JP3863709B2 - クリヤー塗料組成物、塗膜形成方法および積層塗膜 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、クリヤー塗料組成物、塗膜形成方法および積層塗膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車塗装系において、下地との密着性、耐擦傷性、耐水性、耐油性、耐候性、耐汚染性、光沢のバランスのとれたコーティング剤として、特開平7−292313号公報に、特定の分子量を有し、分子中の側鎖基における(メタ)アクリロキシアルキル基の含有量が1〜50モル%のラダーシリコーンオリゴマーと(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、アルコキシメチロール(メタ)アクリルアミド、不飽和カルボン酸、スチレンおよびビニルエステルより選ばれた少なくとも1種のモノマーとを共重合したコポリマーおよびその有機溶剤並びに紫外線吸収剤、酸化安定剤および架橋剤を配合してなる自動車用コーティング剤が記載されている。
【0003】
近年、自動車を駐車させているとき、塗膜に鳥の糞が付着し、こびりついて落とし難い問題や、雨天走行後の塗膜を観察すると泥はねの汚れが付着し、洗車しても擦らないと落ち難い等の耐汚染性の問題がクローズアップされている。
【0004】
上記特開平7−292313号公報の自動車用コーティング剤では、ラダーシリコーンコポリマーが、架橋剤とともにビヒクルの主成分を構成し、シリコーン成分の含有量が多く、自動車製造ラインではゴミ物等が付着した塗膜を補修してリコートする場合があり、自動車の製造における量産性を考えると、ゴミ物等が付着した不具合の発生した塗膜を完全に防止することは困難であり、研磨しなくても塗り重ねが良好な密着性(以下、「ノンサンディングリコート性」という。)を十分得られ難かった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、塗膜における汚染防止につながるイメージがあり、車の所有者に高級感を与える因子である良好な塗膜水はじき性が良好であり、ゴミ物等が付着した塗膜を補修してリコートする場合のノンサンディングリコート性が良好なクリヤー塗料組成物、塗膜形成方法および積層塗膜を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上述の課題に鑑み鋭意研究した結果、本発明に至った。
1.固形分換算で架橋性塗膜形成性樹脂が90〜50質量部に対して、架橋剤が10〜50質量部である(A)架橋性塗膜形成性樹脂および架橋剤100固形分質量部に対して、(B)(b−1)(メタ)アクリロキシアルキル基を含有するラダーシリコーンオリゴマーが1〜30質量%、(b−2)水酸基を含有するエチレン性不飽和モノマーおよびグリシジル基を含有するエチレン性不飽和モノマーを合計で1〜50質量%、および必要に応じて(b−3)他の共重合可能なエチレン性不飽和モノマーが0〜90質量%を共重合することにより得られるラダーシリコーンコポリマーを0.01〜2質量部含有するクリヤー塗料組成物。
2.上記(B)成分の含有量が、前記(A)成分100固形分質量部に対して0.05〜1質量部である上記のクリヤー塗料組成物。
3.基材に直接または下地塗膜を介して、メタリックベース塗膜またはソリッドベース塗膜を形成し、次いで上記メタリックベース塗膜またはソリッドベース塗膜を硬化させずに、その上に上記のクリヤー塗料組成物によりクリヤー塗膜を形成し、上記メタリックベース塗膜またはソリッドベース塗膜とクリヤー塗膜とを同時に焼付乾燥する塗膜形成方法。
4.基材に直接または下地塗膜を介して、メタリックベース塗膜またはソリッドベース塗膜が形成され、その上に上記のクリヤー塗料組成物によりクリヤー塗膜が形成された積層塗膜。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成について詳述する。
クリヤー塗料組成物
本発明のクリヤー塗料組成物は、塗膜水はじき性およびノンサンディングリコート性が良好なクリヤー塗料である。上記クリヤー塗料組成物は、(A)架橋性塗膜形成性樹脂および架橋剤100固形分質量部に対して、(B)(b−1)(メタ)アクリロキシアルキル基を含有するラダーシリコーンオリゴマー、(b−2)架橋性官能基を含有するエチレン性不飽和モノマー、および必要に応じて (b−3)他の共重合可能なエチレン性不飽和モノマーを共重合することにより得られるラダーシリコーンコポリマーを0.01〜2質量部含有している。ラダーシリコーンコポリマーの含有量が0.01質量部未満では良好な塗膜水はじき性を得られず、2質量部を超えると良好なノンサンディングリコート性が得られない。好ましくは、0.05〜1質量部である。
