JP3881453B2 - カルシウム吸収促進剤およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カルシウムを吸収促進させる食品や医薬品等に用いられるカルシウム吸収促進剤、および、その製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、カルシウム摂取の必要性がいわれるようになり、各種飲食品に栄養強化成分としてカルシウムを添加しておくことが行われ、このような用途に利用されるカルシウム製品が種々提供されている。
天然のカルシウム素材としては、卵の殻や動物の骨などが利用される。天然のカルシウム素材においては、カルシウムが炭酸カルシウムやリン酸カルシウムなどの形で存在している。これらのカルシウム化合物は何れも水に対して不溶性であるので、天然の素材の形のままではカルシウムを水溶液の状態で取り扱うことができない。そのため、食品への添加作業が面倒であり、殊に液体状の食品や飲料に添加することは困難であった。水不溶性のカルシウムは、その吸収効率および体内利用率が非常に悪かった。
【0003】
そこで、各種食材中に天然自然に存在するカルシウムを効率良く吸収させるための種々の吸収促進剤が提案されている。例えば、特開平2−241460号公報および特開平5−262655号公報には、カゼインの酵素分解物、特にカゼインホスホペプチド(CPP)がカルシウム吸収促進作用を有することが記載されている。李らは、このCPPに効果があることを報告している。本発明者らがCPPについて追試を行ったところ、インビトロ(In vitro)実験では非常に優れた効果があったが、インビボ(In vivo)実験では効果が見られなかった。特開平6−157593号公報および特開平6−340528号公報には、カルシウム吸収促進剤として、イワシペプチドや、豆乳ペプチドを用いることが記載されているが、これらのペプチドは独特のにおいを有するため、各種飲食品とともに摂取できるものではなかった。特開平4−16165号公報には、分子量範囲が3000〜60000の骨ペプチドを吸収促進剤に用いることが記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記した従来の技術を採用しても、カルシウム吸収性能が十分ではないので、さらに効率よくカルシウムを吸収させる促進剤の開発が望まれていた。また、においのないものが求められたいた。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、吸収効率が高く、においの少ないカルシウム吸収促進剤およびその製造方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかるカルシウム吸収促進剤は、ゼラチンおよび/またはコラーゲンの分解物であって、分子量が1000以下でありグルタミン酸単位が全アミノ酸単位の平均6モル%以上であるペプチドを有効成分として含む。
【0006】
本発明にかかるカルシウム吸収促進剤の製造方法は、上記本発明のカルシウム吸収促進剤を製造するための方法であって、ゼラチンおよび/またはコラーゲンの分解物を含有した溶液をヒドロキシアパタイトに接触させて、前記分解物に含まれるペプチドを前記ヒドロキシアパタイトに吸着させる吸着工程と、前記ヒドロキシアパタイトにペプチド脱着液を接触させ、前記ペプチドを溶出させる溶出工程とを含む。
【0007】
【発明の実施の形態】
〔カルシウム吸収促進剤〕
本発明にかかるカルシウム吸収促進剤は、ゼラチンおよび/またはコラーゲンの分解物であるペプチドを有効成分として含む。このため、においが少ない。この分解物がカルシウム吸収促進性を有する理由は定かではないが、以下のように推測することができる。コラーゲンは骨組織の主要な構成蛋白質であり、骨組織を構成する石灰化はコラーゲンにおいて生じる。このようなことから、コラーゲンの活性主体となる部分を切り出したものである分解物は、カルシウムと何らかの相互作用を保持し、カルシウムの吸収を促進するのではないかと考えられる。
