JP2004176228A - 熱接着性複合モノフィラメント - Google Patents
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Abstract
【課題】十分な力学強さ、高度の弾性特性、極めて優れた回復特性を付与でき、織編物の構成糸に使用し熱接着した場合、接着部が強固でかつ柔軟性を持つため繰り返し使用しても目ズレを起こす事が無く耐久クッション性を付与できる熱接着性複合モノフィラメントを提供することにある。
【解決手段】鞘芯形状を有し、鞘成分がポリエステル系エラストマー、芯成分がポリトリメチレンテレフタレートであり、鞘部の厚みが10〜80ミクロンであって、繊維繊度が300〜3000dtexである事を特徴とする熱接着性複合モノフィラメント。
【選択図】 なし
【解決手段】鞘芯形状を有し、鞘成分がポリエステル系エラストマー、芯成分がポリトリメチレンテレフタレートであり、鞘部の厚みが10〜80ミクロンであって、繊維繊度が300〜3000dtexである事を特徴とする熱接着性複合モノフィラメント。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、鉄道車両、航空機、家具、事務用座席シート、さらには各種膜材用補強材やネット、網類といった工業用途に好適な熱接着性複合モノフィラメントに関する。更に詳しくは、熱接着した場合に接着部が強固でかつ柔軟性を持ち、モノフィラメントとしても十分な引張強さ、高度の弾性特性、極めて優れた回復特性を発現し、繰り返し使用時にもヘタリの少ない特性を維持できる繊維構造体に用いられる熱接着性複合モノフィラメントに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年事務用椅子や車両用椅子用途において従来のウレタンフォームを代替するクッション性と意匠性を合わせ持ったものとして、弾性糸のモノフィラメントを織編物として用いた素材が使われるようになってきている。このようなモノフィラメントの一例として、主成分をポリエステルあるいはポリエーテル等の熱可塑性高分子を主体とするエラストマーのモノフィラメントからなる織物が知られているが、ウレタン素材等の従来のクッション材と比較すると、繰り返し変形時の弾性回復性が低下する問題があった。この原因としてはエラストマーそのものの弾性回復の低下並びにモノフィラメントの繰り返し変形時のヘタリ、目づれが大きい点が指摘されてきた。
【0003】
一方、ウレタン素材はクッション材としての耐久性は良好だが、椅子素材としてみた場合、床付き感が大きく、透湿性に劣り蓄熱性があるため蒸れやすいといった問題があった。さらには廃棄後、焼却すると燃焼時の発熱量が大きく有毒ガスの発生があり、そのため焼却炉の損傷が大きく、かつ有毒ガスの除去に経費が掛かる等の問題点があった。それ故、リサイクル可能な素材からなるこれら特性を満足する繊維構造体が求められてきた。
このような繊維構造体に用いられる熱接着性を有する弾性モノフィラメントとしては、鞘芯型熱接着繊維とした各種ポリエステル系繊維が考えられる。
【0004】
特許文献1には鞘成分及び芯成分ともポリエステル系エラストマーで、鞘成分を芯成分より低融点とした熱接着繊維がある。しかしこの熱接着繊維は、芯成分までポリエステル系エラストマーであるため、破断伸度が高く、繊維構造体としてはクッション感は得られるものの破断強度が低い。そのため、例えば自動車用クッション材に使用し衝突等で過負荷がかかった時や、繰返し使用した場合、破断が生じる恐れがあった。そのため破断強力を上げるべく、繊維を太くし使用しているが、重量が増し軽量化が要求される用途には不適であり、また屋外使用等の日光照射下では強度低下が激しく、長期使用には耐えうるものではなかった。近年、弾性回復特性を有するポリエステルとしてポリトリメチレンテレフタレート繊維が提案されている。
【0005】
特許文献2には、ポリトリメチレンテレフタレートを芯成分に、熱可塑性ポリエステル系エラストマーを鞘成分とした熱接着性複合繊維及びそれを用いた繊維構造体が提案されている。しかし、ここで提案された複合繊維を混綿ウェブ状とし、ある一定の形状を有するように詰め綿の状態とし、その後熱接着することにより繊維構造体を得て、クッション材とする技術である。この場合、複合繊維を構成するのは0.5〜200dtexの短繊維であり、比較的繊度の小さな短繊維を綿状にして使用しており、織編物としては構成されてはいない。そのため、ポリトリメチレンテレフタレート素材そのものが有する弾性回復性を発現する程度は小さい。
その為弾性回復性がよく、かつ形態保持性に優れ、高強力の織編物からなる繊維構造体を与えるようなモノフィラメントが求められてきた。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−152625号公報
【特許文献2】
特開2001−226830号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、十分な引張強さ、高度の弾性特性、極めて優れた回復特性を付与でき、織編物の構成糸に使用し熱接着した場合、接着部が強固でかつ柔軟性を持つため繰り返し使用しても目ズレを起こす事が無く耐久性に優れたクッション性を有する織編物を付与できる熱接着性複合モノフィラメントを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる従来技術の問題点を鑑み、十分な引張強さ、高度の弾性特性、極めて優れた回復特性を満足しつつ、繰り返し使用時も熱接着性に問題の無いモノフィラメントとするため、鞘芯部の構成と繊度及び熱接着性の関係について鋭意検討した結果、本発明をなすに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1) 鞘芯形状を有し、鞘成分がポリエステル系エラストマー、芯成分がポリトリメチレンテレフタレートであり、鞘部の厚みが10〜80ミクロン、かつ繊維繊度が300〜3000dtexであることを特徴とする熱接着性複合モノフィラメント。
(2) ポリエステル系エラストマーの融点が130〜200℃である事を特徴とする(1)記載の熱接着性複合モノフィラメント。
である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の熱接着性複合モノフィラメントについて詳細に説明する。
ここでいう、熱接着性とは熱接着性複合モノフィラメント(以下、複合モノフィラメントという)を熱処理した際に、溶融し密着している同素材または異素材からなる繊維あるいはモノフィラメントと接着する事を指す。
本発明の複合モノフィラメントは、鞘芯形状を有し、鞘成分がポリエステル系エラストマー、芯成分がポリトリメチレンテレフタレートである事が必要である。鞘芯形状とは、繊維断面において芯成分の周りに鞘が形成されたものであり、糸全体の断面形状及び芯成分の断面形状はそれぞれ丸型、三角型、四角型、L型、T型、Y型、W型、八葉型、扁平型、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型が挙げられ、鞘芯複合形状としては、同心鞘芯型、偏芯鞘芯型、海島鞘芯型等が挙げられるが、複合モノフィラメントの力学強さや弾性特性を十分に発現されるためにも同心鞘芯型である事が好ましい。
