JP4318427B2 - 表皮材用編物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、椅子、ソファー、ベッド、ハンモック等の表皮材に用いられる編物に関する。より詳細には、風合いが柔軟で、優れた伸長回復性と応力保持性を有するために、耐久弾発性があり、弛みがなく、寸法安定性に富み、体の動きにフィットし、追従性に優れるとともに、耐衝撃性及び耐磨耗性にも優れた表皮材用編物に関する。
【0002】
【従来の技術】
椅子、ソファー、ベッド等の表皮材には、ポリアミド繊維やポリエステル繊維の嵩高加工糸を用いた織物や編物が多く使用されている。表皮材は、直接、体に触れる部分となる為、布帛として、風合が柔軟であるとともに、椅子、ソファー、ベッド等に必要なクッション性を阻害しない必要がある。
クッション材の動きに追従するように表皮材にも同様に適度なソフト性を有し、伸び性・戻り性・撓みがなく、寸法保持性に富むことが必要である。その為、表皮材用織編物として、ポリウレタン繊維を、ポリアミド繊維やポリエステル繊維の原糸や嵩高加工糸でカバリングした糸や交撚した糸を用いて、適度な伸びと戻りの良さを付与した織編物が使用されている。
【0003】
しかしながら、椅子等の表皮材は一般衣料とは異なり、使用する糸の総繊度が大きく、目付けも大きくなるため、ポリウレタン繊維を数%、芯糸として構成繊維中に混合しただけでは、織物としての伸びや戻りの良さへの寄与は少ない。その結果、ポリウレタン繊維を併用しても、ソフト性や伸び・回復性が十分ではない。したがって、人体に対して風合いが適度で、ホールド性、すなわち、体にフィットし、体の動きに容易に追従する性能が優れ、またクッション材の動きに追従性よく変形し、繰り返しの使用に対しても撓まず、寸法保持性に富む織編物を得ることは困難である。そのため、これらの性能に優れた表皮材用織編物の開発が強く望まれていた。
【0004】
また、椅子等のように、通常、弾発性の高いウレタンフォーム等をクッション材として用い、その上に織編物等からなる表皮材を張って製品としたものが多い。しかし、近年の地球環境保護の為のリサクルの点から、家庭用、オフィス用、車両用の椅子等に対する脱ウレタン化の要請が高くなってきている。その為、ウレタンフォームのクッション材なしで、弾発性、クッション性が高く、変形させた時の回復性が良好で、たわみ、ヘタリに対する耐久性を兼ね備えた表皮材のみを用いてシートを構成して製品化することが期待されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、表皮材として用いた場合、優れた耐久弾発性があり、寸法安定性が良好で、非常にソフトな風合いを有し、人体に対するホールド性に優れ、ヘタリを発生させることがない表皮材用編物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、少なくとも50質量%がポリトリメチレンテレフタレート繊維で構成された編物であって、編物のコース及びウェル方向における、10%伸長時の応力が5cm幅あたり60N以上187N以下であり、このときの弾性回復率が70%以上であることを特徴とする表皮材用編物である。
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の表皮材用編物とは、従来の、椅子、ソファー、ベッド等、クッション材のついたものの表面を覆おう表皮編物、及びクッション材を用いず、この編物のみを用いてクッション性をかね備えた表皮材用編物をいう。
本発明において、ポリトリメチレンテレフタレート繊維とは、ポリトリメチレンテレフタレートを繊維状としたものの総称である。
【0008】
ポリトリメチレンテレフタレートは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステルであり、トリメチレンテレフタレート単位を50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、最も好ましくは90モル%以上含むものをいう。したがって、第三成分として、他の酸成分及び/又はグリコール成分の合計量が、50モル%以下、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、最も好ましくは10モル%以下の範囲で含有されたポリトリメチレンテレフタレートを包含する。
【0009】
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸又はその機能的誘導体と、トリメチレングリコール又はその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適当な反応条件下に結合せしめることにより合成される。この合成過程において、適当な一種又は二種以上の第三成分を添加して共重合ポリエステルとしてもよいし、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル、ナイロン等と、ポリトリメチレンテレフタレートをそれぞれ別個に合成した後、ブレンドしてもよい。ブレンドする際のポリトリメチレンテレフタレートの含有率は、質量%で50%以上であるのが好ましい。
【0010】
