JP4251926B2 - 立体編物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、鉄道車両、航空機、チャイルドシート、ベビーカー等の乗り物座席シート用クッション材及び家具、事務用等の座席シート用クッション材として好適に使用される立体編物に関する。
【0002】
【従来の技術】
表裏二層の編地と該二層の編地とを連結する連結糸から構成された立体編物は、クッション性、通気性、保温性、体圧分散性等の機能を活かして、各種クッション材用途に利用されている。
これらの立体編物は、中間層を構成する連結糸にモノフィラメントを使用することにより、モノフィラメントの曲げ弾性を活用して立体編物の厚み方向にクッション性が付与されている。立体編物のクッション性及び圧縮回復性を向上させる方法として、例えば、特許文献1には、連結糸に弾性回復性の良好なモノフィラメントを用いた立体編物が開示されている。
【0003】
この立体編物は、置き敷き用の座席シートとして利用した場合には、良好なクッション性が得られる。しかし、フレーム等に張設させたハンモック式の座席シートとして使用した場合には、張設圧縮撓み特性や伸長特性が何ら考慮されていないため、座った瞬間に小さな荷重で容易に表裏の編地が組織変形を起こして、表裏の編地の糸が緊張状態に移行し易く、底付き感を感じるものであった。更には、張設圧縮時のヒステリシスロス率が大きく、繰り返して座った場合にフィット感の低下、退席後のシートに凹みが残る等、見栄えの悪さが問題となり、ハンモック式の座席シート用の立体編物として十分満足できるものではなかった。
【0004】
特許文献2には、立体編物をシートフレームに張設して、ハンモック式の座席シートとして使用することが開示されているが、この立体編物には、張設圧縮特性、伸長特性、表裏二層の編地に使用する糸の繊度等が考慮されていないため、ハンモック式の座席シート用の立体編物として不十分なものであった。
【0005】
【特許文献1】
特開平−11−269747号公報
【特許文献2】
特開2001−87077号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の問題点を解決し、ハンモック式の座席シートに使用した場合、座った瞬間に容易に表裏の編地が組織変形することのない反発感を有し、着座後も底付き感のないクッション性と良好なフィット感を示し、さらに、張設圧縮によるヒステリシスロス率が小さく、長時間又は繰り返して座った後のシートの凹みが少なく、見栄えの良い立体編物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の目的を達成するために、立体編物の張設圧縮撓み特性、伸長特性、立体編物に用いる繊維素材及び繊維形態等について鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1)表裏二層の編地と該二層の編地を連結するモノフィラメントによる連結糸とから構成された立体編物であって、表裏二層の編地の少なくとも一方の編地が単糸繊度10dtex以上のモノフィラメントと、単糸繊度10dtex以下のフィラメントとの交編により構成されたニットループを有する編組織からなり、かつ、立体編物の張設圧縮撓み時の線形値が0.40以上1以下であることを特徴とする立体編物。
(2)立体編物の張設圧縮撓み量が10mm以上80mm以下、張設圧縮撓み時のヒステリシスロス率が0%以上60%以下、かつ、張設圧縮撓み時の残留歪量が0mm以上30mm以下であることを特徴とする(1)に記載の立体編物。
(3)立体編物のタテ方向及びヨコ方向の伸長率が1%以上50%以下であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の立体編物。
(4)立体編物のタテ方向及びヨコ方向の伸長残留歪率が10%以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つに記載の立体編物。
(5)表裏二層の編地の少なくとも一方の編地がポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメントで構成されていることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1つに記載の立体編物。
(6)連結糸がポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメントであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1つに記載の立体編物。
(7)(1)〜(6)のいずれか1つに記載の立体編物からなる座席シート用立体編物。
(8)(7)に記載の立体編物が、背部又は座部のクッション材に用いられている座席シート。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の立体編物は、ハンモック式の座席シートとして使用した場合に、立体編物に接する瞬間の反発感を向上させて着座後の底付き感を防止し、かつ、張設圧縮撓み時のヒステリシスロス率を小さくするために、表裏二層の編地の少なくとも一方の編地を単糸繊度10dtex以上、好ましくは15dtex以上、より好ましくは20dtex以上のフィラメントで構成される。