【0008】
上記クリヤー塗料組成物は、上記(A)架橋性塗膜形成性樹脂および架橋剤でビヒクルを構成するが、架橋性塗膜形成性樹脂と架橋剤とから構成されており、架橋性塗膜形成性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂が挙げられ、特に、アクリル樹脂およびポリエステル樹脂が、耐候性の点より好ましく用いられる。これらは、2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0009】
また、上記架橋性塗膜形成性樹脂には、アミノ樹脂や(ブロック)ポリイソシアネート化合物、アミン系、ポリアミド系、多価カルボン酸等の架橋剤と混合して使用に供され、加熱または常温で硬化反応を進行させることができる。
【0010】
上記アクリル樹脂としては、アクリル系モノマーと他のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体を挙げることができる。共重合に使用し得るアクリル系モノマーとしては、アクリル酸またはメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、ラウリル、フェニル、ベンジル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル等のエステル化物類、アクリル酸またはメタクリル酸2−ヒドロキシエチルのカプロラクトンの開環付加物類、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびN−メチロールアクリルアミド、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルなどがある。これらと共重合可能な上記他のエチレン性不飽和モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、イタコン酸、マレイン酸、酢酸ビニルなどがある。
【0011】
上記ポリエステル樹脂としては、飽和ポリエステル樹脂と不飽和ポリエステル樹脂があり、これらは例えば、多塩基酸と多価アルコールを加熱縮合して得られる。多塩基酸には、飽和多塩基酸および不飽和多塩基酸があり、飽和多塩基酸としては、例えば、無水フタル酸、テレフタル酸、コハク酸が挙げられ、不飽和多塩基酸としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸が挙げられる。また多価アルコールとしては、二価アルコールおよび三価アルコールが使用でき、二価アルコールとしては例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコールが挙げられ、三価アルコールの例としては、グリセリン、トリメチロールプロパンが挙げられる。
【0012】
上記アルキッド樹脂としては、既述の多塩基酸と多価アルコールにさらに油脂・油脂脂肪酸(大豆油、アマニ油、ヤシ油、ステアリン酸等)、天然樹脂(ロジン、コハク等)等の変性剤を反応させて得られたアルキッド樹脂を用いることができる。
【0013】
上記フッ素樹脂としては、フッ化ビニリデン樹脂、四フッ化エチレン樹脂のいずれかまたはこれらの混合体、フルオロオレフィンとヒドロキシ基含有の重合性化合物およびその他の共重合可能なビニル系化合物からなるモノマーを共重合させて得られる各種フッ素系共重合体からなる樹脂を使用することができる。
【0014】
上記エポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールとエピクロルヒドリンの反応によって得られる樹脂等を挙げることができる。ビスフェノール類の例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールFが挙げられる。このようなビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、エピコート828、エピコート1001、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009(いずれも、シェルケミカル社製)が挙げられ、これらを適当な鎖延長剤を用いて鎖延長したものも用いることができる。
【0015】