添加する第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(P−オキシ安息香酸等)等がある。又、1個又は3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等又はグリセリン等)も重合体が実質的に線状である範囲内で使用できる。
【0011】
さらに、二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等が含有されていてもよい。
ポリトリメチレンテレフタレート繊維としては、マルチフィラメント糸及びモノフィラメント糸を包含する。ポリトリメチレンテレフタレート繊維は、長繊維、短繊維であってもよく、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよい。繊維の断面形状は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブ−メラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものであってもよい。
【0012】
ポリトリメチレンテレフタレート繊維マルチフィラメント糸(以下、マルチフィラメント糸、という)の製造方法については、1500m/分程度の巻取り速度で未延伸糸を得た後、2〜3.5倍程度で延撚する方法、3000m/分以上の紡糸速度で捲取、前配向未延伸糸を得たのち、延伸する方法、紡糸−延伸工程を直結したスピンドロー法、巻取り速度5000m/分以上の高速紡糸法(スピンテイクアップ法)、紡糸後、一度水浴で冷却してから延伸する水冷方法等の何れの方法を採用してもよい。
【0013】
ポリトリメチレンテレフタレート繊維モノフィラメント糸(以下、モノフィラメント糸、という)の製造方法については、公知の製法を採用すればよく、例えば、以下の方法を採用することができる。乾燥させたポリトリメチレンテレフタレートペレットを押出機に供給し、溶融体とした後、スピンヘッドに送り、紡糸口金より紡出してフィラメント状とする。これを冷水水浴中で冷却しながら、所定の繊度まで細化して未延伸モノフィラメントとする。次いで、所定の温度の温水浴中で第一延伸し、所定温度のスチーム浴中で定長又は弛緩熱処理し、巻取機で巻き取る。
【0014】
この工程において、モノフィラメント糸の沸水収縮率を調節するために、更に所望の弛緩率で連続又は非連続で熱処理してもよい。例えば、弛緩率−10〜+15%で100〜180℃程度の温度で、連続又は非連続で熱処理してもよい。
弛緩率とは、熱処理前のモノフィラメント糸の長さL0、熱処理中の拘束長さL1とした時に次式で計算される。
弛緩率=[(L0−L1)/L0]×100
ポリトリメチレンテレフタレート繊維の固有粘度は0.8〜1.3dl/gが好ましく、より好ましくは0.8〜1.1dl/gである。固有粘度が0.8dl/g未満では、ポリトリメチレンテレフタレート繊維のタフネスが小さく、編物に使用した時に適度な弾発性が発揮されにくくなる。また、ヘタリが発生する場合がある。固有粘度が1.3dl/gを越える場合は、ポリトリメチレンテレフタレート繊維の製造が困難となる場合がある他、モノフィラメント糸のそりが大きくなり、編物の加工が難しくなることがある。
【0015】
本発明で使用するポリトリメチレンテレフタレート繊維の物性としては、表皮材として用いる場合の裂断事故を防止する上から、強度が2.0cN/dtex以上であることが好ましく、特に、マルチフィラメント糸の場合には、2.6cN/dtex以上であることがより好ましく、2.6〜5.0cN/dtexの範囲であることが最も好ましい。
ポリトリメチレンテレフタレート繊維の引張伸度は35%以上であることが好ましく、35〜60%の範囲であることがより好ましい。引張伸度が35%未満の場合には、仮撚時又は流体噴射加工時の糸切れ頻度が多くなる場合がある。
【0016】
ポリトリメチレンテレフタレート繊維の初期引張抵抗度は26.5cN/dtex未満であることが好ましく、17.6〜26.5cN/dtexであることがより好ましい。初期引張抵抗度が26.5cN/dtexを越えると、表皮用編物とした場合、ソフト性が低下する傾向があり、本発明の目的であるソフトな表皮材用編物が得られにくくなる。
本発明に用いるポリトリメチレンテレフタレート繊維は、10%伸長時の伸長回復率が、好ましくは70%以上、より好ましくは80〜100%である。伸長回復率が70%未満の場合には、表皮材に使用した時の荷重伸びに対する回復率が低下する傾向があり、編物としての弛み、ヘタリが生じ、寸法安定性が十分に発揮されにくくなる。
【0017】
本発明において使用するポリトリメチレンテレフタレート繊維のうち、マルチフィラメント糸の場合の単糸繊度は0.1〜20dtexが好ましい。単糸繊度が0.1dtex未満の場合には、編物としての耐磨耗性が低下しやすくなり、20dtexを越えると、風合いが硬くなる傾向がある。
本発明で使用するポリトリメチレンテレフタレート繊維の糸条総繊度は(マルチフィラメント糸、モノフィラメント糸共に)、編物の設計強度や厚さを任意に設定する点から56〜1670dtexとするのが好ましい。モノフィラメント糸の場合の単糸繊度は56〜1670dtexが編物としての特性上、好ましい。
