JP3851796B2 - 諸撚調加工糸及びその製造方法並びに織編物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハリコシ、ドレープ性、光沢感等に優れ、かつ上品で高級な風合いを織編物に付与することが可能な諸撚調加工糸及びその製造方法並びに該加工糸を含む織編物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハリコシ、ドレープ性、光沢感に優れた諸撚糸は、通常、下撚を施した複数の糸条を引き揃え、下撚と反対方向の上撚を施すことにより得られる。しかしながら、下撚、熱セット、上撚、熱セットの工程を必要とするため、コストが高いといった欠点を有している。また、十分な風合いを得るためには、それぞれの撚数を高くすることが望ましいが、撚糸機の制約から撚数を高くするには加工速度を低くする必要があり、生産性の点から撚数の高い諸撚糸の実用的な生産を困難にしている。
【0003】
一方、諸撚糸は、前述のような特徴を有するものの、糸長手方向に撚数が一定であるため、外観的には均一であり、光沢や色調に関する意匠効果には乏しいものである。
【0004】
そこで諸撚調の加工糸を生産性よく、また光沢や色調に関する意匠効果を得る方法として、SZ交互撚糸を引き揃えセルフツイストする方法が知られているが、かかる方法により得られる加工糸の多くは、下撚の持つ顕在トルクのみに依存した撚付きで形成された加工糸であり、生産性は向上できるものの、上撚の撚数や形態安定性が十分に得られず、また、上撚のない部分も長くなり易いため、諸撚糸の風合いとしては不十分なものである。
【0005】
これに対し、特開昭58−126331号公報では、2本のSZ交互撚糸を用い糸長手方向の下撚位置の位相をずらし、上撚のない部分を短くする方法が提案されている。しかしながら、この方法では上撚のない部分は短くなるものの、依然として上撚された部分の撚は低く、全体的にハリコシの乏しいものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来技術における問題点を、上撚数レベルを上げるだけでなく、上撚形成部のない部分の長さを短くすることにより解決するものであり、本発明の目的は、ハリコシ、ドレープ性、光沢感等に優れ、上品で高級な風合いを織編物に付与することが可能な諸撚調加工糸を提供し、また該加工糸を含む織編物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、それぞれがSZ交互撚糸である2本以上のマルチフィラメント糸からなり、それぞれのマルチフィラメント糸のS撚部(以下、S方向下撚部という)及びZ撚部(以下、Z方向下撚部という)の位置が同じ位相で合撚(以下、上撚)形態を形成しているとともに、下記要件(1)〜(3)を満たすことを特徴とする諸撚調加工糸、
(1)上撚形成部の構成比率が80%以上
(2)上撚非形成部の長さが5cm以下
(3)最大上撚数(T/m)が7000×d−1/2〜25000×d−1/2
(但し、d:加工糸の繊度(dtex))
及び、SZ交互撚糸であるマルチフィラメント糸を2本以上引き揃えて仮撚加撚域に供給する仮撚加工において、それぞれのマルチフィラメント糸に同一の条件で間歇エア旋回流処理を施して撚部の位置が同じ位相にSZ交互撚形態を付与し、合糸して仮撚加撚域へ供給することを特徴とする諸撚調加工糸の製造方法、並びに、前記の諸撚調加工糸で一部又は全部が構成された織編物、にある。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の諸撚調加工糸及び諸撚調加工糸を構成するマルチフィラメント糸の構造を図面にて説明すると、図1は、本発明の諸撚調加工糸の一例を示すモデル図であり、(A-1)は上撚がZ方向の上撚形成部、(A-2)は上撚がS方向の上撚形成部、(B)は上撚非形成部である。また図2は、該諸撚調加工糸を構成するマルチフィラメント糸の一例を示すモデル図であり、(C-1)はS撚部(以降、S方向下撚部という)、(C-2)はZ撚部(以降、Z方向下撚部という)、(D)はS方向下撚部とZ方向下撚部の変換部である。
