JP2005344225A - 立体編物 - Google Patents

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Abstract

【課題】張設状態にした際、荷重に対して適度な撓み量がありながら、繰返し圧縮後の撓みの残留が無い立体編物の提供。
【解決手段】表裏二層の編地と該二層の編地を連結する連結糸から構成された立体編物であって、表裏の少なくとも一部に300以上、3000dtexのポリエステル系熱融着糸を挿入し、熱により融着せしめた立体編物とする。
【選択図】 選択図なし

Description

本発明は立体編地に関する。更に詳しくは、フレームに張設した際、ホールド性、繰返し圧縮回復性に優れており、自動車、鉄道車両、航空機、チャイルドシート、ベビーカー、車座席、家具、事務用座席等シートとして好適に用いられる立体編物に関する。
表裏二層の編地と該二層の編地と連結する連結糸から構成された立体編物は、優れたクッション性、振動吸収性、通気性を有する特徴がある。さらには立体編物は合繊繊維から構成されるため、ポリウレタン素材と比較すると一般にリサイクルすることが可能であり、また、使用後の廃棄する際には焼却処理が可能で、かつ、焼却時の有毒ガス発生の問題が少ないという特徴がある為、座席や座席用のシートとしてのクッション材に使用されつつある。
特に近年、座席用途としては、座席を構成する金属や樹脂のフレームに立体編物を二辺以上で固定して、かつ、張設状態にして用いることで、着座感が向上するとした座席シート用立体編物が提案されている。
しかしながら張設状態にある立体編物にはほぼ垂直方向の荷重が働く為、立体編物の表裏地は伸長され、編目形態やメッシュ形態の変形を伴い、編地としての撓み量が大きい。又、立体編物の編目の変形量が大きい場合は、編目ズレが発生しやすく、除重時の厚みの回復性が悪くなり、へたりを生じるという問題があった。
特許文献1には、立体編物の表裏面に挿入糸を直線状に挿入した座席シート用立体編物が開示されている。しかしながら挿入糸の繊度、接着状態が何ら考慮されてないため、張設時の繰返し圧縮においては、圧縮回数の増大と共に挿入糸と地糸がスリップして編目ズレが発生し、少なからず撓みが残留する問題があった。
特許文献2には、熱融着や樹脂接着等の手段で、挿入糸と地糸とを接着せしめることにより、地糸とのスリップを防止することが開示されている。しかしながら融着条件及び融着条件と回復性との関係については言及されてはいない。
一方、特許文献3には、鞘芯型複合接着性繊維が組織に導入された立体編地が開示されている。しかし本発明で実施されている立体編地は、地組織に引き揃えで接着性繊維を交編し、熱処理により地組織のループ同士を固定するものである。この場合、張設した立体編地に垂直方向にかかる圧縮荷重によって、まずループの変形が生じ、ループ同士の融着点に過大な負荷がかかる。その為繰返し圧縮を行うと融着点が外れやすく、残留歪みが生じやすいという問題があった。又残留歪みを防止する為、融着点を強固にした際には、充分な撓み量がなく、柔軟性に欠け、クッション性の悪いものであった。
特開2003−003354号公報 WO02/079550号公報 特開平5−331748号公報
本発明の目的は、張設状態にした際、荷重に対して適度な撓み量がありながら、繰返し圧縮後の撓みの残留がなく、座席用素材としてクッション性に優れた立体編物を提供することにある。
本発明者等は、立体編物を構成する原糸、編組織について鋭意検討した結果、表裏少なくとも一方の編地に熱融着糸を挿入し、挿入糸と地組織を融着せしめることより、本発明の目的が達成できることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち本発明は、
(1)表裏二層の編地と、該二層の編地を連結する連結糸から構成された立体編物であって、表地または裏地の少なくとも一部に、繊度300dtex以上、3000dtex以下のポリエステル系熱融着糸が挿入され、かつ、熱融着されていることを特徴とする立体編物。
(2)ポリエステル系熱融着糸が鞘芯複合糸であって、鞘成分が融点100℃以上、180℃以下の共重合ポリエステルであり、かつ、鞘の厚みが10ミクロン以上、80ミクロン以下であることを特徴とする(1)に記載の立体編物。
(3)芯成分がポリトリメチレンテレフタレートであることを特徴とする(1)または(2)に記載の立体編物。
