JP3637930B2 - 枕及びその製法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、蒸れ難く、放熱性、弾力性、頸椎保持性、耐久性が優れ、洗濯が可能で常に清潔性を保持できる枕及びその製法に関する。
【0002】
【従来技術】
現在、枕は蕎麦殻、半蕎麦殻、パンヤ、檜のチップ、竹、桐材、小豆、椰子の実繊維、炭などの植物性素材や、真綿、ウ−ル、羽毛などの動物性素材、粒状や玉状の石等の無機素材、合繊綿、玉状綿、ウレタンフォム、プラスチックなどの化学製品からなる素材まで多岐にわたる詰め物を充填したものが知られている。
【0003】
粒状の詰め物や羽毛を充填した枕は、頭の形状になじみ易く安定するが、通気性や弾力が劣っている。他方、繊維状の詰物を充填した枕は、繊維が動きにくいので頭の形状になじみ難くく頭が安定しないので首が捻れ易くなり頸椎保持性は悪くなる。なじみ易くして頸椎保持性を向上させるために詰め物量を少なくすると弾力性が低下して底つきしやすくなり顎がせり上がって頸椎保持性も低下する問題がある。ウレタンフォ−ムを充填した枕は弾力性は極めて良好だが、透湿透水性に劣り蓄熱性があるため蒸れやすく、柔らかな物は底つきしやすくなり顎がせり上がって頸椎保持性も低下する問題がある。また、清潔性を保つには洗濯が必要だが、透水性に劣るウレタンは洗濯ができないため清潔性が問題にる。
【0004】
ポリエステル繊維を接着剤で接着した樹脂綿、例えば、太い繊度のポリエステル繊維をカ−ルさせたウェッブを接着剤にゴム系を用いた芯材を支柱部材に巻き付けて接合し、中空部を形成した枕が特開平7−23841号公報に提案されているものは、薄い側地を表層に用いると通気性は比較的良好で蒸れ難いが、繊度の太い短繊維を使用しているため、繊維の切断端が皮膚にチクリとした刺激を与え安眠しにくく、接着剤にラテックスを使用しているので、弾力性はやや良いがゴム臭があり、快適な眠りの妨げになる。他方、表層をチクリとした異物感はなくなる程度にフェルトで包んだ場合は、通気性が低下して蒸れやすくなる問題がある。
【0005】
合成樹脂線条がパ−マネントウェッブ状態とされ、線条の接合点が接着した土木工事用に使用する熱可塑性のオレフィン網状体の偏平芯材をロ−ル状に巻いたもの又は角状体を中芯にし、プラスチックネットを被せた枕が特開昭62−32910号公報、実公平4−18449号公報に、特開昭62−32909号公報では、偏平心材をそのまま枕として用いる提案されているが、通気性や熱発散性は良いが、硬質熱可塑性合成樹脂を使って、表面がフラット化されていないため、表面タッチが凸凹な違和感を感じ、且つ、固くて頭へのなじみが悪くて痛く感じるので長時間の使用には絶えがたい苦痛を伴い、頭の安定性が劣り首が捻れ易いので頸椎保持性も劣る問題がある。更には、オレフィンの為、着用による体温での塑性変形を生じてへたりを発生するので、耐久性も劣る枕である。軟質の合成樹脂を素材に用いることもある。との記載はあるが、軟質の合成樹脂を素材に用いた効果は何ら記載されていない。
【0006】
特開平6−269345号公報には、遠赤外線輻射機能を持つ不織布等の寝具用部材を被う、綿材をシ−トで挟みキルトした布団用パッドが開示されているが、枕として必要な、蒸れ難く、放熱性、弾力性、頸椎保持性、耐久性が優れ、洗濯が可能で常に清潔性を保持できる機能は何ら開示されてはいない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記問題点を解決し、蒸れ難く、放熱性、弾力性、頸椎保持性、耐久性が優れ、洗濯が可能で常に清潔性を保持できる枕及びその製法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための手段、即ち、本発明は中央部に中芯を配置し、該中芯を見掛密度が0.01g/ cm 3 以上0.1g/cm3以下で、厚みが2mm以上30mm未満のウェッブの両面を編織物で被いキルティング縫製した袋状の側地で包み込んだ枕であり、前記中芯は、熱可塑性弾性樹脂からなる線径が5mm以下の連続した線条を曲がりくねらせランダムループを形成し、それぞれのループの接触部の大部分が融着されてなる三次元立体構造網状体で形成され、該三次元立体構造網状体は上、下両面が実質的にフラット化されており、見掛密度が0.005〜0.10g/cm3 であり、且つ、頭部を保持する部分の厚みが少なくとも20mm以上となっていることを特徴とする枕であり、更には、ウェッブが天然繊維を主たるマトリックスとした枕であり、中芯を構成する熱可塑性弾性樹脂が、室温での300%伸長後の回復率(室温伸長回復率)が20%以上、70℃での10%伸長を24時間保持した後の回復率(70℃伸長回復率)が30%以上である枕であり、中芯を構成する網状体の線径が0.05〜0.9mm、見掛けの密度が0.02〜0.06g/cm3 、厚みが30〜200mmである枕であり、熱可塑性弾性樹脂からなる成分を示差走査型熱量計で測定した融解曲線に室温以上融点以下の温度に吸熱ピ−クを持つ網状体を用いた枕であり、中芯を構成する三次元立体構造網状体の線条の断面形状が中空断面又は及び異形断面である枕であり、中芯を構成する熱可塑性弾性樹脂がポリエステルである枕であり、袋状の側地の通気度が20cc/cm2 秒以上である枕であり、複数のオリフィスを持つ多列ノズルより熱可塑性弾性樹脂をその融点より20〜80℃高い溶融温度で、該ノズルより下方に向けて吐出させ、溶融状態で互いに接触させて融着させ3次元立体構造を形成しつつ、引取り装置で挟み込み冷却槽で冷却せしめた後、切断し、頭部を保持する部分の厚みが20mm以上となるようにした三次元立体構造の中芯に、天然繊維や合成繊維の見掛密度が0.01g/ cm 3 以上0.1g/ cm 3 以下で、厚みが2mm以上30mm未満のウェッブの両面を編織物で被いキルチィング縫製した袋状の側地を被せる枕の製法であり、製品化に至る任意の工程で網状体を構成する熱可塑性弾性樹脂の融点より少なくとも10℃以下の温度でアニ−リングよる疑似結晶化処理を行う枕の製法であり、三次元立体構造体の単板を又は、単板を積層後、熱可塑性弾性樹脂の融点より少なくとも10℃以下の温度で圧縮熱成形を疑似結晶化処理と同時に行う枕の製法である。
【0009】
本発明における熱可塑性弾性樹脂とは、ソフトセグメントとして分子量300〜5000のポリエ−テル系グリコ−ル、ポリエステル系グリコ−ル、ポリカ−ボネ−ト系グリコ−ルまたは長鎖の炭化水素末端をカルボン酸または水酸基にしたオレフィン系化合物等をブロック共重合したポリエステル系エラストマ−、ポリアミド系エラストマ−、ポリウレタン系エラストマ−、ポリオレフィン系エラストマ−などが挙げられる。熱可塑性弾性樹脂とすることで、再溶融により再生が可能となるため、リサイクルが容易となる。例えば、ポリエステル系エラストマ−としては、熱可塑性ポリエステルをハ−ドセグメントとし、ポリアルキレンジオ−ルをソフトセグメントとするポリエステルエ−テルブロック共重合体、または、脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするポリエステルエステルブロック共重合体が例示できる。ポリエステルエ−テルブロック共重合体のより具体的な事例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン2・6ジカルボン酸、ナフタレン2・7ジカルボン酸、ジフェニル4・4’ジカルボン酸等の芳香8ジカルボン酸、1・4シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、琥珀酸、アジピン酸、セバチン酸ダイマ−酸等の脂肪族ジカルボン酸または、これらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジカルボン酸の少なくとも1種と、1・4ブタンジオ−ル、エチレングリコ−ル、トリメチレングリコ−ル、テトレメチレングリコ−ル、ペンタメチレングリコ−ル、ヘキサメチレングリコ−ル等の脂肪族ジオ−ル、1・1シクロヘキサンジメタノ−ル、1・4シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂環族ジオ−ル、またはこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジオ−ル成分の少なくとも1種、および平均分子量が約300〜5000のポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体からなるグリコ−ル等のポリアルキレンジオ−ルのうち少なくとも1種から構成される三元ブロック共重合体である。ポリエステルエステルブロック共重合体としては、上記ジカルボン酸とジオ−ル及び平均分子量が約300〜5000のポリラクトン等のポリエステルジオ−ルのうち少なくとも各1種から構成される三元ブロック共重合体である。熱接着性、耐加水分解性、伸縮性、耐熱性等を考慮すると、ジカルボン酸としてはテレフタル酸、または、及びナフタレン2・6ジカルボン酸、ジオ−ル成分としては1・4ブタンジオ−ル、ポリアルキレンジオ−ルとしてはポリテトラメチレングリコ−ルの3元ブロック共重合体または、ポリエステルジオ−ルとしてポリラクトンの3元ブロック共重合体が特に好ましい。特殊な例では、ポリシロキサン系のソフトセグメントを導入したものも使うこたができる。また、上記エラストマ−に非エラストマ−成分をブレンドされたもの、共重合したもの、ポリオレフィン系成分をソフトセグメントにしたもの等も本発明の熱可塑性弾性樹脂に包含される。