JP2004036043A - 立体編物及びクッション材 - Google Patents
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Abstract
【課題】特にホールド感に優れた、車両用シート等に好適な立体編物を提供する。
【解決手段】表裏二層の編地と前記二層の編地を連結する連結糸から構成された立体編物であって、表裏二層の編地の少なくとも一方の編地が、二種以上のポリエステル成分からなり、少なくともその一成分がポリトリメチレンテレフタレートからなる潜在捲縮発現性ポリエステル繊維モノフィラメント糸により構成されていることを特徴とする立体編物及びこの立体編物からなるクッション材。
【選択図】 選択図なし。
【解決手段】表裏二層の編地と前記二層の編地を連結する連結糸から構成された立体編物であって、表裏二層の編地の少なくとも一方の編地が、二種以上のポリエステル成分からなり、少なくともその一成分がポリトリメチレンテレフタレートからなる潜在捲縮発現性ポリエステル繊維モノフィラメント糸により構成されていることを特徴とする立体編物及びこの立体編物からなるクッション材。
【選択図】 選択図なし。
Description
【0001】
【発明の属する分野】
本発明は、表裏二層の編地と前記二層の編地を連結する連結糸から構成された立体編物に関する。詳しくは、クッション材、特に、車両用シートとして好適な立体編物に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用シート等に用いられるクッション材として、例えば、特開2002−155454号公報には、表裏二層の編地と前記二層の編地を連結する連結糸から構成された圧縮回復性等に優れた立体編物が開示されている。しかしながら、この立体編物を、座席シートとして用いた場合、人体を保持し、包み込むホールド感といわれる特性が不十分であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような問題点を解決し、特に、ホールド感に優れた立体編物を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ホールド感と立体編物を構成する各種要件について詳細に検討した結果、特定の繊維を用いることにより本発明の目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、表裏二層の編地と前記二層の編地を連結する連結糸から構成された立体編物であって、表裏二層の編地の少なくとも一方の編地が、二種以上のポリエステル成分からなり、少なくともその一成分がポリトリメチレンテレフタレートからなる潜在捲縮発現性ポリエステル繊維モノフィラメント糸により構成されていることを特徴とする立体編物である。
【0005】
本発明の立体編物を、例えば、クッション材として用いる場合、従来の表皮材やクッション材を用いずに、この立体編物だけでクッション材を構成するのが最適であるが、所望により、公知の表皮材や、その他のクッション材、例えば、ポリウレタンフォーム、金属スプリング等を組み合せてもよい。
本発明は、表裏二層の編地の少なくとも一方の編地が、二種以上のポリエステル成分からなり、少なくともその一成分がポリトリメチレンテレフタレートからなる潜在捲縮発現性ポリエステル繊維モノフィラメント糸により構成されていることを特徴とする。
【0006】
本発明の潜在捲縮発現性ポリエステル繊維は、上記の二種以上のポリエステル成分で構成(具体的には、サイドバイサイド型又は偏芯芯鞘型に接合されたものが多い)されており、熱処理によって捲縮を発現するものである。二種のポリエステル成分で構成されている場合、ポリエステル成分の複合比は、質量%で、好ましくは70/30〜30/70、より好ましくは60/40〜40/60の範囲である。サイドバイサイド型又は偏芯芯鞘型に接合されている場合は、接合面形状(直線又は曲線形状のものがある)は限定されない。
【0007】
本発明の潜在捲縮発現性ポリエステル繊維は、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートからなる点に特徴がある。他の成分としては、第一の成分とは異なるポリエステル、例えば、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0008】
ポリマーの組み合わせとしては、ポリトリメチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、1.3−プロパンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、エチレングリコール、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。又、他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい)とポリトリメチレンテレフタレートとの組み合わせ、ポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。又、他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。)の組み合わせ、ポリトリメチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、1.4−ブタンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、エチレングリコール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。また、他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい)との組み合わせ等が挙げられる。特に、繊維にしたときに、捲縮の内側にポリトリメチレンテレフタレートが配置されように、ポリマーを選択して組み合わせるのが好ましい。
【0009】
これらの中でも、固有粘度差を有するポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせが最適であるが、この他に、ポリトリメチレンテレフタレートと共重合ポリトリメチレンテレフタレートとの組み合わせ、ポリトリメチレンテレフタレート(又は共重合ポリトリメチレンテレフタレート)とポリエチレンテレフタレート(又は共重合ポリエチレンテレフタレート)との組み合わせ、ポリトリメチレンテレフタレート又は共重合ポリトリメチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレート(又は共重合ポリブチレンテレフタレート)との組み合わせが好ましい。