【0018】
糸条の形態は限定されず、リング紡績糸、オープンエンド紡績糸等の紡績糸、マルチフィラメント原糸(極細糸を含む)、甘撚糸〜強撚糸、仮撚加工糸(POYの延伸仮撚糸を含む)、流体(空気)噴射加工糸、押し込み加工糸、ニットデニット加工糸、モール糸等がある。モール糸の場合、芯、鞘ともにポリトリメチレンテレフタレート繊維を用いてもよく、鞘には別の繊維を用いてもよい。
より平滑で、美しい表面性を発現できるという点では、表面層部に形成されたループ毛羽のうち、毛羽長が0.6mm以上の個数が30〜100コ/mであるポリトリメチレンテレフタレートマルチフィラメントで構成された流体噴射加工糸を用いることが好ましい。このような流体噴射加工糸を製造する方法として、1フィードと2フィードがある。2フィードの場合は、例えば、フィード差をつけることにより、鞘糸と芯糸からなる鞘芯構造の流体噴射加工糸となるが、いずれの方法による流体噴射加工糸であってもよい。
【0019】
流体噴射加工時の加工速度及び流体噴射圧力は任意に設定することができる。加工速度は、通常、50〜500m/分、好ましくは100〜300m/分の範囲であり、流体噴射圧力は、通常、294.0〜980.0kg/cm2の範囲である。流体噴射圧力が294.0kg/cm2未満になると、フィラメント間の絡みが弱くなりやすく、980.0kg/cm2を越えると、毛羽立ちや糸切れ等が起こりやすくなる。
【0020】
この流体噴射加工時に適量の水を供給糸に付与することにより、マルチフィラメント間の絡みを均一、かつ、強固にすることができ、更に均一な交絡糸を得ることができる。流体噴射加工時の糸条のフィード量は、任意に設定すればよいが、同時フィードの場合は+5%〜+30%、フィード差を付ける場合はオーバーフィード率として、芯糸を+5〜+20%、鞘糸を+10〜+40%、フィード差として+5〜+30%とすることにより本発明に最適の流体噴射加工糸を得ることができる。
【0021】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート繊維のうち、編物を形成した場合に、伸長回復特性及び応力保持性の面から好ましいのは、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル繊維である。
潜在捲縮発現性ポリエステル繊維とは、少なくとも二種のポリエステル成分で構成(具体的には、サイドバイサイド型又は偏芯鞘芯型に接合されたもの)されているものであり、熱処理によって捲縮を発現するものである。二種のポリエステル成分で構成されている場合、二種のポリエステル成分の複合比(一般的に、質量比で70/30〜30/70の範囲内のものが多い)、及び接合面形状(直線又は曲線形状のものがある)は限定されない。全繊度は20〜300dtex、単糸繊度は0.5〜20dtexが好ましく用いられるがこれに限定されるものではない。
【0022】
二種のポリエステル成分で構成された潜在捲縮発現性ポリエステル繊維は、二種のポリエステルをサイドバイサイド型又は偏心鞘芯型に接合された複合繊維である。サイドバイサイド型の場合、二種のポリエステルポリマーの溶融粘度比は1.00〜2.00が好ましく、偏心芯鞘型の場合は、鞘ポリマーと芯ポリマーのアルカリ減量速度比は、3倍以上鞘ポリマーが速いことが好ましい。
具体的なポリマーの組み合わせとしては、ポリトリメチレンテレフタレートとそれとは異なるポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせ、ポリトリメチレンテレフタレートと他のポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート又はその共重合体との組み合わせであってもよい。前述した艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤が含有されていてもよい。
【0023】
これらの中で、潜在捲縮発現性ポリエステル繊維としては、繊維を構成するポリエステル成分の少なくとも一方がポリトリメチレンテレフタレートであるものが好ましく、ポリトリメチレンテレフタレートと共重合ポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせや、極限粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせがより好ましい。潜在捲縮発現性ポリエステル繊維中のポリトリメチレンテレフタレートの割合は30%以上が好ましい。
【0024】
上記の複合繊維において、発現する捲縮の内側にポリトリメチレンテレフタレート成分が配置されているものが好ましい。
本発明の潜在捲縮発現性ポリエステル繊維において、初期引張抵抗度が10〜30cN/dtexであることが好ましく、20〜27cN/dtexがより好ましい。顕在捲縮の伸縮伸長率は10〜100%であることが好ましく、より好ましくは10〜60%である。顕在捲縮の伸縮弾性率は80〜100%であることが好ましく、85〜100%がより好ましく、85〜97%が最も好ましい。これらの条件を満たすことによって、表皮材として、風合の柔軟性、伸長回復特性、応力保持性が一層優れたものが得られる。
【0025】