ポリアミド系エラストマ−としては、ハ−ドセグメントにナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12等及びそれらの共重合ナイロンを骨格とし、ソフトセグメントには、平均分子量が約300〜5000のポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体からなるグリコ−ル等のポリアルキレンジオ−ルのうち少なくとも1種から構成されるブロック共重合体を単独または2種類以上混合して用いてもよい。更には、非エラストマ−成分をブレンドされたもの、共重合したもの等も本発明に使用できる。ポリウレタン系エラストマ−としては、通常の溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)の存在または不存在下に、(A)数平均分子量1000〜6000の末端に水酸基を有するポリエ−テル及び又はポリエステルと(B)有機ジイソシアネ−トを主成分とするポリイソシアネ−トを反応させた両末端がイソシアネ−ト基であるプレポリマ−に、(C)ジアミンを主成分とするポリアミンにより鎖延長したポリウレタンエラストマ−を代表例として例示できる。(A)のポリエステル、ポリエ−テル類としては、平均分子量が約1000〜6000、好ましくは1300〜5000のポリブチレンアジペ−ト共重合ポリエステルやポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体からなるグリコ−ル等のポリアルキレンジオ−ルが好ましく、(B)のポリイソシアネ−トとしては、従来公知のポリイソシアネ−トを用いることができるが、ジフェニルメタン4・4’ジイソシアネ−トを主体としたイソシアネ−トを用い、必要に応じ従来公知のトリイソシアネ−ト等を微量添加使用してもよい。(C)のポリアミンとしては、エチレンジアミン、1・2プロピレンジアミン等公知のジアミンを主体とし、必要に応じて微量のトリアミン、テトラアミンを併用してもよい。これらのポリウレタン系エラストマ−は単独又は2種類以上混合して用いてもよい。なお、本発明の熱可塑性弾性樹脂の融点は耐熱耐久性が保持できる140℃以上が好ましく、160℃以上のものを用いると耐熱耐久性が向上するのでより好ましい。なお、必要に応じ、抗酸化剤等を添加して耐熱性や耐久性を向上させるのが特に好ましい。抗酸化剤は、好ましくはヒンダ−ド系抗酸化剤としては、ヒンダ−ドフェノ−ル系とヒンダ−ドアミン系があり、窒素を含有しないヒンダ−ドフェノ−ル系抗酸化剤を1%〜5%添加して熱分解を抑制すると燃焼時の致死量が少ない有毒ガスの発生を抑えられるので特に好ましい。本発明の目的である好ましい耐久性と弾力性及び頸椎保持性を兼備できる枕用中芯になる熱可塑性弾性樹脂の後述する方法で測定した伸長回復性は、室温での300%伸長後の回復率(室温伸長回復率)は20%以上、70℃での10%伸長を24時間保持した後の回復率(70℃伸長回復率)は30%以上であり、より好ましくは、室温伸長回復率が30%以上、70℃伸長回復率が40%以上であり、最も好ましくは、室温伸長回復率が40%以上、70℃伸長回復率が50%以上とする。このような伸長回復性を付与する成分を構成する熱可塑性弾性樹脂のソフトセグメント含有量は好ましくは15重量%以上、より好ましくは30重量%以上であり、耐熱耐へたり性からは80重量%以下が好ましく、より好ましくは70重量%以下である。即ち、本発明の弾性網状体の振動や応力の吸収機能をもたせる成分のソフトセグメント含有量は好ましくは15重量%以上80重量%以下であり、より好ましくは30重量%以上70重量%以下である。
【0010】
本発明枕の好ましい実施形態として難燃性を付与する必要から、熱可塑性弾性樹脂中に燐含有量(Bppm)がソフトセグメント含有量(A重量%)に対し、60A+200≦B≦100000の関係を満足するのが良い。満足しない場合は難燃性が劣る場合がある。100000ppmを越えると可塑化効果による塑性変形が大きくなり熱可塑性弾性樹脂の耐熱性が劣るので好ましくない。好ましい燐含有量(Bppm)はソフトセグメント含有量(A重量%)に対して、30A+1800≦B≦100000であり、より好ましい燐含有量(Bppm)はソフトセグメント含有量(A重量%)に対し、16A+2600≦B≦50000である。難燃性は多量のハロゲン化物と無機物を添加して高度の難燃性を付与する方法があるが、燃焼時に致死量の少ない有毒なハロゲンガスを多量に発生し、火災時の中毒の問題があり、焼却時には、焼却炉の損傷が大きくなるので、本発明では、好ましいハロゲン化物の含有量は10重量%以下、より好ましいハロゲン化物の含有量は5重量%以下、最も好ましくはハロゲン化物を含有しないものである。本発明の燐系難燃剤としては、例えば、ポリエステル系熱可塑性弾性樹脂の場合、樹脂重合時に、ハ−ドセグメント部分に難燃剤として、例えば特開昭51−82392号公報等に記載された10〔2・3・ジ(2・ヒドロキシエトキシ)−カルボニルプロピル〕9・10・ジヒドロ・9・オキサ・10ホスファフェナレンス・10オキシロ等のカルボン酸をハ−ドセグメントの酸成分の一部として共重合したポリエステル系熱可塑性弾性樹脂とする方法や、熱可塑性弾性樹脂に後工程で、例えば、トリス(2・4−ジ−t−ブチルフェニル)フスファイト等の燐系化合物を添加して難燃性を付与することができる。その他、難燃性を付与できる難燃剤としては、各種燐酸エステル、亜燐酸エステル、ホスホン酸エステル(必要に応じハロゲン元素を含有する上記燐酸エステル類)、もしくはこれら燐化合物から誘導される重合物が例示できる。本発明は、熱可塑性弾性樹脂中に各種改質剤、添加剤、着色剤等を必要に応じて添加できる。本発明枕の中芯を構成する網状体に難燃性を付与するために燐を含有させており、この理由は、上記している如く、安全性の観点から、火災時に発生するシアンガス、ハロゲンガス等の致死量の少ない有毒ガスをできるだけ少なくすることにある。このため、本発明枕を構成する網状体の燃焼ガスの毒性指数は、好ましくは6以下、より好ましくは5.5以下である。袋状の側地に用いるウェッブに天然繊維を用いる場合の燃焼ガスの毒性指数は好ましくは15以下、より好ましくは10以下、最も好ましくは7以下である。毒性指数を低減化できる天然繊維としてはセルロ−ズ系が最も好ましく、毒性指数が15前後になる蛋白質系繊維の絹、羊毛、羽毛等を用いる場合は、マトリックスに混合される繊維に毒性指数の低いポリエステル系繊維の混率を出来るだけ高くするのが望ましい。また、側地にもポリエステル繊維の混率が高いものを使用するのが好ましい。中芯の網状体を構成する熱可塑性弾性樹脂と、ウェッブを含む袋状側地を同一種類に統一するのが特に好ましい。例えば中芯をポリエステル系熱可塑性弾性樹脂、ウェッブを含む袋状側地をポリエステル繊維に統一することで、枕は個々に分別せずに再生リサイクルができる。
【0011】
本発明の枕の中芯を構成する熱可塑性弾性樹脂からなる成分は、示差走査型熱量計にて測定した融解曲線において、融点以下に吸熱ピ−クを有するのが好ましい。融点以下に吸熱ピ−クを有するものは、耐熱耐へたり性が吸熱ピ−クを有しないものより著しく向上する。例えば、本発明の好ましいポリエステル系熱可塑性樹脂として、ハ−ドセグメントの酸成分に剛直性のあるテレフタル酸やナフタレン2・6ジカルボン酸などを90モル%以上含有するもの、より好ましくはテレフタル酸やナフタレン2・6ジカルボン酸の含有量は95モル%以上、特に好ましくは100モル%とグリコ−ル成分をエステル交換後、必要な重合度まで重合し、次いで、ポリアルキレンジオ−ルとして、好ましくは平均分子量が500以上5000以下、特に好ましくは1000以上3000以下のポリテトラメチレングリコ−ルを15重量%以上70重量%以下、より好ましくは30重量%以上60重量%以下共重合量させた場合、ハ−ドセグメントの酸成分に剛直性のあるテレフタル酸やナフタレン2・6ジカルボン酸の含有量が多いとハ−ドセグメントの結晶性が向上し、塑性変形しにくく、かつ、耐熱抗へたり性が向上するが、溶融熱接着後更に融点より少なくとも10℃以上低い温度でアニ−リング処理するとより耐熱抗へたり性が向上する。圧縮歪みを付与してからアニ−リングすると更に耐熱抗へたり性が向上する。このような処理をした網状体を示差走査型熱量計で測定した融解曲線に室温以上融点以下の温度で吸熱ピークをより明確に発現する。なおアニ−リングしない場合は融解曲線に室温以上融点以下に吸熱ピ−クを発現しない。このことから類推するに、アニ−リングにより、ハ−ドセグメントが再配列され、疑似結晶化様の架橋点が形成され、耐熱抗へたり性が向上しているのではないかとも考えられる。(この処理を疑似結晶化処理と定義する)この疑似結晶化処理効果は、ポリアミド系弾性樹脂やポリウレタン系弾性樹脂にも有効である。
【0012】