(4)(1)〜(3)に記載の立体編物をシート材として、単独あるいは複合して用いることにより、背部及び/又は座部を形成していることを特徴とする座席。
である。
本発明の立体編物は、フレームに固定し張設状態で使用した場合、柔軟で適度な撓みが有り、繰返し荷重に対して回復性が良好でヘタリがない為、特に座席シートの座面及び/あるいは背部として用いれば、クッション性及びホールド性に優れながら、耐久性も有し、かつ、見栄えが良くなる効果を有する。
本発明について、以下具体的に説明する。本発明の立体編物は、表裏二層の編地と該二層の編地を連結する連結糸から構成されるが、表地または裏地の少なくとも一部に、繊度300dtex以上、3000dtex以下のポリエステル系熱融着糸が挿入され、かつ、熱融着されていることを特徴とする。
立体編物は、相対する二列の針床を有する編機で編成することが出来る。このような編機として、ダブルラッセル編機、ダブル丸編機、Vベットを有する横編機等があるが、寸法安定性のよい立体編物を得るには、ダブルラッセル編機を用いるのが好ましい。本発明の立体編物をダブルラッセル編機で編成する場合、編機のゲージは9〜28ゲージが好ましく用いられる。表面を平滑な組織にして、肌触りを良好なものにしても良く、4画、6画等のメッシュ編地やマーキュゼット編地等複数の開口部を有する編地に編成して、意匠性を付与しても良い。また表裏の編地を異なる編組織としても良い。
本発明の立体編物において、熱融着糸以外の表裏の編地の地糸や、連結糸を形成する繊維としては、任意の繊維を用いることが出来る。このような繊維としては例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエステル系エラストマー繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリプロピレン系繊維等の合成繊維、綿、麻、ウール等の天然繊維、キュプラレーヨン、ビスコースレーヨン、リヨセル等の再生繊維等の再生繊維を挙げることが出来る。表裏糸及び連結糸をポリエステル系繊維100%で構成すると、廃棄の際に解重合によりモノマーに戻すリサイクルがし易くなり、また、焼却しても有害ガスの発生が防止できるので好ましい。
表裏を構成する繊維には、通常繊度として56dtex以上、2000dtex以下のものが用いられる。単糸数及び用いられるフィラメント数には特に限定されない。また、用いる繊維の断面形状は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。繊維の形態も未加工糸、紡績糸、撚糸、仮撚加工糸、流体噴射加工糸等いずれのものを使用することができる。
用いる連結糸としてはポリトリメチレンテレフタレート繊維を用いることが、立体編物の回復性、クッション性向上の点で好ましく、さらには丸形断面のモノフィラメントであることが剛性の点から好ましい。該連結糸に使用するモノフィラメントには、通常56dtex以上、1500dtex以下のものが用いられるが、適度なクッション性を有する為には、200dtex以上、1000dtex以下が好ましい。
立体編物の厚みおよび目付は、立体編物の使用目的に応じて任意に設定できるが、厚みは3mm以上、30mm以下が好ましい。3mm未満ではクッション性が低下し、30mmを超えると立体編物の仕上げ加工が困難になる。また目付は100g/m以上、3000g/m以下が好ましく、200g/m以上、2000g/m以下がさらに好ましい。
本発明においては、熱融着糸が表地あるいは裏地に挿入されて熱融着されていることに特徴がある。本発明の立体編物を座席用として座席を構成するフレームに2辺以上で張設状態で固定されることにより、座席に着座した際、垂直方向の荷重に対して立体編物自体が伸長して、挿入糸としての熱融着糸にまず負荷が掛かる。そのため編目の変形が少なくなり、編目ズレは発生しにくく、繰返し時の到達変位の変化は軽微で、且つ、除重後の回復性が極めて良好となるものである。
さらに、本発明においては熱融着糸の表地または裏地を構成する編地への交編方法及び、適切な熱融着方法が編地としての柔軟性を維持するためには重要である。熱融着糸を表裏組織の地組織として用いるのではなく、地組織へ挿入する手法を採れば、ニードルループの変形を束縛し、過度に変形させることが無くなる為、繰返し圧縮に対する接着耐久性が向上する。その結果、編目の過剰な固着が必要では無くなる為、編地の柔軟性を損なわずに適度な撓みを形成させることが出来、非常に好ましいものとなる。