【0011】
鞘成分を構成するポリエステル系エラストマーは熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールをソフトセグメントとするポリエーテルエステル系ポリエステル、より具体的にはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−スルフォイソフタル酸ナトリウム等の芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、またはこれらのエステル形成誘導体等から選ばれたジカルボン酸の少なくとも一種類と、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオール、あるいは1,1−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール等の脂環式ジオール、またはこれらのエステル形成誘導体などから選ばれたジオール成分の少なくとも一種から構成される共重合体であることが好ましい。また、ソフトセグメントとしては、平均分子量が400〜5000程度の、ポリエチレングリコール、ポリ (1,2−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(トリメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体などのポリ(アルキレンオキシド)グリコールをあげることができる。特に、ハードセグメントが、主たる酸成分を40〜100モル%のテレフタル酸と0〜50モル%のイソフタル酸とし、主たるグリコール成分を1,4−ブタンジオールからなるポリエステルとし、主たるソフトセグメント成分が平均分子量400〜5000のポリ(アルキレンオキシド)グリコールとし、且つ該ハードセグメント成分と該ソフトセグメント成分との共重合割合(重量比)が95:5〜20:80wt%であるポリエーテルエステル系ブロック共重合体であることが好ましい。
【0012】
上記ポリエステル系エラストマーは融点が130〜200℃が好ましく、より好ましくは140〜180℃である。複合モノフィラメント製造時には、若干の融点向上が見られるが、複合モノフィラメントの鞘成分の融点とほぼ同程度である。
【0013】
芯成分を構成するポリトリメチレンテレフタレートはテレフタル酸又はテレフタル酸ジメチルエステルをジカルボン酸成分とし、トリメチレングリコールをジオール成分としたポリエステルである。このポリエステル中に、適当な一種又は二種以上の第三成分が導入された共重合ポリエステルとしてもよいし、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステルやナイロンをポリトリメチレンテレフタレートとブレンドしてもよい。
【0014】
添加する第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、5−ナトリウムイソフタル酸、5−ナトリウムイソフタル酸ジメチル等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(P−オキシ安息香酸等)等がある。また、1個又は3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等又はグリセリン等)も重合体が実質的に線状である範囲内で使用できる。該ポリトリメチレンテレフタレートの固有粘度は0.7〜1.5、融点は210℃以上である事が好ましい。
【0015】
本発明の複合モノフィラメントの繊維断面積に占める芯部の面積比が40%以上である事が好ましく、更に好ましくは50%以上である。
芯部の面積比が40%未満であると、熱接着性には優れるが、繊維繊度と鞘部厚みとのバランスにもよるが低強度の鞘成分比が高くなるため実質的に複合モノフィラメントの強度が低下することがある。
本発明の複合モノフィラメントの鞘部の厚みが10〜80ミクロンである事が必要であり、好ましくは25〜50ミクロンである。
鞘部の厚みが10ミクロン未満であると、熱接着時に接着する被繊維が表面接着のみとなり易く、接着力の弱い被繊維が剥離しやすい構造となるので好ましくない。また80ミクロン以上であると、熱接着性は大きく向上するが芯部の面積比と同様、複合モノフィラメントの強度が低下してしまうと共に、高コストのポリエステル系エラストマーを必要以上に多く使用し、製造コストが上昇するため好ましくない。
本発明の複合モノフィラメントの繊維繊度が300〜3000dtexである事が必要であり、好ましくは350〜2500dtexである。
【0016】
本発明においては、絶対強度の低いポリトリメチレンテレフタレートを芯成分とするモノフィラメントで織編物の構成糸として使用に耐えうる十分な力学強さと弾性回復性を発現させるためには適度な繊度が必要とされる。繊維繊度が300dtex未満であると、織編物の構成糸として使用時十分な強度が発現されず、織編物そのものの力学強さも劣るため好ましくない。また3000dtex以上であると十分な力学強さは発現されるが、重量が増すと共に織編物使用時の製織性や編成性に劣り好ましくない。
本発明の複合モノフィラメントの鞘成分のポリエステル系エラストマーの融点が130〜200℃である事が好ましく、より好ましくは融点が140〜180℃である。
【0017】
織編物の構成糸として使用する場合、熱セット時に熱接着も合わせて行うのが一般的である。熱セット温度としては、他の構成糸の強度劣化や染色堅牢度の低下防止等を考え、高くても200℃までであり、通常は180℃程度である。
熱セット温度が200℃を超えると、芯成分であるポリトリメチレンテレフタレート樹脂部に熱緩和が生じ、引張強力が低下する場合があり、好ましくない。
従って、鞘部の融点が200℃以上では十分に熱接着が出来ず、引張強力も低下するため好ましくない。また130℃未満では熱接着性は良好であるが、車両椅子用途において夏場の高温環境下や冬場暖房用の高温熱風下では溶融温度に近くなり熱接着部分が溶融する可能性があり好ましくない。またガラス転移温度は鞘成分のポリエステル系エラストマーの特性でほぼ決まるため大きくは変更できないが、出来るだけ低温である方が幅広い使用温度で熱接着部の柔軟性を発現できる点でも好ましい。
本発明の複合モノフィラメントの繊維破断強度が1.5cN/dtex以上、破断伸度が30〜60%である事が好ましい。
【0018】
繊維強度が1.5cN/dtex未満では織編物の構成糸としての使用において十分な力学強さを発現できず、強度は高いほど好ましいが実用上製造できるのは6cN/dtex程度が限界である。
複合モノフィラメントの破断伸度が30%未満では繰り返し変形使用時に熱接着部への負担が大きく剥離しやすくなり、60%以上では製造時に弛緩熱処理時の収縮率が大きなモノフィラメントとなる。そのため、繰り返し使用時には残留歪みが大きくなり、織物使用時はへたりや皺が発生してしまう問題があり好ましくない。