【0010】
固有粘度差を有する2種類のポリトリメチレンテレフタレートで構成する場合、2種類のポリトリメチレンテレフタレートの固有粘度差が0.05〜0.40(dl/g)であることが好ましく、より好ましくは0.10〜0.35(dl/g)、最も好ましくは0.15〜0.35(dl/g)である。例えば、高粘度側の固有粘度を0.70〜1.30(dl/g)から選択した場合には、低粘度側の固有粘度を0.50〜1.10(dl/g)から選択するのが好ましい。低粘度側の固有粘度は0.80(dl/g)以上が好ましく、0.85〜1.00(dl/g)がより好ましく、0.90〜1.00(dl/g)が最も好ましい。固有粘度差が0.05未満では、潜在捲縮が発現し難く、0.40(dl/g)を越えると、溶融紡糸しにくくなる。
複合繊維自体の固有粘度、すなわち、平均固有粘度は0.70〜1.20(dl/g)が好ましく、0.80〜1.20(dl/g)がより好ましく、0.85〜1.15(dl/g)がさらに好ましく、0.90〜1.10(dl/g)が最も好ましい。
【0011】
なお、本発明でいう固有粘度の値は、使用するポリマーではなく、紡糸されている糸の粘度をいう。この理由は、ポリトリメチレンテレフタレート特有の欠点としてポリエチレンテレフタレート等と比較して熱分解が生じ易く、高い固有粘度のポリマーを使用しても熱分解によって固有粘度が著しく低下し、複合マルチフィラメントにおいては両者の固有粘度差を大きく維持することが困難であるためである
【0012】
ポリトリメチレンテレフタレートは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステルであり、トリメチレンテレフタレート単位を90モル%以上含むものをいう。したがって、第三成分として、他の酸成分及び/又はグリコール成分の合計量が10モル%以下の範囲で含有されたポリトリメチレンテレフタレートを包含する。
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸又はその機能的誘導体と、トリメチレングリコール又はその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適当な反応条件下に結合せしめることにより合成される。この合成過程において、適当な一種又は二種以上の第三成分を添加して共重合ポリエステルとしてもよいし、また、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル、ナイロン等と、ポリトリメチレンテレフタレートを別個に合成した後、ブレンドしたりしてもよい。ブレンドする際のポリトリメチレンテレフタレートの含有率は、質量%で、好ましくは50%以上である。
【0013】
添加する第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(P−オキシ安息香酸等)等がある。又、1個又は3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等又はグリセリン等)も重合体が実質的に線状である範囲内で使用できる。
【0014】
さらに、二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等が含有されていてもよい。特に、平均粒子径0.01〜5μm程度の酸化チタンや顔料の粒子を0.01〜5質量%含有させると平滑性が高く、紡糸性に優れたものとなる。
繊維の断面形状は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブ−メラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
【0015】
本発明は、このような潜在捲縮発現性ポリエステル繊維で構成されたモノフィラメント糸を用いるものである。
モノフィラメント糸の繊度は、好ましくは10dtex以上、より好ましくは50dtex以上、最も好ましくは55dtex以上、1670dtex以下である。
モノフィラメント糸の製造方法は、公知の製法を採用すればよく、例えば、公知の複合紡糸口金により紡出した複合繊維モノフィラメント糸を、冷水浴中で冷却しつつ所定の繊度まで細化し、未延伸モノフィラメント糸を製造する。この未延伸糸を所定の温度の温水浴中で第一延伸し、次いで、所定の温度のスチーム浴中で定長又は弛緩熱処理し、巻き取り機で巻き取る。モノフィラメント糸の沸水収縮率を調節するために、更に、所望の弛緩率で連続又は非連続で熱処理してもよい。例えば、弛緩率−10〜+15%程度、100〜180℃程度の温度で、連続又は非連続の熱処理を行う。
【0016】
弛緩率とは、熱処理前のモノフィラメント糸の長さをL0、熱処理中の拘束長さをL1とした時に、次式で計算される。
弛緩率(%)={(L0−L1)/L0}×100
本発明で使用するモノフィラメント糸の物性としては、強度が2.0cN/dtex以上であることが好ましく、2.6cN/dtex以上、5.0cN/dtex以下であることがより好ましい。伸度は35%以上であることが好ましく、35%以上、60%以下であることがより好ましい。
【0017】
本発明は、このようなモノフィラメント糸を用いて、少なくとも一方の編地を構成するものであるが、構成する編み地におけるモノフィラメント糸の含有率、すなわち、立体編物における含有率ではなく、表裏を構成する一方の編地の含有率は、質量%で、下限が、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、最も好ましくは30%以上、含有率の上限は、好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、最も好ましくは70%以下である。挿入糸として用いる場合の含有率の下限は、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、最も好ましくは30%以上、含有率の上限は、好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下である。
【0018】
本発明において、モノフィラメント糸がタテ方向及び/又はヨコ方向に直線上に挿入された編地が、本発明の目的達成上、最適である。その際、挿入する糸条以外の編地自体を構成する繊維糸条としては、本発明のモノフィラメント糸で構成してもよいし、モノフィラメント糸以外の他の繊維糸条で構成されていてもよい。