【0008】
コラーゲンは、生体内に最も大量に存在する蛋白質で皮膚や腱などの結合組織および骨中に分布している。コラーゲンの特徴としてGly−X−Yのアミノ酸配列を持ち、3本鎖のヘリックス構造を有している。ゼラチンとは、コラーゲンが変成したものをいう。したがって、ゼラチンは、コラーゲンと一次構造(アミノ酸配列)は同一であるが、変成しているためにヘリックス構造の崩壊した状態である。
【0009】
本発明で用いられるペプチドは、ゼラチンおよび/またはコラーゲンを、熱、酸およびアルカリのうちの少なくとも一つを用いて物理化学的に分解したり、酵素および/または微生物を用いて生物学的に分解したりして得られる。これらのうちでも、酵素を用いる生物学的な分解方法は、反応条件が温和であり、蛋白質を塩酸分解すると発生することが知られているモノクロロプロパノールやジクロロプロパノール等が生成することはない。また、酵素を用いる生物学的な分解方法では、分子量の調整や、ペプチド切断部位の調整が可能である。
【0010】
上記酵素としては、特に限定はないが、たとえば、植物由来の酵素や、麹菌から抽出された酵素等を挙げることができ、これらが1種または2種以上が使用される。
植物由来の酵素としては、たとえば、ブロメライン(ブロメラインF、天野製薬社製)、パイナーゼ(大日本製薬社製)、アルファプシン(興和社製)等のパイナップル由来の酵素;パパイン(長瀬産業社製、アサヒビール社製、日本バイオコン社製)等のパパイア由来の酵素;フィシン等のイチジク由来の酵素;アクチニダイン等のキウイ由来の酵素等を挙げることができる。
【0011】
麹菌から抽出された酵素としては、Aspergillus属やRhizous属から抽出された酵素があり、たとえば、プロテアーゼA(天野製薬社製)、デナチームAP(長瀬産業社製)、コクラーゼSS(三共社製)、フレーバーザイムM(ノボノルディスク社製)、オリエンターゼCP(阪急バイオ社製)、ペプチターゼR(天野製薬社製)等を挙げることができる。
【0012】
これらのうちでも、酵素としてブロメライン、フレーバーザイムMを用いて分解して得られるペプチドでは、カルシウム吸収効率が高い。
酵素を用いる場合の分解条件としては、それぞれの至適条件で行われる。酵素としてブロメラインを用いる場合、たとえば、反応温度については、好ましくは20〜70℃、さらに好ましくは30〜60℃である。pHについては、好ましくは3〜8、さらに好ましくは4〜7である。反応時間については、好ましくは0.5〜73時間、さらに好ましくは、2〜73時間である。溶液中のブロメライン濃度は、好ましくは0.05〜7重量%、さらに好ましくは0.2〜5重量%である。pHが8を超えたり、溶液中のブロメライン濃度が7重量%を超えたりすると、酵素が失活するおそれがある。
【0013】
本発明のカルシウム吸収促進剤の有効成分であるペプチドの分子量は1000以下であり、好ましくは500以下である。ペプチドの分子量が1000を超えると、カルシウム吸収効率が低下する。
このペプチドは、酸性アミノ酸単位(酸性アミノ酸に由来する構造単位)を必須成分として含む。上記酸性アミノ酸単位は、アスパラギン酸単位(アスパラギン酸に由来する構造単位)およびグルタミン酸単位(グルタミン酸に由来する構造単位)のうちの少なくとも1種であり、これらのうちでも、アスパラギン酸単位のカルシウム吸収効率は高い。
【0014】
このペプチドを構成する全アミノ酸単位中の酸性アミノ酸単位の割合は、平均6モル%以上であり、好ましくは10モル%以上、さらに好ましくは20モル%以上である。酸性アミノ酸単位の割合が、6モル%未満であると、カルシウム吸収効率が低下する。