【0009】
本発明の諸撚調加工糸において、加工糸を構成するそれぞれのマルチフィラメント糸のS方向下撚部及びZ方向下撚部の位置が同じ位相で上撚形態を形成していることが重要である。各マルチフィラメント糸の下撚部の位置を同じ位相に合わせることにより、例えば、S方向下撚部とS方向下撚部が引き揃えられた場合には、下撚の持つ顕在トルクが働くためにセルフツイストが発生し易くなり、上撚の撚数が高く入り上撚形成部の撚数が高くなり、同時に全体として上撚形成部の長さが長くなるため、上撚非形成部を短くすることができる。
【0010】
各マルチフィラメント糸の下撚部の位置が相互に異なり、位相が違う場合には、例えばS方向下撚部とZ方向下撚部が引き揃えられた場合には、下撚の持つ顕在トルクが異方向に働くためにセルフツイストが発生し難くなり、上撚の撚数が低下し、本発明の目的とする諸撚糸調の風合いが得られない。
【0011】
本発明の諸撚調加工糸においては、上撚形成部の構成比率が80%以上、好ましくは90%以上、上撚非形成部の長さが5cm以下、好ましくは3cm以下、最大上撚数(T/m)が7000×d−1/2〜25000×d−1/2で、好ましくは10000×d−1/2以上20000×d−1/2であることが必要であることにより、諸撚糸特有の優れたハリコシ、ドレープ性、光沢感が得られる。なお、本発明において、dは糸の繊度(dtex)で示す。
【0012】
上撚形成部の構成比率が80%未満の場合、上撚非形成部の構成比率が相対的に多くなり、諸撚糸の様な締まった糸形状ではなく、どちらかというとふくらみのある形状の部分が多くなり嵩高糸調の風合いとなるため、ハリコシのある風合いが得られ難くなる。また、上撚非形成部の長さが5cmを超えると、集束性が低く上撚のない部分が多くなるため、ふくらみ感が強調され、ハリコシ、ドレープ性、光沢感が得られ難くなる。
【0013】
更に、最大上撚数が7000×d−1/2未満の場合は、諸撚糸の糸構造特有の締まったものとならずに、全体的にハリコシの乏しく、風合い的に不十分なものとなり、25000×d−1/2を超えると、2重撚による角が発生し、後工程通過性が劣るものとなる。
【0014】
本発明の諸撚調加工糸において、上撚の撚方向が下撚部の撚方向とは逆方向であることが好ましい。即ち、S方向下撚部が引き揃えられた部分は、上撚がZ方向に、Z方向下撚部が引き揃えられた部分は、上撚がS方向に、SZ交互撚り構造になることによって、トルクのバランスの点から、糸形態安定性が好ましいものとなる。
【0015】
更に、本発明の諸撚調加工糸は、その構成の各マルチフィラメント糸がSZ交互撚り構造を有し、かつ加工糸として上撚形態がSZ交互撚り構造を有するときには、光沢や色調が複雑且つ微妙に変化した意匠効果を有するものとなる。
【0016】
特に、本発明の諸撚調加工糸においては、諸撚調加工糸を構成する2本以上のマルチフィラメント糸が、少なくとも2本のマルチフィラメント糸間で染色性を異にする異染色性のマルチフィラメント糸が組み合わされて含む場合、異染色性が異種染料可染性であれば好ましい異色効果を与え、異染色性が易染性であれば、図1で示すと、撚密度が高い上撚形成部(A-1)、(A-2)は濃色となり、撚密度が低い上撚非形成部(B)が淡色となる。これは、単に濃淡二層ということではなく、主に上撚部と非上撚部の連続的な撚数変化により、濃淡が微妙に変化する自然な異色感、杢感を有する諸撚調加工糸となり、極めて好ましい意匠効果を与えるものとなる。
【0017】
本発明の諸撚調加工糸において、その構成のマルチフィラメント糸としては、その素材に特に限定はなく、例えばポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリアミド繊維、アセテート繊維等の熱可塑性繊維のマルチフィラメント糸が挙げられ、また目的に応じて複数の素材を組み合わせた複合糸であってもよい。更に、マルチフィラメント糸の構成単繊維の断面形態、繊度、糸繊度等についても特に限定はなく、織編物の製品の目的に応じて選択すればよい。
【0018】
本発明の諸撚調加工糸は、次のようにして製造することができる。