本発明で用いられるポリトリメチレンテレフタレート繊維の100℃における熱収縮応力は、好ましくは0.1〜0.5cN/dtex、より好ましくは0.1〜0.4cN/dtex、最も好ましくは0.1〜0.3cN/dtexである。100℃における熱収縮応力は、編物の精練、染色工程において良好な捲縮を発現させるための重要な要件である。すなわち、編物の拘束力に打ち勝って捲縮が発現するためには、100℃における熱収縮応力が0.1cN/dtex以上であることが好ましい。
【0026】
熱水処理後の伸縮伸長率は100〜250%であることが好ましく、より好ましくは150〜250%、最も好ましくは180〜250%である。熱水処理後の伸縮弾性率は90〜100%であることが好ましく、より好ましくは95〜100%である。
このような特性を有する潜在捲縮発現性ポリエステル繊維としては、例えば、固有粘度の異なる2種類のポリトリメチレンテレフタレートが互いにサイドバイサイド型に複合された複合繊維があげられる。2種類のポリトリメチレンテレフタレートの固有粘度差は0.05〜0.4(dl/g)であることが好ましく、この複合繊維の平均固有粘度は、0.7〜1.2(dl/g)が好ましい。
【0027】
なお、本発明でいう固有粘度の値は、使用するポリマーではなく、紡糸されている糸の粘度を指す。この理由は、ポリトリメチレンテレフタレート特有の欠点としてポリエチレンテレフタレート等と比較して熱分解が生じ易い傾向にあり、固有粘度の大きなポリマーを使用しても熱分解によって固有粘度が著しく低下し、複合マルチフィラメントにおいては両者の固有粘度差を大きく維持することが困難であるためである
本発明に用いられる潜在捲縮発現性ポリエステル繊維の製造方法は、前述のマルチフィラメント糸及びマルチフィラメント糸の製造方法を用いることができる。
【0028】
本発明の編物が上記の作用効果をするために、編物は、少なくとも50質量%がポリトリメチレンテレフタレート繊維で構成されていることが必要である。
したがって、50質量%未満の範囲内で、天然繊維、合成繊維等他の繊維、例えば、綿、羊毛、麻、絹等の天然繊維、キュプラレーヨン、ビスコースレーヨン、ポリノジックレーヨン、精製セルロース繊維、アセテート繊維、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維等の各種人造繊維、さらにはこれらの共重合タイプや、同種又は異種ポリマー使いの複合繊維(サイドバイサイド型、偏芯鞘芯型等)を混紡(コアヤーン、サイロスパンやサイロフィル、ホロースピンドル等)、カバリング(シングル、ダブル)、例えば、沸水収縮率3〜10%程度の低収縮糸又は、例えば沸水収縮率15〜30%程度高収縮糸との混繊や交撚、仮撚(伸度差仮撚、POYの延伸仮撚における複合等)、2フィード空気噴射加工等の手段で混用してもよい。
【0029】
本発明の編物の特徴は、編物のコース方向及びウェル方向の10%伸長時の応力が5cm幅当り60N以上、好ましくは100N以上であり、この時の弾性回復率が70%以上、好ましくは80N以上であることである。
かなりの高負荷加重のかかる表皮材にあっては、低応力において伸びが大きい場合、すなわち、10%伸長時の応力が60N未満の場合、加重時に過剰な生地変形をまねき、体の沈み込み量が多くなるために、かえって使用快適性が低下する。また、過剰な変形を長時間受けると回復性の低下を招く。
【0030】
更に、長時間にわたって、連続的な負荷荷重を受け、伸長させられる表皮材にあっては、編物のコース方向及びウェル方向の10%伸長時の弾性回復率が70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上であることが必要である。弾性回復率が70%未満の場合には、伸長を解いた後の戻りが悪いために、弾発感が消失し、編物がたわみ、歪が残ったままとなる。さらに、弾性回復率が70%未満の場合には、人体や人体の動きに対するホールド性(フィット性や追従性)が劣り、座り心地、寝心地の悪いものとなる。ホールド性が低下すると体への負荷が大きくなり、長時間の使用ができなくなる。さらに良好な回復性を得る為には、10%伸長下で15分間保持した後の応力保持率が70%以上が好ましく、より好ましくは80%以上である。応力保持率が70%未満の場合には、座ることによって伸長を受けた編物が、応力緩和による疲労現象を生じやすくなり、その結果、歪が残りやすくなる傾向がある。また、人体へのホールド性も低下する傾向がある。
【0031】
本発明の編物には、少なくとも人の体重相当以上の力がかかる。したがって、ある程度、編物としての引張強さを有することが好ましい。クッション材上に展張して使用する場合や、クッション材を用いずにそのまま一枚で使用する場合、使用部位によっても変わるが、引張強さはコース方向及びウェル方向とも、少なくとも98N/2.5cm幅以上が好ましく、より好ましくは196〜1960N/2.5cm幅である。98N/2.5cm幅未満の場合には、表皮材として用いた場合に裂断事故を起こすおそれがある。
【0032】
引張破断伸度は、引張強さと同様に使用状態によっても変化するが、コース方向及びウェル方向とも、少なくとも10%以上が好ましく、より好ましくは30〜100%である。引張破断伸度が10%未満の場合には、人が使用した場合に人体や人体の動きに対する応力により裂断事故につながるおそれがある。引張破断伸度が120%を越えると表皮材が伸びてホールド性(フィット性や追従性)が低下する場合があり、長時間の快適な使用に適さない場合がある。
