の外端点より軸線方向に延在する稜線部（５２ａ）とに切刃（５２）を具備した切削工具（５０）を数値制御式の工作機械の主軸（４）に取り付け、
前記主軸（４）によって前記切削工具（５０）を回転駆動し、前記外端点が前記被加工物（Ｗ）の内角部（ｉ）のピン角形状に合致する移動軌跡を描くようにするために、前記切削工具（５０）の回転角度に応じて前記工作機械のＸ軸とＹ軸の２軸同時制御によるＸ軸移動とＹ軸移動を行って、当該切削工具（５０）と前記被加工物（Ｗ）とを前記多角形状底面（５１）と平行な面で相対移動させ、
前記切削工具（５０）の軸線方向に切り込み移動を与えて前記内角部（ｉ）を切削することを特徴とするインコーナ切削加工方法。 - 被加工物（Ｗ）の内角部（ｉ）をコーナＲ加工するインコーナ切削加工方法であって、
前記コーナＲ加工の半径より大きい工具半径で、多角形状底面（５１）の少なくとも一辺と、その一辺の外端点より軸線方向に延在する稜線部（５２ａ）とに切刃（５２）を具備した切削工具（５０）を数値制御式の工作機械の主軸（４）に取り付け、
前記主軸（４）によって前記切削工具（５０）を回転駆動し、前記外端点が前記被加工物（Ｗ）の内角部（ｉ）のコーナＲ加工形状に合致する移動軌跡を描くようにするために、前記切削工具（５０）の回転角度に応じて前記工作機械のＸ軸とＹ軸の２軸同時制御によるＸ軸移動とＹ軸移動を行って、当該切削工具（５０）と前記被加工物（Ｗ）とを前記多角形状底面（５１）と平行な面で相対移動させ、
前記切削工具（５０）の軸線方向に切り込み移動を与えて前記内角部（ｉ）を切削することを特徴とするインコーナ切削加工方法。 - 前記切削工具（５０）と前記被加工物（Ｗ）との前記多角形状底面（５１）と平行な面での相対移動を、前記切削工具（５０）の軸線方向の切り込み移動の全域に亙って一定にすることを特徴とする請求項１または２に記載のインコーナ切削加工方法。
- 前記切削工具（５０）と前記被加工物（Ｗ）との前記多角形状底面（５１）と平行な面での相対移動を、前記切削工具（５０）の軸線方向の切り込み移動に応じて変化させることを特徴とする請求項１または２に記載のインコーナ切削加工方法。
- 請求項１〜４のいずれか一項に記載のインコーナ切削加工方法の実施に用いられる切削工具であって、
底面が多角形状をなし、その多角形状底面（５１）の少なくとも一辺と、その一辺の前記外端点より軸線方向に延在する稜線部（５２ａ）とに切刃（５２）を有することを特徴とする切削工具。
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