【0009】
単糸繊度が10dtex以上のフィラメントとは、繊度が10dtex以上のモノフィラメント、又は繊度が10dtex以上の単糸からなるマルチフィラメントをいう。したがって、マルチフィラメントの場合、総繊度は(10×フィラメント数)dtexである。単糸繊度が10dtex以上のフィラメントは、マルチフィラメント及びモノフィラメントのいずれであってもよいが、モノフィラメントが好ましい。更にモノフィラメントがサイドバイサイド型等に複合紡糸され、潜在捲縮発現性を有する場合、ストレッチ性と回復性が一層向上するために、より好ましい。
【0010】
ハンモック式の座席シートとは、立体編物の周囲又は少なくとも2辺を、シートフレーム又は椅子の枠組みに、緊張状態又は弛ませた状態で張ることにより、立体編物が帆のような状態で座席シートの座部や背もたれ部を形成するものである。
表裏二層の編地の少なくとも一方の編地の全てを、単糸繊度10dtex以上のフィラメントで構成することが好ましいが、単糸繊度10dtex以下のフィラメントとの交編であってもよい。交編の場合、単糸繊度10dtex以上のフィラメントは、交編された編地において、重量混率で50%以上含まれていることが好ましく、より好ましくは70%以上である。表裏いずれか又は両方の編地がこのような交編編地であってもよい。単糸繊度が10dtex以上のフィラメントを立体編物の裏側の編地に用いると、ハンモック式の座席シートとした場合に、連結糸のモノフィラメントの弾性感がより一層発揮されるため好ましい。交編させる10dtex未満のフィラメントの単糸繊度は任意で設定できる。
【0011】
表裏の編地の全てを、単糸繊度が10dtex未満のフィラメントで構成した場合には、糸の曲げ剛性が低いため、表裏の編地が編目の形態変化(組織変化)を起こし易くなり、立体編物全体の曲げ剛性も低くなる。これによりハンモック式の座席シートとして使用した場合、座った直後に小さい荷重で容易に表裏の編地が組織変形を起こし、瞬時に表裏の編地の糸が緊張状態に移動する。そのため、立体編物に接した瞬間に反発感がなく、底付き感を感じ易くなる。また、張設圧縮撓み時に生じる組織変形を元に戻すための糸の剛性に起因する復元力が乏しくなり、ヒステリシスロス率が大きくなる。
【0012】
表裏の編地は、ニットループを有する鎖編、1針以上の振り巾のトリコット編、ニットループを有しない挿入編等、任意の編組織の組み合わせにより編成することができる。ニットループを有する鎖編と3針以上の多針振り巾のトリコット編との組み合わせの編み込み組織の場合、底付き感を防止し、フィット感を向上させると共に、編組織の形態安定性を増すので好ましい。
【0013】
本発明の立体編物は、張設圧縮撓み時の線形値が0.40以上1以下である。張設圧縮撓み時の線形値は、下限は、好ましくは0.45以上、より好ましくは0.48以上、上限は、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.65以下、最も好ましくは0.6以下である。ここでいう張設圧縮撓み時の線形値とは、後で詳しく述べるように、四角形にカットした立体編物の周囲を枠に固定し、立体編物の表面に対して直角方向に荷重を加えた時の「荷重−撓み量線」の形を数値として表現したものである。この値が1に近いほど真っ直ぐに近い曲線であり、1が最大値でこの場合は直線を意味する。この値が1に近いほど、立体編物に接した瞬間の反発感が良好で、底付き感を低減する上で好ましい。線形値が0.40未満の場合には、ハンモック式の座席シートにした場合、座る人の体重によってクッション性が変化し、座り心地等の快適性を阻害する。
【0014】
本発明の立体編物をハンモック式の座席シートとして使用する場合、張設圧縮撓み量が、好ましくは10mm以上80mm以下、より好ましくは15mm以上70mm以下、最も好ましくは15mm以上60mm以下である。張設圧縮撓み量がこのような条件を満たす場合、人体に対して、より優れたフィット感と、より快適な座り心地が得られる。ここでいう張設圧縮撓み量とは、後で詳しく述べるように、四角形にカットした立体編物の周囲を枠に固定し、立体編物の表面に対して直角方向に荷重を加えた時の撓んだ変位量のことをいい、立体編物の伸長特性によって大きく左右されるものである。撓み量が10mm未満であると、人が座った際の沈み込みが少なく、立体編物によるシート面が人体にフィットしにくくなり、硬くて座り心地が低下する傾向がある。撓み量が80mmを越えると、フィット感は良好なものの、座った後にシート面に凹みが残り、見栄えが低下する傾向がある。
【0015】
張設圧縮撓み特性を適正な範囲にする上で、立体編物のタテ方向(ウエール列に沿った方向)及びヨコ方向(コース列に沿った方向)の伸長特性が重要となる。本発明の立体編物は、タテ方向及びヨコ方向の伸長率が、好ましくは1%以上50%以下、より好ましくは5%以上45%以下である。タテ方向及びヨコ方向の伸長率がこのような条件を満たす場合、沈み込み量がより多くなり、人体へのフィット性をさらに向上させたハンモック式座席シートを得ることができる。比較的反発感が強く、座った後の凹みが残らない見栄えの良いハンモック式座席シートを得るには、立体編物のタテ方向及びヨコ方向の伸長率が1%以上15%以下であることが最も好ましい。
【0016】