【0033】
更に、本発明の編物を用いた椅子やベッド等にもたれて力を加えたような時に、生地の経方向及び緯方向が無理なく体にフィットしながら変形できるように、編物の一定加重時の伸度は近似していることが好ましい。98N応力(5cm巾あたり)時のコース方向に対するウェル方向の伸度比が0.5〜1.5であれば、コースとウェル方向の伸度はほぼ近似しているために、編物は無理なく伸長し、歪等が残り難くなる。この範囲を越える場合は、特に長時間使用すると、撓みやヘタリ、歪が残ったりすることが多くなる。
【0034】
編地の組織は限定されない。編機として、経編のトリコット編機、ラッセル編機、緯編みの横編機、丸編機等を使用して構成させることができる。編機として、シングル及びダブルを使用することができる。
用途、例えば、背張り限定用途、座位部にも使用するもの等、意匠性、例えば、メッシュ調表面のものか、凹凸感表面を有するもの等、目的とする用途、意匠性や、使用する糸のデシテックスに応じて、適宜、編機種及びゲージを選択すればよい。
【0035】
編み組織としては、トリコット編機の場合は、例えば、ハーフ組織、サテン組織、クインズコート組織、ダブルトリコット組織やこれらを組み合わせた変化組織、ラッセル編機の場合は、パワーネット組織、サテンネット組織等、また丸編機の場合は、ダブルのインターロック組織等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメントを用いた編地は、90%以上の弾性回復率と80%以上の応力保持率が得られるので好ましく、更に、ポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメントを挿入したラッセル編地(シングル、ダブル)は、意匠性に加えて、高い弾性回復性と応力保持性を有する為、最適な表皮材となる。
【0036】
編物の密度については、椅子、ベッド、ソファー等の表皮材(クッション材を兼ねても可)の規格(巾、厚さ、設計強力等のスペック)を満たすように、使用するポリトリメチレンテレフタレート繊維の強度や繊度、更には、編組織も考慮しつつ最適な設計を行う。
本発明における表皮用編物の染色仕上げ工程は、従来の表皮材と同様の工程を用いることができる。パッケージ染色機等で染色したチーズ染色糸等の先染め糸を用いて編物としてもよく、後染めで編物としてもよい。本発明の特徴である優れた伸長回復性や弛みやヘタリが生じない限り、染色加工方法は限定されることはない。使用するポリトリメチレンテレフタレート繊維糸条形態や編物形態によっては、後染め加工法の場合において、生機セットを付与する工程を採用することもできる。
【0037】
編物の耐摩耗性を更に向上させるために、仕上げ剤として耐摩耗性に優れ、かつ、樹脂皮膜の柔軟な水溶性ポリウレタン樹脂や硬仕上げ剤としてアクリル系樹脂を含浸させてもよい。さらに編物の表面平滑性及び繊同士の滑り性を向上させて応力分散性、弾性回復性や耐久性を向上させるために、前記の樹脂液の中にシリコーン系平滑剤をブレンドしてもよい。
また、起毛加工を実施して編物表面の表情や触感を変えることも可能である。起毛加工方法は通常行われている方法でよく、先起毛又は後起毛を行うことができる。
【0038】
本発明の表皮材の使用形態としては、椅子、ベッド、ソファー等のクッション材の表皮材として用いることができる。優れた弾性回復性を活かし、ウレタンフォーム等のクッション材を用いずにクッション性を兼ね備えた表皮材として用いてもよい。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
本発明に用いられる評価法は以下のとおりである。
(1)固有粘度
固有粘度[η](dl/g)は、次式の定義に基づいて求められる値である。
式中のηrは、純度98%以上のo−クロロフェノール溶媒で溶解したポリトリメチレンテレフタレート糸又はポリエチレンテレフタレート糸の稀釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されているものである。Cは、g/100mlで表されるポリマー濃度である。
なお、固有粘度の異なるポリマーを用いた複合マルチフィラメントでは、マルチフィラメントを構成するそれぞれの固有粘度を測定することは困難であるので、複合マルチフィラメントの紡糸条件と同じ条件で2種類のポリマーをそれぞれ単独で紡糸し、得られた糸を用いて測定した固有粘度を、複合マルチフィラメントを構成する固有粘度とする。
【0040】
(2)初期引張抵抗度
JIS L 1013 化学繊維フィラメント糸試験方法の初期引張抵抗度の試験方法に準じ、試料の単位繊度当たり0.882mN/dtexの初荷重を掛けて引張試験を行い、得られた荷重−伸長曲線から初期引張抵抗度(cN/dtex)を算出する。試料10点を測定してその平均値を求める。
【0041】
(3)伸縮伸長率及び伸縮弾性率
JIS L 1090 合成繊維フィラメントかさ高加工糸試験方法の伸縮性試験方法A法に準じて測定を行い、伸縮伸長率(%)及び伸縮弾性率(%)を算出する。試料10点を測定してその平均値を求める。