【0019】
本発明の複合モノフィラメントの光照射(ブラックパネル温度63℃、50%RH下でのカーボンアーク光照射200時間、JIS−L−0842の照射条件準拠)後の強度低下率が10%未満である事が好ましい。より好ましくは0%に近いほど好ましい。強度低下率が10%以上であると屋外使用下での繰り返し使用時に破れ等のトラブルが発生しやすくなる。
特にポリエステルポリエーテル共重合エラストマーは光照射時の劣化が大きいため、鞘芯ともエラストマーで構成される複合モノフィラメントは屋外使用のような常に光照射されるような条件下では強度低下が激しい場合がある。
【0020】
本発明の複合モノフィラメントは、紡糸、延伸までは公知の製造方法で得る事ができ、例えば、以下の方法で製造される。
図1において、乾燥機(1)及び(4)中で、それぞれ鞘成分のポリエステル系エラストマーと芯成分のポリトリメチレンテレフタレートを乾燥し、次いで各ペレットを押出機(2)及び(5)に供給し、それぞれポリエステル系エラストマーとポリトリメチレンテレフタレートの溶融体とする。ポリエステル系エラストマー溶融体はベンド(3)を経てスピンヘッド(7)に、ポリトリメチレンテレフタレート溶融体はベンド(6)を経てスピンヘッド(7)に送られ、その中に装着されるギヤポンプ(8)で各々計量され、複合紡糸口金(9)より紡出される。紡出された鞘がポリエステル系エラストマー、芯がポリトリメチレンテレフタレートの溶融体はフィラメント状(10)となり、所定温度の冷却水浴(11)中に導かれて冷却されつつ、一定速度で回転している第1ロール群(12)によって引き取られ所定の繊度まで細化され未延伸モノフィラメント糸となる。次いで、未延伸モノフィラメント糸は、所定の温度の温水浴(13)中で一定速度で回転する第2ロール群(14)により引っ張られて第1段の延伸が施される。その後モノフィラメントは所定の温度の乾熱ヒーター(15)で定長又は弛緩熱処理を受け、第3ロール群(16)を経た後、巻取機(17)で巻き取られる。
【0021】
なお、温水浴中の延伸は、1段延伸に限らず、複数回に分けて延伸しても良い。また、複合モノフィラメントの沸水収縮率や乾熱収縮率は、熱処理時の温度、時間、弛緩率または伸長率等により調節する事が出来る。
本発明の複合モノフィラメントの鞘成分及び/又は芯成分には二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等が含有されていてもよい。
【0022】
本発明の複合モノフィラメントは、後工程の工程通過性を良くするために摩擦抵抗を下げたり、制電性を付与する等の機能を有する仕上げ剤を付与するのが好ましい。仕上げ剤を付与するのは、乾熱ヒーター(15)と第3ロール群(16)の間で付与するのが好ましい。仕上げ剤の種類は特に限定されないが、脂肪族エステル、鉱物油、ポリエーテル、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤等を組成成分として、適当な割合で混合した仕上げ剤を用いるのが好ましい。仕上げ剤の付着量は0.01〜1.0wt%である事が好ましい。
本発明の複合モノフィラメントが適用される織編物とは、複合モノフィラメントがその構成糸の少なくとも一部に使用され、かつ織編物が繰り返し伸張や圧縮時に複合モノフィラメントが変形を受けるものであれば特に限定されない。
【0023】
例えば、織物としては複合モノフィラメントが経糸又は緯糸の少なくとも一方に用いられた織物であり、平織、綾織、朱子織といった組織で出来た一重織物や多重織物、三次元織物、三軸織物等が挙げられる。
編物としては天竺、スムース、両面タック編、ゴム編、袋編、ミラノリブといった丸編や横編、さらにはハーフ、バックハーフ、アトラス、クインズコード、シャークスキン、タッサーといったトリコット編、ラッセル編、ダブルラッセル編等の経編が挙げられる。このうち、特にクッション性と編組織の形態安定性を良好にするには、表裏二層の編地と該二層の編地を連結する連結糸とから構成されるダブルラッセル編において連結糸、表裏層編地の構成糸や挿入糸に用いられるのが特に好ましい。
【0024】
以下、本発明を実施例で具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
(1)固有粘度 [η]
オストワルド粘度計を用い、35℃のオルトクロロフェノール溶液中での比粘度ηspとポリマー濃度C(g/100ml)の比ηsp/Cを濃度ゼロに外挿し、以下式により求める。
【0025】
(2)芯部面積比及び鞘部の厚み
繊維長に対し垂直繊維断面を走査型電子顕微鏡(日立(製)S−3500N)で100倍の倍率で観察し、鞘芯部の境界が明確に現れるように写真撮影を行った。その写真を厚みが均一な紙にコピーし、複合モノフィラメントと外界面、その後鞘芯界面で切り取り各重量を測り以下のようにして面積比を求めた。
芯部面積比(%)=芯部の紙重量(g)/芯部と鞘部の複合モノフィラメントの紙重量×100
また、鞘部の厚みは同じ写真を用い、複合モノフィラメントの中心からとった半径方向における厚み10箇所を測定した平均値とした。
【0026】
(3)繊度、繊維長
JIS−L−1015法に準拠し、測定した。
(4)融点
パーキンエルマー社製示差走査型熱量測定装置Pyris1を用いて下記条件で測定を行った。測定試料には、チップ及び糸長方向にカットした複合モノフィラメントの短繊維を用いた。
サンプル質量 :約5mg
測定条件(昇温速度):
(a)チップの場合:溶融・急冷後の再溶融時の融点
(溶融・急冷0℃→(500℃/分)→280℃→(500℃/分))
→−50℃→(20℃/分)→300℃
(b)複合モノフィラメントの場合:
0℃→(20℃/分)→300℃
測定雰囲気は窒素とし、流量=200mL/分で測定した。
得られる吸発熱曲線において、チップの場合、50〜300℃の再溶融時100〜300℃の範囲に観測される吸熱ピークの最大値を示す温度をチップの融点とした。また、複合モノフィラメントの場合、100〜300℃の範囲に観測される2つの吸熱ピークの内、220〜230℃付近の吸熱ピーク(ポリトリメチレンテレフタレートの融解ピーク)以外の低融点側の吸熱ピークの最大値を示す温度を鞘成分の融点とした。
【0027】
(5)密度
JIS−L−1013に基づいて四塩化炭素及びn−ヘプタンにより作成した密度勾配管を用いて密度勾配管法にて測定した。
(6)繊維破断強度、破断伸度
JIS−L−1013法に準拠し、測定した。
【0028】
(7)光照射(カーボンアーク光照射)後の強度低下率
光照射条件:
JIS−L−0842を参考に紫外線フェードメーター(スガ試験機株式会社製FAL−AU−BR型)を用い、ブラックパネル温度63℃、50%RH下で、カーボンアーク光(放射エネルギー500±100W/m2)を200時間照射した。
強度低下率:
照射前後の破断強度をJIS−L−1013法に準拠し測定、以下のようにして強度低下率を求めた。
強度低下率(%)=(1−(照射後破断強度/照射前破断強度))×100
【0029】
【実施例1】
テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールを仕込み、少量の触媒と酸化防止剤と共に、常法に従いエステル交換反応後、引き続き重縮合反応を行い、融点が160℃、密度1.05g/cm3のポリエステルポリエーテル共重合エラストマーを得た。
得られたポリエステル系エラストマーを鞘成分、ポリトリメチレンテレフタレート(極限粘度[η] 0.92、融点227℃、密度1.35g/cm3)を芯成分とし、以下の製造条件で複合モノフィラメントを製造した。
鞘成分ポリマー吐出量 :2.1g/分
鞘成分ポリマー溶融温度 :200℃
芯成分ポリマー吐出量 :5.2g/分
芯成分ポリマー溶融温度 :260℃
紡糸温度 :260℃
冷却浴水温 :40℃
引き取りロール(第1ロール)周速:8.8m/分
延伸浴水温 :55℃
延伸ロール(第2ロール)周速 :44m/分
乾熱ヒーター温度 :140℃
第3ロール周速 :40m/分
巻取速度 :40m/分
【0030】
得られた複合モノフィラメントは繊維断面積に占める芯部の面積比が68%、鞘部の厚みが40ミクロン、繊維繊度が1820dtex、破断強度が2.0cN/dtex、破断伸度が48%であった。また鞘成分の融点は162℃であった。
得られた複合モノフィラメントを緯糸とし、835dtex/240フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維(旭化成株式会社製ポリエチレンテレフタレート繊維167dtex/48フィラメント、5本引き揃え)を経糸とし、それぞれの織密度が20本/2.54cm、28本/2.54cmとした平織り組織の織物を作成した。この織物を180℃×1分の乾熱処理を行った。熱処理後の織物は複合モノフィラメントが織物の経糸と交点部分で接着固化している事を確認した。また、熱処理後のサンプルの着座感は非常に良好で、かつ着座後の目ズレや皺もなく、事務用やリビング用椅子、自動車・電車等への座席用クッション材として好適なものであった。さらに日光が常に照射されるような屋外使用においても強度低下が少なく耐光性に優れるものであった。
【0031】
【実施例2、3】
実施例1で得られたポリエステルポリエーテル共重合エラストマーを鞘成分とし、ポリトリメチレンテレフタレートを芯成分とし、実施例1の製造条件において表1記載のように鞘成分及び芯成分のポリマー吐出量のみを変更し、鞘芯比の異なる各種複合モノフィラメントを得た。
いずれの複合モノフィラメントも実施例1記載の平織り組織の織物へ適用したところ、いずれも繰り返し使用において耐久クッション性があり、目ズレや皺もない良好なものであった。
【0032】
【実施例4】
実施例1で得られたポリエステルポリエーテル共重合エラストマーを鞘成分とし、ポリトリメチレンテレフタレートを芯成分とし、実施例1の製造条件において表1記載のように鞘成分及び芯成分のポリマー吐出量のみを変更し、実施例1と同じ鞘部の厚みで繊維繊度の異なる複合モノフィラメントを得た。得られた複合モノフィラメントは繊維断面積に占める芯部の面積比が43%、鞘部の厚みが40ミクロン、繊維繊度が500dtex、破断強度が2.4cN/dtex、破断伸度が50%であった。また鞘成分の融点は163℃であった。
得られた複合モノフィラメントを以下の方法でラッセル編地に使用した。
【0033】
【実施例5、6】
実施例1において、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールの仕込み量比を変更し、融点140℃、密度1.00g/cm3のポリエステルポリエーテル共重合エラストマーと融点180℃、密度1.12g/cm3のポリエステルポリエーテル共重合エラストマーを得た。得られたポリエステルポリエーテル共重合エラストマーを鞘成分とし、ポリトリメチレンテレフタレートを芯成分とし、実施例1の製造条件において表1記載のように鞘成分及び芯成分のポリマー吐出量のみを変更し、実施例1と同じ鞘部厚み、芯部の面積比となる複合モノフィラメントを得た。いずれの複合モノフィラメントも熱処理温度をそれぞれ160℃、200℃に変更し、実施例1記載の平織り組織の織物へ適用したところ、いずれも繰り返し使用において耐久クッション性があり、目ズレや皺もない良好なものであった。
【0034】
【比較例1】
実施例1の製造条件において表1記載のように鞘成分及び芯成分のポリマー吐出量のみを変更し、鞘部の厚みが40ミクロン、繊維断面積に占める芯部の面積比が16%、繊維繊度が150dtex、鞘成分の融点が162℃の複合モノフィラメントを得た。実施例1記載の平織り組織の織物へ適用したところ、熱接着性は良好であるが破断強力が低いため、繰り返し使用時に破れが発生してしまうものであった。
【0035】
【比較例2】
実施例1の製造条件において表1記載のように鞘成分及び芯成分のポリマー吐出量のみを変更し、鞘部の厚みが5ミクロン、繊維断面積に占める芯部の面積比が95%、繊維繊度が1820dtex、鞘成分の融点が162℃の複合モノフィラメントを得た。実施例1記載の平織り組織の織物へ適用したところ、繰り返し使用において接着部が簡単に剥離し、目ズレや皺の発生する耐久クッション性のないものであった。
【0036】
【比較例3】
実施例1の製造条件において表1記載のように鞘成分及び芯成分のポリマー吐出量のみを変更し、鞘部の厚みが120ミクロン、繊維断面積に占める芯部の面積比が22%、繊維繊度が1820dtex、鞘成分の融点が162℃の複合モノフィラメントを得た。実施例1記載の平織り組織の織物へ適用したところ、接着性は良好であったが、高コストでかつ光照射後の強度低下が大きく耐久性に劣るものであった。
【0037】
【比較例4】
実施例1において、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールの仕込み量比を変更し、融点220℃、密度1.26g/cm3のポリエステルポリエーテル共重合エラストマーを得た。得られたポリエステルポリエーテル共重合エラストマーを芯成分とし、実施例1で得られた融点160℃ポリエステルポリエーテル共重合エラストマーを鞘成分とし、実施例1の製造条件において表1記載のように鞘成分及び芯成分のポリマー吐出量のみを変更し、鞘芯ともポリエステル系エラストマーからなる複合モノフィラメントを得た。
実施例1記載の平織り組織の織物へ適用したところ、接着性および弾性回復性は良好であったが、破断強度が低く、光照射後の強度低下もきわめて大きなものとなった。
【表1】
【表2】
【0038】
【発明の効果】
本発明の熱接着性複合モノフィラメントは、十分な力学強さ、高度の弾性特性、極めて優れた回復特性を付与でき、織編物の構成糸に使用し熱接着した場合、接着部が強固でかつ柔軟性を持つため、繰り返し使用しても目ズレを起こす事が無く長時間使用しても弾力性が損なわれにくく、クッション性の耐久性に優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の複合モノフィラメントを製造するための装置の概略図である。
【符号の説明】
(1)、(4)乾燥機
(2)、(5)押出機
(3)、(6)ベント