直線状に挿入されている状態とは、タテ方向の場合は、鎖編やデンビ編等の組織で編まれる地糸のニードルループとシンカーループの間に1コース当り2針振り以下の振り幅で挿入された状態、又は立体編物の長さ方向に連なる地糸のシンカーループの間を上下しながら挿入された状態で、立体編物の全長に渡り挿入糸が直線に近い形態で挿入されていることをいう。ヨコ方向の場合は、鎖編やデンビ編等の組織で編まれる地糸のニードルループとシンカーループの間に、立体編物の全幅にわたるように、挿入糸が直線に近い形態で挿入されていることをいう。
【0019】
例えば、車両用シートとして用いる場合、モノフィラメント糸で構成された編地を、人体に接触する面とは反対面に設けることが好ましく、人体に接触する面の編地は、紡績糸や嵩高加工糸(仮撚糸や流体噴射加工糸等)の糸条形態のものを用いるとバルキー感があり、表面風合いもソフトとなるので好ましい。
表裏二層の編地を構成するモノフィラメント糸以外の他の繊維糸条としては、各種の繊維を用いることができ、例えば、綿、羊毛等の天然繊維や、キュプラレーヨン、ビスコースレーヨン、アセテート繊維、ポリオレフィン繊維、アクリル繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等からなるポリエステル繊維、ナイロン6、ナイロン66等からなるポリアミド繊維のような人造繊維(長繊維、短繊維)が挙げられる。所望により、同種又は異種繊維の組み合わせ、さらには長繊維どうし、短繊維どうし及びこれらを組合せて用いることができる。例えば、混紡(サイロスパンやサイロフィル等)、交絡混繊(高収縮糸との異収縮混繊糸等)、交撚、複合仮撚(伸度差仮撚等)、2フィード空気噴射加工等の手段で組合せて用いることができる。
【0020】
さらに、沸水収縮率が15〜30%程度の高収縮糸、例えば、アクリル繊維からなるハイバルキー糸を、表裏二層の編地を構成する繊維に用いて緻密な立体編物とすることもできる。また、リング紡績糸、オープンエンド紡績糸等の紡績糸や嵩高加工糸(仮撚糸や流体噴射加工糸等)、単糸繊度が0.1〜1.1dtex程度のマルチフィラメント原糸、一成分系のモノフィラメント糸、甘撚糸〜強撚糸、混繊糸を用いることができる。
【0021】
表裏二層の編地を連結する糸条としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等からなるポリエステル繊維、ナイロン6、ナイロン66等からなるポリアミド繊維が挙げられる。繊維の単糸繊度は、通常、20〜1000dtex、好ましくは50〜1000dtex、より好ましくは50〜500dtexのフィラメントである。これらは、モノフィラメントでもマルチフィラメントでもよい。特に、弾性率が低く、伸長時の弾性回復率が高いポリブチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレートからなる繊維が好ましく、ポリトリメチレンテレフタレート繊維がより好ましい。弾性率が低く、伸長時の弾性回復率が高い繊維を用いることにより、ソフトで、人体とのフィット性及び形状追随性に優れたものとなるものとなる。
【0022】
連結糸として用いられるポリトリメチレンテレフタレート繊維の特性として、強度は、好ましくは2〜5cN/dtex、より好ましくは2.5〜4.5cN/dtex、最も好ましくは3〜4.5cN/dtexである。伸度は、好ましくは30〜60%、より好ましくは35〜55%、最も好ましくは40〜55%である。弾性率は、好ましくは30cN/dtex以下、より好ましくは10〜30cN/dtex、さらに好ましくは12〜28cN/dtex、最も好ましくは15〜25cN/dtexである。10%伸長時の弾性回復率は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。
【0023】
ポリトリメチレンテレフタレート繊維としては、前記のように一成分系でも、少なくとも一成分にポリトリメチレンテレフタレートを用いた二成分系の潜在捲縮発現性ポリエステル繊維でもよい。
ポリトリメチレンテレフタレート繊維の製造法は、モノフィラメントの場合、例えば、特願2000−93724号に記載された方法により製造することができる。すなわち、ポリトリメチレンテレフタレートを紡口から吐出し、冷却浴中で急冷した後、第1ロールで巻き取り、次いで、温水中や乾熱雰囲気下で延伸しながら第2ロールで巻き取った後、乾熱雰囲気下においてオーバーフィードでリラックス処理して第3ロールで巻き取る方法等により製造するこができる。マルチフィラメントの場合、例えば、特願2000−522304号等に記載されているように、1500m/分程度の巻取り速度で未延伸糸を紡糸した後、2〜3.5倍程度で延撚する方法、紡糸−延伸工程を直結した紡糸直接延伸法(スピンドロー法)、巻取り速度5000m/分以上の高速紡糸法(スピンテイクアップ法)等、何れを採用してもよい。
【0024】
繊維の形態は、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよく、断面形状は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
【0025】
本発明の立体編物は、2列の針列を有するダブルラッシェル機、ダブル丸編機等を用いて編成することができる。潜在捲縮発現性ポリエステル繊維モノフィラメント糸を表裏の二層の編地の少なくとも一方の編地に挿入する方法としては、ダブルラッシェル機の場合は、例えば、経糸挿入編や緯糸挿入編で挿入することができ、ダブル丸編機の場合はインレイ等で挿入することができる。
表裏編地は、メッシュ編地、マーギゼット編地等、複数の開口部を有する編地にしてさらに通気性、透水性を向上させてもよい。また、表裏編地は同じ編組織であってもよく、異なる組織であってもよい。
【0026】
連結糸の編密度は、6.45平方センチ内の連結糸の本数をN(本/6.45cm2)とし、連結糸のdtexをD(g/10×105cm)、連結糸の比重をρ(g/cm3)とした時、立体編地6.45cm2の中にある連結糸の総断面積(N・D/10×105・ρ)が、好ましくは0.03〜0.5cm2、より好ましくは0.05〜0.3cm2であると、立体編物が適度な弾性回復性、フィット性及び形状追従性を持ち、最適なものとなる。連結糸の総断面積が0.03cm2未満の場合は弾性回復性が、0.5cm2を越えるとフィット性及び形状追従性が低下する傾向がある。
【0027】