本発明のカルシウム吸収促進剤は、カルシウムの吸収を促進させることができ、たとえば、骨粗しょう症、クル病、骨軟化症、骨髄炎、骨多孔症、カリエス、結核性疾患、貧血症、完治しにくい骨折、う歯等の患者に対して効能を発揮するとともに、妊婦、授乳婦、成長期の子供等のカルシウム補給や、う歯の予防にも役立つ。
【0015】
本発明のカルシウム吸収促進剤は、単独で摂取させてもよいが、カルシウムを多く含む各種飲食品とともに摂取させるのが好ましい。カルシウム吸収促進剤は、これ単独またはその他の成分をも含ませて、医薬品や、健康食品等に用いてもよい。
本発明のカルシウム吸収促進剤の人体への投与は、経口、非経口いずれによってもよい。経口投与する場合には、散剤、錠剤、カプセル剤、このカルシウム吸収促進剤を含むジュースやゼリーなどの形で行うことができる。
〔カルシウム吸収促進剤の製造方法〕
本発明にかかるカルシウム吸収促進剤の製造方法は、吸着工程と溶出工程とを必須とする製造方法であり、高分子量ペプチド除去工程をさらに含むものが好ましい。
吸着工程
吸着工程は、ゼラチンおよび/またはコラーゲンの分解物を含有した溶液をヒドロキシアパタイトに接触させて、前記分解物に含まれるペプチドを前記ヒドロキシアパタイトに吸着させる工程である。ここで、分解物に含まれるペプチドはカルボキシル陰イオンを有しており、一方、ヒドロキシアパタイトは無機充填剤で、一般には、Ca10(PO4)6(OH)2という化学式で表される構造であり、カルシウム陽イオンを有している。このため、両者が接触することによって、カルボキシル陰イオンとカルシウム陽イオンとの間に静電的な相互作用が働き、ペプチドはヒドロキシアパタイトに吸着されるようになる。
【0016】
この分解物は、上記で説明したように、ブロメラインを用いてゼラチンおよび/またはコラーゲンを酵素分解させて製造するのが好ましい。
分解物を含有した溶液のpHは、好ましくは6〜8、さらに好ましくは6.5〜7.5である。溶液のpHが6未満であると、ヒドロキシアパタイトが自体が酸分解し、吸着担体としての機能を失ってしまうおそれがある。他方、溶液のpHが8を超えると、ヒドロキシアパタイトにペプチドが吸着しなくなるおそれがある。
【0017】
この溶液中の分解物の濃度は、好ましくは0.1〜1重量%、さらに好ましくは0.3〜0.6重量%である。濃度が0.1重量%未満であると、分解物の濃度が希薄すぎて、製造効率が低下するおそれがある。他方、濃度が1重量%を超えると、ヒドロキシアパタイトの吸着容量を超えてしまい、吸着されなかったペプチドを再度ヒドロキシアパタイトに吸着させる別の工程が必要になるおそれがある。
【0018】
分解物を含有した溶液とヒドロキシアパタイトとの配合割合については、特に限定はないが、好ましくは、ヒドロキシアパタイトに対して、溶液5〜50倍量である。溶液がヒドロキシアパタイトに対して5倍量未満であると、ヒドロキシアパタイトが多すぎて、操作がしにくく、製造効率が低下するおそれがある。他方、溶液が50倍量を超えると、ヒドロキシアパタイトの吸着容量を超えてしまい、吸着されなかったペプチドを再度ヒドロキシアパタイトに吸着させる別の工程が必要になるおそれがある。
【0019】
上記吸着工程によって、ヒドロキシアパタイに対してカルシウム吸収促進剤の有効成分であるペプチドを選択的に吸着させることができる。
溶出工程
溶出工程は、前記吸着工程でペプチドを吸着したヒドロキシアパタイトにペプチド脱着液を接触させ、前記ペプチドを溶出させる工程である。
【0020】