ここで適度な撓みとは、座席の座部を模した幅52cm奥行き47cmフレームに、2辺で固定し張設した編地を、直径100mmの半球体で圧縮した場合の撓み量が、80mm以上、100mm未満が好ましい範囲であることを指す。より好ましくは85mm以上、95mm以下である。撓み量が80mm未満であれば、人間が着座した場合には撓み量が少なく、ホールド感が悪いものとなり、100mm以上であれば、人間が着座した場合は柔らかすぎて姿勢が安定せず、着座感が悪いものとなる。
さらに繰返し圧縮において着座感が変わらないことも重要な要素であり、耐へたり性の目安となる。圧縮回数1回目に対する圧縮回数100回目の到達変位、すなわち到達変位変化率を耐へたり性の目安とするが、該到達変位変化率が10%未満が好ましい。より好ましくは5%未満であり、座席として使用時にへたりが生じにくくなる。
ここでいう除重後の回復性とは、張設時の圧縮による撓み量に対する、除重により回復した際の回復量の割合すなわち撓みの回復率が指標となる。回復率85%以上、100%以下が見映えが良いので好ましく、さらに好ましくは90%以上である。
編地の表地または裏地に熱融着糸を挿入する手法は特に限定はしないが、ダブルラッセル編機を用いてもよく、タテ方向の挿入であれば編組織によって挿入でき、ヨコ方向の挿入は緯糸挿入装置を使用すれば可能である。
熱融着糸の糸形態はモノフィラメントであることが必要であり、かつ、熱融着性を有することも必要である。本発明の目的である編地の柔軟性と高い回復性の両立の為には、該熱融着糸の繊度は300dtex以上、3000dtex以下であることが必要である。より好ましくは500dtex以上、2000dtex以下である。繊度が小さすぎると、編目の変形が抑制されないので編目ズレが発生し、また強度が小さい為に編地の破断が起こりやすくなるので好ましくない。一方繊度が大きすぎると、座席として使用時に、座った時の荷重に対して伸びが小さく、クッション感やホールド感の良い立体編物が得られない。また3000dtexを超えると編成自体が困難となることがあり好ましくない。
挿入される熱融着糸は、ポリエステル系成分からなるのが、リサイクルの面から見て好ましい。
本発明に用いる熱融着糸は、二成分複合紡糸により鞘芯構造を有するモノフィラメントであることに特徴がある。本発明における熱融着性モノフィラメントの鞘成分が融点100℃以上、180℃以下であることが好ましく、その構成成分としては共重合ポリエステルであり、かつ、モノフィラメントを構成する鞘の厚みが10ミクロン以上、80ミクロン以下であることが好ましい。
本発明における鞘成分の融点は、100℃以上、180℃以下であることが、表裏地を構成する立体編物の地糸へ熱融着が均一、かつ、強固に可能となり、また、熱融着がヒートセット等の仕上げ工程で簡単に出来るようになる。鞘成分の融点が100℃未満では、屋外や炎天下等の過酷な暴露環境下だと、融着接合部がはずれ、回復性に劣るおそれがあり好ましくない。一方鞘成分の融点が180℃を超えると、融着させる際に高温処理が必要となり、その際、鞘芯糸の芯側をも溶融させたり、地組織を構成する糸を溶融ないしは変性させてしまい、編地として硬くなり過ぎることがあり好ましくない。
本発明に用いる鞘芯複合糸の鞘の厚みはより好ましくは25ミクロン以上、50ミクロン以下である。鞘の厚みが10ミクロン未満であると熱融着時に接着するモノフィラメントが表面でのみ接着することなり、接着力の弱いので表裏を構成する繊維と熱融着部が剥離しやすいので好ましくない。また鞘の厚みが80ミクロン以上であると、熱融着性は向上するが、接着部分が大きくなる為、必要以上の面積を融着してしまい、編地の柔軟性が大きく阻害されてしまう場合があり好ましくない。