上記ポリウレタン樹脂としては、アクリル、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート等の各種ポリオール成分とポリイソシアネート化合物とによって得られるウレタン結合を有する樹脂を挙げることができる。上記ポリイソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、およびその混合物(TDI)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(4,4’−MDI)、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート(2,4’−MDI)、およびその混合物(MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジシクロへキシルメタン・ジイソシアネート(水素化HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水素化キシリレンジイソシアネート(HXDI)等を挙げることができる。
【0016】
上記ポリエーテル樹脂は、エーテル結合を有する重合体または共重合体であり、ポリオキシエチレン系ポリエーテル、ポリオキシプロピレン系ポリエーテル、もしくはポリオキシブチレン系ポリエーテル、またはビスフェノールAもしくはビスフェノールFなどの芳香族ポリヒドロキシ化合物から誘導されるポリエーテル等の1分子当たりに少なくとも2個の水酸基を有するポリエーテル樹脂等を挙げることができる。また上記ポリエーテル樹脂とコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の多価カルボン酸類、あるいは、これらの酸無水物等の反応性誘導体とを反応させて得られるカルボキシル基含有ポリエーテル樹脂も使用することができる。
【0017】
また、特公平8−19315号公報に記載された、カルボシキル基含有ポリマーとグリシジル基含有ポリマーとを含有するクリヤー塗料組成物は、耐酸性雨対策およびウェットオンウェット(W/W)法でメタリックベース塗膜との溶解性の差を大きくすると、塗装した際にメタリックベース塗膜における光輝剤の配向を乱さないという観点から好ましく用いられる。
【0018】
上記架橋性塗膜形成性樹脂と架橋剤との好ましい割合としては、固形分換算で架橋性塗膜形成性樹脂が90〜50質量部に対して、架橋剤が10〜50質量部であり、より好ましくは架橋性塗膜形成性樹脂が85〜60質量部に対して、架橋剤が15〜40質量部である。架橋剤が10質量部未満では(架橋性塗膜形成性樹脂が90質量部を超えると)、塗膜中の架橋が十分でないことがある。一方、架橋剤が50質量部を超えると(架橋性塗膜形成性樹脂が50質量部未満では)、塗料組成物の貯蔵安定性が低下するとともに硬化速度が大きくなるため、塗膜外観が悪くなることがある。
【0019】
上記(B)成分のラダーシリコーンコポリマーは、(b−1)(メタ)アクリロキシアルキル基を含有するラダーシリコーンオリゴマー、(b−2)架橋性官能基を含有するエチレン性不飽和モノマー、および必要に応じて(b−3)他の共重合可能なエチレン性不飽和モノマーを共重合することにより得られる。
【0020】
上記(b−1)(メタ)アクリロキシアルキル基を含有するラダーシリコーンオリゴマーは、側鎖基に(メタ)アクリロキシアルキル基を含有し、(メタ)アクリロキシアルキル基以外の置換基としては炭素数1〜18のアルキル基、置換アルキル基、フェニル基、置換フェニル基が用いられる。また側鎖基に少量のグリシジル基、アミノ基を入れてもさしつかえない。
【0021】
上記(b−2)架橋性官能基を含有するエチレン性不飽和モノマーとしては、上記架橋性官能基が、上記(A)成分の架橋性塗膜形成性樹脂が有する官能基であればよく、好ましくは水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、グリシジル基、アミン基、イソシアネート基のいずれかの官能基を含有するエチレン性不飽和モノマーの1種または複数である。
【0022】
上記水酸基を有するモノマーとして、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル等が挙げられ、カルボキシル基を有するモノマーとして、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられ、酸無水物基を有するモノマーとして、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられ、グリシジル基を有するモノマーとして、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等が挙げられ、アミン基を有するモノマーとして、アクリルアミド、メタアクリルアミド、メチロールアクリルアミド、メチロールメタアクリルアミド、アルコキシメチロールアクリルアミド、アルコキシメチロールメタアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、トリブチルアミノエチルメタクリルアミド、オキサゾリジノエチルメタクリレート、3−アミノプロピルメタクリレート、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、ジメチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられ、イソシアネート基を有するモノマーとして、例えば、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、HDI、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートが挙げられる。好ましくは、水酸基、またはグリシジル基を有するモノマーである。