本発明に於ける天然繊維とは、綿、麻、椰子殻繊維、ジュ−ト等セルロ−ス系繊維や、羊毛、絹、羽毛等の蛋白質系繊維などの天然に産する有機繊維を言う。本発明で言う、天然繊維や合成繊維を主たるマトリックスとするとは、マトリックス繊維の少なくとも50重量%以上が天然繊維又は合成繊維からなる系を言う。天然繊維の吸湿性や吸水性を充分発揮させるためにマトリックス繊維中に占める天然繊維の混率は好ましくは50%以上、より好ましくは65%以上、最も好ましくは100%である。しかして、本発明では、洗濯を可能とすることに配慮するため、洗濯後の水切り性と乾燥速度を配慮して、平衡水分率の少ない合成繊維を混合して乾燥速度を高める必要から、平衡水分率の少ない合成繊維の混率は、好ましくは少なくとも15重量%以上、より好ましくは30重量%以上50重量%未満である。他方、火災時の安全性に燃焼ガスの毒性があり、燃焼ガスの毒性を低減させるには、セルロ−ズ系繊維が好ましく、蛋白質系繊維を用いる場合は、前述の如く、毒性指数の低い合成繊維を混合して毒性指数を低減させるのが望ましい。本発明では、ウェッブを含む袋状側地の毒性指数は、少なくとも15以下、好ましくは10以下、より好ましくは7以下である。しかして、蛋白質系繊維は難燃性も有するので、本発明では、ウェッブを含む袋状側地中の天然繊維は少なくとも50%以上含有させる。本発明の好ましい実施形態では、天然繊維を所望に応じ、難燃化処理、低収縮化処理等各種の処理により、所望の機能を付加した天然繊維を用いることが望ましい。
【0013】
本発明における合成繊維とは、熱可塑性樹脂からなる繊維を言う。熱可塑性樹脂とは、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等が例示できる。なお、本発明ではガラス転移点温度が少なくとも40℃以上のものを使用するのが好ましい。例えば、ポリエステルでは、ポリエチレンテレフタレ−ト(PET)、ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレ−ト(PCHDT)、ポリシクロヘキシレンジメチレンナフタレ−ト(PCHDN)、ポリブチレンテレフタレ−ト(PBT)、ポリブチレンナフタレ−ト(PBN)、ポリアリレ−ト等、及びそれらの共重合ポリエステル等が例示できる。ポリアミドでは、ポリカプロラクタム(NY6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(NY66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(NY6−10)等が例示できる。ポリオレフィンとしては、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン・1(PB・1)等が例示できる。本発明に用いる熱可塑性樹脂としては、中芯及びウェッブを含む袋状の側地にポリエステルを用いる場合は、廃棄する場合に分離すればリサイクルが可能で、耐熱性も良好なPET、PEN、PBN、PCHDT等のポリエステルが特に好ましい。更には、PET、PEN、PBN、PCHDT等と重縮合して燐含有エステル形成性化合物を共重合または燐含有難燃剤を含有してなる難燃性ポリエステル(以下難燃性ポリエステルと略す)が好ましく、例えば、特開昭51−82392号公報、特開昭55−7888号公報、特公昭55−41610号公報等に例示されたものが挙げられる。なお、塩化ビニ−ルは自己消火性を有するが燃焼すると有毒ガスを多く発生すること、及び耐熱耐久性が劣るので本発明に用いるのは好ましくない。
【0014】
本発明は、熱可塑性弾性樹脂からなる線径が5mm以下の連続した線条を曲がりくねらせループを形成させつつ互いに接触させて該接触部の大部分が融着した3次元立体構造体を形成し、両面が実質的にフラット化された、見掛けの密度が0.005g/cm3 から0.10g/cm3 、厚みが5mm以上である網状体を、頭部を保持する部分の厚みを少なくとも20mm以上とした中芯に、見掛け密度が0.1g/cm3 以下のウェブの両面を編織物で被いキルティング縫製した袋状の側地で包まれた枕である。
【0015】
本発明枕の中芯は、繊径が5mm以下の熱可塑性弾性樹脂からなる連続した線条を曲がりくねらせ互いに接触させて該接触部の大部分が融着一体化された3次元立体構造体を形成し、両面が実質的にフラット化された網状体のため、ウェッブ層を介して外部から与えられた変形、特には局部的に大きい変形応力が与えられた場合でも、フラット化された網状体の面で変形応力を受け止め変形応力を分散させ、熱可塑性弾性樹脂からなる線条が3次元立体構造体を形成し融着一体化されているので、構造体全体が変形してエネルギ−変換により変形応力を吸収させることによりゴム弾性による低い反発力で変形応力を受け止めるので、極端な局部的沈み込みを防止し、頭部及び頸部に対し柔らかな把持力で頭部及び頸部を支えることができる好ましい頸椎保持機能を発現する。枕では振動吸収機能も要求される。本発明の中芯が熱可塑性弾性樹脂の網状体からなる枕は、寝返り時に天然繊維ウェッブや合成繊維ウェッブを介して外部から与えられた振動を熱可塑性弾性樹脂の振動吸収機能で大部分の振動を吸収減衰し、好ましい振動吸収機能も発現する。変形応力が解除されると熱可塑性弾性樹脂のゴム弾性で容易に元の形態に回復する機能があるので耐へたり性も良好である。更に、空隙率が高く、通気孔径が著しく大きいので通気抵抗が低く通気性が著しく良好であり、寝返り等による変形応力の変化を受けると熱可塑性弾性樹脂のゴム弾性を有する線条が3次元立体構造体を形成し融着一体化されているので、構造体全体が変形により圧縮回復して天然繊維ウェッブや合成繊維ウェッブを介して透過した中芯中に溜まった蒸気や熱を含む空気を圧縮時排出し、回復時新鮮な外気と入替えるポンプ機能を有するため、ウェッブ層と中芯層間の熱及び蒸気の移動が容易となり蒸れ難くい快適な寝心地を提供できる枕である。この目的から、本発明の網状体を形成する振動吸収性と弾性回復性の良い熱可塑性弾性樹脂からなる線条の線径は5mm以下である。見掛け密度を0.2g/cm2 以下にした場合、5mmを越えると構成本数が少なくなり、密度斑を生じて部分的に耐久性の悪い構造ができ、応力集中による疲労が大きくなり耐久性が低下するので好ましくない。本発明の熱可塑性弾性樹脂からなる線条の線径が細すぎると抗圧縮性が低くなり過ぎて変形による応力吸収性が低下するので0.01mm以上であり、頭部のタッチが柔らかで構成本数の低下による構造面の緻密性を損なわない0.9mm以下である。より好ましくは0.05mm以上、0.8mm以下である。本発明の網状体の見掛け密度は、0.005g/cm3 では反発力が失われ、変形応力吸収能力や振動吸収能力が不充分となり頸椎保持機能を発現させにくくなる場合があり、0.15g/cm3 以上では反発力が高すぎて、硬いタッチを感じさせ、頭部の形態とのなじみも悪くなる場合があり、本発明ではタッチが硬く感じず、頭部とのなじみができる目的で0.10g/cm3 以下である。振動吸収能力や変形応力吸収機能が生かせてタッチが硬く感じず、頭部とのなじみがよく、頸椎保持機能が良好となる枕の中芯機能が発現されやすい0.01g/cm3 以上0.08g/cm3 以下が好ましく、より好ましくは0.02g/cm3 以上0.06g/cm3 以下である。本発明における網状体は線径の異なる線状を見掛け密度との組合せで最適な構成とする異繊度積層構造とする方法も好ましい実施形態として選択できる。本発明枕の網状体からなる中芯の頭部を保持する部分の厚みは20mm以上が必要である。厚みが20mm未満では応力吸収機能と応力分散機能が低下して、頭部の沈み込みにより頸部の捩じれを防止できる頸椎保持機能が発現できないので好ましくない。好ましい厚みは力の分散をする面機能と振動や変形応力吸収機能を発現して、頭部の沈み込みにより頸部の捩じれを防止できる頸椎保持機能を保持し、底つき感を与えない枕の中芯の厚みとして30mm以上であり、より好ましくは頸椎を20mmから30mm持ち上げられる頭部を保持する部分の厚みとして50mm以上200mm以下である。頭部を保持する部分の枕の厚みが300mm以上になると肩と頭部の傾斜角度が大きくなり、頸が伸びきって頸椎をひねりやすくなるので好ましくない。より厚い枕を所望する場合は、頭部の沈み込みが大きくなるように密度や硬さを調節して、頸椎の持ち上がりが50mm以下になるようにするのが好ましい。所望に応じて300mm以上とする場合、本発明では、弾性樹脂のゴム弾性を生かして20g/cm2 の荷重で50mm以上200mm以下の厚みとなるように中芯の構成を調節することができる。非弾性樹脂で構成された網状体のものは荷重に対する変形量がすくなく本発明のような大きい沈み込みを付与できないので頸椎保持性が劣り、硬くてタッチも悪く枕としては好ましくないものである。本発明の枕の厚みを厚くする場合、中芯を積層構造とすることもできる。積層する場合、界面を接合しても良く、非接合でも面がフラットなので応力の伝達が面で伝達されるので変形対応性に支障はない。網状体の表面が実質的にフラット化されてない場合、編織物を介してウェッブ層から伝達される局部的な外力は、変形応力を面で受けることが出来ず、表面の線条及び接着点部分までに選択的に伝達され、変形応力を分散させる機能が低下するので、応力集中が発生する場合があり、このような外力に対しては応力集中による疲労が発生して耐へたり性が低下する場合がある。なお、該線条が熱可塑性弾性樹脂からなる場合は3次元構造部分で構造全体が変形するので応力集中は緩和されるが、へたりが進行するに伴い頭部保持機能も低下する。非弾性樹脂では、そのまま応力が接着点に集中して構造破壊を生じ回復しなくなる。更には、表面が実質的にフラット化されてなく凸凹があると頭部に異物感を与えるため寝心地が悪くなり好ましくない。なお、線状が連続していない場合は、線条の接着点が応力の伝達点となるため接着点に著しい応力集中が起こり構造破壊を生じ耐熱耐久性が劣り好ましくない。構造破壊しない段階でも抗圧縮性が劣り、頭部保持性が劣る問題があり、この問題を解決するため密度を高くすると、空隙率の低下と共に通気性も低下して快適性が低下する。融着していない場合は、形態保持が出来ず、構造体が一体で変形しないため、応力集中による疲労現象が起こり耐久性が劣ると同時に、形態が変形して頭部保持ができなくなるので好ましくない。