融着性モノフィラメントの鞘成分を構成するポリマーとしては、共重合ポリエステルが好ましい。共重合ポリエステルとは、結晶性を有するポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステルに、共重合成分としてアジピン酸、イソフタル酸、セバシン酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、コハク酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、トリメリット酸、ε−カプロラクトン等の飽和多価カルボン酸および/又はエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(トリメチレンオキシド)グリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の多価アルコールの導入したものが挙げられる。特に、ポリエチレンテレフタレートに共重合成分として、アジピン酸、エチレングリコールおよびポリエチレングリコールを適度な比率で導入したものが100℃以上、180℃以下の融点を有し、かつ接着性が良好であるため好ましい。
本発明に用いる鞘芯複合糸の芯成分は、ポリトリメチレンテレフタレートが好ましく用いられるが、立体編地の形態安定性をより良好なものとするのに、他にポリエステル系エラストマー等の弾性回復性の良好なポリマーを用いてもよい。本発明の立体編物において、好ましく用いられるポリトリメチレンテレフタレートは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステルをいう。ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸又はその機能的誘導体と、トリメチレングリコール又はその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適当な反応条件下に結合せしめることにより合成される。この合成過程において、適当な一種又は二種以上の第三成分を添加して共重合ポリエステルとしてもよいし、又、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル、ナイロンとポリトリメチレンテレフタレートを別個に合成した後、ブレンドする等しても良いが、トリメチレンテレフタレート単位を80モル%以上、さらに90モル%以上で構成されることが好ましい。
添加する第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(P−オキシ安息香酸等)等がある。又、1個又は3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等又はグリセリン等)も重合体が実質的に線状である範囲内で使用することが出来る。
本発明の鞘芯複合糸は、紡糸、延伸までは公知のモノフィラメントの製造方法で得ることが出来、例えば以下の方法で製造される。
図1において、乾燥機(1)および(4)の中で、それぞれ鞘成分の共重合ポリエステルと芯成分のポリトリメチレンテレフタレートを乾燥し、次いで各ペレットを押出機(2)および(5)に供給し、それぞれ共重合ポリエステルとポリメチレンテレフタレートの溶融体とする。共重合ポリエステル溶融体はベント(3)を経てスピンヘッド(7)に、ポリトリメチレンテレフタレート溶融体はベント(6)を経てスピンヘッド(7)に送られ、その中に装着されるギアポンプ(8)で各々計量され、複合紡糸口金(9)より紡出される。紡出された鞘が共重合ポリエステル、芯がポリトリメチレンテレフタレートの溶融体はフィラメント状(10)となり、所定温度の冷却水浴(11)中に導かれて冷却されつつ、一定速度で回転している第1ロール群(12)により引き取られ所定の繊度まで細化され未延伸モノフィラメント糸となる。次いで、未延伸モノフィラメント糸は、所定の温度の温水浴(13)中で一定速度で回転する第2ロール群(14)により引張られて第1段の延伸が施される。その後モノフィラメントは所定の温度の乾熱または湿熱ヒーター(15)で定長又は弛緩熱処理を受け、第3ロール群(16)を経た後、巻取機(17)で巻き取られる。
尚、温水浴中の延伸は、1段延伸に限らず、複数回に分けて延伸しても良い。また、複合モノフィラメントの沸水収縮率や乾熱収縮率は、熱処理時の温度、時間、弛緩率または伸長率等により調節する事が出来る。
本発明の鞘芯複合糸の鞘成分及び/又は芯成分には二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等が含有されていてもよい。
