JP3627826B2 - マット及びその製法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、蒸れ難く、保温性、体型保持性に優れ寝心地が良好で、耐久性、折り曲げ性にも優れ洗濯が可能で、常に清潔性を保持できる一般家庭用、病院用及びホテル用等のベットに最適なベットマット及び、敷布団、座蒲団、家具等のクッション材にも適したマット及びその製法に関する。
【0002】
【従来技術】
現在、ベッド用のベットマットはクッション層に硬鋼線スプリング又は発泡スチロール等の発泡体を用い、ワディング層に発泡ウレタンや非弾性捲縮繊維を接着した樹脂綿や硬綿などが積層一体化されたもの、及びクッション体が同一組成のウレタン等の発泡体や非弾性捲縮繊維を接着した樹脂綿又は硬綿のみで構成されたものが使用されている。
【0003】
しかしながら、クッション層に硬鋼線スプリングを用いたものは、サポ−ト性は著しく優れているが、折り曲げ性に劣り、又、廃棄時に硬鋼線スプリングを分離して処理するための煩雑さが大きい問題となっている。クッション層又はワディング層又はクッション体に発泡−架橋型ウレタンを用いたものは、クッション体としての耐久性は極めて良好だが、透湿透水性に劣り蓄熱性があるため蒸れやすく、折り曲げ性もやや劣り、かつ、熱可塑性では無いためリサイクルが困難となり焼却される場合、焼却炉の損傷が大きく、かつ、有毒ガス除去に経費が掛かる。このため埋め立てされることが多くなったが、地盤の安定化が困難なため埋め立て場所が限定され経費も高くなっていく問題がある。また、加工性は優れるが製造中に使用される薬品の公害問題などもある。また、最近、病院用ベットがMRSA等の温床となる問題からベットマットの洗濯が必要だが、透水性に劣るウレタンは洗濯ができないため社会問題になっている。
【0004】
クッション層又はワディング層又はクッション体がポリエステル繊維を接着剤で接着した樹脂綿、例えば接着剤にゴム系を用いたものとして特開昭60−11352号公報、特開昭61−141388号公報、特開昭61−141391号公報等がある。又、架橋性ウレタンを用いたものとして特開昭61−137732号公報等がある。これらをクッション層又はワディング層に用いたものは、通気性をよくして蒸れを軽減できるが、耐久性と折り曲げ性に劣り、且つ、熱可塑性でなく、単一組成でもないためリサイクルも出来ない等の問題、及び加工性の煩雑さや製造中に使用される薬品の公害問題などもある。また、洗濯は可能だが、水切り性が悪い問題がある。
【0005】
クッション層又はワディング層又はクッション体にポリエステル硬綿、例えば特開昭58−31150号公報、特開平2−154050号公報、特開平3−220354号公報等があるが、用いている熱接着繊維の接着成分が脆い非晶性のポリマ−を用いるため(例えば特開昭58−136828号公報、特開平3−249213号公報等)接着部分が脆く、使用中に接着部分が簡単に破壊されて形態や弾力性が低下するなどの耐久性が劣る問題がある。更に折り曲げ性が劣るものである。また、洗濯は可能だが、水切り性が悪い問題がある。耐久性の改良法として、交絡処理する方法が特開平4−245965号公報等で提案されているが、接着部分の脆さは解決されず弾力性の低下が大きく、折り曲げ性も劣る問題がある。また、加工時の煩雑さもある。更には接着部分が変形しにくくソフトなクッション性を付与しにくい問題もある。このため、接着部分を柔らかい、且つある程度変形しても回復するポリエステルエラストマ−を用い、芯成分に非弾性ポリエステルを用いた熱接着繊維が特開平4−240219号公報で、同繊維を用いたクッション体がWO−91/19032号公報、特開平5−156561号公報、特開平5−163654号公報等で提案されている。この繊維構造物に使われる接着成分がポリエステルエラストマ−のソフトセグメントとしてはポリアルキレングリコ−ルの含有量が30〜50重量%、ハ−ドセグメントの酸成分にテレフタル酸を50〜80モル%含有し、他の酸成分組成として特公昭60−1404号公報に記載された繊維と同様にイソフタル酸を含有して非晶性が増すことになり、融点も180℃以下となり低溶融粘度として熱接着部分の形成を良くしてアメーバー状の接着部を形成しているが塑性変形しやいため、及び芯成分が非弾性ポリエステルのため、特に加熱下での塑性変形が著しくなり、耐熱抗圧縮性が低下する問題点、及び折り曲げ性が劣り、洗濯は可能だが、水切り性が悪い問題点がある。耐久性を更なる改良法として、特開平5−163654号公報にシ−ス成分にイソフタル酸を含有するポリエステルエラストマ−、コア成分に非弾性ポリエステルを用いた熱接着複合繊維のみからなる構造体が提案されているが上述の理由で加熱下での塑性変形が著しくなり、耐熱抗圧縮性が低下し、クッション体に使用するには問題がある。又、硬綿の母材にシリコ−ン油剤を付与して繊維の摩擦係数を下げて耐久性を向上し、風合いを良くする方法が特開昭63−158094号公報で提案されている。が、熱接着繊維の接着性に問題があり、耐久性が劣るのでクッション体に使用するには好ましくない。他方、折り曲げ性の改良法として、折り畳み構造にする方法が特開昭55−36373号公報、特開平2−142513号公報、特開平5−3894号公報等で提案されているが、折り曲げ性は改良されたが、耐久性や洗濯時の問題は何ら改良されず、クッション体として用いるには問題が多いものである。又、折り曲げ部分に空洞を作って折り曲げ性を改良したものとして、例えば特開平5−285031号公報等があるが、ウレタン等の発泡体の問題、又は硬綿の問題を何ら解決できていない。
【0006】
土木工事用に使用する熱可塑性のオレフィン網状体が特開昭47−44839号公報に開示されている。それらを用いたクッション体として、実開昭58−93270号公報に硬い構造と柔らかな構造を積層されたものが実開昭58−95760号公報には、硬い構造の網状体内部に空調部を有するもの、実開昭58−105714号公報には硬い構造と推測される網状体を用いたもの記載されているが、耐熱耐久性や寝心地及び軽量化や洗濯性などの取扱性には何ら配慮されていない。特開昭58−109670号公報には、片面に凹凸を有する網状体が提案されているが、細い繊維から構成したクッションとは異なり表面が凸凹でタッチが悪く、耐熱耐久性や寝心地及び軽量化や洗濯性などの取扱性には何ら配慮されていない。特開平6−327723号公報には、洗浄パイプや通気管等を装着可能な孔部を有する網状体が開示されているが、素材がオレフィンのため耐熱耐久性が著しく劣り、軽量化や洗濯性などの取扱性にも何ら配慮されておらずワディング層やクッション材には使用ができないものである。また、特公平3−17666号公報には繊度の異なる吐出線条を互いに融着してモ−ル状物を作る方法も開示されているがクッション材には適さない網状構造体である。特公平3−55583号公報には、ごく表面のみ冷却前に回転体等の細化装置で細くする方法が記載されている。この方法では表面をフラット化できず、厚みのある細い線条層を作ることできない。したがって座り心地の良好なクッション材にはならない。特開平1−207462号公報では、塩化ビニ−ル製のフロアマットの開示があるが、室温での圧縮回復性が悪く、耐熱性は著しく悪いので、クッション材としては好ましくないものである。なお、上述構造体はベットマットに関する配慮が全くなされていない。
【0007】
特開平6−269345号公報には、遠赤外線輻射機能を持つ不織布等の寝具用部材を被う、綿材をシ−トで挟みキルトした布団用パッドが開示されているが、体型保持機能や蒸れ防止機能等の寝心地改良、耐熱耐久性、水切り性や乾燥性等の洗濯性、及び折り曲げ性に関する配慮がなされていない問題がある。実開平6−48453号公報には、折り目をつけた硬綿をキルティングを施した詰綿充填包布に包まれた敷布団が開示されている。敷布団としては、折り畳み性と保温性は良いが、通気性に劣り蒸れ易く、体型保持性が不充分で、耐熱耐久性、水切り性や乾燥性等の洗濯性の配慮がなされていない問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記問題点を解決し、蒸れ難く、保温性、形態保持性等の寝心地を良くし、耐熱耐久性、折り曲げ性も良好で使い易く、MRSA等の雑菌を除去するための洗濯が可能な構造とし、更には、分別すればリサイクルも可能にしたベット、敷布団、座蒲団、家具用クッションに最適なマット及びその製法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための手段、即ち、本発明はクッション層の少なくとも上面にワディング層が積層され、且つ、全体面が側地で被われキルティング縫製されたマットであり、クッション層は、熱可塑性弾性樹脂からなる線径が5mm以下の連続した線条を曲がりくねらせランダムループを形成し、それぞれのループの接触部の大部分が融着されてなる三次元立体構造網状体で形成され、該三次元立体構造網状体は上、下両面が実質的にフラット化されており、見掛け密度が0.005〜0.10g/cm3 、厚みが5mm以上であり、ワディング層は、天然繊維を主たるマトリックスとした見掛け密度が0.1g/cm3 以下のウェブからなることを特徴とするマットである。更には、クッション層を構成する熱可塑性弾性樹脂が、室温での300%伸長後の回復率(室温伸長回復率)が20%以上、70℃での10%伸長を24時間保持した後の回復率(70℃伸長回復率)が30%以上であるマットであり、クッション層を構成する網状体の線径が0.01mm以上、見掛けの密度が0.01g/cm3 から0.08g/cm3 、厚みが10mm以上100mm以下であるマットであり、クッション層を構成する網状体の線径が0.1mm以上2mm以下、見掛けの密度が0.02g/cm3 から0.06g/cm3 、厚みが20mm以上80mm以下であるマットであり、熱可塑性弾性樹脂からなる成分を示差走査型熱量計で測定した融解曲線に室温以上融点以下の温度に吸熱ピ−クを持つ網状体を用いたマットであり、クッション層を構成する網状体の該線条の断面形状が中空断面又は及び異形断面であるマットであり、マットの見掛け密度が0.1g/cm3 以下となるようにキルチィングされたマットであり、側地の通気度が20cc/cm2 秒以上であるマットであり、天然繊維が絹からなるマットであり、天然繊維が羊毛からなるマットであり、天然繊維が麻からなるマットであり、複数のオリフィスを持つ多列ノズルより熱可塑性弾性樹脂をその融点より20〜80℃高い溶融温度で、該ノズルより下方に向けて吐出させ、溶融状態で連続線条のループを形成し、それぞれのループを互いに接触させて融着させ3次元構造を形成しつつ、引取り装置で挟み込み冷却槽で冷却せしめた後、得られた3次元構造体の上、下両面又は片面に天然繊維を主たるマトリックスとしたウェッブを積層し、全面を側地で被いキルティング縫製することを特徴とするマットの製法であり、製品化に至る任意の工程で網状体を構成する熱可塑性弾性樹脂の融点より少なくとも10℃以下の温度でアニ−リングよる疑似結晶化処理を行うマットの製法である。
