JP3864123B2 - 塗装用ローラーブラシ構造体 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗装用ローラーブラシに関するものであり、詳細にはローラーブラシ製造工程中における塗料不浸透ロール芯胴周面への塗料保持体を巻着接合する際の不良発生を低減させると同時に、粘度の低い水性塗料に対しても塗料の吸収性能(以下、含み性と称す)と塗料の流出性能(以下、吐き出し性と称す)が良好であり、塗装面に残泡を残さずに均一な塗装面を形成させることが可能な塗装用ローラーブラシ構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、塗装用ローラーブラシはプラスチック製または木製の塗料不浸透性ロール芯体に毛皮、合成繊維製パイル糸を植設した立毛織物または立毛編物を帯状にしたものを螺旋状に巻着接合して製造されている。このような製造方法に基づくローラーブラシは、ブラシ面構成基布の巻き目が外観上顕著に現れることがあり、特に巻き目が隙間として発生する場合は塗装面に継ぎ目の跡として筋状の欠点が残るという問題点があった。また、溶剤によりローラー芯体と布との剥離が生じ、糸抜けが起こる場合があり、不良品として製品出荷ができなくなるという問題も
あった。
【0003】
このような問題点を解決するために、実開昭52−21153号公報には、塗装用ローラーブラシとして丸編みメリヤス地をローラー基体に被覆することにより、従来の製造方法で問題となった螺旋状に巻着したときのような継ぎ目がないので、塗装面には継ぎ目による不平滑が生じないことが記載されている。
また、実開昭53−22609号公報には、パイルメリヤス編生地を金属その他の材料によって形成した芯筒に被せることにより全く継ぎ目のないローラーを低コストで供給できることが記載されている。
【0004】
一方、実開平5−74679号公報には塗装面に掃いたような毛跡を防止して均一な塗装を可能とするためにパイル糸として超極細繊維を使用することが記載されている。また、特開平11−19573号公報には超極細繊維をループ状に編織して継ぎ目のない環状布体を吸収性パッドに被せて用いることが記載されている。
【0005】
しかしながら、上記のように芯体に継ぎ目のない環状体を被うのみでは編目が塗装面に転写されるという欠点がある。さらにパイル状に繊維を起立させるとなっても、本来、編地により得られるパイルには明確な方向性を有するのであって、芯体に被せる場合、芯材の長手方向のいずれかの方向にパイル糸が倒れることになり、芯体の正逆回転方向とは全く一致しない点が指摘される。これに対して、従来の螺旋状に巻きつける工法においては、立毛部の方向性は回転方向と一致するかまたはローラーの反転による逆回転方向と一致するため、実際に使用する立場からすれば、螺旋状に巻きつける工法の方が塗装作業の点からすればずっと好ましい形態である。
【0006】
また、塗装用ローラーブラシを製造する場合、製造時の継ぎ目を皆無とするために上記先行文献に記載されているように、筒状の編地とし、さらにローラーとの接着性を高めるために地糸を収縮力により密着させ、さらにパイル糸として塗料の保持性を良好とし、同時に該パイル糸を超極細繊維とすることにより、均一な塗装が可能な塗装用ローラーが得られるように思われる。しかしながらペイントローラーが対象とする塗料は粘度の低いものから高いものまで含むため、塗料の保持性が良好であっても、塗料の吐き出し性が不十分な場合には良好なペイントローラーとは言い難い。すなわち、塗装用ローラーブラシは塗料の含み性と吐き出し性とのバランスが重要であって、さらに一定の圧力下で塗料の吐き出し量が一定となるようなローラーブラシが要求されている。
【0007】
さらに、塗装工程が仕上げ塗装となる場合には塗装面を美しく仕上げることが要求され、パイルの毛丈を短くした短毛ローラーが使用される。これはパイルの変形量を少なくすることにより均一さを保つための工夫がなされたローラーであるが、パイルに使用する繊維として極細繊維を用いても未だ不十分であった。
一方、本発明者は上記の課題を解決するために、特願2002−140900号において、接着性繊維を含む繊維質多孔環状体を塗装保持体として塗料不浸透性ロール芯体に被覆した塗装用ローラーブラシを提案しているが、未だ十分とはいえない。
【0008】
さらに、塗装時の仕上がり性向上を目指して、本発明者は既に特願2001−102968号に記載しているように、織編地などの地組織の片面に、所定範囲の捲縮伸長率を有する熱融着性捲縮繊維を特定割合で含む繊維からなる立設繊維層(パイル層)を形成した繊維構造体において、立設繊維層の表面部分に、該捲縮繊維を融着させて塗料が通過し得る孔を有する多孔質スキン層を形成させることにより塗装性能および塗装面の仕上がり性に優れた塗装用繊維構造体を見出しているが、従来の方法によりペイントローラーを製造する場合、上記したような製造方法に起因する継目の問題が解決できなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、このような状況に鑑みてなされたものであって、塗料不浸透性ロール芯体に継ぎ目のない繊維質環状体を直接被覆し、該繊維質環状体の最外層面にスキン層を形成させることにより塗料の含み性と吐き出し性のバランス性に優れ、さらにブラシ面の不均質さも克服することによる塗装面の仕上げ品位の更なる向上を目指し、また安価な塗装用ローラーブラシを提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、高融点重合体成分Aと、高融点重合体成分Aよりも融点が40℃以上低い低融点重合体成分Bとからなる複合繊維を含む繊維質環状体を塗料保持体として塗料不浸透性ロール芯体に被覆した塗装用ローラーブラシであって、該繊維質環状体の最表面にスキン層を形成しており、該スキン層が該複合繊維中の低融点重合体成分B間の部分融着により形成された網状融着層であることを特徴とする塗装用ローラーブラシ構造体であり、好ましくは低融点重合体成分Bがエチレンービニルアルコール共重合体である上記の塗装用ローラーブラシ構造体に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の塗装用ローラーブラシにおいては、高融点重合体成分Aと、高融点重合体成分Aよりも融点が40℃以上低い低融点重合体成分Bから構成される複合繊維からなる繊維質環状体を用いることが重要であり、かかる繊維質環状体を用いることにより、塗装面の出来栄えが非常に良好となる。さらに該繊維質環状体の最表面にスキン層を形成させることにより一層出来栄えが向上する。
【0012】
本発明に使用する複合繊維において、高融点重合体成分Aと低融点重合体成分Bの融点の差が40℃未満であると、後工程における熱処理工程で低融点重合体成分Bのみならず、高融点重合体成分Aまで軟化溶融することになる。もちろん、融点の差が大きくなりすぎると溶融複合紡糸ができなくなってしまうといった問題があるが、現実的には融点差は180℃以下とするのが好ましい。
【0013】
本発明に使用する複合繊維を形成する一成分である高融点重合体Aとしては、ポリオレフィン系重合体、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体が挙げられるが、捲縮付与性の点でポリエステルが好ましい。ポリエステルとしてはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、フタル酸、α,β−(4−カルボキシフェノキシ)エタン、4,4−ジカルボキシジフェニル−5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオールからなる繊維形成性のポリエステルを挙げることができ、構成単位の80モル%以上がエチレンテレフタレート単位であることが好ましい。
【0014】
一方、本発明の複合繊維に使用可能な低融点重合体Bとしてはポリオレフィン系重合体、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体およびポリビニルアルコール系重合体が挙げられるが、均質な熱処理方法である湿熱処理が利用できる点でポリビニルアルコール系重合体が好ましい。さらに、耐有機溶剤性を有すること、および光触媒型塗料のように溶剤が水を主成分とする場合、水との親和性を有することが必要であるため、エチレンービニルアルコール系共重合体とすることが好ましい。エチレンービニルアルコール系共重合体とは、ポリビニルアルコールにエチレン残基が10モル%以上60モル%以下共重合されたものを示す。特にエチレン残基が30モル%以上50モル%以下共重合されたものが、湿熱接着性の点で好適である。またビニルアルコール部分は95モル%以上の鹸化度をもつものが好ましい。
【0015】
さらに、低融点重合体Bとして好適に用いられるエチレンービニルアルコール系共重合体と高融点重合体Aからなる複合繊維において、エチレンービニルアルコール系共重合体の複合比率は10〜90質量%、好ましくは30〜70質量%であることが、紡糸性の点で好ましい。複合繊維の具体例としては、例えば、高融点重合体Aを芯成分とし、低融点重合体Bを鞘成分とする芯鞘型、高融点重合体Aを島成分とし、低融点重合体Bを海成分とする海島型、高融点重合体Aと低融点重合体Bとが多層貼り合せ構造を形成する分割型などを挙げることができる。中でも、分割型構造のものがスキン層の緻密さが高くなるため、特に光触媒型塗料を塗装する場合に好適である。
【0016】
図1(a)〜(c)に本発明で使用可能な横断面をもつ複合繊維の一例を示す。
図1(a)は芯鞘型複合繊維を示し、鞘成分に低融点重合体Bを配置した構造の複合繊維の断面図である。また、図1(b)は高融点重合体Aと低融点重合体Bとが貼り合わさったサイドバイサイド型複合繊維の断面図を示し、図1(c)は高融点重合体Aと低融点重合体Bとが交互に貼り合わさった分割型複合繊維の断面図を示す。
【0017】
本発明の塗装用ローラーブラシ構造体は繊維質環状体を塗料不浸透性ロール芯体に被せる構造体であり、かつローラーブラシ表面にスキン層を形成していることが重要である。繊維質環状体は本発明者が先に出願した特願2001−102968号に記載した方法、すなわち、花糸として上記の複合繊維を用いたモール糸を環状に製編織する方法を用いて製造することが可能である。
【0018】