即ち、本発明の諸撚調加工糸は、マルチフィラメント糸を2本以上引き揃えて仮撚加撚域に供給する仮撚加工において、それぞれのマルチフィラメント糸に同一の条件で間歇エア旋回流処理を施して、撚部の位置が同じ位相にSZ交互撚形態を付与した後、合糸して仮撚加撚域へ供給することにより得られる。
【0019】
本発明の諸撚調加工糸の製造工程を図面により説明する。
図3は、本発明の諸撚調加工糸の製造工程の一例を示すもので、マルチフィラメント糸(1)、(2)を、それぞれ張力調整装置(3)、(4)を経て、エア旋回流処理装置(5)、(6)による間歇エア噴射によるエア旋回流処理により糸長手方向にSZ交互撚の下撚を付与する。
【0020】
間歇エア旋回流処理は、コンピューター(16)によりプログラミングされたエア旋回流処理制御装置(7)、(8)を用いてエア旋回流処理装置(5)、(6)とも同一条件で行い、マルチフィラメント糸(1)、(2)に撚部が同一位相のSZ交互撚を形成させる。次いでSZ交互撚の下撚が付与された2本のマルチフィラメント糸を、引き揃えて、第1フィードローラー(9)を経て第1ヒーター(10)と第1デリベリローラー(12)間で仮撚を行い、SZ交互撚の上撚を付与する。次いで第2ヒーター(13)で熱セットし、第2デリベリローラー(14)を通し、捲取り機(15)で巻き取る。
【0021】
本発明の諸撚調加工糸の製造方法において、それぞれSZ交互撚の付与された2本以上のマルチフィラメント糸が糸長手方向にSZ交互撚の撚部が同一位相に配されて引き揃えられた場合、セルフツイスト法による撚付きと同様に、それぞれの持つ撚トルクにより、下撚と逆の方向の上撚が形成される。このため仮撚加工後もこれに影響され、下撚と逆の方向に撚の残ったSZ交互未解撚状を呈し、SZ交互諸撚調加工糸の形成が可能となる。
【0022】
また、本発明の諸撚調加工糸の製造方法において、仮撚加工の際、仮撚スピンドル、図3に示す製造工程では仮撚スピンドル(11)の回転数を短時間に増減することにより、仮撚数を変動させ、積極的に未解撚部を発生させ、比較的高撚数の上撚を残存させることもできる。更には、この仮撚スピンドル回転数の増減による仮撚数の変動とエア旋回流処理での間歇エア噴射とが適当な時間的遅れを保ちつつ同じ周期でなされると、より効果的で極めて上撚の撚数が高く、かつ上撚非形成部の短い諸撚調加工糸の製造が可能となる。
【0023】
仮撚加工における仮撚数は、好ましい諸撚調の形態が得られるように適宜設定すればよいが、仮撚数を変動させる場合は、上限撚数(T/m)が33000×d−1/2(d:糸の繊度(dtex))、下限撚数(T/m)が5000×d−1/2の範囲で設定することが好ましい。仮撚数(T/m)の変動差は、好ましくは5000×d−1/2以上、更に好ましくは10000×d−1/2以上とすることで残留撚数が大きくなり加工糸全体としての集束性は高くなる。仮撚数の増減の切り替えピッチは、0.3〜2秒がよく、更に好ましくはエア旋回流処理でのエアの噴射時間と停止時間に合わせて増減させることが好ましい。
【0024】
本発明の諸撚調加工糸の製造方法において、図3示す製造工程でマルチフィラメント糸にSZ交互撚形態を付与する際に用いる張力調整装置(3)、(4)は、走行するマルチフィラメント糸の走行張力を調整可能な装置であれば特に限定はなく、例えば、マグネットテンサー、リングテンサー、バネテンサー等が用いられ、張力調整と撚止め効果の高いマグネットテンサーが特に好ましく用いられる。
【0025】
また、図3に示す製造工程でのエア旋回流処理装置(7)、(8)は、糸条に撚を与える公知の装置であれば特に限定はないが、応答速度の速い加圧エアによるエア旋回流ノズルを用いることが好ましく、更にエア旋回流処理制御装置によりランダムな間隔でエアの噴射と停止を繰り返すことにより織編物に自然な斑感を付与することが可能である。なお、エアの噴射、停止の制御条件は、特に限定はなく、目的とする意匠性や風合いにより、適宜設定すればよい。エア旋回流処理制御装置も、電気式、空気式等いかなる方式のものであってもよい。
【0026】