【0010】
本発明における熱可塑性弾性樹脂とは、ソフトセグメントとして分子量300〜5000のポリエ−テル系グリコ−ル、ポリエステル系グリコ−ル、ポリカ−ボネ−ト系グリコ−ルまたは長鎖の炭化水素末端をカルボン酸または水酸基にしたオレフィン系化合物等をブロック共重合したポリエステル系エラストマ−、ポリアミド系エラストマ−、ポリウレタン系エラストマ−、ポリオレフィン系エラストマ−などが挙げられる。熱可塑性弾性樹脂とすることで、再溶融により再生が可能となるため、リサイクルが容易となる。例えば、ポリエステル系エラストマ−としては、熱可塑性ポリエステルをハ−ドセグメントとし、ポリアルキレンジオ−ルをソフトセグメントとするポリエステルエ−テルブロック共重合体、または、脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするポリエステルエステルブロック共重合体が例示できる。ポリエステルエ−テルブロック共重合体のより具体的な事例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン2・6ジカルボン酸、ナフタレン2・7ジカルボン酸、ジフェニル4・4’ジカルボン酸等の芳香8ジカルボン酸、1・4シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、琥珀酸、アジピン酸、セバチン酸ダイマ−酸等の脂肪族ジカルボン酸または、これらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジカルボン酸の少なくとも1種と、1・4ブタンジオ−ル、エチレングリコ−ル、トリメチレングリコ−ル、テトレメチレングリコ−ル、ペンタメチレングリコ−ル、ヘキサメチレングリコ−ル等の脂肪族ジオ−ル、1・1シクロヘキサンジメタノ−ル、1・4シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂環族ジオ−ル、またはこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジオ−ル成分の少なくとも1種、および平均分子量が約300〜5000のポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体からなるグリコ−ル等のポリアルキレンジオ−ルのうち少なくとも1種から構成される三元ブロック共重合体である。ポリエステルエステルブロック共重合体としては、上記ジカルボン酸とジオ−ル及び平均分子量が約300〜5000のポリラクトン等のポリエステルジオ−ルのうち少なくとも各1種から構成される三元ブロック共重合体である。熱接着性、耐加水分解性、伸縮性、耐熱性等を考慮すると、ジカルボン酸としてはテレフタル酸、または、及びナフタレン2・6ジカルボン酸、ジオ−ル成分としては1・4ブタンジオ−ル、ポリアルキレンジオ−ルとしてはポリテトラメチレングリコ−ルの3元ブロック共重合体または、ポリエステルジオ−ルとしてポリラクトンの3元ブロック共重合体が特に好ましい。特殊な例では、ポリシロキサン系のソフトセグメントを導入したものも使うこたができる。また、上記エラストマ−に非エラストマ−成分をブレンドされたもの、共重合したもの、ポリオレフィン系成分をソフトセグメントにしたもの等も本発明の熱可塑性弾性樹脂に包含される。ポリアミド系エラストマ−としては、ハ−ドセグメントにナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12等及びそれらの共重合ナイロンを骨格とし、ソフトセグメントには、平均分子量が約300〜5000のポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体からなるグリコ−ル等のポリアルキレンジオ−ルのうち少なくとも1種から構成されるブロック共重合体を単独または2種類以上混合して用いてもよい。更には、非エラストマ−成分をブレンドされたもの、共重合したもの等も本発明に使用できる。ポリウレタン系エラストマ−としては、通常の溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)の存在または不存在下に、(A)数平均分子量1000〜6000の末端に水酸基を有するポリエ−テル及び又はポリエステルと(B)有機ジイソシアネ−トを主成分とするポリイソシアネ−トを反応させた両末端がイソシアネ−ト基であるプレポリマ−に、(C)ジアミンを主成分とするポリアミンにより鎖延長したポリウレタンエラストマ−を代表例として例示できる。(A)のポリエステル、ポリエ−テル類としては、平均分子量が約1000〜6000、好ましくは1300〜5000のポリブチレンアジペ−ト共重合ポリエステルやポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体からなるグリコ−ル等のポリアルキレンジオ−ルが好ましく、(B)のポリイソシアネ−トとしては、従来公知のポリイソシアネ−トを用いることができるが、ジフェニルメタン4・4’ジイソシアネ−トを主体としたイソシアネ−トを用い、必要に応じ従来公知のトリイソシアネ−ト等を微量添加使用してもよい。(C)のポリアミンとしては、エチレンジアミン、1・2プロピレンジアミン等公知のジアミンを主体とし、必要に応じて微量のトリアミン、テトラアミンを併用してもよい。これらのポリウレタン系エラストマ−は単独又は2種類以上混合して用いてもよい。なお、本発明の熱可塑性弾性樹脂の融点は耐熱耐久性が保持できる140℃以上が好ましく、160℃以上のものを用いると耐熱耐久性が向上するのでより好ましい。なお、本発明のベットマットを構成する網状体は好ましい実施形態として難燃性を付与するため燐系化合物を含有させるので、熱安定性が難燃剤を含有しないものよりやや劣るので、必要に応じ、抗酸化剤等を添加して耐熱性や耐久性を向上させるのが特に好ましい。抗酸化剤は、好ましくはヒンダ−ド系抗酸化剤としては、ヒンダ−ドフェノ−ル系とヒンダ−ドアミン系があり、窒素を含有しないヒンダ−ドフェノ−ル系抗酸化剤を1%〜5%添加して熱分解を抑制すると燃焼時の致死量が少ない有毒ガスの発生を抑えられるので特に好ましい。本発明の目的である好ましい耐久性とクッション性を兼備できるマット類になるクッション層を構成する熱可塑性弾性樹脂の後述する方法で測定した伸長回復性は、室温での300%伸長後の回復率(室温伸長回復率)は20%以上、70℃での10%伸長を24時間保持した後の回復率(70℃伸長回復率)は30%以上であり、より好ましくは、室温伸長回復率が30%以上、70℃伸長回復率が40%以上であり、最も好ましくは、室温伸長回復率が40%以上、70℃伸長回復率が50%以上とする。このような伸長回復性を付与する成分を構成する熱可塑性弾性樹脂のソフトセグメント含有量は好ましくは15重量%以上、より好ましくは30重量%以上であり、耐熱耐へたり性からは80重量%以下が好ましく、より好ましくは70重量%以下である。即ち、本発明の弾性網状体の振動や応力の吸収機能をもたせる成分のソフトセグメント含有量は好ましくは15重量%以上80重量%以下であり、より好ましくは30重量%以上70重量%以下である。
【0011】
本発明マットの好ましい実施形態として難燃性を付与する必要から、熱可塑性弾性樹脂中に燐含有量(Bppm)がソフトセグメント含有量(A重量%)に対し、60A+200≦B≦100000の関係を満足するのが良い。満足しない場合は難燃性が劣る場合がある。100000ppmを越えると可塑化効果による塑性変形が大きくなり熱可塑性弾性樹脂の耐熱性が劣るので好ましくない。好ましい燐含有量(Bppm)はソフトセグメント含有量(A重量%)に対して、30A+1800≦B≦100000であり、より好ましい燐含有量(Bppm)はソフトセグメント含有量(A重量%)に対し、16A+2600≦B≦50000である。難燃性は多量のハロゲン化物と無機物を添加して高度の難燃性を付与する方法があるが、燃焼時に致死量の少ない有毒なハロゲンガスを多量に発生し、火災時の中毒の問題があり、焼却時には、焼却炉の損傷が大きくなるので、本発明では、好ましいハロゲン化物の含有量は10重量%以下、より好ましいハロゲン化物の含有量は5重量%以下、最も好ましくはハロゲン化物を含有しないものである。本発明の燐系難燃剤としては、例えば、ポリエステル系熱可塑性弾性樹脂の場合、樹脂重合時に、ハ−ドセグメント部分に難燃剤として、例えば特開昭51−82392号公報等に記載された10〔2・3・ジ(2・ヒドロキシエトキシ)−カルボニルプロピル〕9・10・ジヒドロ・9・オキサ・10ホスファフェナレンス・10オキシロ等のカルボン酸をハ−ドセグメントの酸成分の一部として共重合したポリエステル系熱可塑性弾性樹脂とする方法や、熱可塑性弾性樹脂に後工程で、例えば、トリス(2・4−ジ−t−ブチルフェニル)フスファイト等の燐系化合物を添加して難燃性を付与することができる。その他、難燃性を付与できる難燃剤としては、各種燐酸エステル、亜燐酸エステル、ホスホン酸エステル(必要に応じハロゲン元素を含有する上記燐酸エステル類)、もしくはこれら燐化合物から誘導される重合物が例示できる。本発明は、熱可塑性弾性樹脂中に各種改質剤、添加剤、着色剤等を必要に応じて添加できる。本発明ベットマットを構成するクッション層の網状体やワディング層の接着成分に難燃性を付与するために燐を含有させており、この理由は、上記している如く、安全性の観点から、火災時に発生するシアンガス、ハロゲンガス等の致死量の少ない有毒ガスをできるだけ少なくすることにある。このため、本発明マット類を構成する網状体の燃焼ガスの毒性指数は、好ましくは6以下、より好ましくは5.5以下である。ワディング層の燃焼ガスの毒性指数は好ましくは12以下、より好ましくは10以下、最も好ましくは7以下である。毒性指数を低減化できる天然繊維としてはセルロ−ズ系が最も好ましく、蛋白質系繊維の絹、羊毛、羽毛等を用いる場合は、熱接着繊維やマトリックスに混合される繊維に毒性指数の低いポリエステル系繊維の混率を出来るだけ高くするのが望ましい。また、側地にもポリエステル繊維の混率が高いものを使用するのが好ましい。クッション層の網状体を構成する熱可塑性弾性樹脂は、同一種類に統一するのが好ましい。例えばポリエステル系熱可塑性弾性樹脂とすることで、クッション層は個々に分別せずに再生リサイクルができる。