本発明枕の中芯層のより好ましい融着の程度は、線条が接触している部分の大半が融着した状態であり、もっとも好ましくは接触部分が全て融着した状態である。公知の非弾性樹脂のみからなる線条で構成した網状体では、表面層で吸収できない大きい変形応力を受けるとゴム弾性を持たないので変形しにくく大きい反発力を示すため、適度の沈み込みが起こらず、強い反発力を示すので不快な頭部支持感を与え好ましくない頸椎保持機能を発現する。更に、圧縮変形により塑性変形を生じて回復しなくなり耐久性も劣る。更に、圧縮回復によるポンプ機能が殆ど有しないので蒸れ低減化機能が劣る。架橋性発泡ポリウレタンでは、振動吸収機能や耐へたり性は弾性樹脂のため良好であるが、応力伝達が容易な構造のため、局部的な変形に容易に追随して極端な局部的沈み込みを発生し、寝返り時に頭部が動きにくくなり、頸椎の捩じれを生じやすくなるので頸椎保持機能が劣る。又、発泡ポリウレタンは通気性が極めて劣るため蒸れ易く、快適な寝心地が得られない枕となる中芯である。本発明の枕は好ましいフィット感で頭部を保持して、水蒸気圧差を利用して汗や湿気をできるだけ早く皮膚面から編み織物で包まれたウェッブ層を介して移動させ蒸れ感を与えない快適な眠りを永続的に提供するため、見掛け密度が0.01g/ cm 3 以上0.1g/cm3 以下の繊維ウエッブの両面を編織物で被いキルティング縫製した袋状の側地で包まれたまくらである。ウエッブ層の両面を編織物で被いキルティング縫製した袋状の側地で中芯を包むことで、皮膚面で体温まで温度が上昇した汗や水蒸気は、水蒸気圧差が発生し、編み織物を介して皮膚面からウェッブ層へ移動し、次いで中芯が新鮮な空気と入れ換えるポンプ機能を持つので、ウェッブ層に移動した熱と水分は中芯を介して外部に放出される相乗効果で皮膚面が乾燥すると、水分蒸発による皮膚面の温度低下も伴い蒸れ感を低減させる。ウェッブ層の見掛け密度が0.1g/cm3を越えるとウェッブ層は通気性が低下し水分の移動が極端に低下するので、水分の移動からの見掛け密度は、好ましくは0.06g/cm3 以下、より好ましくは0.04g/cm3 以下である。かくして、ウェッブ層と中芯層の相乗効果で蒸れにくく、且つ保温性も優れた枕機能を発現できる。ウェッブ層の他の機能として、繊維間をキルティングにより側地と接合一体化した構造体を形成しているので、繊維の変形応力に対する自由度が大きく、局部的な変形応力を受けると繊維の移動が起こり、構造体全体が変形して側地に伝達された応力が、熱可塑性弾性樹脂からなるクッション層でエネルギ−変換により変形応力を吸収されることによりゴム弾性による低い反発力で変形応力を受け止められるので、頭部や頸部を柔らかな把持力で支えられる相乗効果で皮膚と接する局所的な高圧縮応力点が形成されにくくなり、より鬱血しにくい支持機能を発現できる。この機能は側地を介して新鮮な空気を皮膚面に送ることにより、更なる相乗効果として床擦れ防止にも有効に作用する。特に顕著なこの様な効果を付与するには、両面を編織物で被われたウェッブ層表面から中芯層側面へ排気される空気の通気度を10cc/cm2秒以上となる構成にするのが望ましい。なお、本発明のウェッブ層を被う編織物の通気度は特には制限されないが、床擦れ防止効果を付与するには、ウェッブ層と中芯層を隔てる編織物の通気度は、好ましくは30cc/cm2 秒以上である。また、表面側の編織物の通気度も30cc/cm2 秒以上とするのが好ましい。本発明の枕を構成する側地は、枕の側面を、編織物のみで構成し、中芯層と外気間の通気性を向上させることで、中芯層のポンプ機能をより効果的に活用できるので好ましい。本発明の枕の側地を構成するウエッブの見掛け密度は高過ぎると高圧縮応力支持面積の増加による鬱血防止機能の低下と通気性が劣り蒸れ防止効果も低下するので見掛け密度が0.1g/cm3 以下が必要である。見掛け密度が低すぎると抗圧縮性が低下するので、好ましい見掛け密度は0.01g/cm3 以上0.06g/cm3 以下、より好ましくは見掛け密度は0.03g/cm3 以上0.05g/cm3 以下である。ウェッブ層の厚みは、2mm以上30mm未満である。2mm未満ではウェッブの好ましいタッチ感が低下する。30mm以上では中芯層との相乗効果の有用な前記機能や適度の沈み込みと柔らかい把持力で支える頸椎や頭部保持機能と振動吸収機能を低下させる。好ましい厚みは3mm以上15mm以下、より好ましくは5mm以上10mm以下である。本発明では、ウエッブ層の両面を編織物で被いキルティング縫製した袋状の側地で中芯を包むことで、洗濯時に中芯を取り出し、中芯と側地を別々に洗濯できる。又、所望に応じて特性の異なる中芯層(例えば、夏用と冬用の入替え、やや硬めとやや柔かめの入替え等)を入替えて個人的な好みも満足し易くしている。逆に、後述するウェッブ層を変えてその好みを満足させることもできるし、その両方を変えることもできる。本発明の好ましい実施形態として、天然繊維を主たるマトリックスとしたウエッブを用いることで、天然繊維の優れた吸湿性及び吸水性が、皮膚面の汗や水蒸気をすばやく吸収して、天然繊維が吸水又は吸湿した水分を効率よく中芯層からポンプ機能で外部に排出するのでウェッブ層の水蒸気圧が極端に高くなることも防止できる。天然繊維を主たるマトリックスとしたウェッブ層は、前記した如く、洗濯時の乾燥性、難燃性や燃焼ガス毒性以外に、保温性や蒸れにくさを好みに応じてその種類や混率を変える
ことができる。例えば、比較的冷え性の人が温か目を所望する場合は、マトリックス繊維中の羊毛や真綿(絹)等の蛋白繊維の混率が60%以上が好ましく、80%以上100%がより好ましい。また、柔らかなタッチで且つ保温性の良いものを所望する場合、マトリックス繊維中の真綿(絹)や羽毛の混率が70%以上が好ましく、80%以上100%がより好ましい。他方、やや涼しい寝心地を所望する場合は、マトリックス繊維中の麻や綿等のセルロ−ズ系繊維の混率を高くするのが好ましく、特には埃が少なく、繊維径が太い麻の混率を80%以上とするのがより好ましい。好みに応じて所望の異なるウェッブ層を中芯層の両面に積層して夏冬使い分ける等の使用形態もとれる。又、本発明の基本機能を失わない範囲において、中芯層及び、又はウェッブ層に他の素材が積層されてもかまわない。また、マトリックス繊維中の天然繊維と混繊する繊維は、天然繊維と混繊できる繊維であれば特には制限されない。マトリックス繊維中の天然繊維と混繊する繊維は、素材も必要に応じ選択するが、通常はポリエステル繊維でよい。所望に応じてウェッブ層の天然繊維にない特性を付加するために、例えば、防ダニ剤、抗菌剤、消臭剤、難燃剤、芳香剤等を含有する繊維を混繊して機能を高めたり、撥水性、疎水性等の特性を利用して水切り乾燥性を改善したり、極細繊維や極太繊維を混繊して天然繊維の欠点のかバ−や特徴を倍加する等の機能付与できる繊維を混繊するのが望ましい。本発明の枕に用いるウェッブ層を構成する天然繊維や合成繊維の繊度は所望に応じて選択されるが、通常のカ−ド開繊で使用できる繊度としては、0.5デニ−ルから500デニ−ルであるが、好ましいタッチを付与する目的から0.5デニ−ルから50デニ−ルである。100デニ−ルを越えるとゴワツキがでて好ましくない。本発明まくらは洗濯性が良い。即ち、中芯が通常の繊維からなるまくらの繊維径0.001mm以下のもの較べ、本発明のクッション体の大部分を構成する中芯の線径が0.01mm以上であり、側地のウェッブは繊維の表面積は大きいが、枕全体での平均の構成本数が少ないため、線条の表面積が著しく少ないため線条表面の付着水分が少なくできるので、水切り性に優れる。水切り性が良いので乾燥時間を短縮できる。また、本発明の側地を構成するウェッブが、キルティングされているので、側地ごとの洗濯でもウェッブの偏りや絡みつきによるフェルト化が生じにくい。キルティングの細かさは特には限定されないが、好ましくは3cm以上15cm以下のピッチ、より好ましくは5cm以上10cm以下のキルトピッチである。この為、本発明の枕は頻繁に洗濯でき、結果として、清潔な枕を常に使用できる。本発明の枕の洗濯は、丸洗いも可能であるが、洗濯後の水切り性が天然繊維をウェッブ層に使用した場合は少し劣るので丸洗いした場合は乾燥時間が長く掛かるので、中芯と側地に分割して側地のウェッブ層の厚みを薄くすることで、水切り性と乾燥速度を早くできる洗濯方法を採用するのが好ましい。本発明の好ましい実施形態としては、中芯の取り出し、挿入が容易なように、側地に閉鎖できる開閉口を有するものが良い。病院用の枕では、必要に応じて殺菌する場合がある。殺菌は100℃未満のエチレンオキサイドガス又は130℃の蒸気を用いるのが一般的である。本発明枕の好ましい実施形態、例えば、ワディング層の天然繊維を低収縮−形態保持処理や脱スケ−ル処理されたものでは、圧縮応力を付与しないで15分未満で殺菌することで変形させずに殺菌することが可能であるが、公知のオレフィン系や塩化ビニ−ル系素材を用いた場合は、耐熱性が劣り殺菌時の加熱で塑性変形し嵩減りを生じる点が本発明と異なる点である。なお、網状体形成段階から製品化される任意の段階で上述の疑似結晶化処理を施すことにより、網状体中の熱可塑性弾性樹脂からなる成分を示差走査型熱量計で測定した融解曲線に室温以上融点以下の温度に吸熱ピークを持つようにすると熱可塑性弾性樹脂の伸縮性と耐熱性が著しく向上し、製品の耐熱耐久性も格段に向上するのでより好ましい。
【0016】