(7) スピンヘッド
(8) ギヤポンプ
(9) 複合紡糸口金
(10) フィラメント状糸
(11) 冷水浴
(12) 第1ロール群
(13) 温水浴
(14) 第2ロール群
(15) 乾熱ヒーター
(16) 第3ロール群
(17) 巻取機
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、鉄道車両、航空機、家具、事務用座席シート、さらには各種膜材用補強材やネット、網類といった工業用途に好適な熱接着性複合モノフィラメントに関する。更に詳しくは、熱接着した場合に接着部が強固でかつ柔軟性を持ち、モノフィラメントとしても十分な引張強さ、高度の弾性特性、極めて優れた回復特性を発現し、繰り返し使用時にもヘタリの少ない特性を維持できる繊維構造体に用いられる熱接着性複合モノフィラメントに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年事務用椅子や車両用椅子用途において従来のウレタンフォームを代替するクッション性と意匠性を合わせ持ったものとして、弾性糸のモノフィラメントを織編物として用いた素材が使われるようになってきている。このようなモノフィラメントの一例として、主成分をポリエステルあるいはポリエーテル等の熱可塑性高分子を主体とするエラストマーのモノフィラメントからなる織物が知られているが、ウレタン素材等の従来のクッション材と比較すると、繰り返し変形時の弾性回復性が低下する問題があった。この原因としてはエラストマーそのものの弾性回復の低下並びにモノフィラメントの繰り返し変形時のヘタリ、目づれが大きい点が指摘されてきた。
【0003】
一方、ウレタン素材はクッション材としての耐久性は良好だが、椅子素材としてみた場合、床付き感が大きく、透湿性に劣り蓄熱性があるため蒸れやすいといった問題があった。さらには廃棄後、焼却すると燃焼時の発熱量が大きく有毒ガスの発生があり、そのため焼却炉の損傷が大きく、かつ有毒ガスの除去に経費が掛かる等の問題点があった。それ故、リサイクル可能な素材からなるこれら特性を満足する繊維構造体が求められてきた。
このような繊維構造体に用いられる熱接着性を有する弾性モノフィラメントとしては、鞘芯型熱接着繊維とした各種ポリエステル系繊維が考えられる。
【0004】
特許文献1には鞘成分及び芯成分ともポリエステル系エラストマーで、鞘成分を芯成分より低融点とした熱接着繊維がある。しかしこの熱接着繊維は、芯成分までポリエステル系エラストマーであるため、破断伸度が高く、繊維構造体としてはクッション感は得られるものの破断強度が低い。そのため、例えば自動車用クッション材に使用し衝突等で過負荷がかかった時や、繰返し使用した場合、破断が生じる恐れがあった。そのため破断強力を上げるべく、繊維を太くし使用しているが、重量が増し軽量化が要求される用途には不適であり、また屋外使用等の日光照射下では強度低下が激しく、長期使用には耐えうるものではなかった。近年、弾性回復特性を有するポリエステルとしてポリトリメチレンテレフタレート繊維が提案されている。
【0005】
特許文献2には、ポリトリメチレンテレフタレートを芯成分に、熱可塑性ポリエステル系エラストマーを鞘成分とした熱接着性複合繊維及びそれを用いた繊維構造体が提案されている。しかし、ここで提案された複合繊維を混綿ウェブ状とし、ある一定の形状を有するように詰め綿の状態とし、その後熱接着することにより繊維構造体を得て、クッション材とする技術である。この場合、複合繊維を構成するのは0.5〜200dtexの短繊維であり、比較的繊度の小さな短繊維を綿状にして使用しており、織編物としては構成されてはいない。そのため、ポリトリメチレンテレフタレート素材そのものが有する弾性回復性を発現する程度は小さい。
その為弾性回復性がよく、かつ形態保持性に優れ、高強力の織編物からなる繊維構造体を与えるようなモノフィラメントが求められてきた。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−152625号公報
【特許文献2】
特開2001−226830号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、十分な引張強さ、高度の弾性特性、極めて優れた回復特性を付与でき、織編物の構成糸に使用し熱接着した場合、接着部が強固でかつ柔軟性を持つため繰り返し使用しても目ズレを起こす事が無く耐久性に優れたクッション性を有する織編物を付与できる熱接着性複合モノフィラメントを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる従来技術の問題点を鑑み、十分な引張強さ、高度の弾性特性、極めて優れた回復特性を満足しつつ、繰り返し使用時も熱接着性に問題の無いモノフィラメントとするため、鞘芯部の構成と繊度及び熱接着性の関係について鋭意検討した結果、本発明をなすに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1) 鞘芯形状を有し、鞘成分がポリエステル系エラストマー、芯成分がポリトリメチレンテレフタレートであり、鞘部の厚みが10〜80ミクロン、かつ繊維繊度が300〜3000dtexであることを特徴とする熱接着性複合モノフィラメント。
(2) ポリエステル系エラストマーの融点が130〜200℃である事を特徴とする(1)記載の熱接着性複合モノフィラメント。
である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の熱接着性複合モノフィラメントについて詳細に説明する。
ここでいう、熱接着性とは熱接着性複合モノフィラメント(以下、複合モノフィラメントという)を熱処理した際に、溶融し密着している同素材または異素材からなる繊維あるいはモノフィラメントと接着する事を指す。
本発明の複合モノフィラメントは、鞘芯形状を有し、鞘成分がポリエステル系エラストマー、芯成分がポリトリメチレンテレフタレートである事が必要である。鞘芯形状とは、繊維断面において芯成分の周りに鞘が形成されたものであり、糸全体の断面形状及び芯成分の断面形状はそれぞれ丸型、三角型、四角型、L型、T型、Y型、W型、八葉型、扁平型、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型が挙げられ、鞘芯複合形状としては、同心鞘芯型、偏芯鞘芯型、海島鞘芯型等が挙げられるが、複合モノフィラメントの力学強さや弾性特性を十分に発現されるためにも同心鞘芯型である事が好ましい。
【0011】