【0012】
本発明のマットを構成する熱可塑性弾性樹脂からなる成分は、示差走査型熱量計にて測定した融解曲線において、融点以下に吸熱ピ−クを有するのが好ましい。融点以下に吸熱ピ−クを有するものは、耐熱耐へたり性が吸熱ピ−クを有しないものより著しく向上する。例えば、本発明の好ましいポリエステル系熱可塑性樹脂として、ハ−ドセグメントの酸成分に剛直性のあるテレフタル酸やナフタレン2・6ジカルボン酸などを90モル%以上含有するもの、より好ましくはテレフタル酸やナフタレン2・6ジカルボン酸の含有量は95モル%以上、特に好ましくは100モル%とグリコ−ル成分をエステル交換後、必要な重合度まで重合し、次いで、ポリアルキレンジオ−ルとして、好ましくは平均分子量が500以上5000以下、特に好ましくは1000以上3000以下のポリテトラメチレングリコ−ルを15重量%以上70重量%以下、より好ましくは30重量%以上60重量%以下共重合量させた場合、ハ−ドセグメントの酸成分に剛直性のあるテレフタル酸やナフタレン2・6ジカルボン酸の含有量が多いとハ−ドセグメントの結晶性が向上し、塑性変形しにくく、かつ、耐熱抗へたり性が向上するが、溶融熱接着後更に融点より少なくとも10℃以上低い温度でアニ−リング処理するとより耐熱抗へたり性が向上する。圧縮歪みを付与してからアニ−リングすると更に耐熱抗へたり性が向上する。このような処理をした網状体を示差走査型熱量計で測定した融解曲線に室温以上融点以下の温度で吸熱ピークをより明確に発現する。なおアニ−リングしない場合は融解曲線に室温以上融点以下に吸熱ピ−クを発現しない。このことから類推するに、アニ−リングにより、ハ−ドセグメントが再配列され、疑似結晶化様の架橋点が形成され、耐熱抗へたり性が向上しているのではないかとも考えられる。(この処理を疑似結晶化処理と定義する)この疑似結晶化処理効果は、ポリアミド系弾性樹脂やポリウレタン系弾性樹脂にも有効である。
【0013】
本発明に於ける天然繊維とは、綿、麻、椰子殻繊維、ジュ−ト等セルロ−ス系繊維や、羊毛、絹、羽毛等の蛋白質系繊維などの天然に産する有機繊維を言う。本発明で言う、天然繊維を主たるマトリックスとするとは、マトリックス繊維の少なくとも50重量%以上が天然繊維からなる系を言う。天然繊維の吸湿性や吸水性を充分発揮させるには本発明では、マトリックス繊維中に占める天然繊維の混率は50%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは100%である。しかして、本発明では、洗濯を可能とすることに配慮するため、洗濯後の水切り性と乾燥速度を配慮して、平衡水分率の少ない合成繊維を混合して乾燥速度を高める必要から、平衡水分率の少ない合成繊維の混率は、好ましくは少なくとも15重量%以上、より好ましくは30重量%以上50重量%未満である。他方、火災時の安全性に燃焼ガスの毒性があり、燃焼ガスの毒性を低減させるには、セルロ−ズ系繊維が好ましく、蛋白質系繊維を用いる場合は、前述の如く、毒性指数の低い合成樹脂の繊維を混合して毒性指数を低減させるのが望ましい。本発明では、ワディング層の毒性指数は、少なくとも15以下、好ましくは10以下、より好ましくは7以下である。しかして、蛋白質系繊維は難燃性も有するので、本発明では、ワディング層中の天然繊維は少なくとも50%以上含有させる。本発明の好ましい実施形態では、天然繊維を所望に応じ、難燃化処理、低収縮化処理等各種の処理により、所望の機能を付加した天然繊維を用いることが望ましい。
【0014】
本発明における合成樹脂は熱可塑性樹脂を言う。熱可塑性樹脂とは、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等が例示できる。なお、本発明ではガラス転移点温度が少なくとも40℃以上のものを使用するのが好ましい。例えば、ポリエステルでは、ポリエチレンテレフタレ−ト(PET)、ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレ−ト(PCHDT)、ポリシクロヘキシレンジメチレンナフタレ−ト(PCHDN)、ポリブチレンテレフタレ−ト(PBT)、ポリブチレンナフタレ−ト(PBN)、ポリアリレ−ト等、及びそれらの共重合ポリエステル等が例示できる。ポリアミドでは、ポリカプロラクタム(NY6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(NY66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(NY6−10)等が例示できる。ポリオレフィンとしては、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン・1(PB・1)等が例示できる。本発明に用いる熱可塑性樹脂としては、クッション層及び側地にポリエステルを用いる場合は、廃棄する場合に分離すればリサイクルが可能で、耐熱性も良好なPET、PEN、PBN、PCHDT等のポリエステルが特に好ましい。更には、PET、PEN、PBN、PCHDT等と重縮合して燐含有エステル形成性化合物を共重合または燐含有難燃剤を含有してなる難燃性ポリエステル(以下難燃性ポリエステルと略す)が好ましく、例えば、特開昭51−82392号公報、特開昭55−7888号公報、特公昭55−41610号公報等に例示されたものが挙げられる。なお、塩化ビニ−ルは自己消火性を有するが燃焼すると有毒ガスを多く発生すること、及び耐熱耐久性が劣るので本発明に用いるのは好ましくない。
【0015】
本発明マットの基本のクッション層は、繊径が5mm以下の熱可塑性弾性樹脂からなる連続した線条を曲がりくねらせ互いに接触させて該接触部の大部分が融着一体化された3次元立体構造体を形成し、両面が実質的にフラット化された網状体のため、ワディング層を介して外部から与えられた変形、特には局部的に大きい変形応力が与えられた場合でも、フラット化された網状体の面で変形応力を受け止め変形応力を分散させ、熱可塑性弾性樹脂からなる線条が3次元立体構造体を形成し融着一体化されているので、構造体全体が変形してエネルギ−変換により変形応力を吸収させることによりゴム弾性による低い反発力で変形応力を受け止めるので、極端な局部的沈み込みを防止し、人体に対し柔らかな把持力で体型を支えることができる好ましい体型保持機能を発現する。ベット用マットでは振動吸収機能も要求される。本発明の網状体からなるクッション層は、ベットイン時や寝返り時に外部から与えられた振動を熱可塑性弾性樹脂の振動吸収機能で大部分の振動を吸収減衰し、好ましい振動吸収機能も発現する。変形応力が解除されると熱可塑性弾性樹脂のゴム弾性で容易に元の形態に回復する機能があるので耐へたり性も良好である。更に、空隙率が高く、通気孔径が著しく大きいので通気抵抗が低く通気性が著しく良好であり、寝返り等による変形応力の変化を受けると熱可塑性弾性樹脂のゴム弾性を有する線条が3次元立体構造体を形成し融着一体化されているので、構造体全体が変形により圧縮回復してワディング層を介して透過したクッション層中に溜まった蒸気や熱を含む空気を圧縮時排出し、回復時新鮮な外気と入替えるポンプ機能を有するため、ワディング層とクッション層間の熱及び蒸気の移動が容易となり蒸れ難くい快適な寝心地を提供できるマットである。この目的から、本発明の網状体を形成する振動吸収性と弾性回復性の良い熱可塑性弾性樹脂からなる線条の線径は5mm以下である。見掛け密度を0.2g/cm2 以下にした場合、5mmを越えると構成本数が少なくなり、密度斑を生じて部分的に耐久性の悪い構造ができ、応力集中による疲労が大きくなり耐久性が低下するので好ましくない。本発明の熱可塑性弾性樹脂からなる線条の線径が細すぎると抗圧縮性が低くなり過ぎて変形による応力吸収性が低下するので0.01mm以上であり、構成本数の低下による構造面の緻密性を損なわない3mm以下である。より好ましくは0.05mm以上、2mm以下である。本発明の網状体を形成する連続線条のランダムループの平均直径は好ましくは、50mm以下、特に2〜25mmとするのが目的を達成するためには好ましい。本発明の網状体の見掛け密度は、0.005g/cm3 では反発力が失われ、変形応力吸収能力や振動吸収能力が不充分となりクッション機能を発現させにくくなる場合があり、0.25g/cm3 以上では反発力が高すぎて座り心地が悪くなる場合がある。本発明では、網状体を含めてマット全体をキルティングするので、見掛け密度を0.10g/cm3 以上高くすると針折れが発生する場合がある。この為、キルティング性と軽量化して取扱性を向上させる目的で、本発明の網状体の見掛け密度は0.10g/cm3 以下である。振動吸収能力や変形応力吸収機能が生かせてクッション体としての機能が発現されやすい0.01g/cm3 以上0.08g/cm3 以下が好ましく、より好ましくは0.02g/cm3 以上0.06g/cm3 以下である。本発明における網状体は線径の異なる線状を見掛け密度との組合せで最適な構成とする異繊度積層構造とする方法も好ましい実施形態として選択できる。本発明の網状体の厚みは5mm以上が必要である。厚みが5mm未満では応力吸収機能と応力分散機能が低下するので好ましくない。厚みが200mmを越えるとキルティングが困難となるので好ましくない。好ましい厚みは力の分散をする面機能と振動や変形応力吸収機能が発現でき、キルティングが容易な厚みとして10mm以上100mm以下であり、より好ましくは20mm以上80mm以下である。単板で厚みが500mm以上になると後述する折り曲げ性が低下する。より厚いクッション層を所望する場合は、所望に応じて200mm以下の薄い厚みのクッション層の片面に側地とワディング層をキルティングした層間に単板の厚みが500mm以下、好ましくは200mm以下の網状体を非接合の状態で積層することで折り曲げ性を損なうことを抑え、厚みのあるクッション層のマットを得ることもできる。厚みが500mm以下となるように積層する場合、界面を接合しても良く、非接合でも面がフラットなので応力の伝達が面で伝達されるので変形対応性に支障はない。