顕在捲縮の伸縮伸長率及び伸縮弾性率は、巻き取りパッケージから解舒した試料を、温度20±2℃、湿度65±2%の環境下で24時間放置後に測定を行う。
熱水処理後の伸縮伸長率及び伸縮弾性率は、無荷重で98℃の熱水中に30分間浸漬した後、無荷重で24時間自然乾燥乾燥した試料を用いる。
【0042】
(4)熱収縮応力
熱応力測定装置(カネボウエンジニアリング社製、商品名KE−2)を用い、試料を20cmの長さに切り取り、両端を結んで輪を作り、これを測定装置に装填し、初荷重0.044cN/dtex、昇温速度100℃/分の条件で収縮応力を測定する。得られた温度に対する熱収縮応力の変化曲線から100℃における熱収縮応力を読み取る
【0043】
(5)編物の10%伸長時の応力及び弾性回復率
(株)島津製作所製の引張試験機を用いて、つかみ巾5cm、つかみ間隔10cm、引張速度10cm/minで、伸長率10%まで伸長した後、同じ速度で収縮させ、応力−歪曲線を描く。この曲線から10%伸長時の応力を求める。
更に、収縮中、応力が0になった時の伸度を残留伸度Aとする。弾性回復率は以下の式にしたがって求める。
10%伸長時の弾性回復率=[(10−A)/10]×100%
【0044】
(6)10%伸長時の応力保持率評価
(株)島津製作所製の引張試験機を用いて、つかみ巾5cm、つかみ間隔10cm、引張速度10cm/minで、10%まで伸長させ、この状態で15分間放置する。10%伸長時の応力値(A)と、15分後の応力値(B)を読み取る。応力保持率は以下の式によって求める。
応力保持率=[B/A]×100(%)
【0045】
(7)風合い・弾発性・ヘタリ・ホールド性評価
試料編物をスチールパイプ枠に張ってサマーベッドを試作する。このベッドに寝た時の風合い、クッション性及びホールド性を、10人の被験者により官能評価を行う。
20分使用後の編物のヘタリ具合を視覚判定する。
【0046】
(8)繰り返し加重時のヘタリ性評価
試料編物を30cm×30cmの枠に張り、生地ずれが起こらないように4軸をしっかり固定し、(株)島津製作所製のサーボパルサーEHF−UG50KN−40を用いて、固定された編地に100mmφの押し型で繰り返し0.2kNの加重を最大5万回までかける。加重が安定する500回目の0.2kNかかった時の沈み込み深さをAmm、2万回、及び5万回目の沈み込み深さを、それぞれBmm及びCmmとする。
5万回加重終了後、除重した直後の生地のヘタリ深さを読み取る。繰り返し一定加重時のヘタリ率を以下の式により求める。
2万回後のヘタリ率(%)= (B−A)/A×100
5万回後のヘタリ率(%)= (C−A)/A×100
【0047】
(9)2軸引張試験機評価
(株)島津製作所製の2軸引張試験機(大阪産技総研所有)を用いて、タテ、ヨコ同時に10%伸長させて、戻すという操作を10回繰り返す。この時得たタテ、ヨコそれぞれのヒステリシスロス曲線(Y軸:応力、X軸:伸度)から、1回目及び経時的な回復率を求める。試験条件及び回復率式は以下である。
【0048】
試料形状:28×28cm2 つかみ面積 20×20cm2
引張り速度:100mm/min
回復率=(10−X1)/10×100%
X1:10%伸長から戻す際に応力が0になったところの伸度%とする。
【0049】
【実施例1】
固有粘度が0.92dl/gのポリトリメチレンテレフタレートを、紡糸温度265℃、紡糸速度1200m/分で紡糸して未延伸糸を得た。次いで、ホットロール温度60℃、ホットプレート温度140℃、延伸倍率3倍、延伸速度800m/分の条件で延撚して、167dtex/48fの延伸糸を得た。延伸糸の強伸度、弾性率及び10%伸長時の弾性回復率は、各々、4.0cN/dtex、46%、26.5cN/dtex及び98%であった。
【0050】
上記の方法で得られた167dtex/48fのポリトリメチレンテレフタレート繊維糸条1本に対し、ピンタイプ仮撚機を用いて仮撚数2400T/mで仮撚加工糸を製造した。この仮撚加工糸2本を引き揃えて、村田機械(株)製のダブルツイスターDT−308を用いて130T/mの撚をかけ、70℃で40分のスチームセットを行い、追撚糸を得た。
この糸をフロント、ミドル、バック、挿入1,2糸全てに用い、メッシュ調のラッセル編地を作成した。このラッセル生機を170℃でセットし、次いで、液流染色機中で精練後、分散染料を用いて110℃で染色し、170℃でセットしてラッセル編地を得た。
【0051】
得られた編地の破断強伸度は、5cm幅あたり、経1568N、緯686N、破断伸度は、それぞれ110%及び72%であった。
得られた編物は、表1及び表2に示すように、優れた弾性回復率と応力保持率を有するとともに、ソフトな風合いでクッション性、ホールド性に優れたものであり、また繰り返し一定加重後や使用後にヘタリやたわみがなく、歪の残らないものであった。
【0052】
【比較例1】
実施例1において、使用する糸を167dtex/48fのポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸の2本合撚糸として、染色温度を130℃とする以外は全て同じにして、加工時の巾出し率を変えて、10%伸長時の応力が異なる2種類のポリエチレンテレフタレート仮撚り糸使いのラッセル編地(a)及び(b)を得た。
【0053】