鞘成分を構成するポリエステル系エラストマーは熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールをソフトセグメントとするポリエーテルエステル系ポリエステル、より具体的にはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−スルフォイソフタル酸ナトリウム等の芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、またはこれらのエステル形成誘導体等から選ばれたジカルボン酸の少なくとも一種類と、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオール、あるいは1,1−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール等の脂環式ジオール、またはこれらのエステル形成誘導体などから選ばれたジオール成分の少なくとも一種から構成される共重合体であることが好ましい。また、ソフトセグメントとしては、平均分子量が400〜5000程度の、ポリエチレングリコール、ポリ (1,2−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(トリメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体などのポリ(アルキレンオキシド)グリコールをあげることができる。特に、ハードセグメントが、主たる酸成分を40〜100モル%のテレフタル酸と0〜50モル%のイソフタル酸とし、主たるグリコール成分を1,4−ブタンジオールからなるポリエステルとし、主たるソフトセグメント成分が平均分子量400〜5000のポリ(アルキレンオキシド)グリコールとし、且つ該ハードセグメント成分と該ソフトセグメント成分との共重合割合(重量比)が95:5〜20:80wt%であるポリエーテルエステル系ブロック共重合体であることが好ましい。
【0012】
上記ポリエステル系エラストマーは融点が130〜200℃が好ましく、より好ましくは140〜180℃である。複合モノフィラメント製造時には、若干の融点向上が見られるが、複合モノフィラメントの鞘成分の融点とほぼ同程度である。
【0013】
芯成分を構成するポリトリメチレンテレフタレートはテレフタル酸又はテレフタル酸ジメチルエステルをジカルボン酸成分とし、トリメチレングリコールをジオール成分としたポリエステルである。このポリエステル中に、適当な一種又は二種以上の第三成分が導入された共重合ポリエステルとしてもよいし、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステルやナイロンをポリトリメチレンテレフタレートとブレンドしてもよい。
【0014】
添加する第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、5−ナトリウムイソフタル酸、5−ナトリウムイソフタル酸ジメチル等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(P−オキシ安息香酸等)等がある。また、1個又は3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等又はグリセリン等)も重合体が実質的に線状である範囲内で使用できる。該ポリトリメチレンテレフタレートの固有粘度は0.7〜1.5、融点は210℃以上である事が好ましい。
【0015】
本発明の複合モノフィラメントの繊維断面積に占める芯部の面積比が40%以上である事が好ましく、更に好ましくは50%以上である。
芯部の面積比が40%未満であると、熱接着性には優れるが、繊維繊度と鞘部厚みとのバランスにもよるが低強度の鞘成分比が高くなるため実質的に複合モノフィラメントの強度が低下することがある。
本発明の複合モノフィラメントの鞘部の厚みが10〜80ミクロンである事が必要であり、好ましくは25〜50ミクロンである。
鞘部の厚みが10ミクロン未満であると、熱接着時に接着する被繊維が表面接着のみとなり易く、接着力の弱い被繊維が剥離しやすい構造となるので好ましくない。また80ミクロン以上であると、熱接着性は大きく向上するが芯部の面積比と同様、複合モノフィラメントの強度が低下してしまうと共に、高コストのポリエステル系エラストマーを必要以上に多く使用し、製造コストが上昇するため好ましくない。
本発明の複合モノフィラメントの繊維繊度が300〜3000dtexである事が必要であり、好ましくは350〜2500dtexである。
【0016】
本発明においては、絶対強度の低いポリトリメチレンテレフタレートを芯成分とするモノフィラメントで織編物の構成糸として使用に耐えうる十分な力学強さと弾性回復性を発現させるためには適度な繊度が必要とされる。繊維繊度が300dtex未満であると、織編物の構成糸として使用時十分な強度が発現されず、織編物そのものの力学強さも劣るため好ましくない。また3000dtex以上であると十分な力学強さは発現されるが、重量が増すと共に織編物使用時の製織性や編成性に劣り好ましくない。
本発明の複合モノフィラメントの鞘成分のポリエステル系エラストマーの融点が130〜200℃である事が好ましく、より好ましくは融点が140〜180℃である。
【0017】
織編物の構成糸として使用する場合、熱セット時に熱接着も合わせて行うのが一般的である。熱セット温度としては、他の構成糸の強度劣化や染色堅牢度の低下防止等を考え、高くても200℃までであり、通常は180℃程度である。
熱セット温度が200℃を超えると、芯成分であるポリトリメチレンテレフタレート樹脂部に熱緩和が生じ、引張強力が低下する場合があり、好ましくない。
従って、鞘部の融点が200℃以上では十分に熱接着が出来ず、引張強力も低下するため好ましくない。また130℃未満では熱接着性は良好であるが、車両椅子用途において夏場の高温環境下や冬場暖房用の高温熱風下では溶融温度に近くなり熱接着部分が溶融する可能性があり好ましくない。またガラス転移温度は鞘成分のポリエステル系エラストマーの特性でほぼ決まるため大きくは変更できないが、出来るだけ低温である方が幅広い使用温度で熱接着部の柔軟性を発現できる点でも好ましい。
本発明の複合モノフィラメントの繊維破断強度が1.5cN/dtex以上、破断伸度が30〜60%である事が好ましい。
【0018】
繊維強度が1.5cN/dtex未満では織編物の構成糸としての使用において十分な力学強さを発現できず、強度は高いほど好ましいが実用上製造できるのは6cN/dtex程度が限界である。
複合モノフィラメントの破断伸度が30%未満では繰り返し変形使用時に熱接着部への負担が大きく剥離しやすくなり、60%以上では製造時に弛緩熱処理時の収縮率が大きなモノフィラメントとなる。そのため、繰り返し使用時には残留歪みが大きくなり、織物使用時はへたりや皺が発生してしまう問題があり好ましくない。
【0019】
本発明の複合モノフィラメントの光照射(ブラックパネル温度63℃、50%RH下でのカーボンアーク光照射200時間、JIS−L−0842の照射条件準拠)後の強度低下率が10%未満である事が好ましい。より好ましくは0%に近いほど好ましい。強度低下率が10%以上であると屋外使用下での繰り返し使用時に破れ等のトラブルが発生しやすくなる。
特にポリエステルポリエーテル共重合エラストマーは光照射時の劣化が大きいため、鞘芯ともエラストマーで構成される複合モノフィラメントは屋外使用のような常に光照射されるような条件下では強度低下が激しい場合がある。
【0020】
本発明の複合モノフィラメントは、紡糸、延伸までは公知の製造方法で得る事ができ、例えば、以下の方法で製造される。