網状体の表面が実質的にフラット化されてない場合、側地を介してワディング層から伝達される局部的な外力は、変形応力を面で受けることが出来ず、表面の線条及び接着点部分までに選択的に伝達され、変形応力を分散させる機能が低下するので、応力集中が発生する場合があり、このような外力に対しては応力集中による疲労が発生して耐へたり性が低下する場合がある。なお、該線条が熱可塑性弾性樹脂からなる場合は3次元構造部分で構造全体が変形するので応力集中は緩和されるが、へたりが進行するに伴い体型保持機能も低下する。非弾性樹脂では、そのまま応力が接着点に集中して構造破壊を生じ回復しなくなる。又、キルティングの際、著しい針折れがおこりキルティングできないクッション層である。更には、表面が実質的にフラット化されてなく凸凹があると、キルティングすると側地の表面まで凸凹になり、寝た時背部や臀部等に異物感を与えるため寝心地が悪くなり好ましくない。なお、線状が連続していない場合は、線条の接着点が応力の伝達点となるため接着点に著しい応力集中が起こり構造破壊を生じ耐熱耐久性が劣り好ましくない。構造破壊しない段階でも抗圧縮性が劣り、体型保持性が劣る問題があり、この問題を解決するため密度を高くすると、空隙率の低下と共に通気性も低下して快適性が低下し、重量も重くなり取扱性が著しく劣ると共に、キルティングが困難となる。融着していない場合は、形態保持が出来ず、構造体が一体で変形しないため、応力集中による疲労現象が起こり耐久性が劣ると同時に、形態が変形して体型保持ができなくなるので好ましくない。本発明クッション層のより好ましい融着の程度は、線条が接触している部分の大半が融着した状態であり、もっとも好ましくは接触部分が全て融着した状態である。公知の非弾性樹脂のみからなる線条で構成した網状体では、表面層で吸収できない大きい変形応力を受けるとゴム弾性を持たないので変形しにくく大きい反発力を示すため、適度の沈み込みが起こらず、強い反発力を示すので不快な体型支持感を与え好ましくない体型保持機能を発現すると共に圧縮回復によるポンプ機能が殆ど有しないので蒸れ低減化機能が劣る。又、圧縮変形により塑性変形を生じて回復しなくなり耐久性も劣る。更に、キルティングができなきなるのでワディング層の安定性が劣るマットとなる。架橋性発泡ポリウレタンでは、振動吸収機能や耐へたり性は弾性樹脂のため良好でありキルティングも可能だが、応力伝達が容易な構造のため、局部的な変形に容易に追随して極端な局部的沈み込みを発生し、体型保持機能が劣る。又、発泡ポリウレタンは通気性が極めて劣るため蒸れ易く、快適な寝心地が得られないマットとなるクッション層である。本発明のマットは汗や湿気をできるだけ早く皮膚面からワディング層を介して移動させ蒸れ感を与えず、適正な保温性と好ましいフィット感で体型を保持して快適な眠りを永続的に提供するため、天然繊維を主たるマトリックスとした見掛け密度が0.1g/cm3 以下のウエッブからなるワディング層をクッション層の表面側又は、及び裏面側に積層し、全面を編織物からなる側地で被いキルティング縫製したマットである。ウエッブからなるワディング層をクッション層の表面側又は、及び裏面側に積層し、全面を側地で被いキルティング縫製することで、側地とワディング層がクッション層と一体化されたマットとなっているので、変形を側地とクッション層に挟まれてマット全体が変形し、ワディング層単独での変形が起こり難いのでワディング層の耐久性が向上する。又、ワディング層が天然繊維を主たるマトリックスとすることで、天然繊維の優れた吸湿性及び吸水性が、皮膚面で体温まで温度が上昇した汗や水蒸気は、側地を介して皮膚面からワディング層へ移動し、次いでクッション層が新鮮な空気と入れ換えるポンプ機能を持つので、ワディング層に移動した熱と水分はクッション層を介して外部に放出される相乗効果で皮膚面が乾燥すると、水分蒸発による皮膚面の温度低下も伴い蒸れ感を低減させる。しかして、天然繊維が吸水又は吸湿する際には発熱し、熱移動が低下して冷えすぎを防止できる。又、天然繊維は一旦吸水又は吸湿すると一定の蒸気圧を保つので、熱と水分の移動速度が抑制されて、適度の水蒸気圧が皮膚面でも保たれて保温効果を維持させることができる。ワディング層とクッション層間に水蒸気圧差が著しくなり、天然繊維が吸水又は吸湿した水分を効率よくクッション層に排出するのでワディング層の水蒸気圧が極端に高くなることを防止できる。見掛け密度が0.1g/cm3 を越えるとワディング層は通気性が低下し水分の移動が極端に低下するので、水分の移動からの見掛け密度は、好ましくは0.06g/cm3 以下、より好ましくは0.04g/cm3 以下である。かくして、ワディング層とクッション層の相乗効果で蒸れにくく、且つ保温性も優れたマット機能を発現できる。ワディング層の他の機能として、天然繊維間をキルティングにより側地とクッション層間で接合一体化した構造体を形成しているので、キルティング部分は固定されているが、キルティングされていない部分の個々の繊維は変形応力に対する自由度が大きく、局部的な変形応力を受けると繊維の移動が起こり、構造体全体が変形して側地に伝達された応力が、熱可塑性弾性樹脂からなるクッション層でエネルギ−変換により変形応力を吸収されることによりゴム弾性による低い反発力で変形応力を受け止められるので、人体に対し柔らかな把持力で体型を支えられる相乗効果で人体と接する局所的な高圧縮応力点が形成されにくくなり、より鬱血しにくいワディング機能を発現できる。この機能は側地を介して新鮮な空気を皮膚面に送ることにより、更なる相乗効果として床擦れ防止にも有効に作用する。特に顕著なこの様な効果を付与するには、側地を介してワディング層からクッション層側面へ排気される空気の通気度を10cc/cm2 秒以上となる構成にするのが望ましい。なお、本発明のマットを被う側地の通気度は特には制限されないが、床擦れ防止効果を付与するには、ワディング層とクッション層を隔てる編織物の通気度は、好ましくは30cc/cm2 秒以上である。本発明のマットを構成する側地は、マットの側面を、編織物のみで構成し、クッション層と外気間の通気性を向上させることで、クッション層のポンプ機能をより効果的に活用できるので好ましい。本発明のワディング層を構成するウエッブの見掛け密度は高過ぎると高圧縮応力支持面積の増加による鬱血防止機能の低下と通気性が劣り蒸れ防止効果も低下するので見掛け密度が0.1g/cm3 以下が必要である。見掛け密度が低すぎると抗圧縮性が低下してワディング層の機能が低下するので、好ましい見掛け密度は0.01g/cm3 以上0.06g/cm3 以下、より好ましくは見掛け密度は0.03g/cm3 以上0.05g/cm3 以下である。ワディング層の厚みは、2mm未満ではワディング層機能が低下する。30mm以上ではクッション層との相乗効果の有用な前記機能や適度の沈み込みと柔らかい把持力で体を支える体型保持機能や振動吸収機能を低下させる。好ましい厚みは3mm以上15mm以下、より好ましくは5mm以上10mm以下である。本発明のベット類のワディング層に用いるマトリックス繊維中の天然繊維は、前記した如く、洗濯時の乾燥性、難燃性や燃焼ガス毒性以外に、保温性や蒸れにくさを好みに応じてその種類や混率を変えることができる。例えば、比較的冷え性の人が温か目を所望する場合は、マトリックス繊維中の羊毛や真綿(絹)等の蛋白繊維の混率が60%以上が好ましく、80%以上100%がより好ましい。また、柔らかなタッチで且つ保温性の良いものを所望する場合、マトリックス繊維中の真綿(絹)や羽毛の混率が70%以上が好ましく、80%以上100%がより好ましい。他方、やや涼しい寝心地を所望する場合は、マトリックス繊維中の麻や綿等のセルロ−ズ系繊維の混率を高くするのが好ましく、特には埃が少なく、繊維径が太い麻の混率を80%以上とするのがより好ましい。好みに応じて所望の異なるワディング層をクッション層面に積層して夏冬使い分ける等の使用形態もとれる。又、本発明の基本機能を失わない範囲において、クッション層及び、又はワディング層に他の素材が積層されてもかまわない。また、マトリックス繊維中の天然繊維と混繊する繊維は、天然繊維と混繊できる繊維であれば特には制限されない。マトリックス繊維中の天然繊維と混繊する繊維は、ワディング層の天然繊維にない特性を付加するために、例えば、防ダニ剤、抗菌剤、消臭剤、難燃剤、芳香剤等を含有する繊維を混繊して機能を高めたり、撥水性、疎水性等の特性を利用して水切り乾燥性を改善したり、極細繊維や極太繊維を混繊して天然繊維の欠点のかバ−や特徴を倍加する等の機能付与できる繊維を混繊するのが望ましい。該繊維の繊度は所望に応じて選択されるが、通常のカ−ド開繊で使用できる繊度としては、0.5デニ−ルから100デニ−ルである。特別な場合は500デニ−ルまでの繊度が選択できる。素材も必要に応じ選択するが、通常はポリエステル繊維でよい。本発明マットは公知のマット類に較べて洗濯性が良い。即ち、通常の繊維からなるクッション層の繊維径0.001mm以下のもの較べ、本発明のクッション体の大部分を構成するクッション層の線径が0.01mm以上であり、ワディング層のウェッブは繊維の表面せきは大きいが、クッション体全体での平均の構成本数が少ないため、線条の表面積が著しく少ないため線条表面の付着水分が少なくできるので、水切り性に優れる。水切り性が良いので乾燥時間を短縮できる。また、本発明のワディング層を構成するウェッブが、側地とクッション層に挟まれてキルティングされているので、丸洗い洗濯でもウェッブの偏りや絡みつきによるフェルト化が生じにくい。キルティングの細かさは特には限定されないが、好ましくは3cm以上15cm以下のピッチ、より好ましくは5cm以上10cm以下のキルトピッチである。この為、本発明のマットは頻繁に洗濯でき、結果として、清潔なマットを常に使用できる。また、本発明のマットは、クッション層の熱可塑性弾性樹脂の伸縮性と、クッション層と変形自由度の高いウェッブからなるワディング層がキルティングされているので、折り曲げ性をより向上させている。即ち、キルティング部分が折り曲げ点になる機能をはたし、折り曲げ性が向上している。この機能は、頭部や上半身を起こす必要がある介護用等のベットに使用することができる。厚みが薄い敷布団として使用する場合は、折り畳んで収納することも可能である。クッション層が非弾性樹脂で構成されるものは折り曲げが困難である。硬い素材で構成されたものは無理に折り曲げると折り曲げ部が破壊する場合があり、柔らかい素材で構成されたものは塑性変形してクッションが折り曲げ部付近が凹み、繰り返し折り曲げると屈曲疲労で破断するが、変形に対する自由度の高いウェッブからなるワディング層が熱可塑性弾性樹脂からなる本発明のクッション層とキルティングされ接合した積層構造のため、ワディング層が面剛性機能を持てず、折り曲げが可能で、繰り返し折り曲げに対しても、側地とクッション層に挟まれてマットがキルティング点で接合一体化した変形をするので、塑性変形しにくく耐久性に優れる点が本発明と硬綿類と大きく異なる点である。硬綿の折り曲げ性を改良するために、折り曲げ構造とするものが提案されているが、本発明のクッション層と異なりクッション層に非弾性樹脂が使用されているため耐久性が劣るものである。業務用ベットでは、必要に応じて殺菌する場合がある。殺菌は100℃未満のエチレンオキサイドガス又は130℃の蒸気を用いるのが一般的である。本発明マットの好ましい実施形態、例えば、ワディング層の天然繊維を低収縮化処理や形態保持処理や脱スケ−ル処理されたものでは、圧縮応力を付与しないで15分未満で殺菌することで変形させずに殺菌することが可能であるが、公知のオレフィン系や塩化ビニ−ル系素材を用いた場合は、耐熱性が劣り殺菌時の加熱で塑性変形し嵩減りを生じる点が本発明と異なる点である。なお、網状体形成段階から製品化される任意の段階で上述の疑似結晶化処理を施すことにより、網状体中の熱可塑性弾性樹脂からなる成分を示差走査型熱量計で測定した融解曲線に室温以上融点以下の温度に吸熱ピークを持つようにすると熱可塑性弾性樹脂の伸縮性と耐熱性が著しく向上し、製品の耐熱耐久性も格段に向上するのでより好ましい。