得られた編地の破断強伸度は、5cm幅あたり、(a)が経1860N、緯1035N、破断伸度は、経及び緯が、それぞれ96%及び134%、(b)が経1865N、緯1030N、破断伸度は、経及び緯が、それぞれ90%及び61%であった。
得られた編物は表1及び表2に示すように、弾性回復性、応力保持性が低く、風合いが非常に硬く、クッション性、ホールド性が不良で、また使用後にヘタリやたわみが発生し易く、歪が残ったままのものであった。
【0054】
【実施例2】
実施例1で得られた167dtex/48fのポリトリメチレンテレフタレート繊維糸条1本を芯糸として、フィード率10%で、同じく167dtex/48fポリエチレンテレフタレート繊維糸条3本を鞘糸としてフィード率15%で加工し流体噴射加工糸を得た。
【0055】
実施例1と同じ編組織で、以下の糸使いでメッシュ調ラッセル編地の生機を得た。
フロント:実施例1で使用した167dtex/48f×双糸のポリトリメチレンテレフタレート仮撚加工糸
ミドル :167dtex/48fポリトリメチレンテレフタレート原糸
バック :上記記載の167dtex/48f×4本の流体噴射加工糸
挿入1 :同上
挿入2 :同上
この生機を約170℃でセットし、次いで、液流染色機中で精練し、分散染料にて120℃染色し、170℃でセットし、ラッセル編地を得た。得られた編地の破断強伸度は、5cm幅あたり、経1860N、緯885N、破断伸度は、経及び緯が、それぞれ60%及び52%であった。
【0056】
得られた編物は、表1及び表2に示すように、優れた弾性回復率と応力保持率を有するとともに、ソフトな風合いでクッション性、ホールド性に優れたものであり、繰り返し一定加重後や使用後にヘタリやたわみがなく、歪の残らないものであった。
【0057】
【比較例2】
鞘糸及び芯糸として167dtex/48fのポリエチレンテレフタレート繊維糸条を用いた以外は、実施例2と同様にしてポリエチレンテレフタレートの流体噴射加工糸を得た。
比較例1と同じ編組織で、使用する糸を以下とした以外は全く同じとしてポリエチレンテレフタレート糸使いのラッセル編地を得た。
フロント:比較例1で使用した167dtex/48f×双糸のポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸
ミドル :167dtex/48fポリエチレンテレフタレート原糸
バック :上記記載の167dtex/48f×4本の流体噴射加工糸
挿入1 :同上
挿入2 :同上
この編地の破断強伸度は、5cm幅あたり、経1920N、緯920N、破断伸度は、経及び緯が、それぞれ46%及び49%であった。
【0058】
得られた編物は表1及び表2に示すように、弾性回復性、応力保持性が低く、風合いが非常に硬く、クッション性、ホールド性が不良で、使用後にヘタリやたわみが発生し易く、歪が残ったままのものであった。
【0059】
【実施例3】
固有粘度が0.92dl/g、酸化チタン含有率が0.1質量%のポリトリメチレンテレフタレートを用いて、以下の製造条件で390dtexのモノフィラメント糸を製造した。
ポリマー吐出量 2.62g/分
紡糸温度 265℃
冷却浴水温 40℃
引き取りロール(第一ロール)周速 16.5m/分
延伸浴水温 55℃
延伸ロール(第2ロール)周速 82.5m/分
熱処理浴スチーム温度 120℃
第3ロール周速 75m/分
巻き取り速度 75m/分
【0060】
実施例1と同じ編組織で、以下の糸使いでメッシュ調ラッセル編地の生機を得た。
フロント:実施例1で使用した167dtex/48f×双糸のポリトリメチレンテレフタレート仮撚加工糸
ミドル :167dtex/48fポリトリメチレンテレフタレート原糸
バック :167dtex/48f双糸のポリトリメチレンテレフタレート原糸
挿入1 :上記記載の390dtexポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメント糸
挿入2 :同上
この生機を約170℃でセットし、次いで液流染色機中で精練、分散染料にて130℃染色後、170℃でセットし、ラッセル編地を得た。得られた編地の破断強伸度は、5cm幅あたり、経1690N、緯833N、破断伸度は、経及び緯が、それぞれ60%及び56%であった。
【0061】
得られた編物は、表1及び表2に示すように、優れた弾性回復率と応力保持率を有するとともに、ソフトな風合いでクッション性、ホールド性に優れたものであり、繰り返し一定加重後や使用後にヘタリやたわみがなく、歪の残らないものであった。
【0062】
【実施例4】
固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを質量比率1:1でサイドバイサイド型紡口を用いて溶融押し出し、常法により390dtexの複合モノフィラメント糸を製造した。複合モノフィラメント糸の固有粘度は、高粘度側が1.3、低粘度側が0.9であり、断面形状は丸型であった。また強度は3.0cN/dtex、伸度は49%であった。
【0063】
実施例1と同じ編組織で、以下の糸使いでメッシュ調ラッセル編地の生機を得た。
フロント:実施例1で使用した167dtex/48f×双糸のポリトリメチレンテレフタレート仮撚加工糸
ミドル :167dtex/48fポリトリメチレンテレフタレート原糸