図1において、乾燥機(1)及び(4)中で、それぞれ鞘成分のポリエステル系エラストマーと芯成分のポリトリメチレンテレフタレートを乾燥し、次いで各ペレットを押出機(2)及び(5)に供給し、それぞれポリエステル系エラストマーとポリトリメチレンテレフタレートの溶融体とする。ポリエステル系エラストマー溶融体はベンド(3)を経てスピンヘッド(7)に、ポリトリメチレンテレフタレート溶融体はベンド(6)を経てスピンヘッド(7)に送られ、その中に装着されるギヤポンプ(8)で各々計量され、複合紡糸口金(9)より紡出される。紡出された鞘がポリエステル系エラストマー、芯がポリトリメチレンテレフタレートの溶融体はフィラメント状(10)となり、所定温度の冷却水浴(11)中に導かれて冷却されつつ、一定速度で回転している第1ロール群(12)によって引き取られ所定の繊度まで細化され未延伸モノフィラメント糸となる。次いで、未延伸モノフィラメント糸は、所定の温度の温水浴(13)中で一定速度で回転する第2ロール群(14)により引っ張られて第1段の延伸が施される。その後モノフィラメントは所定の温度の乾熱ヒーター(15)で定長又は弛緩熱処理を受け、第3ロール群(16)を経た後、巻取機(17)で巻き取られる。
【0021】
なお、温水浴中の延伸は、1段延伸に限らず、複数回に分けて延伸しても良い。また、複合モノフィラメントの沸水収縮率や乾熱収縮率は、熱処理時の温度、時間、弛緩率または伸長率等により調節する事が出来る。
本発明の複合モノフィラメントの鞘成分及び/又は芯成分には二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等が含有されていてもよい。
【0022】
本発明の複合モノフィラメントは、後工程の工程通過性を良くするために摩擦抵抗を下げたり、制電性を付与する等の機能を有する仕上げ剤を付与するのが好ましい。仕上げ剤を付与するのは、乾熱ヒーター(15)と第3ロール群(16)の間で付与するのが好ましい。仕上げ剤の種類は特に限定されないが、脂肪族エステル、鉱物油、ポリエーテル、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤等を組成成分として、適当な割合で混合した仕上げ剤を用いるのが好ましい。仕上げ剤の付着量は0.01〜1.0wt%である事が好ましい。
本発明の複合モノフィラメントが適用される織編物とは、複合モノフィラメントがその構成糸の少なくとも一部に使用され、かつ織編物が繰り返し伸張や圧縮時に複合モノフィラメントが変形を受けるものであれば特に限定されない。
【0023】
例えば、織物としては複合モノフィラメントが経糸又は緯糸の少なくとも一方に用いられた織物であり、平織、綾織、朱子織といった組織で出来た一重織物や多重織物、三次元織物、三軸織物等が挙げられる。
編物としては天竺、スムース、両面タック編、ゴム編、袋編、ミラノリブといった丸編や横編、さらにはハーフ、バックハーフ、アトラス、クインズコード、シャークスキン、タッサーといったトリコット編、ラッセル編、ダブルラッセル編等の経編が挙げられる。このうち、特にクッション性と編組織の形態安定性を良好にするには、表裏二層の編地と該二層の編地を連結する連結糸とから構成されるダブルラッセル編において連結糸、表裏層編地の構成糸や挿入糸に用いられるのが特に好ましい。
【0024】
以下、本発明を実施例で具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
(1)固有粘度 [η]
オストワルド粘度計を用い、35℃のオルトクロロフェノール溶液中での比粘度ηspとポリマー濃度C(g/100ml)の比ηsp/Cを濃度ゼロに外挿し、以下式により求める。
【0025】
(2)芯部面積比及び鞘部の厚み
繊維長に対し垂直繊維断面を走査型電子顕微鏡(日立(製)S−3500N)で100倍の倍率で観察し、鞘芯部の境界が明確に現れるように写真撮影を行った。その写真を厚みが均一な紙にコピーし、複合モノフィラメントと外界面、その後鞘芯界面で切り取り各重量を測り以下のようにして面積比を求めた。
芯部面積比(%)=芯部の紙重量(g)/芯部と鞘部の複合モノフィラメントの紙重量×100
また、鞘部の厚みは同じ写真を用い、複合モノフィラメントの中心からとった半径方向における厚み10箇所を測定した平均値とした。
【0026】
(3)繊度、繊維長
JIS−L−1015法に準拠し、測定した。
(4)融点
パーキンエルマー社製示差走査型熱量測定装置Pyris1を用いて下記条件で測定を行った。測定試料には、チップ及び糸長方向にカットした複合モノフィラメントの短繊維を用いた。
サンプル質量 :約5mg
測定条件(昇温速度):
(a)チップの場合:溶融・急冷後の再溶融時の融点
(溶融・急冷0℃→(500℃/分)→280℃→(500℃/分))
→−50℃→(20℃/分)→300℃
(b)複合モノフィラメントの場合:
0℃→(20℃/分)→300℃
測定雰囲気は窒素とし、流量=200mL/分で測定した。
得られる吸発熱曲線において、チップの場合、50〜300℃の再溶融時100〜300℃の範囲に観測される吸熱ピークの最大値を示す温度をチップの融点とした。また、複合モノフィラメントの場合、100〜300℃の範囲に観測される2つの吸熱ピークの内、220〜230℃付近の吸熱ピーク(ポリトリメチレンテレフタレートの融解ピーク)以外の低融点側の吸熱ピークの最大値を示す温度を鞘成分の融点とした。
【0027】
(5)密度
JIS−L−1013に基づいて四塩化炭素及びn−ヘプタンにより作成した密度勾配管を用いて密度勾配管法にて測定した。
(6)繊維破断強度、破断伸度
JIS−L−1013法に準拠し、測定した。
【0028】
(7)光照射(カーボンアーク光照射)後の強度低下率
光照射条件:
JIS−L−0842を参考に紫外線フェードメーター(スガ試験機株式会社製FAL−AU−BR型)を用い、ブラックパネル温度63℃、50%RH下で、カーボンアーク光(放射エネルギー500±100W/m2)を200時間照射した。
強度低下率:
照射前後の破断強度をJIS−L−1013法に準拠し測定、以下のようにして強度低下率を求めた。
強度低下率(%)=(1−(照射後破断強度/照射前破断強度))×100
【0029】
【実施例1】
テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールを仕込み、少量の触媒と酸化防止剤と共に、常法に従いエステル交換反応後、引き続き重縮合反応を行い、融点が160℃、密度1.05g/cm3のポリエステルポリエーテル共重合エラストマーを得た。
得られたポリエステル系エラストマーを鞘成分、ポリトリメチレンテレフタレート(極限粘度[η] 0.92、融点227℃、密度1.35g/cm3)を芯成分とし、以下の製造条件で複合モノフィラメントを製造した。
鞘成分ポリマー吐出量 :2.1g/分
鞘成分ポリマー溶融温度 :200℃
芯成分ポリマー吐出量 :5.2g/分
芯成分ポリマー溶融温度 :260℃
紡糸温度 :260℃
冷却浴水温 :40℃
引き取りロール(第1ロール)周速:8.8m/分