【0016】
本発明のクッション層を構成する網状体の線条の断面形状は特には限定されないが、中空断面や異形断面にすることで好ましい抗圧縮性(反発力)やタッチを付与することができるので特に好ましい。抗圧縮性は繊径や用いる素材のモジュラスにより調整して、線径を細くしたり、柔らかい素材では中空率や異形度を高くし初期圧縮応力の勾配を調整できるし、線径をやや太くしたり、ややモジュラスの高い素材では中空率や異形度を低くして寝心地が良好な抗圧縮性を付与する。中空断面や異形断面の他の効果として中空率や異形度を高くすることで、同一の抗圧縮性を付与した場合、より軽量化が可能となり、ベット用マットの交換や布団、座布団などの場合は、上げ下ろし時の取扱性が向上する。好ましい抗圧縮性(反発力)やタッチを付与することができる他の好ましい方法として、本発明の網状体の線条を複合構造とする方法がある。複合構造としては、シ−スコア構造またはサイドバイサイド構造及びそれらの組合せ構造などが挙げられる。が、特にはクッション層が大変形してもエネルギ−変換できない振動や変形応力をエネルギ−変換して回復できる立体3次元構造とするために線状の表面の50%以上を柔らかい熱可塑性弾性樹脂が占めるシ−スコア構造またはサイドバイサイド構造及びそれらの組合せ構造などが挙げられる。シ−スコア構造ではシ−ス成分は振動や変形応力をエネルギ−変換が容易なソフトセグメント含有量が多い熱可塑性弾性樹脂とし、コア成分は抗圧縮性を示すソフトセグメント含有量が少ない熱可塑性弾性樹脂で構成し適度の沈み込みによる背部や臀部等の接触部への快適なタッチを与えることができる。サイドバイサイド構造では振動や変形応力をエネルギ−変換が容易なソフトセグメント含有量が多い熱可塑性弾性樹脂の溶融粘度をソフトセグメント含有量が少ない抗圧縮性を示す熱可塑性弾性樹脂の溶融粘度より低くして線状の表面を占めるソフトセグメント含有量が多い熱可塑性弾性樹脂の割合を多くした構造(比喩的には偏芯シ−ス・コア構造のシ−スに熱可塑性弾性樹脂を配した様な構造)として線状の表面を占めるソフトセグメント含有量が多い熱可塑性弾性樹脂の割合を80%以上としたものが特に好ましく、最も好ましくは線状の表面を占めるソフトセグメント含有量が多い熱可塑性弾性樹脂の割合が100%のシ−スコアである。ソフトセグメント含有量が多い熱可塑性弾性樹脂の線状の表面を占める割合が多くなると、溶融して融着するときの流動性が高いので接着が強固になる効果があり、構造が一体で変形する場合、接着点の応力集中に対する耐疲労性が向上し、耐熱性や耐久性がより向上する。本発明のマットは、クッション層の片面に天然繊維を主たるマトリックスとしたウェッブを積層し、他面に硬綿、合成繊維ウエッブ、不織布、編み物、布帛類等を設置し、編織物からなる側地で被いキルティングにより一体化することもできる。本発明マットは、船舶用座席、車両用、船舶用、病院用等の業務用及び家庭用ベット、布団、座蒲団、家具用マット類等に特に有用であるが、車両用座席、家具用椅子、事務用椅子等のクッション体としても有用である。
【0017】
次に本発明の製法を述べる。複数のオリフィスを持つ多列ノズルより熱可塑性弾性樹脂をその融点より20℃から80℃高い溶融温度で、該ノズルより下方に向けて吐出させ、溶融状態で互いに接触させて融着させ3次元構造を形成しつつ、引取り装置で挟み込み冷却槽で冷却せしめた後、両面又は片面に天然繊維をマトリックスとしたウェッブを積層し、全面を編織物からなる側地で被いキルチィング縫製するマットの製法であり、製品化に至る任意の工程で網状体を構成する熱可塑性弾性樹脂の融点より少なくとも10℃以下の温度でアニ−リングよる疑似結晶化処理を行うマットの製法である。網状体は、熱可塑性弾性樹脂を一般的な溶融押出機を用いて溶融し、複数のオリフィスを持つ多列ノズルに供給し、オリフィスより下方へ吐出する。この時の溶融温度は、熱可塑性弾性樹脂の融点より20℃〜80℃高い温度である。熱可塑性弾性樹脂の融点より80℃を越える高い溶融温度にすると熱分解が著しくなり熱可塑性弾性樹脂のゴム弾性特性が低下するので好ましくない。他方、熱可塑性弾性樹脂の融点より10℃以上高くしないとメルトフラクチャ−を発生し正常な線条形成が出来なくなり、また、吐出後ル−プ形成しつつ接触させ融着させる際、線条の温度が低下して線条同士が融着しなくなり接着が不充分な網状体となる場合があり好ましくない。好ましい溶融温度は融点より20℃から60℃高い温度、より好ましくは融点より25℃から40℃高い温度である。オリフィスの形状は特に限定されないが、中空断面(例えば三角中空、丸型中空、突起つきの中空等となるよう形状)及び、又は異形断面(例えば三角形、Y型、星型等の断面二次モ−メントが高くなる形状)とすることで前記効果以外に溶融状態の吐出線条が形成する3次元構造が流動緩和し難くし、逆に接触点での流動時間を長く保持して接着点を強固にできるので特に好ましい。特開平1−2075号公報に記載の接着のための加熱をする場合、3次元構造が緩和し易くなり平面的構造化し、3次元立体構造化が困難となるので好ましくない。網状体の特性向上効果としては、見掛けの嵩を高くでき軽量化になり、また抗圧縮性が向上し、弾発性も改良できへたり難くなる。中空断面では中空率が80%を越えると断面が潰れ易くなるので、好ましくは軽量化の効果が発現できる10%以上70%以下、より好ましくは20%以上60%以下である。オリフィスの孔間ピッチは線状が形成するル−プが充分接触できるピッチとする必要がある。緻密な構造にするには孔間ピッチを短くし、粗密な構造にするには孔間ピッチを長くする。本発明の孔間ピッチは好ましくは3mm〜20mm、より好ましくは5mm〜10mmである。本発明では所望に応じ異密度化や異繊度化もできる。列間のピッチ又は孔間のピッチも変えた構成、及び列間と孔間の両方のピッチも変える方法などで異密度層を形成できる。また、オリフィスの断面積を変えて吐出時の圧力損失差を付与すると、溶融した熱可塑性弾性樹脂を同一ノズルから一定の圧力で押し出される吐出量が圧力損失の大きいオリフィスほど少なくなる原理を使って長手方向の区間でオリフィスの断面積が異なる列を少なくとも複数有するノズルを用い異繊度線条からなる網状構造体を製造することができる。次いで、該ノズルより下方に向けて吐出させ、ル−プを形成させつつ溶融状態で互いに接触させて融着させ3次元構造を形成しつつ、引取りネットで挟み込み、網状体の表面の溶融状態の曲がりくねった吐出線条を45°以上折り曲げて変形させて表面をフラット化すると同時に曲げられていない吐出線条との接触点を接着して構造を形成後、連続して冷却媒体(通常は室温の水を用いるのが冷却速度を早くでき、コスト面でも安くなるので好ましい)で急冷して本発明の3次元立体網状構造体化した網状体を得る。ノズル面と引取り点の距離は少なくとも40cm以下にすることで吐出線条が冷却され接触部が融着しなくなることを防ぐのが好ましい。吐出線条の吐出量5g/分孔以上と多い場合は10cm〜40cmが好ましく、吐出線条の吐出量5g/分孔未満と少ない場合は5cm〜20cmが好ましい。網状体の厚みは溶融状態の3次元立体構造体両面を挟み込む引取りネットの開口幅(引取りネット間の間隔)で決まる。本発明では上述の理由から引取りネットの開口幅は5mm以上とする。次いで水切り乾燥するが冷却媒体中に界面活性剤等を添加すると、水切りや乾燥がしにくくなったり、熱可塑性弾性樹脂が膨潤することもあり好ましくない。尚、ノズル面と樹脂を固化させる冷却媒体上に設置した引取りコンベアとの距離、樹脂の溶融粘度(網状体形成時の溶融粘度は好ましくは500ポイズから10000ポイズであり、20000ポイズを越えるとル−プ形成速度が遅くなり、緻密な網状構造を形成しにくくなるので好ましくない。)、オリフィスの孔径と吐出量などにより所望のループ径や線径をきめられる。冷却媒体上に設置した間隔が調整可能な一対の引取りコンベアで溶融状態の吐出線条を挟み込み停留させることで互いに接触した部分を融着させつつ、連続して冷却媒体中に引込み固化させ網状体を形成する時、上記コンベアの間隔を調整することで、融着した網状体が溶融状態でいる間で厚み調節が可能となり、所望の厚みのものが得られる。コンベア速度も速すぎると、接触点の形成が不充分になったり、融着点が充分に形成されるまでに冷却され、接触部の融着が不充分になる場合がある。また、速度が遅過ぎると溶融物が滞留し過ぎ、密度が高くなるので、所望の見掛け密度に適したコンベア速度を設定する必要がある。次いで本発明では、該網状体を一旦冷却後、連続して、又は、非連続に疑似結晶化処理を行い所定の大きさに切断して、又は、切断後疑似結晶化処理される。他方、ワディング層のマトリックスに混綿する天然繊維以外の合成樹脂からなるマトリックス繊維(合成繊維)は公知の方法で得られるステープルなら良いが、好ましくは、熱可塑性非弾性樹脂を非対象冷却法又は複合紡糸法により潜在捲縮能を付与し、延伸後熱処理により立体捲縮を発現させて切断または、切断後熱処理して立体捲縮を発現させて得るのが好ましい。合成繊維は耐へたり性と耐熱性も要求されるので、初期引張り抵抗度が少なくとも35g/デニ−ル以上で、70℃での初期引張り抵抗度が少なくとも10g/デニ−ル以上にしたものが好ましい。嵩高性と抗圧縮性からの立体捲縮の捲縮度は15%以上、捲縮数は10〜25個/インチが好ましい。