前記モール糸の製造は、例えばモール撚糸機に複数本の芯糸(このうち幾本かを花糸接着のため接着性繊維とする場合がある)を供給しつつその周りに花糸を巻き付け、その後カッターで巻き付けた花糸を切断しながら撚糸を行いモール糸とするもの、また接着性繊維を用いる場合は、上記モール糸を形成後、接着性繊維が融解する温度で熱処理し、芯糸と花糸とを接着固定することにより芯糸からの花糸の脱落を防止したモール糸とするものであるが、本発明においてはこのようなモール糸の製造方法に限らず、他に例えばラッシェル法やトリコット法を用いてモール糸を製造してもよく、製造方法は問わないが、花糸の密度を高く設計できるモール撚糸機を使用する方法が好ましい。
【0019】
モール糸において、花糸の芯糸からの高さは1.5mm以上であることが好ましい。花糸の芯糸からの高さが1.5mm未満であると繊維質多孔性環状体としては塗料の含有量が低くなり好ましくない。一方、花糸の芯糸からの高さは、本発明者の知見によれば、高さが6mmを超えると編成条件を変更しても製編性が著しく悪くなると同時に、下記に示すスキン層形成性も悪くなるので、花糸の長さの範囲は1.5〜6.0mmがより好ましく、さらに好ましくは2.0〜3.0mmの範囲である。
【0020】
上記の環状体を塗料不浸透性ロール芯体に被せ、ローラー本体を完成させた後、複合繊維を形成する一成分である低融点重合体Bの融点以上の温度を加熱した熱板にローラーブラシ表面を接触させてスキン層を形成させて本発明のローラーブラシを得る。上記のようにして得られた塗装用ローラーブラシ構造体のスキン層には複合繊維の低融点重合体相互の融着により網状のマトリックスが、表面から内部に向かって形成されている。網状マトリックスの網目の孔サイズは概ね0.1〜0.5mmであり、またスキン層の厚みは概ね50〜300μmである。また、厚み方向に対して通気性を阻害するクローズ型発泡ウレタンのような膜は存在しない。前記スキン層の下側の層は複合繊維の低融点重合体相互の融着度合いが低い、粗なマトリックスが形成されており、さらにその下側にはモール糸の芯糸による支持層が存在し、さらにその下側の層は塗料不浸透性ロール芯材の表面と接触するモール糸の花糸が絡み合ったマトリックスが存在する。
【0021】
上記したように、本発明の塗装用ローラーブラシ構造体の表面にスキン層が形成されていることと、該スキン層の下側に自由度の低い層があることにより、該塗装用ローラーブラシ構造体が塗料を含み、そして塗装面へ塗料を転写させた時に、残泡を生じることなく優れた塗装性が得られる。例えば、従来の仕上げ塗り短毛ローラーの場合、表面は自由度の高いカットパイル仕上げであるため、カットパイルの毛丈が短くてもそれらが一定の変形を受けているとは限らないが、本発明の塗装用ローラーブラシ構造体では最外層部が融着による緻密なマトリックス構造であるため、塗装中の変形が殆どなく、スキン層に形成された自由度の極めて低い、またはサイズの変形のない小さな孔から塗料が押出されて転写される。また、塗装面への残泡については、本発明の塗装用ローラーブラシ構造体では液溜め部分がスキン層の下側に確保された自由度の低い層であるため、塗料が充満した場合に空気がほぼ完全に置換されているために、残泡が生じないと考えている。
【0022】
このように、本発明の塗装用ローラーブラシ構造体は、従来塗装で問題となっていた残泡の発生についても効果が認められる優れた塗装用ローラーブラシを提供するものである。以下、図を用いて本発明の塗装用ローラーブラシ構造体について更に詳細に説明する。
図2は本発明の塗装用ローラーブラシ構造体を構成するモール糸の構造を示し、モール芯糸1に対して花糸2が直交して毛羽状に立設している状態を示す。図面上では花糸は全て同一平面内に存在するように見られるが、環状体を製造する段階では解舒撚が入って製編される。
【0023】
図3は本発明の塗装用ローラーブラシ構造体の断面構造を示す電顕写真である。図3において、表層部がスキン層3であり、該スキン層3はモール芯糸1の周囲を構成する花糸2が比較的緻密に集積した層である。スキン層3は風合い的には明確に平滑感を有する表面外観である。図面上では約100μの厚みとなっている。図4は本発明の塗装用ローラーブラシ構造体の表面構造を示す電顕写真である。花糸3を構成する複合繊維の低融点重合体相互による融着部4が多数存在し、マトリックスが形成されていることがわかる。
【0024】
本発明の、高融点重合体成分Aと、高融点重合体成分Aよりも融点が40℃以上低い低融点重合体成分Bとからなる複合繊維を含む繊維質環状体を塗料保持体として塗料不浸透性ロール芯体に被覆した塗装用ローラーブラシ構造体は、ローラーブラシ製造工程中における塗料不浸透ロール芯胴周面への塗料保持体を巻着接合する際の不良発生を低減させると同時に、粘度の低い水性塗料に対しても塗料の含み性と塗料の吐き出し性が良好であり、塗装面に残泡を残さずに均一な塗装面を形成させることが可能となる。
【0025】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は本実施例により何等限定されるものではない。なお以下の実施例において、繊維質多孔環状体を構成する繊維(糸)の捲縮伸長率および塗装用ローラーブラシの塗装面の仕上がり度合いは、以下の方法により測定または評価したものを示す。
【0026】