仮撚加工における加工速度、図3に示す製造工程での張力調整装置(3)、(4)での供給張力、エア旋回流処理装置(5)、(6)の位置、エア圧、エア噴射と停止の時間等についても適宜設定すことが可能であり、織編物の目的とする風合や意匠性により設定すればよい。
【0027】
本発明の諸撚調加工糸は、織編物の素材として好適に用いられる。本発明の諸撚調加工糸を含んでなる織編物は、本発明の諸撚調加工糸で織編物の全部を構成したものでもよく、また他糸との合撚、交編織により織編物の一部を構成したものであってもよく、目的の風合いや製品外観が得られる範囲で、本発明の諸撚調加工糸の含有率並びに織編組織を決定して構成すればよい。
【0028】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。実施例における評価方法は次に示す方法に拠った。
【0029】
上撚形成部の構成比率:
得られた加工糸における任意の箇所(糸長10m)をサンプリングし、片方の糸端を固定して、他方の糸端に加工糸繊度に対して8.82(mN/dtex)の所定荷重を与えながら、不連続に存在する上撚形成部の長さを各々測定して、該構成比率を次式で算出した。
上撚形成部の構成比率(%)=上撚形成部の長さの総和(m)/サンプル糸長(10m)×100
【0030】
上撚非形成部の長さ:
得られた加工糸における任意の箇所(糸長10m)をサンプリングし、片方の糸端を固定して、他方の糸端に加工糸繊度に対して8.82(mN/dtex)の所定荷重を与えながら不連続に存在する上撚非形成部の長さ(cm)を各々測定した。
【0031】
最大上撚数:
S方向上撚形成部とZ方向上撚形成部をそれぞれ任意に5箇所ずつサンプルとし採取する。次いで、検撚機を用いて該サンプルの撚数を測定し、次式で上撚数を算出する。なお、検撚機へのサンプルセット時は所定加重(加工糸繊度に対して8.82(mN/dtex))を与えるものとする。
上撚数(T/m)=撚数測定値/サンプル長(m)×100
【0032】
糸形態:
キイエンス(KEYENCE)社製デジタルHDマイクロスコープ(VH-7000型)を用い、加工糸の上撚形成部撚方向(S方向、Z方向)とその構成のマルチフィラメント糸の下撚部撚方向(S方向、Z方向)について糸形態を観察した。
【0033】
風合い:
得られた加工糸を用いて、後述の条件で織物、編物を作成し、染色処理を実施し、次いで170℃、1分間の乾熱処理を行い、ハンドリングによる風合い評価、目視判定による染め評価を行った。
【0034】
(実施例1)
図3に示す工程で、ポリエステルマルチフィラメント糸セミダル84dtex/36fを2本用い、それぞれのマルチフィラメント糸に対してマグネットテンサーにより15〜20cNに走行張力を調整し、エア旋回流ノズル(エア旋回流処理装置)にてエア電磁弁(エア旋回流処理制御装置)で制御し間歇エア旋回流処理を行い、撚部が同一位相のSZ交互撚糸を作成した。なお、エア旋回流ノズルのエア噴射時のエア圧は0.4MPa、エア噴射と停止の時間はそれぞれ0.4±0.1秒の範囲でランダムに変動させた。
【0035】
引き続き、この2本のSZ交互撚糸を引き揃えて第1フィードローラーを介して仮撚加撚域へ供給し仮撚加工を実施した。なお、第1ヒーター温度200℃、第1デリベリローラー速度50m/分、第2ヒーター温度220℃、第1フィードローラーと第1デリベリローラー間のオーバーフィード率10%、仮撚スピンドル回転数100,000rpm(Z撚方向)で仮撚加工を行った。
【0036】
得られた加工糸を評価したところ、加工糸は、SZ交互撚糸構造を有する2本以上のマルチフィラメント糸から構成され、かつそれぞれの構成マルチフィラメント糸のS方向下撚部及びZ方向下撚部の位置が同じ位相で上撚形態を形成しており、上撚形成部の構成比率が82%、上撚非形成部の長さが1.5〜5.0cm、最大上撚数が800T/mで形成された諸撚調加工糸であった。
【0037】
得られた加工糸を用いて、レピア織機(経糸:ポリエステルマルチフィラメント糸セミダル56dtex/24f、経糸密度110本/2.54cm)に対して緯打ち(緯糸密度56本/2.54cm)して平織物を織成し、また丸編み機(20ゲージ、44インチ)で天竺編物を編成し、それぞれの織編物を常法により精練、高圧分散染色処理を行った。得られた織編物は、ハリコシ、ドレープ性、光沢感に優れ、かつ上品で高級な風合いを併せ持ち、撚密度の変化による自然な斑感を有した織編物であった。