立体編物が伸長された際の伸長残留歪率は、ハンモック式座席シートに座った後の凹みを目立たなくする上で10%以下が好ましく、より好ましくは7%以下、最も好ましくは5%以下である。
立体編物のタテ方向及びヨコ方向の伸長率及び伸長残留歪率を適正な範囲とするには、立体編物の表裏の編組織及び仕上げ加工方法が重要となる。表裏の編組織がメッシュ等の孔空き組織であれば、1メッシュを構成する編目数(コース数)を12コース以下にすることが好ましい。仕上げ加工に際しては、タテ方向とヨコ方向の伸長率のバランスをとり、ヨコ方向を幅出しヒートセットすることが好ましい。表裏の少なくとも一方の編組織が孔空きでない平坦組織、凹凸組織等の編組織であれば、全コースがニットループで形成される編組織や、ニットループ組織と挿入組織の複合組織等を用いることができる。
【0017】
立体編物の表裏の編組織は同一である必要は無く、異なる編組織、異なる伸長特性のものであってもよい。裏側の編地の伸長率が表側の編地の伸長率より少ない方が、人が座った際にモノフィラメントによる弾力感がより加わり、人体へのフィット性も良好となる。
さらに、本発明の立体編物は、張設圧縮撓み時のヒステリシスロス率が60%以下であることが、ハンモック式の座席シートとして使用する場合に反発感のあるクッション性を有する上で好ましい。より好ましくは55%以下、最も好ましくは45%以下であり、0に近いほどよい。
【0018】
本発明の立体編物は、張設圧縮撓み時の残留歪量が30mm以下であることが、長時間又は繰り返し座った後の凹みを目立たなくさせる上で好ましく、より好ましくは20mm以下、最も好ましくは15mm以下であり、0mmに近いほど良好である。
立体編物の張設圧縮撓み時のヒステリシスロス率及び残留歪量を低く抑えるためには、表裏二層の編地を構成する繊維を、弛みのでない状態又はそれ以上の伸長状態で伸長熱処理する方法等により達成することができる。熱処理としては、原糸製造の段階、又は仮撚、流体噴射加工等の糸加工段階でアンダーフィードによる熱処理を施してもよく、編地の段階で伸長熱処理を施してもよい。編地の状態で伸長熱処理する場合は、幅方向に5%以上の伸長率で熱処理することが好ましい。
【0019】
本発明の立体編物は、表裏二層の編地と該二層の編地とを連結するモノフィラメントにより構成されていることが必要である。ダブルラッセル編機、ダブル丸編機、横編機等を用いて立体編物を編成する場合、表裏の編地を連結する連結糸は、必ずどちらかの方向に湾曲した状態で編み込まれる。その連結糸に、厚み方向から力を加えると、既に湾曲している状態から更に湾曲し、力を取り除くと元の状態に戻る。この際に生じる連結糸の曲げと回復の挙動が立体編物の反発感のあるクッション性に大きく影響するため、連結糸には曲げ剛性の高いモノフィラメントを用いる。
【0020】
このクッション性は、立体編物をハンモック式の座席シートとして使用した場合にも反映される。したがって、立体編物の連結糸は全てモノフィラメントであることが好ましいが、必要に応じて、モノフィラメント以外の繊維を編成時に交編させてもよい。モノフィラメント以外の繊維は、連結糸における重量混率が50%以下であることが好ましく、より好ましくは40%以下である。例えば、マルチフィラメントの仮撚糸を交編すると、圧縮時にモノフィラメントどうしが擦れて発生する耳障りな音を低減できて好ましい。
【0021】
本発明の立体編物の連結糸に用いるモノフィラメントは、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエステル系エラストマー繊維等、任意の素材の繊維を用いることができるが、このうちポリトリメチレンテレフタレート繊維を連結糸に用いると、弾力感のあるクッション性を有し、繰り返し又は長時間圧縮後のクッション性の耐久性が良好となるので好ましい。
【0022】
立体編物の表裏二層の編地に用いる繊維として、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエステル系エラストマー繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリプロピレン系繊維等の合成繊維、綿、麻、ウール等の天然繊維、キュプラレーヨン、ビスコースレーヨン、リヨセル等の再生繊維、その他、任意の繊維を用いることができる。これらのうち、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を用いた立体編物をハンモック式シートに用いると、張設圧縮撓み量が増大し、ストローク感及びフィット感が向上するので好ましい。さらにポリトリメチレンテレフタレート繊維は、原糸製造段階、糸加工段階、又は編地の状態で伸長熱処理されていると、張設圧縮撓み時のヒステリシスロス率及び残留歪量が低減するのでより好ましい。
【0023】
繊維の断面形状は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。繊維の形態も、未加工糸、紡績糸、撚糸、仮撚加工糸、流体噴射加工糸等いずれのものを採用してもよい。連結糸のモノフィラメントが編地表面に露出しないように被覆率を上げるには、立体編物の少なくとも片側面にマルチフィラメントの仮撚加工糸、紡績糸等の嵩高糸を用いることが好ましい。サイドバイサイド等の複合糸を用いると、ストレッチ性と回復性がより一層向上するので好ましい。