かくして得られた合成繊維はワディング層の主たるマトリックスである天然繊維と所望の配合量にて混合開繊する。天然繊維と合成繊維は混合比率を100/0〜50/50重量比として、オ−プナ−等で予備開繊混合した後カ−ド等で開繊し、3次元化構造とした開繊ウエッブを形成し、厚みが3mmから10mmとした時、見掛け密度が0.1g/cm3 以下、好ましくは、見掛け密度が0.01g/cm3 から0.06g/cm3 となるように積層したウェッブをワディング層として、該網状体の表面及び、又は裏面に積層し、次いで、全面を側地となる編織物で被い、見掛け密度が0.1g/cm3 以下、好ましくは、見掛け密度が0.01g/cm3 から0.06g/cm3 となるように圧縮しながらキルティング縫製され、本発明のマットを得る。本発明マットは、マットの側面が編織物のみが設置されるように構成することで、側面の通気性を高めて新鮮な外気を入替えるクッション層のポンプ機能をより高められるので好ましい。側地は、先にマットの所定の形状に縫製されたものを、クッション層とワディング層を積層したクッション体に被せて挿入口を綴じ、次いでキルティングを施してもよい。キルティングは、クッション体の厚みが7〜8cmまでは通常のミシンでキルティングできるが、押さえながらキルティングしても厚みが10cm以上では、ストロークの10cm以上取れるミシンを用い、縫い針も12cm以上の特殊なものを使かってキルティングする必要がある。キルティングのピッチは所望に応じて設定する。通常、5cm以上20cm未満の間隔でクロスするようにキルトする。側面の側地の処理は角部を他の布帛を被せてパイピング縫いにしてもよい。なお、本発明における結晶化処理は、製品化に至る任意の工程で熱可塑性弾性樹脂の少なくとも融点(Tm)より10℃以上低く、Tanδのα分散立ち上がり温度(Tαcr)以上で行う。この処理で、融点以下に吸熱ピ−クを持ち、疑似結晶化処理しないもの(吸熱ピ−クを有しないもの)より耐熱耐へたり性が著しく向上する。本発明の好ましい疑似結晶化処理温度は(Tαcr+10℃)から(Tm−20℃)である。単なる熱処理により疑似結晶化させると耐熱耐へたり性が向上する。が更には、10%以上の圧縮変形を付与してアニ−リングすることで耐熱耐へたり性が著しく向上するのでより好ましい。
また、該網状体を一旦冷却後、乾燥工程を経する場合、乾燥温度をアニ−リング温度とすることで同時に疑似結晶化処理を行うができる。また、製品化する工程で別途疑似結晶化処理を行うができる。
【0018】
本発明のマットは、ベット、敷布団、座蒲団、家具用マット等以外に、クッション体のみ、又はクッション層をその機能を利用して用いることが出来る。例えば、3次元構造を損なわない程度に成形型等を用いて使用目的にあった形状に成形して側地を被せるのみで車両用座席、船舶用座席、椅子、家具等に用いることができる。勿論、用途との関係で要求性能に合うべき他の素材、例えば、異なる網状体、短繊維集合体からなる硬綿クッション材、不織布等と組合せて用いることも可能である。また、樹脂製造過程以外でも性能を低下させない範囲で製造過程から成形体に加工し、製品化する任意の段階で難燃化、防虫抗菌化、耐熱化、撥水撥油化、着色、芳香等の機能付与を薬剤添加等の処理加工ができる。
【0019】
【実施例】
以下に実施例で本発明を詳述する。
【0020】
なお、実施例中の評価は以下の方法で行った。
1. 融点(Tm)および融点以下の吸熱ピ−ク
島津製作所製TA50,DSC50型示差熱分析計を使用し、昇温速度20℃/分で測定した吸発熱曲線から吸熱ピ−ク(融解ピ−ク)温度を求めた。
2. Tαcr
ポリマ−を融点+10℃に加熱して、厚み約300μm のフイルムを作成して、オリエンテック社製バイブロンDDVII型を用い、110Hz、昇温速度1℃/分で測定したTanδ(虚数弾性率M”と弾性率の実数部分M’との比M”/M’)のゴム弾性領域から融解領域への転移点温度に相当するα分散の立ち上がり温度。
3. 室温伸長回復率
ポリマ−を融点+10℃に加熱して、厚み約300μm のフイルムを作成して、オリエンテック社製テンシロンUTM4型を用い、伸長速度100%にて300%伸長後歪みを0%に戻し、2分間放置後再度破断まで伸長させた時の、再度伸長時に応力が発現する伸長率を300%から差し引いた伸長率を300%で除した値を%で示す。(n=3)
4. 70℃伸長回復率
ポリマ−を融点+10℃に加熱して、厚み約300μm のフイルムを作成して、オリエンテック社製テンシロンUTM4型を用い、70℃雰囲気にした加熱オーブン中で伸長速度100%にて10%伸長歪みを付与して24時間保持した後、歪みを0%に戻し、5分間放置後再度破断まで伸長させた時の、再度伸長時に応力が発現する伸長率を10%から差し引いた伸長率を10%で除した値を%で示す。(n=3)
5. 見掛け密度
試料を15cm×15cmの大きさに切断し、4か所の高さを測定し、体積を求め試料の重さを体積で徐した値で示す。(n=4の平均値)
6. 線条の繊径
試料を10箇所から各線条部分を切り出し、アクリル樹脂で包埋して断面を削り出し切片を作成して断面写真を得る。拡大した断面写真より線径を求め、拡大倍率で叙した値(n=10の平均値)
7. 融着
試料を目視判断で融着しているか否かを接着している繊維同士を手で引っ張って外れないか否かで外れないものを融着していると判断する。
8. 耐熱耐久性(70℃残留歪)
試料を15cm×15cmの大きさに切断し、50%圧縮して70℃乾熱中22時間放置後冷却して圧縮歪みを除き1日放置後の厚みと処理前の厚みの差と処理前の厚みとの比を%で示す(n=3の平均値)
9. 繰返し圧縮歪
試料を15cm×15cmの大きさに切断し、島津製作所製サ−ボパルサ−にて、25℃65%RH室内にて50%の厚みまで1Hzのサイクルで圧縮回復を繰り返し2万回後の試料を1日放置後の厚みと処理前の厚みの差と処理前の厚みとの比を%で示す。(n=3の平均値)
10.通気度
側地は、直接側地を株式会社テクノワ−ルド社製(コスモ計器設計品)通気量測定器、高圧タイプを用い測定した通気量(cc/cm2 秒)を通気度として示す。側地からワディング層を介して網状体に排出できる通気量は、ワディング層の片面を編織物で被われた試料を直径10cmの円筒状に打ち抜き、側面をシ−ルできる試料厚みに相当する高さの内径10cmの金属筒に5%圧縮した状態で入れ、上下を5%圧縮厚み分のパッキンでシ−ルして横漏れしないようにしたサンプルを作成し、株式会社テクノワ−ルド社製(コスモ計器設計品)通気量測定器、高圧タイプを用い測定した通気量(cc/cm2 秒)を通気度として示す。
11.折り曲げ性
作成したマットを水平面から片端を抑えて押し出し、45°に切り欠いた勾配面に接するまでの長さを以下の基準で示す。100cm未満:◎、130cm未満:○、150cm未満:△、150cm以上:×
12.水切り性
作成したマットの重量を測定後に水槽に浸して10分後に取り出し、できるだけ水切りして、30℃RH65%の雰囲気の室内で壁に立てかけ24時間放置後の重量を測定して残留水分の量を求め、以下の基準で評価した。残留水分が5%以下:◎、残留水分が7%以下:○、残留水分が10%以下:△、残留水分が10%以上:×
13.寝心地
作成したマットをベットフレ−ムにセットして、28℃RH75%室内でパネラ−を寝かせて以下の評価をおこなった。(n=5)なお、ベットマット上にはシ−ツを敷き、掛け布団にはダウン/フェザ−:90/10混合羽毛1.8kg入り、枕は自宅で使用中のものを使用させた。
(1) 違和感:寝たときの「背中に感じる違和感」の程度を感覚的に定性評価した。感じない;◎、殆ど感じない;○、やや感じる;△、感じる;×
(2) 沈み込み:寝たときの体型保持状況の程度を感覚的に定性評価した。適度の沈み込みで非常に心地よい;◎、沈み込みやや少又はやや大で心地良い;○、沈み込み小又は大で心地よさにやや欠ける;△、沈み込み過ぎ又は沈み込まないで心地よさを感じない;×
(3) 蒸れ感:2時間寝ていて、臀部や背中等のベットマットと接する部分に感じる蒸れ感を感覚的に定性評価した。殆ど感じない:◎、僅かに蒸れを感じる;○、やや蒸れを感じる;△、蒸れを著しく感じる;×
(4) 体圧の圧迫感:寝てから動かないでどの程度我慢していられるか:30分以内;×、1時間以内;△、2時間以内;○、2時間以上;◎
(5) 総合評価: (1)から(5) までの評価の◎を4点、○を3点、△を2点、×を1点として12点以上で△を含まないもの;非常に良い(◎)、12点以上で△を含むもの;良い(○)、10点以上で×を含まないもの;やや悪い(△)、×を含むもの;悪い(×)として評価した。
【0021】
実施例1
ポリエステル系エラストマ−として、ジメチルテレフタレ−ト(DMT)又は、ジメチルナフタレ−ト(DMN)と1・4ブタンジオ−ル(1・4BD)を少量の触媒と仕込み、常法によりエステル交換後、ポリテトラメチレングリコ−ル(PTMG)を添加して昇温減圧しつつ重縮合せしめポリエ−テルエステルブロック共重合エラストマ−を生成させ、次いで抗酸化剤1%及び難燃剤10%(燐含有量5000〜10000ppm)を添加混合後ペレット化し、50℃48時間真空乾燥して得られた熱可塑性弾性樹脂原料の処方を表−1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