【0023】
上記 (b−3)他の共重合可能なエチレン性不飽和モノマーは、必要に応じて用いるが、このモノマーとしてはアクリル酸またはメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、ラウリル、フェニル、ベンジル、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、ジビニルベンゼン等の1種または複数である。
【0024】
上記(B)成分中の(b−1)成分と上記(b−2)成分および必要に応じて用いる(b−3)成分との配合量は、(b−1)成分が1〜30質量%、(b−2)成分が1〜50質量%、および(b−3) 成分が0〜90質量%の比率である。(b−1)成分が、1質量%未満、(b−2)成分が、1質量%未満では、塗膜の架橋反応が不十分となり塗膜を有機溶剤でワイピングすると塗膜が溶解する恐れがあり、(b−1)成分が30質量%を超え、(b−2)成分が50質量%を超えると、形成された塗膜の艶が不足する恐れがある。
【0025】
また、本発明のクリヤー塗料組成物には、必要に応じて、その透明性を損なわない範囲で、着色顔料、体質顔料を用いることができる。また上記成分の他に、脂肪族アミドの潤滑分散体であるポリアミドワックスや酸化ポリエチレンを主体としたコロイド状分散体であるポリエチレンワックス、硬化触媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、シリコーンや有機高分子等の表面調製剤、タレ止め剤、増粘剤、消泡剤、滑剤、架橋性重合体粒子(ミクロゲル)等を適宜含むことができる。これらの添加剤は、通常、ビヒクル100質量部(固形分基準)に対して15質量部以下の割合で配合することにより、塗料や塗膜の性能を改善することができる。
【0026】
本発明のクリヤー塗料組成物は、上記構成成分を、通常、溶剤に溶解または分散して調製される。溶剤としては、ビヒクルを溶解または分散するものであればよく、有機溶剤および/または水が使用できる。有機溶剤としては、塗料分野において通常用いられるものを挙げることができ、トルエン、キシレン等の炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブ等のエステル類、アルコール類を例示できる。なお、環境面の観点から有機溶剤の使用が規制されている場合には、水を用いることが好ましい。この場合、適量の親水性有機溶剤を含有させてもよい。
【0027】
塗膜形成方法および積層塗膜
本発明の塗膜形成方法は、基材に直接または下地塗膜を介して、メタリックベース塗膜またはソリッドベース塗膜を形成し、次いで上記メタリックベース塗膜またはソリッドベース塗膜を硬化させずに、その上に、上記のクリヤー塗料組成物によりクリヤー塗膜を形成し、上記メタリックベース塗膜またはソリッドベース塗膜とクリヤー塗膜とを同時に焼付乾燥する方法である。
【0028】
被塗物が、自動車車体および部品の場合は、基材にあらかじめ化成処理をした後、電着塗装等による下塗り塗装、中塗り塗装等により形成される下地塗膜を形成しておくのが好ましい。上記中塗り塗装は、下地の隠蔽、耐チッピング性の付与および上塗りとの密着性確保のために行われるものである。上記中塗り塗装は、常用の中塗り塗料により形成するが、有機溶剤型、水性または粉体塗料として用いることができる。
【0029】
上記メタリックベース塗膜が透明性を有している場合、上記メタリックベース塗膜の中塗り塗膜との複合色を発現し、意匠性を高めることができる。この場合、中塗り塗膜は、グレー色系の中塗り塗料またはカラー中塗り塗料等を用いて、中塗り塗膜を形成するものである。
【0030】
本発明の積層塗膜は、種々の基材に形成できるが、具体的な基材として例えば、鉄、アルミニウム、銅またはこれらの合金等の金属類、ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂類や各種のFRP等のプラスチック材料類、その他木材、繊維材料(紙、布等)等の天然または合成材料等を挙げることができる。なお、本明細書中では、上記基材に化成処理や下塗り、中塗り塗装等により形成された下地塗膜を形成されたものを、基材と表現する場合がある。