本発明の鞘芯複合糸は、後工程の工程通過性を良くするために摩擦抵抗を下げたり、制電性を付与する等の機能を有する仕上げ剤を付与するのが好ましい。仕上げ剤を付与するのは、乾熱ヒーター(15)と第3ロール群(16)の間で付与するのが好ましい。仕上げ剤の種類は特に限定されないが、脂肪族エステル、鉱物油、ポリエーテル、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤等を組成成分として、適当な割合で混合した仕上げ剤を用いるのが好ましい。仕上げ剤の付着量は0.01wt%以上、2.0wt%以下である事が好ましい。
本発明における座席用途に用いられる場合、座席のフレームと本発明の立体編物とは張設状態で取り付けることが好ましい。この座席は背部及び/又は座部を構成するシート状物とから構成され、通常座席の4辺にフレームを置き、それに立体編物を固定して用いられる。立体編物をフレームに張設された状態は限定されるものではなく、立体編物の周囲あるいは少なくとも2辺を背部及び/又は座部のフレームに緊張状態で張ることにより形成させることができ、固定方法としては好ましくは金属バネで固定するか、フレームと融着、縫製、樹脂加工等の手段で端部を処理して固定することができる。このような固定方法でハンモック式座席シートとして用いることが出来る。更に、本発明の立体編物は単独で用いるだけではなく、他の素材、例えばウレタンフォーム、αゲル、低反発ウレタン、熱融着性クッション材等の柔軟なクッション材と併用して用いることができる。
以下、本発明を実施例で具体的に説明する。
本発明の立体編物および使用するポリエステル系熱融着糸の特性は、以下の方法により測定する。
(1)繊度、繊維長
JIS−L−1015法に準拠し、測定した。
(2)鞘芯熱融着糸における鞘部の厚み
繊維長に対し垂直繊維断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所製S−3500N)で100倍の倍率で観察し、鞘芯部の境界が明確に現れるように写真撮影を行い、半径方向における厚みを測定した。
(3)融点
パーキンエルマー社製示差走査型熱量測定装置Pyris1を用いて下記条件で測定を行う。測定サンプルには、チップ及び糸長を5mmにカットした複合モノフィラメントの短繊維を約5mg使用した。
測定温度(昇温速度):
(a)チップの場合、溶融・急冷後の再溶融時の融点測定
(溶融・急冷0℃→(500℃/分)→280℃→(500℃/分))
→−50℃→(20℃/分)→300℃
(b)複合モノフィラメントの場合、
0℃→(20℃/分)→300℃
測定雰囲気 :窒素、流量=200ml/分
得られる吸発熱曲線において、チップの場合、−50〜300℃の再溶融時100〜300℃の範囲に観測される吸熱ピークの最大値を示す温度をチップの融点とした。また、複合モノフィラメントの場合、100〜300℃の範囲に観測される2つの吸熱ピークの内、220〜230℃付近の吸熱ピーク(ポリトリメチレンテレフタレートの融解ピーク)以外の低融点側の吸熱ピークの最大値を示す温度を鞘成分の融点とした。
(4)密度
JIS−L−1013に基づいて四塩化炭素及びn−ヘプタンにより作成した密度勾配管を用いて密度勾配管法にて測定した。
(5)繊維破断強度、破断伸度
JIS−L−1013法に準拠し、測定した。
(6)固有粘度
固有粘度[η](dl/g)は、次式の定義に基づいて求められる値である。
[η]=lim(ηr−1)/C
C→0
定義中のηrは、純度98%以上のo−クロロフェノール溶媒で溶解したポリトリメチレンテレフタレー糸又はポリエチレンテレフタレート糸の稀釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されているものである。Cはg/100mlで表されるポリマー濃度である。
(7)繰返し張設圧縮試験による到達変位評価(撓み量評価)
幅52cm、奥行き47cm、高さ32cmの口型金属パイプ材からなるフレームに、幅30cm×奥行き57cmの立体編物を1%の伸張率にてフレームの前後となる立体編物の2辺をフレームの外側で直角に折り返し、立体編物の折り返した2辺を金属板からなる押さえ部材によりフレームに押さえつけ2辺固定で張設したものを作製する。島津オートグラフAG−B型((株)島津製作所製)にて、直径100mmの半球型冶具を用いて、張設した編地の表側中央部を100mm/分の速度で圧縮する。無加重の位置を0点とし、荷重が1000Nまで到達した時の変位を記録する。次に100mm/分の速度で変位0mmまで戻し、再び圧縮するという手順で圧縮回数100回まで繰返しを行う。
(8)回復性評価(残留撓み量評価)