[繊維質多孔環状体を構成する繊維(糸)の捲縮伸長率]
カセ取機で5500dtexのカセとなるまで糸条を巻き取った後、カセの下端中央に10gの荷重を吊るし、上部でこのカセを固定して、0.009cN/dtexの荷重がかかった状態で90℃の温度で30分間熱処理を行った。
次いで、無荷重状態で室温で放置して乾燥した後、再び10gの荷重をかけて5分間放置後の糸長を測定し、これをL1(mm)とした。次に1kgの荷重をかけ、30秒間放置後の糸長を測定し、これをL2(mm)として、下記の式(I)により捲縮伸長率を求めた。
捲縮伸長率(%)={(L2−L1)/L2}×100 ・・・(I)
【0027】
[塗装面の仕上がり具合]
ローラーブラシが塗料液(アクリルエマルジョン:日本ペイント社製「HI−ビニレックス80つや消し」)の表面に接触するように5回転往復させて、十分に塗料が含まれ、かつ液垂れがないことを目視により確認してコート紙上に塗布する。 仕上がり具合は以下に示すような、視覚による3段階評価を行った。
○:木目細かく、美しい
△:木目は細かいが、残泡が生じる
×:木目は細かいが、ローラー表面の跡が残る
【0028】
[実施例1]
(1)モール糸の製造
1)高融点重合体成分Aとして微粒子シリカを含有したポリエチレンテレフタレート(フェノール/テトラクロロエタンからなる等質量混合溶媒中、30℃で測定した固有粘度=0.68)を芯成分とし、低融点重合体成分Bとしてエチレン含有量40モル%、メルトインデックス=10のエチレンービニルアルコール系共重合体を鞘成分として用いて紡糸、延伸を行い、167dtex/48フィラメントの芯鞘複合フィラメント繊維を得た。該芯鞘複合フィラメント繊維を仮撚数2570T/M、1段ヒーター温度120℃、2段ヒーター温度135℃により仮撚加工を行い、捲縮伸長率が17%の仮撚加工糸を作製し、これをモール糸の芯糸用原糸とした。
2)そして、モール糸の花糸用原糸として6−ナイロン(A)と上記のエチレン−ビニルアルコール共重合体(B)を1:2の質量比で図1(c)に示す横断面構造を有する11分割型複合繊維となるように紡糸して111dtex/24フィラメントの延伸糸を得た。得られた糸を仮撚数2350T/M、1段ヒーター温度120℃、2段ヒーター温度135℃により仮撚加工を行い、糸の長手方向に部分的に分割が生じた複合繊維を得た。
3)上記の芯糸および花糸原糸をモール撚糸機にそれぞれ供給して、花糸の芯糸からの高さが3mm、線密度が11本/cmである1510dtexのモール糸を作製した。なお線密度はモール製造時の条件により設定した。
【0029】
(2)環状体の製造
上記のモール糸を2インチ、10ゲージ針本数が61本であるリリアン編機を用いて、1周編目長さが320mmの環状体を得た。
(3)ローラーブラシの製造
上記で得られた環状体をシンカーループが使用面となるように裏返してナイロン製円筒状芯体(長さ×外径=18cm×2.5cm)の表面に被せて、両端を適当に処理した後、184℃に加熱した熱板に20秒間接触させてスキン層を形成し、ハンドルを装着して本発明の塗装用ローラーブラシ構造体からなる塗装用ローラブラシを製造した。
【0030】
[比較例1]
実施例1において、184℃に加熱した熱板への接触処理をしないで塗装用ローラーブラシを作製し、そのまま使用した。
【0031】
[比較例2]
実施例1においてモール糸の花糸に使用した111dtex/24フィラメントの分割型複合繊維を30インチ16ゲージのシンカ−パイル編機を用いて、パイル高さを5mmとするカットベロア地を製造し、所定のサイズの短冊形に裁断して従来の螺旋状に巻きつける工法により実施例1と同サイズの塗装用ローラーブラシを作製し、次いで184℃に加熱した熱板に20秒間接触させてスキン層を形成し、ハンドルを装着して塗装用ローラーブラシを製造した。
得られたペイントローラーの性能評価結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
本発明の塗装用ローラーブラシは従来の製造方法で発生した継ぎ目の問題を解消するとともに、残泡の発生もなく、美しい塗装仕上げの可能な塗装用ローラーブラシ構造体である。
【0034】
【発明の効果】
本発明により、従来の塗装用ローラーブラシの製造方法で問題となっていた巻き目の継ぎ目不良によるブラシ面の不均質さを克服することができると同時に、残泡の形成も見られない塗装面の良好な仕上げ品位が確保できる塗装用ローラーブラシを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用可能な複合繊維の横断面図。
【図2】本発明の塗装用ローラーブラシ構造体を構成するモール糸の構造を示す側面図。
【図3】本発明の塗装用ローラーブラシ構造体の断面構造を示す顕微鏡写真。
【図4】本発明の塗装用ローラーブラシ構造体の表面構造を示す顕微鏡写真。
【符号の説明】
1:モール芯糸
2:モール花糸
3:スキン層
4:融着部