【0024】
立体編物は、表裏糸及び連結糸をポリエステル系繊維100%で構成すると、廃棄の際に解重合によりモノマーに戻すリサイクルが可能となり、また、焼却しても有害ガスの発生が防止できるので好ましい。
本発明の立体編物において、好ましく用いられるポリトリメチレンテレフタレート繊維は、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステル繊維であって、トリメチレンテレフタレート単位を50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、最も好ましくは90モル%以上含むものである。したがって、第三成分として他の酸成分及び/又はグリコール成分の合計量が50モル%以下、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、最も好ましくは10モル%以下含有されたポリトリメチレンテレフタレートを包含する。
【0025】
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸又はその機能的誘導体と、トリメチレングリコール又はその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適当な反応条件下に結合せしめることにより合成される。この合成過程において、適当な一種又は二種以上の第三成分を添加して共重合ポリエステルとしてもよいし、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル、ナイロン等と、ポリトリメチレンテレフタレートをそれぞれ別個に合成した後、ブレンドしたり、複合紡糸(鞘芯型、サイドバイサイド型等)してもよい。
【0026】
複合紡糸に関しては、特公昭43−19108号公報、特開平11−189923号公報、特開2000−239927号公報、特開2000−256918号公報等に例示されるような、第一成分にポリトリメチレンテレフタレート、第二成分にポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、又はナイロンを用いて、これらを並列に配置したサイドバイサイド型又は偏芯的に配置した偏芯シースコア型に複合紡糸したもの等がある。特に、ポリトリメチレンテレフタレートと共重合ポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせ、及び極限粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせが好ましく、中でも、特開2000−239927号公報に例示されるような、極限粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを用い、低粘度側が高粘度側を包み込むように接合面形状が湾曲しているサイドバイサイド型に複合紡糸したものが、高度の伸長回復性を兼備するので、立体編物の表裏の編地に用いることが好ましい。
【0027】
ポリトリメチレンテレフタレートに添加することのできる第三成分としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(P−オキシ安息香酸等)等が挙げられる。また1個又は3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等又はグリセリン等)も重合体が実質的に線状である範囲内で使用できる。
【0028】
さらに二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等が含有されていてもよい。
【0029】
ポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントは、例えば、国際公開第01/75200号パンフレットに記載された方法により製造することができる。すなわち、ポリトリメチレンテレフタレートを紡口から吐出し、冷却浴中で急冷した後第1ロールで巻き取り、次いで、温水中又は乾熱雰囲気下で延伸しながら第2ロールで巻き取った後、乾熱雰囲気下又は湿熱雰囲気下において、オーバーフィードでリラックス処理し、第3ロールで巻き取る方法等で製造することができる。ポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントの断面形状は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよいが、丸型断面が立体編物のクッション性の耐久性を向上させる上で好ましい。
【0030】
本発明の表裏の編地又は連結糸のモノフィラメントに用いる繊維は、着色されていることが好ましい。着色方法としては、未着色の糸をかせやチーズ状で糸染めする方法(先染め)、紡糸前の原液に顔料、染料等を混ぜて着色する方法(原液着色)、立体編物状で染色したりプリントする方法等が用いられるが、立体編物状で染色すると立体形状を維持するのが困難であったり加工性が悪い場合があるため、先染め又はマスターバッチによる原着方式が好ましい。
【0031】