【0031】
上記基材に、ベース塗料を塗装してベース塗膜を形成する。このベース塗膜の形成にはベース塗装用として一般に使用されている光輝性顔料を含有するメタリックベース塗料または着色顔料を含有するソリッドベース塗料を使用することができる。ベース塗料用ビヒクルとしての架橋性塗膜形成性樹脂、必要に応じて使用できる架橋剤およびこれらの配合量については、上記クリヤー塗料用と同様である。上記ベース塗料は、常用の上塗りベース塗料により形成するが、有機溶剤型、水性または粉体塗料として用いることができる。
【0032】
また、メタリックベース塗料中には、各種光輝性顔料を含有する。上記光輝性顔料の例としては、アルミニウムフレーク顔料、着色アルミニウムフレーク顔料、金属酸化物被覆アルミナフレーク顔料、干渉マイカ顔料、着色マイカ顔料、金属酸化物被覆ガラスフレーク、金属めっきガラスフレーク、金属酸化物被覆ガラスフレーク、金属酸化物被覆シリカフレーク顔料、金属チタンフレーク、グラファイト、ステンレスフレーク、板状酸化鉄、フタロシアニンフレークおよびホログラム顔料等を挙げることができる。
【0033】
また、メタリックベース塗料であっても、必要に応じて上記ソリッドベース塗料に使用する着色顔料を、光輝性顔料と併用することができる。着色顔料としては、アゾレーキ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等の有機顔料類、黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、二酸化チタン、カーボンブラック等の無機顔料類が挙げられる。上記光輝性顔料および着色顔料の添加量は、所望の色相を発現するのに合わせて任意に設定できる。また各種体質顔料等を併用することができる。
【0034】
なお、上記光輝性顔料および/または着色顔料を併用する場合、顔料全体としての総含有量(PWC)は、50%未満が好ましく、30%未満がより好ましい。50%を超えると塗膜外観が低下する。
【0035】
上記ベース塗料には、上記成分の他に、上記クリヤー塗料組成物に用いる各種添加剤を配合することが可能である。
上記ベース塗料は、上記基材が下塗り、中塗り塗料等により下地塗装をした物である場合には、下地塗膜の上にウェットオンウェット(W/W)法、またはウェットオンドライ(W/D)法により塗装することができる。W/W法とは下地塗装をした後、風乾等により乾燥し、未硬化状態または半硬化状態の下地塗膜に塗装する方法であり、これに対して、W/D法とは焼き付けて硬化後の下地塗膜に塗装する方法である。
【0036】
上記ベース塗膜を基材上に形成する方法は特に限定されないが、スプレー法、ロールコーター法等が好ましく、また、複数回塗装することも可能である。上記ベース塗膜の乾燥膜厚は、1コートにつき5〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。
このようにして形成されたベース塗膜上に、本発明のクリヤー塗料組成物を使用してクリヤー塗膜を少なくとも1層形成する。上記クリヤー塗膜の形成方法は特に限定されないが、スプレー法、ロールコーター法等が好ましい。また、上記クリヤー塗膜の乾燥膜厚は1コートにつき20〜50μmが好ましく、25〜40μmがより好ましい。
【0037】
上記クリヤー塗膜の形成は、上記ベース塗膜を硬化させた後でも、硬化させる前でもよい。硬化させる前の場合には、W/W法により上記ベース塗膜とクリヤー塗膜を同時に硬化させることとなる。また、上記クリヤー塗膜を複数回塗装する場合には、最終のクリヤー塗膜を塗装した後で同時に焼き付けてもよく、また各層毎に焼き付けてもよい。焼き付け温度は、120〜160℃が好ましい。以上のような形成方法によって、本発明の積層塗膜を得ることができる。
【0038】
【実施例】
次に、本発明を実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、配合量は特に断りのないかぎり質量部を表す。
基材の調製
ダル鋼板(長さ300mm、幅100mmおよび厚さ0.8mm)を脱脂後、燐酸亜鉛処理剤(「サーフダインSD2000」、日本ペイント社製)を使用して化成処理した後、カチオン電着塗料(「パワートップU−50」、日本ペイント社製)を乾燥膜厚が25μmとなるように電着塗装した。次いで、160℃で30分間焼き付けた後、ポリエステル樹脂/メラミン樹脂系中塗り塗料を乾燥膜厚が40μmとなるようにエアースプレー塗装し、140℃で30分間焼き付けて中塗り塗膜を形成し基材とした。
【0039】
上塗り塗膜