上記ペプチド脱着液は、塩基性水溶液であれば特に限定はない。ペプチドの溶出は、ペプチド脱着液中の強塩基である水酸イオンが、ペプチドの弱塩基であるカルボキシル陰イオンと置き代わり、ペプチドが遊離することによって生じる。ペプチド脱着液は、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、等の塩基を溶解させた水溶液を挙げることができる。ペプチド脱着液に含まれる塩基の濃度は、好ましくは50mM〜1M、さらに好ましくは100mM〜300mMである。塩基の濃度が50mM未満であると、ペプチドを溶出させにくくなるおそれがある。他方、塩基の濃度が1Mを超えると、溶出させたペプチドが加水分解したり、後述の脱塩処理が行いにくくなるおそれがある。
【0021】
ペプチド脱着液とペプチドを吸着したヒドロキシアパタイトとの配合割合については、特に限定はないが、好ましくは、ペプチドを吸着したヒドロキシアパタイトに対して、ペプチド脱着液1.0〜10.0倍量である。ペプチド脱着液が1.0倍量未満であると、ペプチドの脱着効率が低下し、何度もペプチド脱着液で処理しなければならなくなることがある。他方、ペプチド脱着液が10.0倍量を超えると、処理後のペプチド脱着液が多くなり、濃縮等の別の工程が必要になるおそれがある。
【0022】
溶出工程ではペプチドをより完全に溶出させるために、ヒドロキシアパタイトにペプチド脱着液を接触させる操作を2回以上行ってもよい。
溶出処理後のペプチド脱着液は、通常、ペプチドを含むアルカリ性溶液であり、適宜、塩酸、硝酸等の酸を用いて中和または弱酸性にして、脱塩処理を行ってもよく、陽イオン交換樹脂を用いて脱塩処理を行ってもよい。このアルカリ性溶液や、このアルカリ性溶液を酸で中和または酸性にした溶液(以下、処理後脱着液ということがある。)は、そのまま、本発明のカルシウム吸収促進剤として用いることができる。
【0023】
上記溶出工程によって、ヒドロキシアパタイに吸着したペプチドを溶出させて、有効成分であるペプチドの濃度が高いカルシウム吸収促進剤が容易に得られるようになる。
高分子量ペプチド除去工程
高分子量ペプチド除去工程は、上記処理後脱着液を分画分子量1000の分離膜を用いて処理し、前記ペプチドの高分子画分を除去する工程であり、有効成分であるペプチドの濃度がさらに高いカルシウム吸収促進剤が得られる。
【0024】
上記分離膜は分画分子量1000であれば、その材質等について特に限定はなく、たとえば、再生セルロース、ポリエーテルスルホン等の材質を挙げることができる。
処理後脱着液のpHは、好ましくは8以下、さらに好ましくは6.5〜7.5である。処理後脱着液のpHが8を超えると、分離膜の材質が再生セルロースの場合には、膜が溶出してしまうおそれがある。
【0025】
処理後脱着液として、この脱着液を濃縮したものを高分子量ペプチド除去工程で用いてもよく、希釈したものを用いてもよい。処理後脱着液のペプチド濃度は、好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下である。ペプチド濃度が1重量%を超えると、ペプチドの高分子画分の除去が十分に行えないおそれがある。
【0026】
分離膜を用いる処理、すなわち、濾過は、ペプチドの腐敗や変性を起こさせない温度で行うのが好ましく、好ましくは2〜10℃で行われる。
このようにして得られたカルシウム吸収促進剤は、適宜、噴霧乾燥機や凍結乾燥機等を用いて乾燥、粉末化して、カルシウム吸収促進剤の有効成分であるペプチド(以下、ペプチド(A)ということがある。)を単離し、散剤;顆粒剤;錠剤;カプセル剤;注射液等の形態にして用いることができる。
【0027】
カルシウム吸収促進剤を含む散剤としては、たとえば、ペプチド(A)10〜95重量部、塩化カルシウム5〜20重量部、乳糖0〜85重量部等の散剤成分を配合してなる散剤等を挙げることができる。
上記散剤は、たとえば、散剤成分を混合し、篩(42号、目開き350μm)を通して均一な粉末にし、乳鉢、乳棒および薬匙や、調剤用混合機等を使用して均一になるまで混和することによって製造することができる。
【0028】