幅120cm、長さ10cmのノズル有効面に幅方向の孔間ピッチ5mm、長さ方向の孔間ピッチ10mmの千鳥配列としたオリフィス形状は外径2mm、内径1.6mmでトリプルブリッジの中空形成性断面としたノズルに、得られた熱可塑性弾性樹脂原料を別々の押出機にて溶融し、A−1をシ−ス成分に、A−2をコア成分となるようにオリフィス直前で分配し、溶融温度245℃にて単孔当たりの吐出量2.0g/分(A−1:1g/分、A−2:1g/分)にてノズル下方に吐出させ、ノズル面12cm下に冷却水を配し、幅140cmのステンレス製エンドレスネットを平行に10cm間隔で一対の引取りコンベアを水面上に一部出るように配して、該溶融状態の吐出線状を曲がりくねらせル−プを形成して接触部分を融着させつつ3次元網状構造を形成し、該溶融状態の網状体の両面を引取りコンベア−で挟み込みつつ毎分1mの速度で25℃の冷却水中へ引込み固化させ両面をフラット化した後引取り、水切り後、連続して120℃の加熱空気を循環させたセッタ−中を15分間通過させ冷却後、所定の大きさに切断して得た網状体は断面形状がシ−スコア構造の三角おむすび型の中空断面で中空率が40%、線径が1.2mmの融点以外に126℃に吸熱ピープをもつ線条が、形成するル−プの互いの接触点は殆ど融着により接合され、両面は実質的にフラット化され、平均の見掛け密度が0.046g/cm2 、厚み9.5cm、繰返し圧縮歪み2.8%、耐熱耐久性11.2%であった。別途、合成繊維は、常法により、極限粘度0.63と0.56のPETを重量比50/50に分配して単孔当たり3.0g/分孔(1g/分:1g/分)として紡糸温度265℃にて紡糸速度1300m/分で複合紡糸し、次いで、70℃及び180℃にて2段延伸して得た延伸糸を64mmに切断し170℃にてフリ−熱処理して立体捲縮を発現させ、中空断面で中空率32%のシ−スコア構造の繊度6デニ−ル、初期引張り抵抗度38g/デニ−ル、捲縮度20%、捲縮数18個/インチの合成繊維を得た。次いで、マトリックス繊維として、クチクル層表面のエピ層を除去し、難燃加工したメリノ羊毛と合成繊維を85/15重量比で混合し、オ−プナ−にて予備開繊した後カ−ドで開繊して得たウエッブを厚みが8mmとなったときの見掛け密度が0.05g/cm2 となるように該網状体の表裏に積層したクッション体を、東洋紡績製ハイムのポリエステル繊維からなる通気度30cc/cm2秒のブロードを所定の大きさに縫製した側地に挿入し、ウェッブの平均見掛け密度が0.05g/cm2 となるようにやや圧縮しながら10cm間隔の菱形格子状にキルトし、圧縮による弛み分をコ−ナ−部分でパイピング縫製して本発明のベット用マットを得た。得られたベット用マットの評価結果を表2に示す。表2で明らかごとく、耐熱性、耐久性、折り曲げ性、水切り性に優れ、側地の通気性も良く、寝心地の良好なベット用マットである。なお、このベット用マットは難燃性を示し、燃焼ガスの毒性指数は6.0であった。このことから、火災時の安全性も高いベット用マットであることが判る。
【0024】
【表2】
【0025】
実施例2
幅120cm、長さ5cmのノズル有効面に幅方向の孔間ピッチ5mm、長さ方向の孔間ピッチ10mmの千鳥配列としたオリフィス形状は外径1mm丸断面としたノズルに、得られた熱可塑性弾性樹脂原料A−5を押出機にて溶融し、溶融温度245℃にて単孔当たりの吐出量2.0g/分にてノズル下方に吐出させ、ノズル面15cm下に冷却水を配し、幅140cmのステンレス製エンドレスネットを平行に平行に4.5cm間隔で一対の引取りコンベアを水面上に一部出るように配して、該溶融状態の吐出線状を曲がりくねらせル−プを形成して接触部分を融着させつつ3次元網状構造を形成し、該溶融状態の網状体の両面を引取りコンベア−で挟み込みつつ毎分1mの速度で25℃の冷却水中へ引込み固化させ両面をフラット化した後引取り、水切り後、連続して120℃の加熱空気を循環させたセッタ−中を15分間通過させ冷却後、所定の大きさに切断して得た網状体は、断面形状が丸断面で、線径が0.9mmの融点以外に126℃に吸熱ピークをもつ線条が、形成するル−プの互いの接触点は殆ど融着により接合され、両面が実質的にフラット化され、平均の見掛け密度が0.048g/cm2 、厚み4.5cm、繰返し圧縮歪み7.5%、耐熱耐久性18.4%であった。次いで、開繊綿でホルマリン加工したラミ−綿と実施例1で使用した合成繊維を85/15重量比で混合し、オ−プナ−にて予備開繊した後カ−ドで開繊して得たウエッブを見掛け密度が0.05g/cm2 となるように該網状体の表面と裏面に積層したクッション体を、東洋紡績製ハイムのポリエステル繊維からなる通気度30cc/cm2秒のブロードを用いて所定の形状に縫製された側地に挿入し、次いで、ウエッブを見掛け密度が0.05g/cm2 となるように圧縮しつつ8cm間隔の菱形格子状にキルティングして得たベット用マットの評価結果を表2に示す。表2で明らかごとく、耐熱性、耐久性、折り曲げ性、水切り性に優れ、側地の通気性も良く寝心地の良好なベットマットである。なお、このマットは燃焼ガスの毒性指数は5.0であった。このことから、火災時の安全性が良いマットであることが分かる。
【0026】
実施例3
幅120cm、長さ5cmのノズル有効面に幅方向の孔間ピッチ5mm、長さ方向の孔間ピッチ10mmの千鳥配列としたオリフィス形状は外径2mm、内径1.6mmでトリプルブリッジの中空形成性断面としたノズルに、得られた熱可塑性弾性樹脂A−3を押出機にて溶融し、溶融温度235℃にて単孔当たりの吐出量2.0g/分にてノズル下方に吐出させ、ノズル面12cm下に冷却水を配し、幅140cmのステンレス製エンドレスネットを平行に4.5cm間隔で一対の引取りコンベアを水面上に一部出るように配して、該溶融状態の吐出線状を曲がりくねらせル−プを形成して接触部分を融着させつつ3次元網状構造を形成し、毎分1mの速度で25℃の冷却水中へ引込み固化させた後引取り、水切り後、連続して120℃の加熱空気を循環させたセッタ−中を15分間通過させ冷却後、所定の大きさに切断して得た両面が実質的にフラット化された網状体は、断面形状は中空おむすび型断面で、線径が1.2mmの融点以外に126℃に吸熱ピークをもつ線条が、形成するル−プの互いの接触点は殆ど融着により接合され、平均の見掛け密度が0.048g/cm2 、厚み4.5cm、繰返し圧縮歪み5.8%、耐熱耐久性10.8%であった。次いで、カット長65mmに切断した真綿と実施例1で得た合成繊維を70/30重量比で混合し、実施例1と同様にして得たワディング層となるウェッブをクッション層となる網状体の表面及び裏面に積層し、東洋紡績製ハイムのポリエステル繊維からなる通気度30cc/cm2秒のブロードを用いて所定の形状に縫製された側地に挿入し、次いで、ウエッブを見掛け密度が0.05g/cm2 となるように圧縮しつつ8cm間隔の菱形格子状にキルティングして得たベット用マットの評価結果を表2に示す。表2で明らかごとく、耐熱性、耐久性、折り曲げ性、水切り性に優れ、側地の通気性も良く寝心地の良好なベットマットである。なお、このベット用マットは燃焼ガスの毒性指数は5.6であった。このことから、火災時の安全性も良いベット用マットであることが分かる。
【0027】
実施例4
ポリウレタン系エラストマ−として、4・4’ジフェニルメタンジイソシアネ−ト(MDI)とPTMG及び鎖延長剤として1・4BDを添加して重合し次いで抗酸化剤2%を添加混合練込み後ペレット化し真空乾燥してポリエ−テル系ウレタンポリマ−の処方を表3に示す。
【0028】
【表3】
【0029】
得られた熱可塑性弾性樹脂(シ−ス成分:B−1、コア成分:B−2)を溶融温度220℃とした以外実施例1と同様にして得た網状体の線条のシ−スコア構造の断面形状が三角おむすび型の中空断面で中空率40%、線径が1.1mmの融点以外に126℃に吸熱ピークをもつ線条が、形成するル−プの互いの接触点は殆ど融着により接合され、両面が実質的にフラット化され、平均の見掛け密度が0.047g/cm2 、厚み9.5cm、繰返し圧縮歪み3.6%、耐熱耐久性7.5%であった。次いで、実施例2で使用したウェッブを該クッション層に積層したクッション体を、東洋紡績製ハイムのポリエステル繊維からなる通気度30cc/cm2秒のブロードを用いて所定の形状に縫製された側地に挿入し、次いで、ウエッブを見掛け密度が0.05g/cm2 となるように圧縮しつつ8cm間隔の菱形格子状にキルティングして得たベット用マットの評価結果を表2に示す。表2で明らかごとく、耐熱性、耐久性、折り曲げ性、水切り性に優れ、側地の通気性も良く寝心地の良好なベット用マットである。
【0030】
比較例1
メルトインデックス12のポリエチレン(PE)単成分のみを溶融温度を190℃とした以外、実施例2と同様にして得た網状体は、中実丸断面で、線径が1.8mm、の融点以外に吸熱ピークをもたない線条が、形成するル−プの互いの接触点は殆ど融着により接合され、両面が実質的にフラット化され、平均の見掛け密度が0.047g/cm2 、厚み4.5cm、繰返し圧縮歪み39.6%、耐熱耐久性49.8%であった。次いで、精練したインド綿と実施例1で使用した合成繊維を70/30重量比で混合し、オ−プナ−にて予備開繊した後カ−ドで開繊して得たウエッブを厚み6mmとなるときの見掛け密度が0.05g/cm2 となるように積層したワディング層をクッション層の表面及び裏面に積層して得たクッション体を東洋紡績製ハイムのポリエステル繊維からなる通気度30cc/cm2秒のブロードを用いて所定の形状に縫製された側地に挿入し、次いで、ウエッブを見掛け密度が0.05g/cm2 となるように圧縮しつつ8cm間隔の菱形格子状にキルティングして得たベット用マットの評価結果を表2に示す。表2で明らかごとく、非弾性オレフィンからなる網状体のため、水切り性には優れるが、耐熱性、耐久性、折り曲げ性、側地の通気性は良いが蒸れ感以外の寝心地が著しく劣るベットマットであり、難燃性も不合格になり火災時には問題がでるベットマットである。
【0031】
比較例2
幅120cm、長さ10cmのノズル有効面に幅方向の孔間ピッチ5mm、長さ方向の孔間ピッチ10mmの千鳥配列としたオリフィス形状は外径1mm丸断面としたノズルに、得られた熱可塑性弾性樹脂原料A−5を押出機にて溶融し、溶融温度235℃にて単孔当たりの吐出量3.0g/分にてノズル下方に吐出させ、ノズル面5cm下に冷却水を配し、幅140cmのステンレス製エンドレスネットを平行に平行に9.5cm間隔で一対の引取りコンベアを水面上に一部出るように配して、該溶融状態の吐出線状を曲がりくねらせル−プを形成して接触部分を融着させつつ3次元網状構造を形成し、該溶融状態の網状体の両面を引取りコンベア−で挟み込みつつ毎分1mの速度で25℃の冷却水中へ引込み固化させ両面をフラット化した後引取り、水切り後、所定の大きさに切断して得た網状体は、断面形状が丸断面で、線径が5.9mmの融点以外に吸熱ピークをもたない線条が、形成するル−プの互いの接触点は殆ど融着により接合され、両面が実質的にフラット化され、平均の見掛け密度が0.074g/cm2 、厚み9.5cm、繰返し圧縮歪み18.3%、耐熱耐久性28.4%であった。次いで、比較例1と同様にして得たベット用マットの評価結果を表2に示す。表2で明らかごとく、水切り性、蒸れ感の少ない点に優れるが、耐熱性、耐久性、折り曲げ性、蒸れ感以外の寝心地が劣るベット用マットである。なお、このベット用マットの燃焼ガスの毒性指数は5.1であった。
【0032】
比較例3