上記基材に対して、各実施例または比較例の上塗りベース塗料を乾燥膜厚が15μmになるようにスプレー塗装した。塗装は静電塗装機(「Auto REA」、ABBインダストリー社製)を用い、霧化圧2.8kg/cm2で行った。塗装中のブースの雰囲気は温度25℃、湿度75%に保持した。塗装後3分間セッティングし、各実施例または比較例の上塗りトップクリヤー塗料組成物を乾燥膜厚が35μmになるように塗装し、室温で10分間セッティングし、140℃の温度で30分間、二層の塗膜層を同時に焼き付けた。得られた積層塗膜の塗膜水はじき性をベース塗膜とクリヤー塗膜の焼き付け直後の水接触角として、およびイソプロパノールを含んだガーゼでワイプ後の水接触角として、接触角計(「CA-D」、協和界面科学社製)を用いて測定した。またノンサンディングリコート密着性は、上記で形成したクリヤー塗膜に、サンディングせずに、それぞれで用いたベース塗料とクリヤー塗料組成物を塗装し、塗り重ね塗膜を焼き付けて形成させ、塗り重ねた塗膜のゴバン目テープ試験(1mm目を100個:JIS K 5400に準拠)を行い、残った桝目を測定した。結果を表1に示した。
【0040】
ラダーシリコーンコポリマー
RS1:「サンフルーレLS190」(昭和電工社製)は(メタ)アクリロキシアルキル基を含有するラダーシリコーンオリゴマー10〜15質量%とその他のアクリルモノマーの共重合物で水酸基価(固形分換算)が100であり、固形分は50%である。
RS2:温度計、撹拌機、冷却管、窒素導入管および滴下ロートを備えた2リットルの反応容器に酢酸ブチル400部を仕込み、125℃に昇温した。滴下ロートに、スチレン100部、メタクリル酸グリシジル200部、アクリル酸4−ヒドロキシブチル200部、n−ブチルメタアクリレート400部、アクリロキシアルキル基を含有するラダーシリコーンオリゴマー「サンフルーレLS112」(昭和電工社製)200部およびt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート70部からなるモノマー、および開始剤溶液を3時間で滴下した。滴下終了後30分間、125℃で保持した後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート10部およびキシレン250部からなる溶液を30分間で滴下した。滴下終了後、さらに2時間125℃にて反応を継続し、不揮発分59%、数平均分子量4500のグリシジル基を含むラダーシリコンポリマーRS2を得た。
RS3:温度計、撹拌機、冷却管、窒素導入管および滴下ロートを備えた2リットルの反応容器に酢酸ブチル400部を仕込み、125℃に昇温した。滴下ロートに、スチレン300部、n−ブチルメタアクリレート600部、アクリロキシアルキル基を含有するラダーシリコーンオリゴマー「サンフルーレLS112」(昭和電工社製)200部およびt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート250部からなるモノマー、および開始剤溶液を3時間で滴下した。滴下終了後30分間、125℃で保持した後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート10部およびキシレン250部からなる溶液を30分間で滴下した。滴下終了後、さらに2時間125℃にて反応を継続し、不揮発分59%、数平均分子量4300の官能基を含まないラダーシリコンポリマーRS3を得た。
【0041】
参考例1
水酸基を含むアクリル樹脂とメラミン樹脂系クリヤー塗料(「スーパーラック−130クリヤーNO」、樹脂および架橋剤固形分50質量%、日本ペイント社製)100重量部に、ラダーシリコーンコポリマーRS1を1重量部加えて、シンナーで稀釈しクリヤー塗料組成物1を調製した。(固形分換算で、樹脂および架橋剤100部に対してラダーシリコーンコポリマー1部である。)
【0042】
上記基材に、水酸基を含むアクリル樹脂とメラミン樹脂系メタリックベース塗料(「スーパーラック M−180BKLO NO」、日本ペイント社製)により、べース塗膜形成後ウェットオンウェットで、上記で調製したクリヤー塗料組成物1を塗装し、その後140℃で30分間焼き付けた。
【0043】
参考例2
水酸基を含むアクリル樹脂とポリイソシアネート化合物系クリヤー塗料(「naxマイティーラックGII240 2コートクリヤー」、日本ペイント社製)と硬化剤の混合物100部に、ラダーシリコーンコポリマーRS1を0.8重量部加えてシンナーで稀釈しクリヤー塗料組成物2を調製した。(固形分換算で、樹脂および架橋剤100部に対してラダーシリコーンコポリマー1部である。)
【0044】
上記基材に、水酸基を含むアクリル樹脂とポリイソシアネート化合物系メタリックベース塗料(「naxスペリオ2K3044スノーメタリック荒め」、日本ペイント社製)により、べース塗膜形成後ウェットオンウェットで、上記で調製したクリヤー塗料組成物2を塗装し、その後80℃で60分間焼き付けた