バック :167dtex/48f双糸のポリトリメチレンテレフタレート原糸
挿入1 :上記記載の390dtexの複合モノフィラメント糸
挿入2 :同上
この生機を約170℃でセットし、次いで液流染色機中で精練、分散染料にて130℃染色後、170℃でセットし、ラッセル編地を得た。得られた編地の破断強伸度は、5cm幅あたり、経1650N、緯800N、破断伸度は、経及び緯が、それぞれ65%及び59%であった。
【0064】
得られた編物は、表1及び表2に示すように、優れた弾性回復率と応力保持率を有するとともに、ソフトな風合いでクッション性、ホールド性に優れたものであり、繰り返し一定加重後や使用後にヘタリやたわみがなく、歪の残らないものであった。
【0065】
【実施例5】
固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを、質量比率1:1でサイドバイサイド型紡口を用いて紡糸速度1500m/分で紡糸して未延伸糸を得た。次いで、ホットロール温度55℃、ホットプレート温度140℃、延伸速度400m/分、延伸倍率は延伸後の繊度が84dtexとなるように設定して延撚し、84dtex/12fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを得た。得られた複合マルチフィラメントの固有粘度は高粘度側が1.30、低粘度側が0.90であった。
【0066】
初期引張抵抗度、顕在捲縮の伸縮伸長率/伸縮弾性率、熱水処理後の伸縮伸長率/伸縮弾性率、100℃における熱収縮は、それぞれ25cN/dtex、25%/89%、204%/99%及び0.21cN/dtexであった。
得られた84dtex/12fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメント糸を4本及び2本併せて150t/mの撚りを入れ、60℃で20分間スチームセットを行った。
【0067】
実施例1と同じ編組織で、以下の糸使いでメッシュ調ラッセル編地の生機を得た。
フロント:実施例1で使用した167dtex/48f×双糸のポリトリメチレンテレフタレート仮撚加工糸
ミドル :上記記載の84dtex/12f×2本合糸の複合マルチフィラメント原糸
バック :上記記載の84dtex/12f×4本合糸の複合マルチフィラメント原糸
挿入1 :実施例4と同じ390dtexの複合モノフィラメント糸
挿入2 :同上
この生機を約170℃でセットし、次いで、液流染色機中で精練し、分散染料を用いて130℃染色後、170℃でセットし、ラッセル編地を得た。得られた編地の破断強伸度は、5cm幅あたり、経1550N、緯790N、破断伸度は、経及び緯が、それぞれ68%及び61%であった。
【0068】
得られた編物は、表1及び表2に示すように、優れた弾性回復率と応力保持率を有するとともに、ソフトな風合いでクッション性、ホールド性に優れたものであり、繰り返し一定加重後や使用後にヘタリやたわみがなく、歪の残らないものであった。
【0069】
【実施例6】
実施例3の390dtex複合モノフィラメント糸をフロント、ミドル、バックの全てに用いてラッセル編地の生機を作成した。
この生機を実施例3と同じに加工処理して、オールポリトリメチレンテレフタレートモノフィラ使いのラッセル編地を得た。この編地の破断強度は、5cm幅あたり、経800N、緯790N、破断伸度は、それぞれ76%、98%であった。
得られた編物は、表1及び表2に示すように、優れた弾性回復率と応力保持率を有するとともに、ソフトな風合いでクッション性、ホールド性に優れたものであり、また繰り返し一定加重後や使用後にヘタリやたわみがなく歪の残らないものであった。
【0070】
【実施例7】
実施例6で、フロント糸を実施例1の使用糸とする以外は全て同じとして、ラッセル編地を得た。この編地の破断強度は、5cm幅あたり、経767N、緯656N、破断伸度は、経及び緯が、それぞれ90%及び95%であった。
得られた編物は、表1及び表2に示すように、優れた弾性回復率と応力保持率を有するとともに、ソフトな風合いでクッション性、ホールド性に優れたものであり、また繰り返し一定加重後や使用後にヘタリやたわみがなく歪の残らないものであった。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【発明の効果】
本発明の表皮材用編物は、優れた伸長回復性と応力保持性を有する為に、表皮材として用いた場合、優れた耐久弾発性があり、弛みやヘタリを発生させることがない.更に、寸法安定性が良好で、耐摩耗性があり、非常にソフトな風合いを有し、人体に対するホールド性に優れる。
Claims (2)
- 少なくとも50質量%がポリトリメチレンテレフタレート繊維で構成された編物であって、編物のコース及びウェル方向における、10%伸長時の応力が5cm幅あたり60N以上187N以下であり、このときの弾性回復率が70%以上であることを特徴とする表皮材用編物。
- 編物のコース方向及びウェル方向において、10%伸長下で15分間保持した後の応力保持率が70%以上であることを特徴とする請求項1記載の表皮材用編物。
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