本発明の中芯を構成する網状体の線条の断面形状は特には限定されないが、中空断面や異形断面にすることで好ましい抗圧縮性(反発力)やタッチを付与することができるので特に好ましい。抗圧縮性は繊径や用いる素材のモジュラスにより調整して、線径を細くしたり、柔らかい素材では中空率や異形度を高くし初期圧縮応力の勾配を調整できるし、線径をやや太くしたり、ややモジュラスの高い素材では中空率や異形度を低くして頭部頸椎保持が良好な抗圧縮性を付与する。好ましい抗圧縮性(反発力)やタッチを付与することができる他の好ましい方法として、本発明の網状体の線条を複合構造とする方法がある。複合構造としては、シ−スコア構造またはサイドバイサイド構造及びそれらの組合せ構造などが挙げられる。が、特には中芯が大変形してもエネルギ−変換できない振動や変形応力をエネルギ−変換して回復できる立体3次元構造とするために線状の表面の50%以上を柔らかい熱可塑性弾性樹脂が占めるシ−スコア構造またはサイドバイサイド構造及びそれらの組合せ構造などが挙げられる。シ−スコア構造ではシ−ス成分は振動や変形応力をエネルギ−変換が容易なソフトセグメント含有量が多い熱可塑性弾性樹脂とし、コア成分は抗圧縮性を示すソフトセグメント含有量が少ない熱可塑性弾性樹脂で構成し適度の沈み込みによる頭部や頸椎等の接触部への快適なタッチを与えることができる。サイドバイサイド構造では振動や変形応力をエネルギ−変換が容易なソフトセグメント含有量が多い熱可塑性弾性樹脂の溶融粘度をソフトセグメント含有量が少ない抗圧縮性を示す熱可塑性弾性樹脂の溶融粘度より低くして線状の表面を占めるソフトセグメント含有量が多い熱可塑性弾性樹脂の割合を多くした構造(比喩的には偏芯シ−ス・コア構造のシ−スに熱可塑性弾性樹脂を配した様な構造)として線状の表面を占めるソフトセグメント含有量が多い熱可塑性弾性樹脂の割合を80%以上としたものが特に好ましく、最も好ましくは線状の表面を占めるソフトセグメント含有量が多い熱可塑性弾性樹脂の割合が100%のシ−スコアである。ソフトセグメント含有量が多い熱可塑性弾性樹脂の線状の表面を占める割合が多くなると、溶融して融着するときの流動性が高いので接着が強固になる効果があり、構造が一体で変形する場合、接着点の応力集中に対する耐疲労性が向上し、耐熱性や耐久性がより向上する。中芯の網状体に機能性を付与するため、例えば、防ダニ剤、抗菌剤、消臭剤、難燃剤、芳香剤等を含有又は付与することができる。
【0017】
次に本発明の製法を述べる。本発明は、複数のオリフィスを持つ多列ノズルより熱可塑性弾性樹脂をその融点より20℃から80℃高い溶融温度で、該ノズルより下方に向けて吐出させ、溶融状態で互いに接触させて融着させ3次元構造を形成しつつ、引取り装置で挟み込み冷却槽で冷却せしめた後、切断し、頭部を保持する部分の厚みが20mm以上となるようにした中芯に、天然繊維や合成繊維のウェッブの両面を編織物で被いキルティング縫製した袋状の側地を被せる枕の製法であり、好ましくは、製品化に至る任意の工程で網状体を構成する熱可塑性弾性樹脂の融点より少なくとも10℃以下の温度でアニ−リングよる疑似結晶化処理を行う枕の製法であり、単板を、又は単板を積層後熱可塑性弾性樹脂の融点より少なくとも10℃以下の温度で圧縮熱成形を疑似結晶化処理と同時に行う枕の製法である。網状体は、熱可塑性弾性樹脂を一般的な溶融押出機を用いて溶融し、複数のオリフィスを持つ多列ノズルに供給し、オリフィスより下方へ吐出する。この時の溶融温度は、熱可塑性弾性樹脂の融点より20℃〜80℃高い温度である。熱可塑性弾性樹脂の融点より80℃を越える高い溶融温度にすると熱分解が著しくなり熱可塑性弾性樹脂のゴム弾性特性が低下するので好ましくない。他方、熱可塑性弾性樹脂の融点より10℃以上高くしないとメルトフラクチャ−を発生し正常な線条形成が出来なくなり、また、吐出後ル−プ形成しつつ接触させ融着させる際、線条の温度が低下して線条同士が融着しなくなり接着が不充分な網状体となる場合があり好ましくない。好ましい溶融温度は融点より20℃から60℃高い温度、より好ましくは融点より25℃から40℃高い温度である。オリフィスの形状は特に限定されないが、中空断面(例えば三角中空、丸型中空、突起つきの中空等となるよう形状)及び、又は異形断面(例えば三角形、Y型、星型等の断面二次モ−メントが高くなる形状)とすることで前記効果以外に溶融状態の吐出線条が形成する3次元構造が流動緩和し難くし、逆に接触点での流動時間を長く保持して接着点を強固にできるので特に好ましい。特開平1−2075号公報に記載の接着のための加熱をする場合、3次元構造が緩和し易くなり平面的構造化し、3次元立体構造化が困難となるので好ましくない。網状体の特性向上効果としては、見掛けの嵩を高くでき軽量化になり、また抗圧縮性が向上し、弾発性も改良できへたり難くなる。中空断面では中空率が80%を越えると断面が潰れ易くなるので、好ましくは軽量化の効果が発現できる10%以上70%以下、より好ましくは20%以上60%以下である。オリフィスの孔間ピッチは線状が形成するル−プが充分接触できるピッチとする必要がある。緻密な構造にするには孔間ピッチを短くし、粗密な構造にするには孔間ピッチを長くする。本発明の孔間ピッチは好ましくは3mm〜20mm、より好ましくは5mm〜10mmである。本発明では所望に応じ異密度化や異繊度化もできる。列間のピッチ又は孔間のピッチも変えた構成、及び列間と孔間の両方のピッチも変える方法などで異密度層を形成できる。また、オリフィスの断面積を変えて吐出時の圧力損失差を付与すると、溶融した熱可塑性弾性樹脂を同一ノズルから一定の圧力で押し出される吐出量が圧力損失の大きいオリフィスほど少なくなる原理を使って長手方向の区間でオリフィスの断面積が異なる列を少なくとも複数有するノズルを用い異繊度線条からなる網状構造体を製造することができる。次いで、該ノズルより下方に向けて吐出させ、ル−プを形成させつつ溶融状態で互いに接触させて融着させ3次元構造を形成しつつ、引取りネットで挟み込み、網状体の表面の溶融状態の曲がりくねった吐出線条を45°以上折り曲げて変形させて表面をフラット化すると同時に曲げられていない吐出線条との接触点を接着して構造を形成後、連続して冷却媒体(通常は室温の水を用いるのが冷却速度を早くでき、コスト面でも安くなるので好ましい)で急冷して本発明の3次元立体網状構造体化した網状体を得る。ノズル面と引取り点の距離は少なくとも40cm以下にすることで吐出線条が冷却され接触部が融着しなくなることを防ぐのが好ましい。吐出線条の吐出量5g/分孔以上と多い場合は10cm〜40cmが好ましく、吐出線条の吐出量5g/分孔未満と少ない場合は5cm〜20cmが好ましい。網状体の厚みは溶融状態の3次元立体構造体両面を挟み込む引取りネットの開口幅(引取りネット間の間隔)で決まる。本発明では上述の理由から引取りネットの開口幅は5mm以上とする。次いで水切り乾燥するが冷却媒体中に界面活性剤等を添加すると、水切りや乾燥がしにくくなったり、熱可塑性弾性樹脂が膨潤することもあり好ましくない。尚、ノズル面と樹脂を固化させる冷却媒体上に設置した引取りコンベアとの距離、樹脂の溶融粘度(網状体形成時の溶融粘度は好ましくは500ポイズから10000ポイズであり、20000ポイズを越えるとル−プ形成速度が遅くなり、緻密な網状構造を形成しにくくなるので好ましくない。)、オリフィスの孔径と吐出量などにより所望のループ径や線径をきめられる。冷却媒体上に設置した間隔が調整可能な一対の引取りコンベアで溶融状態の吐出線条を挟み込み停留させることで互いに接触した部分を融着させつつ、連続して冷却媒体中に引込み固化させ網状体を形成する時、上記コンベアの間隔を調整することで、融着した網状体が溶融状態でいる間で厚み調節が可能となり、所望の厚みのものが得られる。コンベア速度も速すぎると、接触点の形成が不充分になったり、融着点が充分に形成されるまでに冷却され、接触部の融着が不充分になる場合がある。また、速度が遅過ぎると溶融物が滞留し過ぎ、密度が高くなるので、所望の見掛け密度に適したコンベア速度を設定する必要がある。次いで本発明では、該網状体を一旦冷却後、連続して、又は、非連続に疑似結晶化処理を行い所定の枕の大きさに切断して、又は、所定の枕の大きさに切断後疑似結晶化処理される。熱成形する場合は疑似結晶化処理と熱成形を同時に行う。所定の形状の雌金型に所定の枕の大きさに切断した網状体を挿入して、必要に応じ、積層して、加熱流体を通じて加熱し、雄金型で圧縮成形し、次いで冷却する方法と、雄金型で圧縮してから加熱流体を通じて加熱成形し、次いで冷却する方法があるが、形状の仕上がりは前者が優れている。なお、本発明における結晶化処理は、製品化に至る任意の工程で熱可塑性弾性樹脂の少なくとも融点(Tm)より10℃以上低く、Tanδのα分散立ち上がり温度(Tαcr)以上で行う。この処理で、融点以下に吸熱ピ−クを持ち、疑似結晶化処理しないもの(吸熱ピ−クを有しないもの)より耐熱耐へたり性が著しく向上する。本発明の好ましい疑似結晶化処理温度は(Tαcr+10℃)から(Tm−20℃)である。単なる熱処理により疑似結晶化させると耐熱耐へたり性が向上する。が更には、10%以上の圧縮変形を付与してアニ−リングすることで耐熱耐へたり性が著しく向上するのでより好ましい。