(7)の繰返し圧縮が終了した後、残留する撓み量を直ちに記録する。また1時間放置しておき、再び残留撓み量を記録する。次の式により各々回復率を求める。
[回復率]={ [最大撓み量]−[残留撓み量] }/[最大撓み量]
〔モノフィラメントの製造〕
〈連結糸用モノフィラメントの製造〉
実施例において使用する連結糸に用いるポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメントは以下の方法により製造した。
固有粘度[η]=0.9のポリトリメチレンテレフタレートを紡糸温度265℃で紡口から吐出し、40℃の冷却浴中に導いて冷却しつつ16.0m/分の速度の第1ロール群で引張り細化して未延伸モノフィラメントを製造した。次いで、温度55℃の延伸浴中で5倍に延伸しながら80.0m/分の第2ロール群によって引張り、その後、120℃のスチーム浴中で弛緩熱処理を施しながら、72.0m/分の第3ロール群を経た後、第3ロール群と同速の巻取機で巻き取り、390dtexの延伸モノフィラメントを製造した。同様にして880dtexの延伸モノフィラメントを製造した。
得られた延伸糸の強度、伸度、弾性率並び に10%伸長時の弾性回復率は、各々2.7cN/dtex、4 9%、27cN/dtex並びに98%であった。
〈熱融着糸の製造〉
鞘芯融着モノフィラメントは以下の方法により製造した。
テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールを反応容器に入れ、少量の触媒を用いて常法に従いエステル交換反応を行い、一方アジピン酸とエチレングリコールを別の反応容器に入れ、少量の触媒を用いて常法に従いエステル化反応を行う。次いで、各々得られたオリゴマー、公知の酸化防止剤を適宜混合し、重縮合反応を行い、融点が120℃、ガラス転移点が0℃、密度1.25g/cmの共重合ポリエステル(I)及び、融点171℃、ガラス転移点が10℃、密度1.22g/cmの共重合ポリエステル(II)、さらには、融点190℃、ガラス転移点が15℃、密度1.21g/cmの共重合ポリエステル(III)を得た。
得られた共重合ポリエステルを鞘成分とし、ポリトリメチレンテレフタレート(固有粘度[η]=0.9、融点227℃、密度1.30g/cm)を芯成分とし、複合紡糸の際、各成分の吐出量を変更することにより、表1に示す数種の鞘芯糸を得た。
以下に共通条件を示す。
鞘成分ポリマー溶融温度 :200℃
芯成分ポリマー溶融温度 :260℃
紡糸温度 :260℃
冷却水水温 :40 ℃
引き取りロール(第1ロール)周速:8.8m/分
延伸浴水温 :55℃
延伸ロール(第2ロール)周速 :44m/分
乾熱ヒーター温度 :140℃
第3ロール周速 :40m/分
巻取速度 :40m/分
Figure 2005344225
[実施例1]
6枚筬を装備した14ゲージ、釜間13mmのダブルラッセル編機を用い、表側の編地を形成する筬(L1、L2)から500dtex/144フィラメント、乾熱収縮率3.3%のポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸をオールインの配列で供給し、連結部を形成する筬(L3)から390dtexのポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントをオールインの配列で供給し、さらに裏側の編地を形成する筬(L4、L5)から500dtex/144フィラメント、乾熱収縮率5.7%のポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸をオールインの配列で供給した。
以下に示す編組織で、裏側の編地にタテ方向に挿入糸(参考実施例1で製造した鞘芯融着モノフィラメントA)をオールインの配列で筬(L6)にて挿入し、打ち込み12.7コース/2.54cmの密度で立体編物の生機を編成した。得られた生機を1%幅出しして150℃×3分で乾熱ヒートセットし、表裏の編地が平坦な立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表2に示す。
(編組織)
L1:1211/1011/(オールイン)
L2:0111/2111/(オールイン)
L3:3410/4367/(オールイン)
L4:1110/0001/(オールイン)
L5:5510/1156/(オールイン)
L6:2222/0000/(オールイン)