連結糸は、表裏編地中にループ状の編み目を形成してもよく、表裏編地にタック組織状に引っかけた構造でもよく、要は、表裏編地を結び付けていればよい。連結糸を傾斜して配置したり、トラス状やX状に交叉して配置し、圧縮による連結糸の横倒れを防止することが好ましい。
本発明の立体編物は、10%伸長下で15分間保持した後の応力保持率が、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、最も好ましくは90%以上99%以下である。応力保持率が80%未満の場合には、座ったことによって伸長を受けた立体編み物の応力緩和による疲労現象が生じやすく、その結果、歪が残り、ホールド感が低下することがある。
【0028】
立体編物の厚さや目付は、所望により、適宜選定することができる。例えば、厚みは2〜20mm、好ましくは3〜15mm、目付は80〜2000g/m2、好ましくは100〜1300g/m2である。立体編地は、必要に応じて所望のサイズに裁断したり、裁断後の編地片を縫製又は熱成形により所望の形状にして用いてもよい。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
本発明における評価は以下の測定法による。
(1)固有粘度
固有粘度[η](dl/g)は、次式の定義に基づいて求められる値である。
定義中のηrは、純度98%以上のo−クロロフェノール溶媒で溶解したポリトリメチレンテレフタレート糸又はポリエチレンテレフタレート糸の稀釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されているものである。Cはg/100mlで表されるポリマー濃度である。
【0030】
なお、固有粘度の異なるポリマーを用いた複合繊維モノフィラメントは、モノフィラメントを構成するそれぞれの固有粘度を測定することは困難であるので、複合モノフィラメントの紡糸条件と同じ条件で2種類のポリマーをそれぞれ単独で紡糸し、得られた糸を用いて測定した固有粘度を、複合繊維モノフィラメントを構成する固有粘度とする。
【0031】
(2)10%伸長時の応力保持率評価
島津製作所(株)製の引張試験機を用いて、つかみ巾2.5cm、つかみ間隔10cm、引張速度10cm/minで、10%まで伸長させ、この状態で15分間放置する。10%伸長時の応力値(A)と、15分後の応力値(B)を読み取る。応力保持率は以下の式によって求める。
応力保持率=[B/A]×100(%)
【0032】
(3)風合い、クッション、ヘタリ、ホールド性の評価
立体編み物を、スチールパイプ枠に張ってサマーベッドを試作する。このベッドに寝た時の風合い、クッション性、ホールド感を官能評価する。20分使用後のヘタリ具合を視覚判定する。
【0033】
【実施例1】
固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレート(酸化チタン含有率0.1質量%)を、質量比率1:1でサイドバイサイド型紡口を用いて溶融押し出し、常法により200dtexの複合繊維モノフィラメント糸を製造した。複合繊維モノフィラメントの固有粘度は、高粘度側が0.90、低粘度側が0.70であり、断面形状は丸型であった。強度は3.0cN/dtex、伸度は49%であった。
【0034】
6枚筬を装備した18ゲージ、釜間5mmのダブルラッシェル機を用い、中間に位置する二枚の筬(L3、L4)から連結糸として200dtexの一成分ポリトリメチレンテレフタレート繊維モノフィラメント糸を、筬L3に1アウト1インの配列で、筬L4に1イン1アウトの配列で供給し、編機前面に位置する二枚の筬(L1、L2)から表編地用糸として、334dtex/96fのポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント仮撚加工糸を筬L1に1イン1アウト、筬L2に1アウト1インの配列で供給した。
【0035】
編機背面に位置する筬(L5)から裏編地用糸として、334dtex/96fのポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント仮撚加工糸をオールインの配列で供給し、さらに筬L6から、上記の複合繊維モノフィラメントを挿入糸としてオールインの配列で供給して、打ち込み20コース/インチで、以下に示す編組織の表裏メッシュの立体編物を得た。立体編物を70℃で精練後、幅出し熱セット(180℃)して、立体編物を得た。
【0036】
(編組織)
L1:2022/2422/2022/2444/4644/4244/4644/4222/
L2:4644/4244/4644/4222/2022/2422/2022/2444/
L3:4620/4620/4620/46810/64810/64810/64810/6420/
L4:64810/64810/64810/6420/4620/4620/4620/46810/
L5:2220/0002/
L6:6666/0000/
得られた立体編物の10%伸長時の応力保持率は95%であり、又、ソフト風合いで、クッション、ヘタリ、ホールド感共に優れたものであった。
【0037】
【比較例1】
実施例1において、複合繊維モノフィラメントに代えて一成分の200dtexポリエチレンテレフタレートモノフィラメント糸を用いた以外は、実施例1同様に立体編物を得た。
得られた立体編物の10%伸長時の応力保持率は55%であり、又、ソフトで風合いであったが、クッション、ヘタリ、ホールド感共に実施例1よりも劣っていた。
【0038】
【実施例2】
実施例1において、高粘度側が0.88、低粘度側が0.70の複合繊維モノフィラメント糸に代えた以外は実施例1同様にして立体編物を得た。
得られた立体編物の10%伸長時の応力保持率は93%であり、又、ソフト風合いで、クッション、ヘタリ、ホールド感共に優れたものであった。
【0039】
【発明の効果】
本発明は、特に車両用シートとして用いた場合のホールド感に優れた立体編物である。
本発明の立体編物は、車両用シート用途以外にも圧縮回復性やクッション性を生かした各種用途にも有用であり、例えば、椅子、ソファー、ベッド、ハンモック等の表皮材や、肩パット、ブラジャーカップ、レガーズのクッション材、サポーターのクッション材、保温衣料等のライニング材、ヘルメットの内張り、人体保護パッド等、人体に接触するクッション材、緩衝材、保型材、保温材等の用途に好適に用いることができる。
【発明の属する分野】