また、該網状体を一旦冷却後、乾燥工程を経する場合、乾燥温度をアニ−リング温度とすることで同時に疑似結晶化処理を行うができる。また、製品化する工程で別途疑似結晶化処理を行うができる。かくして本発明の枕の中芯が得られる。他方、ウェッブ層のマトリックスに混綿する天然繊維以外の合成樹脂からなるマトリックス繊維(合成繊維)は公知の方法で得られるステープルなら良いが、好ましくは、熱可塑性非弾性樹脂を非対象冷却法又は複合紡糸法により潜在捲縮能を付与し、延伸後熱処理により立体捲縮を発現させて切断または、切断後熱処理して立体捲縮を発現させて得るのが好ましい。合成繊維は耐へたり性と耐熱性も要求されるので、初期引張り抵抗度が少なくとも35g/デニ−ル以上で、70℃での初期引張り抵抗度が少なくとも10g/デニ−ル以上にしたものが好ましい。嵩高性と抗圧縮性からの立体捲縮の捲縮度は15%以上、捲縮数は10〜25個/インチが好ましい。かくして得られた合成繊維はウェッブ層の主たるマトリックスとして、又は主たるマトリックスである天然繊維と所望の配合量にて混合開繊する。天然繊維と合成繊維は混合比率を主たるマトリックスである繊維と従たる繊維とが100/0〜50/50重量比として、オ−プナ−等で予備開繊混合した後カ−ド等で開繊し、3次元化構造とした開繊ウエッブを形成し、厚みが3mmから10mmとした時、見掛け密度が0.1g/cm3 以下、好ましくは、見掛け密度が0.01g/cm3 から0.06g/cm3 となるように積層したウェッブ層とする。好ましくは、次いで常法により厚みが3mmから10mmとした時見掛け密度が0.01g/cm3 から0.06g/cm3 となるようにウェッブにパンチ密度5本/cm2 以上30本/cm2 以下でニードルパンチして形態を安定化したウェッブ層として、次いで、両面を編織物で被い、見掛け密度が0.1g/cm3 以下、好ましくは、見掛け密度が0.01g/cm3 から0.06g/cm3 となるように圧縮しながら、キルティングして中芯を出し入れできる開閉口をつけた袋状の側地に縫製される。袋状の側地は、ウェッブが枕の両面を巻いたように位置するように縫製され、サイドの側面は編織物のみが設置されるように構成することで、サイド側面の通気性を高めると、新鮮な外気を入れ換える中芯のポンプ機能がより向上するので好ましい。かくして袋状の側地を得る。次いで、該側地に中芯を挿入され、本発明の枕を得る。側面の側地の処理は角部を他の布帛を被せてパイピング縫いにしてもよい。
【0018】
本発明の枕は、所望の性能を満たすため、該網状体や該ウェッブ層及び編織物を適切に選択する必要がある。また、枕の形状も、例えば頭部の保持部分をその形状に合わせて凹状にする場合や、四角い形状や丸い形状、各種サイズ等その要求される目的により決めるのが望ましい。更には、要求性能に合うべき他の素材、例えば、異なる網状体、短繊維集合体からなる硬綿クッション材、不織布等と組合せて用いることも可能である。また、樹脂製造過程以外でも性能を低下させない範囲で製造過程から成形体に加工し、製品化する任意の段階で難燃化、防虫抗菌化、耐熱化、撥水撥油化、着色、芳香等の機能付与を薬剤添加等の処理加工ができる。
【0019】
【実施例】
以下に実施例で本発明を詳述する。
【0020】
なお、実施例中の評価は以下の方法で行った。
1. 融点(Tm)および融点以下の吸熱ピ−ク
島津製作所製TA50,DSC50型示差熱分析計を使用し、昇温速度20℃/分で測定した吸発熱曲線から吸熱ピ−ク(融解ピ−ク)温度を求めた。
2. Tαcr
ポリマ−を融点+10℃に加熱して、厚み約300μm のフイルムを作成して、オリエンテック社製バイブロンDDVII型を用い、110Hz、昇温速度1℃/分で測定したTanδ(虚数弾性率M”と弾性率の実数部分M’との比M”/M’)のゴム弾性領域から融解領域への転移点温度に相当するα分散の立ち上がり温度。
3. 室温伸長回復率
ポリマ−を融点+10℃に加熱して、厚み約300μm のフイルムを作成して、オリエンテック社製テンシロンUTM4型を用い、伸長速度100%にて300%伸長後歪みを0%に戻し、2分間放置後再度破断まで伸長させた時の、再度伸長時に応力が発現する伸長率を300%から差し引いた伸長率を300%で除した値を%で示す。(n=3)
4. 70℃伸長回復率
ポリマ−を融点+10℃に加熱して、厚み約300μm のフイルムを作成して、オリエンテック社製テンシロンUTM4型を用い、70℃雰囲気にした加熱オーブン中で伸長速度100%にて10%伸長歪みを付与して24時間保持した後、歪みを0%に戻し、5分間放置後再度破断まで伸長させた時の、再度伸長時に応力が発現する伸長率を10%から差し引いた伸長率を10%で除した値を%で示す。(n=3)
5. 見掛け密度
試料を15cm×15cmの大きさに切断し、4か所の高さを測定し、体積を求め試料の重さを体積で徐した値で示す。(n=4の平均値)
6. 線条の繊径
試料を10箇所から各線条部分を切り出し、アクリル樹脂で包埋して断面を削り出し切片を作成して断面写真を得る。拡大した断面写真より線径を求め、拡大倍率で叙した値(n=10の平均値)
7. 融着
試料を目視判断で融着しているか否かを接着している繊維同士を手で引っ張って外れないか否かで外れないものを融着していると判断する。
8. 耐熱耐久性(70℃残留歪)
試料を15cm×15cmの大きさに切断し、50%圧縮して70℃乾熱中22時間放置後冷却して圧縮歪みを除き1日放置後の厚みと処理前の厚みの差と処理前の厚みとの比を%で示す(n=3の平均値)
9. 繰返し圧縮歪
試料を15cm×15cmの大きさに切断し、島津製作所製サ−ボパルサ−にて、25℃65%RH室内にて50%の厚みまで1Hzのサイクルで圧縮回復を繰り返し2万回後の試料を1日放置後の厚みと処理前の厚みの差と処理前の厚みとの比を%で示す。(n=3の平均値)
10.通気度
編織物は、直接側地を株式会社テクノワ−ルド社製(コスモ計器設計品)通気量測定器、高圧タイプを用い測定した通気量(cc/cm2 秒)を通気度として示す。袋状側地を介して網状体に排出できる通気量は、袋状側地の片面を網状体で被われた試料を直径10cmの円筒状に打ち抜き、側面をシ−ルできる試料厚みに相当する高さの内径10cmの金属筒に5%圧縮した状態で入れ、上下を5%圧縮厚み分のパッキンでシ−ルして横漏れしないようにしたサンプルを作成し、株式会社テクノワ−ルド社製(コスモ計器設計品)通気量測定器、高圧タイプを用い測定した通気量(cc/cm2 秒)を通気度として示す。
11.水切り性
作成した枕の重量を測定後に水槽に浸して10分後に取り出し、できるだけ水切りして、30℃RH65%の雰囲気の室内で壁に立てかけ24時間放置後の重量を測定して残留水分の量を求め、以下の基準で評価した。残留水分が5%以下:◎、残留水分が7%以下:○、残留水分が10%以下:△、残留水分が10%以上:×
12.着用感
28℃RH75%室内でパネラ−を作成した枕を着用させて布団に寝かせて以下の評価をおこなった。(n=5)なお、敷布団は硬綿布団にシ−ツを敷き、掛け布団はダウン/フェザ−:90/10混合羽毛1.8kg入りを使用させた。
(1) 違和感:寝たときの「頭部に感じる違和感」の程度を感覚的に定性評価した。感じない;◎、殆ど感じない;○、やや感じる;△、感じる;×
(2) 沈み込み:寝たときの頭部保持状況の程度を感覚的に定性評価した。適度の沈み込みで非常に心地よい;◎、沈み込みやや少又はやや大で心地良い;○、沈み込み小又は大で心地よさにやや欠ける;△、沈み込み過ぎ又は沈み込まないで心地よさを感じない;×
(3) 蒸れ感:2時間寝ていて、頭部や首筋等の枕と接する部分に感じる蒸れ感を感覚的に定性評価した。殆ど感じない:◎、僅かに蒸れを感じる;○、やや蒸れを感じる;△、蒸れを著しく感じる;×
(4) 頸椎保持感:6時間以上寝かせて目覚めた後の首筋の状態を感覚的に定性評価した。:首筋が痛い;×、首筋が少しおかしい:△、首筋は普通;○、爽快で軽い;◎
【0021】
実施例1
ポリエステル系エラストマ−として、ジメチルテレフタレ−ト(DMT)又は、ジメチルナフタレ−ト(DMN)と1・4ブタンジオ−ル(1・4BD)を少量の触媒と仕込み、常法によりエステル交換後、ポリテトラメチレングリコ−ル(PTMG)を添加して昇温減圧しつつ重縮合せしめポリエ−テルエステルブロック共重合エラストマ−を生成させ、次いで抗酸化剤1%及び難燃剤10%(燐含有量5000〜10000ppm)を添加混合後ペレット化し、50℃48時間真空乾燥して得られた熱可塑性弾性樹脂原料の処方を表1に示す。
【0022】
【表1】
Figure 0003637930
【0023】
幅120cm、長さ10cmのノズル有効面に幅方向の孔間ピッチ5mm、長さ方向の孔間ピッチ10mmの千鳥配列としたオリフィス形状は外径2mm、内径1.6mmでトリプルブリッジの中空形成性断面としたノズルに、得られた熱可塑性弾性樹脂原料を別々の押出機にて溶融し、A−1をシ−ス成分に、A−2をコア成分となるようにオリフィス直前で分配し、溶融温度245℃にて単孔当たりの吐出量2.0g/分(A−1:1g/分、A−2:1g/分)にてノズル下方に吐出させ、ノズル面12cm下に冷却水を配し、幅140cmのステンレス製エンドレスネットを平行に10cm間隔で一対の引取りコンベアを水面上に一部出るように配して、該溶融状態の吐出線状を曲がりくねらせル−プを形成して接触部分を融着させつつ3次元網状構造を形成し、該溶融状態の網状体の両面を引取りコンベア−で挟み込みつつ毎分1mの速度で25℃の冷却水中へ引込み固化させ両面をフラット化した後引取り、水切り後、連続して120℃の加熱空気を循環させたセッタ−中を15分間通過させ冷却後、幅35cm、長さ60cmの大きさに切断して得た中芯用の網状体は断面形状がシ−スコア構造の三角おむすび型の中空断面で中空率が40%、線径が1.2mmの融点以外に126℃に吸熱ピープをもつ線条が、形成するル−プの互いの接触点は殆ど融着により接合され、両面は実質的にフラット化され、平均の見掛け密度が0.046g/cm2 、厚み9.5cm、繰返し圧縮歪み2.8%、耐熱耐久性11.2%であった。