【0045】
実施例3
グリシジル基とカルボキシル基が主に硬化反応するクリヤー塗料(「マックフローO−590−1クリヤーNO」、樹脂および架橋剤固形分48質量%、日本ペイント社製)100重量部に、ラダーシリコーンコポリマーRS2を0.8重量部加えて、シンナーで稀釈しクリヤー塗料組成物3を調製した。(固形分換算で、樹脂および架橋剤100部に対してラダーシリコーンコポリマー1部である。)
【0046】
上記基材に、水酸基を含むアクリル樹脂とメラミン樹脂系メタリックベース塗料(「スーパーラック M−180BKLO NO」、日本ペイント社製)により、ベース塗膜形成後ウェットオンウェットで、上記で調製したクリヤー塗料組成物3を塗装し、その後140℃で30分間焼き付けた。
【0047】
参考例4
水酸基を含むアクリル樹脂とメラミンとが主に硬化反応するスーパーラック 0−130クリヤー NO(日本ペイント社製)100重量部にラダーシリコーンコポリマーRS1を1重量部加えてシンナーで稀釈しクリヤー塗料組成物を調製した。
上記基材に、水酸基を含むアクリル樹脂とメラミン樹脂系水性メタリックベース塗料(「NWB−260BKLO」、日本ペイント社製)によりべース塗膜形成後、80℃で15分間プレヒート後、上記実施例1で調製したクリヤー塗料組成物1を塗装し、その後140℃で30分間焼き付けた。
【0048】
比較例1
ラダーシリコンポリマーを用いずに水酸基を含むアクリル樹脂とメラミン樹脂系クリヤー塗料(「スーパーラック−130クリヤーNO」、日本ペイント社製)をシンナーで稀釈しクリヤー塗料組成物5を調製した。それ以外は、実施例1と同様に行った。
比較例2
実施例3のラダーシリコンポリマーRS2の配合量を4部に変えた以外は、実施例3と同様に行った。(固形分換算で、樹脂および架橋剤100部に対してラダーシリコーンコポリマー5部である。)
比較例3
実施例3のラダーシリコンポリマーを、官能基を有さないラダーシリコンポリマーRS3に変えた以外は、実施例3と同様に行った。
【0049】
【表1】
【0050】
表1の結果から明らかのように、本実施例1〜4は、本発明のクリヤー塗料組成物を用いた塗膜形成方法で得た積層塗膜であり、塗膜水はじき性およびノンサンディングリコート性が良好な積層塗膜であった。一方、比較例1および3は、塗膜水はじき性が、比較例2では、ノンサンディングリコート性が十分ではなかった。
【0051】
【発明の効果】
本発明においては、架橋性塗膜形成性樹脂および架橋剤100固形分質量部に対して、特定のラダーシリコーンコポリマーを0.01〜2質量部含有するクリヤー塗料により、塗膜における汚染防止につながるイメージがあり、車の所有者に高級感を与える因子である良好な塗膜水はじき性、また自動車塗装時にゴミ物等が付着した塗膜を補修してリコートする場合のノンサンディングリコート性が良好なクリヤー塗料組成物、塗膜形成方法および積層塗膜を提供することができるようになった。なお、本発明により得られる塗膜は上記良好な塗膜水はじき性およびノンサンディングリコート性を有するため自動車、二輪車等の乗物外板、容器外面、コイルコーティング、家電業界等の分野において好ましく使用される。
Claims (4)
- 固形分換算で架橋性塗膜形成性樹脂が90〜50質量部に対して、架橋剤が10〜50質量部である(A)架橋性塗膜形成性樹脂および架橋剤100固形分質量部に対して、(B)(b−1)(メタ)アクリロキシアルキル基を含有するラダーシリコーンオリゴマーが1〜30質量%、(b−2)水酸基を含有するエチレン性不飽和モノマーおよびグリシジル基を含有するエチレン性不飽和モノマーを合計で1〜50質量%、および必要に応じて(b−3)他の共重合可能なエチレン性不飽和モノマーが0〜90質量%を共重合することにより得られるラダーシリコーンコポリマーを0.01〜2質量部含有するクリヤー塗料組成物。
- 前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分100固形分質量部に対して0.05〜1質量部である請求項1記載のクリヤー塗料組成物。
- 基材に直接または下地塗膜を介して、メタリックベース塗膜またはソリッドベース塗膜を形成し、次いで前記メタリックベース塗膜またはソリッドベース塗膜を硬化させずに、その上に請求項1または2記載のクリヤー塗料組成物によりクリヤー塗膜を形成し、前記メタリックベース塗膜またはソリッドベース塗膜とクリヤー塗膜とを同時に焼付乾燥する塗膜形成方法。
- 基材に直接または下地塗膜を介して、メタリックベース塗膜またはソリッドベース塗膜が形成され、その上に請求項1または2記載のクリヤー塗料組成物によりクリヤー塗膜が形成された積層塗膜。
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