本発明は、表裏二層の編地と前記二層の編地を連結する連結糸から構成された立体編物に関する。詳しくは、クッション材、特に、車両用シートとして好適な立体編物に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用シート等に用いられるクッション材として、例えば、特開2002−155454号公報には、表裏二層の編地と前記二層の編地を連結する連結糸から構成された圧縮回復性等に優れた立体編物が開示されている。しかしながら、この立体編物を、座席シートとして用いた場合、人体を保持し、包み込むホールド感といわれる特性が不十分であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような問題点を解決し、特に、ホールド感に優れた立体編物を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ホールド感と立体編物を構成する各種要件について詳細に検討した結果、特定の繊維を用いることにより本発明の目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、表裏二層の編地と前記二層の編地を連結する連結糸から構成された立体編物であって、表裏二層の編地の少なくとも一方の編地が、二種以上のポリエステル成分からなり、少なくともその一成分がポリトリメチレンテレフタレートからなる潜在捲縮発現性ポリエステル繊維モノフィラメント糸により構成されていることを特徴とする立体編物である。
【0005】
本発明の立体編物を、例えば、クッション材として用いる場合、従来の表皮材やクッション材を用いずに、この立体編物だけでクッション材を構成するのが最適であるが、所望により、公知の表皮材や、その他のクッション材、例えば、ポリウレタンフォーム、金属スプリング等を組み合せてもよい。
本発明は、表裏二層の編地の少なくとも一方の編地が、二種以上のポリエステル成分からなり、少なくともその一成分がポリトリメチレンテレフタレートからなる潜在捲縮発現性ポリエステル繊維モノフィラメント糸により構成されていることを特徴とする。
【0006】
本発明の潜在捲縮発現性ポリエステル繊維は、上記の二種以上のポリエステル成分で構成(具体的には、サイドバイサイド型又は偏芯芯鞘型に接合されたものが多い)されており、熱処理によって捲縮を発現するものである。二種のポリエステル成分で構成されている場合、ポリエステル成分の複合比は、質量%で、好ましくは70/30〜30/70、より好ましくは60/40〜40/60の範囲である。サイドバイサイド型又は偏芯芯鞘型に接合されている場合は、接合面形状(直線又は曲線形状のものがある)は限定されない。
【0007】
本発明の潜在捲縮発現性ポリエステル繊維は、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートからなる点に特徴がある。他の成分としては、第一の成分とは異なるポリエステル、例えば、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0008】
ポリマーの組み合わせとしては、ポリトリメチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、1.3−プロパンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、エチレングリコール、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。又、他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい)とポリトリメチレンテレフタレートとの組み合わせ、ポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。又、他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。)の組み合わせ、ポリトリメチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、1.4−ブタンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、エチレングリコール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。また、他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい)との組み合わせ等が挙げられる。特に、繊維にしたときに、捲縮の内側にポリトリメチレンテレフタレートが配置されように、ポリマーを選択して組み合わせるのが好ましい。
【0009】
これらの中でも、固有粘度差を有するポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせが最適であるが、この他に、ポリトリメチレンテレフタレートと共重合ポリトリメチレンテレフタレートとの組み合わせ、ポリトリメチレンテレフタレート(又は共重合ポリトリメチレンテレフタレート)とポリエチレンテレフタレート(又は共重合ポリエチレンテレフタレート)との組み合わせ、ポリトリメチレンテレフタレート又は共重合ポリトリメチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレート(又は共重合ポリブチレンテレフタレート)との組み合わせが好ましい。
【0010】
固有粘度差を有する2種類のポリトリメチレンテレフタレートで構成する場合、2種類のポリトリメチレンテレフタレートの固有粘度差が0.05〜0.40(dl/g)であることが好ましく、より好ましくは0.10〜0.35(dl/g)、最も好ましくは0.15〜0.35(dl/g)である。例えば、高粘度側の固有粘度を0.70〜1.30(dl/g)から選択した場合には、低粘度側の固有粘度を0.50〜1.10(dl/g)から選択するのが好ましい。低粘度側の固有粘度は0.80(dl/g)以上が好ましく、0.85〜1.00(dl/g)がより好ましく、0.90〜1.00(dl/g)が最も好ましい。固有粘度差が0.05未満では、潜在捲縮が発現し難く、0.40(dl/g)を越えると、溶融紡糸しにくくなる。
複合繊維自体の固有粘度、すなわち、平均固有粘度は0.70〜1.20(dl/g)が好ましく、0.80〜1.20(dl/g)がより好ましく、0.85〜1.15(dl/g)がさらに好ましく、0.90〜1.10(dl/g)が最も好ましい。
【0011】