別途、合成繊維は、常法により、極限粘度0.63と0.56のPETを重量比50/50に分配して単孔当たり3.0g/分孔(1g/分:1g/分)として紡糸温度265℃にて紡糸速度1300m/分で複合紡糸し、次いで、70℃及び180℃にて2段延伸して得た延伸糸を64mmに切断し170℃にてフリ−熱処理して立体捲縮を発現させ、中空断面で中空率32%のシ−スコア構造の繊度6デニ−ル、初期引張り抵抗度38g/デニ−ル、捲縮度20%、捲縮数18個/インチの合成繊維を得た。次いで、マトリックス繊維として、クチクル層表面のエピ層を除去し、難燃加工したメリノ羊毛と合成繊維を85/15重量比で混合し、オ−プナ−にて予備開繊した後カ−ドで開繊して得たウエッブを厚みが8mmとなったときの見掛け密度が0.05g/cm2 となるようにパンチ密度10本/cm2 でニ−ドルパンチして所定の大きさに切断したウェッブ層に東洋紡績製ハイムのポリエステル繊維からなる通気度30cc/cm2 秒のブロードを被せて10cm間隔の菱形格子状にキルトし、中芯が入る開閉口を持ち、サイド側面はブロ−ドのみで構成した所定の大きさに縫製された袋状の側地を作成し、中芯を側地に挿入して挿入口をとじ本発明の枕を得た。得られた枕の評価結果を表2に示す。表2で明らかごとく、耐熱性、耐久性、折り曲げ性、水切り性に優れ、側地の通気性も良く、着用感の良好な枕である。なお、この枕は燃焼ガスの毒性指数は6.0であった。このことから、火災時の安全性も高い枕であることが判る。
【0024】
【表2】
Figure 0003637930
【0025】
実施例2
幅120cm、長さ5cmのノズル有効面に幅方向の孔間ピッチ5mm、長さ方向の孔間ピッチ10mmの千鳥配列としたオリフィス形状は外径2mm、内径1.6mmでトリプルブリッジの中空形成性断面としたノズルに、得られた熱可塑性弾性樹脂A−3を押出機にて溶融し、溶融温度235℃にて単孔当たりの吐出量2.0g/分にてノズル下方に吐出させ、ノズル面12cm下に冷却水を配し、幅140cmのステンレス製エンドレスネットを平行に4.5cm間隔で一対の引取りコンベアを水面上に一部出るように配して、該溶融状態の吐出線状を曲がりくねらせル−プを形成して接触部分を融着させつつ3次元網状構造を形成し、毎分1mの速度で25℃の冷却水中へ引込み固化させた後引取り、水切り後、連続して120℃の加熱空気を循環させたセッタ−中を15分間通過させ冷却後、所定の大きさに切断して得た中芯用の網状体は、断面形状は中空おむすび型断面で、線径が1.2mmの融点以外に125℃に吸熱ピークをもつ線条が、形成するル−プの互いの接触点は殆ど融着により接合され、平均の見掛け密度が0.048g/cm2 、厚み4.5cm、繰返し圧縮歪み5.8%、耐熱耐久性10.8%であった。次いで、開繊綿でホルマリン加工したラミ−綿と実施例1で使用した合成繊維を85/15重量比で混合し、オ−プナ−にて予備開繊した後カ−ドで開繊して得たウエッブを見掛け密度が0.05g/cm2 となるように積層し、ニ−ドルパンチしなかった以外実施例1と同様にして作成した袋状の側地に該網状体を2層に積層して挿入して得た枕の評価結果を表2に示す。表2で明らかごとく、耐熱性、耐久性、水切り性に優れ、側地の通気性も良く着用感の良好な枕である。なお、この枕は燃焼ガスの毒性指数は5.0であった。このことから、火災時の安全性が良い枕であることが分かる。
【0026】
実施例3
幅120cm、長さ5cmのノズル有効面に幅方向の孔間ピッチ5mm、長さ方向の孔間ピッチ10mmの千鳥配列としたオリフィス形状は外径1mm丸断面としたノズルに、得られた熱可塑性弾性樹脂原料A−4を押出機にて溶融し、溶融温度235℃にて単孔当たりの吐出量2.0g/分にてノズル下方に吐出させ、ノズル面15cm下に冷却水を配し、幅140cmのステンレス製エンドレスネットを平行に平行に4.5cm間隔で一対の引取りコンベアを水面上に一部出るように配して、該溶融状態の吐出線状を曲がりくねらせル−プを形成して接触部分を融着させつつ3次元網状構造を形成し、該溶融状態の網状体の両面を引取りコンベア−で挟み込みつつ毎分1mの速度で25℃の冷却水中へ引込み固化させ両面をフラット化した後引取り、水切り後、幅30cm、長さ60cmに切断し、2枚を積層して角型で中央を後頭部を支持できるような円錐形の凹みを形成できる雌金型に挿入し、140℃の加熱空気を循環させて昇温後雄金型で圧縮し10分間圧縮成形後、冷却して得た中芯用の両面がル−プが90°折り畳まれて実質的にフラット化された網状体は、断面形状が丸断面で、線径が0.9mmの融点以外に155℃に吸熱ピークをもつ線条が、形成するル−プの互いの接触点は殆ど融着により接合され、両面が実質的にフラット化され、平均の見掛け密度が0.052g/cm2 、厚み4.5cm、繰返し圧縮歪み8.0%、耐熱耐久性18.4%であった。(円錐形の凹みは深さ10mm)次いで、実施例1で得た合成繊維を開繊し、実施例2と同様にして得た袋状の側地に挿入して得た枕の評価結果を表2に示す。表2で明らかごとく、耐熱性、耐久性、水切り性に優れ、側地の通気性も良く頭部のフィット性がよく着用感の良好な枕である。なお、この枕は難燃性で燃焼ガスの毒性指数は5.0であった。このことから、火災時の安全性も良いベット用マットであることが分かる。
【0027】
実施例4
ポリウレタン系エラストマ−として、4・4’ジフェニルメタンジイソシアネ−ト(MDI)とPTMG及び鎖延長剤として1・4BDを添加して重合し次いで抗酸化剤2%を添加混合練込み後ペレット化し真空乾燥してポリエ−テル系ウレタンポリマ−の処方を表3に示す。
【0028】
【表3】
Figure 0003637930
【0029】
得られた熱可塑性弾性樹脂(シ−ス成分:B−1、コア成分:B−2)を溶融温度220℃とした以外実施例1と同様にして得た網状体の線条のシ−スコア構造の断面形状が三角おむすび型の中空断面で中空率40%、線径が1.1mmの融点以外に126℃に吸熱ピークをもつ線条が、形成するル−プの互いの接触点は殆ど融着により接合され、両面が実質的にフラット化され、平均の見掛け密度が0.047g/cm2 、厚み9.5cm、繰返し圧縮歪み3.6%、耐熱耐久性7.5%であった。次いで、実施例2で使用した袋状の側地に該網状体を挿入して得た枕の評価結果を表2に示す。表2で明らかごとく、耐熱性、耐久性、水切り性に優れ、側地の通気性も良く着用感の良好な枕である。
【0030】
比較例1
メルトインデックス12のポリプロピレン(PP)単成分のみを溶融温度を220℃とした以外、実施例2と同様にして得た網状体は、中実丸断面で、線径が1.8mm、の融点以外に吸熱ピークをもたない線条が、形成するル−プの互いの接触点は殆ど融着により接合され、両面が実質的にフラット化され、平均の見掛け密度が0.047g/cm2 、厚み4.5cm、繰返し圧縮歪み29.6%、耐熱耐久性49.8%であった。次いで、精練したインド綿と実施例1で使用した合成繊維を70/30重量比で混合し、オ−プナ−にて予備開繊した後カ−ドで開繊して得たウエッブを厚み6mmとなるときの見掛け密度が0.05g/cm2 となるように積層して実施例2と同様にして作成した袋状の側地に該網状体を挿入して得た枕の評価結果を表2に示す。表2で明らかごとく、非弾性オレフィンからなる網状体のため、水切り性には優れるが、耐熱性、耐久性、側地の通気性は良いので蒸れ感は少ないが、それ以外の着用感が著しく劣るベットマットであり、難燃性も不合格になり火災時には問題がでる枕である。
【0031】
比較例2
幅120cm、長さ10cmのノズル有効面に幅方向の孔間ピッチ5mm、長さ方向の孔間ピッチ10mmの千鳥配列としたオリフィス形状は外径1mm丸断面としたノズルに、得られた熱可塑性弾性樹脂原料A−4を押出機にて溶融し、溶融温度245℃にて単孔当たりの吐出量3.0g/分にてノズル下方に吐出させ、ノズル面5cm下に冷却水を配し、幅140cmのステンレス製エンドレスネットを平行に平行に9.5cm間隔で一対の引取りコンベアを水面上に一部出るように配して、該溶融状態の吐出線状を曲がりくねらせル−プを形成して接触部分を融着させつつ3次元網状構造を形成し、該溶融状態の網状体の両面を引取りコンベア−で挟み込みつつ毎分1mの速度で25℃の冷却水中へ引込み固化させ両面をフラット化した後引取り、水切り後、所定の大きさに切断して得た網状体は、断面形状が丸断面で、線径が5.9mmの融点以外に吸熱ピークをもたない線条が、形成するル−プの互いの接触点は殆ど融着により接合され、両面が実質的にフラット化され、平均の見掛け密度が0.074g/cm2 、厚み9.5cm、繰返し圧縮歪み18.3%、耐熱耐久性28.4%であった。次いで、比較例1と同様にして得た枕の評価結果を表2に示す。表2で明らかごとく、水切り性、蒸れ感の少ない点に優れるが、耐熱性、耐久性、蒸れ感以外の着用感が劣る枕である。なお、この枕の燃焼ガスの毒性指数は5.1であった。
【0032】
比較例3
溶融温度245℃にて、ノズル面30cm下に引取りコンベアネットを配し、引き取り速度を0.5m/分とした以外、比較例2と同様の方法で得た網状体は、断面形状が丸断面で、線径が1.9mmの融点以外に吸熱ピークをもたない線条が、形成するル−プの互いの接触点は殆ど融着により接合され、両面が実質的にフラット化され、平均の見掛け密度が0.15g/cm2 、厚み9.5cm、繰返し圧縮歪み19.4%、耐熱耐久性28.7%であった。次いで、比較例2と同様にして得た枕の評価結果を表2に示す。表2で明らかごとく、水切り性、蒸れ感の少ない点に優れるが、耐熱性、耐久性、蒸れ感以外の着用感が劣る枕である。なお、この枕は燃焼ガスの毒性指数は5.1であった。