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗装用ローラーブラシに関するものであり、詳細にはローラーブラシ製造工程中における塗料不浸透ロール芯胴周面への塗料保持体を巻着接合する際の不良発生を低減させると同時に、粘度の低い水性塗料に対しても塗料の吸収性能(以下、含み性と称す)と塗料の流出性能(以下、吐き出し性と称す)が良好であり、塗装面に残泡を残さずに均一な塗装面を形成させることが可能な塗装用ローラーブラシ構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、塗装用ローラーブラシはプラスチック製または木製の塗料不浸透性ロール芯体に毛皮、合成繊維製パイル糸を植設した立毛織物または立毛編物を帯状にしたものを螺旋状に巻着接合して製造されている。このような製造方法に基づくローラーブラシは、ブラシ面構成基布の巻き目が外観上顕著に現れることがあり、特に巻き目が隙間として発生する場合は塗装面に継ぎ目の跡として筋状の欠点が残るという問題点があった。また、溶剤によりローラー芯体と布との剥離が生じ、糸抜けが起こる場合があり、不良品として製品出荷ができなくなるという問題も
あった。
【0003】
このような問題点を解決するために、実開昭52−21153号公報には、塗装用ローラーブラシとして丸編みメリヤス地をローラー基体に被覆することにより、従来の製造方法で問題となった螺旋状に巻着したときのような継ぎ目がないので、塗装面には継ぎ目による不平滑が生じないことが記載されている。
また、実開昭53−22609号公報には、パイルメリヤス編生地を金属その他の材料によって形成した芯筒に被せることにより全く継ぎ目のないローラーを低コストで供給できることが記載されている。
【0004】
一方、実開平5−74679号公報には塗装面に掃いたような毛跡を防止して均一な塗装を可能とするためにパイル糸として超極細繊維を使用することが記載されている。また、特開平11−19573号公報には超極細繊維をループ状に編織して継ぎ目のない環状布体を吸収性パッドに被せて用いることが記載されている。
【0005】
しかしながら、上記のように芯体に継ぎ目のない環状体を被うのみでは編目が塗装面に転写されるという欠点がある。さらにパイル状に繊維を起立させるとなっても、本来、編地により得られるパイルには明確な方向性を有するのであって、芯体に被せる場合、芯材の長手方向のいずれかの方向にパイル糸が倒れることになり、芯体の正逆回転方向とは全く一致しない点が指摘される。これに対して、従来の螺旋状に巻きつける工法においては、立毛部の方向性は回転方向と一致するかまたはローラーの反転による逆回転方向と一致するため、実際に使用する立場からすれば、螺旋状に巻きつける工法の方が塗装作業の点からすればずっと好ましい形態である。
【0006】
また、塗装用ローラーブラシを製造する場合、製造時の継ぎ目を皆無とするために上記先行文献に記載されているように、筒状の編地とし、さらにローラーとの接着性を高めるために地糸を収縮力により密着させ、さらにパイル糸として塗料の保持性を良好とし、同時に該パイル糸を超極細繊維とすることにより、均一な塗装が可能な塗装用ローラーが得られるように思われる。しかしながらペイントローラーが対象とする塗料は粘度の低いものから高いものまで含むため、塗料の保持性が良好であっても、塗料の吐き出し性が不十分な場合には良好なペイントローラーとは言い難い。すなわち、塗装用ローラーブラシは塗料の含み性と吐き出し性とのバランスが重要であって、さらに一定の圧力下で塗料の吐き出し量が一定となるようなローラーブラシが要求されている。
【0007】
さらに、塗装工程が仕上げ塗装となる場合には塗装面を美しく仕上げることが要求され、パイルの毛丈を短くした短毛ローラーが使用される。これはパイルの変形量を少なくすることにより均一さを保つための工夫がなされたローラーであるが、パイルに使用する繊維として極細繊維を用いても未だ不十分であった。
一方、本発明者は上記の課題を解決するために、特願2002−140900号において、接着性繊維を含む繊維質多孔環状体を塗装保持体として塗料不浸透性ロール芯体に被覆した塗装用ローラーブラシを提案しているが、未だ十分とはいえない。
【0008】
さらに、塗装時の仕上がり性向上を目指して、本発明者は既に特願2001−102968号に記載しているように、織編地などの地組織の片面に、所定範囲の捲縮伸長率を有する熱融着性捲縮繊維を特定割合で含む繊維からなる立設繊維層(パイル層)を形成した繊維構造体において、立設繊維層の表面部分に、該捲縮繊維を融着させて塗料が通過し得る孔を有する多孔質スキン層を形成させることにより塗装性能および塗装面の仕上がり性に優れた塗装用繊維構造体を見出しているが、従来の方法によりペイントローラーを製造する場合、上記したような製造方法に起因する継目の問題が解決できなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、このような状況に鑑みてなされたものであって、塗料不浸透性ロール芯体に継ぎ目のない繊維質環状体を直接被覆し、該繊維質環状体の最外層面にスキン層を形成させることにより塗料の含み性と吐き出し性のバランス性に優れ、さらにブラシ面の不均質さも克服することによる塗装面の仕上げ品位の更なる向上を目指し、また安価な塗装用ローラーブラシを提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、高融点重合体成分Aと、高融点重合体成分Aよりも融点が40℃以上