なお、本発明でいう固有粘度の値は、使用するポリマーではなく、紡糸されている糸の粘度をいう。この理由は、ポリトリメチレンテレフタレート特有の欠点としてポリエチレンテレフタレート等と比較して熱分解が生じ易く、高い固有粘度のポリマーを使用しても熱分解によって固有粘度が著しく低下し、複合マルチフィラメントにおいては両者の固有粘度差を大きく維持することが困難であるためである
【0012】
ポリトリメチレンテレフタレートは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステルであり、トリメチレンテレフタレート単位を90モル%以上含むものをいう。したがって、第三成分として、他の酸成分及び/又はグリコール成分の合計量が10モル%以下の範囲で含有されたポリトリメチレンテレフタレートを包含する。
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸又はその機能的誘導体と、トリメチレングリコール又はその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適当な反応条件下に結合せしめることにより合成される。この合成過程において、適当な一種又は二種以上の第三成分を添加して共重合ポリエステルとしてもよいし、また、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル、ナイロン等と、ポリトリメチレンテレフタレートを別個に合成した後、ブレンドしたりしてもよい。ブレンドする際のポリトリメチレンテレフタレートの含有率は、質量%で、好ましくは50%以上である。
【0013】
添加する第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(P−オキシ安息香酸等)等がある。又、1個又は3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等又はグリセリン等)も重合体が実質的に線状である範囲内で使用できる。
【0014】
さらに、二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等が含有されていてもよい。特に、平均粒子径0.01〜5μm程度の酸化チタンや顔料の粒子を0.01〜5質量%含有させると平滑性が高く、紡糸性に優れたものとなる。
繊維の断面形状は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブ−メラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
【0015】
本発明は、このような潜在捲縮発現性ポリエステル繊維で構成されたモノフィラメント糸を用いるものである。
モノフィラメント糸の繊度は、好ましくは10dtex以上、より好ましくは50dtex以上、最も好ましくは55dtex以上、1670dtex以下である。
モノフィラメント糸の製造方法は、公知の製法を採用すればよく、例えば、公知の複合紡糸口金により紡出した複合繊維モノフィラメント糸を、冷水浴中で冷却しつつ所定の繊度まで細化し、未延伸モノフィラメント糸を製造する。この未延伸糸を所定の温度の温水浴中で第一延伸し、次いで、所定の温度のスチーム浴中で定長又は弛緩熱処理し、巻き取り機で巻き取る。モノフィラメント糸の沸水収縮率を調節するために、更に、所望の弛緩率で連続又は非連続で熱処理してもよい。例えば、弛緩率−10〜+15%程度、100〜180℃程度の温度で、連続又は非連続の熱処理を行う。
【0016】
弛緩率とは、熱処理前のモノフィラメント糸の長さをL0、熱処理中の拘束長さをL1とした時に、次式で計算される。
弛緩率(%)={(L0−L1)/L0}×100
本発明で使用するモノフィラメント糸の物性としては、強度が2.0cN/dtex以上であることが好ましく、2.6cN/dtex以上、5.0cN/dtex以下であることがより好ましい。伸度は35%以上であることが好ましく、35%以上、60%以下であることがより好ましい。
【0017】
本発明は、このようなモノフィラメント糸を用いて、少なくとも一方の編地を構成するものであるが、構成する編み地におけるモノフィラメント糸の含有率、すなわち、立体編物における含有率ではなく、表裏を構成する一方の編地の含有率は、質量%で、下限が、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、最も好ましくは30%以上、含有率の上限は、好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、最も好ましくは70%以下である。挿入糸として用いる場合の含有率の下限は、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、最も好ましくは30%以上、含有率の上限は、好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下である。
【0018】
本発明において、モノフィラメント糸がタテ方向及び/又はヨコ方向に直線上に挿入された編地が、本発明の目的達成上、最適である。その際、挿入する糸条以外の編地自体を構成する繊維糸条としては、本発明のモノフィラメント糸で構成してもよいし、モノフィラメント糸以外の他の繊維糸条で構成されていてもよい。
直線状に挿入されている状態とは、タテ方向の場合は、鎖編やデンビ編等の組織で編まれる地糸のニードルループとシンカーループの間に1コース当り2針振り以下の振り幅で挿入された状態、又は立体編物の長さ方向に連なる地糸のシンカーループの間を上下しながら挿入された状態で、立体編物の全長に渡り挿入糸が直線に近い形態で挿入されていることをいう。ヨコ方向の場合は、鎖編やデンビ編等の組織で編まれる地糸のニードルループとシンカーループの間に、立体編物の全幅にわたるように、挿入糸が直線に近い形態で挿入されていることをいう。
【0019】
例えば、車両用シートとして用いる場合、モノフィラメント糸で構成された編地を、人体に接触する面とは反対面に設けることが好ましく、人体に接触する面の編地は、紡績糸や嵩高加工糸(仮撚糸や流体噴射加工糸等)の糸条形態のものを用いるとバルキー感があり、表面風合いもソフトとなるので好ましい。
表裏二層の編地を構成するモノフィラメント糸以外の他の繊維糸条としては、各種の繊維を用いることができ、例えば、綿、羊毛等の天然繊維や、キュプラレーヨン、ビスコースレーヨン、アセテート繊維、ポリオレフィン繊維、アクリル繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等からなるポリエステル繊維、ナイロン6、ナイロン66等からなるポリアミド繊維のような人造繊維(長繊維、短繊維)が挙げられる。所望により、同種又は異種繊維の組み合わせ、さらには長繊維どうし、短繊維どうし及びこれらを組合せて用いることができる。例えば、混紡(サイロスパンやサイロフィル等)、交絡混繊(高収縮糸との異収縮混繊糸等)、交撚、複合仮撚(伸度差仮撚等)、2フィード空気噴射加工等の手段で組合せて用いることができる。