【0033】
比較例4
単孔当たりの吐出量0.3g/分とし、ノズル面5cm下に引取りコンベアネットを配し、引き取り速度を1.9m/分とした以外、比較例3と同様の方法で得た網状体は、断面形状が丸断面で、線径が0.4mmの融点以外に吸熱ピークをもたない線条が、形成するル−プの互いの接触点は殆ど融着により接合され、両面が実質的にフラット化され、平均の見掛け密度が0.004g/cm2 、厚み9.5cm、繰返し圧縮歪み13.6%、耐熱耐久性22.4%であった。次いで、比較例2と同様にして得た枕の評価結果を表2に示す。表2で明らかごとく、通気性、水切り性に優れるが、耐熱性、耐久性、着用感が劣る枕である。
【0034】
比較例5
溶融温度230℃にて、単孔当たりの吐出量1.5g/分とし、ノズル面60cm下に引取りコンベアネットを配し、引き取り速度を1m/分とした以外、比較例2と同様の方法で得た網状体は、断面形状が丸断面で、線径が1.9mmの融点以外に吸熱ピークをもたない線条となるが、線条がル−プを形成しないで接触点が殆どできず、網状体を形成しなかった。この線条を無理に見掛け密度が0.05g/cm2 、厚み9.5cmのウエッブ状とし、次いで、比較例2と同様にして得た枕の評価結果を表2に示す。表2で明らかごとく、接触点が接合されない場合は、着用感が劣る枕になる。なお、この枕は着用感が劣悪なため他の評価をしていない。
【0035】
比較例6
溶融温度245℃にて、単孔当たりの吐出量1.5g/分とし、ノズル面20cm下に引取りコンベアネットを配し、片側のコンベアネットの表面に5mmの凹凸を付けたものとし、引き取り速度を1m/分とした以外、比較例2と同様の方法で得た網状体は、断面形状が丸断面で、線径が0.9mmの融点以外に吸熱ピークをもたない線条が、形成するル−プの互いの接触点は殆ど融着により接合され、片面は実質的にフラット化されているが、他面は凹凸を有する、平均の見掛け密度が0.035g/cm2 、最も厚い場所の厚み9.5cm、繰返し圧縮歪み19.5%、耐熱耐久性29.2%であった。次いで、比較例2と同様にして得た枕の評価結果を表2に示す。この枕は側地の表面が凸凹の弛みとなり見栄えの悪い枕になった。表2で明らかごとく、水切り性、蒸れ感、圧迫感の少ない点に優れるが、耐熱性、耐久性がやや劣り、凸凹側を使った着用感では違和感があり、着用感がやや劣る枕である。なお、この枕の燃焼ガスの毒性指数は5.1であった。
【0036】
比較例7
幅120cm、長さ2cmのノズル有効面に幅方向の孔間ピッチ5mm、長さ方向の孔間ピッチ5mmの千鳥配列としたオリフィス形状は外径1mm丸断面としたノズルを用い、単孔当たりの吐出量0.6g/分とし、ノズル面5cm下に引取りコンベアネットを配し、1.2cm間隔で一対の引取りコンベアを水面上に一部出るように配して、引き取り速度を1.0m/分とした以外、比較例3と同様の方法で得た網状体は、断面形状が丸断面で、線径が0.6mmの融点以外に吸熱ピークをもたない線条が、形成するル−プの互いの接触点は殆ど融着により接合され、両面が実質的にフラット化され、平均の見掛け密度が0.025g/cm2 、厚み1.2cm、繰返し圧縮歪み17.5%、耐熱耐久性27.9%であった。次いで、厚みを変更した以外比較例2と同様にして得た袋状の側地に該網状体を1枚挿入して得た枕の評価結果を表2に示す。表2で明らかごとく、水切り性に優れるが、耐熱性、耐久性が劣り、中芯が薄すぎて底つきや頸椎保持が悪く着用感が著しく劣る枕である。
【0037】
比較例8
疑似結晶化処理しなかった以外実施例3と同様にして得た網状体の特性は断面形状が丸断面で、線径が0.9mmの融点以外に135℃に吸熱ピークをもたない線条が、形成するル−プの互いの接触点は殆ど融着により接合され、両面が実質的にフラット化され、平均の見掛け密度が0.048g/cm2 、厚み4.5cm、繰返し圧縮歪み16.5%、耐熱耐久性26.4%であった。別途、精練したインド綿と実施例1で使用した合成繊維を70/30重量比で混合し、オ−プナ−にて予備開繊した後カ−ドで開繊して得たウエッブを見掛け密度が0.12g/cm2 となるようにパンチ密度10本/cm2 でニ−ドルパンチして所定の大きさに切断したウェッブを比較例1と同様にして作成した袋状の側地に該網状体を挿入して得た枕の評価結果を表2に示す。表2より明らかなごとく、ウェッブの密度が高すぎるため、側地の通気性が悪く、着用感も劣る枕であった。
【0038】
比較例9
比較例8に用いた網状体を東洋紡績製ハイムのポリエステル繊維からなる通気度30cc/cm2秒のブロードを用いて所定の形状に縫製された側地に挿入して得た枕の評価結果を表2に示す。表2より明らかなごとく、タッチがやや劣るが他の着用感は良いが、耐熱耐久性が劣る枕であった。
【0039】
比較例10
見掛け密度が0.05g/cm3 の市販のポリエステル硬綿を厚み5mmにスライスし、所定の大きさに切断したものをウェッブの替わりに用いた袋状の側地を作成し、比較例8で用いた網状体を挿入して比較例8と同様にして得たベット用マットの評価結果を表2に示す。表2で明らかごとく、着用感はやや劣り、耐熱性、耐久性、水切り性も劣る枕である。
【0040】
比較例11
米綿をカ−ドウエッブとして積層し、見掛け密度が0.05g/cm3 、厚み10cmとなるようにした玉綿を所定の大きさに縫製されたポリエステル繊維の布帛からなる側地に挿入して得られた枕の評価結果を表2に示す。表2で明らかごとく、着用感はやや良いが、耐熱性、耐久性、水切り性が劣る枕である。
【0041】
比較例12
厚み10cm、見掛け密度0.05g/cm3 の市販のポリエステル硬綿をクッション材とし、所定の大きさに縫製されたポリエステル繊維の布帛からなる側地に挿入して得られた枕の評価結果を表2に示す。表2で明らかごとく、着用感はやや劣り、耐熱性、耐久性、水切り性は著しく劣る枕である。
【0042】
比較例13
厚み10cm、見掛け密度0.05g/cm3 の市販の発泡ポリウレタンを中芯とし、比較例2と同様にして得られた枕の評価結果を表2に示す。表2で明らかごとく、耐熱性、耐久性は優れているが、水切り性、側地の通気性は良いが着用感が劣る枕である。
【0043】
【発明の効果】
天然繊維や合成繊維のウェッブを編織物で被いキルトした袋状の側地を伸長回復性の良い熱可塑性弾性樹脂からなる線条が融着一体化され表面をフラット化した網状体を中芯にした枕、及び、製法であるので、蒸れ難く着用感が良好で、耐熱耐久性に優れ、火災時に有毒ガスの発生が少なく、MRSA等の雑菌を除去するための洗濯が可能な一般家庭用、病院用及びホテル用等に最適な枕、及び、製法を提供できる。

Claims (11)

  1. 中央部に中芯を配置し、該中芯を見掛密度が0.01g/ cm 3 以上0.1g/cm3以下で、厚み2mm以上30mm未満のウェッブの両面を編織物で被いキルティング縫製した袋状の側地で包み込んだ枕であり、前記中芯は、熱可塑性弾性樹脂からなる線径が5mm以下の連続した線条を曲がりくねらせランダムループを形成し、それぞれのループの接触部の大部分が融着されてなる三次元立体構造網状体で形成され、該三次元立体構造網状体は上、下両面が実質的にフラット化されており、見掛密度が0.005〜0.10g/cm3 であり、且つ、頭部を保持する部分の厚みが少なくとも20mm以上となっていることを特徴とする枕。
  2. ウェッブが天然繊維を主たるマトリックスとした請求項1記載の枕。
  3. 中芯を構成する熱可塑性弾性樹脂が、室温での300%伸長後の回復率(室温伸長回復率)が20%以上、70℃での10%伸長を24時間保持した後の回復率(70℃伸長回復率)が30%以上である請求項1記載の枕。
  4. 中芯を構成する網状体の線径が0.05〜0.9mm、見掛けの密度が0.02〜0.06g/cm3 、厚みが30〜200mmである請求項1記載の枕。
  5. 熱可塑性弾性樹脂からなる成分を示差走査型熱量計で測定した融解曲線に室温以上融点以下の温度に吸熱ピ−クを持つ三次元立体構造網状体を用いた請求項1記載の枕。
  6. 中芯を構成する三次元立体構造網状体の線条の断面形状が中空断面又は及び異形断面である請求項1記載の枕。
  7. 中芯を構成する熱可塑性弾性樹脂がポリエステルである請求項1記載の枕。
  8. 袋状の側地の通気度が20cc/cm2 秒以上である請求項1記載の枕。
  9. 複数のオリフィスを持つ多列ノズルより熱可塑性弾性樹脂をその融点より20〜80℃高い溶融温度で、該ノズルより下方に向けて吐出させ、溶融状態で互いに接触させて融着させ3次元立体構造を形成しつつ、引取り装置で挟み込み冷却槽で冷却せしめた後、切断し、頭部を保持する部分の厚みが20mm以上となるようにした三次元立体構造網状体の中芯に、天然繊維や合成繊維の見掛密度が0.01g/ cm 3 以上0.1g/ cm 3 以下で、厚み2mm以上30mm未満のウェッブの両面を編織物で被いキルィング縫製した袋状の側地を被せることを特徴とする枕の製法。
  10. 製品化に至る任意の工程で網状体を構成する熱可塑性弾性樹脂の融点より少なくとも10℃以下の温度でアニ−リングよる疑似結晶化処理を行う請求項9記載の枕の製法。
  11. 三次元立体構造体の単板を又は、単板を積層後、熱可塑性弾性樹脂の融点より少なくとも10℃以下の温度で圧縮熱成形を疑似結晶化処理と同時に行う請求項9記載の枕の製法。
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