溶融温度245℃にて、ノズル面30cm下に引取りコンベアネットを配し、引き取り速度を0.3m/分とした以外、比較例2と同様の方法で得た網状体は、断面形状が丸断面で、線径が1.9mmの融点以外に吸熱ピークをもたない線条が、形成するル−プの互いの接触点は殆ど融着により接合され、両面が実質的にフラット化され、平均の見掛け密度が0.24g/cm2 、厚み9.5cm、繰返し圧縮歪み19.8%、耐熱耐久性29.4%であった。次いで、比較例2と同様にして得たベット用マットの評価結果を表2に示す。表2で明らかごとく、水切り性、蒸れ感の少ない点に優れるが、耐熱性、耐久性、折り曲げ性、蒸れ感以外の寝心地が劣るベット用マットである。なお、このベット用マットは燃焼ガスの毒性指数は5.1であった。
【0033】
比較例4
単孔当たりの吐出量0.3g/分とし、ノズル面5cm下に引取りコンベアネットを配し、引き取り速度を1.9m/分とした以外、比較例3と同様の方法で得た網状体は、断面形状が丸断面で、線径が0.4mmの融点以外に吸熱ピークをもたない線条が、形成するル−プの互いの接触点は殆ど融着により接合され、両面が実質的にフラット化され、平均の見掛け密度が0.004g/cm2 、厚み9.5cm、繰返し圧縮歪み13.6%、耐熱耐久性22.4%であった。次いで、比較例2と同様にして得たベット用マットの評価結果を表2に示す。表2で明らかごとく、通気性、折り曲げ性、水切り性に優れるが、耐熱性、耐久性、寝心地が劣るベット用マットである。
【0034】
比較例5
溶融温度230℃にて、単孔当たりの吐出量1.5g/分とし、ノズル面60cm下に引取りコンベアネットを配し、引き取り速度を1m/分とした以外、比較例2と同様の方法で得た網状体は、断面形状が丸断面で、線径が1.9mmの融点以外に吸熱ピークをもたない線条となるが、線条がル−プを形成しないで接触点が殆どできず、網状体を形成しなかった。この線条を無理に見掛け密度が0.05g/cm2 、厚み9.5cmのウエッブ状とし、次いで、比較例2と同様にして得たベット用マットの評価結果を表2に示す。表2で明らかごとく、接触点が接合されない場合は、寝心地が劣るベットマットになる。なお、このベットマットは寝心地が劣悪なため他の評価をしていない。
【0035】
比較例6
溶融温度245℃にて、単孔当たりの吐出量1.5g/分とし、ノズル面20cm下に引取りコンベアネットを配し、片側のコンベアネットの表面に5mmの凹凸を付けたものとし、引き取り速度を1m/分とした以外、比較例2と同様の方法で得た網状体は、断面形状が丸断面で、線径が0.9mmの融点以外に吸熱ピークをもたない線条が、形成するル−プの互いの接触点は殆ど融着により接合され、片面は実質的にフラット化されているが、他面は凹凸を有する、平均の見掛け密度が0.035g/cm2 、最も厚い場所の厚み9.5cm、繰返し圧縮歪み19.5%、耐熱耐久性29.2%であった。次いで、比較例2と同様にして得たベット用マットの評価結果を表2に示す。このマットは縫製時に縫い針が凸凹面に追随しにくく針折れが多かった。また、側地の表面も凸凹となり見栄えの悪いマットになった。表2で明らかごとく、折り曲げ性、水切り性、蒸れ感、圧迫感の少ない点に優れるが、耐熱性、耐久性がやや劣り、凸凹側を使った寝心地では違和感があり、寝心地がやや劣るベット用マットである。なお、このベット用マットの燃焼ガスの毒性指数は5.1であった。
【0036】
比較例7
幅120cm、長さ1cmのノズル有効面に幅方向の孔間ピッチ5mm、長さ方向の孔間ピッチ5mmの千鳥配列としたオリフィス形状は外径1mm丸断面としたノズルを用い、単孔当たりの吐出量0.3g/分とし、ノズル面5cm下に引取りコンベアネットを配し、0.4cm間隔で一対の引取りコンベアを水面上に一部出るように配して、引き取り速度を1.0m/分とした以外、比較例3と同様の方法で得た網状体は、断面形状が丸断面で、線径が0.4mmの融点以外に吸熱ピークをもたない線条が、形成するル−プの互いの接触点は殆ど融着により接合され、両面が実質的にフラット化され、平均の見掛け密度が0.064g/cm2 、厚み0.4cm、繰返し圧縮歪み18.6%、耐熱耐久性29.8%であった。次いで、比較例2と同様にして得たベット用マットの評価結果を表2に示す。表2で明らかごとく、折り曲げ性、水切り性に優れるが、耐熱性、耐久性が劣り、クッション層が薄すぎて寝心地が著しく劣るベットマットである。
【0037】
比較例8
疑似結晶化処理しなかった以外実施例2と同様にして得た網状体の特性は断面形状が丸断面で、線径が0.9mmの融点以外に126℃に吸熱ピークをもたない線条が、形成するル−プの互いの接触点は殆ど融着により接合され、両面が実質的にフラット化され、平均の見掛け密度が0.048g/cm2 、厚み4.5cm、繰返し圧縮歪み16.5%、耐熱耐久性26.4%であった。別途、精練したインド綿と実施例1で使用した合成繊維を70/30重量比で混合し、オ−プナ−にて予備開繊した後カ−ドで開繊して得たウエッブを見掛け密度が0.12g/cm2 となるように積層した以外、比較例1と同様にして得た側地に該クッション層を挿入して得たベット用マットの評価結果を表2に示す。表2より明らかなごとく、ワディング層の密度が高すぎるため、側地の通気性、折り曲げ性が悪く、寝心地も劣るベット用マットであった。
【0038】
比較例9
精練したインド綿と実施例1で使用した合成繊維を70/30重量比で混合し、オ−プナ−にて予備開繊した後カ−ドで開繊して得たウエッブを見掛け密度が0.05g/cm2 となるように積層したウェッブからなるワディング層を比較例8で得た網状体に積層し、次いで、東洋紡績製ハイムのポリエステル繊維からなる通気度30cc/cm2秒のブロードを用いて所定の形状に縫製された側地に挿入し、キルチィングせずに挿入口を縫製して得たベット用マットの評価結果を表2に示す。表2より明らかなごとく、折り曲げ性と寝心地は良いが、耐熱耐久性が劣り、キルトされていないので洗濯後のワディング層がフェルト化する問題点もあるベット用マットであった。
【0039】
比較例10
見掛け密度が0.05g/cm3 の市販のポリエステル硬綿を厚み5mmにスライスし、所定の大きさに切断したものをワディング層にし、比較例8で得た該網状体に積層したクッション体を用い、比較例2と同様にして得たベット用マットの評価結果を表2に示す。表2で明らかごとく、寝心地はやや良いが、耐熱性、耐久性、折り曲げ性、水切り性が劣るベット用マットである。
【0040】
比較例11
見掛け密度が0.05g/cm3 の市販のポリエステル硬綿を厚み5mmにスライスし、所定の大きさに切断して、比較例8で用いた2枚の該網状体の両面に市販のゴム系接着接着剤を塗布して硬綿を網状体と接着し、所定の大きさに縫製されたポリエステル繊維からなる側地に挿入して得られたベット用マットの評価結果を表2に示す。表2で明らかごとく、寝心地はやや良いが、耐熱性、耐久性、折り曲げ性、水切り性が劣るベット用マットである。
【0041】
比較例12
厚み10cm、見掛け密度0.05g/cm3 の市販のポリエステル硬綿をクッション材とし、所定の大きさに縫製されたポリエステル繊維からなる側地に挿入して、キルティングせずに得られたベット用マットの評価結果を表2に示す。表2で明らかごとく、寝心地はやや良いが沈み込みが少なく、耐熱性、耐久性、折り曲げ性、水切り性は劣るベット用マットである。
【0042】
比較例13
厚み10cm、見掛け密度0.05g/cm3 の市販の発泡ポリウレタンをクッション材とし、比較例2と同様にして得られたベット用マットの評価結果を表2に示す。表2で明らかごとく、耐熱性、耐久性は優れているが、折り曲げ性、水切り性、側地の通気性は良いが寝心地が劣るベットマットである。
【0043】
実施例5
実施例2で得た網状体を厚みを変えた以外実施例1と同様にして得た敷布団の評価結果では、耐熱性、耐久性、折り曲げ性、水切り性、寝心地が共に優れた敷布団であった。
【0044】
実施例6
実施例2で得た網状体を厚みを変えた以外実施例1と同様にして得た座蒲団のの評価結果では、耐熱性、耐久性、水切り性、座り心地共に優れた座蒲団であった。
【0045】
【発明の効果】
天然繊維の特性を生かしたウェッブからなるワディング層を伸長回復性の良い熱可塑性弾性樹脂からなる線条が融着一体化され表面をフラット化した網状体からなるクッション層に積層して、側地と共にキルティングにより全体を一体化したマット及び、製法であるので、蒸れ難く寝心地が良好で、耐熱耐久性、形態保持性、クッション性に優れ、折り曲げ性も良好で、火災時に有毒ガスの発生が少なく、MRSA等の雑菌を除去するための洗濯が可能な一般家庭用、病院用及びホテル用等のベット、敷布団、座蒲団及び、家具用に最適なマット、及び、製造法を提供できる。
Claims (10)
- クッション層の少なくとも上面にワディング層が積層され、且つ、全体面が側地で被われキルティング縫製されたマットであり、クッション層は、熱可塑性弾性樹脂からなる線径が5mm以下の連続した線条を曲がりくねらせランダムループを形成し、それぞれのループの接触部の大部分が融着されてなる三次元立体構造網状体で形成され、該三次元立体構造網状体は上、下両面が実質的にフラット化されており、見掛け密度が0.005〜0.10g/cm3 、厚みが5mm以上であり、ワディング層は、天然繊維を主たるマトリックスとした見掛け密度が0.01g/ cm 3 以上0.06g/ cm 3 以下のウェブからなり、側地の通気度が20 cc / cm 2 秒以上であることを特徴とするマット。
- クッション層を構成する熱可塑性弾性樹脂が、室温での300%伸長後の回復率(室温伸長回復率)が20%以上、70℃での10%伸長を24時間保持した後の回復率(70℃伸長回復率)が30%以上である請求項1記載のマット。
- クッション層を構成する網状体の線径が0.01mm以上、見掛けの密度が0.01g/cm3 から0.08g/cm3 、厚みが10mm以上100mm以下である請求項1記載のマット。
- クッション層を構成する網状体の線径が0.1mm以上2mm以下、見掛けの密度が0.02g/cm3 から0.06g/cm3 、厚みが20mm以上80mm以下である請求項1記載のマット。
- クッション層に熱可塑性弾性樹脂からなる成分を示差走査型熱量計で測定した融解曲線に室温以上融点以下の温度に吸熱ピ−クを持つ網状体を用いた請求項1記載のマット。
- クッション層を構成する網状体の該線条の断面形状が中空断面又は及び異形断面である請求項1記載のマット。
- マットの見掛け密度が0.1g/cm3 以下となるようにキルチィングされた請求項1記載のマット。
- 天然繊維が絹からなる請求項1記載のマット。
- 天然繊維が羊毛からなる請求項1記載のマット。
- 天然繊維が麻からなる請求項1記載のマット。
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