カルシウム吸収促進剤を含む顆粒剤としては、たとえば、ペプチド(A)10〜80重量部、塩化カルシウム5〜20重量部、デンプン18〜19.5重量部、ゼラチン0.5〜2重量部、乳糖0〜70重量部等の顆粒剤成分を配合してなる顆粒剤等を挙げることができる。
上記顆粒剤は、たとえば、顆粒剤成分を混合、粉砕後、篩(100メッシュ、目開き149μm)を通して均一な粉末にし、調剤用混合機等を使用して均一になるまで混和した後、結合剤を添加して練合し、造粒機を用いて造粒し、乾燥した後、篩を用いて顆粒剤の粒径を揃えることによって製造することができる。
【0029】
カルシウム吸収促進剤を含む錠剤としては、たとえば、ペプチド(A)10〜80重量部、コーンスターチ20〜30重量部、ヒドロキシプロピルセルロース1〜3重量部、ステアリン酸マグネシウム0.1〜0.3重量部、乳糖0〜70重量部等の錠剤成分を配合してなる錠剤等を挙げることができる。
上記錠剤は、たとえば、錠剤成分を混合、粉砕後、篩(100メッシュ、目開き149μm)を通して均一な粉末にし、調剤用混合機等を使用して均一になるまで混和した後、打錠機を用いて成形して製造することができる。
【0030】
カルシウム吸収促進剤を含むカプセル剤としては、たとえば、上記顆粒剤を、ゼラチン、セルロース系基材等のカプセル成分からなるカプセルで被覆してなるカプセル剤等を挙げることができる。
上記カプセル剤は、たとえば、上記顆粒剤とカプセル成分とをカプセル充填機を用いてカプセル化することによって製造することができる。
【0031】
カルシウム吸収促進剤を含む注射液としては、たとえば、ペプチド(A)1〜10重量部、塩化ナトリウム0.9重量部、メタ重亜硫酸ナトリウム0.5〜31.5重量部、パラオキシ安息香酸エチル1.0〜1.5重量部、注射用蒸留水90〜98重量部等の注射液成分を配合してなる注射液等を挙げることができる。注射液を等張液にするため、上記塩化ナトリウムの濃度が0.9重量%となるように、上記注射液成分が配合される。
【0032】
上記注射液は、たとえば、注射液成分を配合し、溶解させ、滅菌フィルターで濾過した後、滅菌したバイアル瓶に入れ、滅菌したゴム栓で瓶を封じて製造することができる。
カルシウム吸収促進剤は、ジュース等の飲料や、ゼリー等の食品等に混ぜることができる。カルシウム吸収促進剤を飲料や食品に混ぜることによって、服用し易くなる。
【0033】
カルシウム吸収促進剤を含むジュースとしては、たとえば、ペプチド(A)0.5〜30重量部、混合異性化糖5〜20重量部、クエン酸0.1〜1.0重量部、香料0.5〜1.0重量部、塩化カルシウム0.1〜1.0重量部、水70〜90重量部等の飲料成分を配合してなるジュース等を挙げることができる。
カルシウム吸収促進剤を含むゼリーとしては、たとえば、ペプチド(A)0.5〜20重量部、果汁10〜30重量部、グラニュー糖5〜20重量部、水飴1.0〜10重量部、寒天0.5〜2.0重量部、香料0.5〜1.0重量部、塩化カルシウム0.1〜1.0重量部、水15〜82重量部等のゼリー成分を配合してなるゼリー等を挙げることができる。
【0034】
【実施例】
以下、本発明の実施例と比較例とを合わせて説明する。実施例における「%」とは、特に断りがない限り「重量%」を表すものとする。
−実施例1−1−
(1)ゼラチンの分解
30%ゼラチン(豚皮酸処理ゼラチン、新田ゼラチン社製)溶液に対してブロメラインを、0.2%となるように加え、pH4.5、50℃の条件で、73時間処理して、ゼラチン分解物であって、カルシウム吸収促進剤を含む物質(1)を得た。
【0035】
(2)分解物の分子量分布の測定
▲1▼濾過試験溶液の調製
物質(1)を希釈して、固形分濃度0.3%になるように調整し、孔径0.2μmのメンブランフィルターで濾過し、濾液を試験溶液とした。
▲2▼分析条件