連結糸に用いるモノフィラメントの繊度は、限定されるものではないが、通常、20〜1500dtexである。立体編物に弾力感のある、より優れたクッション性を付与する上からは、モノフィラメントの太さは100〜1000dtexが好ましく、より好ましくは200〜800dtexである。表裏の編地に用いるマルチフィラメント等の繊維には、通常、50〜2000dtexの太さのものを用いることができ、所定の表裏の編地以外で用いる繊維の単糸繊度は任意に設定できる。
【0032】
本発明の立体編物は、相対する2列の針床を有するダブルラッセル編機、ダブル丸編機、Vベッドを有する横編機等で編成できるが、寸法安定性のよい立体編物を得るには、ダブルラッセル編機を用いるのが好ましい。編機のゲージは9〜28ゲージが好ましく用いられる。
立体編物の表裏の編地は4角、6角等のメッシュ編地、マーキゼット編地等複数の開口部を有する編地にして軽量性及び通気性を向上させてもよく、表面を平坦な組織にして肌触りを良好にしてもよい。表面を起毛することにより肌触りの良好なものが得られる。
【0033】
連結糸の密度については、立体編物2.54cm平方(6.45cm2)の面積中にある連結糸の本数をN(本/2.54cm平方)、連結糸のdtexをT(g/1×106cm)、連結糸の比重をρ0(g/cm3)とした時、立体編物2.54cm平方の面積中にある連結糸の総断面積(N・T/1×106・ρ0)が0.03〜0.35cm2であることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.25cm2である。この範囲に設定することによって、立体編物がより適度な剛性による良好なクッション性を有するものとなる。
【0034】
連結糸は、表裏の編地中にループ状の編目を形成してもよく、表裏編地に挿入組織状に引っかけた構造でもよいが、少なくとも2本の連結糸が表裏の編地を互いに逆方向に斜めに傾斜して、クロス状(X状)又はトラス状に連結することが、立体編物の形態安定性を向上させる上で好ましい。
立体編物の厚み及び目付は目的に応じて任意に設定できるが、厚みは3〜30mmが好ましく用いられる。厚みが3mm未満であると、クッション性が低下する傾向があり、30mmを越えると、立体編物の仕上げ加工が難しくなる。目付は、好ましくは150〜3000g/m2、より好ましくは200〜2000g/m2である。
【0035】
立体編物の仕上げ加工方法としては、生機を精錬、染色、ヒートセット等の工程を通して仕上げることができる。先染め糸や原液着色糸を使用した立体編物の場合は、精錬や染色工程を省いて生機をすぐにヒートセットのみで仕上げることもできる。生機をヒートセットのみで仕上げた場合、原糸油剤等が残存するために滑り性が増して編目の回復性が向上し、張設圧縮撓み時のヒステリシスロス率と残留歪量が低減できるので好ましい。
【0036】
仕上げセット時には、本発明の目的を損なわなければ、通常、繊維加工に用いられている樹脂加工、吸水加工、制電加工、抗菌加工、撥水加工などの仕上げ加工が適用できる。特に、風合いの柔軟化に用いるアルキルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン等からなるシリコーン系の柔軟剤で仕上げ加工すると、張設圧縮撓み時のヒステリシスロス率と残留歪量が低減できる。
【0037】
仕上げセットで用いる熱処理機としては、ピンテンター、クリップテンター、ショートループドライヤー、シュリンクサーファードライヤー、ドラムドライヤー、連続及びバッチ式タンブラー等が使用できる。
仕上げ加工後の立体編物は、融着、縫製、樹脂加工等の手段で端部を処理したり、熱成形等により所望の形状に加工して、ハンモック式座席シートやベッドパッド等の各種用途に用いることができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例で具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
立体編物の各種物性の測定方法は以下の通りである。
(1)張設圧縮撓み時の線形値S、張設圧縮撓み量E(mm)、張設圧縮撓み時のヒステリシスロス率Q(%)、張設圧縮撓み時の残留歪量E1(mm)
4隅に高さ15cmの足を取付けた下側の金属枠(内側が1辺30cmの四角形に刳り貫いた外側が1辺41cmの四角形で、厚み5mmの金属板)の上面に、40番のサンドペーパーを貼りつけて滑り止めを付与させたものと、上側の金属枠(下側の金属枠と同様で高さ15cmの足がないもの)の下面に、40番のサンドペーパーを貼りつけて滑り止めを付与させたものとの間に、立体編物を弛まないように挟み、周囲を万力で固定する。
【0039】
島津オートグラフAG−B型((株)島津製作所製)を用い、直径100mmの円形平面状の圧縮端子により、張設した立体編物の中央部を50mm/分の速度で圧縮し、245Nの荷重になった時点で同速にて元に戻す。この際に得られる図1に示すような「荷重−変位曲線」から、245N荷重時の変位を撓み量E(mm)、回復曲線の荷重が0Nとなる変位を残留歪量E1(mm)とする。また、図1に示すように、直線0Aと圧縮曲線Lで形成される面積をa0(mm2)、圧縮曲線Lと圧縮回復曲線Mで形成される面積をa1(mm2)、圧縮回復曲線Mと直線ABと直線B0で形成される面積をa2(mm2)とした時に、次式で線形値Sとヒステリシスロス率Q(%)を算出する。
S=(a1+a2)/(a0+a1+a2)