低い低融点重合体成分Bとからなる複合繊維を含む繊維質環状体を塗料保持体として塗料不浸透性ロール芯体に被覆した塗装用ローラーブラシであって、該繊維質環状体の最表面にスキン層を形成しており、該スキン層が該複合繊維中の低融点重合体成分B間の部分融着により形成された網状融着層であることを特徴とする塗装用ローラーブラシ構造体であり、好ましくは低融点重合体成分Bがエチレンービニルアルコール共重合体である上記の塗装用ローラーブラシ構造体に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の塗装用ローラーブラシにおいては、高融点重合体成分Aと、高融点重合体成分Aよりも融点が40℃以上低い低融点重合体成分Bから構成される複合繊維からなる繊維質環状体を用いることが重要であり、かかる繊維質環状体を用いることにより、塗装面の出来栄えが非常に良好となる。さらに該繊維質環状体の最表面にスキン層を形成させることにより一層出来栄えが向上する。
【0012】
本発明に使用する複合繊維において、高融点重合体成分Aと低融点重合体成分Bの融点の差が40℃未満であると、後工程における熱処理工程で低融点重合体成分Bのみならず、高融点重合体成分Aまで軟化溶融することになる。もちろん、融点の差が大きくなりすぎると溶融複合紡糸ができなくなってしまうといった問題があるが、現実的には融点差は180℃以下とするのが好ましい。
【0013】
本発明に使用する複合繊維を形成する一成分である高融点重合体Aとしては、ポリオレフィン系重合体、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体が挙げられるが、捲縮付与性の点でポリエステルが好ましい。ポリエステルとしてはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、フタル酸、α,β−(4−カルボキシフェノキシ)エタン、4,4−ジカルボキシジフェニル−5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオールからなる繊維形成性のポリエステルを挙げることができ、構成単位の80モル%以上がエチレンテレフタレート単位であることが好ましい。
【0014】
一方、本発明の複合繊維に使用可能な低融点重合体Bとしてはポリオレフィン系重合体、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体およびポリビニルアルコール系重合体が挙げられるが、均質な熱処理方法である湿熱処理が利用できる点でポリビニルアルコール系重合体が好ましい。さらに、耐有機溶剤性を有すること、および光触媒型塗料のように溶剤が水を主成分とする場合、水との親和性を有することが必要であるため、エチレンービニルアルコール系共重合体とすることが好ましい。エチレンービニルアルコール系共重合体とは、ポリビニルアルコールにエチレン残基が10モル%以上60モル%以下共重合されたものを示す。特にエチレン残基が30モル%以上50モル%以下共重合されたものが、湿熱接着性の点で好適である。またビニルアルコール部分は95モル%以上の鹸化度をもつものが好ましい。
【0015】
さらに、低融点重合体Bとして好適に用いられるエチレンービニルアルコール系共重合体と高融点重合体Aからなる複合繊維において、エチレンービニルアルコール系共重合体の複合比率は10〜90質量%、好ましくは30〜70質量%であることが、紡糸性の点で好ましい。複合繊維の具体例としては、例えば、高融点重合体Aを芯成分とし、低融点重合体Bを鞘成分とする芯鞘型、高融点重合体Aを島成分とし、低融点重合体Bを海成分とする海島型、高融点重合体Aと低融点重合体Bとが多層貼り合せ構造を形成する分割型などを挙げることができる。中でも、分割型構造のものがスキン層の緻密さが高くなるため、特に光触媒型塗料を塗装する場合に好適である。
【0016】
図1(a)〜(c)に本発明で使用可能な横断面をもつ複合繊維の一例を示す。
図1(a)は芯鞘型複合繊維を示し、鞘成分に低融点重合体Bを配置した構造の複合繊維の断面図である。また、図1(b)は高融点重合体Aと低融点重合体Bとが貼り合わさったサイドバイサイド型複合繊維の断面図を示し、図1(c)は高融点重合体Aと低融点重合体Bとが交互に貼り合わさった分割型複合繊維の断面図を示す。
【0017】
本発明の塗装用ローラーブラシ構造体は繊維質環状体を塗料不浸透性ロール芯体に被せる構造体であり、かつローラーブラシ表面にスキン層を形成していることが重要である。繊維質環状体は本発明者が先に出願した特願2001−102968号に記載した方法、すなわち、花糸として上記の複合繊維を用いたモール糸を環状に製編織する方法を用いて製造することが可能である。
【0018】
前記モール糸の製造は、例えばモール撚糸機に複数本の芯糸(このうち幾本かを花糸接着のため接着性繊維とする場合がある)を供給しつつその周りに花糸を巻き付け、その後カッターで巻き付けた花糸を切断しながら撚糸を行いモール糸とするもの、また接着性繊維を用いる場合は、上記モール糸を形成後、接着性繊維が融解する温度で熱処理し、芯糸と花糸とを接着固定することにより芯糸からの花糸の脱落を防止したモール糸とするものであるが、本発明においてはこのようなモール糸の製造方法に限らず、他に例えばラッシェル法やトリコット法を用いてモール糸を製造してもよく、製造方法は問わないが、花糸の密度を高く設計できるモール撚糸機を使用する方法が好ましい。