得られた立体編物は、張設状態での圧縮で到達変位が大きく、ホールド性に優れながら、除重後の回復性も著しく良いものであった。
[実施例2]
実施例1において、裏側の挿入糸を参考例2で得られた鞘芯融着モノフィラメントBに変更して、実施例1と同様に立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表2に示す。
得られた立体編物は、張設状態での圧縮で到達変位が大きく、ホールド性に優れながら、除重後の回復性も著しく良いものであった。
[実施例3]
緯糸挿入装置を装備した10枚筬、14ゲージ、釜間12mmのダブルラッセル編機を用い、表側の編地を形成する筬(L3、L4)から500dtex/90フィラメント、乾熱収縮率1.8%のポリエチレンテレフタレート繊維の先染め仮撚加工糸(167dtex/30フィラメントの3本引き揃えインターレース加工糸:黒色)をオールインの配列で供給し、連結部を形成する筬(L5)から参考例1で製造した390dtexのポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントをオールインの配列で供給する。さらに裏側の編地を形成する筬(L7、L8)から500dtex/90フィラメント、乾熱収縮率1.8%のポリエチレンテレフタレート繊維の先染め仮撚加工糸(167dtex/30フィラメントの3本引き揃えインターレース加工糸:黒色)をオールインの配列で供給した。
以下に示す編組織で、裏側の編地の毎コースに挿入糸(参考例2で製造した鞘芯融着モノフィラメントA)を緯糸挿入して、打ち込み12.0コース/2.54cmの密度で立体編物の生機を編成した。得られた生機を1%幅出しして150℃×3分で乾熱ヒートセットし、表裏の編地が平坦な立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表2に示す。
(編組織)
L3:1211/1011/(オールイン)
L4:0111/2111/(オールイン)
L5:3410/4367/(オールイン)
L7:1110/0001/(オールイン)
L8:3310/1134/(オールイン)
得られた立体編物は、張設状態での圧縮で到達変位が大きく、ホールド性に優れながら、除重後の回復性も著しく良いものであった。
[実施例4]
実施例1において、裏側の挿入糸を参考例2で得られた鞘芯融着モノフィラメントGに変更して、ヒートセット温度を180℃×3分にした以外は、実施例1と同様に立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表2に示す。
得られた立体編物は、張設状態での圧縮で到達変位が大きく、ホールド性に優れながら、除重後の回復性も著しく良いものであった。
[比較例1]
実施例1において、裏側の挿入糸を参考例1で製造した880dtexのポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントに変更して、実施例1と同様に立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表2に示す。
得られた立体編物は、張設状態での圧縮で到達変位が大きく、ホールド性に比較的優れていたが、除重後の回復性が良いとは言えなかった。
[比較例2]
実施例1において、裏側の挿入糸を参考例2で得られた鞘芯融着モノフィラメントCに変更して、実施例1と同様に立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表2に示す。
得られた立体編物は、挿入糸の弾性率の低さに起因して、張設状態での圧縮で伸ばされることにより、融着外れが起こり、到達変位変化が大きかった。また除重後の回復性も低く、実用に耐えないものであった。
[比較例3]
実施例1において、裏側の挿入糸を参考例2で得られた鞘芯融着モノフィラメントDに変更して、実施例1と同様に立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表2に示す。
得られた立体編物は、張設状態での圧縮で到達変位が大きく、ホールド性に優れていたが、繰返し圧縮によりモノフィラメントの融着が外れたことにより、到達変位変化が大きかった。また除重後の回復性も低く、実用に耐えないものであった。
[比較例4]