【0038】
(実施例2)
図3に示す工程で、ポリエステルマルチフィラメント糸セミダル84dtex/36fを2本用い、それぞれのマルチフィラメント糸に対してマグネットテンサーにより15〜20cNに走行張力を調整し、エア旋回流ノズルにてエア電磁弁で制御し間歇エア旋回流処理を行い、撚部が同一位相のSZ交互撚糸を作成した。なおエア旋回流ノズルの噴射時のエア圧は0.4MPa、エア噴射と停止の時間はそれぞれ0.4±0.1秒の範囲でランダムに変動させた。
【0039】
引き続き、この2本のSZ交互撚糸を引き揃えて第1フィードローラーを介して仮撚加撚域へ供給し仮撚加工を実施した。なお、第1ヒーター温度200℃、第1デリベリローラー速度50m/分、第2ヒーター温度220℃、第1フィードローラーと第1デリベリローラー間オーバーフィード率5%、仮撚スピンドル回転数増減範囲75,000〜135,000rpm(Z撚方向)、仮撚スピンドル回転数切り替え時間はエア旋回流ノズルでのエア噴射と停止の間隔と同じにして仮撚加工を行った。
【0040】
得られた加工糸を評価したところ、加工糸は、SZ交互撚糸構造を有する2本以上のマルチフィラメント糸から構成され、かつそれぞれの構成マルチフィラメント糸のS方向下撚部及びZ方向下撚部の位置が同じ位相で上撚形態を形成しており、上撚形成部の構成比率が96%、上撚非形成部の長さが0.5〜2.0cm、最大上撚数が1500T/mで形成された諸撚調加工糸であった。
【0041】
得られた加工糸を用いて、レピア織機(経糸:ポリエステルマルチフィラメント糸セミダル56dtex/24f、経糸密度110本/2.54cm)に対して緯打ち(緯糸密度56本/2.54cm)して平織物を織成し、また丸編み機(20ゲージ、44インチ)で天竺編物を編成し、それぞれ常法により精練、高圧分散染色処理を行った。得られた織編物は、ハリコシ、ドレープ性、光沢感に優れ、かつ上品で高級な風合いを併せ持ち、撚密度の変化による自然な斑感を有した織編物であった。
【0042】
(実施例3)
図3に示す工程で、ポリエステルマルチフィラメント糸セミダル84dtex/36fとポリエステルカチオン染料可染糸セミダル84dtex/24fを用い、それぞれのマルチフィラメント糸に対してマグネットテンサーにより15〜20cNに走行張力を調整し、エア旋回流ノズルにてエア電磁弁で制御し間歇エア旋回流処理を行い、撚部が同一位相のSZ交互撚糸を作成した。なお、エア旋回流ノズルの噴射時のエア圧は0.4MPa、エア噴射と停止の時間はそれぞれ0.4±0.1秒の範囲でランダムに変動させた。
【0043】
引き続き、この2本のSZ交互撚糸を引き揃えて第1フィードローラーを介して仮撚加撚域へ供給し仮撚加工を実施した。なお、第1ヒーター温度200℃、第1デリベリローラー速度50m/分、第2ヒーター温度220℃、第1フィードローラー/第1デリベリローラー間オーバーフィード率5%、仮撚スピンドル回転数増減範囲75,000〜135,000rpm(Z撚方向)、仮撚スピンドル回転数切り替え時間はエア旋回流ノズルでのエア噴射と停止の間隔と同じにして仮撚加工を行った。
【0044】
得られた加工糸を評価したところ、加工糸は、SZ交互撚糸構造を有する2本以上のマルチフィラメント糸から構成され、かつそれぞれのマルチフィラメント糸のS方向下撚部及びZ方向下撚部の位置が同じ位相で上撚形態を形成しており、上撚形成部の構成比率が90%、上撚非形成部の長さが0.5〜3.0cm、最大上撚数が1500T/mで形成された諸撚調加工糸であった。
【0045】
得られた加工糸を用いて、レピア織機(経糸:ポリエステルマルチフィラメント糸セミダル56dtex/24f、経糸密度110本/2.54cm)に対して緯打ち(緯糸密度56本/2.54cm)して平織物を織成し、また丸編み機(20ゲージ、44インチ)で天竺編物を編成し、それぞれを常法により精練、常圧カチオン染色処理を行った。得られた織編物は、ハリコシ、ドレープ性、光沢感に優れ、かつ上品で高級な風合いを併せ持ち、撚密度の変化と異なる染色特性とによる自然な斑感を有した織編物であった。