【0019】
モール糸において、花糸の芯糸からの高さは1.5mm以上であることが好ましい。花糸の芯糸からの高さが1.5mm未満であると繊維質多孔性環状体としては塗料の含有量が低くなり好ましくない。一方、花糸の芯糸からの高さは、本発明者の知見によれば、高さが6mmを超えると編成条件を変更しても製編性が著しく悪くなると同時に、下記に示すスキン層形成性も悪くなるので、花糸の長さの範囲は1.5〜6.0mmがより好ましく、さらに好ましくは2.0〜3.0mmの範囲である。
【0020】
上記の環状体を塗料不浸透性ロール芯体に被せ、ローラー本体を完成させた後、複合繊維を形成する一成分である低融点重合体Bの融点以上の温度を加熱した熱板にローラーブラシ表面を接触させてスキン層を形成させて本発明のローラーブラシを得る。上記のようにして得られた塗装用ローラーブラシ構造体のスキン層には複合繊維の低融点重合体相互の融着により網状のマトリックスが、表面から内部に向かって形成されている。網状マトリックスの網目の孔サイズは概ね0.1〜0.5mmであり、またスキン層の厚みは概ね50〜300μmである。また、厚み方向に対して通気性を阻害するクローズ型発泡ウレタンのような膜は存在しない。前記スキン層の下側の層は複合繊維の低融点重合体相互の融着度合いが低い、粗なマトリックスが形成されており、さらにその下側にはモール糸の芯糸による支持層が存在し、さらにその下側の層は塗料不浸透性ロール芯材の表面と接触するモール糸の花糸が絡み合ったマトリックスが存在する。
【0021】
上記したように、本発明の塗装用ローラーブラシ構造体の表面にスキン層が形成されていることと、該スキン層の下側に自由度の低い層があることにより、該塗装用ローラーブラシ構造体が塗料を含み、そして塗装面へ塗料を転写させた時に、残泡を生じることなく優れた塗装性が得られる。例えば、従来の仕上げ塗り短毛ローラーの場合、表面は自由度の高いカットパイル仕上げであるため、カットパイルの毛丈が短くてもそれらが一定の変形を受けているとは限らないが、本発明の塗装用ローラーブラシ構造体では最外層部が融着による緻密なマトリックス構造であるため、塗装中の変形が殆どなく、スキン層に形成された自由度の極めて低い、またはサイズの変形のない小さな孔から塗料が押出されて転写される。また、塗装面への残泡については、本発明の塗装用ローラーブラシ構造体では液溜め部分がスキン層の下側に確保された自由度の低い層であるため、塗料が充満した場合に空気がほぼ完全に置換されているために、残泡が生じないと考えている。
【0022】
このように、本発明の塗装用ローラーブラシ構造体は、従来塗装で問題となっていた残泡の発生についても効果が認められる優れた塗装用ローラーブラシを提供するものである。以下、図を用いて本発明の塗装用ローラーブラシ構造体について更に詳細に説明する。
図2は本発明の塗装用ローラーブラシ構造体を構成するモール糸の構造を示し、モール芯糸1に対して花糸2が直交して毛羽状に立設している状態を示す。図面上では花糸は全て同一平面内に存在するように見られるが、環状体を製造する段階では解舒撚が入って製編される。
【0023】
図3は本発明の塗装用ローラーブラシ構造体の断面構造を示す電顕写真である。図3において、表層部がスキン層3であり、該スキン層3はモール芯糸1の周囲を構成する花糸2が比較的緻密に集積した層である。スキン層3は風合い的には明確に平滑感を有する表面外観である。図面上では約100μの厚みとなっている。図4は本発明の塗装用ローラーブラシ構造体の表面構造を示す電顕写真である。花糸3を構成する複合繊維の低融点重合体相互による融着部4が多数存在し、マトリックスが形成されていることがわかる。
【0024】
本発明の、高融点重合体成分Aと、高融点重合体成分Aよりも融点が40℃以上低い低融点重合体成分Bとからなる複合繊維を含む繊維質環状体を塗料保持体として塗料不浸透性ロール芯体に被覆した塗装用ローラーブラシ構造体は、ローラーブラシ製造工程中における塗料不浸透ロール芯胴周面への塗料保持体を巻着接合する際の不良発生を低減させると同時に、粘度の低い水性塗料に対しても塗料の含み性と塗料の吐き出し性が良好であり、塗装面に残泡を残さずに均一な塗装面を形成させることが可能となる。
【0025】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は本実施例により何等限定されるものではない。なお以下の実施例において、繊維質多孔環状体を構成する繊維(糸)の捲縮伸長率および塗装用ローラーブラシの塗装面の仕上がり度合いは、以下の方法により測定または評価したものを示す。
【0026】
[繊維質多孔環状体を構成する繊維(糸)の捲縮伸長率]
カセ取機で5500dtexのカセとなるまで糸条を巻き取った後、カセの下端中央に10gの荷重を吊るし、上部でこのカセを固定して、0.009cN/dtexの荷重がかかった状態で90℃の温度で30分間熱処理を行った。