実施例1において裏側の挿入糸の種類を、参考例2で得られた鞘芯融着モノフィラメントEに変更して、実施例1と同様に立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表2に示す。
得られた立体編物は、融着量が多すぎることにより裏面の柔軟性が無い為、張設状態での圧縮で到達変位が小さく、又、ホールド性に劣るものであった。
[比較例5]
実施例1において裏側の挿入糸の種類を、参考例2で得られた鞘芯融着モノフィラメントFに変更して、実施例1と同様に立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表2に示す。
得られた立体編物は、挿入糸のデニールが大きく、特に芯部が大きいことに起因し、弾性が大きく、撓み量が小さいものであった為、ホールド性に劣るものであった。
[比較例6]
実施例1において裏側の挿入糸の種類を、参考例2で得られた鞘芯融着モノフィラメントHに変更して、ヒートセット温度を200℃×3分にした以外は、実施例1と同様に立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表2に示す。
得られた立体編物は、融着させる温度を高く設定した為に撓み量が小さく、ホールド性に劣り、回復性にも劣るものであった。さらには高温処理に起因して連結糸が硬くなっており、触感が悪く、着座には適さないものであった。
[比較例7]
実施例3において緯糸挿入に用いる糸を、参考例1で製造した880dtexのポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントに変更して、実施例3と同様に立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表2に示す。
得られた立体編物は、張設状態での圧縮で到達変位が大きく、ホールド性に優れていたが、繰返し圧縮によりモノフィラメントにスリップが生じ、回復性が劣るものであった。
[比較例8]
実施例3において緯糸挿入せず、参考例2で得られた鞘芯融着モノフィラメントCをL8と同一の組織でL9の筬からオールインの配列で供給し、その他は実施例3と同様にして立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表2に示す。
得られた立体編物は、張設状態での繰返し圧縮により融着外れが発生し、到達変位の変化が大きかった。また編目の変形が残留する為、回復性が劣るものであった。
Figure 2005344225
本発明の立体編物は、融着、縫製、樹脂加工等の手段で端部を処理して、ハンモック式座席シートの用途に用いることが出来る。またウレタンフォーム等の柔軟なクッション材の上に表皮材として張り合わせた場合も張設状態に近い為、応用出来る。したがって自動車、鉄道車両、航空機、チャイルドシート、ベビーカー等の乗り物座席シート用クッション材及び家具、事務用等の座席シート用クッション材、ソファー、ベットパット等広範な用途に応用展開することが可能である。
本発明の熱融着糸の製造装置の概略図。
符号の説明
1、4 乾燥機
2、5 押出機
3、6 ベント
7 スピンヘッド
8 ギヤポンプ
9 複合紡糸口金
10 フィラメント状糸
11 冷水浴
12 第1ロール群
13 温水浴
14 第2ロール群
15 乾熱ヒーター
16 第3ロール群
17 巻取機

Claims (4)

  1. 表裏二層の編地と、該二層の編地を連結する連結糸から構成された立体編物であって、表地または裏地の少なくとも一部に、繊度300dtex以上、3000dtex以下のポリエステル系熱融着糸が挿入され、かつ、熱融着されていることを特徴とする立体編物。
  2. ポリエステル系熱融着糸が鞘芯複合糸であって、鞘成分が融点100℃以上、180℃以下の共重合ポリエステルであり、かつ、鞘の厚みが10ミクロン以上、80ミクロン以下であることを特徴とする請求項1に記載の立体編物。
  3. 芯成分がポリトリメチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1または2に記載の立体編物。
  4. 請求項1〜3に記載の立体編物をシート材として、単独あるいは複合して用いることにより、背部及び/又は座部を形成していることを特徴とする座席。
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