上記試験溶液について、Leu−Gly−Gly、Gly−Gly−Tyr−Arg、ブラデキニン、バシトラシン、ノイロテシン、アグカゴン等のペプチドを標準物質として用いて、下記の測定条件で測定した。分子量の主要ピークおよびピーク面積(%)を表1に示す。
測定条件
カラム:TSKgel G25000PWxl(φ7.5mm×30mm)
移動相:0.1%トリフルオロ酢酸(in45%アセトニトリル)
流速 :0.5ml/min
注入量:10μl
カラム温度:25℃
検出 :蛍光検出器
(3)分解物のアミノ酸分析
▲1▼アミノ酸分析用試験溶液の調製
物質(1)の固形分濃度0.1%になるように、倍希釈塩酸で薄め、15mlのスクリューキャップ付の試験管に入れ、窒素ガスで置換した後、温度105℃のオーブンで24時間加熱し、分解した。1/1000N塩酸を用いて分解サンプルを100倍希釈して、アミノ酸分析用試験溶液とした。
【0036】
▲2▼アミノ酸分析
アミノ酸分析用試験溶液に含まれるアミノ酸をo−フタールアルデヒドと反応させた後、TSKgel Aminopakで分画し、蛍光検出器で各種アミノ酸を定量した。その結果を表1に示す。
(4)カルシウム吸収促進性の測定
In vitro実験
カルシウム吸収促進性をカルシウムを100%溶解させる濃度で評価し、以下の方法で行った。
【0037】
第3リン酸カルシウム(0.75%)0.5mlに、物質(1)、0.1MPIPES(piperadine−N,N’−bis(2−ethanesulgonic acid))緩衝液(pH6.8)0.5mlおよび2%コール酸溶液(pH7.9)1.43mlを加え、1N水酸化ナトリウム水溶液をさらに加え、pH6.8に調整した後、蒸留水を加え、全体を5mlにし、37℃で30分間放置した。放置後の溶液を遠心分離(3500rpm×15min)し、上澄液200μmを分取し、倍希釈硝酸溶液2.5mlを加えて全体を50mlにし、原子吸光法でカルシウム濃度を定量した。カルシウム吸収促進性はカルシウムを100%溶解させる濃度で評価した。
【0038】
このペプチド濃度が低いほど、カルシウム吸収促進性は高い。その結果を表1に示す。
In vivo実験
7〜10週齢のSD系ラットを使用し、9日間予備飼育を行った後、飲用水の代わりに上記試験溶液を自由摂取させて、カルシウム吸収率を測定し、以下の基準によりカルシウム吸収促進性を評価した。その結果を表1に示す。
【0039】
◎:1%の危険率でカルシウム吸収促進剤非存在群との間で統計学的有意差の認められる場合。
○:5%の危険率でカルシウム吸収促進剤非存在群との間で統計学的有意差の認められる場合。
△:10%以下の危険率でカルシウム吸収促進剤非存在群との間で統計学的有意差の認められる場合。
【0040】
×:効果が全く認められない場合。
−実施例1−2〜1−5−
実施例1−1の分解段階で、ブロメライン濃度と処理時間を、それぞれ、表2に示すものに変更する以外は実施例1−1と同様にして、分解物を含む物質(2)〜(5)を得た。これらから得られる試験溶液について、分子量の主要ピークおよびピーク面積(%)と、カルシウム吸収促進性とを、実施例1−1と同様の方法で測定した。その結果を表1に示す。
【0041】
−比較例1−1−
実施例1−1で、分解物を含む物質(1)の代わりにカゼインホスホペプチド(CPP−III、明治製菓製)を用いる以外は、実施例1−1と同様にして、カルシウム吸収促進性を測定した。その結果を表1に示す。
−比較例1−2−
実施例1−1で、分解物を含む物質(1)の代わりに、分解前の豚皮酸処理ゼラチン(新田ゼラチン社製)を用いる以外は、実施例1−1と同様にして、カルシウム吸収促進性を測定した。その結果を表1に示す。
【0042】
−比較例1−3−
実施例1−1で、分解物を含む物質(1)の代わりにアミノ酸混合液(実施例1−1で用いたゼラチンと同じアミノ酸含量で遊離アミノ酸を混合したもの)を用いる以外は、実施例1−1と同様にして、カルシウム吸収促進性を測定した。その結果を表1に示す。