Q(%)={a1/(a1+a2)}×100
【0040】
(2)伸長率I(%)、伸長残留歪率D(%)
仕上げ加工した立体編物を30cm×5cm(幅)の短冊状にカットした試験片を作製し、試験片の20cmの間隔に印を付ける。試験片はタテ方向(ウエール列に沿った方向)とヨコ方向(コース列に沿った方向)のものをそれぞれ5枚採取する。試験片の一端をチャックに固定して吊るし、さらにもう一端に荷重29.4Nの荷重をチャックで固定して吊るす。5分後に印間の長さL1を測定し、その後、荷重を取り除き、1分後の印間の長さL2を測定し、次の式に従い伸長率、伸長残留歪率を算出する。タテとヨコをそれぞれ5回測定し、その平均値とする。
I(%)=[(L1−20)/20]×100
D(%)=[(L2−20)/20]×100
【0041】
(3)ハンモックシートでのクッション性(座った瞬間の反発感、着座後の底付き感、フィット感)
座部の形状が40cm角の四角い金属フレームで作られた椅子(四つ脚、背もたれなし)のフレームに立体編物を緩まないよう縫製及びボルト止めにて張設させた座席を作製する。その上に体重65Kgの男性が5分間座った後、1分間退席することを10回繰り返す。座った瞬間(立体編物に接した瞬間)の反発感を官能評価により、◎:反発感がある、○:反発感がややある、△:反発感がやや少ない、×:反発感が少ない、の4段階で相対評価する。
同時に着座後の底付き感を官能評価により、◎:底付き感を感じない、○:底付き感を殆ど感じない、△:底付き感をやや感じる、×:底付き感を激しく感じる、の4段階で相対評価する。
フィット感を官能評価によって、◎:フィット感が高い、○:フィット感がやや高い、△:フィット感がやや低い、×:フィット感が低い、の4段階で相対評価する。
【0042】
(4)ハンモックシートに座った後の外観(見栄え)
(3)の試験後、椅子に張った立体編物の凹み状態を外観観察により、◎:凹みが全くない、○:凹みが殆どない、△:やや凹みがある、×:凹みが激しい、の4段階で相対評価する。
【0043】
【参考例1】
(ポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントの製造)
実施例に使用するポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメントを、以下の方法により製造した。
固有粘度[η]=0.9のポリトリメチレンテレフタレートを紡糸温度265℃で紡口から吐出し、40℃の冷却浴中に導いて冷却しつつ、16.0m/分の速度の第1ロール群で引張り細化して未延伸モノフィラメントを製造した。次いで、温度55℃の延伸浴中で5倍に延伸しながら80.0m/分の第2ロール群によって引張り、その後、120℃のスチーム浴中で弛緩熱処理を施しながら、72.0m/分の第3ロール群を経た後、第3ロール群と同速の巻取機で巻き取り、280dtexの延伸モノフィラメントを製造した。同様にして200dtex、390dtex、440dtex、880dtexの延伸モノフィラメントをそれぞれ製造した。
【0044】
固有粘度[η](dl/g)は、次式の定義に基づいて求められる値である。
定義中のηrは、純度98%以上のo−クロロフェノール溶媒で溶解したポリトリメチレンテレフタレート糸又はポリエチレンテレフタレート糸の稀釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されているものである。Cはg/100mlで表されるポリマー濃度である。
【0045】
【実施例1】
6枚筬を装備した18ゲージ、釜間12mmのダブルラッセル編機を用い、表側の編地を形成する3枚の筬(L1、L2、L3)及び裏側の編地を形成する2枚の内のL5から、167dtex48フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸(旭化成(株)社製、黒色先染め糸)を、いずれもオールインの配列で供給し、裏側の編地を形成するもう一方のL6の筬及び連結部を形成するL4の筬から、参考例1で製造した280dtexのポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントを、共にオールインの配列で供給した。
【0046】
以下に示す編組織で、打ち込み15コース/2.54cmの密度で立体編物の生機を編成した。得られた生機を15%幅出しして150℃×3分で乾熱ヒートセットし、表裏の編地が平坦な立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表1に示す。
(編組織)
L1:2322/1011/
L2:1011/2322/
L3:1000/0111/
L4:1043/6734/
L5:1110/0001/
L6:5510/1156/
得られた立体編物は、座った瞬間の反発感があり、底付き感を感じないクッション性を有し、フィット感も高いものであった。張設圧縮撓み時のヒステリシスロス率が小さく、長時間又は繰り返して座った後のシートの凹みが少ない見栄えの良いものであった。
【0047】
【実施例2】
280dtexのポリブチレンテレフタレート繊維のモノフィラメント(旭化成(株)社製)を、連結部を形成するL4の筬に供給した以外は実施例1と同様にした立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表1に示す。