【0046】
(比較例1)
実施例1において、エア旋回流ノズルにて間歇エア旋回流処理を行って得た撚部が同一位相の2本のSZ交互撚糸を、第1フィードローラーを介して仮撚加工を実施せずに、第1ヒーター温度200℃、第1デリベリローラー速度50m/分で加工を行った。
【0047】
得られた加工糸を評価したところ、加工糸はSZ交互撚糸構造を有する2本以上のマルチフィラメント糸から構成されてはいるが、上撚形成部の構成比率が36%、上撚非形成部の長さが7〜15cm、最大上撚数が500T/mで形成されており、上撚形成部の構成比率が低く、上撚非形成部が長い加工糸であった。
【0048】
得られた加工糸を用いて、レピア織機(経糸:ポリエステルマルチフィラメント糸セミダル56dtex/24f、経糸密度110本/2.54cm)に対して緯打ち(緯糸密度56本/2.54cm)して平織物を織成し、また丸編み機(20ゲージ、44インチ)で天竺編物を編成し、それぞれを常法により精練、高圧分散染色処理を行った。得られた織編物は、諸撚形態を有するものの非諸撚部が長いため、いわゆるふかついた風合いとなり、諸撚糸のようなハリコシ、ドレープ性に劣るものであった。
【0049】
【発明の効果】
本発明の諸撚調加工糸は、従来の技術的問題点を解消し、合理的手法により、ハリコシ、ドレープ性、光沢感等に優れ、かつ上品で高級な風合いを織編物に付与することが可能なるものであり、また本発明の諸撚調加工糸を含んでなる織編物は、本発明の諸撚調加工糸によってもたされるハリコシ、ドレープ性、光沢感等に優れ、かつ上品で高級な風合いを有するものであり、衣料用織編物として好適なるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の諸撚調加工糸の一例の糸側面図である。
【図2】本発明の諸撚調加工糸を構成するSZ交互撚構造のマルチフィラメント糸の一例の糸側面図である。
【図3】本発明の諸撚調加工糸の製造工程の一例の工程図である。
【符号の説明】
A-1 Z方向の上撚形成部
A-2 S方向の上撚形成部
B 上撚非形成部
C-1 S方向下撚部
C-2 Z方向下撚部
D S方向下撚部とZ方向下撚部の変換部
1 マルチフィラメント糸
2 マルチフィラメント糸
3 張力調整装置
4 張力調整装置
5 エア旋回流処理装置
6 エア旋回流処理装置
7 エア旋回流処理制御装置
8 エア旋回流処理制御装置
9 第1フィードローラー
10 第1ヒーター
11 仮撚スピンドル
12 第1デリベリローラー
13 第2ヒーター
14 第2デリベリローラー
15 捲取り機
16 コンピューター
Claims (6)
- それぞれがSZ交互撚糸である2本以上のマルチフィラメント糸からなり、それぞれのマルチフィラメント糸のS撚部及びZ撚部の位置が同じ位相で合撚形態を形成しているとともに、下記要件(1)〜(3)を満たすことを特徴とする諸撚調加工糸。
(1)上撚形成部の構成比率が80%以上
(2)上撚非形成部の長さが5cm以下
(3)最大上撚数(T/m)が7000×d−1/2〜25000×d−1/2
(但し、d:加工糸の繊度(dtex)) - 合撚形態での撚方向が、下撚部の撚方向とは逆方向である請求項1記載の諸撚調加工糸。
- 2本以上のマルチフィラメント糸が、少なくとも2本のマルチフィラメント糸間で染色性が異なる異染色性のマルチフィラメント糸が組み合わされてなる請求項1又は請求項2記載の諸撚調加工糸。
- マルチフィラメント糸を2本以上引き揃えて仮撚加撚域に供給する仮撚加工において、それぞれのマルチフィラメント糸に同一の条件で間歇エア旋回流処理を施して撚部の位置が同じ位相にSZ交互撚形態を付与し、合糸して仮撚加撚域へ供給することを特徴とする諸撚調加工糸の製造方法。
- 仮撚加工の際、仮撚数を変動させる請求項4記載の諸撚調加工糸の製造方法。
- 請求項1、請求項2又は請求項3に記載の諸撚調加工糸で一部又は全部が構成された織編物。
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