延伸浴水温 :55℃
延伸ロール(第2ロール)周速 :44m/分
乾熱ヒーター温度 :140℃
第3ロール周速 :40m/分
巻取速度 :40m/分
【0030】
得られた複合モノフィラメントは繊維断面積に占める芯部の面積比が68%、鞘部の厚みが40ミクロン、繊維繊度が1820dtex、破断強度が2.0cN/dtex、破断伸度が48%であった。また鞘成分の融点は162℃であった。
得られた複合モノフィラメントを緯糸とし、835dtex/240フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維(旭化成株式会社製ポリエチレンテレフタレート繊維167dtex/48フィラメント、5本引き揃え)を経糸とし、それぞれの織密度が20本/2.54cm、28本/2.54cmとした平織り組織の織物を作成した。この織物を180℃×1分の乾熱処理を行った。熱処理後の織物は複合モノフィラメントが織物の経糸と交点部分で接着固化している事を確認した。また、熱処理後のサンプルの着座感は非常に良好で、かつ着座後の目ズレや皺もなく、事務用やリビング用椅子、自動車・電車等への座席用クッション材として好適なものであった。さらに日光が常に照射されるような屋外使用においても強度低下が少なく耐光性に優れるものであった。
【0031】
【実施例2、3】
実施例1で得られたポリエステルポリエーテル共重合エラストマーを鞘成分とし、ポリトリメチレンテレフタレートを芯成分とし、実施例1の製造条件において表1記載のように鞘成分及び芯成分のポリマー吐出量のみを変更し、鞘芯比の異なる各種複合モノフィラメントを得た。
いずれの複合モノフィラメントも実施例1記載の平織り組織の織物へ適用したところ、いずれも繰り返し使用において耐久クッション性があり、目ズレや皺もない良好なものであった。
【0032】
【実施例4】
実施例1で得られたポリエステルポリエーテル共重合エラストマーを鞘成分とし、ポリトリメチレンテレフタレートを芯成分とし、実施例1の製造条件において表1記載のように鞘成分及び芯成分のポリマー吐出量のみを変更し、実施例1と同じ鞘部の厚みで繊維繊度の異なる複合モノフィラメントを得た。得られた複合モノフィラメントは繊維断面積に占める芯部の面積比が43%、鞘部の厚みが40ミクロン、繊維繊度が500dtex、破断強度が2.4cN/dtex、破断伸度が50%であった。また鞘成分の融点は163℃であった。
得られた複合モノフィラメントを以下の方法でラッセル編地に使用した。
【0033】
【実施例5、6】
実施例1において、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールの仕込み量比を変更し、融点140℃、密度1.00g/cm3のポリエステルポリエーテル共重合エラストマーと融点180℃、密度1.12g/cm3のポリエステルポリエーテル共重合エラストマーを得た。得られたポリエステルポリエーテル共重合エラストマーを鞘成分とし、ポリトリメチレンテレフタレートを芯成分とし、実施例1の製造条件において表1記載のように鞘成分及び芯成分のポリマー吐出量のみを変更し、実施例1と同じ鞘部厚み、芯部の面積比となる複合モノフィラメントを得た。いずれの複合モノフィラメントも熱処理温度をそれぞれ160℃、200℃に変更し、実施例1記載の平織り組織の織物へ適用したところ、いずれも繰り返し使用において耐久クッション性があり、目ズレや皺もない良好なものであった。
【0034】
【比較例1】
実施例1の製造条件において表1記載のように鞘成分及び芯成分のポリマー吐出量のみを変更し、鞘部の厚みが40ミクロン、繊維断面積に占める芯部の面積比が16%、繊維繊度が150dtex、鞘成分の融点が162℃の複合モノフィラメントを得た。実施例1記載の平織り組織の織物へ適用したところ、熱接着性は良好であるが破断強力が低いため、繰り返し使用時に破れが発生してしまうものであった。
【0035】
【比較例2】
実施例1の製造条件において表1記載のように鞘成分及び芯成分のポリマー吐出量のみを変更し、鞘部の厚みが5ミクロン、繊維断面積に占める芯部の面積比が95%、繊維繊度が1820dtex、鞘成分の融点が162℃の複合モノフィラメントを得た。実施例1記載の平織り組織の織物へ適用したところ、繰り返し使用において接着部が簡単に剥離し、目ズレや皺の発生する耐久クッション性のないものであった。
【0036】
【比較例3】
実施例1の製造条件において表1記載のように鞘成分及び芯成分のポリマー吐出量のみを変更し、鞘部の厚みが120ミクロン、繊維断面積に占める芯部の面積比が22%、繊維繊度が1820dtex、鞘成分の融点が162℃の複合モノフィラメントを得た。実施例1記載の平織り組織の織物へ適用したところ、接着性は良好であったが、高コストでかつ光照射後の強度低下が大きく耐久性に劣るものであった。
【0037】
【比較例4】
実施例1において、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールの仕込み量比を変更し、融点220℃、密度1.26g/cm3のポリエステルポリエーテル共重合エラストマーを得た。得られたポリエステルポリエーテル共重合エラストマーを芯成分とし、実施例1で得られた融点160℃ポリエステルポリエーテル共重合エラストマーを鞘成分とし、実施例1の製造条件において表1記載のように鞘成分及び芯成分のポリマー吐出量のみを変更し、鞘芯ともポリエステル系エラストマーからなる複合モノフィラメントを得た。
実施例1記載の平織り組織の織物へ適用したところ、接着性および弾性回復性は良好であったが、破断強度が低く、光照射後の強度低下もきわめて大きなものとなった。
【表1】
【表2】
【0038】
【発明の効果】
本発明の熱接着性複合モノフィラメントは、十分な力学強さ、高度の弾性特性、極めて優れた回復特性を付与でき、織編物の構成糸に使用し熱接着した場合、接着部が強固でかつ柔軟性を持つため、繰り返し使用しても目ズレを起こす事が無く長時間使用しても弾力性が損なわれにくく、クッション性の耐久性に優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の複合モノフィラメントを製造するための装置の概略図である。
【符号の説明】
(1)、(4)乾燥機
(2)、(5)押出機
(3)、(6)ベント
(7) スピンヘッド
(8) ギヤポンプ
(9) 複合紡糸口金
(10) フィラメント状糸
(11) 冷水浴
(12) 第1ロール群
(13) 温水浴
(14) 第2ロール群
(15) 乾熱ヒーター
(16) 第3ロール群
(17) 巻取機
Claims (2)
- 鞘芯形状を有し、鞘成分がポリエステル系エラストマー、芯成分がポリトリメチレンテレフタレートであり、鞘部の厚みが10〜80ミクロン、かつ繊維繊度が300〜3000dtexであることを特徴とする熱接着性複合モノフィラメント。
- ポリエステル系エラストマーの融点が130〜200℃である事を特徴とする請求項1記載の熱接着性複合モノフィラメント。
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