【0020】
さらに、沸水収縮率が15〜30%程度の高収縮糸、例えば、アクリル繊維からなるハイバルキー糸を、表裏二層の編地を構成する繊維に用いて緻密な立体編物とすることもできる。また、リング紡績糸、オープンエンド紡績糸等の紡績糸や嵩高加工糸(仮撚糸や流体噴射加工糸等)、単糸繊度が0.1〜1.1dtex程度のマルチフィラメント原糸、一成分系のモノフィラメント糸、甘撚糸〜強撚糸、混繊糸を用いることができる。
【0021】
表裏二層の編地を連結する糸条としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等からなるポリエステル繊維、ナイロン6、ナイロン66等からなるポリアミド繊維が挙げられる。繊維の単糸繊度は、通常、20〜1000dtex、好ましくは50〜1000dtex、より好ましくは50〜500dtexのフィラメントである。これらは、モノフィラメントでもマルチフィラメントでもよい。特に、弾性率が低く、伸長時の弾性回復率が高いポリブチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレートからなる繊維が好ましく、ポリトリメチレンテレフタレート繊維がより好ましい。弾性率が低く、伸長時の弾性回復率が高い繊維を用いることにより、ソフトで、人体とのフィット性及び形状追随性に優れたものとなるものとなる。
【0022】
連結糸として用いられるポリトリメチレンテレフタレート繊維の特性として、強度は、好ましくは2〜5cN/dtex、より好ましくは2.5〜4.5cN/dtex、最も好ましくは3〜4.5cN/dtexである。伸度は、好ましくは30〜60%、より好ましくは35〜55%、最も好ましくは40〜55%である。弾性率は、好ましくは30cN/dtex以下、より好ましくは10〜30cN/dtex、さらに好ましくは12〜28cN/dtex、最も好ましくは15〜25cN/dtexである。10%伸長時の弾性回復率は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。
【0023】
ポリトリメチレンテレフタレート繊維としては、前記のように一成分系でも、少なくとも一成分にポリトリメチレンテレフタレートを用いた二成分系の潜在捲縮発現性ポリエステル繊維でもよい。
ポリトリメチレンテレフタレート繊維の製造法は、モノフィラメントの場合、例えば、特願2000−93724号に記載された方法により製造することができる。すなわち、ポリトリメチレンテレフタレートを紡口から吐出し、冷却浴中で急冷した後、第1ロールで巻き取り、次いで、温水中や乾熱雰囲気下で延伸しながら第2ロールで巻き取った後、乾熱雰囲気下においてオーバーフィードでリラックス処理して第3ロールで巻き取る方法等により製造するこができる。マルチフィラメントの場合、例えば、特願2000−522304号等に記載されているように、1500m/分程度の巻取り速度で未延伸糸を紡糸した後、2〜3.5倍程度で延撚する方法、紡糸−延伸工程を直結した紡糸直接延伸法(スピンドロー法)、巻取り速度5000m/分以上の高速紡糸法(スピンテイクアップ法)等、何れを採用してもよい。
【0024】
繊維の形態は、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよく、断面形状は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
【0025】
本発明の立体編物は、2列の針列を有するダブルラッシェル機、ダブル丸編機等を用いて編成することができる。潜在捲縮発現性ポリエステル繊維モノフィラメント糸を表裏の二層の編地の少なくとも一方の編地に挿入する方法としては、ダブルラッシェル機の場合は、例えば、経糸挿入編や緯糸挿入編で挿入することができ、ダブル丸編機の場合はインレイ等で挿入することができる。
表裏編地は、メッシュ編地、マーギゼット編地等、複数の開口部を有する編地にしてさらに通気性、透水性を向上させてもよい。また、表裏編地は同じ編組織であってもよく、異なる組織であってもよい。
【0026】
連結糸の編密度は、6.45平方センチ内の連結糸の本数をN(本/6.45cm2)とし、連結糸のdtexをD(g/10×105cm)、連結糸の比重をρ(g/cm3)とした時、立体編地6.45cm2の中にある連結糸の総断面積(N・D/10×105・ρ)が、好ましくは0.03〜0.5cm2、より好ましくは0.05〜0.3cm2であると、立体編物が適度な弾性回復性、フィット性及び形状追従性を持ち、最適なものとなる。連結糸の総断面積が0.03cm2未満の場合は弾性回復性が、0.5cm2を越えるとフィット性及び形状追従性が低下する傾向がある。
【0027】
連結糸は、表裏編地中にループ状の編み目を形成してもよく、表裏編地にタック組織状に引っかけた構造でもよく、要は、表裏編地を結び付けていればよい。連結糸を傾斜して配置したり、トラス状やX状に交叉して配置し、圧縮による連結糸の横倒れを防止することが好ましい。
本発明の立体編物は、10%伸長下で15分間保持した後の応力保持率が、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、最も好ましくは90%以上99%以下である。応力保持率が80%未満の場合には、座ったことによって伸長を受けた立体編み物の応力緩和による疲労現象が生じやすく、その結果、歪が残り、ホールド感が低下することがある。
【0028】
立体編物の厚さや目付は、所望により、適宜選定することができる。例えば、厚みは2〜20mm、好ましくは3〜15mm、目付は80〜2000g/m2、好ましくは100〜1300g/m2である。立体編地は、必要に応じて所望のサイズに裁断したり、裁断後の編地片を縫製又は熱成形により所望の形状にして用いてもよい。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
本発明における評価は以下の測定法による。
(1)固有粘度
固有粘度[η](dl/g)は、次式の定義に基づいて求められる値である。