得られた立体編物は、座った瞬間の反発感があり、底付き感を感じないクッション性を有し、フィット感もやや高いものであった。張設圧縮撓み時のヒステリシスロス率が小さく、長時間又は繰り返して座った後のシートの凹みが少ない見栄えの良いものであった。
【0048】
【実施例3】
280dtexのポリエチレンテレフタレート繊維のモノフィラメント(旭化成(株)社製)を、裏側の編地を形成するL6の筬に供給した以外は実施例1と同様にした立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表1に示す。
得られた立体編物は、座った瞬間の反発感があり、底付き感を殆ど感じないクッション性を有し、フィット感もやや高いものであった。張設圧縮撓み時のヒステリシスロス率が小さく、長時間又は繰り返して座った後のシートの凹みが少ない見栄えの良いものであった。
【0049】
【実施例4】
実施例1において、裏面の編地を形成するL5の筬に、参考例1で製造した200dtexのポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントをオールインの配列で供給した以外は実施例1と同様にした立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表1に示す。
得られた立体編物は、座った瞬間の反発感があり、底付き感を感じないクッション性を有し、フィット感も高いものであった。張設圧縮撓み時のヒステリシスロス率が小さく、長時間又は繰り返して座った後のシートの凹みがない見栄えの良いものであった。
【0050】
【実施例5】
実施例1において、以下の編み組織に変更した以外は実施例1と同様にした立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表1に示す。
(編み組織)
L1:2322/1011/
L2:1011/2322/
L3:1000/0111/
L4:1043/6734/
L5:1110/0001/
L6:0000/4444/
得られた立体編物は、座った瞬間の反発感があり、底付き感を殆ど感じないクッション性を有し、フィット感もやや高いものであった。張設圧縮撓み時のヒステリシスロス率が小さく、長時間又は繰り返して座った後のシートの凹みがない見栄えの良いものであった。
【0051】
【実施例6】
6枚筬を装備した9ゲージ、釜間14mmのダブルラッセル編機を用い、表裏の編地を形成する4枚の筬(L1、L2、L5、L6)から、1670dtex108フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸(旭化成(株)社製)を、いずれも1イン1アウトの配列で供給し、連結部を形成する2枚の筬(L3、L4)から、参考例で製造した880dtexのポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントを1イン1アウトの配列で供給した。
【0052】
以下に示す編組織で、打ち込み10コース/2.54cmの密度で立体編物の生機を編成した。得られた生機を15%幅出しして150℃×3分で乾熱ヒートセットし、表裏の編地がメッシュ調に開口した立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表2に示す。
(編組織)
L1:1011/2322/
L2:2322/1011/
L3:1023/4532/
L4:4532/1023/
L5:2223/1110/
L6:1110/2223/
得られた立体編物は、座った瞬間の反発感があり、底付き感を感じないクッション性を有し、フィット感もやや高いものであった。張設圧縮撓み時のヒステリシスロス率が小さく、長時間又は繰り返して座った後のシートの凹みが少ない見栄えの良いものであった。
【0053】
【実施例7】
6枚筬を装備した14ゲージ、釜間13mmのダブルラッセル編機を用い、表側の編地を形成する2枚の筬(L1、L2)及び裏側の編地を形成する2枚の内のL5から、500dtex144フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸(旭化成(株)社製、黒色先染め糸)を、いずれもオールインの配列で供給した。裏側の編地を形成するもう一方のL6の筬から、参考例1で製造した390dtexのポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントを、オールインの配列で供給した。連結部を形成する2枚の筬(L3、L4)からも、参考例1で製造した390dtexのポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントを、共に1イン1アウトの配列で供給した。
【0054】
以下に示す編組織で、打ち込み12コース/2.54cmの密度で立体編物の生機を編成した。得られた生機を10%幅出しして150℃×3分で乾熱ヒートセットし、表裏の編地が平坦な立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表2に示す。
(編組織)
L1:1011/3433/
L2:1000/0111/