【0043】
−比較例1−4−
実施例1−1の分解段階で、ブロメライン濃度と処理時間を、それぞれ、0.03%および0.25時間に変更する以外は実施例1−1と同様にして、分解物を含む物質(6)を得た。これから得られる試験溶液について、分子量の主要ピークおよびピーク面積(%)と、カルシウム吸収促進性とを、実施例1−1と同様の方法で測定した。その結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
−実施例2−
ゼラチン30重量%、ブロメライン5重量%を含む溶液をpH4.5、50℃の条件で、72時間処理して、分解物を含む溶液を得た。ヒドロキシアパタイト100重量部と、固形分が15重量部となるように、この溶液とを混合して、ヒドロキシアパタイトに分解物に含まれるペプチドを吸着させた。ヒドロキシアパタイトと溶液とを含む混合物を濾過して、濾過通過液と、濾過されて残った吸着後のヒドロキシアパタイトとに分離した。ペプチド脱着液としての100mM水酸化ナトリウム水溶液500mlを用いて、ヒドロキシアパタイトに吸着したペプチドを溶出させた。なお、吸着溶出操作は4回行い、それぞれの液を合わせてそのpHを7.0に調整して、溶出処理後のペプチド脱着液とした。この溶出処理後のペプチド脱着液をUF分離膜(分画分子量1000)を用いてペプチドの高分子画分を除去した。
【0047】
分解物を含む溶液およびUF分離膜で処理後のペプチド脱着液について、実施例1−1と同様にして、分子量の主要ピークおよびピーク面積(%)と、カルシウム吸収促進性とを測定した。その結果を表3に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
分解物を含む溶液、溶出処理後のペプチド脱着液およびUF分離膜で処理後のペプチド脱着液について、分子量分布を測定するためにカラムをかけた。その際の溶出時間と検出ピークとの関係を図1に示す。
分解する前のゼラチン溶液、分解物を含む溶液、溶出処理後のペプチド脱着液およびUF分離膜で処理後のペプチド脱着液について、アミノ酸分析を行い、全アミノ酸単位に対するAsp、GluおよびGlyの割合(モル%)を表4に示した。
【0050】
【表4】
【0051】
【発明の効果】
本発明にかかるカルシウム吸収促進剤は、カルシウムを吸収する効率が高く、においが少ない。
本発明にかかる製造方法は、有効成分であるペプチドの濃度が高いカルシウム吸収促進剤を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2において、分解物を含む溶液、溶出処理後のペプチド脱着液およびUF分離膜で処理後のペプチド脱着液での溶出時間と検出ピークとの関係を示す図である。
Claims (3)
- ゼラチンおよび/またはコラーゲンの分解物であって、分子量が1000以下でありグルタミン酸単位が全アミノ酸単位の平均6モル%以上であるペプチドを有効成分として含む、カルシウム吸収促進剤。
- 請求項1に記載のカルシウム吸収促進剤を製造するための方法であって、
ゼラチンおよび/またはコラーゲンの分解物を含有した溶液をヒドロキシアパタイトに接触させて、前記分解物に含まれるペプチドを前記ヒドロキシアパタイトに吸着させる吸着工程と、
前記ヒドロキシアパタイトにペプチド脱着液を接触させ、前記ペプチドを溶出させる溶出工程と、
を含む、カルシウム吸収促進剤の製造方法。 - 分画分子量1000の分離膜を用いて前記ペプチドの高分子画分を除去する高分子量ペプチド除去工程をさらに含む、請求項2に記載のカルシウム吸収促進剤の製造方法。
Priority Applications (1)
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