定義中のηrは、純度98%以上のo−クロロフェノール溶媒で溶解したポリトリメチレンテレフタレート糸又はポリエチレンテレフタレート糸の稀釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されているものである。Cはg/100mlで表されるポリマー濃度である。
【0030】
なお、固有粘度の異なるポリマーを用いた複合繊維モノフィラメントは、モノフィラメントを構成するそれぞれの固有粘度を測定することは困難であるので、複合モノフィラメントの紡糸条件と同じ条件で2種類のポリマーをそれぞれ単独で紡糸し、得られた糸を用いて測定した固有粘度を、複合繊維モノフィラメントを構成する固有粘度とする。
【0031】
(2)10%伸長時の応力保持率評価
島津製作所(株)製の引張試験機を用いて、つかみ巾2.5cm、つかみ間隔10cm、引張速度10cm/minで、10%まで伸長させ、この状態で15分間放置する。10%伸長時の応力値(A)と、15分後の応力値(B)を読み取る。応力保持率は以下の式によって求める。
応力保持率=[B/A]×100(%)
【0032】
(3)風合い、クッション、ヘタリ、ホールド性の評価
立体編み物を、スチールパイプ枠に張ってサマーベッドを試作する。このベッドに寝た時の風合い、クッション性、ホールド感を官能評価する。20分使用後のヘタリ具合を視覚判定する。
【0033】
【実施例1】
固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレート(酸化チタン含有率0.1質量%)を、質量比率1:1でサイドバイサイド型紡口を用いて溶融押し出し、常法により200dtexの複合繊維モノフィラメント糸を製造した。複合繊維モノフィラメントの固有粘度は、高粘度側が0.90、低粘度側が0.70であり、断面形状は丸型であった。強度は3.0cN/dtex、伸度は49%であった。
【0034】
6枚筬を装備した18ゲージ、釜間5mmのダブルラッシェル機を用い、中間に位置する二枚の筬(L3、L4)から連結糸として200dtexの一成分ポリトリメチレンテレフタレート繊維モノフィラメント糸を、筬L3に1アウト1インの配列で、筬L4に1イン1アウトの配列で供給し、編機前面に位置する二枚の筬(L1、L2)から表編地用糸として、334dtex/96fのポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント仮撚加工糸を筬L1に1イン1アウト、筬L2に1アウト1インの配列で供給した。
【0035】
編機背面に位置する筬(L5)から裏編地用糸として、334dtex/96fのポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント仮撚加工糸をオールインの配列で供給し、さらに筬L6から、上記の複合繊維モノフィラメントを挿入糸としてオールインの配列で供給して、打ち込み20コース/インチで、以下に示す編組織の表裏メッシュの立体編物を得た。立体編物を70℃で精練後、幅出し熱セット(180℃)して、立体編物を得た。
【0036】
(編組織)
L1:2022/2422/2022/2444/4644/4244/4644/4222/
L2:4644/4244/4644/4222/2022/2422/2022/2444/
L3:4620/4620/4620/46810/64810/64810/64810/6420/
L4:64810/64810/64810/6420/4620/4620/4620/46810/
L5:2220/0002/
L6:6666/0000/
得られた立体編物の10%伸長時の応力保持率は95%であり、又、ソフト風合いで、クッション、ヘタリ、ホールド感共に優れたものであった。
【0037】
【比較例1】
実施例1において、複合繊維モノフィラメントに代えて一成分の200dtexポリエチレンテレフタレートモノフィラメント糸を用いた以外は、実施例1同様に立体編物を得た。
得られた立体編物の10%伸長時の応力保持率は55%であり、又、ソフトで風合いであったが、クッション、ヘタリ、ホールド感共に実施例1よりも劣っていた。
【0038】
【実施例2】
実施例1において、高粘度側が0.88、低粘度側が0.70の複合繊維モノフィラメント糸に代えた以外は実施例1同様にして立体編物を得た。
得られた立体編物の10%伸長時の応力保持率は93%であり、又、ソフト風合いで、クッション、ヘタリ、ホールド感共に優れたものであった。
【0039】
【発明の効果】
本発明は、特に車両用シートとして用いた場合のホールド感に優れた立体編物である。
本発明の立体編物は、車両用シート用途以外にも圧縮回復性やクッション性を生かした各種用途にも有用であり、例えば、椅子、ソファー、ベッド、ハンモック等の表皮材や、肩パット、ブラジャーカップ、レガーズのクッション材、サポーターのクッション材、保温衣料等のライニング材、ヘルメットの内張り、人体保護パッド等、人体に接触するクッション材、緩衝材、保型材、保温材等の用途に好適に用いることができる。
Claims (5)
- 表裏二層の編地と前記二層の編地を連結する連結糸から構成された立体編物であって、表裏二層の編地の少なくとも一方の編地が、二種以上のポリエステル成分からなり、少なくともその一成分がポリトリメチレンテレフタレートからなる潜在捲縮発現性ポリエステル繊維モノフィラメント糸により構成されていることを特徴とする立体編物。
- 表裏二層の編地の少なくとも一方の編地は、モノフィラメント糸が挿入された編地であることを特徴とする請求項1記載の立体編物。
- 10%伸長下で15分保持した後の応力保持率が80%以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の立体編物。
- 連結糸がポリトリメチレンテレフタレート繊維であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の立体編物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の立体編物で構成されていることを特徴とするクッション材。
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JP2007538162A (ja) * | 2004-04-22 | 2007-12-27 | ハイランド インダストリーズ,インコーポレーテッド | スペーサ織物 |
-
2002
- 2002-07-03 JP JP2002195106A patent/JP2004036043A/ja active Pending
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