次いで、無荷重状態で室温で放置して乾燥した後、再び10gの荷重をかけて5分間放置後の糸長を測定し、これをL1(mm)とした。次に1kgの荷重をかけ、30秒間放置後の糸長を測定し、これをL2(mm)として、下記の式(I)により捲縮伸長率を求めた。
捲縮伸長率(%)={(L2−L1)/L2}×100 ・・・(I)
【0027】
[塗装面の仕上がり具合]
ローラーブラシが塗料液(アクリルエマルジョン:日本ペイント社製「HI−ビニレックス80つや消し」)の表面に接触するように5回転往復させて、十分に塗料が含まれ、かつ液垂れがないことを目視により確認してコート紙上に塗布する。 仕上がり具合は以下に示すような、視覚による3段階評価を行った。
○:木目細かく、美しい
△:木目は細かいが、残泡が生じる
×:木目は細かいが、ローラー表面の跡が残る
【0028】
[実施例1]
(1)モール糸の製造
1)高融点重合体成分Aとして微粒子シリカを含有したポリエチレンテレフタレート(フェノール/テトラクロロエタンからなる等質量混合溶媒中、30℃で測定した固有粘度=0.68)を芯成分とし、低融点重合体成分Bとしてエチレン含有量40モル%、メルトインデックス=10のエチレンービニルアルコール系共重合体を鞘成分として用いて紡糸、延伸を行い、167dtex/48フィラメントの芯鞘複合フィラメント繊維を得た。該芯鞘複合フィラメント繊維を仮撚数2570T/M、1段ヒーター温度120℃、2段ヒーター温度135℃により仮撚加工を行い、捲縮伸長率が17%の仮撚加工糸を作製し、これをモール糸の芯糸用原糸とした。
2)そして、モール糸の花糸用原糸として6−ナイロン(A)と上記のエチレン−ビニルアルコール共重合体(B)を1:2の質量比で図1(c)に示す横断面構造を有する11分割型複合繊維となるように紡糸して111dtex/24フィラメントの延伸糸を得た。得られた糸を仮撚数2350T/M、1段ヒーター温度120℃、2段ヒーター温度135℃により仮撚加工を行い、糸の長手方向に部分的に分割が生じた複合繊維を得た。
3)上記の芯糸および花糸原糸をモール撚糸機にそれぞれ供給して、花糸の芯糸からの高さが3mm、線密度が11本/cmである1510dtexのモール糸を作製した。なお線密度はモール製造時の条件により設定した。
【0029】
(2)環状体の製造
上記のモール糸を2インチ、10ゲージ針本数が61本であるリリアン編機を用いて、1周編目長さが320mmの環状体を得た。
(3)ローラーブラシの製造
上記で得られた環状体をシンカーループが使用面となるように裏返してナイロン製円筒状芯体(長さ×外径=18cm×2.5cm)の表面に被せて、両端を適当に処理した後、184℃に加熱した熱板に20秒間接触させてスキン層を形成し、ハンドルを装着して本発明の塗装用ローラーブラシ構造体からなる塗装用ローラブラシを製造した。
【0030】
[比較例1]
実施例1において、184℃に加熱した熱板への接触処理をしないで塗装用ローラーブラシを作製し、そのまま使用した。
【0031】
[比較例2]
実施例1においてモール糸の花糸に使用した111dtex/24フィラメントの分割型複合繊維を30インチ16ゲージのシンカ−パイル編機を用いて、パイル高さを5mmとするカットベロア地を製造し、所定のサイズの短冊形に裁断して従来の螺旋状に巻きつける工法により実施例1と同サイズの塗装用ローラーブラシを作製し、次いで184℃に加熱した熱板に20秒間接触させてスキン層を形成し、ハンドルを装着して塗装用ローラーブラシを製造した。
得られたペイントローラーの性能評価結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
本発明の塗装用ローラーブラシは従来の製造方法で発生した継ぎ目の問題を解消するとともに、残泡の発生もなく、美しい塗装仕上げの可能な塗装用ローラーブラシ構造体である。
【0034】
【発明の効果】
本発明により、従来の塗装用ローラーブラシの製造方法で問題となっていた巻き目の継ぎ目不良によるブラシ面の不均質さを克服することができると同時に、残泡の形成も見られない塗装面の良好な仕上げ品位が確保できる塗装用ローラーブラシを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用可能な複合繊維の横断面図。
【図2】本発明の塗装用ローラーブラシ構造体を構成するモール糸の構造を示す側面図。
【図3】本発明の塗装用ローラーブラシ構造体の断面構造を示す顕微鏡写真。
【図4】本発明の塗装用ローラーブラシ構造体の表面構造を示す顕微鏡写真。
【符号の説明】
1:モール芯糸
2:モール花糸
3:スキン層
4:融着部
Claims (2)
- 高融点重合体成分Aと、高融点重合体成分Aよりも融点が40℃以上低い低融点重合体成分Bとからなる複合繊維を含む繊維質環状体を塗料保持体として塗料不浸透性ロール芯体に被覆した塗装用ローラーブラシであって、該繊維質環状体の最表面にスキン層を形成しており、該スキン層が該複合繊維中の低融点重合体成分B間の部分融着により形成された網状融着層であることを特徴とする塗装用ローラーブラシ構造体。
- 低融点重合体成分Bがエチレンービニルアルコール共重合体である請求項1に記載の塗装用ローラーブラシ構造体。
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