L3:3210/2345/
L4:3254/2301/
L5:1110/0001/
L6:4410/1145/
得られた立体編物は、座った瞬間の反発感があり、底付き感を感じないクッション性を有し、フィット感も高いものであった。張設圧縮撓み時のヒステリシスロス率が小さく、長時間又は繰り返して座った後のシートの凹みが少ない見栄えの良いものであった。
【0055】
【実施例8】
実施例7において、連結部を形成する筬を1枚(L3のみ)に変更し、連結糸を参考例で製造した440dtexのポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントを、オールインの配列で供給し、以下に示す編組織に変更した以外は実施例7と同様にした立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表2に示す。
(編組織)
L1:3222/0111/
L2:1011/2322/
L3:4367/3410/
L4:未使用
L5:0001/1110/
L6:1145/4410/
得られた立体編物は、座った瞬間の反発感があり、底付き感を感じないクッション性を有し、フィット感も高いものであった。張設圧縮撓み時のヒステリシスロス率が小さく、長時間又は繰り返して座った後のシートの凹みが少ない見栄えの良いものであった。
【0056】
【比較例1】
実施例1において、裏面の編地を形成するL6の筬に167dtex48フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸(旭化成(株)社製、黒色先染め糸)をオールインの配列で供給した以外は実施例1と同様にした立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表2に示す。
得られた立体編物は、座った瞬間の反発感が少なく、底付き感をやや感じ、フィット感もやや低いものであった。張設圧縮撓み時のヒステリシスロス率が大きく、長時間又は繰り返して座った後のシートの凹みがややあるものであった。
【0057】
【比較例2】
実施例1と同様にして得た立体編物の生機をフリー(ピンなどで拘束しない状態)で150℃×2分の乾熱ヒートセットを行い、表裏の編地が平坦な立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表2に示す。
得られた立体編物は、座った瞬間の反発感が少なく、底付き感をやや感じ、フィット感もやや低いものであった。張設圧縮撓み時のヒステリシスロス率が大きく、長時間又は繰り返して座った後のシートの凹みが激しいものであった。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【発明の効果】
本発明の立体編物は、ハンモック式の座席シートに使用した場合、座った瞬間に容易に表裏の編地が組織変形することのない反発感を有し、着座後も底付き感のないクッション性を示すと共にフィット感が良好なものとなる。また、張設圧縮によるヒステリシスロス率が小さく、長時間又は繰り返して座った後のシートの凹みが少なく見栄えの良い立体編物である。
【図面の簡単な説明】
【図1】立体編地の荷重−変位曲線を示すグラフ。
Claims (8)
- 表裏二層の編地と該二層の編地を連結するモノフィラメントによる連結糸とから構成された立体編物であって、表裏二層の編地の少なくとも一方の編地が単糸繊度10dtex以上のモノフィラメントと、単糸繊度10dtex以下のフィラメントとの交編により構成されたニットループを有する編組織からなり、かつ、立体編物の張設圧縮撓み時の線形値が0.40以上1以下であることを特徴とする立体編物。
- 立体編物の張設圧縮撓み量が10mm以上80mm以下、張設圧縮撓み時のヒステリシスロス率が0%以上60%以下、かつ、張設圧縮撓み時の残留歪量が0mm以上30mm以下であることを特徴とする請求項1記載の立体編物。
- 立体編物のタテ方向及びヨコ方向の伸長率が1%以上50%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の立体編物。
- 立体編物のタテ方向及びヨコ方向の伸長残留歪率が10%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の立体編物。
- 表裏二層の編地の少なくとも一方の編地がポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメントで構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の立体編物。
- 連結糸がポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメントであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の立体編物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の立体編物からなる座席シート用立体編物。
- 請求項7に記載の立体編物が、背部又は座部のクッション材に用いられている座席シート。
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